平成14刑(わ)307 競売入札妨害被告

裁判年月日・裁判所
平成14年9月3日 東京地方裁判所
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判決文本文3,821 文字)

平成14年9月3日宣告競売入札妨害被告事件 主文 被告人を懲役10月に処する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 【犯行に至る経緯】 1 被告人は,電気機械器具の製造及び販売等を業とする株式会社A茨城支店電機第1グループ部長代理として工事の受注等を担当していた者,Bは,平成3年12月16日から茨城県石岡市ほか1村の水道事業の運営に関する事務の共同処理を行う特別地方公共団体であるC企業団の企業長(なお,石岡市長でもある。)として,企業団を代表して業務を執行し,企業団が発注する工事に関し,指名競争入札参加者の指名,予定価格の決定及び請負契約の締結等の職務に従事していた者,Dは,公共工事等に関する情報収集等の請負を業とする株式会社Eの取締役として同社を実質的に経営していた者,Fは,Bの従兄弟であって,B及びDとじっこんの間柄であった者,Gは,電気機器設備及び機械設備の設計並びに施工請負等を業とするH株式会社埼玉支店長として工事等に関する情報収集等を行っていた者である。 2 H茨城支店では,平成10年12月ころ,企業団がI新配水場ほか3か所についての緊急対策事業に伴う電気計装,機械設備工事を発注する予定であることを聞き,本件工事の受注を目指すこととして,かつてH茨城支店土浦営業所において長年にわたり営業活動をしていたGに,Hが本件工事を受注できるよう企業長等の有力者に口利きをしてくれる人物を探すよう依頼した。そこで,Gは,平成11年1月ころ,Fと接触し,更にFから,かねてからFとともに石岡市発注の公共工事に関する業者間調整等に携わっていたDを紹介された。しかし,Dから本件工事の受注に成功した場合にはBへの謝礼分を含む報酬を支払ってほしいなどと求められたため,これが賄賂につながることを懸念したHでは,Dに口利き等を依頼 に携わっていたDを紹介された。しかし,Dから本件工事の受注に成功した場合にはBへの謝礼分を含む報酬を支払ってほしいなどと求められたため,これが賄賂につながることを懸念したHでは,Dに口利き等を依頼することを断念した。 3 すると,Dは,A又はその系列会社に本件工事を元請受注させて,Aの特約店であるHがその下請に入ることを提案した。そこで,Gは,同年2月上旬ころ,被告人に対し,本件工事の受注のためにAにおいてEを利用するつもりがあるかどうか打診したが,被告人もGから本件工事の受注に成功した場合にはEへの報酬が必要であることを告げられたため,これが賄賂につながることを懸念してEの利用を断った。 4 その後,G及びA系列のJ株式会社関東支店副支店長Kは,Aに本件工事を元請受注させ,HやJがその下請に入ることとして,Dに対しAが本件工事を受注できるよう協力を求めた。また,Gは,被告人に対し,本件工事には電機メーカーが指名されることなど本件工事に関する情報を伝えて,Aが本件工事を受注できるよう努力してほしい旨を告げるなどした。 5 同年2月25日,企業団が同年3月16日を入札予定日として本件工事を指名競争入札に付することを決定し,Aほか7社を本件工事の指名業者として選定した後,被告人は,A以外の指名業者に対し,自社において本件工事を落札したい旨告げて業者間調整を図ろうとしたところ,指名業者のうち1社がこれに協力しない姿勢を示した。そこで,被告人は,発注者側の有力者しか知らない本件工事についての予定価格等に関する情報をAがつかんでいる事実を上記会社に示して本件工事の落札を断念させ,業者間調整に応じさせるとともに,予定価格に近い金額で落札することによってより高い利益を上げようと考え,予定価格等に関する情報の収集を試みることとした。 そして,被告人 本件工事の落札を断念させ,業者間調整に応じさせるとともに,予定価格に近い金額で落札することによってより高い利益を上げようと考え,予定価格等に関する情報の収集を試みることとした。 そして,被告人は,上記のとおりEの話を持ち掛けたGに本件工事の予定価格等に関する情報を聞き出してもらおうと考え,同年3月10日ころ,Gにその旨依頼した。これを受けたGは,同月11日,Dに被告人の依頼を取り次ぎ,同日,DはFにBから上記情報を聞き出すよう依頼し,FはBに上記情報を内報するよう依頼した。 【罪となるべき事実】被告人は,B,D,F及びGと共謀の上,平成11年3月12日ころ,茨城県石岡市LM番地のN所在の石岡市役所市長室において,BがFに対し,本件工事の設計金額が約9億1300万円で,予定価格を算出するための歩切率が3.2パーセント程度である旨を電話で内報し,FからD及びGを介して被告人に連絡させ,よって,同月16日,同市OP丁目Q番R号所在のI企業団事務所会議室で行われた本件工事の指名競争入札に際し,Aをして,上記内報を受けた数値に基づき予定価格8億8600万円に近接する8億8300万円で本件工事を落札させ,もって,偽計を用いて公の入札の公正を害すべき行為をした。 【証拠の標目】(省略)【法令の適用】(省略)【量刑の理由】 1 本件は,株式会社A茨城支店電機第1グループ部長代理として工事の受注に携わっていた被告人が,I企業団の企業長であるB石岡市長,株式会社Eの実質的経営D,B及びDとじっこんの間柄であるF及びH株式会社埼玉支店長Gと共謀の上,企業団が指名競争入札に付した電気計装,機械設備工事につき,Bから,F,D及びGを介して,本件工事に係る予定価格等に関する情報を聞き出すことによって,Aに予定価格8億8600万円に近接する8億8300 業団が指名競争入札に付した電気計装,機械設備工事につき,Bから,F,D及びGを介して,本件工事に係る予定価格等に関する情報を聞き出すことによって,Aに予定価格8億8600万円に近接する8億8300万円で落札させ,もって,偽計を用いて公の入札の公正を害すべき行為をしたという競売入札妨害の事案であり,本来は競争原理により公正な価格を形成すべき指名競争入札において,競争の意味を失わせ,業者の公正な選定を妨げるなどした悪質な犯行である。 2① 被告人は,本件工事の予定価格等に関する情報を入手できれば工事を確実にかつ予定価格に近い価格で落札・受注することができることから,そうした情報を入手することとした。そして,Gに本件工事の予定価格等に関する情報を聞き出すよう依頼し,その結果D,F及びBの協力を得,Bから上記情報を聞き出して本件犯行に及んだものである。 被告人は,公共工事に携わる一企業人として,公正な自由競争原理に従って本件入札に臨まなければならなかったのに,自社の利益を求めるあまり,入札の公正など意に介することなく,極めて自己中心的に本件犯行に及んだものであり,その経緯,動機に酌量の余地はない。 ② 犯行態様についてみると,被告人は,Gが公共工事の口利き業者ともいうべきEと関係を持つなどして本件工事に関する情報をつかんでいたことから,同人に予定価格等に関する情報の入手を依頼し,その結果EのDやBの従兄弟であるFを介して,本件工事の予定価格等に関する決定権者であるBから情報を聞き出し,これを基に業者間調整を図って本件工事を落札するに至ったものであって,計画的かつ悪質である。 ③ その中で,被告人は,Gに本件工事の予定価格等に関する情報を聞き出すよう依頼し,D,F及びBに協力させて,本件犯行を推進させたほか,得られた情報を基に実際にAをして本件 計画的かつ悪質である。 ③ その中で,被告人は,Gに本件工事の予定価格等に関する情報を聞き出すよう依頼し,D,F及びBに協力させて,本件犯行を推進させたほか,得られた情報を基に実際にAをして本件工事を予定価格に近い価格で落札させるという重要な役割を担っているのである。 ④ また,本件は,現職の市長らによる競売入札妨害事件として一般に報道され,社会の耳目を集めたものである。被告人らの犯行は,地域社会やその住民に大きな衝撃を与え,公共工事に対する市民の信頼を著しく損ねたものであって,その社会的影響も大きい。 ⑤ 以上の事情に照らすと,被告人の刑事責任は相応に重いというべきである。 3 しかしながら,他方,被告人は,捜査・公判を通じて本件犯行を素直に認め,反省の態度を示していること,本件犯行に係る社内処分として被告人が過怠金処分を受けたほか,同社代表取締役会長らも減俸処分となったこと,本件不祥事によりAが工事の指名競争入札について1か月ないし無期限にわたる指名停止処分を受けたこと,本件を契機としてAが各種の再発防止策を講じていること,被告人には前科前歴がなく,これまでA社員として真面目に勤務していたことなど,被告人にとって酌むべき事情も認められる。 そこで,以上の事情その他諸般の事情を総合考慮して,被告人に対しては,主文の刑を科した上,その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑懲役10月)平成14年9月3日東京地方裁判所刑事第7部裁判長裁判官小川正持裁判官浅香竜太裁判官渡邉史朗 持裁判官 浅香竜太 裁判官 渡邉史朗

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