平成13(ワ)21 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成13年12月18日 佐賀地方裁判所
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判決文本文5,873 文字)

主文 1 被告は,原告に対し,金6万9056円及びこれに対する平成11年1月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを10分し,その9を原告の,その余を被告の各負担とする。 4 この判決は,主文第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,金528万7360円及びこれに対する平成11年1月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が被告に対し,被告がその運転の自動車を原告運転の自動車に衝突させて原告に傷害を負わせて後記損害を与えたとして,自賠法3条に基づきその賠償を求めた事案である。 1 争いのない事実等(1) 交通事故(以下「本件事故」という。)の発生(甲1)ア日時平成9年12月・・日午後9時10分ころイ場所佐賀市hi丁目j番k号付近交差点ウ加害車被告運転の普通乗用自動車(以下「被告車」という。)エ被害車原告運転の普通乗用自動車(以下「原告車」という。)オ事故態様原告車が青信号に従い交差点を進行中,被告車が赤信号を無視して交差点に進行してきたため原告車に衝突した。 (2) 原告の治療状況(甲2,3)原告は,本件事故により頚部捻挫,右肩関節捻挫,腰部捻挫の傷害を受け,平成9年12月・・日から同10年6月9日までD接骨院に通院治療を受け(通院実日数121日間),同月25日から同年8月12日まで(49日間)E整形外科病院に入院し,同年6月2日から同11年1月11日まで同病院に通院し(通院実日数30日間),同年1月11日症状固定との診断を受け,その後,後遺障害等級14級10号の認定を受けた。 (3) 被告の責任原因被告は,被告 月2日から同11年1月11日まで同病院に通院し(通院実日数30日間),同年1月11日症状固定との診断を受け,その後,後遺障害等級14級10号の認定を受けた。 (3) 被告の責任原因被告は,被告車の保有者であり,自賠法3条により本件事故により生じた原告の損害を賠償すべき責任を負う。 (4) 既払金の額原告はこれまでに自賠責保険から75万円の支払いを受け,そのほかに被告は原告に対し62万2938円,D接骨院に対し54万8460円を支払っている。 2 争点及び当事者の主張(1) 原告の症状固定時期ア原告の主張E整形外科病院での診断により平成11年1月11日である(甲3)。 イ被告の主張E整形外科病院でのカルテによれば,原告の症状と治療内容は平成10年7月ころから変化がなくなっており,遅くとも同年7月31日には症状は固定した。 (2) 原告には本件事故前に既往症が存在したか。 ア原告の主張原告の椎間板ヘルニアは本件事故により発症したものであり,本件事故前にはなかった。 イ被告の主張原告には,本件事故前にもともと頚椎の6番と7番との間にヘルニアがあった。 (3) D接骨院における治療は不適切であったか。 ア原告の主張原告は運送業の自営をしており,治療のために病院に入院することができず,勤務時間に支障を来さないD接骨院での治療を続けたものであり,その治療は基本的にはE整形外科病院と同じで,適切であった。 イ被告の主張原告は事故直後の平成9年12月8日から同10年6月9日まで延べ半年の間に121日間も通院しているが,これは医師の指示に基づくものではなく,結局は症状を増悪させており,本件事故の相当因果関係の範囲外の治療である。 (4) 原告の損害についてア原告の主張基本収入として31才の男子全労働者の平均年収4 師の指示に基づくものではなく,結局は症状を増悪させており,本件事故の相当因果関係の範囲外の治療である。 (4) 原告の損害についてア原告の主張基本収入として31才の男子全労働者の平均年収491万8500円を基準とする。そうでないとしても,平成10年度の休業による実損は221万2862円である。 イ被告の主張事故前3年分の実所得を基準とすべきである。また,E整形外科病院での治療の平成10年6月25日から症状固定日たる同年7月31日までの約1か月分と後遺障害分の各損害に対し,原告の既往症に基づく分として50パーセント減額し,さらに,不適切な接骨治療により悪化させ治療を長引かせた分として30パーセント減額されるべきである。 (5) 既払金の額ア原告の主張135万円イ被告の主張原告はこれまでに自賠責保険から75万円の支払いを受け,そのほかに被告は原告本人に対し62万2938円,D接骨院に対し54万8460円,F整形外科に対し2万1252円,G脳神経外科に対し7350円を支払っている。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(原告の症状固定時期)について(1) 前記当事者間に争いのない事実に加えて,証拠(甲2ないし4,乙1ないし3,原告本人)によれば,原告の治療経過は次のとおりであったことが認められ,これに反する証拠はない。 原告は,本件事故の翌日である平成9年12月・・日F整形外科において診察を受けたが骨には異常はなかったこと,原告は同日から同10年6月9日までD接骨院にて通院治療を受け(通院実日数121日間)たが,その診断名は頚部捻挫,右肩関節捻挫,腰部捻挫であったこと,腰部捻挫については平成10年3月11日治癒,右肩関節捻挫については同年5月8日治癒と診断されたが,頚部捻挫については症状が増悪したため,平成10年 は頚部捻挫,右肩関節捻挫,腰部捻挫であったこと,腰部捻挫については平成10年3月11日治癒,右肩関節捻挫については同年5月8日治癒と診断されたが,頚部捻挫については症状が増悪したため,平成10年6月2日からE整形外科病院に通院したが,その際の診断名は項部痛,外傷性頚部椎間板ヘルニア,右肘関節痛であったこと,原告は同月25日から同年8月12日まで(49日間)同病院に頚部椎間板ヘルニア,右肘関節痛の診断名にて入院し,その後平成11年1月11日まで同病院に通院し(通院実日数30日間),同日症状固定との診断を受け,その後,後遺障害等級14級10号の認定を受けた。 (2) 被告は,E整形外科病院でのカルテによれば,原告の症状と治療内容は平成10年7月ころから変化がなくなっており,遅くとも同年7月31日には症状は固定したと主張するが,証拠(乙2,3)によれば,原告の症状は退院後次第に改善し,平成10年9月には29日までに5日通院した後は,同年10月には23日に1日通院したのみであり,その後は翌年の平成11年1月11日に通院したのみであることが認められる。 (3) 以上によれば,原告は遅くとも平成10年9月29日には症状固定したものと認めるのが相当である。 2 争点(2)(原告には本件事故前に既往症が存在したか。)について(1) 前記認定の原告の治療経過によれば,原告がE整形外科病院に通院ないし入院した際の診断名に椎間板ヘルニアが含まれていたことが認められる。 (2) 被告は,原告には,本件事故前にもともと頚椎の6番と7番との間に椎間板ヘルニアがあったと主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。かえって,証拠(乙2,3,原告本人)によれば,原告は16才のときにバイクで転倒事故を起こして3日ほど全身打撲で入院したことはあるものの,そのときには椎 と主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。かえって,証拠(乙2,3,原告本人)によれば,原告は16才のときにバイクで転倒事故を起こして3日ほど全身打撲で入院したことはあるものの,そのときには椎間板等に異常がでたとかいうことはなく,牽引等の治療を受けたこともないこと,その後本件事故に至るまでの間に椎間板に関する何らかの症状が出たということもないこと,本件事故の翌日にD接骨院に行ったところ,きちんとした整形外科医に診てもらったほうがいいと言われて,F整形外科に行きレントゲン撮影をしてもらったが骨には異常はないと言われたことが認められ,以上によれば,原告には本件事故前に既往症が存在したと認めることはできない。したがって,被告の同主張は理由がない。 3 争点(3)(D接骨院における治療は不適切であったか。)について(1) 証拠(乙1ないし3,原告本人)によれば,原告は本件事故の翌日である平成9年12月8日から同10年6月9日まで,D接骨院で通院治療を受け(通院実日数121日間)たこと,D接骨院ではきちっとした整形外科医に診てもらったほうがいいと言われて,F整形外科に行きレントゲン撮影をしてもらったが骨には異常はないと言われたので,原告はその日だけ同整形外科に行ったのみで,その後は同整形外科では治療を受けなかったこと,D接骨院では,腰部捻挫については平成10年3月11日治癒し,右肩関節捻挫については同年5月8日治癒と診断されたが,頚部捻挫ついては症状が次第に増悪し,結局その後,頚部椎間板ヘルニア等の診断名でE整形外科病院に通院した後入院治療を受けざるを得なかったこと,D接骨院は原告の同級生であり,原告の勤務時間に支障を来さない時間に治療を受けられたので原告はD接骨院での治療を続けていたことが認められる。 (2) 以上の治療経過に照ら けざるを得なかったこと,D接骨院は原告の同級生であり,原告の勤務時間に支障を来さない時間に治療を受けられたので原告はD接骨院での治療を続けていたことが認められる。 (2) 以上の治療経過に照らせば,D接骨院での治療については医師の同意がない上,原告の頚部についての症状はD接骨院で治療を続けているうちに増悪しており,当初診察を受けたF整形外科ではレントゲン撮影の結果では骨には異常はなかったのであるから,D接骨院での治療の不適切により症状が増悪し,治療が長引いたものと認めざるを得ない。したがって,D接骨院分の治療費54万8460円(甲2)は本件事故と相当因果関係がないと言わざるを得ない。そして,原告がF整形外科での診察を1日受けたのみでその後同外科での治療を受けずに,同級生であるD接骨院での治療を選択して継続し,かつ,D接骨院での治療により症状が増悪し,治療が長引いたことに照らせば原告の損害のうち30パーセントを原告の事情に基づくものとして減額するのが,損害の公平な負担という観点から相当である。 4 争点(4)(原告の損害)について本件事故と相当因果関係の認められる損害は以下のとおりである。(円未満切り捨て)(1) 治療費 45万7060円E整形外科病院分(甲5) 45万7060円(2) 入院雑費 6万3700円49日分,1日1300円の割合で認める。 (3) 休業損害 29万0560円証拠(乙5)によれば,本件事故前である平成8年度の原告の市県民税所得課税証明書による原告の平成7年中の所得は188万0688円,平成 29万0560円証拠(乙5)によれば,本件事故前である平成8年度の原告の市県民税所得課税証明書による原告の平成7年中の所得は188万0688円,平成9年度の同課税証明書による原告の平成8年中の所得は143万3956円であるから,原告の平均所得は165万7322円となり,1日あたりの金額は4540円となる。E整形外科病院に入院していた49日間と原告が通院期間中に休業していたと自認する15日分の合計64日間についての休業損害は29万0560円となる。 原告はD接骨院に通院していた間のうち92日は休業していた旨主張するが,原告本人尋問の結果によっても,原告は勤務時間に支障を来さないために同級生で時間の融通ができるD接骨院での治療を続けたというのであるから,その間に休業していた事実を認めることはできない。 また,原告は,31才の男子全労働者の平均年収を基準にすべき,あるいはその根拠として提出する平成9年度ないし同11年度の所得税青色申告決算書における経費分を実損と見るべきと主張するが,前記申告決算書はいずれも本件事故後に申告されたもので,その裏付けとなる資料にも乏しく,前記市県民税所得課税証明書に照らし,原告の主張は採用できない。 (4) 入通院慰謝料 80万円(5) 逸失利益 35万8760円前記のとおり,原告の所得を165万7322円,労働能力喪失率5パーセント,労働能力喪失期間5年としてライプニッツ係数4・3294により算定すると35万8760円となる。 (6) 後遺症慰謝料 90万円(7) 前記損害の合計は プニッツ係数4・3294により算定すると35万8760円となる。 (6) 後遺症慰謝料 90万円(7) 前記損害の合計は287万0080円となるところ,前記認定のとおり,原告の損害のうち30パーセントを原告の事情に基づくものとして減額するのが,損害の公平な負担という観点から相当であるから,原告が被告に請求し得る損害額は200万9056円となる。 5 損益相殺証拠(甲2,5,乙10の1ないし3)によれば,原告はこれまでに自賠責保険から75万円の支払いを受け,そのほかに被告は原告本人に対し62万2938円,D接骨院に対し54万8460円,F整形外科に対し2万1252円,G脳神経外科に対し7350円を支払っていることが認められる。したがって,前記損害額からこれを控除すると5万9056円となる。 なお,D接骨院に対する54万8460円については,前記のとおり,相当因果関係のある損害と認定していないが,被告が支払った分については被告が不必要な支出を余儀なくされたものであり,損害の公平な負担という観点からこれを控除すべきである。 6 弁護士費用本件訴訟における事案の内容,複雑性,主張等に照らせば,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は1万円が相当である。したがって,原告の損害合計は6万9056円となる。 7 以上によれば,原告の被告に対する請求は,主文掲記の限度で理由があるが,その余は失当として棄却を免れない。 8 よって,主文のとおり判決する(但し,訴訟費用につき仮執行宣言は付さない。)。 佐賀地方裁判所民事部裁判官亀川清長 佐賀地方裁判所民事部裁判官亀川清長

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