- 1 -令和5年12月13日判決言渡令和5年(行コ)第62号相続税更正処分等取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和元年(行ウ)第490号) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は、控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 目黒税務署長が平成29年10月31日付けで控訴人に対してした被相続人 Aの平成26年▲月▲日相続開始に係る相続税の更正処分のうち課税価格1億2714万7000円、納付すべき税額2481万1100円を超える部分を取り消す。 3 目黒税務署長が平成29年10月31日付けで控訴人に対してした被相続人Aの平成26年▲月▲日相続開始に係る相続税の過少申告加算税の賦課決定処 分のうち税額25万4000円を超える部分を取り消す。 第2 事案の概要(以下、略称は、新たに定義しない限り、原判決の例による。) 1 本件は、控訴人が、被相続人A(亡A)から相続により取得した財産のうち、目黒区(住所省略)所在の原判決別紙1物件目録記載の各土地(本件各土地)の時価について、宅地の価額から借地権割合70%相当額を控除して、相続税 の申告及び修正申告をしたところ、目黒税務署長が、本件各土地の2分の1に相当する部分について土地の無償返還に関する届出書が提出されていたことから、同部分の時価は宅地の価額の80%相当額であるとして、相続税の更正処分(本件更正処分)及び過少申告加算税の賦課決定処分(本件賦課決定処分)をしたため、控訴人が同各処分(本件各処分)はいずれも違法であると主張し て、本件更正処分のうち控訴人が修正申告した納付税額を超える部分及び本件- 2 -賦課決定処分のうち控訴人の修正申告に係る過少申告加算税 が同各処分(本件各処分)はいずれも違法であると主張し て、本件更正処分のうち控訴人が修正申告した納付税額を超える部分及び本件- 2 -賦課決定処分のうち控訴人の修正申告に係る過少申告加算税額を超える部分の各取消しを求める事案である。 2 原審は、控訴人の請求をいずれも棄却した。そこで、控訴人が原判決の全部を不服として控訴した。 3 「関係する法令及び通達の定め」、「前提事実」、「本件各処分の根拠に関 する被控訴人の主張」、「争点」及び「争点に関する当事者の主張」は、原判決を以下のとおり補正し、当審における控訴人の補充主張の要旨を後記4のとおり付加するほかは、原判決「事実及び理由」第2の1ないし5に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決4頁10行目の「昭和39年12月10日、」の次に「同日付けの 契約書(甲1。以下「昭和39年契約書」ということがある。)を作成して、」を加え、同頁12行目から同頁13行目にかけての「マンション建設計画に合意した(以下、」を「マンション建設計画について合意した(以下、この合意を「昭和39年契約」ということがある。また、」に改める。 原判決6頁11行目の「別紙2」を「原判決別紙2(以下「別紙2」とい う。)」に改める。 原判決7頁14行目の「別紙3」を「原判決別紙3(以下「別紙3」という。)」に改める。 4 当審における控訴人の補充主張の要旨⑴ 地上権が亡B、控訴人、C社と順次承継取得されたことについて ア地上権の存否や内容は、客観的な要素により判断すべきであって、関係当事者において地上権があると認識していたかどうかという主観的認識を考慮すべきではないし、主観的認識によって影響を受けることもない。また、相続税の課税価格に算入される財産の価 断すべきであって、関係当事者において地上権があると認識していたかどうかという主観的認識を考慮すべきではないし、主観的認識によって影響を受けることもない。また、相続税の課税価格に算入される財産の価値は、当該財産の取得時における客観的な交換価値としての時価によって判断されるべきであって、関 係者の主観的認識によって左右されるべきものではない。原審が、地上権- 3 -の有無及び内容について関係当事者(亡B、亡A、控訴人及びC社)の主観的認識が薄いことを重視し、客観的な要素に基づいて地上権の存否を判断することなく、「仮に(中略)地上権が設定されていたとしても」、経済的な価値がないと結論付けたことは、誤りである。 控訴人及び亡A並びにC社は、法律的知識に乏しい一般市民又は企業で あり、地上権と賃借権の法的性格や違いについての知識を十分に有しておらず、また、地上権取得の前後を通じて、本件マンション低層階の所有のためにその敷地部分を使用している事実に変化はなかったのであるから、控訴人及び亡A並びにC社が、登記記録上、地上権が存することを明確に認識するに至った後も、賃貸借契約と地上権を併存させたり、地代の支払 いを停止しなかったりしたとしても、不思議なことではない。そもそも、地上権を取得したからといって、賃貸借契約を解約したり、地代の支払いを停止したりすべき法的義務があるわけでもない。 したがって、亡A及びC社が、本件マンション低層階の敷地利用権である地上権が登記記録上存在することを知った後も、地上権の存在を前提と する行動を一切採らなかったことを理由に、両者の間では、当該地上権の経済的価値はないものとして取り扱われていたとした原審の判断は、誤りである。 イ Dが亡Bとの地上権設定契約(乙4)に基づいて設定を る行動を一切採らなかったことを理由に、両者の間では、当該地上権の経済的価値はないものとして取り扱われていたとした原審の判断は、誤りである。 イ Dが亡Bとの地上権設定契約(乙4)に基づいて設定を受けた地上権は、本件マンション全体(地下1階から地上10階までの建物全体)を建設し 所有するための地上権であって、本件マンション高層階のみの所有を目的とする地上権ではない。このことは、昭和39年契約において、Dが本件マンション全体の建設主体であることが前提とされていることからも、裏付けられる。上記地上権設定契約2条に基づいて昭和41年8月2日にされた地上権設定登記に係る地上権も、本件マンション全体を建設し所有す るための地上権であって、本件マンション高層階のみの所有を目的とする- 4 -ものではない。そして、上記地上権設定契約3条は、同2条を受けて、「本契約締結のうえは、甲(注:D)は地上権取得の対価として、金22、200、000円也を乙(注:亡B)に支払う。」と定めているから、Dが亡Bに支払った権利金2220万円は、同条で設定登記された地上権すなわち本件マンション全体を建設し所有するための地上権を取得する対価 として支払われたものと解される。上記権利金について、本件マンション高層階の所有を目的とする地上権の対価として支払われたにとどまるとする原審の認定判断は、誤りである。 なお、本件マンション低層階の所有を目的とする地上権について、地代の支払がされていないのは、敷地所有者と地上権の準共有持分権者がいず れも亡Bであったからであり、また、控訴人及びC社が本件マンション低層階を所有するに至った時点以降については、地上権取得の認識がなかったために地代支払いを要するとの認識がなかったからにすぎない。 したがって、 ったからであり、また、控訴人及びC社が本件マンション低層階を所有するに至った時点以降については、地上権取得の認識がなかったために地代支払いを要するとの認識がなかったからにすぎない。 したがって、本件マンション低層階の敷地利用権である地上権の持分の相続財産としての評価は、Dが有していた本件マンション高層階の敷地利 用権である地上権の持分の相続財産としての評価と同じにされるべきである。 C社がDから直接、地上権を承継取得したことについて平成21年1月にされたDからC社への本件各土地に係る地上権の持分2分の1の移転登記手続は、登記原因を贈与とするものであり、同登記手続の 際に改めて金銭の授受がされることはなかったものの、本件においては、本件マンション建設に際し、亡Bが敷地を所有し、かつ、本件マンション低層階をも所有するという、言わば自己借地の特殊事情があり、このために、本来であれば、本件マンション完成時に行われるべきDから亡Bへの地上権の持分の移転登記手続が延引していたにすぎない。そして、本件各土地に設定 された地上権に、区分所有建物部分と不可分一体となって相応の経済的価値- 5 -があることは、本件マンション高層階の居住者らが、高額なマンション分譲ローンを組んでDから分譲を受けたことからも明らかである。本件マンション完成時にDから亡Bに対し地上権設定の対価が支払われており、上記の亡Bの自己借地という特殊事情に鑑みれば、上記支払の中には、後に予定されている地上権の持分移転登記の対価の事前の精算の趣旨も含まれていたと解 するのが、当時の関係当事者の合理的意思解釈といえる。 上記のDからC社への地上権の持分の移転登記の際に、C社が本件マンション低層階の敷地利用権として何らかの経済的価値のある権利を取得したと認 するのが、当時の関係当事者の合理的意思解釈といえる。 上記のDからC社への地上権の持分の移転登記の際に、C社が本件マンション低層階の敷地利用権として何らかの経済的価値のある権利を取得したと認めることはできず、これにより、本件マンション低層階の敷地部分の客観的交換価値が減少したとはいえないとした原審の判断は、誤りである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり原判決を補正し、後記2のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を加えるほかは、原判決「事実及び理由」第3の1ないし4に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決13頁2行目の「第三小法廷決定」の次に「・民集76巻4号411頁」を加える。 ⑵ 原判決15頁8行目の「別表4-1」を「原判決別表4-1」に改める。 ⑶ 原判決16頁7行目の「イ」を「イ」に改め、同頁13行目の「まず」を以下のとおり改める。 「控訴人は、本件マンション建設当時、本件各土地にはDのために地上権が設定され、亡Bには本件各土地の所有権とは別に本件マンション低層階を適法に所有するための敷地利用権が必要であったから、亡BとDの合理的意思解釈により、上記当時、亡Bは、Dから、上記地上権を建物持分割合に応じて譲り受けて、本件各土地上に自己借地権として本件マンション の地上権持分を有することになったとの事実が認められるべきであると主- 6 -張し、被控訴人も、同事実自体を争ってはいない。 しかしながら、自己借地権の制度は、平成4年8月1日に施行された借地借家法15条により、主として政策的な観点から新設された制度であって、亡Bが自らの所有する本件各土地にDのために地上権を設定し しかしながら、自己借地権の制度は、平成4年8月1日に施行された借地借家法15条により、主として政策的な観点から新設された制度であって、亡Bが自らの所有する本件各土地にDのために地上権を設定した昭和40年1月4日及び本件マンションが完成した昭和41年2月頃において は、当該制度自体が存在しなかったものである。当時、亡Bが自己所有の本件各土地上にDのために設定した地上権について、Dからその持分を譲り受けようとしても、同持分は、亡Bがこれを取得すると同時に、混同により消滅する(民法179条1項)こととなるから、亡B(昭和61年▲月▲日死亡)が、生前、上記地上権の持分を取得して保持することはでき なかったものである。したがって、上記の控訴人の主張は、採用することができない(この点に関し、上記のとおり、被控訴人は、亡BがDから本件各土地の地上権持分を譲り受けた事実を争っていないが、上記説示のとおり、亡Bが、生前、自己借地権の制度が存在しないため、Dから地上権の持分を譲り受けてこれを保持することはできなかったことは、裁判 所の専権に属する法律の解釈適用に係る問題であるから、亡Bが上記事実を争っていないという事情により、当裁判所の判断が拘束されることはない。)。 なお、亡BとDとの間で作成された昭和39年契約書(甲1)や昭和40年1月4日付け地上権設定契約書(乙4)には、亡Bの所有する本件マ ンション低層階に係る敷地利用権に関する約定はないものの、上記各契約書の記載内容や、前記前提事実の本件マンションの建設及び地上権設定の経緯等に照らせば、亡B及びDは、亡Bによる本件各土地の本件マンション低層階の敷地としての占有使用について、無権原のものとする意思はなく、何らかの敷地利用権に基づくものとすることを当然の前提と 定の経緯等に照らせば、亡B及びDは、亡Bによる本件各土地の本件マンション低層階の敷地としての占有使用について、無権原のものとする意思はなく、何らかの敷地利用権に基づくものとすることを当然の前提とし、そ の旨を黙示的に合意していたものと解される。そして、上記説示のとおり、- 7 -本件マンション完成当時は自己借地権の制度は存在しなかったことに加えて、亡Bが、本件各土地の地上権者であるDに対し、本件各土地を本件マンション低層階の敷地として使用することの対価を支払っていた形跡は本件全証拠によってもうかがわれないことをも踏まえると、Dは、昭和40年1月4日の地上権設定契約締結時か、遅くとも本件マンションが完成し た昭和41年2月頃までには、亡Bに対し、本件マンション低層階の所有を目的として本件各土地をその敷地として無償で使用収益する権利を黙示的に付与し、これにより、両者間に本件各土地について上記目的による使用貸借契約が黙示的に成立したものと認めるのが相当である。この場合、上記使用貸借契約は、建物所有目的の土地の使用貸借契約であることから、 その終期については建物の目的に従った使用が終了した時に到来するとするのが、契約当事者である亡B及びDの合理的な意思であったと解し、平成29年法律第44号による改正前の民法599条の下においても、同使用貸借契約は、借主である亡Bの昭和61年▲月▲日の死亡により効力を失うことはないと解するのが相当であるとしても、控訴人が亡Bから本件 マンション低層階と共に相続した敷地使用権は、地上権ではなく、せいぜい上記使用貸借契約に基づく使用借権であるということになる。 また」⑷ 原判決17頁11行目の「また」を「さらに」に改め、同頁19行目冒頭から同18頁8行目から同頁9行目にか 、せいぜい上記使用貸借契約に基づく使用借権であるということになる。 また」⑷ 原判決17頁11行目の「また」を「さらに」に改め、同頁19行目冒頭から同18頁8行目から同頁9行目にかけての「認められる。」までを 以下のとおり改める。 「加えて、本件マンション低層階の所有を目的とする地上権の対価としての権利金や地代として、本件各土地を所有していた亡B又は亡Aに対し、何らかの金員が支払われたことを認めるに足りる証拠はない。Dが、亡Bから本件各土地に係る地上権の設定を受けた際、地上権取得の対価として 2220万円の権利金を亡Bに支払ったことは、前記前提事実イのとお- 8 -りであるが、①上記地上権設定に係る地上権設定契約書(乙4)には、当該地上権の目的について、本件マンション高層階の建設所有のためである旨が明記されていること(乙4・第1条)、②前記イのとおり、本件各土地の地上権者であるDと亡Bとの間には、昭和40年1月4日の地上権設定契約締結時か、遅くとも本件マンションが完成した昭和41年2 月頃までには、Dが亡Bに対し本件マンション低層階の所有を目的として本件各土地をその敷地として無償で使用収益させる旨の使用貸借契約が黙示的に成立していたものと認められることに鑑みると、上記の2200万円に、本件各土地を本件マンション低層階の敷地として使用収益する権利の取得の対価が含まれていると解することは、Dと亡Bの合理的意思に沿 うものとはいえないから、上記金員は、専らDが本件各土地を本件マンション高層階の敷地として使用する権利(地上権)を取得することに対する対価として支払われたものと認めるのが、相当である。 以上のとおり、(a) 亡Bの生前は、自己借地権の制度が存在しなかったため、亡Bは、 敷地として使用する権利(地上権)を取得することに対する対価として支払われたものと認めるのが、相当である。 以上のとおり、(a) 亡Bの生前は、自己借地権の制度が存在しなかったため、亡Bは、本件各土地について本件マンション低層階の所有を目的と して地上権の持分を保有することはできず、本件マンション低層階の敷地として本件各土地を使用収益するため、Dから本件各土地の使用借権の付与を黙示的に受けていたにすぎないものと認められること、(b) 亡B、亡A、控訴人及びC社のいずれもが、本件マンション低層階の敷地利用権として地上権が存在するとの認識を有していなかったこと、(c) 亡A及びC 社は、登記記録上は本件マンション低層階の敷地利用権として地上権が存するものとされていることを知った後も、これを前提とした行動は一切採らなかったこと、(d) Dが亡Bに対し、地上権取得の対価として支払った2220万円の権利金には、本件各土地を本件マンション低層階の敷地として使用収益する権利の取得の対価が含まれていると解することは、当事 者の合理的意思に合致しないことからすれば、亡Bが、Dから本件各土地- 9 -の地上権の持分を譲り受け、同持分が亡Bから控訴人へ相続され、さらにはC社に承継されたとする控訴人の主張は、採用することができず、上記地上権の持分の存在によって、本件マンション低層階の敷地部分の客観的交換価値が、同敷地部分の自用地としての価額の80%相当額を下回ることにはならないというべきである。 なお、仮に、控訴人の主張するように、本件マンションの敷地部分にC社を地上権者とする地上権が設定されていたと認めることができるとしても、上記(a) ないし(d) の事実に照らせば、亡AとC社との間では、当該地上権は、Dが亡Bに対して 本件マンションの敷地部分にC社を地上権者とする地上権が設定されていたと認めることができるとしても、上記(a) ないし(d) の事実に照らせば、亡AとC社との間では、当該地上権は、Dが亡Bに対して黙示的に付与した使用借権に由来するものであって、何らかの経済的価値があるものとして取り扱われていたと認定す るのは困難である。」⑸ 原判決18頁14行目冒頭から同頁16行目の「支払っておらず、」までを以下のとおり改める。 「しかし、Dは本件マンション全体の敷地利用権として地上権の設定登記手続を受けているものの、上記地上権の設定契約書(乙4)には、上記地上権は 本件マンション高層階の建設所有を目的とするものであることが明記されていること、Dは、上記地上権設定時か遅くとも本件マンション完成時頃までには、亡Bに対し、本件マンション低層階の敷地として本件各土地を無償で使用収益するための使用借権を黙示的に付与したものと認められること、Dが亡Bに対し地上権設定の対価として支払った2200万円には、本件各土 地を本件マンション低層階の敷地として使用収益する権利の取得の対価が含まれていると解することは、Dと亡Bの合理的意思に沿うものとはいえず、上記金員は、専らDが本件マンション高層階の敷地として本件各土地を使用する権利(地上権)を取得することに対する対価として支払われたものと認められることは、前記イ、、で説示したとおりである。」 ⑹ 原判決18頁19行目の「贈与とされている。」を「贈与とされており、- 10 -上記移転登記手続の際に、C社がDに対し上記地上権持分取得の対価として金銭を支払ったことをうかがわせる証拠もない。」に改める。 2 当審における控訴人の補充主張に対する判断⑴ 地上権が亡B、控訴人、C社と順 の際に、C社がDに対し上記地上権持分取得の対価として金銭を支払ったことをうかがわせる証拠もない。」に改める。 2 当審における控訴人の補充主張に対する判断⑴ 地上権が亡B、控訴人、C社と順次承継取得されたことについてア控訴人は、亡Bが、Dから、本件各土地に係る地上権を建物持分割合に 応じて譲り受け、同地上権の持分が、亡Bから控訴人、さらにはC社に承継されたことを前提として、①地上権の存否及び内容並びに経済的価値は、客観的な要素により判断すべきであって、地上権があると認識していたかどうかなどの関係当事者(本件では亡B、亡A、控訴人及びC社)の主観的認識を考慮すべきではないこと、②Dが亡Bから設定を受けた地上権は、 本件マンション全体(地下1階から地上10階までの建物全体)を建設し所有するためのものであること、③Dが亡Bに支払った権利金2200万円も、上記地上権取得の対価であることからすると、亡Bから控訴人に承継され、さらにC社に譲渡された上記地上権の持分の相続財産としての評価は、Dが有していた本件マンション高層階の敷地利用権である地上権の 持分の相続財産としての評価と同じにされるべきであると主張する。 イしかしながら、亡Bの生前は、自己借地権の制度が存在しなかったため、亡Bは、Dから本件各土地に係る地上権の持分を譲り受けて、これを本件マンション低層階の敷地利用権原として保持することができなかったことは、前記1の引用に係る原判決「事実及び理由」第3の3で説示したと おりであるから、上記アの控訴人の主張は、その前提を欠くものである。 ウまた、仮に、控訴人の主張するように、亡BがDから地上権の持分を譲り受け、同持分が亡Bから控訴人へ、さらにC社へ承継されたと認める余地があるとしても、前記1の引用に係 の前提を欠くものである。 ウまた、仮に、控訴人の主張するように、亡BがDから地上権の持分を譲り受け、同持分が亡Bから控訴人へ、さらにC社へ承継されたと認める余地があるとしても、前記1の引用に係る原判決「事実及び理由」第3の3イで説示したとおり、Dが亡Bから地上権の設定を受けた際にその対 価として支払った2200万円は、Dが本件各土地を本件マンション高層- 11 -階の敷地として占有使用する権利として地上権の設定を受けたことに対する対価であって、上記金員には、本件各土地を本件マンション低層階の敷地として使用収益する権利の取得の対価が含まれていると解することはできず、他に、本件各土地を所有していた亡B又は亡Aに対し、本件マンション低層階の敷地利用権としての地上権の対価として権利金や地代が支払 われていたことを認めるに足りる証拠はないから、Dから亡Bが譲り受けた上記地上権の持分は、経済的価値のあるものとはいえず、その存在によって、本件マンションの敷地部分の客観的交換価値が、同敷地部分の自用地としての価額の80%を下回ることにはならないというべきである。 エこれに対し、控訴人は、上記ア②のとおり主張し、Dが本件マンション 全体の敷地利用権として地上権の設定登記手続を受けていることは、前記前提事実エ及び前記1の引用に係る原判決「事実及び理由」第3の3ウで認定したとおりである。 しかしながら、亡BとDとの間の昭和40年1月4日付け地上権設定契約書(乙4)には、地上権の目的について、本件マンション高層階の建設 所有のためである旨が明記されていること(乙4・第1条)は、前記1の引用に係る原判決「事実及び理由」第3の3イのとおりである。また、亡BとDが本件マンション建設計画等について合意した昭和39年契約に めである旨が明記されていること(乙4・第1条)は、前記1の引用に係る原判決「事実及び理由」第3の3イのとおりである。また、亡BとDが本件マンション建設計画等について合意した昭和39年契約においても、本件マンションは亡BとDが建設し(甲1・1条)、本件マンション低層階に係る建設費は亡Bが、本件マンション高層階に係る建 設費はDが、それぞれ負担し(甲1・2条、3条)、亡Bは、Dが本件マンション高層階を建設所有するため、亡B所有の本件各土地上にDのため地上権を設定するものとされている(甲1・5条)ことが認められる。 これらの約定に現れた、上記地上権の目的についての亡B及びDの認識や上記地上権設定契約における両者の合理的意思に鑑みれば、Dが本件マ ンション全体の敷地利用権として地上権の設定登記手続を受けたことを斟- 12 -酌してもなお、Dが地上権設定契約に基づいて亡Bに支払った2200万円は、専らDが本件マンション高層階の敷地として本件各土地を使用する権利(地上権)を取得することに対する対価として支払われたものと認めるのが、相当である。上記ア②の控訴人の主張は、上記認定を左右するものではない。 オなお、上記ア①の控訴人の主張については、地上権設定契約の存否や内容を認定判断するに当たり、地上権設定契約の契約当事者及びその承継人の認識、言動等を考慮して契約当事者の合理的意思を探究することが許されないと解すべき合理的理由はなく、また、地上権の経済的価値は、地上権設定契約の内容によって定められる地上権の内容に左右されるのである から、地上権の経済的価値を判断するに当たっても、上記契約当事者等の認識、言動等を斟酌することが許されないと解すべき合理的理由もない。 同主張は、上記ウの判断を左右するものではない。 る から、地上権の経済的価値を判断するに当たっても、上記契約当事者等の認識、言動等を斟酌することが許されないと解すべき合理的理由もない。 同主張は、上記ウの判断を左右するものではない。 C社がDから直接、地上権を承継取得したことについてア控訴人は、平成21年1月にされたDからC社への本件各土地に係る地 上権の持分2分の1の移転登記手続は登記原因を贈与とするものであり、同登記手続の際に改めて金銭の授受がされることはなかったものの、本件マンション建設に際し、当時は亡Bが敷地を所有し、かつ、本件マンションの低層階をも所有するという、言わば自己借地の状態であったため、Dから亡Bへの地上権の持分の移転登記手続が延引していたにすぎないから、 本件マンション完成時にDから亡Bに対してされた地上権設定の対価の支払の中には、後に予定される地上権の持分移転登記の対価の事前の精算の趣旨も含まれていたと解するのが、当時の関係当事者の合理的意思に沿う解釈であり、C社が取得した地上権の持分は、経済的価値のある権利である旨を主張する。 イしかしながら、亡BとDとの間で昭和40年1月4日に設定された地上- 13 -権に係る地上権設定契約書(乙4)においては、当該地上権の目的について、本件マンション高層階の建設所有のためである旨が明記されていること、Dが上記地上権の設定の対価として亡Bに支払った2200万円は、専らDが本件マンション高層階の敷地として本件各土地を使用する地上権を取得することに対する対価であると認められ、本件マンション低層階の 敷地として本件各土地を使用する権利の取得の対価は含まれないと解されることは、前記1の引用に係る原判決「事実及び理由」第3の3イ及び上記エで説示したとおりである。 また、仮に 低層階の 敷地として本件各土地を使用する権利の取得の対価は含まれないと解されることは、前記1の引用に係る原判決「事実及び理由」第3の3イ及び上記エで説示したとおりである。 また、仮に、控訴人の主張するように、Dと亡Bが、昭和40年1月4日の地上権設定当時、将来Dから亡Bに地上権の持分を譲渡することを前 提として、その持分譲渡代金をあらかじめ控除して、Dが亡Bに支払う地上権設定の対価を2200万円と定めたのであるとすれば、その旨や控除されるべき持分譲渡代金の金額が上記地上権設定契約に定められてしかるべきところ、上記地上権設定契約の契約書(乙4)には、そのような約定の記載はない。 そうすると、上記アの控訴人の主張は、平成21年1月のDからC社に対する地上権の持分の移転登記に伴って、C社が本件マンション低層階の敷地利用権として何らかの経済的価値のある権利を取得したと認めることはできず、これにより、本件マンション低層階の敷地部分の客観的交換価値が減少したということはできないとした、前記1の引用に係る原判決 「事実及び理由」第3の3ウの判断を左右するものではない。 このほか、控訴人は、当審において、原審が、①本件マンション低層階の敷地利用権である地上権の時効取得の主張を排斥した判断及び②亡AとC社との間の土地賃貸借契約が無効であるから同契約を前提とする本件無償返還届出書も無効であるとの主張を排斥した判断について、事実認定及び法律の 解釈適用の誤りがある旨を主張するが、これらの主張は、上記①及び②の原- 14 -審の判断を左右するものではない。 第4 結論以上の次第で、控訴人の請求は、いずれも理由がないから棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当であって、控訴人の控訴は理由がないからこ 主文 結論以上の次第で、控訴人の請求は、いずれも理由がないから棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当であって、控訴人の控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第11民事部 裁判長裁判官 大竹昭彦 裁判官 武田美和子 裁判官 神野泰一
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