【DRY-RUN】主 文 原告が被告会社の従業員たる地位を有することを確認する。 被告会社は原告に対し、一一〇万八、八〇〇円を支払え。 被告会社は原告に対し、昭和四四年一二月一日からこの裁判確定の日までおよびそ の
主文 原告が被告会社の従業員たる地位を有することを確認する。 被告会社は原告に対し、一一〇万八、八〇〇円を支払え。 被告会社は原告に対し、昭和四四年一二月一日からこの裁判確定の日までおよびその翌日から六か月間毎月一〇日限り一か月五万五、四四〇円の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は全部被告会社の負担とする。 この判決は第二、三項に限り仮りに執行することができる。 事実 一、原告訴訟代理人は、「原告が被告会社の従業員たる地位を有することを確認する。被告会社は原告に対し一一〇万八、八〇〇円および昭和四四年一二月以降毎月一〇日限り一か月五万五、四四〇円の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告会社の負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言を求め、被告会社訴訟代理人は、「原告の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。 二、原告訴訟代理人は請求原因として、つぎのとおり陳述した。 (一) 被告会社は土木工事の請負や石灰石の採掘等を営業内容とする株式会社であるが、原告は昭和三二年一二月一〇日被告会社に入社し、じ来同社の従業員として勤務していたところ、被告会社は昭和四三年二月五日付で原告に対し、同社就業規則第一七条第一項第四号、第一四条第五号(やむをえない事業上の都合による解雇)に該当する事由ありとの理由で解雇する旨の意思表示をした。 (二) しかし、右原告に対する解雇はつぎの理由によつて無効である。 1 本件解雇は会社の就業規則に定める解雇事由に該当する事実がないのになされたものである。 被告会社は原告が会社の労働組合の闘争資金を使い込んだことが原因で同労組が二分されるような組合大会が開かれたり、部下に対して差別的な言辞を弄したりしたため、会社内部が混乱し生産が落ちたと である。 被告会社は原告が会社の労働組合の闘争資金を使い込んだことが原因で同労組が二分されるような組合大会が開かれたり、部下に対して差別的な言辞を弄したりしたため、会社内部が混乱し生産が落ちたとして、右事実が就業規則第一七条第一項第四号、第一四条第五号に該当する旨主張するけれども、右のような事実は全くなく、その他右規則の解雇条項に該当するいかなる事由も存在しない。 2 本件解雇は解雇権を濫用してなされた違法のものである。 被告会社では原告が中心になつて昭和三四年五月三一日労働組合(以下たんに組合という。)が結成され、原告はその初代組合長に就任し、その後も終始組合の要職にあつて積極的に組合活動を行つていたところ、昭和四〇年七月六日被告会社から管理職である採鉱係副係長になるよう要請された。しかし原告は非組合員となつて解雇されることをおそれ、右要請を固辞していたが会社がそのようなことは絶対にしない旨確約したので、これを諒承することにし、同年一〇月一日付で右役職について非組合員となつた。 ところが昭和四二年一一月末頃、社内の組合活動に消極的な訴外A、Bらが、「原告が組合の闘争資金を使い込んでいる。」「部下に対するえこひいきが多い。」として原告を解雇させるための署名運動をはじめた。右Aらは被告会社社長と同郷で右署名運動も会社の支援を受けているのではないかとの疑いがあつたので原告を解雇することに反対する人々も解雇反対の署名運動をはじめた。そしてその結果解雇要求者の署名は採鉱係従業員の過半数に達しなかつた。 しかして、従業員を二分するような事態をひきおこしたのは、原告について事実無根の流言を流布して異常な署名運動をした右Aらの責任であるにもかかわらず被告会社は同人らの責任は不問に付し、かえつて原告を解雇したものであつてその解雇は著しく衡平を失し したのは、原告について事実無根の流言を流布して異常な署名運動をした右Aらの責任であるにもかかわらず被告会社は同人らの責任は不問に付し、かえつて原告を解雇したものであつてその解雇は著しく衡平を失し解雇権を乱用したものというべく、また、仮りに原告に管理職としての適格性に欠ける点があるとしても、あえて解雇の手段に出る必要はなく、降格処分にする方法もあるのであつて、被告会社が解雇という極刑に比すベき処置をもつてのぞんだことは、その処分の種類選択をあやまつた違法があり、無効のものというべきである。 3 本件解雇は憲法第一四条、労働基準法第三条に違反してなされたもので違法である。 原告は日本社会党の党員であるが前段のような経緯によつて解雇されたのは、被告会社が原告が右党員であることを嫌悪したからにほかならず、本件解雇は前記各法条に違反してなされたもので無効である。 (三) 以上のとおり、本件解雇は無効であるから原告は依然として被告会社の従業員たる地位を有するところ、被告会社は原告を解雇したとしてその従業員たる地位を認めない。そして原告は本件解雇の意思表示があつた昭和四三年二月五日まで被告会社から一か月五万五、四四〇円の平均賃金を毎月一〇日に受取つていた。なお原告は被告会社が解雇予告手当として供託していた五万五、四四〇円を昭和四三年四月一一日に受領し、同年三月分の賃金に充当した。 よつて、原告は被告会社に対し請求の趣旨記載のとおりの判決を求めるため本訴請求におよんだ。 三、被告訴訟代理人は請求原因に対する答弁および主張として、つぎのとおり陳述した。 (一) 請求原因第一項の事実は認める。ただし原告が被告会社に入社したのは昭和三二年一二月一一日である。 (二) 同第二項中、原告主張の日に被告会社労働組合が結成され原告がその組合長に就任したこと、原告 ) 請求原因第一項の事実は認める。ただし原告が被告会社に入社したのは昭和三二年一二月一一日である。 (二) 同第二項中、原告主張の日に被告会社労働組合が結成され原告がその組合長に就任したこと、原告が採鉱副係長に昇格したことはいずれも認める。ただし原告が右副係長に昇格したのは昭和四〇年九月一日である。原告が日本社会党員であることは知らない。その余の事実は否認する。 (三) 同第三項中原告が昭和四三年二月五日まで一か月五万五、四四〇円の平均賃金の支払を受けていたことは認めるが、その余は争う。 (四) 本件解雇は、原告につきつぎのような事実があり、それが被告会社就業規則第一七条第一項第四号、第一四条第五号所定のやむをえない事業上の都合によるときに該当するとの理由でなしたものであつて有効である。 1 被告会社は昭和三二年五月一三日石灰石の採掘などを主たる目的として資本金五〇万円で設立された株式会社で、現在約一三〇名の従業員を擁し、その機構は工務課と事務課に分かれ、工務課はさらに採鉱係、剥土係、抗内係、工事係に、事務課は会計係と庶務係に分かれている。 2 ところで原告は昭和三二年一二月一一日被告会社工務課採鉱係所属の採石夫として入社し、その後昭和三六年一〇月一日採鉱班組長となり、さらに昭和四〇年九月一日採鉱係副係長に昇格し、社内での身分も管理職として一級社員となつた。 3 ところが昭和四二年一一月二〇日頃、原告の指揮下で採石に従事している約一〇名の従業員が被告会社代表者Cに面会を求め、原告が副係長として管理職の地位にありながら、労働組合の積立金を使い込んでいること、特定の従業員に対して「今度君を採鉱班の組長にしてやる。」とか、部下に対し、原告の妻が経営している飲食店に「飲みに来なければ賃金をあげてやらんぞ。」とか「採石夫五〇人を扱うのは女房を扱うより こと、特定の従業員に対して「今度君を採鉱班の組長にしてやる。」とか、部下に対し、原告の妻が経営している飲食店に「飲みに来なければ賃金をあげてやらんぞ。」とか「採石夫五〇人を扱うのは女房を扱うよりやさしいんだ。」などと公言し、部下に対するえこひいきも多いなどの苦情を述べて原告を非難し、同人を処置してほしい旨要求してきたが、Cは「それらの事実が真実かどうかもわからないのに処罰することはできない。」旨回答してこれを拒否した。しかしその後もCや関係会社である大分鉱業株式会社などに宛て原告を非難し、その処罰を求める投書がくるようになつたため、被告会社としてもそのまゝ事態を放置できなくなり、Cは同月二五日頃採鉱係長と剥土係長を原告のもとへ使わせ、管理職として部下から非難されることのないように注意した。 4 しかし同年一二月二二日再びAほか一一名がCに面会を求め、前同様原告に対する非難を述べ、原告の配下四八名の採石夫中二四名が署名捺印した「要求書」と題する書面を提出し、「原告のもとでは部下として仕事をすることはできない。原告を処分してもらいたい。そうでなければ署名者全員は被告会社では働けない。」との強硬な申し入れをした。 これに対してCは、使い込みの問題は警察にまかせるべきものであること、従業員らの要求に従つて会社が他の従業員を処分するとなると人事権が会社にあるという前提がくずれること、原告にも名誉、人権があるのだからこれを尊重すべきであること、処分などというより、もつと建設的な方向で事態を解決するように努力してほしいことなどを説き、これを慰憮した。 5 他方Cは事態の円満な解決を望み同月二六日には原告を呼んで右の経過を説明し、右非難の対象になつている事実の真為についてこれをただしたところ、原告は、「積立金の件は副係長になる以前のことであり、それ 他方Cは事態の円満な解決を望み同月二六日には原告を呼んで右の経過を説明し、右非難の対象になつている事実の真為についてこれをただしたところ、原告は、「積立金の件は副係長になる以前のことであり、それも労金係のDに頼んで借りたものである。借りたものは昭和四一年までに返している。」旨弁解し、その余の点については曖昧な答弁であつたが、とにかく部下から非難されるような言動は慎むよう注意を促した。そしてCは翌二七日に処分要求者らと会い、原告の弁解等を説明して、再度円満に解決できるように努力してほしい旨要請した。 6 ところが、昭和四三年一月一三日右処分要求者らはなおもCに対し、同人らが組合内部で独自に調査した結果として、原告は副係長就任後の昭和四一年五月中旬頃から同年六月下旬頃までの間数回に亘つて組合の貯金から合計五万二、〇〇〇円を勝手に引き出し使い込んでいることが明らかになつたとし、あわせて前同様の非難を繰り返して原告の処分を迫つた。 7 そこで被告会社としてもその間の経緯を調査すべく使い込みの件については、当初一組合員が組合の積立金が不足しているらしいということから調査したところ、組合の事務員であるEが、「同人が一万円、原告が四万円使つている。」とその使い込みの事実を認めたこと、そして使い込みの事実が発覚し、その返済を請求された原告は昭和四二年四月一四日労金係に右金員を返済したこと、しかしその後の調査でも、なお使途不明の金があり、それらは原告が組合長時代のものであることが明らかにされたこと、そして、それらの事実が処分要求者らの前記行動の原因となつていることが判明した。 8 以上のような情況の中で、原告排斥の気運は日ましに強くなり、それとともに、右紛争のため欠勤者が相つぎ、ついに会社業務に著しい支障がではじめるに至つた。 本件解雇前後すなわち昭 ことが判明した。 8 以上のような情況の中で、原告排斥の気運は日ましに強くなり、それとともに、右紛争のため欠勤者が相つぎ、ついに会社業務に著しい支障がではじめるに至つた。 本件解雇前後すなわち昭和四三年一月下旬から同年二月上旬にかけての右欠勤者数(原告配下の採石夫四七名中)の推移はつぎのとおりである。 <17669-001><17669-002> 9 被告会社としては、前述のとおり、終始一貫して双方の意見の調整に腐心し事態が円満に解決するように努力するとともに、職場内部が混乱し会社の業務にも支障が生ずるようになつたことを重視し、取締役会を招集して原告の配置転換、降格等による事態の収拾策を検討したが、原告は入社以来採石関係の仕事に従事し他の職種については全く経験がないうえに、他の部門の同僚や部下からも反感をもたれているため、原告の配置転換を考える余地がないこと、管理職の地位にある者が組合の積立金を使い込み、これを発見されて部下から排斥されるというのでは監督者としての資格に欠けるばかりでなく、会社の権威を傷つけたものであつて、原告が会社にとどまつていること自体が被告会社の円滑な業務執行を著しく阻害していることにほかならない、との結論に達した。 10 そこで右のような判断のもとに被告会社としては原告を退社させることとし、まず原告に対しその上司である採鉱係長を通じて円満に退職することを勧告したが、原告がこれに応じなかつたため、被告会社はついにやむをえず、昭和四三年二月五日原告に対し被告会社就業規則第一七条第一項第四号、第一四条第五号に基づき「会社の都合によつて解雇する。」旨通告したものである。 四、原告訴訟代理人は被告会社の主張に対する認否およびその反論としてつぎのとおり陳述した。 (一) 被告会社の主張事実(四)のうち第一、二項は認める。 ( 合によつて解雇する。」旨通告したものである。 四、原告訴訟代理人は被告会社の主張に対する認否およびその反論としてつぎのとおり陳述した。 (一) 被告会社の主張事実(四)のうち第一、二項は認める。 (二) 同第三項はすべて争う。 (三) 同第四項中、被告会社代表者CとAらが原告の問題で会合したことは認めるが、その余の事実は否認する。なお当時原告の配下で働いていた採石夫は全部で四九名であつた。 (四) 同第五項中被告会社主張の日頃Cから原告に注意のあつたことは認めるがその余の事実は否認する。 (五) 同第六項中、Cと原告の処分要求者らが会合したことは認めるが、その余の事実は否認する。 (六) 同第七ないし第一〇項の事実はすべて否認し、その主張は争う。 (七) 原告は組合の労金係を担当していたDから金員を借り受けたことはあるが、それは原告とDの個人的な貸借である。そしてそれが結果的には本来個人に貸し付けるべきでない組合の積立金から出ているとしても、非難さるべきはかかる性質の金を貸し付けたDである。さらに組合においては従前から積立金を組合員個人に貸し付ける慣行があり、右Dもその慣行に従つて全く他意なく公然と貸し付けたものであるから、右組合の慣行が改善されるべきであつてそれは純然たる組合内部の問題である。 しかも本件解雇問題が起つた当時原告は既に右借入金全額をDに返済しており、その経過は明らかになつていたのであつて、原告が非難される筋合はない。 (八) 被告会社は、原告の行為が原因となつて多数の従業員が相ついで欠勤した結果会社の業務に支障をきたした旨主張するけれども、これらの欠勤者はいずれも無断で欠勤したものであるのに、被告会社はその欠勤の原因を追及せず、さらにそれを防止する何らの方策も構ずることなく、漫然とこれを許していたものであつて、かりに業務遂 れども、これらの欠勤者はいずれも無断で欠勤したものであるのに、被告会社はその欠勤の原因を追及せず、さらにそれを防止する何らの方策も構ずることなく、漫然とこれを許していたものであつて、かりに業務遂行に支障が生じたとしても、それはあげて被告会社の責任である。 五、立証(省略) 理由 一、被告会社は昭和三二年五月一三日資本金五〇万円で設立され、従業員約一三〇名をもつて石灰石の採掘、土木工事の請負事業を営んでいること、原告は昭和三二年一二月被告会社に入社し、それ以後採石夫、採鉱班長を経て昭和四〇年九月一日採鉱係副係長として勤務していたところ、昭和四三年二月五日被告会社から同社就業規則第一七条第一項第四号、第一四条第五号所定の会社の都合によるという理由によつて解雇の意思表示を受けたことは当事者間に争がなく、右就業規則第一七条は一般解雇の規定であつて、同条第一項第四号には解雇をなしうる場合として、「已むを得ない事業上の都合に依るとき(事業の継続が不可能となり縮小廃止するとき、又は従業員に過剰を生じたとき)」と規定されていることは成立に争のない乙第一号証によつて明らかである。 そうして右の事実に証人Fおよび被告会社代表者本人Cの各供述によつて真正に成立したものと認められる乙第二、三号証に右各供述、証人G、同H、同I、同Jの各証言を総合すると、つぎの事実を認めるに足りる。 (一) 被告会社の代表者であるCは昭和四二年一一月一八日同会社の剥士係長JからA、I、Hほか従業員の一部の者が原告の行状や態度に不満をもち、その解雇を要求してきている旨の知らせを受け、同年同月二〇日、右従業員ら約一〇名を自宅に呼び寄せてその事情をたゞしたところ、右従業員らは原告が組合の闘争積立金のうちから約六万円を横領費消している事実があり、また同人は好悪の感情 の知らせを受け、同年同月二〇日、右従業員ら約一〇名を自宅に呼び寄せてその事情をたゞしたところ、右従業員らは原告が組合の闘争積立金のうちから約六万円を横領費消している事実があり、また同人は好悪の感情が激しく、えこひいきの強いワンマン的な人柄であるとして、原告の統率下では働くことができないから原告を解雇してもらいたい旨を申し立てた。これに対しCは極力両者が和睦するように勧め、会社側としてもそのとりなしには努力するとの意向を伝えた。 (二) その後さらに同年一二月二二日にいたりCは再び解雇要求派の従業員約七名からの要望で同人らに面会したが、その際にも同人らは若し自分達の要求が容れられなければ自分たちが退職するとまで申し述べて強く原告の解雇を要求するとともに、A、Iらにおいて作成した、要望書と題し、その内容として原告には闘争積立金の横領費消およびストライキ扇動などの不正不信の所為があるので、かゝる者の配下としては勤務できないから適当な処分を求める旨を記載し、かつ組合員の半数にあたる二四名の従業員の記名と押印のある文書を提出した。Cはこの際にも右従業員らに対しお互に手を結ぶよう勧告するとともに自分からも原告に事情をたゞし、もし原告に従業員らの不信を招くような行為のあつた事実があるならば反省を求めるからと極力説得に努めた。 (三) ついでCは同年一二月二六日原告に対し前記のとおり従業員の一部から申し立てられていた不満の原因について事実を問いたゞしたところ同人は闘争積立金の横領費消の点については組合長当時に借り受けたことはあるが昭和四一年四月頃には完済している旨弁解し、ストライキ扇動の点についてはそのようなことはないとのことであり、また上司として部下の従業員の不満を醸し出した言動の点については、その事実を肯定も否定もしなかつたけれども今後反省してや いる旨弁解し、ストライキ扇動の点についてはそのようなことはないとのことであり、また上司として部下の従業員の不満を醸し出した言動の点については、その事実を肯定も否定もしなかつたけれども今後反省してやりたいとの意向を示していた。当時Cとしてはたとえ闘争積立金の横領費消の事実があつたとしてもこれは本来組合内部で解決されるべきことであつて、被告会社の容喙すべきことではないしまた一部の従業員の要求に応じて原告を解雇処分にすることは被告会社の人事権を左右される結果にもなることであり、原告自身も右のような態度を示していたので原告に解雇をもつてのぞむことは全く考えておらず、ひたすら事態が円満裡に落着することを期待していた。 (四) ところが解雇要求派の従業員らはその後も依然として強硬な態度をとり、原告を支持する従業員らとの間に激しい抗争を生じるにいたり、昭和四三年一月二五日から三日間にわたり開催された組合の臨時大会において闘争積立金の処理問題が激しく論議され、さらにこの点に関して原告の責任を追求しようとする意見までも表明されたが、結局同大会においては統一的な結論をみるにいたらず右闘争積立金問題についてはまず事実の調査をすべきことが決議されるにとどまつた。しかし右大会において無記名投票による組合役員の改選が行われた結果原告を支持する派の従業員のみが新役員に選任されたが、このことは従業員間の感情的な対立をさらに激化させ紛争を深刻化させるにいたつた。 (五) その当時被告会社の採石関係の作業場には四八名の従業員が実働し採石の共同作業に従事していたが、右組合の臨時大会が開催された頃から欠勤者が増加しはじめ、そのため能率は低下し採石量も減少し親会社である大分鉱業株式会社からも事態を早期に解決して営業成績を正常に戻すよう指示されることになつた。そこで被告会社では が開催された頃から欠勤者が増加しはじめ、そのため能率は低下し採石量も減少し親会社である大分鉱業株式会社からも事態を早期に解決して営業成績を正常に戻すよう指示されることになつた。そこで被告会社では昭和四三年一月末頃役員会を開催して解決策を討議した結果その方法としては原告を解雇するか、あるいは原告の処分を要求している従業員が退職する結果となるかのいずれかを採らざるをえないものと判断し、それならば原告を解雇することもやむをえないとの結論に達した。そこで同年二月一日C社長は原告に対し、同人の言動に基因して部下の大半から排斥運動を受け、被告会社に紛糾を招いたことの責任をとつて辞職してもらいたい旨勧告したけれども、原告はこれを肯んじなかつたので同月五日に会社の都合によるという理由によつて解雇の意思表示をなした。 以上の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。 二、そこで考えるに、およそ被告会社の前示就業規則第一七条第一項第四号に掲げる「已むを得ない事業上の都合に依るとき」とは、右条項に附記されている事業の継続が不可能となり、縮少、廃止するとき又は従業員に過剰を生じたときなど会社側における企業保持のため労働者の解雇を必要とする客観的な事由がある場合に限らず、労働者に非難さるべき行為があつて、そのため職場の規律を乱し、作業能率を低下させて事業の円滑な運営に支障を生ぜしめた結果、社会通念上該労働者が解雇されてもやむをえないと認められ、かつ、これが他の解雇事由と対比しても不当なものでない場合をも含むものと解するのが相当である。よつてまず右の観点にたつて、以下原告に被告会社の主張するような解雇事由があるか否かについて検討する。 三、ところで、被告会社は原告が採鉱係副係長として管理職の地位にありながら被告会社労働組合の闘争積立金を横領費消し、採鉱係に所属す 告に被告会社の主張するような解雇事由があるか否かについて検討する。 三、ところで、被告会社は原告が採鉱係副係長として管理職の地位にありながら被告会社労働組合の闘争積立金を横領費消し、採鉱係に所属する部下に対して差別的高圧的な言辞を弄したりするなどの行為があり、そのため部下である従業員から原告に対する排斥的気運がたかまり、それを契機として職場内部の対立が激化し、著しく会社の作業能率を低下せしめるに至つたと主張するのである。しかしながら、(一) まず組合の闘争積立金の横領費消の点についてみるに、本件全立証によつてもいまだ原告が組合の闘争積立金を横領費消したとの事実を認めるに足りる証拠はない。 もつとも成立に争のない甲第一号証(闘争積立金問題調査報告書)、証人G、同E、同D、同K、同L、同I、同Hの各証言、および原告本人尋問の結果(たゞし証人I、Hの証言および原告本人の供述については後に措信しない部分を除く)ならびに弁論の全趣旨を総合すると、つぎの事実を認めることができる。 1 原告は昭和四〇年九月一日付で採鉱係副係長に昇格し管理職となつた(このことは当事者間に争がない。)が、その頃組合の大分県労働金庫関係の事務を担当していたDに金を貸してほしい旨申し込んだところ、Dは右金庫からの通常の貸付金の枠内で融資する余裕がなかつたため組合の闘争積立金の中から貸すことにし、原告の求めに応じて前後数回に亘つて合計五万二、〇〇〇円をその都度組合事務員Eに命じて右積立貯金から引き出させて原告に貸し付け、原告はこれを借り受けた。 2 そしてDの指示に従つてその事務を行つたEは事後にその金員が原告に貸し付けられたものであることを知り、右貯金通帳の該当欄に原告の名の一字をとり「友」という符号を付して、その旨を明らかにしていた。 3 右闘争積立金とは従来被告会社従業 つたEは事後にその金員が原告に貸し付けられたものであることを知り、右貯金通帳の該当欄に原告の名の一字をとり「友」という符号を付して、その旨を明らかにしていた。 3 右闘争積立金とは従来被告会社従業員が組織していた大分組労働組合においてその組合員から一定額の金員を徴収し、これを一括して大分県労働金庫に預金して労働争議など不時の場合の資金として準備しているものであるから本来同積立金は組合員等の私的な用途に貸し付けるべきものではないのであるが、同組合では昭和三九年九月訴外Hが労金係を担当していた当時組合員一〇名位が単車を購入するために右金庫から融資を受けたが、その支払を怠るものが出てきたために、同金庫から一般貸付けを受けることが困難になつたという事情があつて、組合員に融資の必要が生じたときには、やむなく右闘争積立金をこれにあてるという取扱いが行われはじめ、つゞいて昭和四〇年九月から右Hの後任としてDが労金係になつたのちにも、右の事態が引きつがれて、闘争積立金からの貸付けがなかば慣行的になり、DにおいてはHに一〇万円、Mに一万二、〇〇〇円、Nに八万円、前記事務員Eに一万円などを右積立金の中から貸し付けていた。 4 ところで原告は昭和三四年五月頃前記組合の結成に参画し、その初代組合長に就任し、それ以後前記管理職に昇格して組合を脱退するまで同組合内にあつて常に指導的役割をはたしていたのであるが、原告がDから前記金員を借り受けたのは原告が管理職になつて一年を経ない間のことであつて、原告においては従来の組合に対する気安さからDに融資の申し込みをし、またDにおいても前記積立金貸し付けの慣行に照らしさしたる疑念ももたずにこれに応じ、自らの判断のもとに前認定のとおり原告に貸付けをした。 5 しかし、原告はおそくとも昭和四二年八月頃までには右借入金をDに返済し ても前記積立金貸し付けの慣行に照らしさしたる疑念ももたずにこれに応じ、自らの判断のもとに前認定のとおり原告に貸付けをした。 5 しかし、原告はおそくとも昭和四二年八月頃までには右借入金をDに返済し、同人はこれを積立金に組み入れて収支決済をすませていた。 6 ところが、それより先昭和四二年二月頃にいたり当時右Dの後任として労金係の事務を担当していたKが従前の闘争積立金帳簿(組合員の積立明細書)と貯金高とを照合していた際貯金高が不足していることに気付き、調査をした結果右積立金の一部が原告を含む数名に貸与されていたことが明らかになつた。 7 その後昭和四二年五、六月頃から七、八月頃にかけて闘争積立金の不足が組合役員や一般組合員に知られるようになり、従前から原告に対して好意を持つていなかつたA、I、Bらは、原告の右借受金について、原告が組合専従事務員Eと共謀して無断で右金員を使い込んだとして原告を排斥する運動をはじめ、従業員内部の感情対立の発端となつた。 以上の事実を認めることができ、証人H、同Iの証言および原告本人尋問の結果中右認定に反する供述部分は措信しない。 (二) つぎに部下に対する差別的、高圧的な言辞の点についてみるに、被告は原告が採鉱係に所属する部下に対して「妻が経営している飲食店に飲みに来なければ賃金を上げてやらんぞ。」とか「採石夫五〇名を扱うのは女房を扱うよりやさしいんだ。」とか、特定の従業員に対して「今度君を採鉱班長にしてやる。」などと公言し、その他差別的、高圧的な言辞を弄した事実があつて、従業員間の不信をかい、対立を生じさせる原因をつくつた旨主張するけれども、本件全立証を仔細に検討してもいまだ原告が右のような発言をし、態度をとつたと認めるに足りる証拠はない。 もつとも、前顕証人H、同Iの証言中には、同僚のO、P、Q、Rらか つくつた旨主張するけれども、本件全立証を仔細に検討してもいまだ原告が右のような発言をし、態度をとつたと認めるに足りる証拠はない。 もつとも、前顕証人H、同Iの証言中には、同僚のO、P、Q、Rらから原告が「酒を持つて来な歩を上げてやらん」とか「うちに飲みに来い、来な歩を上げてやらん」などと言つたと聞き及んでいる旨、さらに組合の争議行為中にストライキをあおり、激励するような発言をし不信感をつのらせた旨の各供述部分があるけれども、その大部分が伝聞に亘るものであり、しかもいずれもその措辞自体曖味であつて、前顕L証人の証言、および原告本人尋問の結果と対比してにわかに措信しがたい。 (三) そうして以上認定した事実に基づいて考えるに、右(一)の原告の行為はおよそ管理職の地位にあるものとしては、労使双方の側から誤解を受けやすく、慎しむべき行為というべきであつて軽率のそしりを免れないけれども前認定の事実にかんがみればその行為自体をもつてはいまだ前示就業規則第一七条第一項各号に列挙されている他の解雇事由と対比して解雇処分をもつて処遇せねばならぬほどしかく重大な責任を追及さるべき行為とは評価しえないものというべきであつて、このことは前段認定のとおりC社長自身が当初原告の右行為をもつて解雇の事由たりうるものと考えていなかつた事実によつても首肯しうるのである。しかして右原告の所為が一部の従業員において問擬された結果遂には従業員間の抗争にまで発展した経過はさきに認定したとおりであるけれども、かゝる紛糾をまねくにいたつた原因は原告の右の軽率な所為によるというよりもむしろ組合においてその性質上他の目的に使用すべきでない闘争積立金を貸し付けるという好ましからぬ慣行があつたことを黙過し、本来組合内部で自主的に改善して行くべき性質の問題であるにもかかわらず、正確な事 ろ組合においてその性質上他の目的に使用すべきでない闘争積立金を貸し付けるという好ましからぬ慣行があつたことを黙過し、本来組合内部で自主的に改善して行くべき性質の問題であるにもかかわらず、正確な事実調査をしないうちに原告が闘争積立金を使用しているという事実のみをことさら取り上げて、軽々に原告が横領費消したとして、同人を排斥する運動をはじめたA、Iら一部の従業員の行動によるところが多いのであつて、職場秩序が混乱した原因を追及するならばむしろ右問題の適正な処理を誤つた同人らの行為の責任がよりきびしく問擬さるべきものといわなければならない。 さらに原告の部下に対する差別的高圧的言辞が従業員内部の対立をひきおこす原因となつた事実を認めるに足りる証拠のないことは(二)に認定したとおりであるが、証人I、同J、同Fの各証言、原告および被告会社代表者各本人尋問の結果ならびに弁論の全趣旨を総合すると、原告はかなり個性が強くいわゆる敵をつくりやすい性格であること、元来酒を好むところから過去において部下を刺激するような発言をすることも多少はあつたと推測されるので、この事実からすると本件における従業員間の紛糾につき原告に全く責任がないものとはなしがたいのであるが、一方前顕L証人の証言、被告会社代表者本人尋問の結果と弁論の全趣旨によれば、原告は有能な採石夫として手腕を発揮し、これが会社の認めるところとなつて管理職に抜てきされたこと、過去において、原告の言動が問題となつて同僚や部下から会社に苦情が持ち込まれたことはなかつたこと、原告が会社に対し経営の補助者として敵対的、非協力的な言動や態度をとつたことはないこと、などが認められるのであつて、多少穏当を欠く言辞があつたとしても、そのことの故をもつて原告を解雇することは社会通念上正当なものということはできない。 し 非協力的な言動や態度をとつたことはないこと、などが認められるのであつて、多少穏当を欠く言辞があつたとしても、そのことの故をもつて原告を解雇することは社会通念上正当なものということはできない。 してみれば、被告会社の職場の秩序を乱し作業能率を低下させ事業の円滑な運営に支障を生ぜしめた原因は原告の非難さるべき行為にあるものとは認められないのであり、たとえ原告の行為、言動に前叙のとおり軽率、不穏当な点がないではないとしてもそのゆえに右混乱の原因をことごとく原告の責任に帰することはいちゞるしく衡平を失し正当性を欠くものというべく、したがつて前記就業規則第一七条第一項第四号の事由に該当するとして原告を解雇することは許されないというべきである。 したがつて本件解雇は右就業規則に違反してなされた無効のものといわなければならない。 四、(一) そうすると原告は現在なお被告会社の従業員たる地位を保有しているものというべきところ、被告会社は昭和四三年二月五日付でなされた解雇の意思表示に基づき、解雇されたものとして同日以降原告をその従業員として取扱わず、就業を拒否していることは原告本人尋問の結果および弁論の全趣旨に徴して明らかである。 そして、原告が昭和四三年二月五日まで被告会社から一か月五万五、四四〇円の平均賃金を受け取っていたことは当事者間に争がなく、弁論の全趣旨によれば毎月一〇日毎に当月分の給料の全額の支払を受けていたことが認められ、また被告会社が解雇予告手当として供託した五万五、四四〇円を昭和四三年四月一一日に同年三月分の賃金として受領したことは原告の自陳するところである。 そうすると、被告会社は原告に対し、本件口頭弁論終結の日である昭和四四年一一月一二日までに履行期の到来している昭和四三年四月分以降昭和四四年一一月分まで前記割合による賃金合 自陳するところである。 そうすると、被告会社は原告に対し、本件口頭弁論終結の日である昭和四四年一一月一二日までに履行期の到来している昭和四三年四月分以降昭和四四年一一月分まで前記割合による賃金合計一一〇万八、八〇〇円を支払う義務があるといわねばならない。 (二) つぎに昭和四四年一一月一三日以降の将来の賃金請求について検討するに、将来の給付の訴はあらかじめその必要がある場合に限つて許されるものであるところ、使用者が労働者を解雇し、労働者がその効力を争つて訴を提起し、裁判所がその解雇を無効と判断して労働者の該会社の従業員たる地位が確認され、紛争が公権的に解決されたときは、使用者においてもただちにこれを尊重して該労働者を従業員として取り扱うべきものであるが、紛争の経過、使用者および労働者の態度などによつて従前の正常な労使関係が回復するまでなお相当の期間が必要とされる場合があり、このような場合には相当の期間を限つて将来の給付の訴を許容するのが相当であると解する。 そこで本件についてこれをみるに、本件紛争の経緯、被告会社の経営の規模、従業員の構成は前認定のとおりであり、前顕I証人の証言、原告本人尋問の結果によれば、原告の解雇を要求していた者のうち、その中心的役割をはたしていた一人であるAをはじめ、M、Pら八名が既に被告会社を退職していること、原告においても、従前のいきさつにこだわらず反省すべき点は反省し、他従業員と協調して就業することを誓つていることが認められ、これらの事情を総合勘案すると、本件の場合少なくともこの判決が確定したのち六か月以内には原告と被告会社間の労使関係が従前どおり正常に復帰することが期待できるものと認められる。 したがつて、原告の将来の賃金を請求する部分は右説示にてらし昭和四四年一二月分からこの裁判確定の日までおよびそ 告と被告会社間の労使関係が従前どおり正常に復帰することが期待できるものと認められる。 したがつて、原告の将来の賃金を請求する部分は右説示にてらし昭和四四年一二月分からこの裁判確定の日までおよびその翌日から六か月間に限つて理由があるというべきである。 五、よつて原告の本訴請求は以上判断した限度において正当であるからこれを認容し、その余の賃金請求の部分は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条但書を、仮執行の宣言につき同法第一九六条第一項を各適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官土井俊文林輝田中観一郎)
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