令和7(わ)130 業務上過失致死被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年11月28日 熊本地方裁判所
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判決文本文2,375 文字)

令和7年11月28日熊本地方裁判所刑事部宣告令和7年(わ)第130号業務上過失致死被告事件判決 主文 被告人を禁錮1年6月に処する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 (犯罪事実)被告人は、熊本市a区bc丁目d番e号所在の医療法人Aクリニックの医師として医療業務に従事していたものであるが、令和2年5月11日午前10時45分頃から同日午前11時頃までの間、前記クリニックにおいて、B(当時56歳)に対し、慢性腰痛症の治療として、同人の腰部に硬膜外針を穿刺した上、同硬膜外針内に脊麻針を挿入し、同脊麻針を通じて同人の脊髄くも膜下腔に局所麻酔薬を注入する脊髄くも膜下麻酔の施術、及び、前記硬膜外針から前記脊麻針を抜き、穿刺した状態の同硬膜外針を通じて同人の腰部硬膜外腔に混合麻酔薬を注入する硬膜外麻酔の施術、続いて、脳脊髄液減少症の治療として、同人から採血した静脈血が入ったシリンジを前同様穿刺した状態の前記硬膜外針に装着し、同人の腰部硬膜外腔に同静脈血を注入して硬膜の脊髄液の漏出箇所を血のりで塞ぐ硬膜外自家血療法の施術を行う治療計画の下、前記硬膜外針及び前記脊麻針を通じて同人の腰部に局所麻酔薬である「2%カルボカイン注」約0.6ないし約0.7cc、混合麻酔薬である「アナペイン注2mg/ml」及び「2%カルボカイン注」等約10cc並びに同人の静脈血約20ccを各注入した上、経過観察のため同人を同クリニック内のベッドに横臥させていたところ、同日午前11時5分頃、同所において、同人が大声で叫びながら身体を激しく動かし、臀部にこれまで訴えたことのない強い痛みを訴えるなどしたため、これに対応するに当たり、前記各麻酔薬を注入された同人に呼 吸抑制作 頃、同所において、同人が大声で叫びながら身体を激しく動かし、臀部にこれまで訴えたことのない強い痛みを訴えるなどしたため、これに対応するに当たり、前記各麻酔薬を注入された同人に呼 吸抑制作用を伴う鎮静薬等を投与すれば更なる呼吸抑制及び血圧低下状態等を惹起させる危険性があったのであるから、自ら又は看護師をして、前記Bに対してパルスオキシメータ及び血圧計を各装着してその血中酸素飽和度、脈拍、血圧等の状況を適切に把握・管理すべきはもとより、血中酸素飽和度及び血圧の低下等が認められた場合には、直ちに同人に酸素マスクを装着するなどして呼吸管理を行うとともに救急搬送を要請するなどの適切な措置を講じるべき業務上の注意義務があるのに、これらを怠り、同日午前11時10分頃から同日午前11時35分頃までの間、同所において、自ら又は看護師をして、前記Bに対してパルスオキシメータ及び血圧計を各装着せず、その血中酸素飽和度、脈拍、血圧等の状況を把握・管理しないまま、漫然と、同人の静脈に注射針を穿刺して呼吸抑制作用を伴う鎮静薬である「セルシン注射液10mg」1アンプルを注入するとともに、看護師をして前記Bの肛門に呼吸抑制作用を伴う鎮痛剤である「レペタン坐剤0.2mg」1個を挿入させ、引き続き、脚部の痙攣及び尿失禁の反応が現れた同人の仙骨部に注射針を穿刺して呼吸抑制作用及び血圧低下作用を伴う局所麻酔薬である「2%カルボカイン注」5ccを注入するとともに、看護師をして前記Bの肛門に血圧低下作用を伴う鎮痛剤である「ボルタレンサポ50mg」1個を挿入させた上、この間、血中酸素飽和度及び血圧の低下等を看過して呼吸管理を行わず、救急搬送を要請しなかった一連の過失により、同日午前11時35分頃、前記Bをチアノーゼに陥らせ、よって、同日午後0時45分頃、救急搬送先の同市 酸素飽和度及び血圧の低下等を看過して呼吸管理を行わず、救急搬送を要請しなかった一連の過失により、同日午前11時35分頃、前記Bをチアノーゼに陥らせ、よって、同日午後0時45分頃、救急搬送先の同市f区gh丁目i番j号のC病院において、同人を全脊髄麻酔に伴う急性呼吸不全により死亡させたものである。 (量刑の理由)被告人は、被害者に対する脊髄くも膜下麻酔等の施術後、間もなく同人から強い痛みを訴えられたのに対し、呼吸抑制作用や血圧低下作用を伴う鎮静薬等を投与したところ、このような処置をすれば前記脊髄くも膜下麻酔等の効果に加えて更なる呼吸抑制及び血圧低下状態等を惹起させる危険性があったにもかかわらず、不注意により被告人自らパルスオキシメータ及び血圧計の装着を確認したり看護師に対し 指示するなどして血中酸素飽和度等の測定を行わずに処置を続け、その後も自身において救命可能であると過信し、早期に救急搬送要請をしなかったものであり、医師として基本的かつ重要な注意を怠ったものといわざるを得ない。生じた結果は重大であり、信頼していた医師の過失により、突如その生命を絶たれることになった被害者の無念は察するに余りある。被害者の遺族が、心情意見陳述等において、虚しさ、悔しさ、怒りといった感情を述べるのも当然である。したがって、被告人の刑事責任は軽くない。 その上で、同種事案の量刑傾向に加え、被告人に前科はなく、被告人が罪を認めて反省の態度を示していること、今後、被害者の遺族との協議を踏まえた相当な賠償金が支払われる見込みがあること等も考慮して、被告人に対しては主文の刑に処してその責任を明らかにした上で、刑の執行を猶予することとした。 (求刑:禁錮1年6月)令和7年11月28日熊本地方裁判所刑事部裁判長裁判官中田幹 ては主文の刑に処してその責任を明らかにした上で、刑の執行を猶予することとした。 (求刑:禁錮1年6月)令和7年11月28日熊本地方裁判所刑事部裁判長裁判官中田幹人裁判官鈴木和彦裁判官若松亮太

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