昭和40(ネ)1048 請負金請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和41年3月31日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件控訴を棄却する。      控訴費用は、控訴人の負担とする。          事    実  控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人は、控訴人Aに対し金三〇万円、控 訴

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判決文本文5,517 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は、控訴人の負担とする。 事実 控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人は、控訴人Aに対し金三〇万円、控訴人Bに対し金一〇万円、控訴人Cに対し金二〇万円および右各金員に対する昭和三一年七月一九日以降完済に至るまでの年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決および仮執行の宣言を求め、被控訴代理人は主文第一項と同旨の判決を求めた。 当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、援用および認否は、左記を加えるほか、原判決の事実摘示と同一であるから、これをとこてに引用する。 控訴代理人は、次のとおり主張した。 一、 控訴人Aと訴外亡Dとが訴外Eより譲渡を受けた金六〇万円の債権は、右両名の間で別段の取り定めをしなかつたので、民法第四二七条の規定により平等の割合で分割されたものである。原判決の事実摘示欄第二の三項中「準共有」という字句は、かかる趣旨のものである。 二、 被控訴人は、訴外Fが被控訴人を代表する権限を有しないことを理由に上記債権譲渡を承諾する権限がなかつた旨主張するが、右Fは当時被控訴人の理事であり、しかも新川施工区の工区長として右施工区の土地改良工事一切を指揮監督していたので、控訴人AおよびDは、右Fが被控訴人を代表する権限を有するものと信じていたのであつて、被控訴人の定款に理事長のみが代表権を有する旨の規定があることを知らなかつた。理事長の規定並びに理事長が被控訴人を代表する旨の定款の定めは組織内の規定であるから、かかる制限は善意の第三者である上記控訴人らには対抗できないものである。従つて、Fが上記債権譲渡を異議なく承諾している以上、その承諾前すでに被控訴人がEに右債務の弁済をなしであつたとしでも、 から、かかる制限は善意の第三者である上記控訴人らには対抗できないものである。従つて、Fが上記債権譲渡を異議なく承諾している以上、その承諾前すでに被控訴人がEに右債務の弁済をなしであつたとしでも、これをもつて譲受人である控訴人らに対抗しえず、その支払を免れることはできない。このことは、民法第四六八条第一項の規定によつて明らかである。 三、 仮りにFの承諾が有効てなかつたとしても、譲渡人であるEより被控訴人に債権譲渡の通知をなした。右通知が確定日附のある通知でなかつたとしても、その通知を受けた後の譲渡人に対する事由をもつては、控訴人らに対抗できない筋合である。被控訴人は、Eに対する債務を昭和二九年五月二四日までに完済していると主張するが、この五月二四日というのは上記債権譲渡の前日に該当し、この主張は明らかに支払責任を回避せんがためのものにほかならない。このことは、昭和三〇年四月一八日に五回にも分けて金七二九、四二〇円の支払をなしていることから明らかであつて、この支払金はいずれも債権譲渡の通知の前の昭和二八年中の契約に基づく支払である。従つて、譲渡の通知の前はともかくとして、その後の支払を譲渡人であるEになしているかぎり、そのことをもつて控訴人らに対する支払義務を免れることはできない。 被控訴代理人は、次のとおり主張した。 一、 控訴人らは被控訴人の定款に理事長のみが代表権を有する定めがあることを知らなかつたから、かかる定款の規定は善意の第三者である控訴人らに対抗し得ない旨主張する。しかし、土地改良法第一九条は「理事は定款の定めるところにより土地改良区を代表する」と規定し、土地改良法の法律自体の中で代表者の定めをなさず、すべて定款の定めるところによつて代表者が定まる旨規定されている。この点、民法の法人がその第五三条において「理事ハ総テ法 地改良区を代表する」と規定し、土地改良法の法律自体の中で代表者の定めをなさず、すべて定款の定めるところによつて代表者が定まる旨規定されている。この点、民法の法人がその第五三条において「理事ハ総テ法人ノ事務ニ付キ法人ヲ代表ス」と規定されているのと基本的に異なるのである。土地改良法は、さらにその第三五条において民法第四四条第一項、第五〇条、第五四条、第五五条および第六六条の規定を準用したにもかかわらず、殊きらに民法第五三条の規定を準用していない。これは農業協同組合法がその第四五条において、さらにまた消費生活協同組合法がその第四二条において、いずれも民法第五三条、第五四条の規定を準用しているのと対比すると、土地改良区の場合は明らかに理事全員が一般的に代表権限を有するのではなく、定款によつて始めて代表権限を有するものが定まるのである。 従つて、土地改良区の定款によつて理事長一人を改良区の代表者と定めることは、定款によつて代表権者を創設したことで、理事の一般的な代表権を制限したものではない。従つて、控訴人ら主張のごとく、被控訴人の定款によつて理事長のみが代表権を有するものであるということを控訴人らが知らなかつたとしでも、被控訴人はこれに対抗し得るものである。 そうだとすると、被控訴人を代表する権限を有しないFが、たとえ上記債権譲渡を了承したとしても、被控訴人が右譲渡を承諾したことにならないし、またその通知を受けたことにもならない。従つて、民法第四六八条に該当する余地もない。 二、 被控訴人が甲第一号証のごとき書面の存在すること、またその内容を知つたのは本件訴訟が提起されたことによるものであつたが、仮りに控訴人らの主張するように、昭和二九年五月二五日に被控訴人に上記債権譲渡の通知がなきれたとしでも、被控訴人は同月二四日すでにEに対し全債務を支払つ 本件訴訟が提起されたことによるものであつたが、仮りに控訴人らの主張するように、昭和二九年五月二五日に被控訴人に上記債権譲渡の通知がなきれたとしでも、被控訴人は同月二四日すでにEに対し全債務を支払つてしまつており、同月二五日にはEは被控訴人に対し譲渡すべき債権を有していなかつたものである。なるほど控訴人ら主張のように、乙第一八号証乃至第二二号証によれば、昭和三〇年四月一八日被控訴人はEに全七二九、四二〇円の支払をしているようにみえるが、現実には上記昭和二九年五月二四日に全債務を完済したところ、その後Eの工事に未竣工があつたり、過払分があることが判明し、その操作のために書面上支払つたごとく作成されたもので、真実債権があつて支払われたものではないのである(乙第二三号証、第二四号証)。従つて、譲渡の通知後に譲渡人であるEに支払つたということはない。 三、 控訴人らは、Fが被控訴人の理事であり、新川区の施工区長であつたのであるから、たとえ代表権がなかつたとしでも、工区内の工事施工の交渉、契約、承認等についてFのなした行為については被控訴人が責任を負うべきであると主張する。しかし、たとえ理事であつても、施工区長であつても、その工事施工の交渉、契約、承認等はいずれも改良区の代表者である理事長がなさなければならないものであり、実際にもそうしできたものである。単なる理事または施工区長がなしていたものではない。施工区自体は改良区内部においてはともかく、外部に対して独立性を有するものではないし、もちろん人格を有するものではない。また土地改良法には商法第二六二条に相応するような規定も存在しない。然るところ、甲第一号証の記載は新川区の施工区長Fの名でなされたものであるから、被控訴人において責任を負うべき筋合ではない。控訴人ら主張のごとくであるとすれば、改良区 相応するような規定も存在しない。然るところ、甲第一号証の記載は新川区の施工区長Fの名でなされたものであるから、被控訴人において責任を負うべき筋合ではない。控訴人ら主張のごとくであるとすれば、改良区において代表権者を定めた法律的意義が全くなくなつてしまうことになり、首肯することのできないものである。 証拠として控訴代理人は、当審証人Fの証言および当審における控訴人Aの本人尋問の結果を各援用した。 理由 原審証人E、原審および当審における証人Fの各証言によつて真正に成立したものと認められる甲第一号証と右証人E、同Fの各証言、原審および当審における控訴人Aの本人尋問の結果によれば、Eが昭和二九年五月二五日被控訴人に対する資材納入および新川施工区の工事請負代金の内金六〇万円の債権を控訴人Aおよび亡Dの両名に譲渡したこと、および同日被控訴人の理事で、新川施工区の区長であるF(この事実ほ、当事者間に争がない)にその旨通知したところ、Fはこれを異議なく承諾したことが認められ、他に右認定を動かすことのできる証拠はない。 控訴人らは、右Fが被控訴人の理事で、新川施工区の区長であつたことから当然被控訴人を代表する権限があるものと信じて、上記債権譲渡の通知をしたのであつて、Fもこれを異議なく承諾した以上、善意の第三者である控訴人AおよびDは右譲渡を被控訴人に対抗できる旨主張するのに対し、被控訴人はこれを争い、土地改良法第三五条が準用している民法第五四条の規定は、土地改良区の代表者である理事の代表権に制限が加えられた場合にのみ適用されるべきものであるから、本件のように被控訴人の代表者でない理事のFに対する債権譲渡の通知又は承諾についてはその適用がないと主張するので、次に判断する。 <要旨>土地改良法第一九条第一項は「理事は、定款 きものであるから、本件のように被控訴人の代表者でない理事のFに対する債権譲渡の通知又は承諾についてはその適用がないと主張するので、次に判断する。 <要旨>土地改良法第一九条第一項は「理事は、定款の定めるところにより、土地改良区を代表する。」旨規定する。</要旨>従つて、理事は当然には土地改良区を代表する権限を有せず、定款で土地改良区を代表するものと定められた理事のみが代表権を有するものと解するを、相当とする。このことは、同法第三五条が民法第五三条の規定を準用していないことに徴しても亦、明らかである。ところで土地改良法第三五条は民法第五四条の規定を準用しているが、右は民法第五四条の文言から明らかなように、理事の代表権に一定の制限を加えた場合のことを指称しているのであつて、代表権を有しない理事については、同条適用の余地は全然存しないのである。 成立に争のない乙第一号証(三条郷土地改良区定款)によれば、理事の互選によつて定められた理事長が被控訴人の三条郷土地改良区を代表するものと定められていることが認められ、Fが上記債権譲渡の当時理事長でなかつたことは、当事者間に争がないから、Fが上記債権譲渡を承諾したとしでも被控訴人にその効力が及ふ筋合はないものといわなければならない。控訴人らはFが被控訴人を代表する権限を有するものと信じていたから、土地改良法第三五条、民法第五四条の規定によつて右譲渡を被控訴人に対抗できる旨主張するけれども、上段判示のとおり、かような場合、右規定の適用をみる余地はないから、控訴人らの右主張は理由がなく、採用することができない。 控訴人らは、仮りに右承諾が無効だとしても昭和二九年五月二五日Eから被控訴人に対し上記債権譲渡の通知をしたから(甲第一号証)、右通知後被控訴人がEになした金七二九、四二〇円の支払は控訴人らに い。 控訴人らは、仮りに右承諾が無効だとしても昭和二九年五月二五日Eから被控訴人に対し上記債権譲渡の通知をしたから(甲第一号証)、右通知後被控訴人がEになした金七二九、四二〇円の支払は控訴人らに対抗できない旨主張するが、Eが被控訴人の代表者である理事長に右通知をした旨を認めるに足る証拠はない。前顕甲第一号証(権利譲渡契約書)には上記債権譲渡の通知先として「三条郷土地改良区理事長G殿」という記載があるが、上段判示のとおりEは上記債権譲渡をFに通知したにとどまるのであるから、かかる記載があるからといつて、そのことから直ちに被控訴人の理事長に通知したことにならないことは、いうまでもない。 そうだとすれば、上記債権譲渡の承諾又は通知の有効なことを前提とし、被控訴人に対し金三〇万円およびこれに対する履行期後で本件訴状送達の日の翌日であること本件記録上明らかな昭和三一年七月一九日以降完済に至るまての民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める控訴人Aの本訴請求、回じく金一〇万円およびこれに対する上記昭和三一年七月一九日以降完済に至るまでの民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める控訴人Bの本訴請求、同じく金二〇万円およびこれに対する上記昭和三一年七月一九日以降完済に至るまでの民法所定の五年分の割合による遅延損害金の支払を求める控訴人Bの本訴請求は、いずれもその余の点について判断するまでもなく理由がないから失当として棄却すべきである。従つて、これと同趣旨に出た原判決は正当である。 よつて、控訴人らの本件控訴は、上記のとおり理由がないから民事訴訟法第三八四条第一項の規定により棄却することとし、控訴費用の負担につき同法第九五条、第八九条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官村松俊夫裁判官兼築義春裁判官 民事訴訟法第三八四条第一項の規定により棄却することとし、控訴費用の負担につき同法第九五条、第八九条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官村松俊夫裁判官兼築義春裁判官吉野衛)

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