平成26年11月4日判決言渡平成26年(行ケ)第10046号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成26年10月9日判決 原告株式会社昇寿堂 原告ザイコンジャパン株式会社 上記両名訴訟代理人弁理士保立浩一 被告特許庁長官指定代理人藤本義仁同吉野公夫同黒瀬雅一同井上茂夫同内山進 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求特許庁が不服2013-14002号事件について平成25年12月26日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯(以下の事実は,末尾に証拠を記載したものを除き,当事者間に争いがない。)原告らは,平成20年3月21日,発明の名称を「ダイヤグラムリーフレット及びその作成方法」として,特許出願(特願2008-73491号。以下「本願」という。)をした。 原告らは,平成24年10月26日付けで手続補正書(甲4)を提出して特許請求の範囲及び明細書について補正をしたが,平成25年6月11日付けで拒絶査定を受けた。 原告らは,同年7月20日付けで拒絶査定不服審判(不服2013-140 手続補正書(甲4)を提出して特許請求の範囲及び明細書について補正をしたが,平成25年6月11日付けで拒絶査定を受けた。 原告らは,同年7月20日付けで拒絶査定不服審判(不服2013-14002号)を請求するとともに,手続補正書(甲7)を提出して特許請求の範囲及び明細書について補正をしたが,同年10月1日付けで拒絶理由通知(甲8)を受けた。 原告らは,同月23日付けで手続補正書(甲9)を提出して特許請求の範囲及び明細書について補正をしたが,特許庁は,平成25年12月26日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,平成26年1月14日,その謄本を原告らに送達した。 本件は,原告らが上記審決の取消しを求めたものである。 2 特許請求の範囲の記載平成25年10月23日付け手続補正書(甲9)による補正後の特許請求の範囲(請求項の数は10である。)の請求項7の記載は,次のとおりである(以下,請求項7記載の発明を「本願発明」という。また,本願の明細書(甲3,甲4,甲7,甲9)を「本願明細書」という。)。 「交通機関の運行計画図を表したダイヤグラムリーフレットであって,交通機関の乗務員が乗務に際して携帯し,必要に応じて開いて参照することが予定されているダイヤグラムリーフレットであり,合成樹脂より成るとともに折り 畳み可能な一枚の媒体シートにダイヤグラムが印刷されて作成されたものであり,一枚の媒体シートは貼り合わせ箇所の無いものであって,その一枚の媒体シートの両面に時間軸である横軸を連続させた一つのダイヤグラムが印刷されていて,一つの路線の一日のうちの前半のダイヤグラムが表面に印刷され,裏面に後半のダイヤグラムが印刷されており,開くことができる状態で折り畳まれていることを特徴とするダイヤグラムリーフレット。」 3 審決の の路線の一日のうちの前半のダイヤグラムが表面に印刷され,裏面に後半のダイヤグラムが印刷されており,開くことができる状態で折り畳まれていることを特徴とするダイヤグラムリーフレット。」 3 審決の理由 審決の理由は別紙審決書写し記載のとおりであり,要するに,本願発明は,実願昭58-88214号(実開昭59-194773号)のマイクロフィルム(甲1。以下「刊行物1」という。)に記載された発明(以下「引用発明1」という。)及び特開2000-318347号公報(甲2。以下「刊行物2」という。)記載の発明(以下「引用発明2」という。)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 審決が認定した引用発明1及び引用発明2の内容,本願発明と引用発明1の一致点及び相違点は,次のとおりである。 ア引用発明1の内容「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面を折り畳んだ状態がポケット版の手帳サイズであって,縦軸に始点からの距離をとり,横軸に時刻をとり,上りと下りを1枚の紙面の表面と裏面に別々に印刷した電車,列車等の運行ダイヤグラム。」イ引用発明2の内容「ポリプロピレン製の合成紙のロール紙からなる長尺紙を蛇腹状に折り畳んだ折り本であって、長尺紙に両面印刷することにより、左右のページに跨るレイアウトでも印刷が折り目でずれることがない折り本。」ウ本願発明と引用発明1の一致点 「交通機関の運行計画図を表したダイヤグラムリーフレットであって,携帯し,必要に応じて開いて参照することが予定されているダイヤグラムリーフレットであり,折り畳み可能な一枚の媒体シートにダイヤグラムが印刷されて作成されたものであり,一枚の媒体シートは貼り合 って,携帯し,必要に応じて開いて参照することが予定されているダイヤグラムリーフレットであり,折り畳み可能な一枚の媒体シートにダイヤグラムが印刷されて作成されたものであり,一枚の媒体シートは貼り合わせ箇所の無いものであって,その一枚の媒体シートの両面に時間軸である横軸が印刷されていて,開くことができる状態で折り畳まれているダイヤグラムリーフレット。」エ本願発明と引用発明1の相違点相違点1本願発明は,「交通機関の乗務員が乗務に際して携帯」するものであるのに対し,引用発明1は,その点につき明らかでない点。 相違点2ダイヤグラムリーフレットが,本願発明では,「合成樹脂より成」るものであるのに対し,引用発明1は,その点につき明らかでない点。 相違点3本願発明は,「一つの路線の一日のうちの前半のダイヤグラムが表面に印刷され,裏面に後半のダイヤグラムが印刷されて」いるものであるのに対し,引用発明1は,上りと下りを1枚の紙面の表面と裏面に別々に印刷したものである点。 第3 原告ら主張の取消事由審決には,引用発明1の認定の誤り(取消事由1),本願発明と引用発明1の一致点の認定の誤り(取消事由2),本願発明と引用発明1の相違点の認定の誤り(取消事由3),本願発明と引用発明1の相違点の判断の誤り(取消事由4)があり,これらの誤りは審決の結論に影響を及ぼすものであるから,審決は違法であり,取り消されるべきである。 1 取消事由1(引用発明1の認定の誤り) 審決は,引用発明1を「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面を折り畳んだ」ものと認定している。審決がこのような認定をしたのは,刊行物1の第1図及び第2図に,貼り合わせ箇所を示す線が描かれていないためであると推測される。 しかし,特許 箇所の無い1枚の紙面を折り畳んだ」ものと認定している。審決がこのような認定をしたのは,刊行物1の第1図及び第2図に,貼り合わせ箇所を示す線が描かれていないためであると推測される。 しかし,特許図面は,発明を理解するための補助的なものであって,発明に係る物品を厳密に表したものではない。 したがって,上記各図面に貼り合わせ箇所を示す線が描かれていないからといって,引用発明1を「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面を折り畳んだ」ものと認定することはできない。 そして,「列車ダイヤのひみつ定時運行のしくみ」と題する文献(平成17年2月18日発行,甲16。以下「甲16文献」という。),「鉄道の百科事典」と題する文献(平成24年1月30日発行,甲17。以下「甲17文献」という。)及び「鉄道ダイヤのつくりかた」と題する文献(平成24年3月20日発行,甲18。以下「甲18文献」という。)の記載によれば,本願の出願時において,ダイヤグラムリーフレットは,複数の紙に分割して印刷し貼り合わせて使うのが技術常識であったといえる。 したがって,刊行物1の運行ダイヤグラムは,貼り合わせ箇所を示す直線は図示省略されているものの,複数の紙に分割して印刷し貼り合わせたものと認定されるべきであり,審決の上記認定は誤りである。 被告は,①特開平8-204926号公報(以下「乙1公報」という。),特開2001-322299号公報(以下「乙2公報」という。)及び特開2002-144549号公報(以下「乙3公報」という。)を引用して,一般的な印刷において,長尺紙やA0版用紙に印刷することは,本願の出願時において周知技術であったとし,また,②乙6ないし乙8を引用して,本願の出願時において,一枚紙の媒体シートに印刷されたダイヤグラムリーフレットは既に存在していたとする に印刷することは,本願の出願時において周知技術であったとし,また,②乙6ないし乙8を引用して,本願の出願時において,一枚紙の媒体シートに印刷されたダイヤグラムリーフレットは既に存在していたとするのが妥当であるとして,刊行物1の運行ダ イヤグラムが,複数の紙に分割して印刷し貼り合わせたものと認定されなければならない理由はないと主張する(後記第4の1)。 しかし,上記①の点については,乙1公報,乙2公報及び乙3公報は,パソコンなどのコンピュータに接続されて使用されるプリンタの技術分野に属するものであり,そのような技術分野において,長尺紙やA0版の紙が使用され得ることを示しているにすぎない。これに対し,ダイヤグラムリーフレットの技術分野においては,ダイヤグラムリーフレットが非常に横長のものであることから,一回の印刷で作成しようとすれば,版銅が非常に大口径になるという特有の課題が存在する。このような課題を考慮せず,単に短絡的に印刷物として共通していることをもって他の印刷技術の分野における事項が適用可能であるとすることは誤りである。 上記②の点については,まず,乙7に係る物件(西鉄電車時刻表)が貼り合わせ箇所の無い一枚の媒体シートから成るものであるかどうかは,乙7からは不明である。仮に,乙7に係る物件が貼り合わせ箇所の無い一枚の媒体シートから成るものであるとしても,乙7は本願の出願後に作成されたものであり,本願の出願時において公知ないし周知のものではないから,乙7は,本願の出願時において,貼り合わせ箇所の無い一枚の媒体シートから成るダイヤグラムリーフレットが存在していたことの証拠にはなり得ない。 また,乙8(ローカル私鉄列車ダイヤ25年東日本編)163頁のダイヤ図は,車両用ダイヤ図(車両運用図表)であって,ダイ から成るダイヤグラムリーフレットが存在していたことの証拠にはなり得ない。 また,乙8(ローカル私鉄列車ダイヤ25年東日本編)163頁のダイヤ図は,車両用ダイヤ図(車両運用図表)であって,ダイヤグラム(列車運行図表)ではない。すなわち,乙8のダイヤ図が掲載されている文献の164~165頁(甲29(乙8と同一文献))には,天竜浜名湖鉄道の平成15年10月のダイヤ図が示されているが,これは,表題にあるとおり,車両運用図表であって,列車運行図表ではない。乙8の文献の目的は,新旧のダイヤ図を比較してダイヤの変遷を振り返ることにあるから,乙8のダイヤ図も,甲29のダイヤ図と同様,車両運用図表であることは明らかである。車両運 用図表すなわち車両運用ダイヤ図は,車両の運用計画を示したものであり,車両の検査や清掃を行う場所(車両基地)において使用されるものである(甲27(甲17と同一文献)195頁)から,乗務員が乗務に際して携帯することが予定されているダイヤグラム(列車運行図表)ではない。したがって,乙8のダイヤ図も,本願の出願時において,貼り合わせ箇所のない一枚の媒体シートから成るダイヤグラムが存在していたことの証拠にはなり得ない。 被告は,刊行物1の第1図及び第2図の運行ダイヤグラムは,何らかの貼り合わせ箇所があるものと見て取れるものではないから,「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙を折り畳んだ」ものと解するのが自然であり,このことは,刊行物1の「紙面の表面と裏面に別々に印刷している」(8頁1行)との記載からも裏付けられるとして,その理由について次のとおり主張する(後記)。しかし,以下のとおり,被告の主張は失当である。 ア被告は,多数の紙片を,別々に両面印刷して,それらを繋ぎ合わせて1枚の印刷物とするようなことを普通はしないと主張 て次のとおり主張する(後記)。しかし,以下のとおり,被告の主張は失当である。 ア被告は,多数の紙片を,別々に両面印刷して,それらを繋ぎ合わせて1枚の印刷物とするようなことを普通はしないと主張する。 しかし,ダイヤグラムリーフレットは非常に横長のものであるから,このような横長のものを繋ぎ合わせずに1回の印刷で作成しようとすれば,その分だけ版も大きなものとならざるを得ない。そうすると,必然的に,印刷機械の大型化,複雑化の問題が生じる。そのため,本願発明の技術分野であるダイヤグラムリーフレットの技術分野では,大型の版を製作して無理に1回の印刷でリーフレットを作成するよりは,細かく分けて版を製作し,印刷した後に繋ぎ合わせる方が現実的であるとして,正に被告が主張するような,多数の紙片を,別々に両面印刷して,それらを繋ぎ合わせて1枚の印刷物とするような面倒な作業を本願の出願時においてはしていたのである(甲16文献23頁末尾参照)。 したがって,被告の上記主張は失当である。 イ被告は,実用新案登録第3067442号公報(乙9,以下「乙9公報」という。)及び実用新案登録第3062639号公報(乙10,以下「乙10公報」という。)を引用して,1枚の紙の両面に継ぎ目なしに印刷することは,本願の出願前から広く知られていることであったと主張する。 しかし,乙9公報は,冊子(とじ本)ではないという意味で「1枚の印刷されたシートによって構成される」としているにすぎず,「1枚の印刷されたシート」が,複数のシートを貼り合わせて1枚としたものであるか否かについては何ら言及していない。したがって,乙9公報は,必ずしも,貼り合わせ箇所の無い1枚の印刷されたシートを開示するものではない。 また,乙10公報は,地図の考案に係るものであり,引用発明1とは かについては何ら言及していない。したがって,乙9公報は,必ずしも,貼り合わせ箇所の無い1枚の印刷されたシートを開示するものではない。 また,乙10公報は,地図の考案に係るものであり,引用発明1とは全く技術分野が異なるものである。したがって,乙10公報によって,1枚の紙の両面に継ぎ目なしに印刷することが本願の出願時において周知であったとして,このことを刊行物1の開示内容を解釈するに際して参酌するべきではない。 ウ被告は,通常は,手間やコスト等を考慮して,分割枚数を減らして継ぎ目も減らそうとするはずであり,1枚の紙に一度に印刷ができるのであれば,わざわざ複数に分割せずに1枚の紙にまとめて印刷しようとするはずであるから,「紙面の表面と裏面に別々に印刷している」ものであれば,「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面を折り畳んだ」印刷物であると認識するのが自然であると主張する。 しかし,かかる主張は,刊行物1に記載されているに等しい事項と,刊行物1から容易に想到できる事項とを混同するものであり,失当である。 すなわち,刊行物1において,「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面を折り畳んだ」印刷物が開示されているといえるためには,刊行物1にそのような記載が客観的に存在しているか,又は技術常識や自明事項に基づいて そのように記載されているに等しいといえる場合に限られる。 「わざわざ複数に分割せずに1枚の紙にまとめて印刷しようとするはずである」という被告の主張は,引用発明1において,1枚の紙にまとめて印刷することが動機付けされているとの主張であると解されるが,仮に,刊行物1において,1枚の紙にまとめて印刷することが動機付けられているとしても,その点は,1枚の紙にまとめて印刷することが刊行物1から容易に想到できる事項であることを根拠付け ると解されるが,仮に,刊行物1において,1枚の紙にまとめて印刷することが動機付けられているとしても,その点は,1枚の紙にまとめて印刷することが刊行物1から容易に想到できる事項であることを根拠付けるにとどまるものであり,1枚の紙にまとめて印刷することが,刊行物1に記載されているに等しい事項であることを根拠付けるものではない。容易に想到できる事項と,記載されているに等しい事項とが,同趣旨であるならば,新規性の他に進歩性の拒絶理由を法定している特許法の法構造は何ら意味を持たないことになる。被告の上記主張は,特許法の法構造の基本的理解を欠くものというほかない。 そして,刊行物1の運行ダイヤグラムがそれほど横長のものではなく,A4版のような標準的なサイズの用紙の長さであれば,当業者は,引用発明1の実施に際して,被告が主張するように,1枚の紙にまとめて印刷するかもしれないが,刊行物1の第1図において途中省略を意味する波線が描かれ,また,第2図において折り畳んだ状態が描かれていることからも解るように,刊行物1の運行ダイヤグラムも非常に横長のものである。 そうすると,引用発明1の技術分野においても,本願発明の乗務員携帯用のダイヤグラムリーフレットの技術分野と同様に,1枚の紙に印刷するだけで作成しようとすると,版銅が大口径化し,印刷機械が大がかりになるという問題があるから,それを考慮すれば,無理に1枚紙の構成を採用せず,分けて印刷して貼り合わせるのがかえって手間もコストも少なくなるのであり,現実的である。 以上のとおり,刊行物1の客観的な記載や技術常識に従えば,1枚の紙 にまとめて印刷することは,刊行物1に記載されているに等しい事項であるとすることはできない。 2 取消事由2(本願発明と引用発明1の一致点の認定の誤り) 審決 に従えば,1枚の紙 にまとめて印刷することは,刊行物1に記載されているに等しい事項であるとすることはできない。 2 取消事由2(本願発明と引用発明1の一致点の認定の誤り) 審決は,引用発明1の「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面」は,本願発明の「貼り合わせ箇所の無い一枚の媒体シート」に相当すると認定している。 しかし,前記1のとおり,審決が引用発明1を「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面を折り畳んだ」ものと認定したのは誤りであるから,審決の上記一致点の認定も誤りである。 審決は,引用発明1の「電車,列車等のダイヤグラム」は,本願発明の「交通機関の運行計画図を表したダイヤグラムリーフレット」に相当すると認定している。 しかし,本願発明は,「交通機関の乗務員が乗務に際して携帯し,必要に応じて開いて参照することが予定されている」ものである。引用発明1の運行ダイヤグラムにおいては,途中駅での他会社路線への乗り換え連絡の情報表示が特徴となっているが,列車に乗り込む乗務員が,その乗務の途中で他の会社路線に乗り換えることはあり得ないから,このような途中駅での他会社路線への乗り換え連絡の情報は,通常のダイヤグラムでは全く不要である。 その一方で,引用発明1の運行ダイヤグラムには,列車番号,上りと下りの交差を示すスジ線の交わり,終点の駅における列車の折り返しといった,ダイヤグラムに必須の情報は何ら含まれておらず,引用発明1の運行ダイヤグラムでは,交通機関は,何ら列車を運行することはできない。 したがって,審決の上記一致点の認定は誤りである。 3 取消事由3(本願発明と引用発明1の相違点の認定の誤り) 相違点1の認定の誤り審決は,相違点1を,「本願発明は,「交通機関の乗務員が乗務に際して携帯」するものであるのに対 3 取消事由3(本願発明と引用発明1の相違点の認定の誤り) 相違点1の認定の誤り審決は,相違点1を,「本願発明は,「交通機関の乗務員が乗務に際して携帯」するものであるのに対し,引用発明1は,その点につき明らかではない 点。」と認定している。 しかし,引用発明1の運行ダイヤグラムは,一般人が携帯する運行ダイヤグラムであることが明らかであるから,「引用発明1は,その点につき明らかではない」との審決の認定は誤りである。 相違点2の認定の誤り審決は,相違点2を,「ダイヤグラムリーフレットが,本願発明では,「合成樹脂より成」るものであるのに対し,引用発明1は,その点につき明らかではない」と認定している。 しかし,刊行物1においては,実用新案登録請求の範囲の欄の「3.」に「上りと下りを紙面の表面と裏面に別々に印刷した」との記載があり,明細書8頁1行にも「紙面の表面と裏面に別々に印刷している」との記載があり,いずれも「紙面」と説明していることからして,引用発明1の運行ダイヤグラムは,紙に印刷したものであることが明らかであるから,「引用発明1は,その点につき明らかではない」との審決の認定は誤りである。 4 取消事由4(本願発明と引用発明1の相違点の判断の誤り) 相違点1の判断の誤り審決は,相違点1に関し,一般に,交通機関の運行計画図を表したダイヤグラムリーフレットは,鉄道乗務員が乗務に際して携帯し使用するものであるから,引用発明1も交通機関の乗務員が乗務に際して携帯するものであることは明らかであるとして,相違点1は実質的な相違点とはいえないと判断している。 審決は,相違点1の認定において,本願発明は,「交通機関の乗務員が乗務に際して携帯」するものであるのに対し,引用発明1は,その点に るとして,相違点1は実質的な相違点とはいえないと判断している。 審決は,相違点1の認定において,本願発明は,「交通機関の乗務員が乗務に際して携帯」するものであるのに対し,引用発明1は,その点につき明らかではないと認定しており,この認定と矛盾しないように審決の上記判断を善解すると,「一般に,交通機関の運行計画図を表したダイヤグラムリーフレットは,鉄道乗務員が乗務に際して携帯し使用するものであるから,刊 行物1には記載されていないが,交通機関の乗務員が引用発明1の運用ダイヤグラムを乗務に際して携帯するようにすることも可能である。」との趣旨と解される。 しかし,引用発明1の運行ダイヤグラムには,他会社路線への乗り換え連絡の情報という乗務員にとってはあり得ない不要な情報が含まれている上,列車番号,上りと下りの交差を示すスジ線の交わり,終着の駅における列車の折り返しといった,ダイヤグラムに必須の情報は何ら含まれておらず,引用発明1の運行ダイヤグラムを乗務員が乗務に際して携帯することはあり得ない。また,引用発明1の技術思想ないし目的は,ダイヤグラムの煩雑さの整理であるのに,引用発明1に上記のようなダイヤグラムに必須の情報を盛り込めば,ダイヤグラムは煩雑となることは明らかで,引用発明1の技術思想ないし目的と矛盾する。 したがって,審決の上記判断は誤りである。 相違点2の判断の誤り審決は,引用発明1と引用発明2とは,一枚の媒体シートを折り畳んだ印刷物という点で共通するから,引用発明1に引用発明2を適用し,ダイヤグラムリーフレットを合成樹脂製とすることは,当業者が容易に想到し得るものであると判断している。 しかし,折り畳んだ印刷物という共通点は,引用発明1の運行ダイヤグラムを合成樹脂製とすることとは何ら関連せず, フレットを合成樹脂製とすることは,当業者が容易に想到し得るものであると判断している。 しかし,折り畳んだ印刷物という共通点は,引用発明1の運行ダイヤグラムを合成樹脂製とすることとは何ら関連せず,動機付けにはならない。 また,本願発明において合成樹脂からなる媒体シートを採用するのは,乗務員の携帯用であることを考慮し,耐久性を高くするためである(本願の当初明細書(甲3)【0028】)。また,乗務員による携帯を考慮した耐久性のためには,合成樹脂はそれなりの厚さとなる(同【0021】)。 一方,刊行物1は,コンパクトに折り畳めることが必要である(明細書3頁11~12行,7頁4~6行)。合成樹脂は,紙よりも一般的に弾性があ るので,このようにコンパクトに折り畳むのには適していない。また,合成樹脂とすることは,耐久性を考慮したものであるので,コンパクトに折り畳むために厚さを薄くすることは矛盾する。 そうすると,引用発明1において合成樹脂製の媒体シートを採用することは,何ら動機付けがないばかりか,その特徴点を阻害してしまうものであり,明らかな阻害要因がある。 したがって,審決の上記判断は誤りである。 相違点3の判断の誤り審決は,本願発明のように,一つの路線の一日のうちの前半のダイヤグラムを表面に印刷し,裏面に後半のダイヤグラムを印刷することは,当業者が必要に応じて適宜なし得ることであると判断している。 しかし,本願発明において,一つの路線の一日のうちの前半のダイヤグラムを表面に印刷し裏面に後半のダイヤグラムを印刷することは,ダイヤの過密化に対応したものである(本願の当初明細書(甲3)【0007】)。このようなダイヤの過密化の問題は,刊行物1には何ら記載されておらず,示唆もされていない。 したがって,相違点3が動機付け ヤの過密化に対応したものである(本願の当初明細書(甲3)【0007】)。このようなダイヤの過密化の問題は,刊行物1には何ら記載されておらず,示唆もされていない。 したがって,相違点3が動機付けされることはないから,審決の上記判断は誤りである。 第4 被告の主張 1 取消事由1(引用発明1の認定の誤り)について 原告らは,甲16文献,甲17文献及び甲18文献を引用して,本願の出願時において,ダイヤグラムリーフレットは,複数の紙に分割して印刷し貼り合わせて使うのが技術常識であったとして,刊行物1の運行ダイヤグラムは,貼り合わせ箇所を示す直線は図示省略されているものの,複数の紙に分割して印刷し貼り合わせたものと認定されるべきであると主張する。 原告らが主張するように,ダイヤグラムリーフレットは,複数の紙に分割 して印刷し貼り合わせて使うのが技術常識であったかどうかは不知である。 しかし,一般的な印刷において,長尺紙やA0版用紙に印刷することは,本願の出願時において周知技術であったといえる(乙1公報の【0001】,【0081】,乙2公報の【0001】,【0007】,乙3公報の【0001】,【0003】)。 また,本願の出願時において,一枚紙の媒体シートに印刷されたダイヤグラムリーフレットは既に存在していたとするのが妥当である(乙6,乙7,乙8・163頁)。 したがって,原告らが主張するように,必ずしも刊行物1の運行ダイヤグラムは,複数の紙に分割して印刷して貼り合わせたものと認定されなければならない理由はない。 むしろ,刊行物1の第1図及び第2図に示された運行ダイヤグラムは,何らかの貼り合わせ箇所があるものと見て取れるものではないから,「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面を折り畳んだ」ものと解するのが むしろ,刊行物1の第1図及び第2図に示された運行ダイヤグラムは,何らかの貼り合わせ箇所があるものと見て取れるものではないから,「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面を折り畳んだ」ものと解するのが自然である。このことは,刊行物1の「紙面の表面と裏面に別々に印刷している」(明細書8頁1行)との記載からも裏付けられる。 すなわち,一方の面のみを印刷したものを繋ぎ合わせる場合でさえ,個々の紙片を印刷するのに繋ぎ目を考慮して作成する必要があり,印刷枚数自体もその分増え,繋ぎ合わせる際には正しい順序で繋ぐ必要がある等,手間やコストがかかる。両面印刷のものを繋ぎ合わせる場合には,これに加えて,裏面の繋ぎ目のことも考慮して作成しなければならず,印刷のズレや紙面のたわみもあり,その印刷や繋ぎ合わせ作業は更に難しいものとなる。したがって,多数の紙片を,別々に両面印刷して,それらを繋ぎ合わせて1枚の印刷物とするようなことを普通はしない。 実際,1枚の紙の両面に継ぎ目なしに印刷することは,本願の出願前から広く知られていることである(乙9公報の15頁4~5行,27頁5~7行, 乙10公報の【0028】,【0029】)。 むしろ,通常は,手間やコスト等を考慮して,分割枚数を減らして継ぎ目も減らそうとするはずであり,1枚の紙に一度に印刷ができるのであれば,わざわざ複数に分割せずに1枚の紙にまとめて印刷しようとするはずであるから,「紙面の表面と裏面に別々に印刷している」ものであれば,「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面を折り畳んだ」印刷物であると認識するのが自然である。 よって,審決が,刊行物1の第1図及び第2図の運行ダイヤグラムを「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面を折り畳んだ」ものと認定した点に誤りはない。 2 取消事由2(本願発明と引用発明1の一致 ある。 よって,審決が,刊行物1の第1図及び第2図の運行ダイヤグラムを「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面を折り畳んだ」ものと認定した点に誤りはない。 2 取消事由2(本願発明と引用発明1の一致点の認定の誤り)について原告らは,審決が引用発明1を「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面を折り畳んだ」ものと認定したのは誤りであるから,引用発明1の「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面」が本願発明の「貼り合わせ箇所の無い一枚の媒体シート」に相当すると認定したのも誤りであると主張する。 しかし,前記1のとおり,審決が引用発明1を「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面を折り畳んだ」ものと認定した点に誤りはないから,審決の上記一致点の認定に誤りはない。 原告らは,途中駅での他会社路線への乗り換え連絡の情報は,通常のダイヤグラムでは全く不要であるとして,審決が,引用発明1の「電車,列車等のダイヤグラム」は,本願発明の「交通機関の運行計画図を表したダイヤグラムリーフレット」に相当すると認定したのは誤りであると主張する。 しかし,本願の出願時において,ダイヤ図には,新幹線のダイヤの一部等,その線区以外の線区のダイヤの情報も記載されていたといえる(乙4(甲16と同一文献)17頁3行~7行)。したがって,原告らが主張するように,途中駅での他会社路線への乗り換え連絡の情報が,通常のダイヤグラムでは 全く不要な情報であるとはいえない。また,交通機関の乗務員等の輸送業務関係者にとって,他路線への乗り換え連絡情報が有用な情報であることは明らかである。 したがって,審決の上記一致点の認定に誤りはない。 3 取消事由3(本願発明と引用発明1の相違点の認定の誤り)について 相違点1の認定について原告らは,引用発明1の運行ダイヤグラムは,一般人が携帯 審決の上記一致点の認定に誤りはない。 3 取消事由3(本願発明と引用発明1の相違点の認定の誤り)について 相違点1の認定について原告らは,引用発明1の運行ダイヤグラムは,一般人が携帯する運行ダイヤグラムであることが明らかであるから,審決が,「引用発明1は,その点につき明らかではない」と認定したのは誤りであると主張する。 しかし,刊行物1には,「交通機関の乗務員が乗務に際して携帯」との明記はされていないから,審決の上記認定に誤りはない。 また,仮に,原告らが主張するように,引用発明1の運行ダイヤグラムは,一般人が携帯する運行ダイヤグラムであるとしても,審決は,本願発明の相違点1に係る「交通機関の乗務員が乗務に際して携帯」との特定事項について判断をしてお 相違点2の認定について原告らは,引用発明1の運行ダイヤグラムは,紙に印刷したものであることが明らかであるから,審決が,「引用発明は,その点につき明らかではない」と認定したのは誤りであると主張する。 しかし,刊行物1には,「運行ダイヤグラム」がどのような材料よりなるものであるか明記されていないから,審決の上記認定に誤りはない。 また,仮に,原告らが主張するように,引用発明1の運行ダイヤグラムが,紙に印刷したものであるとしても,審決は,本願発明の相違点2に係る「合成樹脂より成る」との特定事項について判断をしており,後記4のとおり,審決のこの判断に誤りはない。 4 取消事由4(本願発明と引用発明1の相違点の判断の誤り)について 相違点1の判断について原告らは,審決が,相違点1が実質的な相違点とはいえないと判断したことについて,引用発明1の運行ダイヤグラムは,途中駅での他会社路線への乗り換え連絡の情報という乗務員にとってはあり得 断について原告らは,審決が,相違点1が実質的な相違点とはいえないと判断したことについて,引用発明1の運行ダイヤグラムは,途中駅での他会社路線への乗り換え連絡の情報という乗務員にとってはあり得ない不要な情報が含まれている上,列車番号,交差するスジ線,終着駅での折り返しといった必須の情報は何ら含まれておらず,引用発明1の運行ダイヤグラムを乗務員が乗務に際して携帯することはあり得ない,引用発明1の技術思想ないし目的は,ダイヤグラムの煩雑さの整理であるのに,引用発明1に上記のようなダイヤグラムに必須の情報を盛り込めば,ダイヤグラムは煩雑となり,引用発明1の技術思想ないし目的と矛盾すると主張する。 報は,乗務員にとって不要な情報とまではいえないものである。 また,そもそもダイヤグラムというものは,掲載され得る情報として多様なものがあり,さまざまなものが想定されるところ,ダイヤグラムを作成するに当たっては,適宜,必要とする情報を選択して作成されるはずであり,出発時刻や到着時刻等の情報は必須のものといえるとしても,列車番号,交差するスジ線,終着駅での折り返しといった情報が,必須の情報であるとする根拠はない。 この点,引用発明1の運行ダイヤグラムは,原告らが主張する必須の情報を含まないものであるが,本願発明も,原告らが主張する必須の情報を含む点について何ら特定されておらず,加えて,本願明細書にも,この点について何ら記載されていない。原告らの上記主張は,明細書の記載に基づかない主張であり,失当である。 そして,刊行物1に,発明の目的が「運行ダイヤグラムの煩雑さの整理」にあると明示的に記載されているとしても,引用発明1の「上りと下りを1枚の紙面の表面と裏面に別々に印刷した」と認定された構成の限りにおいて は,引用発明1の運行ダイヤグ ラムの煩雑さの整理」にあると明示的に記載されているとしても,引用発明1の「上りと下りを1枚の紙面の表面と裏面に別々に印刷した」と認定された構成の限りにおいて は,引用発明1の運行ダイヤグラムを一般人用,交通機関の乗務員用として区別すべき事由もなく,乗務員にとってもダイヤグラムが必要もなく煩雑に表示されていることが好ましくないことは明らかであるから,「上りと下りを1枚の紙面の表面と裏面に別々に印刷した」引用発明1を乗務員が乗務に際し携帯するものとすることは,運行ダイヤグラムの煩雑さの整理という目的と何ら矛盾するものではない。 相違点2の判断について原告らは,審決が,引用発明1と引用発明2とは,一枚の媒体シートを折り畳んだ印刷物という点で共通するから,引用発明1に引用発明2を適用し,ダイヤグラムリーフレットを合成樹脂製とすることは,当業者が容易に想到し得るものであると判断したことについて,①引用発明1と本願発明とは,折り畳んだ印刷物という点では共通するが,かかる共通点は,引用発明1の運行ダイヤグラムを合成樹脂製とすることとは何ら関連せず,動機付けにはならない,②本願発明において合成樹脂からなる媒体シートを採用するのは,乗務員の携帯用であることを考慮し,耐久性を高くするためであり,乗務員による携帯を考慮した耐久性のためには,合成樹脂はそれなりの厚さとなるのに対し,刊行物1は,コンパクトに折り畳めることが必要であるところ,合成樹脂は,紙よりも一般的に弾性があるので,コンパクトに折り畳むのには適していないし,また,合成樹脂とすることは,耐久性を考慮したものであるので,コンパクトに折り畳むために厚さを薄くすることは矛盾するから,引用発明1において合成樹脂製の媒体シートを採用することについては,阻害要因があると主張する。 ることは,耐久性を考慮したものであるので,コンパクトに折り畳むために厚さを薄くすることは矛盾するから,引用発明1において合成樹脂製の媒体シートを採用することについては,阻害要因があると主張する。 しかし,引用発明2は,「ポリプロピレン製の合成紙のロール紙からなる長尺紙を蛇腹状に折り畳んだ折り本であって,長尺紙に両面印刷することにより,左右のページに跨るレイアウトでも印刷が折り目でずれることがない折り本。」であり(審決5頁11行~13行),加えて,長尺紙に関し,刊行 物2(甲2)には,長尺紙が「どのページを開けても左右のページが一枚物である」(【0008】)及び「長尺紙はロール紙など幅が一定で連続した紙であればよい」(【0010】)と記載されており,前記1のとおり,引用発明1は一枚の媒体シートからなる点で引用発明2と共通する。すなわち,引用発明1と引用発明2とは折り畳んだ印刷物という点で共通する。しかるところ,引用発明1は手帳サイズのポケット版の運行ダイヤグラムであって,携帯を目的とするものであり,それ相応の耐久性が求められるものであることは,引用発明1に内在する自明の技術課題である。 一方,刊行物2(甲2)には,「また,その紙厚や材質を限定するものではないが,開閉を繰り返すと紙が折り目で切れる可能性があるため,0.2mm以上の厚さが好ましく,特に開閉頻度が高い場合はヒンジの特性を有するポリプロピレン製の合成紙が好ましい。」(【0010】)と記載され,シートをポリプロピレン製の合成樹脂とすることで耐久性を高くできることが示されている。 したがって,引用発明1の運行ダイヤグラムにおいて,その耐久性を高めるべく,当該運行ダイヤグラムを合成樹脂となすことは,当業者が容易に想到し得ることであって,審決の相違点2の判断に誤 されている。 したがって,引用発明1の運行ダイヤグラムにおいて,その耐久性を高めるべく,当該運行ダイヤグラムを合成樹脂となすことは,当業者が容易に想到し得ることであって,審決の相違点2の判断に誤りはない。 相違点3の判断について原告らは,審決が,本願発明のように,一つの路線の一日のうちの前半のダイヤグラムを表面に印刷し,裏面に後半のダイヤグラムを印刷することは,当業者が必要に応じて適宜なし得ることであると判断したことについて,本願発明において,一つの路線の一日のうちの前半のダイヤグラムを表面に印刷し裏面に後半のダイヤグラムを印刷することは,ダイヤの過密化に対応したものであるところ,このようなダイヤの過密化の問題は,刊行物1には何ら記載されておらず,示唆もされていないから,相違点3が動機付けされることはなく,相違点3が容易想到とした審決の判断は誤りであると主張する。 しかし,そもそも,ダイヤグラムには,上記に示した「上り」と「下り」を紙面の両面に印刷したもの,「平日用」と「休日用」を紙面の両面に印刷したもののほか,交通機関によっては,「平日用」と「土曜日用」と「休日用」からなるもの,あるいは,お盆の期間に対応したもの,年末年始に対応したもの等,多種多様なものが想定され,ダイヤグラムの紙面の「表面」及び「裏面」に,どのような運行ダイヤを印刷するかは,乗務員等の使用態様や見やすさ等を考慮して適宜に取り決めるべき事項である。 その上,本願明細書(甲4)の【0024】の記載をみても,本願発明の「一つの路線の一日のうちの前半のダイヤグラムが表面に印刷され,裏面に後半のダイヤグラムが印刷され」た点に,適宜に取り決めた域を超えるほどの格別の技術的意義があるものとはいえない。 また,本願明細書(甲3)の【0007】 の前半のダイヤグラムが表面に印刷され,裏面に後半のダイヤグラムが印刷され」た点に,適宜に取り決めた域を超えるほどの格別の技術的意義があるものとはいえない。 また,本願明細書(甲3)の【0007】に記載されている「紙の両面に印刷し」との事項は,引用発明1,乙5及び乙6の,表面と裏面に印刷したダイヤグラムも備えているものであるから,この点が技術的に格別な事項であるともいえない。 したがって,引用発明1の「運行ダイヤグラム」において,その紙面の「表面」と「裏面」に印刷する運行ダイヤとして,「上り」及び「下り」に換えて,「一つの路線の一日のうちの前半のダイヤグラム」及び「後半のダイヤグラム」を印刷するようになし,相違点3に係る本願発明の構成とすることは,当業者が必要に応じて適宜になし得る設計的事項というべきである。 第5 当裁判所の判断当裁判所は,原告ら主張の取消事由はいずれも理由がなく,審決に取り消されるべき違法はないものと判断する。その理由は以下のとおりである。 1 取消事由1(引用発明1の認定の誤り)について原告らは,審決が引用発明1を「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面を折り畳んだ」ものと認定したことは誤りであると主張する(前記第3の1)ので,以 下,検討する。 刊行物1の記載刊行物1(甲1)には,以下の記載がある。 ア 「実用新案登録請求の範囲1.縦軸に始点からの距離をとり,停車駅を距離上に目盛るとともに横軸に時刻をとる電車,列車等の運行ダイヤグラムにおいて,停車連絡駅に他の路線の出発時間,行先を表示したことを特徴とする電車,列車等の運行ダイヤグラム。 2.前記運行ダイヤグラムは,多色刷りにて印刷した実用新案登録請求の範囲第1項記載の電車,列車等の運行ダイヤグラム。 3.前記運行ダイヤグ 示したことを特徴とする電車,列車等の運行ダイヤグラム。 2.前記運行ダイヤグラムは,多色刷りにて印刷した実用新案登録請求の範囲第1項記載の電車,列車等の運行ダイヤグラム。 3.前記運行ダイヤグラムは,上りと下りを紙面の表面と裏面に別々に印刷した実用新案登録請求の範囲第1項記載の電車,列車等の運行ダイヤグラム。 4.前記運行ダイヤグラムは,折り畳んだ状態がポケット版の手帳サイズである実用新案登録請求の範囲第1項記載の電車,列車等の運行ダイヤグラム。」(明細書1頁4行ないし2頁5行)イ 「〔従来技術〕従来,各鉄道等においては,縦軸に始点からの距離をとり,停車駅を距離上に目盛るとともに横軸に時刻を数分間隔にとった運行ダイヤグラムが使用されているが,一般人からみると煩雑にすぎ,大きすぎる欠点があった。 一方,一般人は時刻数字を羅列した時刻表を使用しているが,電車,列車等の接続の際には,各々の該当する接続路線の時刻欄を記載したそれぞれの頁を調べなければならなかった。」(明細書2頁12行ないし3頁6行)ウ 「〔考案の目的〕 本考案は上記の点に鑑みなされたもので,鉄道の運行ダイヤグラムの煩雑さを整理し,停車連絡駅に他の路線の出発時間,行先を表示するとともにポケット版の手帳サイズとなした便利な運行ダイヤグラムを提供するにある。」(明細書3頁7行ないし同頁12行)エ 「〔実施例〕以下,図面に従って実施例を説明する。 第1図(判決注・別紙【第1図】参照)は常磐線快速下りの運行ダイヤグラムを示し,縦軸に上野を始点として距離をとり,距離上に停車駅名Aを目盛ってある。横軸に時刻BをAM4:30からAM1:12まで2分刻みで目盛ってある。下りの電車の運行線は右下りの斜線で示され,停 グラムを示し,縦軸に上野を始点として距離をとり,距離上に停車駅名Aを目盛ってある。横軸に時刻BをAM4:30からAM1:12まで2分刻みで目盛ってある。下りの電車の運行線は右下りの斜線で示され,停車駅には白丸でプロットが施されている。運行線が太線で示されているのは常磐線の取手以降まで行く列車で,行先は取手駅下欄に表示がしてある。 急行列車には右横に表示があり,運行線の勾配が急になっていて,速度が幾分速いことがわかる。また,運行線の交差しているところは,追越しを示している。停車連絡駅には,他路線の出発時間が矢印で示されていて,行先が表示してある。例えば,北千住駅では東武線に連絡していて上側が浅草行き,下側が春日部方面行きを示し,行先は駅名の1文字をとって略している。春………は春日部行,栃………は新栃木行,伊………は伊勢崎行,日………は日光行き等である。」(明細書4頁4行ないし5頁8行)「第2図(判決注・別紙【第2図】参照)は運行ダイヤグラムを折り畳んだ状態を示す図で,常磐線快速の場合,縦10cm×横6.5cm×厚さ2mmの手帳サイズで作製することができるので定期券のカード入れに保管でき,旅行等のほか通勤にも使用できる。 第1図,第2図とも黒一色で図示しているが,本考案は多色刷りで印刷される。すなわち,駅名,時刻,常磐線快速の運行線等の黒色表示以外に,常磐線の取手以降まで行く列車を赤色,東武線を青色,新京成線を茶色, 東武野田線を橙色,関東鉄道常総線を緑色等に表示してあるので,よりー層見易く,正確に素速く必要事項を読み取ることができる。 また,この常磐線快速運行ダイヤグラムは上りと下りを紙面の表面と裏面に別々に印刷しているので,蛇腹状に折畳んだ時刻表を裏返すだけで,上りと下りを簡単に見ることができる。なお,表面 ことができる。 また,この常磐線快速運行ダイヤグラムは上りと下りを紙面の表面と裏面に別々に印刷しているので,蛇腹状に折畳んだ時刻表を裏返すだけで,上りと下りを簡単に見ることができる。なお,表面の同一ダイヤに上りと下りを図示することも可能である。」(明細書7頁2行ないし8頁5行) 刊行物1の運行ダイヤグラムについてアによれば,刊行物1には,折り畳んだ状態がポケット版の手帳サイズであって,縦軸に始点からの距離をとり,横軸に時刻をとり,停車連絡駅に他の路線の出発時刻,行先を表示したことを特徴とし,多色刷りで,上りと下りを紙面の表面と裏面に別々に印刷した電車,列車等の運行ダイヤグラムが記載されており,実施例として,常磐線快速の場合のダイヤグラムの内容が第1図に例示され,第2図には,横方向に6枚に折り畳んだ状態で,縦10cm×横6.5cm×厚さ2mmの手帳サイズで作製することができ,定期券のカード入れに保管できる運行ダイヤグラムが例示されていることが認められる。 刊行物1には,上記ダイヤグラムにおいて,貼り合わせ箇所の有無については特段の記載がなく,第1図及び第2図にも,貼り合わせ箇所は図示されていない。しかし,刊行物1の記載によれば,引用発明1は,鉄道の運行ダイヤグラムの煩雑さを整理し,停車連絡駅に他の路線の出発時聞,行先を表示するとともにポケット版の手帳サイズとなした便利な運行ダイの出発時間,行先を表示したことを特徴とするものであるから,その実施例に貼り合わせ箇所があるか否かを図示して説明する必要があるものとは必ずしもいえない。したがって,第1図及び第2図では,貼り合わせ箇所の図示を省略したものとも考えられるから,第1図及び第2 図に貼り合わせ箇所が図示されていないことから直ちに,刊行物1に「貼り合わせ箇 ない。したがって,第1図及び第2図では,貼り合わせ箇所の図示を省略したものとも考えられるから,第1図及び第2 図に貼り合わせ箇所が図示されていないことから直ちに,刊行物1に「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面を折り畳んだ」運行ダイヤグラムが記載されているとはいえない。 イ手帳サイズの便利な運行ダイヤグラムを提供することにあることからすると,刊行物1の運行ダイヤグラムについて,1枚の紙を分割することなく印刷可能な大きさの紙の両面に必要な情報が収まるような場合において,当該1枚の紙の両面に印刷するのではなく,当該紙をあえて複数に分割してその両面に印刷したものを貼り合わせることについて特段の技術的意義があるとは考えにくく,また,刊行物1には,かかる特段の技術的意義があることを示す記載はない。 そして,乙1公報(平成8年8月9日公開),乙2公報(平成13年11月20日公開)及び乙3公報(平成14年5月21日公開)によれば,本願の出願時(平成20年3月21日)において,A0版の大きさ(84. 1cm×118.9cm)の紙であれば,これを分割することなく印刷することができることは,技術常識であったことが認められる。 そうすると,刊行物1において,A0版の大きさの紙の両面に必要な情報が収まるような運行ダイヤグラムが開示されていれば,当該運行ダイヤグラムは,1枚の紙をあえて複数に分割してその両面に印刷したものを貼り合わせたものではなく,当該1枚の紙の両面に印刷したものと認められるので,刊行物1には,「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面を折り畳んだ」ものが記載されているに等しいということができる。 ウそこで,刊行物1において,A0版の大きさ(84.1cm×118. 9cm)の紙の両面に必要な情報が収まるような運行ダイヤグラムが開示 だ」ものが記載されているに等しいということができる。 ウそこで,刊行物1において,A0版の大きさ(84.1cm×118. 9cm)の紙の両面に必要な情報が収まるような運行ダイヤグラムが開示されているかについて検討する。 前記のとおり,刊行物1には,実施例として,第1図に,常磐線快 速の運行ダイヤグラムの内容が示され,第2図に,横方向に6枚に折り畳んだ状態で,縦10cm×横6.5cm×厚さ2mmの手帳サイズで作製することができ,定期券のカード入れに保管することができる運行ダイヤグラムが示されている。そこで,第2図の表示に従って,横方向に6枚に折り畳んだ状態で,縦10cm×横6.5cmとなる紙の大きさを求めてみると,縦10cm,横6.5cm×6=39cmであり,これは,A3版の大きさ(29.7cm×42.0cm)よりも小さいものとなる。 なお,乙9公報の公的交通機関案内書も,「カード入れに挟み込める大きさ」(【0006】)で,「厚紙6枚程度の薄い物品」(【0007】)であることからすると,刊行物1の運行ダイヤグラムにおいて,折り畳み枚数が6枚を超えるようなものは,折り畳んだ状態で厚さが2mm以下で,定期券のカード入れに保管できるものにすることは困難であると考えられるが,本願明細書(甲3)の【0004】に「横軸は時間であるため,縦軸に比して非常に長くなるのが一般的である(例えば10倍程度)。」との記載があることを考慮して,仮に,実施例の縦10cmに対して,横をその10倍としてみても,10cm×10=100cmであって,これも,A0版の大きさ(84.1cm×118.9cm)より小さいことが認められる。 以上のとおり,刊行物1には,A0版の大きさの紙の両面に必要な情報が収まるような運行ダイヤグラムが開示されており,当該 A0版の大きさ(84.1cm×118.9cm)より小さいことが認められる。 以上のとおり,刊行物1には,A0版の大きさの紙の両面に必要な情報が収まるような運行ダイヤグラムが開示されており,当該運行ダイヤグラムは,1枚の紙をあえて複数に分割してその両面に印刷したものを貼り合わせたものではなく,当該1枚の紙の両面に印刷したものと認められる。 したがって,刊行物1には,「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面を折り畳んだ」ものが記載されているに等しいということができる。 原告らの主張についてア原告らは,甲16文献,甲17文献及び甲18文献を引用して,本願の 出願時において,ダイヤグラムリーフレットは,複数の紙に分割して印刷し貼り合わせて使うのが技術常識であったとして,刊行物1の運行ダイヤグラムは,貼り合わせ箇所を示す直線は図示省略されているものの,複数の紙に分割して貼り合わせたものと認定されるべきであると主張する(前 そこで,原告らが引用する上記各文献をみると,①甲16文献(平成17年2月18日発行)には,「ダイヤ図は,作成された原版をもとに多数を印刷して,関係箇所に配られる。2分目や1分目のダイヤ図は,・・・かなり横に長いものであるから,3枚なり4枚なりに分割して印刷し,配られた方で張り合わせて1枚にして使う。」(23頁11行ないし13行)との記載があり,②甲17文献(平成24年1月30日発行)には,「2分目や1分目のダイヤ図は横に長いため,時間帯ごとに数枚の紙に分割して印刷し,使用する時に糊で貼り合わせて1日分のダイヤ図とする。ただし,最近では,デジタル印刷によって長尺のダイヤ図を1枚の紙に印刷できるようになった.」(191頁32行ないし34行)との記載があり,③甲18文献(平成24年3月20日発行)には,「( とする。ただし,最近では,デジタル印刷によって長尺のダイヤ図を1枚の紙に印刷できるようになった.」(191頁32行ないし34行)との記載があり,③甲18文献(平成24年3月20日発行)には,「(かつては,何枚かの紙を貼り合わせていたが,ディジタル印刷技術の発達によって長尺のダイヤ図を1枚の紙に印刷できるようになった)」(227頁9行ないし11行)との記載があることが認められる。 上記各文献の記載によれば,「2分目や1分目のダイヤ図は,・・・かなり横に長いものであるから」(上記①),「2分目や1分目のダイヤ図は横に長いため」(上記②)との記載からも明らかなように,かなり横に長いダイヤ図については,複数の紙に分割して印刷し貼り合わせて使うのが,本願の出願時(平成20年3月21日)において技術常識であったものと認められる。 ,刊行物1の考案の目的が,ポ ケット版の手帳サイズの便利な運行ダイヤグラムを提供することにあり,1枚の紙を分割することなく印刷可能な大きさの紙の両面に必要な情報が収まるような場合において,当該1枚の紙の両面に印刷するのではなく,当該紙をあえて複数に分割してその両面に印刷したものを貼り合わせることについて特段の技術的意義があるとは考えにくく,また,刊行物1には,かかる特段の技術的意義があることを示す記載もないことからすると,このような場合にまで,かなり横に長いダイヤ図において認められる前記の技術常識が及ぶものとは認められない。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 イ原告らは,乙1公報,乙2公報及び乙3公報は,パソコンなどのコンピュータに接続されて使用されるプリンタの技術分野に属するものであり,ダイヤグラムリーフレットの技術分野における特有の課題を考慮せず イ原告らは,乙1公報,乙2公報及び乙3公報は,パソコンなどのコンピュータに接続されて使用されるプリンタの技術分野に属するものであり,ダイヤグラムリーフレットの技術分野における特有の課題を考慮せずに,単に短絡的に印刷物として共通していることをもって他の印刷技術の分野における事項が適用可能であるとすることは誤りであると主張する(前記第3の1)。 しかし,前記イの説示は,乙1公報,乙2公報及び乙3公報によって,1枚の紙を分割することなく印刷可能な紙の大きさに係る本願の出願時における技術常識を認定したものであるところ,1枚の紙を分割することなく印刷可能な紙の大きさがどの程度かについては,パソコンなどのコンピュータに接続されて使用されるプリンタの技術分野に属するものであっても,ダイヤグラムリーフレットの印刷について適用できないとする理由はない。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 小括よって,原告ら主張の取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(本願発明と引用発明1の一致点の認定の誤り)について 原告らは,審決が引用発明1を「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面を折り畳んだ」ものと認定したのは誤りであるから,引用発明1の「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面」が,本願発明の「貼り合わせ箇所の無い一枚の媒体シート」に相当するとの審決の一致点の認定も誤りであると主張する(前記。 しかし,前記1のとおり,審決が引用発明1を「貼り合わせ箇所の無い1枚の紙面を折り畳んだ」ものと認定した点に誤りはない。 したがって,原告らの上記主張は,前提を欠き,採用することができない。 原告らは,審決が,引用発明1の「電車,列車等のダイヤグラム」は,本願発明の「交通機関の運行計画図を表し た点に誤りはない。 したがって,原告らの上記主張は,前提を欠き,採用することができない。 原告らは,審決が,引用発明1の「電車,列車等のダイヤグラム」は,本願発明の「交通機関の運行計画図を表したダイヤグラムリーフレット」に相当すると認定した点について,①引用発明1の運行ダイヤグラムの特徴である,途中駅での他会社路線への乗り換え連絡の情報は,通常のダイヤグラムでは全く不要であり,②引用発明1の運行ダイヤグラムには,列車番号,上りと下りの交差を示すスジ線の交わり,終点の駅における列車の折り返しといった,ダイヤグラムに必須の情報は何ら含まれておらず,引用発明1の運行ダイヤグラムでは,交通機関は,何ら列車を運行することはできないとして,審決の上記一致点の認定は誤りであると主張する。 しかし,上記①の主張については,本願発明は,「交通機関の乗務員が乗務に際して携帯し,必要に応じて開いて参照することが予定されているダイヤグラムリーフレット」であるところ,ここでいう「必要に応じて」及び乗務員の「乗務」の内容については,何ら特定されていない。そして,交通機関の乗務員が乗務に際してダイヤグラムリーフレットを参照することが必要となる場合としては,様々な場合が想定され,例えば,乗務員が乗務に際して,旅客からの問い合わせに対応する場合もその一つであり,途中駅での他会社路線への乗り換え連絡の情報は,このような場合において有用でこそあれ,全く無用のものということはできない。したがって,本願発明には,こ のような,乗務員が乗務に際して,旅客からの問い合わせに対応するために参照するダイヤグラムリーフレットも含まれているものといえる。したがって,原告らの上記①の主張は採用することができない。 また,上記②の主張については,本願発明においても, わせに対応するために参照するダイヤグラムリーフレットも含まれているものといえる。したがって,原告らの上記①の主張は採用することができない。 また,上記②の主張については,本願発明においても,原告らが主張するダイヤグラムに必須の情報を含む点について何ら特定されておらず,本願明細書にもこの点について何ら記載されていない。したがって,原告らの上記②の主張は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づかないものであり,採用することができない。 小括よって,原告ら主張の取消事由2は理由がない。 3 取消事由3(本願発明と引用発明1の相違点の認定の誤り)について 相違点1の認定について原告らは,審決が,相違点1を,「本願発明は,「交通機関の乗務員が乗務に際して携帯」するものであるのに対し,引用発明1は,その点につき明らかでない点。」と認定した点について,引用発明1の運行ダイヤグラムは,一般人が携帯する運行ダイヤグラムであることが明らかであるから,審決の上記認定は誤りであると主張する。 確かに,刊行物1の記載によれば,引用発明1は,従来の運行ダイヤグラムが,一般人からみると煩雑にすぎ,大きすぎる欠点があり,また,一般人は時刻数字を羅列した時刻表を使用しているが,電車,列車等の接続の際には,各々の該当する接続路線の時刻欄を記載したそれぞれの頁を調べなければならなかったという課題を有していた(前ことから,鉄道の運行ダイヤグラムの煩雑さを整理し,停車連絡駅に他の路線の出発時間,行先を表示するとともにポケット版の手帳サイズとなした便利な運行ダイヤグラムを提供することを目的とするもの引用発明1の運行ダイヤグラムは,原告らが主張するように,一般人が携帯する ものと認められる。したがって,審決の上記認定には誤りがある。 運行ダイヤグラムを提供することを目的とするもの引用発明1の運行ダイヤグラムは,原告らが主張するように,一般人が携帯する ものと認められる。したがって,審決の上記認定には誤りがある。 しかし,審決は,相違点1に係る本願発明の「交通機関の乗務員が乗務にその判断に誤りはない。 したがって,相違点1に係る審決の認定に誤りがあるとしても,そのことは,審決の結論に影響を及ぼすものではない。 相違点2の認定について原告らは,審決が,相違点2を,「ダイヤグラムリーフレットが,本願発明では,「合成樹脂より成」るものであるのに対し,引用発明1は,その点につき明らかでない点。」と認定した点について,引用発明1の運行ダイヤグラムは,紙に印刷したものであることが明らかであるから,審決の上記認定は誤りであると主張する。 確かに,刊行物1には,「上りと下りを紙面の表面と裏面に別々に印刷しれば,引用発明1の運行ダイヤグラムは,紙に印刷したものであると認められる。 しかし,刊行物2(平成12年11月21日公開。甲2)には,「表紙1A,1Bと中身を長尺紙2に両面印刷する。長尺紙はロール紙など幅が一定で連続した紙であればよいが,予め蛇腹状に折り畳んだ専用紙が好ましい。 また,その紙厚や材質を限定するものではないが,開閉を繰り返すと紙が折り目で切れる可能性があるため,0.2mm以上の厚さが好ましく,特に開閉頻度が高い場合はヒンジの特性を有するポリプロピレン製の合成紙が好ましい。印刷が多品種少量の場合,スキャナー等から入力した画像データや文字データをデジタル編集するパソコンソフトを利用し,デジタル印刷機を用いるとよい。長尺紙を蛇腹状に折り畳んだとき両先端が左右に分かれるよう に折り目の数を偶数にするレイアウト編集が望ましい。2個の タをデジタル編集するパソコンソフトを利用し,デジタル印刷機を用いるとよい。長尺紙を蛇腹状に折り畳んだとき両先端が左右に分かれるよう に折り目の数を偶数にするレイアウト編集が望ましい。2個の透明シートで構成する表紙カバーが共通化できるからである。また,表紙の部分は2枚重ねにすることが望ましい。関連する表紙と中身が長尺紙の片面にレイアウトできる上に,表紙の剛性が強化でき,必要に応じて芯紙も挿入できるからである。」(3欄9~25行)との記載があり,これによれば,本願の出願時において,合成樹脂であるポリプロピレンから成るものが「合成紙」と呼ばれ,紙として,すなわち印刷をする対象物として用いられていたことが認められる。 そうすると,本願発明は,媒体シート,すなわち印刷をする対象物である紙が「合成樹脂より成」るものであるのに対し,引用発明1は,印刷をする対象物である紙が合成樹脂より成るものであるかどうかが刊行物1には記載されていないといえるから,審決の上記認定に誤りはない。 小括よって,原告ら主張の取消事由3は理由がない。 4 取消事由4(本願発明と引用発明1の相違点の判断の誤り)について 相違点1の判断について相違点1は,正しくは,「本願発明と引用発明1とは,本願発明が,「交通機関の乗務員が乗務に際して携帯」するものであるのに対し,引用発明1は,一般人が携帯するものである点。」と認定されるべきものである。 原告らは,審決が,相違点1を,「本願発明は,「交通機関の乗務員が乗務に際して携帯」するものであるのに対し,引用発明1は,その点につき明らかでない点。」と認定した上で,一般に,交通機関の運行計画図を表したダイヤグラムリーフレットは,鉄道乗務員が乗務に際して携帯し使用するものであるから,引用発明1 対し,引用発明1は,その点につき明らかでない点。」と認定した上で,一般に,交通機関の運行計画図を表したダイヤグラムリーフレットは,鉄道乗務員が乗務に際して携帯し使用するものであるから,引用発明1も交通機関の乗務員が乗務に際して携帯するものであることは明らかであるとして,相違点1は実質的な相違点とはいえないと 判断した点について,引用発明1の運行ダイヤグラムは,途中駅での他会社路線への乗り換え連絡の情報という乗務員にとってはあり得ない不要な情報が含まれている上,列車番号,交差するスジ線,終着駅での折り返しといったダイヤグラムに必須の情報は何ら含まれておらず,引用発明1の運行ダイヤグラムを乗務員が乗務に際して携帯することはあり得ないし,引用発明1の技術思想ないし目的は,ダイヤグラムの煩雑さの整理であるのに,引用発明1に上記のようなダイヤグラムに必須の情報を盛り込めば,ダイヤグラムは煩雑となり,引用発明1の技術思想ないし目的と矛盾するとして,審決の上記判断 しかし,からの問い合わせに対応するために参照するダイヤグラムリーフレットも含まれているところ,このようなダイヤグラムリーフレットとして,引用発明1の運行ダイヤグラムを用いることができることは,当業者にとって自明であるし,本願発明において,原告らが主張するダイヤグラムに必須の情報を含む点について何ら特定されておらず,本願明細書にもこの点について何らおりである。また,ダイヤグラムの煩雑さの整理は,使用目的に応じて当業者が適宜なし得るものである。 したがって,相違点1は実質的な相違点とはいえないとした審決の上記判断内容に誤りはなく,同判断は,相違点1を,「本願発明と引用発明1とは,本願発明が,「交通機関の乗務員が乗務に際して携帯」するものであるのに対し,引用発明1は,一般人 とはいえないとした審決の上記判断内容に誤りはなく,同判断は,相違点1を,「本願発明と引用発明1とは,本願発明が,「交通機関の乗務員が乗務に際して携帯」するものであるのに対し,引用発明1は,一般人が携帯するものである点。」としても妥当するものである。原告らの上記主張は採用することができない。 相違点2の判断についてア相違点2は,「ダイヤグラムリーフレットが,本願発明では,「合成樹脂より成」るものであるのに対し,引用発明1は,その点につき明らかでない点。」である。 原告らは,審決が,相違点2について,引用発明1と引用発明2とは,一枚の媒体シートを折り畳んだ印刷物という点で共通するから,引用発明1に引用発明2を適用し,ダイヤグラムリーフレットを合成樹脂製とすることは,当業者が容易に想到し得るものであると判断した点について,折り畳んだ印刷物という共通点は,引用発明1の運行ダイヤグラムを合成樹脂製とすることとは何ら関連せず,動機付けにはならないと主張する(前記第3の4)。 しかし,引用発明1の運行ダイヤグラムは,折り畳んだ状態で携帯し,内容を参照するときには開いて用いるものであり,開閉が繰り返されるものである。したがって,耐久性が求められることは,当業者にとって明らかであり,引用発明1に内在する自明の課題といえる。 一方,刊行物2(甲2)には,「開閉頻度が高い場合はヒンジの特性を有するポリプロピレン製の合成紙が好ましい。」(3欄14行ないし16行)との記載があり,これによれば,刊行物2には,合成樹脂より成る紙とすることにより耐久性が向上することが記載されているものと認められる。 そうすると,引用発明1に内在する上記の自明の課題が動機付けとなり,引用発明1に引用発明2を適用して,相違点2に係る本願発明の することにより耐久性が向上することが記載されているものと認められる。 そうすると,引用発明1に内在する上記の自明の課題が動機付けとなり,引用発明1に引用発明2を適用して,相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることであるといえる。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 イ原告らは,乗務員による携帯を考慮した耐久性のためには,合成樹脂はそれなりの厚さとなる一方,刊行物1は,コンパクトに折り畳めることが必要であるところ,合成樹脂は,紙よりも一般的に弾性があるので,このようにコンパクトに折り畳むのには適していないし,合成樹脂とすることは,耐久性を考慮したものであるので,コンパクトに折り畳むために厚さを薄くすることは矛盾するとして,引用発明1において合成樹 脂製の媒体シートを採用することは,阻害要因があると主張する(前記。 しかし,引用発明2の折り本は,合成樹脂であるポリプロピレン製の合成紙を蛇腹状に折り畳むことによってコンパクトにしているものであるから,合成樹脂であるからといってコンパクトに折り畳むのに適していないとはいえない。また,引用発明2の折り本は,ポリプロピレン製の合成紙を採用することによって耐久性を向上しているものであり,その厚さを厚くすることによって耐久性を向上しているものではない。 したがって,原告らの上記主張は,その前提に誤りがあり,採用することができない。 相違点3の判断について相違点3は,「本願発明は,「一つの路線の一日のうちの前半のダイヤグラムが表面に印刷され,裏面に後半のダイヤグラムが印刷されて」いるものであるのに対し,引用発明1は,上りと下りを1枚の紙面の表面と裏面に別々に印刷したものである点。」である。 原告らは,審決が,相違点3 面に印刷され,裏面に後半のダイヤグラムが印刷されて」いるものであるのに対し,引用発明1は,上りと下りを1枚の紙面の表面と裏面に別々に印刷したものである点。」である。 原告らは,審決が,相違点3について,本願発明のように,一つの路線の一日のうちの前半のダイヤグラムを表面に印刷し,裏面に後半のダイヤグラムを印刷することは,当業者が必要に応じて適宜なし得ることであると判断した点について,本願発明において,一日のうちの前半のダイヤグラムを表面に印刷し,裏面に後半のダイヤグラムを印刷することは,ダイヤの過密化に対応したものであり,このようなダイヤの過密化の問題は,刊行物1に記載も示唆もされていないから,相違点3が動機付けられることはないと主張 しかし,本願発明において,ダイヤの過密化に対応して上記のような両面印刷をしたのは,ダイヤが過密化するとダイヤグラムリーフレットの所定時間当たりの横軸の長さを長くしなければ,スジ等の間隔が狭くなり読み取り にくくなることに対応したものと解される。 一方,引用発明1の運行ダイヤグラムは,上りと下りを1枚の紙面の表面と裏面に別々に印刷したものであるところ,引用発明1において,上りと下りを紙面の表面と裏面に別々に印刷しているのは,このような両面印刷における文字間の間隔や運行線を示す斜線(スジ)の間隔と同じ間隔で上りと下りを紙面の片面に印刷にすると,両面印刷した場合と比較して読み取りやすさが劣ることになるためであると解される。 このように,本願発明における上記の技術思想については,引用発明1においても認められるものであるから,引用発明1において相違点3に係る本願発明の構成とする動機付けがある。 そして,引用発明1における上記のような両面印刷の意義に照らせば,表面に印刷する情報と裏面に印刷する 認められるものであるから,引用発明1において相違点3に係る本願発明の構成とする動機付けがある。 そして,引用発明1における上記のような両面印刷の意義に照らせば,表面に印刷する情報と裏面に印刷する情報を分ける基準は,乗務員の使用態様や読み取りやすさを考慮して適宜取り決める事項であるといえる。このことは,刊行物1(甲1)の実施例の説明中に,「この常磐線運行ダイヤグラムは上り下りを紙面の表面と裏面に別々に印刷しているので,蛇腹状に折畳んだ時刻表を裏返すだけで,上りと下りを簡単に見ることができる。なお,表面の同一ダイヤに上りと下りを図示することも可能である。」との記載があることからも明らかである。そして,本願発明において,一日のうちの前半のダイヤグラムと後半のダイヤグラムに分けることについて特段の技術的意義があるとは考えにくく,また,かかる特段の技術的意義があることを示す証拠もない。そうすると,相違点3に係る本願発明の構成とすることは,当業者が適宜なし得ることであるといえる。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 小括よって,原告ら主張の取消事由4は理由がない。 5 まとめ 以上のとおり,原告ら主張の取消事由はいずれも理由がなく,審決に取り消されるべき違法はない。 第6 結論よって,原告らの請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官石井忠雄 裁判官西理香 裁判官西理香 裁判官田中正哉 (別紙) 【第1図】 【第2図】
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