主文 原判決中上告人敗訴部分を破棄する。右部分についての被上告人の控訴を棄却する。原審における被上告人の予備的請求を棄却する。訴訟の総費用は、被上告人の負担とする。理由 上告代理人灘岡秀親の上告理由について被上告人は、訴外Dに対し、同人を代理人として、被上告人の訴外E火災海上保険株式会社に対する自動車損害賠償保障法に基づく損害賠償金の請求及び受領に関する一切の権限を委任するとともに、右の請求及び受領について復代理人を選任する権限を授与し、訴外Dは訴外Fに対し、同人を復代理人として右請求、受領の権限を委任するとともに、復代理人選任権限を授与し、さらに、訴外Fは、上告人に対し、上告人を復代理人として、右請求、受領の権限を委任した。上告人は、訴外会社から昭和四七年一二月七日上告人名義の普通預金口座に前記損害賠償金として二四九万円の振込みを受けたのでその払戻を受けたうえ、同月一一日ごろ二四九万円を訴外Fに交付し、同人は同月二四日これを訴外Dに交付した。原審は、以上の事実を適法に確定したうえ、右事実によれば、被上告人と復々代理人たる上告人との間には、民法一〇七条二項により、被上告人と代理人たる訴外Dとの間の内部関係と同一の内部関係が生じるから、上告人が委任事務を処理するに当たり金銭を受領した場合は、被上告人は上告人にだけその引渡を請求しうべく、したがつて、上告人が右金銭を訴外Fに交付したか否かを問わず、被上告人に対して右金銭を引渡すべき義務があるとして、右金銭を訴外Fに引渡したとする上告人の主張を排斥して、被上告人の請求を全部棄却した一審判決を変更し、右受領金の内金一二九万円及び本訴追行のための弁護士費用一三万円並びに右各金員に対する- 1 -昭和四八年五月 引渡したとする上告人の主張を排斥して、被上告人の請求を全部棄却した一審判決を変更し、右受領金の内金一二九万円及び本訴追行のための弁護士費用一三万円並びに右各金員に対する- 1 -昭和四八年五月二一日以降完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で被上告人の請求を認容したものである。 一二九万円及び本訴追行のための弁護士費用一三万円並びに右各金員に対する- 1 -昭和四八年五月 引渡したとする上告人の主張を排斥して、被上告人の請求を全部棄却した一審判決を変更し、右受領金の内金一二九万円及び本訴追行のための弁護士費用一三万円並びに右各金員に対する- 1 -昭和四八年五月二一日以降完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で被上告人の請求を認容したものである。思うに、本人代理人間で委任契約が締結され、代理人復代理人間で復委任契約が締結されたことにより、民法一〇七条二項の規定に基づいて本人復代理人間に直接の権利義務が生じた場合であつても、右の規定は、復代理人の代理行為も代理人の代理行為と同一の効果を生じるところから、契約関係のない本人復代理人間にも直接の権利義務の関係を生じさせることが便宜であるとの趣旨に出たものであるにすぎず、この規定のゆえに、本人又は復代理人がそれぞれ代理人と締結した委任契約に基づいて有している権利義務に消長をきたすべき理由はないから、復代理人が委任事務を処理するに当たり金銭等を受領したときは、復代理人は、特別の事情がないかぎり、本人に対して受領物を引渡す義務を負うほか、代理人に対してもこれを引渡す義務を負い、もし復代理人において代理人にこれを引渡したときは、代理人に対する受領物引渡義務は消滅し、それとともに、本人に対する受領物引渡義務もまた消滅するものと解するのが相当である。そして、以上の理は、復代理人がさらに適法に復代理人を選任した場合についても妥当するものというべきである。そうすると、上告人が本件受領金を訴外Fに交付したか否かを問わず、これを被上告人に引渡すべき義務があるとした原審の判断には、法令解釈の誤りがあり、その違法が原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであつて、原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして、原審の適法に確定した前記事実関係による あるとした原審の判断には、法令解釈の誤りがあり、その違法が原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであつて、原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして、原審の適法に確定した前記事実関係によると、被上告人の復々代理人である上告人は右受領金を被上告人の復代理人である訴外Fに交付したというのであり、本件において前叙特別の事情についてはなんら主張、立証がないから、被上告人はもはや上告人に対して右受領金の引渡を求めることはできないものというべく、弁護士費用の支払を求めることも、右引渡請求権があることを前提とするものであ- 2 -つて、理由がないから、右破棄部分についての被上告人の請求は排斥を免れず、右請求を棄却した一審判決は結局相当であつて、この点についての被上告人の控訴は理由がないから、これを棄却すべきである。 別の事情についてはなんら主張、立証がないから、被上告人はもはや上告人に対して右受領金の引渡を求めることはできないものというべく、弁護士費用の支払を求めることも、右引渡請求権があることを前提とするものであ- 2 -つて、理由がないから、右破棄部分についての被上告人の請求は排斥を免れず、右請求を棄却した一審判決は結局相当であつて、この点についての被上告人の控訴は理由がないから、これを棄却すべきである。また、上告人は義務なくして被上告人の事務を管理したとして、上告人に対し右受領金の引渡等を求める被上告人の原審における予備的請求が理由のないことも、原審の適法に確定した事実関係に照らして、明らかなところであるから、右請求も棄却を免れない。よつて、民訴法四〇八条、九六条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官吉田豊裁判官岡原昌男裁判官大塚喜一郎裁判官本林讓- 3 -
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