平成30(ネ)10024 特許権侵害差止等本訴請求,損害賠償反訴請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成31年3月28日 知的財産高等裁判所 4部 判決 原判決一部変更 東京地方裁判所 平成27(ワ)31774
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判決文本文47,542 文字)

平成31年3月28日判決言渡平成30年(ネ)第10024号特許権侵害差止等本訴請求,損害賠償反訴請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成27年(ワ)第31774号,平成28年(ワ)第15181号)口頭弁論終結日平成31年1月29日判決 控訴人兼被控訴人日本スプリュー株式会社(1審本訴原告・反訴被告) (以下「1審原告」という。) 訴訟代理人弁護士高見憲補佐人弁理士大石皓一 被控訴人兼控訴人株式会社アドバネクス(1審本訴被告・反訴原告) (以下「1審被告」という。) 訴訟代理人弁護士森本晃生同松村啓補佐人弁理士寺本光生主文 1 1審原告の控訴に基づき,原判決中,1審被告の反訴請求に関する部分を次のとおり変更する。 (1) 1審原告は,1審被告に対し,330万円及びこれに対する平成27年11月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 1審被告のその余の反訴請求を棄却する。 2 1審原告のその余の控訴及び1審被告の控訴をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審及び本訴反訴を通じて,これを3分し,その2を1審原告の負担とし,その余を1審被告の負担とする。 4 この判決の第1項(1)は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 1審原告(1) 原判決中1審原告敗訴部分を取り消す。 (2) 1審被告は,原判決別紙イ号方法目録記載の方法を使用してはならない。 (3) 1審被告は,原判決別紙イ号方法目録記載の方法によ 1 1審原告(1) 原判決中1審原告敗訴部分を取り消す。 (2) 1審被告は,原判決別紙イ号方法目録記載の方法を使用してはならない。 (3) 1審被告は,原判決別紙イ号方法目録記載の方法により生産した原判決別紙イ号物件目録記載の製品を使用し,譲渡し,貸し渡し,輸出し若しくは輸入し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 (4) 1審被告は,前項記載の製品を廃棄せよ。 (5) 前記(1)のうち反訴請求に関する部分につき,1審被告の反訴請求を棄却する。 2 1審被告(1) 原判決中主文第2項及び第3項を次のとおり変更する。 (2) 1審原告は,1審被告に対し,2000万円及びこれに対する平成27年11月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(略称は,特に断りのない限り,原判決に従う。) 1 事案の要旨本件の本訴請求は,発明の名称を「螺旋状コイルインサートの製造方法」とする発明についての特許(特許第4018844号。請求項の数11。以下,この特許を「本件特許」といい,本件特許に係る特許権を「本件特許権」という。)の特許権者である1審原告が,1審被告が原判決別紙イ号方法目録記載 の方法(以下「イ号方法」という。)を使用して原判決別紙イ号物件目録記載の製品(以下「被告製品」という。)を製造,販売する行為が本件特許権の侵害に当たる旨主張して,1審被告に対し,特許法100条1項及び2項に基づき,イ号方法の使用の差止め,イ号方法の使用により製造した被告製品の販売等の差止め及び廃棄を求め,本件の反訴請求は,1審被告が,1審原告が,1審原告代表者が本件特許の発明者でないこと,本件特許には,その発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされた冒認出願の無効 理由 を求め,本件の反訴請求は,1審被告が,1審原告が,1審原告代表者が本件特許の発明者でないこと,本件特許には,その発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされた冒認出願の無効理由(同法123条1項6号)があり,又は一審被告が先使用権を有しているため,1審被告に対する本件特許権に基づく権利行使ができないことを知りながら,本訴の提起及び追行をした行為が不法行為を構成する旨主張して,1審原告に対し,民法709条に基づき,弁護士費用等の損害賠償として2000万円及びこれに対する不法行為の日(本訴提起日)である平成27年11月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原判決は,1審原告の本訴請求について,本件特許には冒認出願の無効理由があり,1審原告は,特許法104条の3第1項の規定により,1審被告に対し,本件特許権に基づく権利行使ができないから,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないとして全部棄却し,1審被告の反訴請求について,1審原告による本訴の提起は違法な行為に当たることを認め,弁護士費用等の損害賠償として550万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で一部認容し,その余の反訴請求を棄却した。 原判決に対して,1審原告及び1審被告の双方が,それぞれ敗訴部分を不服として控訴を提起した。 2 前提事実以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第2の2記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決4頁7行目から8行目までを次のとおり改める。 「 本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである(以下,請求項1に係る発明を「本件発明」という。甲4)。 【請求項1】(a)螺旋状コイルインサートを を次のとおり改める。 「 本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである(以下,請求項1に係る発明を「本件発明」という。甲4)。 【請求項1】(a)螺旋状コイルインサートを製造するための線材であって,線材の軸線方向に沿って所定長さ間隔にてコイル自由端成形部が複数形成され,前記コイル自由端成形部は,互いに離間する方へと線材の軸線に沿って線材の外形へと至る第1及び第2先細形状部と,前記第1及び第2先細形状部にそれぞれ隣接して形成された第1及び第2凹部とを有する螺旋状コイルインサート用線材を,前記コイル自由端成形部がコイル巻き加工時に内周側に位置するようにして連続してコイル製造機へと供給して1個の螺旋状コイルインサートのための所定巻数のコイル巻きを行い,所定巻数のコイル巻きが終了した後,前記コイル自由端成形部における前記第1先細形状部と前記第2先細形状部の連結位置にて切断分離し,(b)引き続いて,前記螺旋状コイルインサート用線材をコイル製造機へと供給して前記(a)工程を行い,次の螺旋状コイルインサートを製造する,ことを特徴とする螺旋状コイルインサートの製造方法。」(2) 原判決5頁10行目の「(以下「被告製品」という。)」を「被告製品」と改める。 (3) 原判決5頁15行目から21行目までを次のとおり改める。 「(7) 1審被告の特許権ア 1審被告は,次のとおりの特許権(以下「被告特許権」といい,その特許を「被告特許」という。)の特許権者である(乙212)。 特許番号第4030750号発明の名称タング無し螺旋状コイルインサートの製造方法 出願日平成13年11月21日(特願2001-356621号)登録日平成19年10月26日イ被告特許の特許請求の範囲 無し螺旋状コイルインサートの製造方法 出願日平成13年11月21日(特願2001-356621号)登録日平成19年10月26日イ被告特許の特許請求の範囲は,請求項1ないし3からなり,その請求項1の記載は,以下のとおりである。 【請求項1】線材が螺旋状に巻かれて円筒形状を有し,その外周面と内周面にそれぞれ螺条が形成され,前記線材の両端部となるコイル自由端の先端部が先細り状に形成された頭部とされ,該頭部の近傍に挿入用工具の引っ掛け用の凹部が形成されてなるタング無し螺旋状コイルインサートを製造するに際して,前記線材として,その長さ方向に沿って所定長さ間隔にコイル自由端形成部が形成され,該コイル自由端形成部の両側の近傍部にそれぞれ前記凹部となる切欠が形成され,前記コイル自由端形成部が,線材の外径より細い細径部から互いに離間する方向に向かって線材の外形へと至る,第1テーパ部及び第2テーパ部によって形成されてなるものを用いる製造方法であって,前記線材として,その切欠が,前記コイル自由端形成部側に挿入工具を引っ掛けるための壁面を形成し,この壁面より前記コイル自由端形成部と反対の側に挿入工具を入れるための案内面を形成してなり,前記壁面が,該壁面と線材の軸線とのなす角度が65°~85°になるように案内面側に傾いて形成されているものを,用い,前記線材のコイル自由端形成部を,潰し金型を用いて線材を押し潰し加工によって行うことを特徴とするタング無し螺旋状コイルインサートの製造方法。」 3 争点 (1) 本訴についてア冒認出願による無効の抗弁の成否イ進歩性欠如による無効①(乙1発明を主引例,乙31発明及び乙32発明を副引例とするもの)の抗弁の成否ウ進歩性欠 (1) 本訴についてア冒認出願による無効の抗弁の成否イ進歩性欠如による無効①(乙1発明を主引例,乙31発明及び乙32発明を副引例とするもの)の抗弁の成否ウ進歩性欠如による無効②(乙1’発明を主引例,乙31発明及び乙32発明を副引例とするもの)の抗弁の成否エ進歩性欠如による無効③(乙1’発明を主引例,乙57発明及び乙32発明を副引例とするもの)の抗弁の成否オ 1審被告の先使用権の有無カ職務発明による法定実施権の有無(2) 反訴についてア本訴の提起及び追行の違法性イ 1審被告の損害額第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)ア(冒認出願による無効の抗弁の成否)について〔1審被告の主張〕以下のとおり,本件発明の発明者は,1審被告の従業員ら(A,B,C,D,Eら)であって,1審原告代表者は発明者ではなく,また,1審原告は,本件発明の発明者から特許を受ける権利を承継していないから,1審原告による本件特許の出願(以下「本件出願」という場合がある。)は,冒認出願に当たる。 したがって,本件特許には冒認出願の無効理由(特許法123条1項6号)があるから,1審原告は,特許法104条の3第1項の規定により,1審被告に対し,本件特許権に基づく権利行使ができない。 (1) 本件発明の発明者は1審被告の従業員らであることア米国法人レックスノルド・インコーポレーテッド(以下「レックスノルド社」という。)は,昭和59年5月,1審被告に対し,タングレス螺旋 状コイルインサート(「コイルスレッドⅡ」)の図面(乙3)を提供して,その製造を打診した。 1審被告の従業員らは,昭和60年3月14日までに,「コイルスレッドⅡ」の製造方法として,二つの選択肢を考え付いた。 この二つの選 スレッドⅡ」)の図面(乙3)を提供して,その製造を打診した。 1審被告の従業員らは,昭和60年3月14日までに,「コイルスレッドⅡ」の製造方法として,二つの選択肢を考え付いた。 この二つの選択肢は,線材を加工した上でコイル巻き加工する点では同じだが,一つは,コイル巻きしてから線材を切断し,完成品を切り離す方法(本件発明),もう一つは,製品1個分の線材を切断分離してからコイル巻き加工する方法である。 イ 1審被告が製作したプロトタイプ試作機である「FCM-I」では,1審被告の従業員らは,前記アの二つの選択肢のうち,本件発明ではなく,製品1個分の線材を切断分離してからコイル巻き加工する方法を採用した。 しかし,「FCM-I」による「コイルスレッドⅡ」の試作は,製品歩留まりの点で不満足な結果に終わったため,工程を見直し,昭和61年6月ないし7月に「FCM-A」を再設計した。その際,「FCM-I」の抜き潰し加工ユニットの設計を基本的に流用した上で,コイル巻き及び切断ユニット部を変更し,コイル巻き後に「コイルスレッドⅡ」の完成品を切断する工程を採用した。これにより,FCM-Aは,本件発明を実施するための装置構成となった。 1審被告は,同年8月中に FCM-Aの設計を完了の上,5台分の主要ユニットを株式会社高橋製作所(以下「高橋製作所」という。)に発注し,同年9月30日,高橋製作所から,1審被告の柏崎工場に納品を受けた。 1審被告は,同日,柏崎工場に設置した5台のFCM-A(乙17の2,198の1ないし4)のうち,1台を試作ラインとして稼働状態に置いた。 このようにして1審被告の従業員らは,遅くとも同日ころまでに,本件 発明を完成させた。 (2) 1審被告による本件発明の実施ア 1審被告は,昭和62年春ころ,5 て稼働状態に置いた。 このようにして1審被告の従業員らは,遅くとも同日ころまでに,本件 発明を完成させた。 (2) 1審被告による本件発明の実施ア 1審被告は,昭和62年春ころ,5台のFCM-Aを柏崎工場から福島工場に移管(乙178ないし180)し,同工場に設置したFCM-Aを使用して,タングレス螺旋状コイルインサートの量産試作とレックスノルド社へのサンプル出荷を開始した。 イその後,1審被告は,FCM-Aの姉妹機種のFCM-B及びFCM-C(以下,FCM-AないしFCM-Cを併せて「FCM各機種」という場合がある。)を設計して,高橋製作所に発注し,柏崎工場又は福島工場に設置した。 1審被告の福島工場には,昭和62年春(遅くとも4月23日)から同年7月28日まで5台のFCM-Aが,同月29日から同年9月まで5台のFCM-A及び1台のFCM-Bが,同月から昭和63年2月28日まで5台のFCM-A及び2台のFCM-Bが,同月29日から同年8月まで5台のFCM-A,3台のFCM-B及び1台のFCM-Cが,同月から平成7年10月5日まで5台のFCM-A,5台のFCM-B及び1台のFCM-Cが,同月6日から同年11月10日まで3台のFCM-A,2台のFCM-B及び1台のFCM-Cが,同月11日から平成10年6月ころまで1台のFCM-Bが,それぞれ設置され,稼働していた。 1審被告が福島工場に設置した5台のFCM-Aについては,平成7年10月6日に2台を,同年11月11日に残りの3台を1審被告の英国の子会社であるカトー・プレシジョン(U.K.)リミテッド(当時)(以下「英国子会社」という。)に移管した。 ウ以上のとおり,1審被告は,昭和62年春ころから平成10年6月ころまでの間,福島工場において,FCM各機種を使用 ジョン(U.K.)リミテッド(当時)(以下「英国子会社」という。)に移管した。 ウ以上のとおり,1審被告は,昭和62年春ころから平成10年6月ころまでの間,福島工場において,FCM各機種を使用して本件発明を実施していた。 (3) 1審原告代表者は本件発明の発明者でないことア本件発明は,線材の物性,工具の剛性,コイル巻き時にかかる応力の計算,線材の保持と歪みを防止するためのチャッキング部等の設計,線材への先細形状及び凹部の加工方法,バリの抑制等についての知識及び経験(特に,線材に加わる応力の制御技術)がなければ完成することができるものではなく,また,仮に加工済み線材のコイル巻きと切断による製造方法を着想したとしても,加工条件を備えた製造装置の実機を設計する能力がない限り,発明の作用効果を確認して本件発明を完成させることができない。 イ 1審原告代表者は,(省略)を卒業後,卸売を業としていた者であって,技術者ではなかった。 1審原告と1審被告の関係が悪化する平成11年4月以前には,1審原告代表者を発明者とする特許出願は全くされておらず,また,国立情報学研究所の運営する学術論文データベースCiNiiにも,1審原告代表者を著者とする学術論文は1篇も登録されていない。 また,1審原告は,昭和47年12月23日の設立以来,本件出願時までの間,1審被告の製造した「タング付き螺旋状コイルインサート」を販売する単なる販売会社であって,何らの研究開発設備及び製造設備を有しておらず,役員又は従業員に研究開発要員は存在しなかった。 このように1審原告代表者は,本件出願前に本件発明を独自に発明し得る知識,経験及び環境がなかったから,本件発明の発明者ではない。 (4) 1審原告代表者が1審被告から本件発明を知得したことア このように1審原告代表者は,本件出願前に本件発明を独自に発明し得る知識,経験及び環境がなかったから,本件発明の発明者ではない。 (4) 1審原告代表者が1審被告から本件発明を知得したことア 1審原告代表者は,昭和52年12月から平成12年6月までの間,1審被告の監査役の地位にあり,1審被告の事業所に監査役として頻繁に出入りしており,特に福島工場には少なくとも年6回は訪問し,製造ラインを視察していた。 この間の昭和62年4月ころから平成7年11月までの間,福島工場では,FCM各機種が稼働し,タングレス螺旋状コイルインサートを製造していた。 FCM-Aにおける線材の抜き潰し加工ユニット及びコイル巻き・切断ユニットは,筐体の外側に露出しているため,コイル巻き・切断ユニット部においては,抜き潰し加工がされずに,線材をコイルに巻いてから切り落とされていることは,FCM-Aのそばから見れば,誰にでも見て取れた(乙17の1,2)。また,FCM-Aから製品受けに落下した切断後の製品が,タングレス螺旋状コイルインサートの形状を呈していることは,FCM-Aのそばから見れば,誰にでも見て取れた。このことは,FCM-Cについても同様である(乙18の1,2,201の1,2)。 イ 1審被告の従業員のFは,福島工場に勤務していた平成元年9月から平成7年11月までのいずれかの時点において,1審原告代表者を同工場のタングレス螺旋状コイルインサートの製造ラインに案内するとともに,1審原告代表者に求められ,加工済み線材の端材を手渡した。 その後,株式会社三晃製作所(以下「三晃」という。)のGは,平成10年6月11日,1審被告の本社を訪れ,1審被告の従業員のHに対し,1審原告代表者の依頼を受けて,三晃が1審被告のサンプル線材をもとに1審被 株式会社三晃製作所(以下「三晃」という。)のGは,平成10年6月11日,1審被告の本社を訪れ,1審被告の従業員のHに対し,1審原告代表者の依頼を受けて,三晃が1審被告のサンプル線材をもとに1審被告に無断でタングレス螺旋状コイルインサート製造用抜き潰し加工済み線材を製造した事実を述べて,謝罪した。 その面談中に,1審原告代表者が1審被告の本社を訪れたため,Gと入れ替わり,1審原告代表者とHが面談した。その際,1審原告代表者は,Hに対し,三晃には迷惑をかけたくないのでよろしくなどと述べて謝罪し,タングレス螺旋状コイルインサートの製造方法に言及することなく,三晃に作製させた抜き潰し加工済み線材のサンプルを引き渡した。 1審原告代表者が引き渡した線材のサンプルは,Fが福島工場で1審原 告代表者に手渡した上記端材と酷似していた。 ウ 1審原告代表者は,前記ア及びイの1審被告の福島工場におけるタングレス螺旋状コイルインサートの製造ラインの視察や加工済みの線材の端材の受領を通して,1審被告がFCM各機種を使用して本件発明の方法によりタングレス螺旋状コイルインサートを製造していることを認識し,1審被告から本件発明を知得した(乙76,40の1及び2,177)。 (5) 1審原告の本件出願の意図等ア 1審被告は,平成10年ころ,タングレス螺旋状コイルインサートの需要が拡大する米国市場向け及び日本国内での販売準備のため,「FCM」シリーズの後継機種を導入し,その増産を行うことにした。 1審被告は,そのころ,ケイナー・テクノロジース・インコーポレイテッド(以下「ケイナー社」という。)との間で,1審被告をライセンサー,ケイナー社をライセンシーとし,全世界を許諾範囲とするタングレス螺旋状コイルインサートの製造,販売に関する実施許諾契 コーポレイテッド(以下「ケイナー社」という。)との間で,1審被告をライセンサー,ケイナー社をライセンシーとし,全世界を許諾範囲とするタングレス螺旋状コイルインサートの製造,販売に関する実施許諾契約の締結に向けた交渉を進めるとともに,1審被告自らが国内でタングレス螺旋状コイルインサートを販売するため,その卸売りを行うことを1審原告に提案した。 しかし,1審原告代表者は,1審原告が当時販売していたタング付き螺旋状コイルインサートの在庫の陳腐化をおそれてタングレス螺旋状コイルインサートを取り扱うことに消極的姿勢を示し,その取扱いをする場合には1審原告に独占的な販売権を付与するよう強く求めたため,1審原告と1審被告との間の交渉は進展しなかった。 そこで,1審被告は,1審被告の子会社である株式会社アキュレイト(旧商号「アキュレイト販売株式会社」。以下「アキュレイト販売」という。)と提携することとした。アキュレイト販売は,平成11年4月,同年中の市場投入を前提として,1審被告が製造するタングレス螺旋状コイルインサートが掲載されたカタログを展示会で配布した。 1審原告代表者は,同年5月17日ころ,この配布の事実を知り,1審被告に抗議し,アキュレイト販売による受注を留保させるなどの妨害を行った。 イこのような状況下において,1審原告は,日本国内の螺旋状コイルインサート市場における自己の地位を維持するため,1審被告の使用するタングレス螺旋状コイルインサートの製造方法(本件発明)が特許出願されていないことを奇貨として,1審原告代表者が本件発明の発明者でないことを知りながら,1審原告代表者を発明者として本件出願をした。 ウ(ア) 1審被告は,本件出願の出願公開後の平成13年8月ころ,1審原告が本件出願をした事実を察知し,本件出 本件発明の発明者でないことを知りながら,1審原告代表者を発明者として本件出願をした。 ウ(ア) 1審被告は,本件出願の出願公開後の平成13年8月ころ,1審原告が本件出願をした事実を察知し,本件出願が冒認出願であると認識し,社内で対応策を協議した。 1審被告は,当時,1審原告とは平成12年に円満に関係を解消したと認識しており,1審原告の出願意図及び審査請求をするかどうかが不明であったこともあり,当面静観するとともに,タングレス螺旋状コイルインサートの製造方法の自社出願を検討し,平成13年11月21日,被告特許の出願(乙212)をした。 (イ) 1審被告は,平成17年,1審原告から,本件特許の対応欧州特許に係る実施料要求を受けたが,1審原告に対し,1審原告代表者の特別背任,冒認出願に当たること及び1審被告の先使用権の存在を主張し,1審原告の実施料要求を拒絶した。 その後,1審原告の代理人弁護士は,平成27年2月10日付け依頼書(乙34)で,1審被告に対し,1審被告によるタングレス螺旋状コイルインサートの製造販売が1審原告の本件特許権及び欧州特許権を侵害している疑いがある旨を主張したことから,1審被告は1審原告と争うに至った。 〔1審原告の主張〕 以下のとおり,1審原告代表者は本件発明の発明者であり,1審原告は,1審原告代表者から本件発明についての特許を受ける権利を承継して,本件出願をしたのであるから,本件出願は,真の権利者による特許出願であって,冒認出願ではない。 したがって,本件特許には冒認出願の無効理由があるとの1審被告の主張は,理由がない。 (1) 1審原告代表者の本件発明の経緯ア 1審原告代表者((省略)生)は,昭和50年ないし昭和62年にかけて,螺旋状コイルインサート関連の工具の開発を行い( の1審被告の主張は,理由がない。 (1) 1審原告代表者の本件発明の経緯ア 1審原告代表者((省略)生)は,昭和50年ないし昭和62年にかけて,螺旋状コイルインサート関連の工具の開発を行い(甲36の1ないし8),1審原告は,開発された上記工具の製造販売を行っていた。 1審原告代表者は,上記工具の開発を通じて,螺旋状コイルインサートの形状,構造その他の性状について熟知していた。 また,1審原告代表者は,本件出願前に,螺旋状コイルインサートと目的や構成を共通にする「セルフタッピングねじ」の考案をし,この考案に基づく複数の実用新案登録出願がされていた。 イ 1審原告代表者は,1審被告の営業担当者であったIから,タングレス螺旋状コイルインサートの歩留まりが悪く,製造した製品の中から良品を選別して出荷していたということを聞いていた。 Iは,昭和60年10月から平成9年6月までの間,1審被告の100パーセント子会社で,1審原告と取引関係のあったアキュレイト販売の代表取締役を務めており,さらに,昭和54年以前から平成3年までの間1審原告の取締役に,平成3年から平成11年までの間1審原告の監査役にそれぞれ就任していた。 このようなIと1審原告との関係から,1審原告代表者とIは,長年,飲食を共にしており,特に,Iが1審被告の柏崎工場に工場長として赴任する平成2年までは,毎週のように会ったり,連絡を取り合う関係にあっ た。 ウ 1審原告代表者は,タングレス螺旋状コイルインサートの歩留まりについて,三晃の会長のJ(以下「J会長」という場合がある。)や三晃で線材の加工を行っている社員とやり取りしている中で,コイルを巻く前に,線材に工具を引っ掛ける凹部(切欠き)を入れてみればよいのではないかと思い付いた。 すなわち,1審原 う場合がある。)や三晃で線材の加工を行っている社員とやり取りしている中で,コイルを巻く前に,線材に工具を引っ掛ける凹部(切欠き)を入れてみればよいのではないかと思い付いた。 すなわち,1審原告代表者は,従来のタングレス螺旋状コイルインサートの製造方法は,①コイル形成(線材をコイル状に巻く工程),次いで,②凹部形成(凹部を切断後に端部となる部分に形成する工程)という順序で行っていると「想像」して,これとは順序を変えて,先に線材に凹部を形成する工程を行い,その後に線材をコイル状に巻き,切断する工程を行うことを繰り返すという本件発明を思い付いた。タングレス螺旋状コイルインサートの歩留まりの悪さは,長年,1審原告代表者の頭の片隅にあったため,それが,三晃とのやり取りの中で,本件発明を思い付くきっかけとなった。 そして,1審原告代表者は,アキュレイト販売から,1審被告製のタングレス螺旋状コイルインサートの現物を入手し,平成10年ころ,J会長に対し,入手した現物を渡して,タングレス螺旋状コイルインサートを製造するための抜き潰し加工済み線材のサンプル(菱形線材に等間隔切込みを入れた線材サンプル)の作製を提案・依頼し,三晃は,金型を用いてそのサンプルを作製した(乙183の1,184)。このサンプルの作製に要した金型等の費用は,1審原告代表者が負担した。 このようにして1審原告代表者は,同年ころ,本件発明に想到した。 エ原判決は,1審原告代表者において本件発明を着想し,これを具体化するだけの知識,経験及び環境が備わっていたといえるのか疑問がある,本件発明をしたとの1審原告代表者の供述は,曖昧で不自然な点が多く,採 用することができず,他に1審原告代表者が本件発明の発明者であることを裏付けるに足りる客観的証拠も見当たらないとし ,本件発明をしたとの1審原告代表者の供述は,曖昧で不自然な点が多く,採 用することができず,他に1審原告代表者が本件発明の発明者であることを裏付けるに足りる客観的証拠も見当たらないとして,1審原告代表者は,本件発明の発明者であると認められない旨判断した。 しかしながら,①螺旋状コイルインサートは,形状のみに特徴がある単純な構造物であって,その製造方法も極めて単純であり,本件発明の属する技術分野は先端的な技術分野ではないこと,②本件発明は,従来,螺旋状コイルインサートが,(コイル1個分の又は連続した)線材をコイル状に巻く工程,その後に工具を引っ掛ける凹部を端部に形成する工程で製造されていたのを,逆に,工具を引っ掛ける凹部を切断後に端部となる部分に形成する工程,その後に線材をコイル状に巻き切断する工程で製造することにより,連続的な生産を可能とし,生産効率を格段に向上させたものであること,③本件発明は,着想が発明の構成に直結し,螺旋状コイルインサートの製造設備や実験設備を用いなくても,発明を着想し,完成させることができたこと,④1審原告代表者は,長年,螺旋状コイルインサートやその周辺技術を扱ってきており,螺旋状コイルインサートの形状,構造その他の性状を熟知していたことからすると,1審原告代表者は,応力の計算を含む高度の精度制御技術や製造装置の詳細な設定条件等を知らなくとも,従来の螺旋状コイルインサートの製造方法では生産効率が悪いと聞いて,本件発明を着想し,これを具体化するだけの知識及び経験を有していた。 このように本件発明は,着想が発明の構成に直結する極めて単純な発明であるから,設計図面等はなくとも,完成させることができ,メモ,ノート,業務日誌等の客観的資料を残す必要すらないものであり,サンプルさえあれば,メモ等がなく 想が発明の構成に直結する極めて単純な発明であるから,設計図面等はなくとも,完成させることができ,メモ,ノート,業務日誌等の客観的資料を残す必要すらないものであり,サンプルさえあれば,メモ等がなくとも説明可能な発明である。 さらに,1審原告代表者は,原審で代表者本人尋問が行われた平成29年9月13日の時点において,(省略)歳と高齢であっただけでなく,その約4か月前に(省略)し,記憶が曖昧になっていたのみならず,理路整然とし た会話や適切な言葉の選択も難しくなっていたから,1審原告代表者の供述した言葉を文字通りに受け取って事実認定に用いたり,「覚えていない」ことを殊更不自然であると断定することは不適切である。 したがって,原判決の上記判断は誤りである。 (2) 本件出願に至る経緯1審原告代表者は,平成10年6月11日,1審被告を訪問し,1審被告のHに対し,三晃に作製させた抜き潰し加工済み線材のサンプルを渡して(甲42の1),1審被告における本件発明に係る螺旋状コイルインサートの製造方法の採用を提案した。しかし,1審被告は,これを採用しなかった。 その後,1審原告代表者は,平成11年5月10日,本件発明が将来何かの役に立つこともあろうかと考え(甲43),K弁理士に対し,アキュレイト販売から入手していたタングレス螺旋状コイルインサートの現物を手渡して,本件発明の内容を口頭で説明し,本件出願を依頼した。 その後,K弁理士は,同月19日に1審原告代表者から手渡された先行技術のリスト(甲38の1の手書き部分以外の部分。)に基づき,先行技術の内容(上記リスト掲載の乙2記載の先行技術である甲37)を把握した上で,本件出願書類を作成し,1審原告代表者の指示を受けて,同年6月16日,本件出願をした。 (3) 1審原告代表者が ,先行技術の内容(上記リスト掲載の乙2記載の先行技術である甲37)を把握した上で,本件出願書類を作成し,1審原告代表者の指示を受けて,同年6月16日,本件出願をした。 (3) 1審原告代表者が1審被告から本件発明を知得した事実の不存在ア(ア) 1審被告は,本件出願前にFCM-Aを使用して本件発明を実施していた旨主張するが,FCM-Aの組立図が提出されていないから,提出されている各種の図面からはFCM-Aが本件発明を実施する機械であると認めることはできない。 また,1審被告が福島工場でタングレス螺旋状コイルインサートの製造を開始したのは,本件出願後の平成11年10月26日であり(甲12,13,51等),1審被告が本件出願前にタングレス螺旋状コイル インサートの製造を開始していた事実は存在しない。 もっとも,1審被告提出の「FCM-A5号機」によるタングレス螺旋状コイルインサートの製造状況の動画(乙17の1)には,「型式FCM-A」及び「取得年月86年9月30日」との記載がある銘板の付された機械が映っているが,1審被告の5台の「FCM-A」のうち,昭和61年(1986年)9月時点で存在していたのは4台であり,残りの1台の製造年月は昭和62年10月であるから(乙19),乙17の1に映っている機械は銘板を差し替えた等の合理的な疑いが残る。 したがって,乙17の1は,1審被告が本件出願前にタングレス螺旋状コイルインサートの製造を開始していた事実の根拠にはならない。 (イ) 1審原告代表者は,平成8年6月から12月までの数か月間に,1審被告の福島工場を複数回訪問したことはあったが,それは,1審被告から1審原告に納品されていたスプリュー(タング付き螺旋状コイルインサート)に不具合が生じていたので,その対策や注意喚起を目的と ,1審被告の福島工場を複数回訪問したことはあったが,それは,1審被告から1審原告に納品されていたスプリュー(タング付き螺旋状コイルインサート)に不具合が生じていたので,その対策や注意喚起を目的とするものであり,タングレス螺旋状コイルインサートの製造ラインの視察のためではない。また,福島工場に設置されたFCM各機種(FCM-B1台を除く。)は,同年3月25日に1審被告の英国子会社が担保に供したのであるから,1審原告代表者が,福島工場でこれらの装置を用いてタングレス螺旋状コイルインサートを製造する様子を見ることは不可能であった。 このように1審原告代表者は,福島工場でタングレス螺旋状コイルインサートの製造現場を見ていない。 以上のとおり,1審原告代表者が本件出願前に福島工場を訪問した際にタングレス螺旋状コイルインサートの製造ラインを視察した事実は存在しない。 また,Fが本件出願前に福島工場に視察に来た1審原告代表者の求め に応じて,抜き潰し加工済み線材のサンプルを1審原告代表者に渡した事実も存在しない。 イ仮に1審原告代表者が1審被告におけるタングレス螺旋状コイルインサートの製造現場を見たとしても,その製造方法を理解できるものではない。例えば,乙201の1の撮影映像を用いて作成された乙201の2に掲載されたタングレス螺旋状コイルインサートのキャプチャー画像を見れば明らかなように,製品の形状は何倍にも拡大しなければ確認できないし,製造工程は,拡大したキャプチャー画像を見ても判然としない。 さらに,FCM各機種の通常の状態では,コイルを巻いている状態は筐体カバーにより見えなくなっているはずであり,また,抜き潰し加工部や巻き加工部を見ただけでは,それが抜き潰しを行っているのかコイル巻きを行っているのか分からない 状態では,コイルを巻いている状態は筐体カバーにより見えなくなっているはずであり,また,抜き潰し加工部や巻き加工部を見ただけでは,それが抜き潰しを行っているのかコイル巻きを行っているのか分からない。 ウ以上のとおり,1審原告代表者が本件出願前に1審被告から本件発明を知得した事実は存在しない。 (4) 本件特許権の権利行使に至る経緯ア本件出願を基礎とする優先権主張特許出願について,1審原告は平成15年に欧州特許(甲62)を取得し,平成16年には,ドイツで特許公報(甲63)が発行された。 これを受けて,1審原告は,平成17年,1審被告に欧州特許を取得した旨の書簡を送り,同年4月,交渉の席上で,1審被告の英国子会社から実施料の支払を受けるライセンス契約の締結を打診したが,1審被告が職務発明,先使用権の存在及び冒認出願による無効を主張した結果,同年7月15日ころ,交渉は決裂した(甲43,乙174ないし176)。 その後,1審原告は,平成19年9月28日に本件特許権の設定登録を受けたが,欧州特許に関する交渉の経緯等に鑑み,本件特許及び欧州特許につき,特段の権利行使をしないでいた。そもそも,1審原告と1審被告 は,相互に株式を持ち合い,相互に取締役を派遣するなどの関係が長年続いており,平成12年にそのような関係を解消してからも,良好な関係は続いていたという事情もあった。 イ 1審被告は,平成26年度の株主向けのパンフレット(甲9)で,1審被告の英国子会社(AdvanexEuropeLtd.)がタングレス螺旋状コイルインサート(「タングレス・コイルスレッド」)を日本等に輸出することを明らかにした。 1審原告代表者は,平成22年3月に1審原告がドイツのベルホフ社と技術交流することが明らかになった際,1審被告の当時の ト(「タングレス・コイルスレッド」)を日本等に輸出することを明らかにした。 1審原告代表者は,平成22年3月に1審原告がドイツのベルホフ社と技術交流することが明らかになった際,1審被告の当時のL会長から,「日本スプリューの海外進出が公に報じられた以上,今までのような友好的な関係ではいかない」と言われていたこともあり,上記パンフレット記載の情報を受け,これ以上本件特許権を権利行使しないでいると,日本市場において,1審原告の販売する「スプリュー」(タング付き螺旋状コイルインサート)と,1審被告の英国子会社が日本に輸出するタングレス螺旋状コイルインサートとが市場で競合し,1審原告の権益が侵食されると考えた。 そこで,1審原告は,平成27年11月10日,東京地方裁判所に本訴を提起した。 2 争点(1)イ(進歩性欠如による無効①(乙1発明を主引例,乙31発明及び乙32発明を副引例とするもの)の抗弁の成否)について当事者の主張は,原判決の「事実及び理由」の第3の3記載のとおりであるから,これを引用する。 3 争点(1)ウ(進歩性欠如による無効②(乙1’発明を主引例,乙31発明及び乙32発明を副引例とするもの)の抗弁の成否)について当事者の主張は,原判決の「事実及び理由」の第3の4記載のとおりであるから,これを引用する。 4 争点(1)エ(進歩性欠如による無効③(乙1’発明を主引例,乙57発明及び乙32発明を副引例とするもの)の抗弁の成否)について当事者の主張は,原判決の「事実及び理由」の第3の5記載のとおりであるから,これを引用する。 5 争点(1)オ(1審被告の先使用権の有無)について以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第3の2記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決1 れを引用する。 5 争点(1)オ(1審被告の先使用権の有無)について以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第3の2記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決13頁7行目から8行目にかけての「事業として行っていたところ」の次に,「(そうでないとしても,国内における譲渡の事業の準備を行っていた。)」を加える。 (2) 原判決13頁15行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。 「(5) 先使用権の不消滅1審被告の先使用権が消滅した旨の1審原告の主張は争う。」(3) 原判決14頁10行目から11行目にかけての「日本国内での製造及び輸出を事業として行っていた」というのであるから,」を「日本国内での製造及び輸出を事業として行っていた」というのであって,日本国内における譲渡及びその準備を行っていなかったのであるから,」と改める。 (4) 原判決14頁14行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。 「(4) 先使用権の消滅1審被告は,平成11年6月16日の本件出願の際,既にFCMによる事業を中止していた。したがって,1審被告が先使用権を有していたとしても,既に消滅している。」 6 争点(1)カ(職務発明による法定実施権の有無)について当事者の主張は,原判決の「事実及び理由」の第3の6記載のとおりであるから,これを引用する。 7 争点(2)ア(本訴の提起及び追行の違法性)について 〔1審被告の主張〕(1) 本件出願が冒認出願であることの認識1審原告は,1審原告代表者が本件発明の発明者でないこと及び1審原告が本件発明の真の発明者から特許権を承継していないことを知っていたにもかかわらず,1審原告代表者を発明者として本件出願をした。 また, 原告は,1審原告代表者が本件発明の発明者でないこと及び1審原告が本件発明の真の発明者から特許権を承継していないことを知っていたにもかかわらず,1審原告代表者を発明者として本件出願をした。 また,1審被告のHは,平成17年4月12日,1審原告の営業部のMに対し,本件出願の違法性を指摘(乙28)し,同年6月1日には,関連図面を示し,本件出願が違法な冒認出願である旨を説明した。 さらに,1審被告は,1審原告から,平成27年2月10日付け依頼書(乙34)に基づく通知を受けて,同年3月24日到達の内容証明郵便(乙35の1,2)をもって,1審原告に対し,本件特許が冒認出願による無効なものであって,特許法104条の3第1項により,1審原告が本件特許権を1審被告に行使することができない旨を通知するとともに,同年5月22日付け回答書(乙36の1,2)をもって,1審原告代表者がどのようにして本件発明に至ったのかを明らかにするように求めたが,1審原告はこれに応答しなかった。 (2) 1審被告の先使用権についての認識1審原告代表者は,1審被告のHからの聞き取り,1審被告の福島工場の製造ラインへの立入り,Fからの線材サンプルの取得等により,1審被告が本件発明の実施である事業を本件出願の際現に行っていることを,本件出願当時から知っていた。 また,1審被告のHは,平成17年6月1日,1審原告のMに対し,関連図面を示して,1審被告が本件発明について先使用権を有する旨を説明した。 さらに,1審被告は,1審原告から,平成27年2月10日付けの依頼書(乙34)に基づく通知を受けて,1審被告は,同年3月24日到達の内容証明郵便(乙35の1,2)をもって,1審原告に対し,被告製品の製造方 法は,本件出願前から1審被告において実施されており,1審 )に基づく通知を受けて,1審被告は,同年3月24日到達の内容証明郵便(乙35の1,2)をもって,1審原告に対し,被告製品の製造方 法は,本件出願前から1審被告において実施されており,1審被告は先使用権を有するから,本件特許権を侵害しない旨を通知した。 (3) 小括以上によれば,1審原告は,本訴における自己の主張が事実的,法律的根拠を欠くことを知りながら,又は,少なくとも通常人であれば容易に自己の主張が事実的,法律的根拠を欠くことを知り得たといえるのに,あえて本訴を提起した。そして,1審原告代表者が本件出願について全面的に関与していた以上,1審原告が冒認出願の事実について記憶違いや通常人にもあり得る思い違いをしていたことはあり得ない。 したがって,1審原告による本訴の提起は,裁判制度の趣旨に照らして著しく相当性を欠くものであるから,違法である。 さらに,1審原告は,本訴提起後の平成28年6月13日以降に1審被告から直送された乙号各証により,1審被告において先使用権が成立し,1審原告の本訴請求が棄却されるべきことが明らかになった後においても,いたずらに本訴を追行したから,本訴の追行自体も違法である。 〔1審原告の主張〕1審被告の主張は争う。 1審原告代表者は本件発明の真の発明者であり,1審原告は真の発明者である1審原告代表者から特許を受ける権利を承継しているから,本件特許は冒認出願に基づくものではない。 また,1審被告は本件特許権につき先使用権を有していない。 8 争点(2)イ(1審被告の損害額)について〔1審被告の主張〕(1) 本訴の防御のための弁護士費用・弁理士費用等ア 1審被告が,本訴の防御のため,1審被告訴訟代理人に対して支払う弁護士費用,1審被告補佐人に対して支払う弁理士費 〔1審被告の主張〕(1) 本訴の防御のための弁護士費用・弁理士費用等ア 1審被告が,本訴の防御のため,1審被告訴訟代理人に対して支払う弁護士費用,1審被告補佐人に対して支払う弁理士費用(いずれも消費税及 び地方消費税を含む。)及び1審被告の負担すべき直送送料等は,合計3741万4555円を下らない。 イ前記アの費用全額は,以下のとおり,不当訴訟によって通常生ずべき損害に該当する。 (ア) 1審被告は株式会社であって,その代表者は,事業において多忙であり,しかも,法律について十分な知識を有していないため,本人訴訟で応訴することができない。 また,1審原告の提起した本訴は,特許訴訟であり,他の訴訟分野に比べて専門化・技術化が著しく,類型的に攻撃防御のために多くの時間と労力を要する。 本件の争点は,冒認出願の成否,先使用権の有無,本件発明の進歩性の存否等多岐にわたり,立証に際しても,過去30数年間の膨大な関係資料(英文の技術文書を含む。)や存命関係者(海外在住者を含む。)を探索かつ検討して,最良証拠を精選しなければならないだけでなく,1審原告代表者の本人尋問及び関係者の証人尋問が不可避である。 その上,1審被告の文書及び図面には営業秘密が含まれているため,証拠提出に当たっては,その都度,秘密保持命令の申立て及び閲覧等制限の申立てにより,営業秘密の保護を行わなければならない。 したがって,1審原告の提起した本訴に対して1審被告が十分に防御するためには,特許訴訟に通じた訴訟代理人弁護士及び補佐人弁理士の援助を得ることが不可欠である。 (イ) 1審被告の弁護士費用及び弁理士費用は1 時間当たり3万円の単位時間請求(タイムチャージ)の約定により生じたものであるが(乙58,59,157,15 理士の援助を得ることが不可欠である。 (イ) 1審被告の弁護士費用及び弁理士費用は1 時間当たり3万円の単位時間請求(タイムチャージ)の約定により生じたものであるが(乙58,59,157,158),特許訴訟では単位時間請求制が取られることが多く,東京におけるタイムチャージの平均が3万7000円,採算ラインが3万円であること(乙156)からすると,前記アの弁護士費用 及び弁理士費用は,特許訴訟において通常発生する範囲のものであり,通常生ずべき損害に該当する。 ウ仮に前記アの費用が特別の事情によって生じた損害であったとしても,1審原告は,本訴提起前から弁護士及び弁理士に紛争解決を委任し,かつ1審被告が弁護士を代理人として選任の上,冒認出願による無効及び先使用権を含む防御を行うことを知っていたのであるから,自己の本訴提起により,1審被告が前記アの費用の支出を余儀なくされることを予見し,少なくとも予見可能であったものである。 (2) 反訴のための弁護士費用ア 1審被告は,反訴請求のための弁護士費用として316万2800円の支出を余儀なくされた。 イ前記アの費用は,直接損害である本訴防御費用(前記(1))の10パーセントを下回っている。 したがって,前記アの費用全額が,1審原告による本訴提起の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当の損害に該当する。 (3) 小括以上のとおり,1審原告による本訴提起の不法行為と相当因果関係のある損害は,前記(1)と(2)の合計額である4057万7355円を下らない。 よって,1審被告は,1審原告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,上記損害額の一部請求として2000万円及びこれに対する不法行為の日(本訴提起日)である平成27年11月10日から支払済みまで民法所定 被告は,1審原告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,上記損害額の一部請求として2000万円及びこれに対する不法行為の日(本訴提起日)である平成27年11月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 〔1審原告の主張〕1審被告の主張は争う。 本件審理の経過等に鑑みると,1審被告が本訴に関して出捐した弁護士費用等全額が,本訴提起と相当因果関係のある通常損害であるとはいえない。 また,本件特許権は,平成31年6月16日に存続期間が満了するため,本訴の訴訟物の価額も,差止請求につき3316万6129円と極めて低額であり,しかも,本訴には,特許権侵害に基づく損害賠償請求は含まれていない。 したがって,1審被告主張の損害額が高額すぎることは明らかである。 第4 当裁判所の判断当裁判所は,1審原告の本訴請求は,いずれも理由がなく,1審被告の反訴請求は,1審原告に対し,330万円及びこれに対する平成27年11月10日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるものと判断する。その理由は,次のとおりである。 1 本件発明の技術思想について(1) 本件明細書の記載事項等について本件明細書(甲4)の「発明の詳細な説明」には,次のような記載がある(下記記載中に引用する「図1」,「図2」,「図4ないし8」については別紙参照)。 ア 【発明の属する技術分野】【0001】本発明は,一般には,被加工物のタップ穴に挿入して使用される螺旋状コイルインサートに関し,特に,このような螺旋状コイルインサートを製造する螺旋状コイルインサートの製造方法に関するものである。 【従来の技術】【0002】従来,アルミニウムなどの軽金属,プ コイルインサートに関し,特に,このような螺旋状コイルインサートを製造する螺旋状コイルインサートの製造方法に関するものである。 【従来の技術】【0002】従来,アルミニウムなどの軽金属,プラスチック,木材,鋳鉄などからなる被加工物に直接タップ立てしたままでは雌ネジが弱くて高い締め付け力が得られない場合に,信頼性の高いネジ締結を保証するべく螺旋状コイルインサートが使用されている。 【0003】つまり,図4にはタング付螺旋状コイルインサート10Tを示すが,このような螺旋状コイルインサート10Tは,通常,菱形断面の,高抗張力特殊鋼線,例えば冷間加工された18-8ステンレス鋼線を円筒形のスプリング状に巻いて作製され,図5及び図6に示すように,被加工物100に形成されたタップ穴101へ,挿入工具にてねじ込まれて固定される。 その後,ボルト20などがこの螺旋状コイルインサート10Tを雌ネジとして螺合される。このように螺旋状コイルインサート10Tを使用することにより,高いネジ締結力を得ると共に,ボルト20を繰り返し挿入したり,取り外しすることも可能となる。 【0004】タング付螺旋状コイルインサート10Tは,上述のように,挿入工具にてタップ穴101へとねじ込まれるので,コイル自由端には,図4に示すように,挿入工具に係止されるタングと称される,コイルの直径方向へと折り曲げられた係止片11が設けられている。このタング11は,被加工物100のタップ穴101に固定された後は,除去する必要があり,そのためにタング11が形成されたコイル自由端に連接する第1コイル部分には切り欠き(ノッチ)8がコイルの外側側面に形成されている。 【0005】このようなタング付螺旋状コイルインサート10Tは,被加工物100に装着後,上述のように, 由端に連接する第1コイル部分には切り欠き(ノッチ)8がコイルの外側側面に形成されている。 【0005】このようなタング付螺旋状コイルインサート10Tは,被加工物100に装着後,上述のように,除去されたタング11を回収しなければならず,その作業が極めて煩雑であり,更には,分離されたタング11を回収し損なった場合にはこのタング11が電気的或は機械的故障を引き起こす原因となる可能性があるという理由から,図7に示すように,タング無しの螺旋状コイルインサート10が使用されることがある。 イ 【発明が解決しようとする課題】 【0006】タング無しの螺旋状コイルインサート10も又図5及び図6に示すように被加工物100のタップ穴101に装着されるが,タング付螺旋状コイルインサート10Tと異なり,装着後に,除去されたタング11を回収するといった作業の必要性はない。しかしながら,図7及び図8に示すように,挿入工具30の爪31の係止を可能とするために,コイルの両側のコイル自由端先端部に形成された頭部4,5に隣接してそれぞれ工具爪係止用の凹部6,7を形成する必要がある。更に,頭部4,5は,螺旋状コイルインサート10のタップ穴装着時に,コイル自由端先端部がタップ穴を損傷することがないように,例えば線材の長手軸線方向先端へと向かって僅かに先細に縮小された先細形状に成形されている。 【0007】このような頭部4,5及び挿入工具のための凹部6,7を有した螺旋状コイルインサート10は,従来,例えば,(1) 長尺の線材の先端部をプレス加工して,所望形状の,例えば先細形状の頭部4に成形する(フォーミング)。 (2) 所望形状の頭部4に隣接して,挿入工具のための凹部6をプレス加工により成形する(ノッチング)。 (3) 線材を送り出しながら 望形状の,例えば先細形状の頭部4に成形する(フォーミング)。 (2) 所望形状の頭部4に隣接して,挿入工具のための凹部6をプレス加工により成形する(ノッチング)。 (3) 線材を送り出しながら,上記頭部4を先頭として螺旋状コイルを作製し,所定の巻数の螺旋状コイルが形成された時点で線材を切断する。 (4) 切断されたコイルの端末を,上記(1),(2)と同様の加工により,所望形状の頭部5及び凹部7を成形する。 などといった多数の工程にて製造されている。従来,螺旋状コイルインサート10は上記諸工程にて1個づつ製造されており,生産性の点で問題があった。 【0008】 従って,本発明の目的は,螺旋状コイルインサートを製造する際に使用し,螺旋状コイルインサートを極めて効率よく,連続的に製造することができ,螺旋状コイルインサートの生産性を飛躍的に向上させることのできる螺旋状コイルインサート用線材を使用した螺旋状コイルインサートの製造方法を提供することである。 ウ 【課題を解決するための手段】【0009】上記目的は本発明に係る螺旋状コイルインサートの製造方法にて達成される。要約すれば,第1の本発明によると,(a)螺旋状コイルインサートを製造するための線材であって,線材の軸線方向に沿って所定長さ間隔にてコイル自由端成形部が複数形成され,前記コイル自由端成形部は,互いに離間する方へと線材の軸線に沿って線材の外形へと至る第1及び第2先細形状部と,前記第1及び第2先細形状部にそれぞれ隣接して形成された第1及び第2凹部とを有する螺旋状コイルインサート用線材を,前記コイル自由端成形部がコイル巻き加工時に内周側に位置するようにして連続してコイル製造機へと供給して1個の螺旋状コイルインサートのための所定巻数のコイル巻きを行い,所定巻数 ルインサート用線材を,前記コイル自由端成形部がコイル巻き加工時に内周側に位置するようにして連続してコイル製造機へと供給して1個の螺旋状コイルインサートのための所定巻数のコイル巻きを行い,所定巻数のコイル巻きが終了した後,前記コイル自由端成形部における前記第1先細形状部と前記第2先細形状部の連結位置にて切断分離し,(b)引き続いて,前記螺旋状コイルインサート用線材をコイル製造機へと供給して前記(a)工程を行い,次の螺旋状コイルインサートを製造する,ことを特徴とする螺旋状コイルインサートの製造方法が提供される。…エ 【0012】実施例1図1に本発明に係る螺旋状コイルインサート用線材1の一実施例を示す。 本実施例によると,線材1は,例えば菱形断面の,高抗張力特殊鋼線,例えば冷間加工された18-8ステンレス鋼線を使用することができる。 【0013】本発明に従えば,図1(a)に示すように,線材1は,その長手軸線方向に沿って,製造される螺旋状コイルインサート10の寸法形状によって決定される所定長さ間隔(P)にて,コイル自由端成形部2が形成される。 コイル自由端成形部2は,線材外形より縮小された断面形状とされる所定長さ(W)の連結部3と,この連結部3の両側に連接しており,且つ互いに離間する方へと線材1の軸線に沿って線材1の外形へと至る第1及び第2先細形状部4,5とを有する。この連結部3の長さ(W)は所望に応じて任意に設定することができ,場合によっては,なくすこともできる。 【0014】上記第1及び第2先細形状部4,5は,同じ形状とすることができ,又,異なる形状とすることもできるが,いずれにしても,製造される螺旋状コイルインサートのコイル自由端先端部に形成される先細形状頭部と実質的に同じ形状とされる。通常第 5は,同じ形状とすることができ,又,異なる形状とすることもできるが,いずれにしても,製造される螺旋状コイルインサートのコイル自由端先端部に形成される先細形状頭部と実質的に同じ形状とされる。通常第1及び第2先細形状部4,5の傾斜角度a,b,c,dは,これに限定されるものではないが,10゜~15゜とされ,すべて同じとすることもできるし,又,異なるものとすることもできる。 第1及び第2先細形状部4,5は,角部がないように丸く湾曲して形成することも可能である。 【0015】更に,コイル自由端成形部2は,上記第1及び第2先細形状部4,5にそれぞれ隣接して形成された凹部6,7を有する。この凹部6,7は,線材1の軸線に対してほぼ垂直に形成され,螺旋状コイルインサートとされた後においては挿入工具30の爪31(図8)に係合する係止面となる平面6a,7aと,この平面6a,7aより先細形状部4,5とは反対方向 へと湾曲して延在し,螺旋状コイルインサートとされた後においては挿入工具の爪に作用するカム面となる湾曲面6b,7bとにて画成される。つまり,この凹部6,7は,製造された螺旋状コイルインサートの頭部に隣接して形成される凹部となるものであり,実質的に螺旋状コイルインサートの凹部と同じ形状とされる。 【0016】上記構成のコイル自由端成形部2は,従来行われている螺旋状コイルインサート10の頭部4,5及び凹部6,7を成形する時のプレス加工と同様のプレス加工(フォーミング及びノッチング)にて成形することができる。各コイル自由端成形部2は,通常,線材1の軸線方向に沿って整列して形成される。 【0017】本発明の線材1を使用して,螺旋状コイルインサート10を作製する場合には,上記コイル自由端成形部2がコイル巻き加工時に内周側に位置するよ 1の軸線方向に沿って整列して形成される。 【0017】本発明の線材1を使用して,螺旋状コイルインサート10を作製する場合には,上記コイル自由端成形部2がコイル巻き加工時に内周側に位置するようにして,線材1を連続してコイル製造機へと供給する。コイル製造機は,通常使用されているものを使用することができ,コイル製造機へと供給された線材1は,図2(a)に示すように,その先端を,コイル製造機の把持手段で把持するか,場合によっては,把持しないで,コイル巻きされる。 【0018】所定巻数のコイル巻きが終了した段階で,連結部3から切断分離され,図2(b)に示すように,既に頭部4,5及び凹部6,7を備えた螺旋状コイルインサート10が製造される。1個の螺旋状コイルインサート10が製造されると,引き続いて線材1がコイル製造機へと連続的に供給され,次のコイル巻きが実施され,次の螺旋状コイルインサート10が製造される。 【0019】このように,本発明の線材1を使用すると,コイル製造機へと供給される線材1には,既に頭部及び凹部が形成されているので,コイル製造機へと供給される線材1に対しては必要に応じて最少限度のコイル頭部加工を施すことが要求されるに過ぎず,従来の製造法より生産性が飛躍的に向上する。 【0020】別法によれば,線材1を連続してコイル製造機へと供給することにより,複数の螺旋状コイルインサート10が,図2(c)に示すように,連続して作製される。次いで,この連続した螺旋状コイルインサート10をコイル自由端成形部の連結部3位置にて互いに切断分離することにより,図2(b)に示すように,螺旋状コイルインサート10が個々に分離される。 その後,必要に応じて,各螺旋状コイルインサート10の頭部4,5の切断部分をより滑らかにする にて互いに切断分離することにより,図2(b)に示すように,螺旋状コイルインサート10が個々に分離される。 その後,必要に応じて,各螺旋状コイルインサート10の頭部4,5の切断部分をより滑らかにするべく仕上げ加工することができる。 【0021】この製造方法によれば,螺旋状コイルインサート10が連続的に作製され,その後,螺旋状コイルインサートを個々に分離すれば良く,極めて生産性が向上する。更に,一つの螺旋状コイルインサート10の頭部4は,次の螺旋状コイルインサートの頭部5と連結部3を介して接続されているために,螺旋状コイルインサートの自由端構成部分が折損することなく円滑にコイル化することができ,生産性を更に向上させるといった利点もある。 【0022】又,上記実施例にて,線材1の断面形状は菱形断面であるとしたが,本発明の線材1は,これに限定されるものではなく,矩形,円形,三角形など任意の形状とし得る。 オ 【発明の効果】【0030】以上説明したように,本発明によれば,螺旋状コイルインサートを極めて効率よく,連続的に製造することができ,螺旋状コイルインサートの生産性を飛躍的に向上させ得る。 (2) 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載(前記前提事実(3))と本件明細書の記載事項を総合すれば,本件発明の技術的思想(技術的課題及びその解決手段))は,タング無しの螺旋状コイルインサートの従来の製造方法では,①線材の先端部をプレス加工して所望形状の頭部を成形(フォーミング),②所望形状の頭部に隣接して挿入工具のための凹部をプレス加工により成形(ノッチング),③上記頭部を先頭として,所定の巻数の螺旋状コイルが形成された時点で線材を切断,④切断されたコイルの端末に上記①及び②と同様の加工により所望形状の頭部及び 凹部をプレス加工により成形(ノッチング),③上記頭部を先頭として,所定の巻数の螺旋状コイルが形成された時点で線材を切断,④切断されたコイルの端末に上記①及び②と同様の加工により所望形状の頭部及び凹部を成形するなどといった多数の工程で螺旋状コイルインサートを1個づつ製造しており,生産性が低いという技術的課題があったため,本件発明は,上記技術的課題を解決するための手段として,互いに離間する方へと線材の軸線に沿って線材の外形へと至る第1及び第2先細形状部と,第1及び第2先細形状部にそれぞれ隣接して形成された第1及び第2凹部とを有する「コイル自由端成形部」が所定長さ間隔で既に複数形成された線材を,コイル自由端成形部がコイル巻き加工時に内周側に位置するようにして連続してコイル製造機へと供給して,所定巻数のコイル巻きを行い,1個分のコイル巻きが終了した後,コイル自由端成形部における第1先細形状部と第2先細形状部の連結位置で切断分離して,螺旋状コイルインサートを製造し,1個の螺旋状コイルインサートが製造されると,引き続いて上記線材がコイル製造機へと連続的に供給され,次のコイル巻きが実施され,次の螺旋状コイルインサートが製造される構成を採用したことによって,螺旋状コイルインサートを極めて効率よく,連続 的に製造することができ,螺旋状コイルインサートの生産性を飛躍的に向上させ得るという効果を奏するようにしたことにあるものと認められる。 2 認定事実前記前提事実と証拠(甲1ないし4,6,7,9ないし13,15ないし17,38,39,43,51,56,62,63,乙1ないし21,23,27,28,34,35,38ないし40,42ないし45,49ないし56,69ないし72,75ないし77,81,82,88,89,92ないし96,99, 1,56,62,63,乙1ないし21,23,27,28,34,35,38ないし40,42ないし45,49ないし56,69ないし72,75ないし77,81,82,88,89,92ないし96,99,108ないし120,126ないし133,138ないし141,173ないし178,181,187,189,190,198,201,203,204,208,209,214(枝番のあるものは,いずれも枝番を含む。 特に断りのない限り,以下同じ),証人B(原審),証人F(原審),1審原告代表者(原審))及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 (1)ア 1審被告(平成13年7月4日商号変更・旧商号「株式会社加藤スプリング製作所」)は,昭和21年11月22日に設立された,各種スプリング及びスプリング応用品,精密ばね等の製作及び販売等を目的とする株式会社である。 1審被告は,昭和60年7月6日,100%子会社のアキュレイト販売を設立し,アキュレイト販売は,1審被告製の精密ばね及び精密組立品の販売を行うようになった。 イ 1審原告代表者((省略)生)は,(省略)を卒業後,「コイル・スレッド・インサート」等の販売会社に勤務するようになったが,昭和47年,独立することを考えた。1審原告代表者は,三晃の当時の社長のJ(J会長)に対し,「コイル・スレッド・インサート」の線材サンプルの試作を依頼し,試作された線材サンプルを持参して,1審被告を訪れ,1審被告の当時の社長のLに対し,1審被告が,三晃が供給する材料で,「コイル・スレッド・インサート」(タング付き螺旋状コイルインサート)を製造 し,1審原告代表者がその国内販売を受け持つ旨の提案をし,L社長は,これを了承した。 そこで,1審原告代表者は,昭和47年12月23日,1審被告の製造 螺旋状コイルインサート)を製造 し,1審原告代表者がその国内販売を受け持つ旨の提案をし,L社長は,これを了承した。 そこで,1審原告代表者は,昭和47年12月23日,1審被告の製造するタング付き螺旋状コイルインサートの国内販売を行う会社として,各種コイル,各種スプリングの製造販売等を目的とする1審原告を設立し,その代表取締役に就任した。 1審原告は,そのころから,1審被告が製造するタング付き螺旋状コイルインサート(商品名「スプリュー」)の国内販売を開始した。 ウ 1審被告は,1審原告の設立の際,1審原告の株式の一部を引き受け,L社長が1審原告の取締役に就任した。 一方,1審原告代表者は,昭和52年12月23日から平成12年6月29日までの間,1審被告の監査役に就任していた。 (2)ア米国法人のレックスノルド社のNとOは,両端に先細形状と凹部を備えるタングレス螺旋状コイルインサートを発明し,1983年(昭和58年)9月,米国で特許出願をし,昭和59年9月1日,その優先権を主張して日本で特許出願をした。 レックスノルド社は,昭和58年,1審被告に対し,量産ベースでのタングレス螺旋状コイルインサートの製造委託を打診し,昭和59年5月,「コイルスレッドⅡ」の設計図面(乙3)を1審被告に交付した。 イ 1審被告は,昭和58年秋ころ,1審被告の柏崎工場において,レックスノルド社のN及びOと1審被告の従業員らとの間で,タングレス螺旋状コイルインサートについての打合せをした。 1審被告のBらは,その打合せ等を通じて,あらかじめ抜き潰し加工済みの線材をコイル巻きする方法によるタングレス螺旋状コイルインサートの製造方法を着想した。加工された線材を用いたタングレス螺旋状コイルインサートの製造方法としては,加工された線材をコイ き潰し加工済みの線材をコイル巻きする方法によるタングレス螺旋状コイルインサートの製造方法を着想した。加工された線材を用いたタングレス螺旋状コイルインサートの製造方法としては,加工された線材をコイル巻きした後に切 断する方法(本件発明の方法)と線材を切断した後にコイル巻きをする方法が考えられたが,1審被告は後者の方法を採用することとした。 そして,1審被告は,既存の汎用装置であるVRA―10Dを改造した装置で対応することとし,昭和59年1月,その組立図(乙139)を作成し,同年3月,試作結果に基づき組立図(乙140)の修正をしたが,このような既存装置の改造では限界があった。 1審被告は,昭和60年3月までに,VRA―10Dの後継機として,タングレス螺旋状コイルインサート製造専用の装置であるFCM-Ⅰの設計(乙4ないし14,19,20)を完了し,実機による試作を重ねた。 しかし,FCM―Ⅰも,VRA―10Dと同様,加工された線材を切断した後にコイル巻きをする方法を採用したものであったため,実用に耐え得るだけの凹部のR精度を持つタングレス螺旋状コイルインサートを試作できなかった。 そこで,1審被告は,上記方法の採用を断念して,加工された線材をコイル巻きした後に切断する方法を採用することとし,昭和61年ころ,新たな装置であるFCM-Aを開発し(乙14,17,69ないし72,92ないし96),高橋製作所に対し,その製造を発注し,同社から1審被告の柏崎工場に5台納品されたうちの1台の実機を用いて試作確認を行った。 その後,1審被告は,昭和62年から昭和63年にかけて,口径のより大きいタングレス螺旋状コイルインサートを製造するための装置として,FCM-Aの姉妹機種であるFCM-B及びFCM-Cを開発した。 (3)ア 審被告は,昭和62年から昭和63年にかけて,口径のより大きいタングレス螺旋状コイルインサートを製造するための装置として,FCM-Aの姉妹機種であるFCM-B及びFCM-Cを開発した。 (3)ア 1審被告は,昭和62年ころ,柏崎工場に設置された5台のFCM-Aを福島工場に移管し,同工場の製造ラインに設置した後,稼働を開始した。 また,1審被告は,昭和62年から昭和63年にかけて,高橋製作所から納品された5台のFCM-Bを福島工場に設置し,稼働を開始した。 さらに,1審被告は,昭和63年ころ,高橋製作所から柏崎工場に納品された1台のFCM-Cを福島工場に移管し,稼働を開始した。 1審被告は,平成3年3月までに,米国市場における販売を目的として,レックスノルド社に対し,福島工場に設置されたFCM各機種を使用して製造したタングレス螺旋状コイルインサートの輸出を開始した。 イ 1審被告は,平成7年10月,英国子会社に対し,2台のFCM―A,3台のFCM―Bを福島工場から移管し,さらに同年11月,3台のFCM―A,1台のFCM―B及び1台のFCM-Cを福島工場から移管した。 これにより,福島工場には,1台のFCM―Bだけが残されることとなり,スポット的なタングレス螺旋状コイルインサートの製造及び後継機種による試作向けの線材の製造のために使用された。その後,平成10年6月ころ,このFCM―Bが福島工場から英国に移管された。 ウ 1審被告は,平成6年の終わりころから平成7年の初めころにかけて,柏崎工場において,タングレス螺旋状コイルインサートの更なる高速化のため,複数の抜き潰し部位を形成した線材をコイル巻き及び切断するNDT3331Dの開発を開始し,平成9年から平成10年にかけて,大型のタングレス螺旋状コイルインサートの製造用に ートの更なる高速化のため,複数の抜き潰し部位を形成した線材をコイル巻き及び切断するNDT3331Dの開発を開始し,平成9年から平成10年にかけて,大型のタングレス螺旋状コイルインサートの製造用にNDT6834Dの開発を開始し,さらに,同年初めころ,柏崎工場において,4―40サイズのタングレス螺旋状コイルインサートを製造するための線材に加工を行うPFM―5の改造を開始した。 そして,1審被告は,平成11年以降,福島工場において,NDT3331D及びPFM-5を使用した北米市場向けのタングレス螺旋状コイルインサートの製造及び出荷を開始した。 (4) 1審被告は,平成10年ころ,タングレス螺旋状コイルインサートの需要が拡大する米国市場向け及び日本国内での販売準備のため,ケイナー社を含む3社との間で全世界を許諾範囲とするタングレス螺旋状コイルインサー トの製造,販売に関する実施許諾契約の締結に向けた交渉を進めるとともに,1審被告自らが国内でタングレス螺旋状コイルインサートを販売するため,その卸売りを1審原告に提案したが,1審原告代表者は,タングレス螺旋状コイルインサートを取り扱うことに消極的姿勢を示し,そのような取扱いをする場合には独占的な販売権を付与するように求めた。 しかし,1審被告は,1審原告にタングレス螺旋状コイルインサートの独占的な販売権を与えることには応じなかったため,1審原告と1審被告との間の交渉は進展しなかった。 そこで,1審被告は,同年11月ころ,アキュレイト販売と提携をすることとし,アキュレイト販売は,平成11年4月ころ,1審被告が製造するタングレス螺旋状コイルインサートが掲載されたカタログを展示会で配布した。 1審原告代表者は,同年5月17日ころ,この配布の事実を知り,1審被告に抗議した。 成11年4月ころ,1審被告が製造するタングレス螺旋状コイルインサートが掲載されたカタログを展示会で配布した。 1審原告代表者は,同年5月17日ころ,この配布の事実を知り,1審被告に抗議した。 その間の同年4月19日,1審被告は,ケイナー社との間で,全世界を許諾範囲とする非独占的実施許諾契約(乙55)を締結した。 (5)ア 1審原告代表者は,平成10年6月11日,1審被告を訪問し,1審被告の営業部長のHと面会し,その際に,Hに対し,三晃のJに依頼して作製させた凹部及びテーパ部が加工済みの線材のサンプルを渡した。Hは,同日,1審被告の社長のPに対し,「Q社長はサンプル材を持って来社されました。「これなんだけどサ,J会長が永年給料貰っていて悪いから,何かさせろ,というので,提案したら,作って来た。私の一存でやらせた,という事で(株)三晃製作所には迷惑かけたくないので,そこんとこ宜しく」という事でサンプル材料を貰いました。」と記載した電子メール(乙184)を送信した。 イ 1審原告代表者は,平成11年5月10日,K弁理士に対し,1審原告を出願人,1審原告代表者を発明者とする本件出願を委任した。その際, 1審原告代表者は,K弁理士に対し,加工済みの線材のサンプルとタングレス螺旋状コイルインサートの現物を交付した。 その後,1審原告代表者は,同月19日,K弁理士に対し,先行文献を記載したリスト(甲38)を交付した。K弁理士は,上記リストに記載された8件の特許公報を取り寄せ,出願書類を作成し,同年6月16日,1審原告の代理人として本件出願をした。 (6)ア 1審原告と1審被告は,平成12年3月,1審被告が1審原告に対してタング付き螺旋状コイルインサートの加工機械を売却し,タングレス螺旋状コイルインサートについては,1審原告 件出願をした。 (6)ア 1審原告と1審被告は,平成12年3月,1審被告が1審原告に対してタング付き螺旋状コイルインサートの加工機械を売却し,タングレス螺旋状コイルインサートについては,1審原告が1審被告の卸元の一つになる旨の合意(乙23)をした。 これにより,1審原告は,タング付き螺旋状コイルインサートの製造を行うことになったが,その技術指導は生産が軌道に乗るまでの間,1審被告が行うこととされた。 イ 1審原告代表者は,平成12年6月29日,1審被告の監査役を退任した。1審原告代表者は,1審被告の監査役として在任中,福島工場をしばしば訪問していた。 ウ 1審被告は,本件出願が公開された後の平成13年8月ころ,1審原告が本件出願をした事実を察知し,社内で対応策を協議した。 1審被告は,当時,1審原告とは平成12年に円満に関係を解消したと認識していたこと,1審原告の出願意図等が不明であったことなどから,当面静観するとともに,タングレス螺旋状コイルインサートの製造方法の自社出願を検討することとし,平成13年11月21日,被告特許の出願(乙212)をした。 (7)ア 1審原告は,平成17年3月31日,1審被告に対し,発明の名称を「螺旋状コイルインサート用線材」とする発明について欧州特許を取得した旨の書簡(乙27)を送り,同年4月26日には,1審被告の英国子会社か ら実施料を徴収したい旨の意向(乙173)を明らかにした。 これに対し,1審被告は,1審原告に対し,職務発明,先使用及び冒認を主張して,実施料を支払う必要はない旨回答し,同年6月24日,1審被告の上記反論を改めて述べた(乙175)。 その後,欧州特許をめぐる1審原告と1審被告間の交渉は,同年9月ころまでには,立ち消えとなった。 イ 1審原告は,平成19 答し,同年6月24日,1審被告の上記反論を改めて述べた(乙175)。 その後,欧州特許をめぐる1審原告と1審被告間の交渉は,同年9月ころまでには,立ち消えとなった。 イ 1審原告は,平成19年9月28日,本件特許権の設定登録を受けた。 その後,1審被告は,同年10月26日,被告特許の特許権の設定登録を受けた。 (8)ア 1審原告は,平成27年2月10日付け依頼書(乙34)をもって,1審被告に対し,被告製品の製造販売が本件特許権及び対応欧州特許の特許権の侵害の疑いがある旨を通知した。 これに対し,1審被告は,同年3月23日付け回答書(乙35)をもって,1審原告に対し,「844特許」(本件特許)は,「冒認出願にかかる無効な特許であると当社は認識しております。すなわち,844特許は,出願当時当社の監査役であったQ氏が,その地位の利用により当社の営業秘密である発明を知得して,自己が代表取締役の地位にある日本スプリュー株式会社(以下,「貴社」といいます。)に違法に開示し,貴社がQ氏の発明として冒認出願したものです。従いまして,貴社は当社に844特許の特許権を行使できません(特許法104条の3第1項)。」,「当社には先使用権(特許法79条)があることになりますし,844特許の発明は当社の職務発明に該当することになることから当社には通常実施権が生じることになります(特許法35条1項)。」,「上記の事情は,現在も貴社の代表取締役であるQ氏により貴社が熟知されているところであり,今回の「依頼書」における貴社の主張は,当社にとって理解に苦しむものであります。」などと指摘した。 イ 1審原告は,平成27年11月10日,東京地方裁判所に本訴を提起した。 ウ 1審被告は,平成28年5月13日,反訴を提起した。 3 本訴請求-争点 あります。」などと指摘した。 イ 1審原告は,平成27年11月10日,東京地方裁判所に本訴を提起した。 ウ 1審被告は,平成28年5月13日,反訴を提起した。 3 本訴請求-争点(1)ア(冒認出願による無効の抗弁の成否)について(1) 1審被告の従業員らの発明者性等について特許法123条2項は,同条1項6号の冒認出願に該当することを理由とする特許無効審判は,特許を受ける権利を有する者に限り,請求することができる旨を規定する。 ところで,同法2条1項は,「発明」とは,「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいうと規定し,同法70条1項は,「特許発明の技術的範囲は,願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。」と規定している。これらの規定によれば,「発明者」とは,当該発明の創作行為に現実に加担した者をいい,特許発明の「発明者」といえるためには,特許請求の範囲の記載によって具体化された当該特許発明の技術的思想(技術的課題及びその解決手段)を着想し,又は,その着想を具体化することに創作的に関与したことを必要とすると解するのが相当である。 そこで,以上を前提に,1審被告の従業員らが本件出願前に本件発明をし,1審被告がその特許を受ける権利を承継したかどうかについて判断する。 ア(ア) 1審被告は,タングレス螺旋状コイルインサートを製造するFCM-Aの設計図面として,昭和61年7月14日付けカム線図(乙69の1),同年8月8日付け図面(乙71),同月7日付け図面(乙72)及び同月17日付けカム線図(乙181)等を提出する。 a 乙71の図面には,名称欄に「コイルスレッドⅡ」,「No.4-40-2D」及び「FCM-A」,図番欄に「抜キ潰シ型」との記載がある。そして,図面の上 7日付けカム線図(乙181)等を提出する。 a 乙71の図面には,名称欄に「コイルスレッドⅡ」,「No.4-40-2D」及び「FCM-A」,図番欄に「抜キ潰シ型」との記載がある。そして,図面の上部には,パンチング部材様の図があり,下 部には,これと同等の形状のダイプレート様の図があるところ,これらは,抜き加工手段であると推認される。また,図面の左部には円の中心で十字に直行するように表示された2対4点の柱状の部材の図があるところ,これは潰し加工手段であると推認される。 したがって,乙71は,抜き潰し加工ユニットの設計図であると認められ,この工程に対応するカム動作は,カム線図(乙96,181)に示されている。また,乙92は,パンチ部材の詳細図,乙94の1ないし4はプレス部材の詳細図であると認められる。 b 乙72の図面には,名称欄に「コイルスレッドⅡ」,「No.4-40-2D」及び「FCM-A」との記載がある。そして,図面の中央部には,線材が1巻き以上巻かれた形で図示されており,その右上部にはコイル巻き用の芯材(乙95参照)の図があり,これらは,コイル巻き加工手段であると推認される。また,図面の中央部には,一対のカットツールが配置されており,その左下部には対向するカットツールがコイル巻きされた部分を線材本体から切断分離する状態が図示されている。 したがって,乙72はコイル巻き・切断ユニットの設計図であると認められ,この工程に対応するカム動作は,カム線図(乙69の1)に示されている。また,乙70は,カットツールの詳細図,乙69の2は,工程図であると認められる。 (イ)a 1審被告は,FCM-A及びFCM-Cの稼働状況を撮影した動画として,乙17の1及び乙18の1を提出する。 これらの各動画には,「型式FCM-A」,「取 2は,工程図であると認められる。 (イ)a 1審被告は,FCM-A及びFCM-Cの稼働状況を撮影した動画として,乙17の1及び乙18の1を提出する。 これらの各動画には,「型式FCM-A」,「取得年月86年9月30日」,「(株)加藤スプリング製作所福島工場」との銘板が付された装置(乙17の1)及び「型式FCM-C」,「取得年月88年2月29日」,「(株)加藤スプリング製作所福島工場」との銘板が 付された装置(乙18の1)において,コイル巻き後に切断分離する方法によるタングレス螺旋状コイルインサートの製造場面が撮影されている。 上記場面の撮影時期は平成27年12月であるが,上記各装置について製造方法に関する構成が大きく変えられたことをうかがわせる証拠はないことに照らすと,乙17の1及び乙18の1は,昭和61年ないし63年当時に1審被告がFCM-A及びFCM-Cを使用して本件発明を実施していたことを裏付けるものといえる。 b この点について1審原告は,1審被告提出の「FCM-A5号機」によるタングレス螺旋状コイルインサートの製造状況の動画(乙17の1)には,「型式FCM-A」及び「取得年月86年9月30日」との記載がある銘板の付された機械が映っているが,1審被告の5台の「FCM-A」のうち,昭和61年(1986年)9月時点で存在していたのは4台であり,残りの1台の製造年月は昭和62年10月であるから(乙19),乙17の1に映っている機械は銘板を差し替えた等の合理的な疑いが残り,乙17の1は,1審被告が本件出願前にFCM-Aを使用してタングレス螺旋状コイルインサートの製造を開始していたことの根拠にはならない旨主張する。 そこで検討するに,5台のFCM-Aについては,工場財団目録(乙19)の製造年月欄に,うち4台が昭和6 用してタングレス螺旋状コイルインサートの製造を開始していたことの根拠にはならない旨主張する。 そこで検討するに,5台のFCM-Aについては,工場財団目録(乙19)の製造年月欄に,うち4台が昭和61年9月,最後の1台が昭和62年10月と記載されているところ,最後の1台(FCM-A5号機。乙17の1,2)については,工場財団目録記載の製造年月(昭和62年10月)と銘板記載の取得年月(86年9月30日)とが整合しない。 しかしながら,工場財団目録の製造年月は,固定資産計上月を記載するものであり,改造の場合にはその年月を記載するものであるから, 実際に製造された年月とは異なることがあり得るものであることからすると,工場財団目録記載の製造年月の記載と一致しないことの一事をもって,上記銘板記載の取得年月が信用できないということはできない。 したがって,1審原告の上記主張は採用することができない。 (ウ) 前記(ア)及び(イ)の認定事実とFCM-A及びFCM-Cの開発経緯(前記2(2))によれば,1審被告は,昭和61年ころには,1審被告らの従業員らの設計したFCM-Aを製造し,本件発明を実施していたことが認められる。 そして,1審被告らの従業員らによるFCM-Aの設計は,前記1(2)認定の本件発明の技術的思想を着想し,その着想の具体化に創作的に関与する行為に当たるものと認められる。 したがって,1審被告らの従業員は,そのころ,本件発明を完成させたものと認められる。 イ FCM-Bは,FCM-Aとサイズ違いのファミリー機種(乙133)であり,抜き潰し加工が一定間隔で施された線材をコイル巻きしてから加工部分の中央で切断することを繰り返すもの(乙132)であるから,FCM-A及びFCM-Cと同様,本件発明を実施する装置であるものと であり,抜き潰し加工が一定間隔で施された線材をコイル巻きしてから加工部分の中央で切断することを繰り返すもの(乙132)であるから,FCM-A及びFCM-Cと同様,本件発明を実施する装置であるものと認められる。 そして,前記2(3)のとおり,昭和62年ころに5台のFCM-Aが福島工場に移管されて稼働を開始し,同年から昭和63年にかけて5台のFCM-B及び1台のFCM-Cが福島工場に設置されて稼働を開始したこと,これらのFCM-A各機種は,平成7年11月,1台のFCM-Bを残して,英国子会社に移管されたことが認められる。 したがって,1審被告は,昭和62年ころから平成7年11月までの間,福島工場において,これらのFCM-A各機種を使用してタングレス螺旋 状コイルインサートを製造することにより,本件発明を実施していたことが認められる。 ウ(ア) これに対し1審原告は,FCM-Aの全体を示す組立図が提出されていないから,1審被告の提出した各図面によっては,FCM-Aが本件発明を実施する機械であると認めることはできない旨主張する。 しかしながら,FCM-Aの全体を示す組立図がなくても,前記ア(ア)及び(イ)aの各種図面及びFCM-Aの稼働状況を撮影した動画によって,FCM-Aが本件発明を実施する装置であるものと認められるから,1審原告の上記主張は採用することができない。 (イ) また,1審原告は,1審被告が福島工場でタングレス螺旋状コイルインサートの製造を開始したのは,本件出願後の平成11年10月26日である(甲12,13,51等)旨主張する。 しかしながら,1審原告が根拠として挙げる甲12(1審被告が1審原告にあてた平成10年11月24日付けレター)及び甲13(1審被告が平成11年11月9日ころに発した三晃あての電子メール 主張する。 しかしながら,1審原告が根拠として挙げる甲12(1審被告が1審原告にあてた平成10年11月24日付けレター)及び甲13(1審被告が平成11年11月9日ころに発した三晃あての電子メール)には,「平成11年」になってから,福島工場におけるタングレス螺旋状コイルインサートの生産設備が整った旨の記載があり,甲51(1審原告代表者の手帳)には,同年10月26日に福島工場でタングレスの製造に入った旨の記載があることが認められるが,前記2(3)の認定事実に照らすと,これらの記載は,同年以降に福島工場で本格稼動したNDT3331D及びPFM-5によるタングレス螺旋状コイルインサートの製造を指すものと理解されるから,FCM各機種によって既に本件発明が実施されていたことと矛盾するものではない。 したがって,1審原告の上記主張は理由がない。 エ小括以上のとおり,1審被告らの従業員は,昭和61年ころ,FCM-Aを 設計することにより本件発明を完成し,1審被告は,昭和62年ころから平成7年11月までの間,福島工場において,FCM-A各機種を使用してタングレス螺旋状コイルインサートを製造することにより,本件発明を実施していたことが認められる。 上記認定事実によれば,1審被告は,本件発明の発明者である1審被告らの従業員らから,昭和62年ころまでに,本件発明の特許を受ける権利を承継したものと認めるのが相当である。 (2) 1審原告代表者の発明者性についてア(ア) 1審原告は,本件発明及び本件出願の経緯に関し,原審において,平成28年10月12日付け準備書面(5)をもって,①1審原告代表者は,平成11年ころ,当時タング付きコイルの改良型としてタング無しコイルが知られていたが,コイル巻き工程の前と後に各種プレス加工を施すため,コ 0月12日付け準備書面(5)をもって,①1審原告代表者は,平成11年ころ,当時タング付きコイルの改良型としてタング無しコイルが知られていたが,コイル巻き工程の前と後に各種プレス加工を施すため,コイルができあがるまでに時間がかかり,全体的に生産性が低いという問題があったため,どうしたら生産性を上げられるかと考え悩むうちに,コイル巻きの前に線材に対して必要なプレス加工を済ませておけば,コイル巻きのときにプレス加工の時間が省略でき,短時間でコイルを完成できるという考えがひらめき,本件発明を着想した,②1審原告代表者は,三晃のJに対し,本件発明に使う線材の試作を依頼し,その依頼から1か月ほど経過した同年5月10日ころ,Jとともに,できあがった試作品の線材を1審被告に持ち込み,採用を提案したが,応対した1審被告のHから,精度が低く,使い物にならないなどと言って,手にした試作品の線材を1審原告代表者に投げ返されたため,その際のHの無礼な態度に驚いた,③1審原告代表者は,試作品の線材を持ち帰り,その日のうちに,K弁理士に対し,試作品の線材とタング無しコイルの実物を渡して,本件発明の内容を口頭で説明して,本件出願を依頼し,また,先行文献のリストを提出し,その依頼から1か月ほど経過し た後,K弁理士から,本件出願が完了したという報告を受けた旨主張し,1審原告代表者作成の平成28年10月12日付け陳述書(甲11)中には上記主張と同内容の記載部分があり,1審原告代表者の供述中にも,上記主張に沿う供述部分がある。 また,K弁理士作成の同日付け陳述書(甲10)には,K弁理士は,平成11年5月10日,1審原告代表者から,コイルなどの現物見本を資料に使って本件発明の内容を直接口頭で説明を受けて,本件出願を受任し,1審原告代表者から提供された先行文 甲10)には,K弁理士は,平成11年5月10日,1審原告代表者から,コイルなどの現物見本を資料に使って本件発明の内容を直接口頭で説明を受けて,本件出願を受任し,1審原告代表者から提供された先行文献のリストをもとに先行文献を取り寄せて,これを参考に本件出願用の図面を作図し,同年6月16日,1審原告を出願人とする本件出願をした旨の記載部分があり,この記載部分は,上記③の主張に沿うものと認められる。 (イ) ところが,1審原告は,当審において,①1審原告代表者は,1審被告の営業担当者であったIから,タングレス螺旋状コイルインサートの歩留まりが悪く,製造した製品の中から良品を選別して出荷していたということを聞いていたところ,タングレス螺旋状コイルインサートの歩留まりについて,三晃のJや三晃で線材の加工を行っている社員とやり取りしている中で,コイルを巻く前に,線材に工具を引っ掛ける凹部(切欠き)を入れてみればよいのではないかと思い付き,本件発明を着想した,②1審原告代表者は,アキュレイト販売から,1審被告製のタングレス螺旋状コイルインサートの現物を入手し,平成10年ころ,Jに対し,入手した現物を渡して,タングレス螺旋状コイルインサートを製造するための抜き潰し加工済み線材のサンプルの作製を提案・依頼し,三晃は,金型を用いてそのサンプルを作製した,③1審原告代表者は,同年6月11日,1審被告を訪問し,1審被告のHに対し,三晃に作製させた抜き潰し加工済み線材のサンプルを渡して(甲42の1),1審被告における本件発明に係る螺旋状コイルインサートの製造方法の採用 を提案したが,1審被告は,これを採用しなかった,④1審原告代表者は,平成11年5月10日,本件発明が将来何かの役に立つこともあろうかと考え,K弁理士に対し,アキュレイト販売から の採用 を提案したが,1審被告は,これを採用しなかった,④1審原告代表者は,平成11年5月10日,本件発明が将来何かの役に立つこともあろうかと考え,K弁理士に対し,アキュレイト販売から入手していたタングレス螺旋状コイルインサートの現物を手渡して,本件発明の内容を口頭で説明し,本件出願を依頼し,その後,K弁理士は,1審原告代表者から手渡された先行技術のリストに基づき,先行技術の内容を把握した上で,1審原告代表者の指示を受けて,同年6月16日,本件出願をした旨主張するに至った。 (ウ) 1審原告の当審における主張と原審における主張とを対比すると,①1審原告代表者が本件発明を着想するに至った時期(原審では「平成11年ころ」である旨主張していたのに対し,当審では「平成10年ころ」である旨主張している点),②1審原告代表者の本件発明の着想の経緯,③1審原告代表者が三晃のJに対し線材のサンプルの作製を依頼した時期(原審では「平成11年ころ」である旨主張していたのに対し,当審では「平成10年ころ」である旨主張している点),④1審原告代表者が1審被告を訪れて線材の試作サンプルを1審被告のHに示した時期(原審では「平成11年5月10日ころ」である旨主張していたのに対し,当審では「平成10年6月11日」である旨主張している点),⑤1審原告代表者のK弁理士に対する本件出願の依頼の経緯(原審では,1審原告代表者が1審被告を訪れた際に応対したHの無礼な態度に驚き,その日のうちにK弁理士に対し,1審被告から持ち帰った「試作品の線材」と「タング無しコイルの実物」を渡して本件出願を依頼した旨主張していたのに対し,当審では,1審原告代表者が本件発明が将来何かの役に立つこともあろうかと考え,「平成11年5月10日」に,K弁理士に対し,「アキュレイト販 の実物」を渡して本件出願を依頼した旨主張していたのに対し,当審では,1審原告代表者が本件発明が将来何かの役に立つこともあろうかと考え,「平成11年5月10日」に,K弁理士に対し,「アキュレイト販売から入手していたタングレス螺旋状コイルインサートの現物」を手渡して,本件出願を依頼した旨主張している 点)などにおいて,大きく変遷し,その変遷の理由について合理的な説明がされていない。 しかるところ,上記変遷した部分に係る1審原告の当審における主張に沿う証拠としては,1審原告代表者の手帳(「BusinessDiary’98」。甲42)の「予定表」中の「6月11日」欄に「H部長線材渡しタングレス」との記載部分,1審原告のMが2005年(平成17年)6月9日に1審被告のHに送信した電子メール(甲43)中の「(1審原告代表者が)「将来何かの役に立つ事も有ろうかと考え特許出願した。」と申しております。」,「提案の日時は1998年6月11日」,「提案の場所は株式会社アドバネックス本社社長室」との記載部分がある。 しかし,これらの証拠からは,1審原告代表者が平成10年6月11日に1審被告を訪れてHに対してタングレスの線材を渡した事実を認定することができるものの,当審における1審原告の主張に係る1審原告代表者が本件発明を着想するに至った時期及び着想の経緯,1審原告主張の上記線材を三晃のJに作製させるに至った経緯,1審原告代表者のK弁理士に対する本件出願の依頼の経緯を認めることはできない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。 また,1審原告代表者が1審被告のHに渡したタングレスの線材は,凹部及びテーパ部が加工済みであったことが認められるものの,上記のとおり,1審原告主張の上記線材を三晃のJに作製させるに至った経緯を認めるに足りる証 代表者が1審被告のHに渡したタングレスの線材は,凹部及びテーパ部が加工済みであったことが認められるものの,上記のとおり,1審原告主張の上記線材を三晃のJに作製させるに至った経緯を認めるに足りる証拠はない以上,上記のような形状の線材が存在するからといって直ちに1審原告代表者が本件発明をしたものと認めることはできない。 イかえって,以下のような事情が認められる。 (ア)a 前記2(5)ア認定のとおり,1審原告代表者が平成10年6月11 日に1審被告のHに渡した凹部及びテーパ部が加工済みのタングレスの線材は,1審原告代表者が三晃のJに依頼して作製されたものと認められる。 しかるところ,1審原告代表者が,1審原告を設立し,1審原告が1審被告が製造するタング付き螺旋状コイルインサート(商品名「スプリュー」)を販売するに至った経緯(前記2(1)),1審原告代表者が,1審被告の監査役に在任中に,福島工場をしばしば訪問しており(前記2(6)イ),その際に,同工場の製造ラインを視察する機会があったものと認められること,1審原告代表者は,本件出願をK弁理士に依頼する際に,本件発明の内容を口頭で説明していること(前記2(5)イ)を総合すると,1審原告代表者は,螺旋状コイルインサートの形状,タング付きとタングレスの違い,螺旋状コイルインサートの材料として用いる線材の形状,螺旋状コイルインサートの一般的な製造方法等について知識を有していたものと認められる。 そして,1審原告代表者が,福島工場を訪問した際に1審被告の従業員から福島工場におけるタングレス螺旋状コイルインサートの製造状況等について話を聞いたり,取引関係者と話をする中で,福島工場では,凹部及びテーパ部が加工済みのタングレスの線材を使用してタングレス螺旋状コイルインサートを製 ングレス螺旋状コイルインサートの製造状況等について話を聞いたり,取引関係者と話をする中で,福島工場では,凹部及びテーパ部が加工済みのタングレスの線材を使用してタングレス螺旋状コイルインサートを製造していることを認識するに至ったものと推認することができる。 そうすると,1審原告代表者が,自ら本件発明をしたものでないとしても,三晃のJに対し,凹部及びテーパ部が加工済みのタングレスの線材のサンプルの作製を依頼することは可能であったものと認められる。また,三晃は,1審被告に対し,螺旋状コイルインサート用の線材を供給していたから(前記2(1)イ),タングレス螺旋状コイルインサート及びその材料の線材の形状,螺旋状コイルインサートの一般 的な製造方法等について知識を有していたものと認められ,1審原告代表者から詳細な説明を受けたり,具体的な線材のサンプルを示されなくても,自社の螺旋状コイルインサート用の線材を加工して1審原告代表者から依頼のあった上記加工済みサンプルを作製することが可能であったものと認められる。 したがって,1審原告代表者が上記加工済みのタングレスの線材を三晃のJに依頼して作製させたことは,1審原告代表者が本件発明をしたことの裏付けとなるものではないというべきである。 b この点に関し1審被告は,1審原告代表者は,1審被告の福島工場におけるタングレス螺旋状コイルインサートの製造ラインの視察やその視察の際の加工済みの線材の端材の受領を通じて,1審被告がFCM各機種を使用して本件発明の方法によりタングレス螺旋状コイルインサートを製造していることを認識し,1審被告から本件発明を知得した旨主張する。 しかしながら,タングレス螺旋状コイルインサートは,コイル外径3.581~3.835ミリメートル,線材径0.660ミリ ートを製造していることを認識し,1審被告から本件発明を知得した旨主張する。 しかしながら,タングレス螺旋状コイルインサートは,コイル外径3.581~3.835ミリメートル,線材径0.660ミリメートルの「4-40サイズ」,最初に量産試作を行ったコイル外径4.394~4.648ミリメートル,線材径0.660ミリメートルの「6-40サイズ」(乙3,73,88,133),コイル外径7.772~8.280ミリメートル,線材径0.914ミリメートルの「1/4-28サイズ」(乙73),4-40サイズとほぼ同サイズの「M4-1D」(乙97,98)など様々なサイズがあり,いずれも手指の爪の先ほどの大きさの微小な製品であることに照らすと,タングレス螺旋状コイルインサートの現物やその製造過程を注意深く観察しなければ,具体的な製造方法を認識することは困難であるというべきである。 また,福島工場で稼働していたFCM-A及びFCM-Cの加工済み線材のコイル巻き加工部への供給部分(乙17の2の3頁(4),乙18の2の3頁(4))は,筐体カバーに覆われ(乙17の2の1頁,乙18の2の1頁),外部から視認することができない上,コイル巻き後の製品の端部となる部分の凹部及び先細形状部は微小であり,製造過程の線材の形状を知らない者が,筐体カバーが覆われた状態で装置が稼働する通常の製造ラインを見ただけで,その形状を知ることができるとは考え難い。そして,FCM-Cを撮影した動画(乙201の1)についても,たびたびピント調整を行っていることからうかがわれるように,単に眺めていただけでは,製造過程の線材の形状を認識することは困難であると認められる。 次に,証人Fの供述中には,1審原告代表者が,平成7年よりも前に,福島工場のタングレス螺旋状コイルインサ に,単に眺めていただけでは,製造過程の線材の形状を認識することは困難であると認められる。 次に,証人Fの供述中には,1審原告代表者が,平成7年よりも前に,福島工場のタングレス螺旋状コイルインサートの製造ラインの視察に来た際,1審原告代表者の希望により,抜き潰し調整用で加工した線材の端材を渡した,その後,1審原告の本社ビルの新築工事をしていた平成10年ころ,1審原告代表者から抜き潰し加工の入った線材を見せられ,以前渡した端材の稚拙なコピー品だと思った旨の供述部分がある。 しかしながら,証人Fの上記供述部分には,客観的裏付けがないこと,平成7年よりも前に1審原告代表者に渡した端材のコピー品を平成10年ころに見せられたという経緯もいかにも不自然であることに照らすと,証人Fの上記供述部分は直ちに措信することができず,他に1審原告代表者が1審被告の福島工場におけるタングレス螺旋状コイルインサートの製造ラインの視察の際に加工済みの線材の端材を受領したことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,1審被告の上記主張は採用することができない。 (イ) 次に,前記2(7)及び(8)の認定事実によれば,1審原告は,本件出願後の平成17年3月31日,1審被告に対し,発明の名称を「螺旋状コイルインサート用線材」とする発明について欧州特許を取得した旨の書簡(乙27)を送り,同年4月26日には,1審被告の英国子会社から実施料を徴収したい旨の意向を明示したのに対し,1審被告は,1審原告に対し,職務発明,先使用権及び冒認出願を主張して実施料を支払う必要はない旨を回答した後,同年9月ころまでに上記実施料要求の交渉は立ち消えとなったこと,1審原告は,平成19年9月28日に本件特許権の設定登録を受けた後,平成27年2月10日付け依頼書をもって う必要はない旨を回答した後,同年9月ころまでに上記実施料要求の交渉は立ち消えとなったこと,1審原告は,平成19年9月28日に本件特許権の設定登録を受けた後,平成27年2月10日付け依頼書をもって,1審被告の製造販売が本件特許権侵害の疑いがある旨を通知するまでの7年以上もの間,1審被告が本件発明を実施してタングレス螺旋状コイルインサートを製造販売していることを知りながら,1審被告に対し,本件特許権に基づく権利行使をしなかったことが認められる。 このような事情は,1審原告代表者が本件発明の真の発明者であり,本件出願が真の発明者から承継した特許を受ける権利に基づいてされたものであるとすれば,不自然である。 この点に関し1審原告は,本件特許権の設定登録を受けた後本件特許権に基づく権利行使をしなかった理由は,欧州特許に関する交渉の経緯,1審原告と1審被告との間の長年にわたる密接な関係にあったことなどによる旨主張する。 しかしながら,1審原告と1審被告が互いに株式を持ち合う関係は,平成12年3月に解消されたこと(甲23),1審原告代表者は,同年6月29日,1審被告の監査役を退任し(前記2(6)イ),1審被告のLは,平成19年6月11日,1審原告の取締役を退任したこと(乙21)などに照らすと,1審原告の挙げる理由は,説得力のあるものとはいえない。 ウ前記ア及びイの認定事実に照らすと,1審原告代表者の供述及び前記陳述書(甲11)中の1審原告代表者が本件発明をした旨の部分は措信することができない。他に1審原告代表者が本件発明の技術的思想(前記1(2))を着想し,又は,その着想を具体化することに創作的に関与したことを認めるに足りる証拠はない。 (3) 小括以上によれば,1審原告代表者は本件発明の発明者ではないものと認められ 前記1(2))を着想し,又は,その着想を具体化することに創作的に関与したことを認めるに足りる証拠はない。 (3) 小括以上によれば,1審原告代表者は本件発明の発明者ではないものと認められ,また,1審原告は,本件発明の発明者から特許を受ける権利を承継したものと認めることはできないから,本件特許は,その発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたものとして,特許法123条1項6号の無効理由を有するというべきである。 よって,1審原告は,特許法104条の3第1項の規定により,1審被告に対し,本件特許に基づく権利行使をすることができないから,その余の点について判断するまでもなく,1審原告の本訴請求はいずれも理由がない。 4 反訴請求-争点(2)ア(本訴の提起及び追行の違法性)及びイ(1審被告の損害額)について(1) 本訴の提起及び追行の違法性について法的紛争の当事者が紛争の解決を求めて訴えを提起することは,原則として正当な行為であり,訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは,当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者が,そのことを知りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である(最高裁昭和60年(オ)第122号同63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁,最高裁平成7年(オ)第160号同11年4月22日第一小法廷判決・裁判集民事1 93号85頁,最高裁平成21年(受)第1539号同22年7月9日第二小法廷判決・裁判集民事234号207頁参照)。 これを本件についてみる 11年4月22日第一小法廷判決・裁判集民事1 93号85頁,最高裁平成21年(受)第1539号同22年7月9日第二小法廷判決・裁判集民事234号207頁参照)。 これを本件についてみると,前記2(8)のとおり,1審原告は,本訴提起前の平成27年3月23日付け回答書をもって,1審被告から,1審原告代表者は本件発明者の真の発明者ではなく,1審原告代表者を発明者とする本件出願は冒認出願であり,本件特許には冒認出願の無効理由があるから,特許法104条の3第1項により,本件特許権を行使することができない旨の指摘を受けていたにもかかわらず,同年11月10日に本訴を提起したものであること,前記3(2)で説示したとおり,1審原告代表者が本件発明の発明者であることを裏付ける客観的な証拠がないのみならず,1審原告代表者が本件発明を着想するに至った時期及び着想の経緯,1審原告代表者のK弁理士に対する本件出願の依頼の経緯などの1審原告代表者が本件発明をしたことに関する重要な部分の主張を大きく変遷させ,変遷後の当審における1審原告の主張に沿う証拠はほとんど提出されていないものと認められることに照らすと,1審原告においては,本訴で主張する権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて本訴を提起し,これを追行したものと認められる。 そうすると,1審原告による本訴の提起及び追行は,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものといえるから,1審被告に対する違法な行為に当たるものと認められる。 (2) 1審被告の損害額についてア本訴の防御のための弁護士費用・弁理士費用等(ア) 相手方の違法行為によって自己の権利を侵害された者が自己の権利の擁護上,訴えを提起し,又は 認められる。 (2) 1審被告の損害額についてア本訴の防御のための弁護士費用・弁理士費用等(ア) 相手方の違法行為によって自己の権利を侵害された者が自己の権利の擁護上,訴えを提起し,又は応訴することを余儀なくされた場合においては,その弁護士費用は,事案の難易,請求額,認容された額その他 諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り,不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきであり(最高裁昭和41年(オ)第280号同昭和44年2月27日第一小法廷判決・民集23巻2号441頁参照),必ずしも常に不法行為の被害者が現実に支払い,又は負担した弁護士費用等債務の全額に及ぶものではないと解するのが相当である(大審院昭和16年9月30日判決・民集20巻20号1243頁参照)。 そこで検討するに,証拠(乙58ないし68,101ないし107,122ないし125,134ないし137,142ないし143,152ないし154,157ないし161,199,200,217ないし220(いずれも枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,1審被告は,本訴事件に応訴するため,1審被告訴訟代理人弁護士との間で訴訟代理の委任契約を締結するとともに,特許業務法人との間で補佐人弁理士の委任契約を締結し,タイムチャージ制による報酬額及び郵送料,謄写費用その他各種手続費用の負担をし,それらの合計が3741万4555円であることが認められる。 そして,本訴の事案の内容,原審及び当審の審理経過,1審被告の負担した弁護士報酬・弁理士報酬等の額その他本件に表れた諸般の事情を斟酌すると,1審被告の負担した上記各費用のうち,1審原告の不法行為と相当因果関係のある費用は,300万円と認めるのが相当である。 (ウ) 1審被告は,1審被告の支出した弁護 件に表れた諸般の事情を斟酌すると,1審被告の負担した上記各費用のうち,1審原告の不法行為と相当因果関係のある費用は,300万円と認めるのが相当である。 (ウ) 1審被告は,1審被告の支出した弁護士費用等の全額が通常生ずべき損害に該当し,仮にそうでないとしても,予見可能な特別の事情によって生じた損害に該当する旨主張する。 しかしながら,前記(ア)認定のとおり,1審被告の負担した弁護士費用等の各費用のうち,1審原告の不法行為と相当因果関係のある費用は300万円と認められ,それを超える部分は,通常生ずべき損害に該当 するものとはいえないし,被告において予見可能な特別の事情によって生じた損害に該当するものと認めることもできない。 したがって,1審被告の上記主張は採用することができない。 イ反訴のための弁護士費用反訴の事案の内容,原審及び当審の審理経過,1審被告の負担した弁護士報酬の額その他本件に表れた諸般の事情を斟酌すると,1審被告の反訴のための弁護士費用(316万2800円)のうち,1審原告の不法行為と相当因果関係のある費用は30万円と認めるのが相当である。 ウ小括以上によれば,1審原告は,1審被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,前記アとイの合計額330万円及びこれに対する不法行為の日(本訴提起日)である平成27年11月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 したがって,1審被告の反訴請求は,上記の限度で理由がある。 5 結論以上によれば,1審原告の本訴請求はいずれも理由がなく,1審被告の反訴請求は330万円及びこれに対する平成27年11月10日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由がある。 したが よれば,1審原告の本訴請求はいずれも理由がなく,1審被告の反訴請求は330万円及びこれに対する平成27年11月10日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由がある。したがって,原判決中,これと同旨の本訴請求に関する部分は相当であり,これと異なる反訴請求に関する部分は一部相当でないから,主文のとおり判決する。 主文 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官古河謙一 裁判官関根澄子 (別紙) 【図1】 【図2】 【図4】 【図5】 【図6】 【図7】 【図8】

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