昭和56(行ウ)89 源泉所得税納税告知処分等取消請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和59年10月16日 東京地方裁判所 租税
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【DRY-RUN】○ 主文 一 原告の請求をいずれも棄却する。 二 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求めた裁判 一 請求の趣旨 被告が原告に対して昭和五四年一〇月三一日付けでした別表(一)記載の源

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判決文本文7,215 文字)

○ 主文一原告の請求をいずれも棄却する。 二訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一請求の趣旨被告が原告に対して昭和五四年一〇月三一日付けでした別表(一)記載の源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定(ただし、昭和五〇年一〇月分を除き、昭和五一年二月分、三月分、昭和五四年二月分については、各一部取消し後の別表(二)記載の額)を取り消す。 二請求の趣旨に対する答弁主文同旨第二当事者の主張一請求の原因 1 納税告知処分及び加算税賦課決定被告は、原告に対し、昭和五四年一〇月三一日付けで、原告が源泉徴収して納付すべき著作権使用料(いわゆる印税)の源泉徴収に係る所得税(以下「源泉所得税」という。)について、別表(一)記載のとおり納税告知処分及び不納付加算税賦課決定をした。 2 前置手続右納税告知処分及び賦課決定に対する異議申立て及びこれについての決定並びに審査請求及びこれについての裁決の経緯は、別表(三)記載のとおりであり、同表(3)の異議決定により、昭和五〇年一〇月分については源泉所得税額の全額が、昭和五一年二月分、三月分、昭和五四年二月分については源泉所得税額及び不納付加算税額の各一部が取り消され、別表(二)記載のとおりとなつた(以下、右異議決定による一部取消し後の右納税告知処分を「本件処分」と、同右賦課決定を「本件賦課決定」という。)。 3 結語よつて、原告は違法な本件処分及び本件賦課決定の取消しを求める。 二請求の原因に対する認否請求原因1及び2の事実は認める。 三抗弁 1 原告の本件源泉所得税の納税義務等原告は、本件処分に係る源泉所得税(以下「本件源泉所得税」という。)を納付すべき義務を負つていたところ、所得税法二〇四条一項一号所定の納期限に納付しなかつた。 2 原告の本件源泉所得税の納税義務等原告は、本件処分に係る源泉所得税(以下「本件源泉所得税」という。)を納付すべき義務を負つていたところ、所得税法二〇四条一項一号所定の納期限に納付しなかつた。 2 本件源泉所得税の納税地等(一) 原告は肩書住所地において教科書、図書等の出版及び販売を業とする株式会社であるが、昭和三四年ころから本件処分及び本件賦課決定の時まで、東京都千代田区<地名略>に東京支店の名称を付した営業所(以下「東京支店」という。)を設け、同所においては、主として東京圏に所在する各大学の教科書、図書の出版業務を取り扱うと共に、取次店を介して右各大学の生活協同組合の売店等へ右出版物等を納品する等の教科書販売業務を行い、右支店による販売代金は同支店名義で開設されている銀行預金口座に振り込ませていた。 (二) 東京支店は、同支店名義の右銀行預金口座に振り込まれた金員をもつて、同支店の従業員の給与及び同支店事務所の賃借料等の一般管理費並びに著作権者に支払う印税等の同支店に係る業務遂行上必要な経費を支弁し、残額は原告の肩書住所地の京都本店(以下「京都本店」という。)に送金していた。 (三) 東京支店は、著作権者に対し本件源泉所得税に係る印税(以下「本件印税」という。)を支払うため、各著作権者ごとに「小売価格×印税率×販売部数」の算式でもつて印税額を計算し、所得税法二〇五条一号に基づいて算出した源泉所得税額を控除した後の金員(以下「税引き後の本件印税」という。)を各著作権者の要望に応じて、郵便による送金、預金口座への振込みあるいは現金直接渡し等の方法によつて支払つていた。 そして、東京支店は、著作権者に対して支払つた本件印税について、同支店備付の帳簿の仮払金勘定の借方欄に税引き後の本件印税額を、その摘要欄に支払つた著作権者名を、また、右帳簿の によつて支払つていた。 そして、東京支店は、著作権者に対して支払つた本件印税について、同支店備付の帳簿の仮払金勘定の借方欄に税引き後の本件印税額を、その摘要欄に支払つた著作権者名を、また、右帳簿の預り金勘定に本件源泉所得税額を、それぞれ記載して経理処理を行つていた。 (四) すなわち、東京支店は、本件印税に関し、所得税法一七条に規定する原告の事務所、事業所その他これらに準ずるもので、著作権者に支払う印税の支払事務を取り扱うものに該当する。したがつて、同支店の所在地が本件源泉所得税の納税地である。 3 よつて、東京支店の所在地を所轄する被告がした本件処分は適法であり、同処分を前提とした本件賦課決定も適法である。 四抗弁に対する認否 1 抗弁1の事実は認める。 2 同2(一)の事実は認める。 しかし、東京支店は、支店登記がされておらず、また、東京支店名義の銀行預金口座は、単なる取引上の信用のため開設したものであり、支店とはいつても、京都本店の事務の連絡場所程度の実体しかない。 3 同2(三)の事実のうち、東京支店が同支店名義の銀行預金口座に振り込まれた金員をもつて同支店の従業員の給与及び同支店事務所の賃借料等の一般管理費を支弁していたことは認めるが、東京支店が著作権者に支払う印税等を支弁していたことは否認する。 東京支店の必要経費は、京都本店から送金すべきところ、これらの手続を省略し、便宜上東京支店名義の銀行預金口座の金員を使用しているにすぎず、このような金銭の処理はすべて京都本店の指示に基づいている。 4 同2(三)の前段の事実は否認する。同後段の事実のうち、東京支店が著作権者に対し印税を支払つた場合、同支店備付の帳簿の仮払金勘定に被告主張のような経理処理をしていたことは認めるが、その余の事実は否認する。 著作権者から京都本店に対し印税の支払 実のうち、東京支店が著作権者に対し印税を支払つた場合、同支店備付の帳簿の仮払金勘定に被告主張のような経理処理をしていたことは認めるが、その余の事実は否認する。 著作権者から京都本店に対し印税の支払方法の指定があり、それに基づき京都本店からの指示により、東京支店が右印税を支払つたことはあるが、同支店独自の判断で支払つたことはない。それゆえ、東京支店で「仮払金勘定」として記帳されるのは税引き後の印税額であつて、これは東京支店の保管金の経理状況を明らかにする必要からなされるにすぎない。なお、源泉所得税は「預り」となるが、これは京都本店において明らかであるから、東京支店には「源泉所得税の預り金勘定」なる記帳はない。 5 同2(四)は争う。 教科書の出版に伴い著作権者に支払う印税は、「販売価格×印税率×販売部数」で算出されるものであるが、原告は東京都における教科書の販売事務を東京支店に担当させ、その余の地域の販売事務を京都本店において行い、東京支店から同支店における販売部数を京都本店に報告させて、同本店において総販売部数を集計し、前記算式に基づき印税額を計算し、東京在住の著作権者については、税引き後の印税額を東京支店に指示して、同支店名義の銀行預金口座の金員をもつて支払わせていたものである。 ところで、所得税法一七条にいう「支払事務を取り扱うもの」とは、源泉所得税額の計算をし、それに基づき源泉所得税を徴収し、徴収後の金員を支払う事務を取り扱うものと解されるが、東京支店では、京都本店が計算した税引き後の本件印税額を同本店の指示に従つて支払つていただけで、源泉所得税額の計算及び源泉所得税の徴収行為は行つていないのであるから、東京支店は、右「支払事務を取り扱うもの」には当たらない。 6 右のとおり、本件印税に係る本件源泉所得税の納税地は原告の京都本店所 泉所得税額の計算及び源泉所得税の徴収行為は行つていないのであるから、東京支店は、右「支払事務を取り扱うもの」には当たらない。 6 右のとおり、本件印税に係る本件源泉所得税の納税地は原告の京都本店所在地であるから、被告の本件処分及び本件賦課決定は、納税地の判断を誤り、管轄の権限がないのになされた違法なものである。 第三証拠(省略)○ 理由一請求原因1(納税告知処分及び不納付加算税賦課決定)及び2(前置手続)の事実並びに抗弁1(原告の本件源泉所得税の納税義務等)の事実は当事者間に争いがない。 二本件源泉所得税の納税地について 1 抗弁2(一)の事実及び同(二)のうち東京支店は同支店名義の銀行預金口座に振り込まれた金員をもつて同支店の従業員の給与及び同支店事務所の賃借料等の一般管理費を支弁していたこと、東京支店は著作権者に対し印税を支払つた場合、同支店備付の帳簿の仮払金勘定の借方欄に税引き後の印税額を、その摘要欄に支払つた著作権者名をそれぞれ記載していたことは、いずれも当事者間に争いがなく、いずれも成立に争いのない乙第八号証の一、二(原本の存在も含む。)及び証人Aの証言によれば、東京支店の従業員の給与に係る源泉所得税については同支店を納税地として徴収納付していることが認められ、これに反する証拠はない。 2 前掲乙第八号証の一、二、いずれも成立に争いのない乙第三号証の二、三の各一、二、第四、第五号証の各二(乙第五号証の二は原本の存在も含む。)、証人Bの証言により真正に成立したものと認められる乙第一号証の一、いずれも証人Cの証言により真正に成立したものと認められる乙第二号証、第三ないし第五号証の各一、証人A(一部)、同B及び同Cの各証言、原告代表者本人尋問の結果(一部)並びに弁論の全趣旨を総合すると、(一) 原告は、肩書住所地所在の京都 たものと認められる乙第二号証、第三ないし第五号証の各一、証人A(一部)、同B及び同Cの各証言、原告代表者本人尋問の結果(一部)並びに弁論の全趣旨を総合すると、(一) 原告は、肩書住所地所在の京都本店及び東京支店(支店の登記はない。)において、大学で使用される図書、教科書を主とした出版及び販売業を営む株式会社であるが、東京支店は、昭和五六年三月当時で三人の従業員を有し、店舗には原告会社の「東京支店」を示す看板を掲げ、主として東京圏の大学で使用される教科書等の卸売業務及び東京圏に在住する執筆者による同教科書等の出版業務を担当していること、(二) 大学で使用される教科書等を原告が出版する場合、原告代表者が右教科書の執筆者と直接交渉することもあるが、東京圏に居住する執筆者については、殆ど東京支店が交渉し、京都本店(主に原告代表者)の決済を得て出版部数や印税率を決めていたが、いずれが交渉に当たつた場合でも、印税の支払額は現実に販売した部数で算定する建前であつたこと、東京支店が担当した場合の右出版事務は、東京支店が執筆者から原稿を受け取り、京都本店に送付し、同本店において印刷、製本された教科書等を同支ぎに所要部数送付させ、東京支店が、取次店を介して、都内の大学生活協同組合等の販売店に納品するが、売れ残つたものはほぼ当該学期末までに東京支店に返本されること、(三) 東京支店が販売する教科書等はすべて京都本店から仕入れたもので、その九割以上は東京都内の大学用として販売店に納品されているが、たまたま東京から遠隔地の大学で教科書等として採用された場合は、執筆者等から依頼を受けた東京支店が京都本店に連絡して、同本店から右大学の教科書等の販売店に納品していること(水戸市内の大学のように東京から程遠くない場合は東京支店が取次店を経由して納品している。)、 者等から依頼を受けた東京支店が京都本店に連絡して、同本店から右大学の教科書等の販売店に納品していること(水戸市内の大学のように東京から程遠くない場合は東京支店が取次店を経由して納品している。)、このような東京支店からの連絡に基づいて京都本店から納品された教科書等が売れ残つた場合も、東京都内の大学の場合と同様に、東京支店に返本されること、(四) 東京支店は、自店から納品した場合はもちろん、京都本店を通じて納品した場合も同本店から連絡を受け、東京支店備付の売上帳、仕入帳に右数額を記帳し、本社勘定という勘定科目により右の仕入による買掛金に相当するものを経理していること、東京支店は、右納品及び返本の数量を知ることによつて、自店で出版を取り扱つた各教科書の総販売部数を把握できる立場にあつたので、各教科書の販売価格に右総販売部数を乗じ、これに、あらかじめ取り決めあれている各執筆者ごとの印税率を乗じで、各執筆者の印税額を計算し、そこからそれぞれ源泉所得税を控除して税引き後の印税額を算出し、京都本店(主に原告代表者)に電話連絡して右支払の許諾を得たうえで、同支店が管理する同支店名義の銀行預金の中から、各執筆者の希望に応じ、現金送金、銀行預金口座への振込みあるいは直接持参等の方法で税引き後の印税を支払つていたこと、その際、東京支店は同支店名義で作成した印税の計算書を各執筆者に対し手渡し、領収書を受け取つていたこと、東京支店で支払う印税は、従来から東京支店で売り上げた教科書等の集金の中から支出する建前であつたため、同支店への販売代金の入金が遅延し、同支店名義の銀行預金口座の残高が少ないときは、印税の支払を遅滞することもあつたこと、(五) 東京圏の執筆者に交付する支払調書は京都本店において作成し確定申告時期までに東京支店に送られてくる建前であつたが、支 銀行預金口座の残高が少ないときは、印税の支払を遅滞することもあつたこと、(五) 東京圏の執筆者に交付する支払調書は京都本店において作成し確定申告時期までに東京支店に送られてくる建前であつたが、支払額が未記入のまま送られてくることもあつたので、そのような支払調書については、同支店が右支払額等を確認し、所定の記入を完成のうえ各執筆者に郵送していたこと、東京支店は右(四)の支払に伴い、前記1のような仮払金勘定の記帳のほか、同支店備付の預貯金出納帳及び現金出納帳に所要の記帳をしていたこと、(六) 東京支店は、同支店備付帳簿を三か月に一回位京都本店に送付していたが、その際は、仮払金勘定のうち教科書等の各執筆者に支払つた印税を個別に明らかにする資料として、東京支店長が印税支払の一覧表を作成し、添付する慣例になつていたこと、反面、京都本店では印税に係る源泉所得税を法定納期限に納付するために必要な毎月の印税の支払状況を記帳した帳簿は作成されていないことが認められ、証人Aの証言及び原告代表者本人尋問の結果中、右認定に反する部分は前掲各証拠に照らしてにわかに採用できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。 3 源泉徴収に係る所得税の納税地を定めた所得税法一七条にいう「第四編第一章から第六章まで(源泉徴収)に規定する支払をする者」の「事務所、事業所その他これらに準ずるものでその支払事務を取り扱うもの」とは、物的施設としては「事務所、事業所」等に準ずる施設を指し、事務内容としては、それが印税の支払に係るものであるときは、一般には、著作権者に支払う印税額を算出し、右計算額に相当する金員の支出を決定し、同金員の支払を可能とする資金を用意して、これに基づいて著作権者に対し税引き後の印税の交付を行う一連の手続からなる事務を指すものと解される。そして、前記1、2の 計算額に相当する金員の支出を決定し、同金員の支払を可能とする資金を用意して、これに基づいて著作権者に対し税引き後の印税の交付を行う一連の手続からなる事務を指すものと解される。そして、前記1、2のとおり、東京支店は、原告の出版物のうち東京圏在住の著作権者の著作物である各教科書等の総販売部数(自店及び京都本店の納品合計部数から返本数を差し引いた部数)を把握したうえで、所定の印税率によつて各著作権者に対する本件印税額を算出し、実際に同支店が販売、集金して保管中の売上代金(同支店名義の銀行預金)の中から右の支出に当てることを決定し、各著作権者の希望する方法によつて、各著作権者に対し、本件源泉所得税額を控除後の本件印税を支払い、同支店の会計帳簿上もこれに見合つた記帳をしていること等からすると、同支店は、本件印税の支払事務を取り扱つているものに当たるというべきである。もつとも、前記2(四)のとおり、右印税の支払に先立つて京都本店(主に原告代表者)の許諾を得ることが事実上内規化されており、本件印税の支払についてもこれが履践されていたと推認される。しかし、源泉徴収の制度は公正確実にして能率的な徴収を目的としたものであることに鑑みれば、右許諾の権限が内部的に京都本店あるいは原告代表者に留保されている事実も支払資金が存在し、支払額を算定し、支出の具体的手続を決定し、執行する事務所である東京支店をもつて所得税法一七条にいう「支払事務を取り扱うもの」と認定することを妨げる事由となるものではない。 したがつて、本件源泉所得税の納税地は、本件印税支払時の東京支店の所在地である東京都千代田区<地名略>であり、本件処分は被告の管轄の範囲内である(大蔵省組織規程一三九条)。 三結論よつて、右納税地を所轄する被告がした本件処分は適法であり(国税通則法四三条一項本文 である東京都千代田区<地名略>であり、本件処分は被告の管轄の範囲内である(大蔵省組織規程一三九条)。 三結論よつて、右納税地を所轄する被告がした本件処分は適法であり(国税通則法四三条一項本文)、同処分を前提として被告がした本件賦課決定も適法であるから、原告の請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官山本和敏杉山正己滝澤雄次)

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