主文 1 被告株式会社吉田組は,倉敷市に対し,金2677万5000円及びこれに対する平成14年3月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告倉敷市長が,被告株式会社吉田組,株式会社大森工務店,三宅建設株式会社,オリエント開発株式会社,目黒建設株式会社,有限会社丸正土木,株式会社横本組,東洋建設工業株式会社,株式会社ハラダ及び株式会社阿知建設に対して,倉敷市が平成13年度に被告株式会社吉田組に請け負わせた倉敷西地区α号線下水道埋設工事の談合に関する不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠る事実が違法であることを確認する。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,これを10分し,その8を被告らの,その余を原告の各負担とする。 5 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告株式会社吉田組(以下「被告吉田組」という。)は,倉敷市に対し,3570万円及びこれに対する平成14年3月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告倉敷市長が,被告吉田組,株式会社大森工務店,三宅建設株式会社,オリエント開発株式会社,目黒建設株式会社,有限会社丸庄土木(以下「丸庄土木」という。),株式会社横本組,東洋建設工業株式会社,株式会社ハラダ及び株式会社阿知建設(以下,被告吉田組以外の9社を併せて「訴外9社」という。)に対して,倉敷市下水道埋設工事の談合に係る不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠る事実が違法であることを確認する。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 4 仮執行宣言第2 事案の概要本件は,平成13年3月1日に競争入札で発注さ く損害賠償請求権の行使を怠る事実が違法であることを確認する。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 4 仮執行宣言第2 事案の概要本件は,平成13年3月1日に競争入札で発注された倉敷市の下水道埋設工事において,被告吉田組及び訴外9社が談合行為を行った結果,設計金額(予定価格)に近い金額で落札されたため,公正な競争によって入札が行われた場合より少なくとも20パーセント高い金額で契約が成立し,これにより倉敷市は契約金額の20パーセントに当たる3570万円の損害を被ったとして,倉敷市の住民で組織された原告が,平成14年法4号による改正前の地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づき,倉敷市に代位して,被告吉田組に対し,不法行為に基づく損害(付帯請求は,不法行為の後の日である訴状送達の日の翌日である平成14年3月29日から支払済みまで民法所定年5分の割合による金員の支払請求である。)の賠償を,また,被告倉敷市長に対して,その損害賠償請求を怠る事実が違法であることの確認をそれぞれ求めた事案である。 1 前提となる事実(証拠により認定した事実については,各項末尾にその証拠を掲記し,その余の事実は,当事者間に争いがない。)(1) 原告は,倉敷市の住民で組織された法人格を有しない団体である。 被告吉田組は,下水道埋設工事の請負等の事業を営む株式会社である。 被告倉敷市長は,倉敷市の行政執行機関の最高責任者である。 (2) 平成11年度及び平成12年度における倉敷市下水道局の工事に係る指名競争入札について,入札日,業者数,落札者,設計金額(税込),落札額(税込),最高入札額(税抜),最低入札額(税抜)は,別表のとおりである。 なお,設計段階における当該工事の倉敷市 名競争入札について,入札日,業者数,落札者,設計金額(税込),落札額(税込),最高入札額(税抜),最低入札額(税抜)は,別表のとおりである。 なお,設計段階における当該工事の倉敷市役所の予算内での概算見積金額のことを設計金額といい,設計金額内で,設計金額を端数処理した,その工事に通常要する工事の適正金額のことを予定価格といい,予定価格の3分の2を下らない範囲内で,この価格未満では落札させない金額のことを最低制限価格という。 (3) 倉敷市は,平成13年3月1日,倉敷市β外地内における倉敷西地区α号線埋設工事(以下「本件工事」という。)につき,設計金額を1億8929万1900円と定めた上,被告吉田組及び訴外9社の10社による指名競争入札を実施した(以下「本件入札」という。)。そして,入札結果は,以下のとおりであった。 ア株式会社大森工務店 1億7900万円イ被告吉田組 1億7000万円ウ三宅建設株式会社 1億8000万円エオリエント開発株式会社 1億8000万円オ目黒建設株式会社 1億8000万円カ丸庄土木 1億7500万円キ株式会社横本組 1億7700万円ク東洋建設工業株式会社 1億7700万円ケ株式会社ハラダ 1億8000万円コ株式会社阿知建設 1億8000万円この入札の結果,倉敷市は,本件工事につき,1億7000万円で入札した被告吉田組との間で,同月2日,契約金額を1億7850万円(税込)とする工事請負契約を締結し,倉敷市から被告吉田組に対し,同年4月2 の入札の結果,倉敷市は,本件工事につき,1億7000万円で入札した被告吉田組との間で,同月2日,契約金額を1億7850万円(税込)とする工事請負契約を締結し,倉敷市から被告吉田組に対し,同年4月20日,前金として7140万円が支払われた。 (4) 原告は,同年12月4日,倉敷市監査委員に対し,被告吉田組ら10社が,本件工事に関して談合行為を行うことにより,契約金額を不当につり上げ,工事発注者である倉敷市に対して,談合によってつり上げられた契約金額と公正な競争が確保されていた場合の契約金額との差額に相当する損害を与えたのであるから,被告倉敷市長又は倉敷市契約事務管理者及び倉敷市下水道事業管理者は,倉敷市が被告吉田組に対して有する損害賠償請求権(以下「本件損害賠償請求権」という。)を行使して倉敷市の被った損害を填補する措置を講ずる責任があるにもかかわらずこれを怠っているとして,被告倉敷市長又は倉敷市契約事務管理者及び倉敷市下水道事業管理者に対して,この措置を講ずべきことを勧告することを求める旨の住民監査請求を行った。しかし,倉敷市監査委員は,その監査請求が,特定性,具体性を欠き,法242条1項に定める要件を欠いているとして,平成14年1月25日,同監査請求を却下した(甲1の3)。 (5) これに対し,原告は,同月31日,本件訴えを提起した。 2 主たる争点(1) 原告は,民事訴訟法29条の法人格なき社団にあたるか(本案前)ア原告の主張(ア) 最高裁判所第1小法廷昭和39年10月15日判決(民集18巻8号1671頁)は,団体が権利能力なき社団として当事者能力を有するための要件として,①団体としての組織を備えていること,②多数決の原則が行われていること,③構成員の変更にかかわらず団体そのもの 巻8号1671頁)は,団体が権利能力なき社団として当事者能力を有するための要件として,①団体としての組織を備えていること,②多数決の原則が行われていること,③構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続すること,④その組織によって代表の方法,総会の運営,財産の管理,その他団体としての主要な点が確定していることが必要であると判示するところ,原告が上記要件を満たしていることは原告の会則の内容から明らかである。 (イ) また,上記(ア)の最高裁判決は,当該団体が当事者能力を有するための要件を備えているか否かをいかなる資料から明らかにすべきかということについては触れられていないことから,当該団体が当事者能力を有する権利能力なき社団に該当するか否かを判断する場合に,当該団体の会員名簿等の一定の資料のみから明らかにされなければならないとする合理的な理由はない。 イ被告らの主張いわゆる権利能力なき社団として当事者能力を有するといえるためには,前記最高裁判決が判示する要件を当該団体が具備していることが,会則,会員名簿,会計報告,総会議事録等の資料によって明らかにされることが必要であるところ,会員名簿を証明資料として提出しない原告は,権利能力なき社団としての要件を満たすことの証明をしていない以上,原告を権利能力なき社団と認定することはできない。 (2) 被告吉田組に対する本件訴えは,訴権の濫用に当たるか(本案前)ア被告吉田組の主張(ア) 被告吉田組は,丸庄土木から,本件工事を丸庄土木に落札させてほしいとの申入れを受けていたが,被告吉田組はその申入れに応じなかったため,被告吉田組の代表者であるAらが丸庄土木の実質的経営者や営業部長から丸庄土木を本件工事の下請業者にするよう強 木に落札させてほしいとの申入れを受けていたが,被告吉田組はその申入れに応じなかったため,被告吉田組の代表者であるAらが丸庄土木の実質的経営者や営業部長から丸庄土木を本件工事の下請業者にするよう強要されるという刑事事件が発生した(以下「本件刑事事件」という。)。 その後,Aは,平成13年10月30日,上記刑事事件に関する検察官に対する同人の供述調書(甲3)が,倉敷市や同業者の間に出回っていることを知り,同月31日,倉敷警察署に真相究明と抗議に行ったところ,警察官から,倉敷市役所に原告代表者と丸庄土木の関係者が一緒に行ったことがあると知らされた。 また,被告吉田組は,同年12月30日に事務所の天井に,また,平成14年1月2日に所有自動車に放火され,同月3日には会社事務所が全焼した。なお,同年2月21日,これらの放火事件に関し,山口組系暴力団組長らが逮捕された(乙ア2の1,2)。 (イ) 以上のような事実関係の下,原告は,被告吉田組が,少なくとも平成9年5月15日から平成13年2月22日までの間1回も落札業者となったことがないことを知りながら(甲13の3,4,甲14の3,4),訴外9社については被告とせず,被告吉田組だけを狙い打ちにして本件訴えを提起したものであり,本件訴えは,被告吉田組に対する加害目的をもってなされたものであるから,訴権の濫用に当たり,却下されるべきである。 イ原告の主張原告は,本件刑事事件の発生前から倉敷市の下水道問題に取り組んでおり,平成13年2月26日,倉敷市に対して「平成11年度及び平成12年度における下水道局の工事に係る指名競争入札結果(工事名・入札日・設計金額・落札価格・落札業者名)」に関する開示請求を行い(甲8,9),同年3月から4月にかけて開示された入 平成11年度及び平成12年度における下水道局の工事に係る指名競争入札結果(工事名・入札日・設計金額・落札価格・落札業者名)」に関する開示請求を行い(甲8,9),同年3月から4月にかけて開示された入札執行調書の内容について分析を行った。そして,原告は,上記分析の結果を基に同年5月8日,被告倉敷市長あてに,倉敷市下水道事業の「入札」に関わる公開質問状(甲4)を提出し,同年7月17日,倉敷市監査委員宛に同旨の措置請求書(甲5)を提出した。 そのような中,同年8月29日に,丸庄土木のBが本件刑事事件についてのAの供述調書(甲3)を持って原告代表者宅を来訪したという事実はあったが,丸庄土木と原告とは,それ以上の関係にはない。 以上のとおり,原告は,本件刑事事件の発生とは何ら関係なく,本件訴訟の準備を進めていたのであって,本件訴訟の目的は,長年にわたる談合を見て見ぬふりをする倉敷市の体質改革であって,本件訴訟によって,被告吉田組のみを陥れようなどという意思はない。 (3) 被告吉田組及び訴外9社との間の談合行為の有無ア原告の主張(ア)a(a) 倉敷市の土木建設業者らは,共存共栄を図るため,倉敷市発注の公共工事などにおいて,あらかじめ倉敷市が公表する設計金額を基準として,その金額から約2ないし3パーセントを差し引いた金額でその工事を落札する者(以下「落札予定者」という。)を誰にするかということを事前に話し合って決め,その約束に従って公共工事の入札に臨み,事前の話合いで決定した落札予定者が落札をしていた。また,土木建設業者らの間には,1つの工事につき落札予定者となった業者は,同じ事業で他の業者が1巡するまでの間は,再度落札予定者になることはできないというルールがあった(甲3,16)。 (b ,土木建設業者らの間には,1つの工事につき落札予定者となった業者は,同じ事業で他の業者が1巡するまでの間は,再度落札予定者になることはできないというルールがあった(甲3,16)。 (b) 平成11年度及び平成12年度の倉敷市の入札の設計金額に対する落札価格の率(以下「落札価格率」という。)は,95パーセント近辺(甲13,14の各1,3)と70パーセント近辺(甲13,14の各2,4)に2極化しており,しかも前者はほとんどが96.9パーセントと同率で,設計金額に対する最高入札額と最低入札額との差額の割合(以下「差額率」という。)も2ないし3パーセントの範囲内にとどまり,各入札額の端数は,万,十万,百万単位で切り捨てられているのに対し,後者の落札価格は,倉敷市が算定して決めた最低制限価格近辺であり,その差額率は20ないし30パーセントと,前者と比べて著しい差が生じており,各入札額の端数は,千円単位まで細かく記入されていることからすれば,前者の場合の落札金額は,談合によって決定された金額であり,後者の場合の落札金額は競争原理が働いて,公正な価格形成がなされた結果の金額であるといえる。 また,倉敷市が試験的に最低制限価格を撤廃した場合の入札では,落札価格率は,50パーセント台前半から60パーセント台前半であり,競争原理に任せれば,落札価格が下がるものといえる(甲13の2,4)。 さらに,倉敷市が設計金額の事前公表をしていなかった時期において,1回目の入札では倉敷市が算定した設計金額を超えたため,2回目,3回目と入札が行われたという場合には,1回目に最低入札価格を入れた業者が必ず落札しているという事実が認められる(甲13の3)。 b 本件入札が行われた日の前日 えたため,2回目,3回目と入札が行われたという場合には,1回目に最低入札価格を入れた業者が必ず落札しているという事実が認められる(甲13の3)。 b 本件入札が行われた日の前日である平成13年2月28日午後1時ころ,倉敷市γ所在のδに関係指名業者が集合し,本件入札について談合が行われた。その際,本件工事の落札予定者を誰にするかをめぐり,被告吉田組と丸庄土木とが争って決まらなかったため,翌日の3月1日午前11時ころ,再び関係指名業者らがδに集まり,世話人と呼ばれる指名業者の中から選ばれた5業者各1名の代表者による裁定が行われた結果,丸庄土木が本件入札の落札予定者に決まった。 しかし,被告吉田組の担当者らは,丸庄土木が平成12年に倉敷市の他の埋設工事を落札していたことから,前記(ア)a(a)のルールからすれば本件工事を落札する資格がないにもかかわらず,そのルールに反して落札予定者となったことに不満をもった。そこで,被告吉田組は,上記世話人らの裁定に反して,本件工事について1億7000万円で入札し,同額で落札した(甲3,16)。 (イ) 以上のとおり,被告吉田組及び訴外9社の談合担当者は,共謀して,本件工事の契約の締結に関わる自由競争を排除し,契約価格を設計金額の限度近くまで誘導するという不法行為を行ったのであるから,被告吉田組及び訴外9社は,その談合担当者の行為につき,民法715条の不法行為責任を負う。 そして,前記不法行為が存在せず,公正な競争に基づいて入札が行われておれば,本件工事の契約金額は,前記a(b)のとおり,少なくとも20パーセントは低下していたといえ(なお,落札価格率が80パーセント台となっている落札結果も一部にはあるが,これは業種が電気・塗装などの異業種か,大手企業の地元支社 前記a(b)のとおり,少なくとも20パーセントは低下していたといえ(なお,落札価格率が80パーセント台となっている落札結果も一部にはあるが,これは業種が電気・塗装などの異業種か,大手企業の地元支社が落札者であるなどの特殊なケースによるものに限られ,ライバル企業の限定・寡少などによる競争の一定の制限によるものなので,20パーセント以上の落札価格率の低下を基本的に阻害する要因となるものではない。),したがって,倉敷市が被告吉田組に支払うべき契約金額も少なくとも本件工事の契約金額の20パーセントに当たる3570万円は低額となったはずであるから,倉敷市は,同額の損害を被ったことになる。 よって,倉敷市は,被告吉田組及び訴外9社に対し,3570万円の損害賠償請求権を有する。 イ被告吉田組の主張被告吉田組は,少なくとも平成9年5月15日から平成13年2月22日までの間,1回も落札業者となったことはなく(乙ア1の15),談合に応じたことはない。 本件工事においても,被告吉田組は,Aが入札の当日である平成13年3月1日の朝に,事務所で入札金額を書き込み,入札に及んだもので,談合に応じたことはなく,談合破りをしたという事実もない。 丸庄土木から,本件工事を落札させてほしいとの申入れを受けたことはあるが,被告吉田組はそれに応じなかった。 なお,Aは,岡山地方検察庁で調べを受けたが,談合罪で起訴されてはいない。 (4) 被告倉敷市長の怠る事実の違法性の有無ア原告の主張倉敷市が被告吉田組及び訴外9社に対して共同不法行為に基づく損害賠償請求権を有していることは明らかであるにもかかわらず,被告倉敷市長はこれを行使して損害を回復するための措置を取ろうと 倉敷市が被告吉田組及び訴外9社に対して共同不法行為に基づく損害賠償請求権を有していることは明らかであるにもかかわらず,被告倉敷市長はこれを行使して損害を回復するための措置を取ろうとしない。これは,違法に倉敷市の財産の管理を怠っているといわざるを得ない。 イ被告倉敷市長の主張原告は,本件工事に係る談合行為につき,平成13年8月に独占禁止法違反を理由として公正取引委員会に対して,また,同年11月には,談合罪で岡山地方検察庁に対して,それぞれ告発状を提出しているが,相当期間を経過した現在に至るも,公正取引委員会が何らかの処分をなしたという形跡はなく,検察庁においては,捜査の結果,不起訴処分としているのである。 検察庁としても,本件入札をめぐって発生した刑事事件の供述調書なども検討のうえ,談合罪につき被告吉田組を不起訴処分としたものと考えられるところ,強制捜査権を有する検察庁が不起訴処分とした事案に対し,倉敷市が,相当の根拠,証拠もないにもかかわらず,指名業者らの間で談合行為が行われたとして損害賠償請求をするということは困難であるから,被告市長がこれを行使しないことは違法ではない。 なお,原告主張のとおり,平成11年度及び平成12年度の工事における落札価格率が高低に二極化していることは倉敷市としても認識しているが,高額入札は談合を疑わせる1つの事情に過ぎず,高額入札というだけで直ちに談合が行われたものと認定することはできない。 したがって,被告倉敷市長が本件入札にかかわった指名業者らに対して損害賠償請求権を行使しないことは違法ではない。 第3 当裁判所の判断 1 主たる争点(1)(原告適格)について(1) ある団体が民事訴訟法29 市長が本件入札にかかわった指名業者らに対して損害賠償請求権を行使しないことは違法ではない。 第3 当裁判所の判断 1 主たる争点(1)(原告適格)について(1) ある団体が民事訴訟法29条にいう「法人でない社団」に当たるというためには,当該団体が,団体としての組織を備え,多数決の原則が行われ,構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し,その組織において代表の方法,総会の運営,財産の管理その他団体としての主要な点が確定していることを要すると解するべきである。 (2) これを原告についてみるに,本件記録によれば,原告の組織としての内容等について以下の事実が認められる。 ア原告は,平成9年3月に設立された団体で,「倉敷市民オンブズマン会則」という表題の会則(以下「本件会則」という。)を有している。 イ本件会則には,次の定めがある。 (ア) 目的(第3条)当会は情報公開条例を基に行政の透明化を促進し,市民1人ひとりの市政への主体的参加を目指します。 (イ) 活動(第4条)当会は前条の目的を達成するため,次の活動を行う。 ① 行政機関に情報公開を求める活動② 行政機関の不正,不当な行為を監視し,その是正を求める活動③ その他目的達成に必要な活動(ウ) 会員(第5条)当会は,会の目的に賛同する市民(倉敷市民を指すと解される)で構成する。 (エ) 機関(第6条)当会に次の機関を置く。 ① 総会総会は年1回,原則として3月に代表がこれを招集 (エ) 機関(第6条)当会に次の機関を置く。 ① 総会総会は年1回,原則として3月に代表がこれを招集する。必要に応じて臨時総会を開催することができる。総会は次の事項を決議する。表決数は出席会員の過半数とする。 a 年間の活動計画b 予算及び決算c 会則の改定d 役員の選出e その他必要と認める事項② 役員会役員会は代表が随時招集する。役員会は年間の活動計画に基づいて日常の事務を処理する。 (オ) 役員(第7条)① 当会に次の役員を置く。 a 代表世話人 1名(なお,後に2名に改正された)b 世話人数名c 事務局長 1名d 事務局員若干名② 役員の任期は1年とする。ただし再任を妨げない。 (カ) 会計(第8条)① 会計は事務局が担当する。 ② 当会の運営に必要な経費は会員の会費及び寄付金を以て充てる。 ③ 会費は年2000円とする。 ④ 会計年度は4月1日から翌年3月31日迄とする。 ⑤ 会計監査ウ原告の第1回定期総会は,平成10年3月29日に開催され,当該年度の活動経過と今後の活動方針が報告されたほか,当該年度の決算報告や次年度の予算案提示が行われ,了承された。 会計監査ウ原告の第1回定期総会は,平成10年3月29日に開催され,当該年度の活動経過と今後の活動方針が報告されたほか,当該年度の決算報告や次年度の予算案提示が行われ,了承された。 その後も,平成11年から平成14年まで,毎年3月に定期総会が開催され,第1回定期総会同様,当該年度の経過と今後の活動方針が報告されたほか,当該年度の決算報告,予算案提示が行われ,了承され,また,役員改選が行われた。なお,会費収入は,平成9年度が16万円,平成12年度は8万3000円,平成13年度は2万4000円である。 エ原告は,その構成員である会員の住所氏名が記載された書面を作成している。 オ原告は,本件訴訟及びその前提となる監査請求のほか,倉敷市情報公開条例に基づく開示請求,倉敷市による市職員に対する公金支出が不当であるとして倉敷市に対して市職員に支出された公金の返還の申し入れ,倉敷下水道工事入札で談合が行われていたとして検察庁や公正取引委員会への告発などの活動を行っている。 (3) 以上の事実によれば,原告は,その目的及び活動に賛同する倉敷市民によって構成された団体であり,団体としての組織を備え,多数決の原則が行われ,構成員の変動にかかわらず団体そのものが存続し,規約により代表の方法,総会の運営,財産の管理その他団体としての主要な点が確立していると認められる上,原告は,その設立以来,その目的に沿った実質的な活動を継続しており,本件訴訟やその前提となる監査請求のためだけに設立されたものではないといえる。 (4) したがって,原告は,民事訴訟法29条にいう「法人でない社団」に当たると解されるから,その名において訴えることができるというべきである。 2 主たる争点(2)(訴権の濫用 いえる。 (4) したがって,原告は,民事訴訟法29条にいう「法人でない社団」に当たると解されるから,その名において訴えることができるというべきである。 2 主たる争点(2)(訴権の濫用)について(1) 前記第2,1の前提となる事実,証拠(甲4ないし9,14,乙ア1,乙ア12ないし15〔枝番を含む。〕)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 ア原告は,平成13年2月26日,倉敷市に対して「平成11年度及び平成12年度における下水道局の工事に係る指名競争入札結果(工事名・入札日・設計金額・落札価格・落札業者名)」に関する開示請求を行い,同月28日,被告倉敷市長から「平成11年度及び平成12年度(平成13年2月26日まで)の下水道局の工事に係る指名競争入札の入札執行調書」(以下「本件入札執行調書」という。)の開示決定を受け,開示された同調書の内容を分析した。そして,その分析結果に基づいて,同年5月8日,「客観的に判断して,違法な『談合』によってしか落札不能な落札額が多数認められ,それが見事に業者間で配分されている」として,被告倉敷市長に対し,「倉敷市下水道事業の「入札」に関わる公開質問状」を提出した。 さらに,原告は,同年7月17日,倉敷市監査委員に対し,上記公開質問状と同旨の内容の岡山県倉敷市職員措置請求書を提出した。 イその後,原告は,同年8月28日,公正取引委員会に対し,「倉敷市下水道事業の入札談合に係わる告発状」を提出し,その中で,被告倉敷市長から開示を受けた本件入札執行調書を分析した結果,以下の事実が判明したとして,「一 1999・2000年度ともに約8割の入札で、設計金額に対する落札額の比率が95㌫以上の高止まりであり、それも入札日によっては、例えば96. 執行調書を分析した結果,以下の事実が判明したとして,「一 1999・2000年度ともに約8割の入札で、設計金額に対する落札額の比率が95㌫以上の高止まりであり、それも入札日によっては、例えば96.9㌫というように三ケタまで揃って落札されている。」,「二また落札額の傾向も、約8割が上限(設計金額)に張り付き、残り約2割が下限(最低制限価格)近辺で落札されるという特異な二極分化を示している」,「三そしてやり直しの入札においては、100㌫に近い比率で同一業者が落札するという傾向が出ている」,「ということは、談合によってしかこのような結果は惹起されず、その事実を証明している」との主張をした。 ウ翌日,原告により上記公正取引委員会に対する通告がなされたという新聞記事を見た丸庄土木のBが,本件刑事事件のAの供述調書(甲3)を持って原告代表者宅を訪れた。そして,Bが持参したAの供述調書により,本件事件の具体的な談合事実を知った原告は,同年9月4日,前述の本件入札執行調書の分析結果と併せて,倉敷市監査委員に対し,再度「岡山県倉敷市職員措置請求書」を提出するとともに,法252条の43第1項の規定により上記監査請求に係わる監査について監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査をするよう求めた。 エその後,原告は,同年11月6日,岡山地方検察庁に対し,「倉敷市下水道事業の入札談合に係わる告発状」及び「倉敷市下水道事業の入札談合に係わる告発状補充書」を提出し,平成13年3月1日の下水道工事入札談合に直接かかわった事業者として,Aの外,訴外9社の代表者らを告発した。 (2) そこで,上記認定事実に基づいて被告吉田組に対する本件訴えが,訴権の濫用に当たるか否かについて判断する。 原告は,上記認定事実のとおり ,訴外9社の代表者らを告発した。 (2) そこで,上記認定事実に基づいて被告吉田組に対する本件訴えが,訴権の濫用に当たるか否かについて判断する。 原告は,上記認定事実のとおり,倉敷市の下水道事業をめぐる指名業者らの談合行為が行われているとして,本件刑事事件が起きる以前から,被告倉敷市長から開示された本件入札執行調書の分析を始め,これにより倉敷市の下水道事業をめぐる指定業者らの談合行為の存在を明らかにしようと活動を行っていること,また,その分析結果からすれば,指名業者らによって談合行為が行われていることは明らかであるとして,その是正措置をとるように,被告倉敷市長,倉敷市監査委員会,公正取引委員会に請求し,かつ,原告は,BがAの供述調書を原告代表者宅に持参する以前から上記各請求をしていることが認められ,さらに,検察庁に対して,本件談合事件にかかわった全ての業者として,被告吉田組の外,訴外9社全てを談合罪で告発していることからすれば,原告が本訴を提起した意図は,倉敷市の下水道事業で行われていると思われる指名業者らによる談合行為をやめさせ,公正な価額による下水道事業の入札がなされるようにして,違法な公金支出を防止するということにあり,被告吉田組が主張するように,原告にBと意思を通じて,被告吉田組のみを狙い打ちにして訴訟提起をしたという意図があったということはできず,他に,本訴を提起するに当たり,原告に被告吉田組に対する加害目的があったと認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告が提起した本訴は,被告吉田組に対する訴権の濫用には当たらず,被告吉田組の主張は認められない。 3 主たる争点(3)(談合行為の有無)について(1) 前記第2,1の前提となる事実に証拠(甲3,13の1ないし14の2,16,被告 の濫用には当たらず,被告吉田組の主張は認められない。 3 主たる争点(3)(談合行為の有無)について(1) 前記第2,1の前提となる事実に証拠(甲3,13の1ないし14の2,16,被告吉田組代表者〔A〕)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 ア倉敷市の発注する公共工事等の入札に関し,倉敷市内の土木建設業者らは,入札前に,各代表者が倉敷市γにあるδの会議室などに,研究会という名目で集まり,指名業者中5つの業者の代表者が世話人となって,各公共工事,各工区ごとに,当該公共工事の入札を希望する業者を立候補させ,その立候補者が複数に上った場合には,上記世話人の指導の下で立候補した業者らが話合いを行い,立候補者の中からどの会社が落札予定者となるか及びその最低入札価格をいくらにするかを決めていた。 その際の基本的ルールとして,平成11年9月ころには,以下のような内容のものが出来上がっていた。 (ア) 立候補者間の話合いにより,1つの公共工事の落札予定者となった会社は,同じ事業で他の業者が一巡するまでの間は,落札予定者となることができない。 (イ) 複数の立候補者が,相互に立候補を譲らず,その間の話合いによるのでは,落札予定者が決まらないという場合には,上記(ア)のルールに従い,世話人の裁定により落札予定者を決定する。 イ上記(ア),(イ)の方法によって,当該公共工事の落札予定者及び最低入札予定価格が決定すると,そのことが落札予定者以外の他の入札予定者らに対し,連絡され,落札予定者が事前に決定された最低入札予定価格で入札を行い,他の入札予定者らは,落札予定者の入札価格よりも高い価格で入札することによって,落札予定者が談合による事前の決定どおりの最低入 ,連絡され,落札予定者が事前に決定された最低入札予定価格で入札を行い,他の入札予定者らは,落札予定者の入札価格よりも高い価格で入札することによって,落札予定者が談合による事前の決定どおりの最低入札予定価格で落札できるように協力していた。 ウ本件工事の入札は,平成13年3月1日に実施され,被告吉田組の外,訴外9社が入札した。この入札に至る経緯は以下のとおりである。 (ア) 本件工事の入札日前日である2月28日午後1時ころ,倉敷市γ所在のδに,研究会という名目で,上記本件工事入札業者の代表者の外,老龍園緑化,風早興業,日笠土木,石尾建設,景山倉敷建設,榊原建設,オガワコーポレーション,セイブ建設,ツナシマ,若林工務店,中央建設などが集まった。このときの世話人は,大森工務店のC,中央建設のD,目黒建設のE,阿知建設のF,ビサン建設のGの5人であった。 そして,本件工事の入札に関して,A,オリエント開発株式会社のH・I,丸庄土木のJ,東洋建設工業株式会社のK,株式会社ハラダのL・Mが落札予定者となることに立候補した。そこで,立候補したこれら5業者の間で話し合いが行われ,前記ア(ア)のルールに従って,オリエント開発株式会社,東洋建設工業株式会社が立候補をとり辞め,株式会社ハラダも世話人の裁定に任すとして立候補をとり辞めたため,立候補者は,被告吉田組と丸庄土木だけとなった。 丸庄土木は,本件工事の入札より以前の平成12年8月21日に,倉敷市発注の倉敷中第2地区ε号線埋設工事(ζ)を既に落札していたことから,前記ア(ア)のルールに従えば,丸庄土木には,本件工事の落札予定者となる資格がなかった。そこでAは,丸庄土木には本件工事を落札する資格がないと主張したが,丸庄土木は立候補を 既に落札していたことから,前記ア(ア)のルールに従えば,丸庄土木には,本件工事の落札予定者となる資格がなかった。そこでAは,丸庄土木には本件工事を落札する資格がないと主張したが,丸庄土木は立候補をとり辞めなかったため,この日には本件工事の落札予定者は決まらなかった。 (イ) そこで,翌日の同年3月1日午前11時ころ,再びδに関係業者らが集まって話し合いをした結果,前記5名の世話人の裁定により,丸庄土木を本件工事の落札予定者とし,最低入札予定価格を1億7500万円とすることに決まった。 この前記ア(ア)のルールに反してなされた裁定に対し,Aは憤慨し,上記裁定に従わずに本件工事の入札を行うことを決意し,同日午後2時10分に行われた本件工事の入札では,上記裁定に反し,1億7000万円での入札を行い,その結果,同額で被告吉田組が本件工事を落札した。 (2)ア(ア) そこで,上記認定事実に基づいて本件入札における談合の成否について判断するに,指名業者の全部又は一部が一堂に会した場において,公共工事の落札希望者がその落札の意思を表明して,会合参加者の間で予め落札予定者を決定した上,最低入札予定価格を取り決めておくことは,まさに受注価格の低落防止を目的とし,かつ,そのような結果をもたらすものであって,入札談合(カルテル)の典型的行為であるといえ,独占禁止法3条の不当な取引制限に該当すると同時に,民事上も明らかに自由競争の枠を逸脱した違法な行為であるというべきである。 Aは,本件工事の入札をめぐり,丸庄土木関係者らによって引き起こされた本件刑事事件の被害者として,当該事件の捜査担当検事に対し,倉敷市の土木建設業者らが,平成11年9月ころから,一定のルールをもって,公共工事の落札予定者及び り,丸庄土木関係者らによって引き起こされた本件刑事事件の被害者として,当該事件の捜査担当検事に対し,倉敷市の土木建設業者らが,平成11年9月ころから,一定のルールをもって,公共工事の落札予定者及び最低入札予定価格を入札前に取り決め,その取り決めに従って入札を行っていたことを具体的かつ詳細,明確に供述し,かかる供述の内容は,本件刑事事件の他の被害者や被告人らの供述とも一致しており,その内容には高い信用性が認められるところ,Aは,本件入札についても,本件入札前日及び当日に関係業者間で,落札予定者を丸庄土木,最低入札予定価格を1億7500万円とすることを決定したとの供述をしており,かかる手法は,前記で述べた談合の典型的方法であること,逆に本件工事の入札が,δで行われた研究会を通じた落札予定者の決定や最低入札予定価格の対象から外れたことをうかがわせる証拠は見当たらないことからすれば,本件工事についても不正な談合行為が行われたことを認めることができる。 (イ) この点につき,被告吉田組は,①少なくとも平成9年5月15日から平成13年2月22日までの間,被告吉田組が1度も落札業者になったことはなく,談合に応じたことはない,②本件工事においても,被告吉田組は,代表者が本件入札の当日である平成13年3月1日の朝に,事務所で入札金額を書き込み,入札に及んだもので,談合に応じたことはなく,談合破りをした事実もないと主張して,談合の成立を否認している。そして,これに沿うかのごとき証拠もある(甲13の1ないし14の2,被告吉田組代表者〔A〕)。 しかし,上記①については,平成9年5月15日から平成13年2月22日までの間,被告吉田組が1度も落札業者になっていなかったという事実は,被告吉田組が本件工事の入札に関して談合を行わ しかし,上記①については,平成9年5月15日から平成13年2月22日までの間,被告吉田組が1度も落札業者になっていなかったという事実は,被告吉田組が本件工事の入札に関して談合を行わなかったということを示すものとはいえないし,また,上記②についても,前述のように,検察官に対するAの供述は具体的かつ詳細,明確であって,これによれば,平成13年2月28日及び同年3月1日に指名業者らの会合において行われた前記行為が談合行為であることは疑いようがないし,Aが,3月1日の朝に,被告吉田組事務所で1億7000万円という入札金額を書き込んだ理由についても,同人は,その検察官に対する供述調書において,「私は,再度の談合の行われる平成13年3月1日の朝,吉田組の事務所で,世話人が私の吉田組を選んでも,反対に丸庄土木を選んでも,どっちにしても,このβの工事については,吉田組の入札金額を1億7000万円にすることに決め,入札の札に1億7000万円と書いて封筒に入れておきました」と供述し,本件工事の入札に関し,指名業者らの間で談合行為が行われたことを前提に,談合によって予め取り決められていた最低入札予定価格を踏まえて,それより低い金額で落札予定者以外の者が入札する,いわゆる抜き札行為を自らが行ったことを明確に認めており,これに反する被告吉田組の主張は採用できない。 なお,被告吉田組は,Aが検察官に対し,上記供述をしながらも談合罪で起訴されていないから被告吉田組は談合に関与していないと主張するが,同人が談合罪で起訴されていないことをもって,直ちに当該行為が談合行為に当たらないということにはならない。 イ(ア) 次に,当該談合行為によって倉敷市に損害が発生したといえるか否かについて検討する。 被 って,直ちに当該行為が談合行為に当たらないということにはならない。 イ(ア) 次に,当該談合行為によって倉敷市に損害が発生したといえるか否かについて検討する。 被告吉田組の外,訴外9社の本件入札参加者による前記認定のような談合行為は,指名競争入札前に落札予定者を決め,その者が落札できるように互いに入札予定価格を調整して,落札予定者に当初の取り決めどおり落札させるというものであって,これは結局,指名業者間で公正な競争をすることによる落札価格の低落を防止し,もって落札した業者の利益を図るものであるから,個別の工事について入札談合が行われた場合には,当該工事の発注者である地方公共団体は,談合が行われなかった場合に形成されたであろう公正な競争を前提とする価格よりも高額な金額で請負契約を締結した蓋然性が高いといわざるを得ない。そうすると,その高額の契約金額の支払いをすることによって両者の差額相当分の損害を被ったと認められる。 したがって,談合行為によって発注者が被った損害とは,談合行為がなければ指名業者間の公正な競争を経て入札された場合に形成されたであろう契約金額(又は想定落札金額)と現実の契約金額(又は落札価格)との差額相当分であると解するべきでる。 そこで,本件において,倉敷市が被った損害を確定するためには,本件工事の指名競争入札において談合行為がなければ形成されたであろう契約金額(想定落札価格)について検討することが必要となる。 (イ) この点につき,原告は,平成11年度及び平成12年度の倉敷市における公共工事の入札における設計金額に対する落札価格の占める割合を分析検討して,談合行為がなく公正な競争に基づいて契約が締結されれば,本件工事の契約金額は, ,平成11年度及び平成12年度の倉敷市における公共工事の入札における設計金額に対する落札価格の占める割合を分析検討して,談合行為がなく公正な競争に基づいて契約が締結されれば,本件工事の契約金額は,少なくとも20パーセントは低下していたものといえるから,倉敷市が被告吉田組に支払うべき契約金額もそれと同額低下するといえ,倉敷市は,本件工事の契約金額の20パーセントに当たる3570万円の損害を被ったといえると主張し,これに沿う内容の証拠も存在する(甲13の1ないし14の2)。 しかしながら,指名競争入札においては,入札に係る工事の規模,種類やその特殊性のほか,入札指名業者の数や各業者の事業規模,さらに,入札当時の社会経済情勢など様々な要因が複雑に影響し合って落札価格が形成されるものであることから,このような要因の近似性を検討することなく,単純に平成11年度及び平成12年度の倉敷市の入札結果を例に取って調査した場合の想定落札価格と対比するのみでは,損害額の認定として不正確な部分があるといわざるを得ない。本件において原告が提出する前記各証拠は,いずれも本件工事と近似した条件下における調査結果であるのか不明であるから,これらを基に本件における損害額を認定することは困難である。 また,最低制限価格とは,これ以下の価格では適正な内容の工事がされるとは考え難いとされる限度額であり,過当競争の結果,手抜き工事となることを防ぐため,たとえ入札価格が低くてもこれ以下の価格では受注させないとして設定された額にすぎないところ,種々の要因の異同にかかわらず,平成11年度及び平成12年度の入札結果を分析したというのみでは,これをもって未だ一般的に談合がされなかった場合の落札価額が最低制限価格に近づくとの客観的経験則を認める 種々の要因の異同にかかわらず,平成11年度及び平成12年度の入札結果を分析したというのみでは,これをもって未だ一般的に談合がされなかった場合の落札価額が最低制限価格に近づくとの客観的経験則を認めるに十分であるとまではいえない。確かに,上記事情は,損害額を考える上でひとつの考慮し得る事情には当たるとしても,この価格自体をもってこれが談合がなされず公正に行われた入札において想定される落札価格であると認めることはできないから,原告の前記主張は採用できない。 (ウ) もっとも,前記のとおり,本件において倉敷市に損害が発生していること自体は認められるところ,指名競争入札における落札価格を形成する要因は多種多様であって,影響力についても公式化することができないことにかんがみると,入札談合の事例における損害は,その性質上,金額算定が極めて困難というべきであるから,本件では民事訴訟法248条を適用して倉敷市が被った損害額を認定するのが相当である。 (エ) そこで,この点について検討するに,前記で認定した本件工事に関する被告吉田組及び訴外9社による一連の談合行為の態様及び入札経過,本件契約金額等本件に現れた一切の諸事情を総合考慮すると,本件の談合行為により倉敷市が被った損害額は,契約金額の15パーセント(2677万5000円)であると認めるのが相当である。 4 主たる争点(4)(被告倉敷市長の怠る事実の違法性)について地方公共団体が有する債権については,その長がこれを行使すべき義務を負い,行使するか否かの裁量権を有しない(法施行令171条以下,なお法96条1項10号参照)から,長が正当な理由なく相当な期間債権を行使しないときは,違法に財産の管理を怠る事実が成立するものと解される。そして,前記認定のとおり,倉敷市は (法施行令171条以下,なお法96条1項10号参照)から,長が正当な理由なく相当な期間債権を行使しないときは,違法に財産の管理を怠る事実が成立するものと解される。そして,前記認定のとおり,倉敷市は,被告吉田組及び訴外9社による共同不法行為に基づき,同被告らに対して損害賠償請求権を有していると認められるにもかかわらず,少なくとも本件談合行為に端を発する丸庄土木関係者によるAらへの強要未遂事件の判決が出た平成13年8月9日以降も今日に至るまでこれを行使していないことは当裁判所に顕著である。 この点に関し,被告倉敷市長は,原告が,本件工事に係る談合行為につき,平成13年11月に談合罪で検察庁に告発したものの,強制捜査権を有する検察庁においてさえ,本件談合行為につき不起訴処分としたのであるから,かかる事案について相当の根拠,証拠も有していないにもかかわらず,市が指名業者らの間で談合行為が行われたとして損害賠償請求をすることは困難であるから,これを行使しないことは違法ではないと主張する。しかし,前記刑事事件の被害者であるAら及び同事件の被告人である丸庄土木の関係者らは,全て前記刑事事件の発端となった本件談合の事実について認め,これを争っているものではないことから,談合の事実を認定するに足る十分な証拠があることは前記のとおりである。 起訴,不起訴という処分の決定は,検察官に裁量の認められる事項であり,検察官は,犯人の性格,年齢及び境遇,犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは公訴を提起しないことができるのであるから(刑事訴訟法248条),検察官が不起訴処分にしたという一事をもって,被告倉敷市長が被告吉田組及び訴外9社に対する損害賠償請求権の行使をするに必要な証拠が足りないということはできない。 また,被 訟法248条),検察官が不起訴処分にしたという一事をもって,被告倉敷市長が被告吉田組及び訴外9社に対する損害賠償請求権の行使をするに必要な証拠が足りないということはできない。 また,被告倉敷市長は,公正取引委員会に対する原告の告発状提出後相当期間が経っても,同委員会が被告吉田組らを処分した形跡がないことも,被告市長が損害賠償請求権の行使をしなかったことの理由として挙げているが,この点についても,公正取引委員会の処分があるか否かと倉敷市が被告吉田組らに対して有する損害賠償請求権の行使をするかどうかということとは,その制度趣旨・目的も相違するものである以上,別個の問題であるから,公正取引委員会の処分がないことをもって,被告倉敷市長が損害賠償請求権を行使しないことを正当化することはできない。 よって,被告倉敷市長が被告吉田組及び訴外9社に対する損害賠償請求権の行使を怠っていることについて,これを正当化するに足りる事情は何ら認められないから,本件において上記請求権の行使を怠ることは違法というべきである。 5 結論以上のとおり,原告の被告吉田組に対する請求は,2677万5000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成14年3月29日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があり,その余は理由がなく,原告の被告倉敷市長に対する請求は理由があるからこれらを認容することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条本文,65条1項本文を,仮執行の宣言につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法259条1項を各適用し,被告倉敷市長に対する違法の確認及び訴訟費用についての仮執行宣言の申立ては,相当でないからこれを却下することとして,主文のとおり判決する。 行政事件訴訟法7条,民事訴訟法259条1項を各適用し,被告倉敷市長に対する違法の確認及び訴訟費用についての仮執行宣言の申立ては,相当でないからこれを却下することとして,主文のとおり判決する。 岡山地方裁判所第2民事部裁判官政岡克俊 裁判官原田綾裁判長裁判官小野木等は,転補につき,署名押印することができない。 裁判官政岡克俊
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