主文 1 本訴原告(反訴被告)らの請求をいずれも棄却する。 2 反訴原告(本訴被告)らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,本訴反訴を通じて,これを10分し,その1を本訴被告(反訴原告)らの負担とし,その余を本訴原告(反訴被告)らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求本訴原告(反訴被告)株式会社ロプロを「原告会社」(なお,旧商号は「株式会社日栄」である。),本訴原告(反訴被告)Aを「原告A」,同Bを「原告B」,これらを併せて「原告ら」と略称し,本訴被告(反訴原告)Cを「被告C」,同Dを「被告D」,同Eを「被告E」,同Fを「被告F」,同Gを「被告G」,同Hを「被告H」と,同Iを「被告I」,これらを併せて「被告ら」と略称する。 1 本訴請求(1) 被告らは,連帯して,原告会社に対し,5000万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被告らは,連帯して,原告Aに対し,3000万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 被告らは,連帯して,原告Bに対し,2000万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 2 反訴請求原告らは,連帯して,被告らに対し,それぞれ159万5714円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,弁護士である被告らが,貸金業者である原告会社の法務担当者であった原告A及び同Bが弁護士と共謀し,原告会社と顧客との間の民事訴訟の際に従業員に偽証するよう教唆した(以下,原告A及び同B 本件は,弁護士である被告らが,貸金業者である原告会社の法務担当者であった原告A及び同Bが弁護士と共謀し,原告会社と顧客との間の民事訴訟の際に従業員に偽証するよう教唆した(以下,原告A及び同Bらが偽証教唆をしたと被告らによって疑われた行為を「本件行為」という。)ことを内容とする告発及び記者会見を行ったことにより,原告らの名誉を毀損したとして,原告会社が,被告らに対し,共同不法行為に基づく損害賠償として5000万円,原告Aが同様に3000万円,同Bが同様に2000万円の各支払と,それぞれ本訴状送達の日の翌日から民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めたところ(本訴請求),被告らが,かかる本訴請求は正当な弁護活動を抑圧する不当訴訟であるとして,共同不法行為に基づく損害賠償として,原告らに対し,慰謝料,応訴費用等の内金159万5714円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日からの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた(反訴請求)事案である。 1 前提となる事実(認定した事実には末尾に証拠を掲げる。)(1) 当事者ア原告ら(ア) 原告会社は,商業手形の割引及び資金の貸付等を業とする株式会社である。 (イ) 原告Aは,本件行為当時,原告会社の常務取締役法務部長であった者であり,現在は,原告会社の子会社である日本信用保証株式会社(以下「日本信用保証」という。)の代表取締役である。 (ウ) 原告Bは,本件行為当時,原告会社の法務部副部長であった者である。 イ被告ら(ア) 被告Cは,大阪弁護士会に登録する弁護士であり,「日栄・商工ファンド被害対策全国弁護団(以下「全国弁護団」という。平成10年12月に設立され,原告会社や株式会社SFCGなどの商工ローン業者による零細事業者やその連帯保証人を対象とした商法を,違法・悪質 商工ファンド被害対策全国弁護団(以下「全国弁護団」という。平成10年12月に設立され,原告会社や株式会社SFCGなどの商工ローン業者による零細事業者やその連帯保証人を対象とした商法を,違法・悪質と主張し,その被害救済等を目的として運動している団体である。)」の弁護団長である(乙34)。 (イ) 被告Dは,大分県弁護士会に登録する弁護士であり,全国弁護団の構成員である。 (ウ) 被告Eは,京都弁護士会に登録する弁護士であり,全国弁護団の事務局長である。 (エ) 被告F,同G,同H,同Iは,大分県弁護士会に登録する弁護士であり,全国弁護団の構成員である(但し,被告Hは,本件本訴が提起された平成15年5月当時は構成員ではない。弁論の全趣旨)。 (2) 本件の経緯ア原告会社をめぐる状況(ア) 平成10年ころ,原告会社の元従業員らが債権回収の際に,「腎臓を売って金を払え」などと脅迫的な文言を用いたとして恐喝未遂で逮捕されるなどの事件が発生し,原告会社を含む商工ローンの債権回収等の態様が社会問題となり,同年12月には前記のとおり全国弁護団が設立され,平成11年12月14日に開催された参議院財政・金融委員会では,原告会社の当時の代表取締役が証人喚問されるなどの事態となり(乙26),平成12年1月27日には,近畿財務局長は,原告会社の東京及び千葉支店につき,90日間の業務停止及び他の全ての営業所又は事務所の7日間の業務停止の処分(弁済行為等を除く。)をした(乙40)。 (イ) 原告会社の取引形態は,主として,顧客が日本信用保証との間で保証委託契約を締結した上で,同社等を保証人として手形取引約定を締結し,同約定に基づいて,原告会社が顧客に対し,手形貸付けを繰り返し行うものであったが,平成12年ころから平成14年ころ,原告会社が,顧客との間で行っ した上で,同社等を保証人として手形取引約定を締結し,同約定に基づいて,原告会社が顧客に対し,手形貸付けを繰り返し行うものであったが,平成12年ころから平成14年ころ,原告会社が,顧客との間で行ったこのような手形貸付取引と利息制限法の適用をめぐり,過払金返還・債務不存在確認訴訟が全国各地の裁判所で係属していた。そして,かかる利息制限法の引直し計算において,どのような計算方法をとるべきか,貸付けの連続性や日本信用保証が徴収する保証料,事務手数料がみなし利息にあたるか等については各裁判所で判断が分かれる状況にあった(甲18,乙14の39の1及び2,弁論の全趣旨)。 イ集団訴訟の経緯(ア) 原告会社は,平成12年,顧客であった有限会社肉のミヤモト等(以下「ミヤモト等」という。)から,利息の返済により既に過払が生じているとして,不当利得返還請求訴訟を提起され,大分地方裁判所平成12年(ワ)第435号事件(以下「第一次集団訴訟」という。)として係属した。さらに続いて,顧客からの原告会社に対する集団訴訟が提起され,大分地方裁判所平成12年(ワ)第640号事件として係属した(以下「第二次集団訴訟」という。)。 かかる第一次及び第二次各集団訴訟では,J弁護士(以下「J」という。)が原告会社側の訴訟代理人となり,被告D,同F,同G,同Hらが顧客側の訴訟代理人となっていた。そして,争点については多数存在したが,前記ア(イ)と同様に,貸付けの連続性や日本信用保証が徴収する保証料等がみなし利息にあたるかが重要な争点になっていた。(甲18,乙14の1から38まで,弁論の全趣旨)(イ) 平成13年5月ころ,第一次集団訴訟につき,ミヤモト等の側から貸付時の状況等について人証申請がされた。Jは,これに対する反証として原告Aのほか,原告会社大分支店(以下「大 ,弁論の全趣旨)(イ) 平成13年5月ころ,第一次集団訴訟につき,ミヤモト等の側から貸付時の状況等について人証申請がされた。Jは,これに対する反証として原告Aのほか,原告会社大分支店(以下「大分支店」という。)の従業員からも証人を1名申請することを考え,ミヤモト等との契約の一部を担当し,在職している従業員の中からL(以下「L」という。)を選んだ(甲7,乙18)。 原告Bは,同年10月5日ころ,JからLの出廷依頼を受け取り(甲11),Lに対し,打合日について連絡をした。同月17日,Jは,原告会社の貸付方法(各貸付けが個別であること),保証料がみなし利息とはならないことなどを立証するものとして,原告AとLの人証申請をした(乙14の17)。 (ウ) 同日,Jは,原告会社の本社でLと打合せを行った(以下「本件第1回打合せ」という。)。 (エ) 同年11月20日,Jが,「1通に日付を記入した上,名前の横に押印及び割印をして当職あてに郵送してください。期日が迫っておりますので速達でご返送下さい。1通はL様の控えになりますのでそのままお査収下さい」との送付書とともに,Jの作成したLの陳述書の原案(甲10,以下「本件陳述書案」という。)をLに送付(乙9の4)した。Lは,これに異議を述べたり,訂正を求めることもなく署名捺印をし,そのまま第一次集団訴訟において原告会社側の書証として提出された(乙4の3,9の6,甲18)。 さらに,Jは,問答形式の尋問事項書(甲12,乙2,なお,甲12と乙2の空白部分の手書きの書き込み文言は,J,Lがそれぞれ書き込んだものとみられ,全く同一のものではないが,これらの書き込みがない尋問事項書を単に以下「本件尋問事項書」という。)を作成し,原告Bを介してLに交付した。(乙9の7)(オ) 同月27日,ミヤモト等は,日本 みられ,全く同一のものではないが,これらの書き込みがない尋問事項書を単に以下「本件尋問事項書」という。)を作成し,原告Bを介してLに交付した。(乙9の7)(オ) 同月27日,ミヤモト等は,日本信用保証の元支配人であったM(以下「M」という。)を人証申請した(乙14の18)。 (カ) その後,Lの証人尋問が,同年12月17日に大分地方裁判所で実施されることとなり,J,原告A,同Bは前日である同月16日に大分を訪れ,大分支店にてLと証人尋問の打合せを行った(以下,同打合せを「本件第2回打合せ」という。)。 (キ) 同月17日,大分地方裁判所において,まず原告Aの証人尋問が(乙16の2),その後,Lの証人尋問が実施された(甲2・この日のLの証言の内容を「第一次L証言」という。)。 ウ告発及び記者会見までの経緯(ア) 平成14年2月25日,第一次集団訴訟において,Mがミヤモト等の側の証人として出廷し,第一次L証言に原告会社の実態と異なる点や,原告会社の内規(「切り返し交渉心得7ケ条」)の知情について虚偽の点があることなどを証言した(乙9の14)。 (イ) 同年4月10日,Lは,原告会社を退職し,Mから紹介され,被告Dの事務所に電話連絡を取り,同月21日に事務所に赴き,本件尋問事項書を示し,第一次L証言を訂正したいと申告した(乙14の37,29,証人L,被告D本人)。 Lは,従前の証言を訂正(323項目のうち42項目に及んでいた。)する平成14年4月21日付陳述書(乙1)を作成し,第一次集団訴訟において,ミヤモト等の側から書証として提出された。さらに,ミヤモト等の側からは,第一次L証言の訂正を立証趣旨として,Lの再度の人証申請がされたが,裁判所は却下した(乙14の21から23まで)。 続く第二次集団訴訟でも,顧客の側からLの人証申 。さらに,ミヤモト等の側からは,第一次L証言の訂正を立証趣旨として,Lの再度の人証申請がされたが,裁判所は却下した(乙14の21から23まで)。 続く第二次集団訴訟でも,顧客の側からLの人証申請がされ,同年8月6日に証人尋問が実施された(以下,この日のLの証言の内容を「第二次L証言」という。甲18,乙3)。 (ウ) 同年7月1日,被告らを含む合計64人の弁護士が,別紙のとおりの告発状(以下「本件告発状」という。)を提出し,J,原告A,同Bを,偽証教唆として大分地方検察庁に告発した(以下「本件告発」という。甲13,乙5)。 なお,本件告発状には,L作成の平成14年5月27日付けの陳述書(乙9の1)のほか,本件尋問事項書,本件陳述書案などが添付されていた(乙9の1から乙9の10の2まで)。 (エ) 同日,被告C,同Dは,大分県弁護士会の弁護士会館で記者会見(以下「本件記者会見」という。)を行い,多数の記者の前で告発状の要旨を説明し,本件告発の意義を述べ,記者らに原告A,同Bらの氏名を黒塗りした本件告発状の写しを提供した。なお,この場にはLも同席していた。(乙29,34,45)(オ) 翌日の朝刊には下記のとおりの記事が掲載された。 ① 大分合同新聞は,「元社員に偽証を指示」「日栄部長らの告発状提出」「全国弁護団」の見出しで,要旨「全国弁護団は,大分地裁で係争中の民事訴訟で原告会社側を有利にするため,元社員に虚偽の証言をするよう指示したとして,同社の法務部長(当時)や,顧問弁護士ら3人を偽証教唆の疑いで大分地検に告発状を提出した。」「同弁護団によると,元社員は,法務部長らに求められ,『日栄の社員が(同社の保証会社の)日本信用保証の債権回収を手伝ったことはない』などと証言したが,偽証したことに良心の呵責を感じて退社。大分弁護団に『真実を証 ると,元社員は,法務部長らに求められ,『日栄の社員が(同社の保証会社の)日本信用保証の債権回収を手伝ったことはない』などと証言したが,偽証したことに良心の呵責を感じて退社。大分弁護団に『真実を証言したい』と申し出たという。弁護団は,元社員の協力を得たことや,想定問答集を入手したことから告発することを決めた。」「C弁護士は,『偽証の部分は訴訟の争点に関するもの。あらためて日栄の体質が浮き彫りになった』と主張した。」「原告会社は,『詳しい内容が分からず,コメントは差し控えたい。今後の対応は弁護士と検討したい』としている。」と報道した(甲3)。 ② 毎日新聞は,「日栄訴訟 『社員に偽証させた』 弁護団元法務部長らを告発」との見出しで,要旨「全国弁護団(被告C団長,64人)は,同社の元法務部長ら元社員2人と顧問弁護士1人を偽証教唆容疑で大分地検に告発した。」「告発状によると,元法務部長らは,同地裁での不当利得返還訴訟を有利に進めるため,社員に偽証させることを計画。証人尋問で,顧客管理担当の男性に,実際には子会社の日本信用保証に債権回収をさせていたのに,債権回収をさせていないなどと偽証させた疑い。証拠として,被告Cは,偽証のために日栄が準備していた想定問答集を提出した。」「日栄広報部は『詳しい内容が分からないのでコメントは差し控えたい』と話した。」と報道した(甲4)。 ③ 朝日新聞は,「元社員に偽証日栄側が強要大分地検に告発」との見出しのもとに,要旨「全国弁護団の被告C団長は,大分市で記者会見し,日栄の裁判担当者ら3人を偽証教唆の疑いで大分地検に告発したと発表した。告発は,弁護団64人の連名。大分地裁で続いている裁判で,利息制限法に基づく金利の計算方法をめぐって元社員がうその証言をした疑い。」「日栄広報部は,『書類が届いておらず,コメ に告発したと発表した。告発は,弁護団64人の連名。大分地裁で続いている裁判で,利息制限法に基づく金利の計算方法をめぐって元社員がうその証言をした疑い。」「日栄広報部は,『書類が届いておらず,コメントできない』としている。」と報道している(甲5)。 ④ 京都新聞は,「日栄幹部らを偽証教唆で告発弁護士ら大分地検に」との見出しのもとに,要旨「全国の弁護士64人が,会社側の証人として出廷した元社員に偽証を指示したとして,当時の同社法務部長ら3人を偽証を教唆した疑いで大分地検に告発した」と報道している(甲6)。 エ現在までの経過(ア) 平成14年9月22日,原告らは,Lに対し,本件告発及び同記者会見を行ったことによって原告らの名誉を毀損したなどとして,合計1億円の損害賠償を求める訴訟(大分地方裁判所平成14年(ワ)第515号損害賠償請求事件。 以下「L被告事件」という。)を提起し,当裁判所に係属した。 (イ) 同年10月15日,本件告発の告発人らは,大分地方検察庁の求めに応じ,本件告発状を補正した(乙6)。その他,Lの陳述書2通も追加資料として提出した。(乙8の1から3まで)(ウ) 同年11月18日,Lは,原告らに対し,偽証教唆のほか,L被告事件が不当提訴であり,損害を被ったとして,慰謝料等の損害賠償を求める訴訟(平成14年(ワ)第611号損害賠償請求事件・以下「L原告事件」という。)を当庁に提起した。 (エ) 同年12月27日,Jは,大分弁護士会に対し,被告D,同F,同G,同H,同Iに関し,本件告発が弁護士の業務活動として不当であるとして,懲戒申立てをした。Jは同様に本件告発人となった弁護士に対し,大阪弁護士会,京都弁護士会に対し懲戒申立てを行った(甲18,乙13,45)。 (オ) 平成15年2月25日,第二次集団訴訟の判決が言い渡され 申立てをした。Jは同様に本件告発人となった弁護士に対し,大阪弁護士会,京都弁護士会に対し懲戒申立てを行った(甲18,乙13,45)。 (オ) 平成15年2月25日,第二次集団訴訟の判決が言い渡された(甲18)。同年3月19日,第一次集団訴訟は,ミヤモト等の側が原告会社に金銭を支払うという内容での和解が成立し,終了した。(甲15)(カ) 同月28日,本件告発に関し,京都地方検察庁取調室において,J,原告A,同Bの取調べが実施された(甲18)。 (キ) 同年5月1日,本件告発の告発人らは,大分地方検察庁に対し,前記の和解調書やMの証言調書や陳述書等を提出した(乙9の11から乙9の17まで)。 (ク) 同月20日,原告らは,被告らに対し,本件本訴を提起した。 (ケ) 同年6月30日,大分地方検察庁は,本件告発に関し,嫌疑不十分として不起訴処分とした。これに対し,被告Dは,大分検察審査会に審査の申立てをした。(甲14の1から3まで,乙10,11,45)(コ) 同年8月6日,被告らは,原告らに対し,本件反訴を提起した。 (サ) 平成16年4月22日,L被告事件及びL原告事件は,双方訴えを取り下げるとの内容の和解により終了した。 (シ) 現在までに,大阪弁護士会綱紀委員会は,本件告発の告発人となった弁護士に関する懲戒申立てについて,本件告発が「非行行為」にあたるとした上で,懲戒不相当とする議決をした。 また,検察審査会は,公訴を提起しない処分を相当とする議決をしている(乙45)。 第3 当事者の主張 1 本訴請求について(1) 請求原因事実(原告らの主張)ア本件告発と本件記者会見の関係本件告発は,それを受けた者の名誉を著しく損なう危険を伴うものであるから,これを行うには慎重な注意を要し,犯罪の嫌疑をかけるのに相当な客観的根拠があるか否 主張)ア本件告発と本件記者会見の関係本件告発は,それを受けた者の名誉を著しく損なう危険を伴うものであるから,これを行うには慎重な注意を要し,犯罪の嫌疑をかけるのに相当な客観的根拠があるか否かを確認しなければならず,被告らは弁護士であるから,この根拠の確認につき,一般人より高度の注意義務が課されている。しかし,被告らは,この注意義務を果たさず,本件告発及び同記者会見を行い,原告らの名誉,信用を著しく毀損した。 本件告発と同記者会見は社会的事実としては別個の行為であるが,原告らに対する名誉毀損,信用毀損という意味では相互に密接して関連している。すなわち,本件告発はもともと本件記者会見を目的としてなされた行為であり,本件告発を行って初めてなし得た行為である。 したがって,本件告発と同記者会見は,全体として原告らに対する一個の名誉毀損,信用毀損の不法行為を構成する(なお,予備的には本件告発と本件記者会見が個別的にも不法行為が成立することを主張する。)。 イ本件記者会見の被告らの関与被告Cは,全国弁護団の弁護団長として,同Dは,本件告発の責任者として,同Eは同弁護団の事務局長として,同F,同G,同H,同Iは,大分県弁護士会に登録する同弁護団の構成員として本件告発を行った。 本件記者会見は,全国弁護団が主催したもので,新聞報道にも同弁護団が本件記者会見を行ったと報道されている。したがって,被告らを含む全国弁護団の64名の弁護士が,主観的・客観的に共同して本件告発及び同記者会見を行っていることは明白である。本件記者会見に出席したのは被告Cと同Dであるが,同Eは,全国弁護団の事務局長であるし,同F,同G,同H,同Iは,大分弁護士会所属であるから,大分で行われた本件告発及び同記者会見についても主体的,積極的に関与したものと認められ,被告Dと あるが,同Eは,全国弁護団の事務局長であるし,同F,同G,同H,同Iは,大分弁護士会所属であるから,大分で行われた本件告発及び同記者会見についても主体的,積極的に関与したものと認められ,被告Dと同Cの全くの独断で行われたとは考えられない。したがって,被告らの行為は,本件告発及び同記者会見を共同で行った64名の弁護士の中でも特に違法性が高く,本件告発及び同記者会見により原告らが被った損害を賠償すべきである。 ウ社会的評価の低下(ア) 被告らによる本件告発は,原告A,同Bの名誉,社会的信用を毀損し,同人らに対する不法行為となるものである。また,原告会社は本件告発の直接の名宛人ではないが,上述のように,被告らは,原告会社の社会的信用を貶めるために,強引に原告A,同Bを「共犯者」として,原告会社が組織的に偽証教唆を行っているかのような告発を行い,ひいては原告会社の名誉をも毀損したのである。 (イ) 被告らが,本件告発及び同記者会見において原告会社の名誉を毀損する不法行為を行ったことにより,原告会社は訴訟において従業員に偽証指示,偽証教唆,偽証強要を行っているかのような悪印象が社会一般に与えられ,極めて多大な名誉毀損,信用毀損の損害を被った。この被告らの本件告発及び同記者会見による名誉毀損の不法行為によって原告会社が受けた名誉毀損,信用毀損による損害額は,5000万円が相当である。 (ウ) 原告Aは,本件告発及び同記者会見により,各新聞で「日栄部長」「日栄元法務部長」などと報道され,氏名が事実上特定されてしまい,その名誉毀損の損害は極めて甚大である。さらに,本件告発によって捜査機関から「被疑者」として扱われ,現実に取調べを受けるなど,名誉毀損の損害を受け,精神的苦痛を受けた。かかる損害は,3000万円をもって慰謝することが相当である。 る。さらに,本件告発によって捜査機関から「被疑者」として扱われ,現実に取調べを受けるなど,名誉毀損の損害を受け,精神的苦痛を受けた。かかる損害は,3000万円をもって慰謝することが相当である。 (エ) 原告Bも,捜査機関から「被疑者」として扱われ,さらに原告会社において部下に偽証を強要しているかのような悪印象が社会一般に与えられ,極めて多大な名誉毀損の損害を被った。かかる損害は,2000万円をもって慰謝することが相当である。 (被告らの主張)ア本件告発と名誉毀損の関係告発行為は,本来犯罪の嫌疑を捜査機関に通告する行為であり,必ずしも不特定・多数人に公表してなされる性質の行為ではない。むしろ,捜査を密行的に行うことが妥当であるという観点からは,社会に公表しないで捜査がなされる方が典型的である。したがって,告発行為と記者発表を結びつけ,告発行為を行うことで名誉毀損・信用毀損が当然に起こるかのような原告らの構成には無理がある。 告発行為自体は刑事訴訟法239条1項において「何人でも,犯罪があると思料するときは,告発をすることができる」と規定されており,捜査の端緒とさせる意味を有するものであるから,犯罪事実が存在することが合理的に疑われる程度の証拠資料,すなわち,捜査機関をして捜査開始を決意させる程度のもので足りるというべきである。現実に捜査が開始され,本件告発が正当であったことが証明されているのであるから,本件告発をしたことが不当であったとの原告らの主張は成り立たず,まして本件告発行為自体による名誉・信用毀損を云々するのは全くの誤りである。 本件告発自体は名誉毀損の低下をもたらさないから,本件告発が告発時に調査が不十分で判断が軽率であったことの主張・立証責任については告発行為が不法行為であると主張する側が負う。 イ本件記者会見の被 本件告発自体は名誉毀損の低下をもたらさないから,本件告発が告発時に調査が不十分で判断が軽率であったことの主張・立証責任については告発行為が不法行為であると主張する側が負う。 イ本件記者会見の被告らの関与本件記者会見は,被告Cと同Dが協議して独自の判断において行ったものであって,他の被告らはこれに全く関与していないし,本件告発に賛同したからといって,本件記者会見が当然に行われると認識していたなどということはできない。 本件記者会見については,本件告発を知った新聞記者の側から被告Dに取材を申し入れ,記者発表の場を設けることを求めたため,被告D及び同Cがそれに応じたものである。これは,いわゆる提訴会見であり,新聞記者らの報道の自由,ひいては国民の知る権利に応える行為としてなされているものである。被告C・同Dが報道したのではなく,報道は,あくまで報道機関がその責任において行った行為である。 ウ社会的評価の低下(ア) 本件記者会見では,原告A,同Bの氏名は公表していない。新聞記事において「法務部長」は特定されているが,法務副部長の肩書きは全く報じられておらず,原告Bは特定されていない。よって,原告Bについて名誉毀損の問題は生じず,損害はない。 (イ) 原告会社については,問題のある商法を行い,本件では,同会社の従業員に対して偽証を教唆したのであるから,もはや保護されるべき法益はないし,法人が自然人と同じような精神的苦痛を受けることはあり得ない。 (ウ) 特定の記者に対してなされる発言は,記者会見の場に限定すれば,名誉毀損ということ自体が起こり得ない。損害が発生した時点とは,報道の時点であるが,この場合には報道の主体は被告らではなく新聞社であって,新聞報道による損害発生の責任を被告らが負う筋合いはない。よって請求原因事実自体が成り立たな ない。損害が発生した時点とは,報道の時点であるが,この場合には報道の主体は被告らではなく新聞社であって,新聞報道による損害発生の責任を被告らが負う筋合いはない。よって請求原因事実自体が成り立たないものである。 (2) 抗弁(被告らの主張)ア正当業務行為弁護士法や弁護士倫理によれば,弁護士は基本的人権の擁護や社会的正義の実現を使命とするとされており,本件偽証教唆のような不正義に対しては,社会的正義を実現するために告発し,社会的に問題にすべき責務が法律的に課されているのである。むしろ,かかる事態を発見した場合に,何もしないことは,弁護士としての義務違反である。本件での被告らの行為は,弁護士法及び弁護士倫理で規定され,奨励された行為である。このような弁護士に課された法的使命・社会的使命に照らして,被告Dが偽証を告白したLの訴えを真摯に受け止め,その求めに応じて告発等を行うことは当然である。本件被告らの行為は,刑法35条にいう「正当な業務による行為」として,違法性が阻却される行為である。 イ表現内容の真実性・相当性(ア) 公共の利害多数の被害者を生み,国会でも取り上げられるほどの社会問題となった貸付形態が争点とされている原告会社と顧客との集団訴訟において,当該重要な争点に関する事実について,現場の社員に,その記憶や体験に反する証言を行わせたことは到底許されることではなく,放置しておくべきではないと被告らは考えて,刑事告発が必要であると判断した。被告らの摘示・告発した行為は,原告らの偽証教唆行為であり,犯罪行為であるから,単なる民事事件の法律解釈などとして議論することは誤りである。 (イ) 公益目的被告らは,犯罪行為を発見したのであるから,公益的見地から,弁護士の使命として本件告発・同記者会見を行ったものであり,不当 事事件の法律解釈などとして議論することは誤りである。 (イ) 公益目的被告らは,犯罪行為を発見したのであるから,公益的見地から,弁護士の使命として本件告発・同記者会見を行ったものであり,不当な目的はない。 (ウ) 表現内容の真実性本件において名誉・信用毀損行為が認められるとした場合に求められる真実性の証明の対象は,「Lが偽証したこと,すなわち偽証罪の本質に鑑みて,Lが記憶に反して証言したこと,原告らがそのL証言(偽証)への教唆をしたこと」である。 「切り返し」の言葉を使っているのに使わないようにと「応酬話法により」誘導・アドバイスされて,原告らの言うがまま,なすがままの記憶に反した証言がなされたのは真実である。 そして,証拠申出前に,証人に会いもせずに,原告会社側の主張を証明するという立証目的でLの証人申請をして,証人との間で尋問事項を設定した打合せを行う前に,一問一答の形での回答を用意しておき,これを送付した上で打ち合わせたること自体が既に偽証教唆行為を客観的に裏付ける行為といえる。 J,原告Aだけでなく,同Bについても,法務副部長という要職で,原告AやJの指揮の下,Lとの打合せの実務を全面的に取り仕切っていたこと自体からすれば,独自に偽証教唆が認められる。したがって,原告Bも告発の対象とした点は間違いではない。 (エ) 真実と信じたことの相当性被告Dは,元原告会社の社員で日本信用保証の支配人も務めていたMとの間で,原告会社を申立人とする秘密漏洩禁止等仮処分事件や,同社に対する不当解雇による損害賠償請求等を受任しており,第一次集団訴訟の証人としても,同人を申請し,同人が退職社員から独自に入手した原告会社の内部資料も加えて証言の準備を行った。また,原告会社の元社員で,貸金業規制法21条1項の違法取立てにより起訴されて 次集団訴訟の証人としても,同人を申請し,同人が退職社員から独自に入手した原告会社の内部資料も加えて証言の準備を行った。また,原告会社の元社員で,貸金業規制法21条1項の違法取立てにより起訴されて有罪となった訴外N(以下「N」という。)及び同O(以下「O」という。)から委任を受けて,原告会社らに対して不当解雇等の損害賠償を求める訴訟を提起し,原告会社が会社ぐるみで刑事事件の供述の口裏合わせをしている実態を明らかにした。このような中で,平成13年12月17日に第一次集団訴訟に原告会社側の証人として出廷したLが,平成14年4月10日に原告会社を退職した上で,被告Dに連絡を取り,自ら偽証を告白して,原告A,同B,Jから偽証を教唆された事実を訴えてきたのである。52歳という年齢で,退職してまで偽証を告白したこと自体から偽証教唆については極めて深刻なものと判断され,加えて被告Dが他の訴訟等で認識した関係者の供述に照らしても,偽証教唆の事実も明白と確信した。 (原告らの主張)表現の自由といえども,絶対無制約のものではありえず,内在的制約に服する。① 公共の利害に関する事項であり,② 公益目的であり,③ 表現内容が真実であるか,又は真実と誤信したことにつき,確実な資料と根拠に照らして相当の理由があるという要件を充たさなければ,名誉毀損の表現行為の違法性は阻却しないのであるが,本件では以下のとおりいずれの要件も充たさない。 ア公共の利害第一次集団訴訟の争点は,純然たる民事事件であり,その争点も,貸付けの一体性や連続性,利息制限法の適用等というものであり,貸付けの事実に対する法的評価,民法及び利息制限法の法律解釈に過ぎず,公共の利害に関する事項とはいえない。 イ公益目的被告らが,本件告発及び同記者会見を行った目的は,原告A,同Bに偽 ものであり,貸付けの事実に対する法的評価,民法及び利息制限法の法律解釈に過ぎず,公共の利害に関する事項とはいえない。 イ公益目的被告らが,本件告発及び同記者会見を行った目的は,原告A,同Bに偽証教唆の容疑をかけ,原告らの社会的信用を貶め,全国各地の原告会社に対する訴訟を有利に導こうとするところにあったことが明白であるから,公益目的を有していなかった。 ウ表現内容の真実性Jは,Lとの打合せにおいて,Lから事実を聞き取った内容をもとに本件陳述書案を作成し,本件尋問事項書もこれに沿って作成したものである。また,本件第1回打合せ,同第2回打合せのいずれにおいても,J,原告A,同BがLに対して特定の証言をするように指導したり,Lの言い分を訂正したり,自らの記憶に反して証言するように指示したり教唆したことも全くなかった。 本件尋問事項書は,弁護士が証人尋問を行う際,ごく通常に作成するものであり,JはLの話に合わせて回答欄をより詳細に補充し,またブランクを補充しており,その信憑性は極めて高いものである。そもそも,被告らが主張するように,JがLに対して,一方的に尋問事項書の内容を押し付けて偽証を教唆したというのであれば,Jは最初からブランク等の一切ない完璧な想定問答を作成し,それをLに交付して記憶させているはずであり,本件尋問事項書を作成するはずがないのである。また,Jは,当日の証人尋問において本件尋問事項書に沿ってLの尋問を行っているが,Lは自分で考えて,自分の言葉で回答している。そのため,Jも本件尋問事項書を適宜修正して尋問を行っており,このことは本件尋問事項書と証言調書を比較すれば明らかである。このように,Jは,Lから事情を聴取し,本件陳述書案,本件尋問事項書を作成し,これに基づいて証人尋問を行っており,Lが証人尋問において ,このことは本件尋問事項書と証言調書を比較すれば明らかである。このように,Jは,Lから事情を聴取し,本件陳述書案,本件尋問事項書を作成し,これに基づいて証人尋問を行っており,Lが証人尋問において自らの記憶に従って証言していた事実は疑い得ない。 また,そもそもLは,第一次L証言において,自らの記憶に従って証言しているのであり,偽証したとはいえないし,第二次L証言における証言の変更を前提にしても同様である。そして,同人の証言は,判決の結論に影響を与えるものでもない。 エ真実と信じたことの相当性被告らが本件告発及び同記者会見において明示した,原告らによる偽証教唆等の事実を真実と信じた根拠は,Lの陳述以外にはなく,Lの陳述は,要旨,「J,原告Aから『切り返し』ではなく『再融資』と言うように言われた。そう言わなければならないと思っていた。当時はその内容で間違いないと思っていた」「Jから本件陳述書案,本件尋問事項書が送られてきた。そのとおり言わなければならないと思っていた。当時は,その内容で間違いないと思っていた」というものであって,Lは,J,原告Aから言われたこと,Jが作成した本件陳述書案,本件尋問事項書の内容が当時は正しいと思っており,自己の記憶,判断でそのまま証言したものに過ぎず,Jらが「自己の記憶と異なることを証言する」ように「教え唆した」わけではない。Lの「偽証」,J,原告A,同Bの「偽証教唆」は全く認められないことは,第一次L証言や,L陳述書等をきちんと分析すれば明らかであるのに,被告らはこれを怠った。しかも,被告らは,本件尋問事項書を入手しており,その体裁,内容からしても,弁護士が証人尋問を行う際に通常作成するもので,回答欄にブランクがあることからすると,Jが偽証教唆など全く行っていないことが明らかなものである。弁護士である 入手しており,その体裁,内容からしても,弁護士が証人尋問を行う際に通常作成するもので,回答欄にブランクがあることからすると,Jが偽証教唆など全く行っていないことが明らかなものである。弁護士である被告らは,当然にこのことを理解していたはずであるが,あえて「想定問答集」などと虚偽の名称で呼称し,本件告発及び同記者会見の挙に出た。 被告らは,上述のように,本件告発に客観的根拠があるか否かを全く確認しようともせず,むしろ,本件告発の内容が全くの虚偽であり,犯罪を構成しないことを理解していながら,あえて,原告A,同Bに偽証教唆の容疑をかけさせ,原告らの社会的信用を貶めるために本件告発及び同記者会見を行ったものである。 2 反訴請求について(被告らの主張)(1) 原告らは,被告らに対し,前記のとおり本件本訴を提起したものであるが,本件告発は,犯罪事実を認知した弁護士として社会正義の観点から当然の行為として行ったものであるし,本件記者会見を行ったのは被告C及び同Dのみで他の被告らは関与しておらず,また原告Aや同Bの氏名も報道されておらず,同人らの名誉・信用の毀損は生じていない。また,提訴会見を直ちに名誉・信用の毀損であるとして違法行為と評価するならば,国民の知る権利を侵害し,かつ表現の自由に対する著しい制約となるので,許されないことである。 それにもかかわらず,原告らが本件本訴を提起したのは,① 本件告発について,あたかも被告らが原告会社関係訴訟の審理を有利に進めるためのものであるかのように誹謗中傷することによって,検察庁の捜査に抑制をかけて処罰を免れようとするとともに,本件告発に関する証拠収集等に抑制を加えようとするためであったと認められ,② また,何ら現実の損害が発生していないのに,1億円という異常に多額の損害賠償請求を行ったことは,本 れようとするとともに,本件告発に関する証拠収集等に抑制を加えようとするためであったと認められ,② また,何ら現実の損害が発生していないのに,1億円という異常に多額の損害賠償請求を行ったことは,本件告発に対する報復と,今後の原告会社に対する追及に対する威嚇としてなされたものと認められる。 このような目的による提訴は,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠き,違法なものであり,被告らに対し不法行為が成立する。 (2) 被告らは,原告らによる本件本訴の提訴によって,正当な行為に対する悪質な誹謗中傷と全く事実に反する主張に対して,過大な応訴の負担により著しい精神的苦痛を被った。その精神的苦痛を金銭に評価すると,各自についてそれぞれ100万円を下ることはない。 また,原告らによる本件本訴提起は,弁護士に対する損害賠償請求訴訟であり,訴額も著しく高額で,事案も複雑であるため,代理人弁護士を相当数委任して,応訴をなさざるを得なかった。 そこで,被告らは,10名の弁護士を常任弁護団として依頼し,着手金や旅費・宿泊費等を支払うことを約した。その結果,既に合計621万7610円を要している。このうち,本件本訴及び反訴事件の第6回口頭弁論時までの着手金及び日当の合計417万円について原告らの不法行為と相当因果関係のある損害(内金である。)とし,被告ら7名それぞれ59万5714円を請求する。 (原告らの主張)本訴請求が認容されるべきものである以上,被告らの反訴請求が認められることはない。 損害の発生については争う。 第4 当裁判所の判断 1 本訴請求について(1) 本件告発と本件記者会見の関係他人を犯罪者として捜査機関に申告することは,刑事訴訟法上は適法であるが(刑事訴訟法239条),犯罪を犯していない者につき,これを知りながら,又は相当の注意をす 1) 本件告発と本件記者会見の関係他人を犯罪者として捜査機関に申告することは,刑事訴訟法上は適法であるが(刑事訴訟法239条),犯罪を犯していない者につき,これを知りながら,又は相当の注意をすればこれを知り得た場合には,告発行為によって被告発者に与えた財産上・精神上の損害を賠償する責任が発生し得る。よって,本件告発行為は,それ自体で独立の不法行為が成立し得る行為である。 また,本件記者会見は,複数の記者に対し,本件告発状の写しを交付し,その要旨を公表したものであるが,その内容は,後述するとおり,まさに他人に犯罪の嫌疑があるという内容について事実を摘示して公表することにほかならないから,一般の名誉毀損法理に基づき,その不法行為の成否を検討する必要がある。 ところで,原告らは,本件告発と本件記者会見とを一体の不法行為とみることができるとも主張している。確かに,本件告発と同記者会見の内容,日時の近接性からすると,密接に関連していることは認められるが,本件告発自体は捜査機関のみに対する申告であり,本件記者会見と態様が異なるし,原告会社は被告発者とはなっていないから,原告らの社会的評価の低下の有無を検討するにあたっては,本件告発と本件記者会見とを別個に検討するのが相当と考える。 (2) 本件告発についてア告発は,私人が他人に対し犯罪の嫌疑をかけ,これを捜査機関に通告するものであり,被告発者が捜査機関等による取調べを受けるなど事実上の不利益を受け,最終的に無実の罪に問われる危険に晒され,その結果精神的苦痛等を被ることがあり得るものであることから,告発者が,被告発者に犯罪の嫌疑がないことを知りながら告発した場合はもちろん(刑法172条参照),犯罪の嫌疑をかけるのに客観的根拠があることを確認せずに誤った告発をした場合にも,告発が公然性を有するか 者が,被告発者に犯罪の嫌疑がないことを知りながら告発した場合はもちろん(刑法172条参照),犯罪の嫌疑をかけるのに客観的根拠があることを確認せずに誤った告発をした場合にも,告発が公然性を有するか否かにかかわらず,被告発者に対して不法行為に基づく損害賠償責任を免れない。 加えて,弁護士は,犯罪の嫌疑をかけるのに相当な客観的根拠の調査,検討について一般人より高度な能力を有するといえるし,また,弁護士法1条,2条の趣旨からして,弁護士という職務には被告発者の人権にも一般人以上に配慮することが期待されているといえるから,弁護士が告発をする場合には,かかる根拠の確認につき,一般人より高度な注意義務が課せられるというべきである。 イこれを本件でみると,犯罪の嫌疑をかけるのに相当な客観的根拠の調査・検討をしたか否かについては,後述するとおり,本件記者会見で本件告発を発表することに関する真実性・相当性と重複する側面があるから,後述の(3)イ(イ)にまとめて論じる。 (3) 本件記者会見についてア請求原因事実(ア) 本件記者会見と名誉毀損記者会見を開いた上,その内容が新聞で報道された場合においては,記者会見自体が一般に公然性を有しているのであるから,名誉毀損行為として責任を問われ得るが,さらに,報道を予想して記者会見をしているものであるから,記者会見を開いた者は,記者会見の内容からして報道内容が通常予想されるものである限り,報道内容についても記者会見の結果として責任を問われ得る。そして,その報道内容が特定人の名誉を毀損するか否かについては,一般の読者を基準にして,その者が社会から受ける客観的評価を低下させるような事実を摘示したかどうかという観点から判断されるべきである。 本件記者会見で公表された事実(前提となる事実(2)ウ(エ)) ,一般の読者を基準にして,その者が社会から受ける客観的評価を低下させるような事実を摘示したかどうかという観点から判断されるべきである。 本件記者会見で公表された事実(前提となる事実(2)ウ(エ))や,新聞報道の内容は,直接的には,全国弁護団が原告会社の訴訟代理人弁護士や法務担当者を告発したという事実を報道するものではあるが,これを報道する記事は,いずれも見出しに原告会社の名称を掲げ,「元社員に偽証を指示」と断定口調を用いている上,本文中には被告Cの「日栄の体質が浮き彫りになった」などのコメントも掲載されている(甲3)ことなどからすると,原告会社が組織的に訴訟で有利になるように偽証教唆という犯罪を行っていたことを強く印象づけるものである。その報道は,告発した側の一方的主張を報道するにとどまるものではあるが,弁護士が告発する場合には,通常事前に適正な事実調査や証拠の評価,法的検討を経てなされるものであること,さらに,原告会社との間での訴訟活動等に積極的に取り組んでいる弁護士(全国弁護団の名称から一般読者にも容易に理解されよう。)64人が連名で告発したのであり,事情をよく知る多数の弁護士が,犯罪行為の嫌疑があると判断しているのであるから,本件告発状のとおりの犯罪が行われたのではないかという印象を一般人に強く与えるものであることは否定できない。 そうすると,新聞報道の内容は,全体として,原告会社が,原告Aら法務担当者や弁護士をして,民事訴訟を有利に導くために,組織的に偽証教唆を行っていたことを印象づけるものであり,原告会社の社会的評価を低下させるものといえる(被告らの主張するとおり,当時,商工ローン問題など,原告会社に相応の社会的な非難がされていたことは,参議院財政・金融委員会会議録(乙26)等からも認められるが,直ちに原告会社に保護すべき のといえる(被告らの主張するとおり,当時,商工ローン問題など,原告会社に相応の社会的な非難がされていたことは,参議院財政・金融委員会会議録(乙26)等からも認められるが,直ちに原告会社に保護すべき社会的評価がないとするのは極論であり,採用することができない。また,本件は,刑事事件における告発についての報道に関し,名誉毀損の有無が争われており,民事事件のいわゆる提訴報道とは同一には解されない。)。 そして,本件記者会見の内容から新聞報道の内容は,通常当然予想されるものであるから,本件記者会見を開いた者は,本件記者会見自体についてだけでなく,新聞報道の内容についても,原告会社の社会的評価を低下させたものとして法的責任を問われなければならない。 また,本件記者会見において,原告A,同Bの氏名が公表されたか否かは明らかではないものの,新聞報道の内容からすると,少なくとも,原告Aは,その役職名が公表され,事実上個人が識別できる形で公表されたものと認められ,原告Aの名誉を毀損するものといえる(なお,原告Bに関しては,新聞報道では特定可能な情報は流布されていないし,本件記者会見でも実名が公表されたかは不明である。この点に関し,原告らは,本件記者会見では,原告A,同Bの氏名が公表されていたとして本件記者会見のメモ(甲27の1,2)を提出しているが,被告らはこれを否定し,被告Dも,本件告発状を交付する際には個人名は黒塗りしたと述べており(乙45),原告らの個人名を明らかにした新聞記事も見当たらない上,甲27号証の1は作成者が原告会社内部のものであること,甲27号証の2については作成者が不明であることから,そのまま信用性があるものとして採用することはできない。)。 よって,少なくとも,本件記者会見が原告会社及び同Aの社会的評価を低下させる事実の 甲27号証の2については作成者が不明であることから,そのまま信用性があるものとして採用することはできない。)。 よって,少なくとも,本件記者会見が原告会社及び同Aの社会的評価を低下させる事実の摘示を含む表現行為であったものと認められる。 したがって,少なくとも,本件記者会見に直接関与した被告C及び同Dに関しては,本件記者会見を開いて新聞報道をさせたことにより,原告会社や原告Aの社会的評価を低下させたものというべきである。 (イ) 本件記者会見の主体と共同不法行為性ところで,被告らは,本件記者会見は,記者の求めにより,被告D及び同Cが独断で実施したものであり,その余の被告らは関与していないと主張している。 しかしながら,被告らは,本件告発を連名ですることについては承認しており(乙34),本件告発状にも,「全国弁護団において,本件告発に取り組むことを組織決定の上,同弁護団の団員と,本件偽証がなされた大分集団訴訟の原告代理人らが告発人となって,本件告発を行うものである」と,組織的活動であることが強調されている。そして,このように,本件告発が多数の弁護士の連名の上,全国弁護団の名称を用いてなされていること,当時商工ローン問題で社会的にも注目を集めていた原告会社に関する事件であることなどからすると,本件告発がなされたことが察知されれば,マスメディアが注目することは当然想定されていたはずであるのに,本件告発にあたって,記者会見をするか否かを含め,公表の範囲について事前に検討された様子は窺われない。また,本件記者会見を伝える新聞記事(甲3から6まで)も,全国弁護団が主体として本件告発を行ったことを伝えているが,被告D,同Cを除く被告らが,これに何らかの意見を述べた様子も見当たらない。 このような客観的状況や,この種事案では記者会見が行わ で)も,全国弁護団が主体として本件告発を行ったことを伝えているが,被告D,同Cを除く被告らが,これに何らかの意見を述べた様子も見当たらない。 このような客観的状況や,この種事案では記者会見が行われることもよくみられることなどに照らせば,被告D,同Cのみが,他の被告らの意思に反して本件記者会見を実施したとみるのは相当ではなく,むしろ,被告C及び同Dは,全国弁護団の活動方針や本件告発の趣旨に反しない範囲内で,他の被告らを含む告発者らの黙示の包括的な委任のもとに,告発者ら全体を代表する形で,本件記者会見を実施したものとみるのが相当である。 よって,被告C及び同D以外の被告らに関しても,本件記者会見を共同していたものとみるべきである。 (ウ) 小括以上のとおり,被告らは共同して本件記者会見を行ったことにより,原告会社及び原告Aの社会的評価を低下させたものと認められる。 イ抗弁について(ア) 正当業務行為被告らは,本件記者会見は弁護士としての正当業務行為であり,違法性が阻却されると主張する。 確かに,弁護士の職制上,社会正義の実現のためにある程度の活動の自由を尊重する必要はあるが,一方で,弁護士としては,弁護士法の趣旨からして,第三者の名誉等を徒に傷つけることのないように慎重な配慮をすべきであり,実際にそのような社会的要請もあり,社会的正義実現のための弁護士業務の一環という事実のみによって,原則的に違法性が阻却されると考えるのは相当ではなく,通常の表現行為と同様に,いわゆる真実性・相当性の要件が認められる場合にのみ不法行為が成立しないと解するべきである。 (イ) 表現内容の真実性・相当性等事実を摘示してする表現行為が名誉毀損の内容を含む場合,名誉毀損は,その行為が公共の利害に関する事実に係り,その目的がもっぱら公益を いと解するべきである。 (イ) 表現内容の真実性・相当性等事実を摘示してする表現行為が名誉毀損の内容を含む場合,名誉毀損は,その行為が公共の利害に関する事実に係り,その目的がもっぱら公益を図るものである場合において,摘示された事実がその重要な部分において真実であることの証明があるとき,又は真実であることの証明がなくても,行為者がそれを真実と信ずるについて相当の理由があるときは,不法行為は成立しない(最高裁判所昭和41年6月23日判決・民集20巻5号1118頁ほか)。 <ア> 公共の利害・公益目的について本件告発の事実を伝えた本件記者会見については,公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実として,原則的には公共の利害に関するものと考えられる(刑法230条の2第2項参照)。 そして,本件記者会見当時,原告会社の債権回収方法や貸付方法が法律的にも,社会的にも問題となっていたことを前提とし,全国弁護団が,かかる原告会社の姿勢に疑問を投げかけ,顧客の法的救済のために尽力していたこと(乙12,弁論の全趣旨)を重視すると,全国弁護団が,単に,徒に原告らの社会的評価を貶めたり,単に民事訴訟で有利な判決を取得するという目的で本件告発や同記者会見を行ったのではなく,適正な裁判や消費者救済という公益目的のために本件記者会見を行ったとみることが可能である。 <イ> 真実性の要件について① 本件記者会見では,被告D及び同Cが,複数の記者らに対し,本件告発状の写しを交付し,同告発状に記載された具体的事実を摘示したこと(但し,原告A,同Bの氏名に関しては上述したとおり,伏せられていた可能性がある。)は,被告らも認めているとおりである。 ② 本件告発状の要旨は,上記に認定したとおりであり,原告A,同B,Jは,別件訴訟で 告A,同Bの氏名に関しては上述したとおり,伏せられていた可能性がある。)は,被告らも認めているとおりである。 ② 本件告発状の要旨は,上記に認定したとおりであり,原告A,同B,Jは,別件訴訟で原告会社に有利な判断を導くため,要旨,以下のとおり,Lに対する偽証教唆を共謀し,実際にLに対して偽証教唆したというものである。 ⅰ Jは,本件第1回打合せの際に,通常原告会社では「切り返し」と呼んでいる旧手形の決済業務について,Lに,「そういう言い方をしてもらっては困ります。『再融資』と言ってください。」「継続した融資とみられると原告会社が支払わなければならない額が大きくなるのです。」と言い,Lに「切り返し」を「再融資」と呼んでいるかのように偽証することを指示した。(以下「本件再融資用語の使用指示による偽証教唆」という。)ⅱ Jは,Lをして,真実に反する原告会社に有利な事実関係を記載した本件陳述書案に捺印させた。(以下「本件虚偽陳述書作成行為による偽証教唆」という。)ⅲ 原告Bは,真実に反する原告会社に有利な事実関係を回答として記載した本件尋問事項書をLに送付し,「あなたに対する尋問事項だからよく見ておいてください。」と伝えた。(以下「本件尋問事項書送付行為による偽証教唆」という。)ⅳ 本件第2回打合せにおいて,J,原告B,同Aは,Lに対し,本件尋問事項書の回答に沿って,切り返しをするか否か等は顧客が決める,顧客の申込みがないのに稟議書をあげることはない,原告会社の社員が日本信用保証の債権回収を手伝うことはない,大分支店と日本信用保証の駐在所はパーテーションで仕切られている,との事実と異なる虚偽の証言をすることを指示し,社員としての立場上これに応じるしかないLに偽証を教唆した。(以下「本件第2回打合せによる偽証教唆」という 証の駐在所はパーテーションで仕切られている,との事実と異なる虚偽の証言をすることを指示し,社員としての立場上これに応じるしかないLに偽証を教唆した。(以下「本件第2回打合せによる偽証教唆」という。)そして,前記(3)ア(ア)のとおり,本件記者会見によって,原告会社が,原告Aら法務担当者や弁護士をして,民事訴訟を有利に導くために,組織的に偽証教唆を行っていたことを一般読者に印象づけ,原告会社及び原告Aの社会的評価を低下させる新聞報道がなされたのであるから,真実性の立証が必要な対象は,本件告発状によって本件告発がされた事実ではなく,本件告発状の内容をなす偽証教唆の事実であるので,以下,本件告発状の記載に従って,真実性を検討する。 ③ 本件再融資用語の使用指示による偽証教唆の存否まず,本件再融資用語の使用指示による偽証教唆に関しては,確かにLはそのような指示があったと述べている(乙1,3(第二次L証言),8の2,8の3,9の1,証人L)。そして,第一次L証言ではLが「切り返し」との表現をせず,「日栄の中で,切り返しという言葉でそれをいうことがあるんじゃないんですか」との問いに,「それはないと思いますけど」と答え,「再融資のことを切り返しということがあるんでしょう」との問いに「そこのところはちょっと分からないですけど」と答えるなど,あえて「切り返し」という表現を使わないよう意識している部分があると認められる(甲2の99項から104項参照)から,Lが何らかの理由があって,かかる表現の使い分けをしたことが窺われる。 しかしながら,一方で,Jは,本件再融資用語の使用指示による偽証教唆を否定しているし(甲18,証人J),原告Aは,第一次集団訴訟のほか,原告会社の複数の民事訴訟では「切り返し」との表現を原告会社において一般的に 一方で,Jは,本件再融資用語の使用指示による偽証教唆を否定しているし(甲18,証人J),原告Aは,第一次集団訴訟のほか,原告会社の複数の民事訴訟では「切り返し」との表現を原告会社において一般的に使用していることを認めており(甲28の1から甲28の10まで,乙16の2,乙21から24まで),特にこだわりもなく「切り返し」と表現していることからすると,Jが,Lに対し,第一次集団訴訟の争点との関係で,ことさら「切り返し」を「再融資」というように指示する動機や必要性があったとは考え難い。 そして,Lについては,証拠(甲1,2,12,18,乙1,3,4の1及び3,8の2及び3,9の1,5及び6,証人J,同L)及び弁論の全趣旨によると,ⅰ 昭和24年生まれで,平成5年(44歳)に原告会社に中途入社し,10年近く勤務したが,途中,営業成績が上がらないときに,当時のQ社長から直接電話で「辞めろ」と言われこともあるなど従業員管理に厳しい会社との印象を持ち続けていたこと,ⅱ 原告Bから,第一次集団訴訟の証人として出頭する要請を受けた際,原告会社の意向であるから,逆らえないし,逆らえば何らかの追及があると感じたこと,ⅲ 本件第1回打合せは,原告会社の本社(京都)で行われ,Lは,Jから,訴訟の争点及び原告会社の主張の説明を受け,図を書いて示された上(甲9末尾の図面の可能性が高い。),被告は,顧客に手形貸付けをしているが,各手形貸付けは別個の貸付けであって,利息制限法の利率を超える過払金が発生しても,一連の貸付けではないから,過払金が累積していくのであって,当然には他の手形債権には充当されないというのが原告会社の主張である旨の説明を受けたこと,ⅳ Lは,Jから,第一次集団訴訟で,当該訴訟の原告らが作成提出している陳述書(甲19から22まで)を示され 当然には他の手形債権には充当されないというのが原告会社の主張である旨の説明を受けたこと,ⅳ Lは,Jから,第一次集団訴訟で,当該訴訟の原告らが作成提出している陳述書(甲19から22まで)を示された上で,同陳述書に手形を書き換えての融資についての記載があったことから,同書き換えによる融資について質問を受け,本件第1回打合せを通じて,「切り返し」という用語ではなく,「再融資」という用語を用いなければならないという意識となったこと,ⅴ そのために,第一次L証言の際には,Lは,手形を書き換えての融資を概ね「再融資」という用語を用いたほか,熟知していた「切り返し交渉心得7ケ条」についても,尋問で問われた際,当該規程ではなく,「切り返し」の用語に反応して,「知らない」旨証言したこと(この点については,Jでさえ,疑問に思って尋問終了後に,Lに再確認するなどしており不自然さが際だっている。),ⅵ Lは,第一次L証言をする際には,本件尋問事項書のとおりに答えられるように,何度も声を出して練習した上で,証言したことをなどの事情が認められ,同認定事実によると,Lは,原告会社における自らの立場の弱さ等を感じていたため,原告会社の第一次集団訴訟での主張に対し,無意識的にか,過度に反応し,自らの記憶とは異なり,第一次L証言時だけでなく,過去の全ての時点で,原告会社においては「再融資」という用語を使っていたとの証言を原告会社から求められていると感じたのではないかと推測される(上記ⅳの質問状況や,後記本件メモや本件陳述書案には,「切り返し」の用語はなく,「再融資」の用語のみが使われているから,Jは再融資の用語を使用していたと推測されること等からすると,Jは,第1回打合せの際に,Lが使用した「切り返し」の言葉に,何気なく「今はその用語は使わない」程度の返答をし 語のみが使われているから,Jは再融資の用語を使用していたと推測されること等からすると,Jは,第1回打合せの際に,Lが使用した「切り返し」の言葉に,何気なく「今はその用語は使わない」程度の返答をした可能性があるといえるが,同返答は,過去の全ての用語使用を「再融資」と改めるようにとの意味を含んでいたと認めるに足る証拠はないところ,Lは,上記の過度の反応から,「切り返し」の用語ではなく,常に「再融資」の用語を使うことを会社から強制されていると感じたのではないかと推測される。)。 そうすると,Lの供述以外に,Jが本件再融資用語の使用指示による偽証教唆をしたと認めるに足りる客観的証拠はなく,また,Lが被告の主張への過剰反応から,「再融資」という用語を使用するように求められているように感じたために,偽証教唆をされたかのように供述している疑いが否定できないから,結局,Jの本件再融資用語の使用指示による偽証教唆を認めることはできないというべきである。 ④ 本件虚偽陳述書作成行為による偽証教唆の存否被告らは,当該行為に関し,Jが,Lに偽証をさせるため,1回目の打合せではLが話していない客観的事実に反する内容を本件陳述書案に記載し,Lに捺印させたと主張している。 しかしながら,Jは,本件第1回打合せの際に自身が記録していた打合せメモ(甲8・以下「本件メモ」という。)に沿って本件陳述書案をまとめたものであると供述している(証人J)。この点,Jが本件第1回打合せの際にメモをとっていたことはLも供述しており(乙9の1,証人L),本件メモの記載内容,体裁からして,本件第1回打合せの時とは別個にJが作出したものとは考え難いから,本件メモは,本件第1回打合せの際にJが記録したものと認められる。そして,本件メモには,本件陳述書案と同様に「融資の ,体裁からして,本件第1回打合せの時とは別個にJが作出したものとは考え難いから,本件メモは,本件第1回打合せの際にJが記録したものと認められる。そして,本件メモには,本件陳述書案と同様に「融資の金額及び支払期日については顧客の希望を聞きます」「顧客からの申込みもないのに先に稟議を勝手にあげるようなことは決してありません」「同じフロアだがパーテーションで仕切られている」「大分支店の日栄社員は一切回収交渉はしません(回収社員はいない)手伝ったということもない」との記載があり,一応はこのとおりLが供述したものと推測される(前記のように,Lが原告会社の主張に過度に反応していたことが推測されること,及び第1回打合せの後に,Jに対しファックスを送付して,具体的な取引経過について進んで報告していること(乙4の2)等の点からすると,Lが,本件第1回打合せの際に,上記のように進んで供述したことをよく理解できる。)。 この点,Lは,Jから型にはめられたような聞き取りのされ方をしたとか,稟議を先にあげるか否かや,債権回収の手伝いの有無などについては,打合せを行っていないなどと供述しているが(乙1,3,証人L),本件メモに照らし,また本件第1回打合せが3時間に及んだこと(証人J)などからして,かかる供述を直ちに信用することはできない。 そして,本件陳述書案の送付書には,速達で返送するようにとの指示があるだけで,内容の確認や訂正の際の注意が記載されていない(乙9の4)。しかし,かかる外形的な事情から,Jが偽証させる目的で本件陳述書案をLに送付し,署名させたと認めるのは困難である。 ⑤ 本件尋問事項書送付行為による偽証教唆の存否また,本件尋問事項書送付行為に関しても,確かに,本件尋問事項書は,大半の質問に対応する回答部分が事前に埋められてい たと認めるのは困難である。 ⑤ 本件尋問事項書送付行為による偽証教唆の存否また,本件尋問事項書送付行為に関しても,確かに,本件尋問事項書は,大半の質問に対応する回答部分が事前に埋められていたことが認められる(乙2)。しかしながら,かかる回答の要旨は,前述のように,本件メモに沿うものであるし,回答が補充されていない部分があり,本件第2回打合せの際に,Lと協議した上でかかる部分が補充されたことは,Lも認めている(乙8の3)。このような経緯に照らせば,Jの供述するとおり(甲18,証人J),Lの答弁部分について尋問の流れと趣旨を理解してもらうための事前準備として,本件尋問事項書が作成・交付されたと考えても特段不合理ではない(この点,弁護士である被告らは,このような形式での尋問事項書を事前に作成することは通常は行わない旨供述しているが(乙30,34),事前に証人と打合せがされており,その際の証人の供述を前提とするものであれば,一問一答形式で尋問事項書を準備すること自体を直ちに問題視することはできないものと思われる。)。 よって,本件尋問事項書が偽証を教唆する目的で作成・交付されたものとみることは困難である。 ⑥ 本件第2回打合せによる偽証教唆の存否次に,本件第2回打合せによる偽証教唆に関しては,本件第2回打合せの際に,原告Aが原告会社の貸付けの一体性の有無について図示したところまでは認定できるが(甲16,原告A本人),かかる事実を超えて,J,原告A及び同Bが,本件第2回打ち合わせによる偽証教唆として主張されている具体的内容に関して,証言の指示をしたと認めるに足りる証拠はない。 ⑦ このように,上記③から⑥を前提とすると,J,原告A,同Bの偽証教唆,及びそれを前提とした偽証教唆の共謀に関しては,真実と認めることはでき して,証言の指示をしたと認めるに足りる証拠はない。 ⑦ このように,上記③から⑥を前提とすると,J,原告A,同Bの偽証教唆,及びそれを前提とした偽証教唆の共謀に関しては,真実と認めることはできないというべきである。 <ウ> 真実と信じたことの相当性について① 前記前提となる事実並びに証拠(甲2,乙1,9の1・13から15まで,27,29,42,証人L,被告D本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 ⅰ 平成12年から平成14年にかけて,原告会社が,顧客との間でした手形貸付取引と利息制限法の適用をめぐり,過払金返還・債務不存在確認訴訟が全国各地の裁判所で係属し,かかる利息制限法の引直し計算において,貸付けの連続性があるか,日本信用保証が徴収する保証料,事務手数料がみなし利息にあたるか等について争点となり,訴訟当事者の間で激しく争われていた。そして,全国弁護団が関与した顧客側は,貸付けの連続性については,原告会社において,顧客管理従業員に対し,「切り返し交渉心得7ケ条」等によって,「手形切り返し」と呼ばれる手形の書き換えがノルマとして課せられ,貸付額を維持することが必要とされていたこと,みなし利息性については,原告会社と日本信用保証が実質的に一体であったことを立証の重要な柱としていた。 ⅱ 前記<イ>③で述べたとおり,第一次L証言には,あえて「切り返し」という言葉を使わないように意識している部分など不自然な点がある上,第一次集団訴訟での原告AやMの各証言(乙9の14,16の2)と対比しても,原告会社の業務実態と客観的に異なる点があった。被告Dは,第一次L証言と上記Mの証言等の違いやLの証言態度にぎこちなさを感じたことなどを理由として,第一次L証言には虚偽の部分があるのではないかと感じていた。 ⅲ と客観的に異なる点があった。被告Dは,第一次L証言と上記Mの証言等の違いやLの証言態度にぎこちなさを感じたことなどを理由として,第一次L証言には虚偽の部分があるのではないかと感じていた。 ⅲ 前記ⅰの訴訟に関与すると共に,それらと平行して,被告Dは,原告会社の元従業員で日本信用保証の支配人も務めていたMとの間で,原告会社を申立人とする秘密漏洩禁止等仮処分事件や,同社に対する解雇が不当であるとする損害賠償請求事件等を受任しており,第一次集団訴訟の証人としても,同人を申請し,同人が退職社員から独自に入手した原告会社の内部資料も加えて証言の準備を行った。Mは,第一次集団訴訟において,第一次L証言の内容と異なる陳述及び証言(平成14年2月25日)を行い,特に,第一次L証言中,Lが「切り返し交渉心得7ケ条を聞いたこともない」旨証言したことについては,「同7ケ条は,原告会社大分支店の朝礼において,毎回従業員によって唱和されており,第一次L証言は明らかに偽証である」旨明言した。 また,被告Dは,原告会社の元社員で,貸金業規制法21条1項の違法取立てにより起訴されて有罪となったN,Oから委任を受けて,原告会社らに対して解雇が不当である等とし,損害賠償を求める訴訟を提起していたが,Nから,原告会社に交渉記録がないにもかかわらず,原告会社から「無いンやったら,なお更交渉記録を作って「これが当時のものです。ですから,告訴されたような事実はありません」と警察に言わんとあかんやないか」「民事でもそうじゃが,こういうのはなー,証拠固めて口裏合わせをキッチリやっとったら何とかなるんや・・後はなあー,不起訴処分で釈放されるまでの22日間,N・Oが辛抱すればエエんや・・」などと口裏合わせ等を求められた旨聞き取っていた。 ⅳ Lは,平成14年4月10日 やっとったら何とかなるんや・・後はなあー,不起訴処分で釈放されるまでの22日間,N・Oが辛抱すればエエんや・・」などと口裏合わせ等を求められた旨聞き取っていた。 ⅳ Lは,平成14年4月10日,原告会社を退職し,Mの紹介により,同月21日,被告Dの事務所に赴き,本件尋問事項書を示しながら,「原告会社を辞めてきました。今後私と同じような目に遭う従業員がでないように,偽証を告白したい。」「私は,J弁護士,原告A部長,原告B従業員から偽証をそそのかされたのであり,自分はどうなっても良いので,彼らの罪を裁いてもらいたい。」旨申し出た。その際,Lは,原告会社への損害賠償等については,特に要望せず,また,被告Dが,Lに対し,Lも偽証罪に問われる可能性があることを指摘したが,Lからは上記申告と同様の回答であった。 被告Dは,Lに対し,偽証した事実を特定させるため,第一次L証言の証人調書(甲2)を読ませたところ,Lは,第一次L証言の323項目のうち,自らの記憶に反する証言をした部分のうち,少なくとも20項目を書き出した。そして,Lは,被告Dに対し,Jや原告Aから受けた指示の内容を供述したほか,Jとは,直接連絡をとらず,常に,原告A,同Bの属する原告会社法務部を通して連絡を取っていたこと,本件第2回打合せは,J,原告A,同Bが立ち会っていたこと,その際原告Aは,貸付方法を図示したこと,原告Bも,原告会社の法務部担当者として,証人としてLを選定することや,本件尋問事項書の送付等に関与していたことなどを陳述した。 被告Dは,Lの陳述を聞き,尋問事項書等を参考にして,告発や第一次集団訴訟に使用する前提として,本件告発前に,Lの陳述書を2回(平成14年4月21日付け(乙1),同年5月27日付け(9の1))にわたって作成したが,同陳述書の内容 項書等を参考にして,告発や第一次集団訴訟に使用する前提として,本件告発前に,Lの陳述書を2回(平成14年4月21日付け(乙1),同年5月27日付け(9の1))にわたって作成したが,同陳述書の内容には,第一次L証言の323項目のうち,42項目を訂正したいこと,本件告発状の要旨(前記イ②)のとおり,本件再融資用語の使用指示による偽証教唆,本件虚偽陳述書作成行為による偽証教唆,本件尋問事項書送付行為による偽証教唆,本件第2回打合せによる偽証教唆がいずれも存在したことが記載されており,Lは,同各陳述書にいずれも署名押印した。そして,Lは,第一次集団訴訟に再度証人として出頭し,第一次L証言が自らの記憶に反している旨を証言することを承諾していた。 ⅴ 平成14年5月18日,全国弁護団の定例研究会が開催され,Lも同研究会に出席し,参加者に対し,被告Dに説明した事実関係を,簡潔に説明した。 ② 前記①の認定事実によると,被告Dが,MやNを当事者とする訴訟の中で,既に原告会社の内部情報を入手していたほか,原告会社が訴訟で不利益を被らないために,虚偽の証拠を後日作成したり,関係者に口裏合わせをさせようとしたことがあることを認識していたのであるから,原告会社には,もともと証拠に関する不正な体質があるのではないかと感じていたことには相当な理由がある。 そして,第一次集団訴訟で,訴訟の重要な争点について,原告会社側の証人として出廷したいわゆる敵対証人であるLの証言内容自体に不自然な点があり,ミヤモト等の側の代理人として,Lの証言態度を目の当たりにしていた被告Dが,Mの証言との対比やLの証言態度等から,第一次L証言の内容に虚偽の部分があるのではないかと感じていたところへ,Lが,第一次L証言から4か月程度で,原告会社を退職して被告Dに自ら連絡を取り,偽 Dが,Mの証言との対比やLの証言態度等から,第一次L証言の内容に虚偽の部分があるのではないかと感じていたところへ,Lが,第一次L証言から4か月程度で,原告会社を退職して被告Dに自ら連絡を取り,偽証した旨を告白したこと(このこと自体希有の事柄に属する。),その内容は多項目にわたり,かつ自らの利益を追求したものとは考えられなかったこと,公的機関に提出する各陳述書に署名押印し,自ら法廷で偽証を証言することを了承していたことのほか,偽証罪は,証人が客観的事実に反した証言をすることに本質があるのではなく,自らの記憶である主観的事実に反することを証言することを本質とするところから,証人の記憶が外部からは容易に察知できない以上,証人自身が,自らの証言が記憶に反すると述べることは重大な意味を持ち得ることなどからすると,被告Dが,Lの偽証告白は,信憑性が高いと考え,同告白全体を信用したのはやむを得ない面があるというべきである。そもそも,第一次L証言は,その証拠価値はともかくとして,Lが記憶に反することを述べた点で偽証罪になりうる部分があるといえる。 また,被告Dが弁護士であることを考慮しても,上記のとおり,被告Dが,もともと原告会社には証拠について不正の体質があると感じていたことに相当の理由があること,Lの偽証告白を信用したことにはやむを得ない面があること,そもそも第一次L証言には,真実偽証罪になりうる部分があることのほか,Lが,自らも偽証罪に問われることを指摘されても態度を変えず,自らの利益を図る動機を窺わせるような事情も見当たらなかったことなどからすると,Lが偽証をした理由が,Lの告白したとおり,原告会社の関係者の圧力によるものと被告Dが考えたのは,相応の根拠があるということができる。 そして,被告DはLから,本件尋問事項書を示された らすると,Lが偽証をした理由が,Lの告白したとおり,原告会社の関係者の圧力によるものと被告Dが考えたのは,相応の根拠があるということができる。 そして,被告DはLから,本件尋問事項書を示されたものであるが,本件尋問事項書は,既に回答が書き込まれていた箇所が多かったことのほか,その回答部分が被告Dが認識していた原告会社内部の情報と異なっていたというのであるから,本件尋問事項書が偽証を目的として作成・交付されたものと考えたのはやむを得ない面がある。 さらに,原告Aや同Bの原告会社における地位のほか,被告Dは,Lから,原告A及び同Bの本件第2回打合せへの関与や,原告Aによる貸付方法の図示,原告Bらによる証人としてLの選定,本件尋問事項書の送付等を聞き取っていたのであるから,被告Dが,かかる一連の経緯及び事情に照らし,J,原告A,同Bが,第一次集団訴訟において,原告会社の利益を図るために,共謀して偽証教唆を企て,それを実行したと考えて,本件告発を提案したことは相当であるといえるし,以上の被告Dの認識を前提とすると,被告Dの提言・報告をもとに本件告発を決め,また本件記者会見を行った被告Cらについても,相当性を欠くところはないというべきである(したがって,本件告発を単独でとらえた場合でも,告発にあたって相当の注意を怠ったとみることはできないから,不法行為は成立しない。)。なお,被告らは,原告側に偽証教唆の点を問い質していないが,第一次集団訴訟のほか,多数の訴訟で対立していた原告側と被告側の間で,被告側が原告側に問い合わせをすることは一般には困難であると考えられるし,捜査機関より前に相手方と接触することは意見の分かれるところであるから,この点をことさら重要視することはできない。 これに対し,原告らは,本件尋問事項書の体裁や,第一次L 難であると考えられるし,捜査機関より前に相手方と接触することは意見の分かれるところであるから,この点をことさら重要視することはできない。 これに対し,原告らは,本件尋問事項書の体裁や,第一次L証言等を精査すれば,Lの証言が偽証ではないことや,偽証教唆行為がないことは容易に分かったはずであると主張しているが,本件尋問事項書やLの証言等を対比しても,被告らが訴訟活動等で認識していた原告会社の実態を前提とすれば,本件尋問事項書の体裁や第一次L証言,Lの陳述などから偽証教唆の事実があったことを信じた被告らに過失があるとはいえない。 ウ以上により,本件記者会見は,公共の利害に関する事実に係り,その目的がもっぱら公益を図るものである場合において,摘示された事実につき,真実であることの証明はないものの,行為者がそれを真実と信ずるについて相当の理由があると認めることができるから,不法行為は成立しない。 (4) まとめ以上のとおり,本件告発も,本件記者会見のいずれも不法行為は成立しないから,原告らの被告らに対する本訴請求は理由がない。 2 反訴請求について民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合において,当該訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは,提訴者の主張した権利又は法律関係が,事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者が,そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である(最高裁判所昭和63年1月26日判決・民集42巻1号1頁)。 これを本件に照らすと,前記のとおり,本件記者会見が原告会社や原告Aの社会的評価を低下させたこと,なおかつ真実性の証明がされていないこ る(最高裁判所昭和63年1月26日判決・民集42巻1号1頁)。 これを本件に照らすと,前記のとおり,本件記者会見が原告会社や原告Aの社会的評価を低下させたこと,なおかつ真実性の証明がされていないこと,本件告訴についても,原告Bは,告発された事実が真実とは認められないのに,実際に被疑者として捜査機関の取調べを受けるなど,一定の不利益を被っていることからすると,被告らの本件告発及び同記者会見が,不法行為の成立までは認められないにしても,原告らとの関係で,全く問題のないものだったということはできない。 とすると,原告らが,本件告発・本件記者会見を被告らの共同不法行為であるとして本訴を提起したことについて,原告らの主張する権利等が事実的,法律的根拠を欠くものであるとは認められないし,そのことを知りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したと認めることもできない。 もっとも,本件告発・本件記者会見を招くことになったのは,Lに対し,原告会社の主張に過度に反応させたこと(L個人の問題だけともいいきれないところがある。),原告会社には証拠に関する不正な体質を感じさせる事件があったことなど,原告会社にも責任の一端があるのではないかと指摘できるほか,原告ら3名の合計額とはいえ,この種事案では,極めて多額ともいえる1億円の請求をしていることなどからすると,原告らの本訴にも,全く問題がないとはいいいきれないが(本件告発の端緒となったLに対するL被告事件について,原告らが訴えを取り下げることなどを内容とする和解がまとまったことからも,この点が窺える。),これらの点からしても,上記判断(本訴提起の違法性)が変更されるとまではいえない。 なお,被告らは,本件における原告らの代理人弁護士が受任している別件(いわゆる「P」に関する事 ,この点が窺える。),これらの点からしても,上記判断(本訴提起の違法性)が変更されるとまではいえない。 なお,被告らは,本件における原告らの代理人弁護士が受任している別件(いわゆる「P」に関する事件)での弁護活動も,本件と同様,不当な訴訟であるとして,同事件に関する資料を書証として提出している(乙36の1,2,3,4,37,38,44)が,本件についての事情が前記のとおりのものである以上,かかる訴訟と比較する意味は認められない。 よって,その余の点を判断するまでもなく,被告らの反訴請求は理由がない。 第5 結論以上により,原告らの被告らに対する本訴請求と,被告らの原告らに対する反訴請求は,いずれも理由がないので棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条を適用し,主文のとおり判決する。 大分地方裁判所民事第1部裁判長裁判官浅見宣義 裁判官影浦直人 裁判官三宅朋佳
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