- 1 -主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求の趣旨被告が,原告に対して平成16年1月16日付けでなした行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)に基づく行政文書開示決定のうち,「専門家についての資料」と題する文書の「地質調査・海象調査に係る専門家氏名等」の表の「氏名」,「所属等」,「参加委員会等」の欄及び「専門家からの助言内容一覧」と題する文書の「備考」欄を不開示とした部分を取り消す。 第2事案の概要本件は,原告が被告に対し,法3条に基づき,防衛施設庁が沖縄県名護市α(以下「α」という。)で行った現地技術調査に係る調査方法等の変更に関連する一切の文書について開示を求めたところ,被告が,「専門家についての資料」,「専門家からの助言内容一覧」について開示決定を行ったが,「専門家についての資料」と題する文書の「地質調査・海象調査に係る専門家氏名等」の表の「氏名」,「所属等」,「参加委員会等」の欄及び「専門家からの助言内容一覧」と題する文書の「備考」欄を不開示としたため,原告がこれを不服として,上記開示決定のうち不開示とした部分の取消しを求めるものである。 前提事実(証拠掲記のないものは,当事者間に争いがない。)(1)国は,平成11年12月28日,「β飛行場の移設に係る政府方針」を閣議決定し,それに基づき開催されてきた代替施設協議会の第9回会議(平成14年7月29日開催)において,β飛行場の代替施設としてαの海上基地(以下「本件新基地」という。)の基本計画が決定された。 そこで,防衛施設庁は,本件新基地の護岸構造を検討するという理由で,- 2 -水理模型実験等の実施とともに,護岸構造の検討に必要な地形,海象,気象及び地質のデータを収集するために,αに 定された。 そこで,防衛施設庁は,本件新基地の護岸構造を検討するという理由で,- 2 -水理模型実験等の実施とともに,護岸構造の検討に必要な地形,海象,気象及び地質のデータを収集するために,αにおいて現地技術調査を実施することとした(なお,同調査のうち,地質調査を「本件ボーリング調査」という。)。そして,那覇防衛施設局は,現地技術調査に係る作業計画を作成するに当たり,専門家から助言を得るなどした。(甲8)(2)原告は,平成15年11月11日,被告に対し,法に基づき,「現地技術調査に係る調査方法等の変更に関する一切の文書(その変更をするための調査内容や同内容に対する助言者等に関する文書も含む)」の開示請求(以下「本件開示請求」という。)をした。 被告は,本件開示請求を受け,これについて本件開示請求に係る行政文書は,「潜水調査進捗状況表」,「業務日誌」,「週間予定表」,「実施計画書(潜水調査)」,「業務打合せ簿」,「潜水調査実施要領」,「公共用財産使用協議書」,「β代替施設建設に係るボーリング・海象調査について(事前潜水踏査)」,「地質調査・海象調査の作業計画について」,「地質調査・海象調査の作業計画について(参考資料)」,「地質調査・海象調査のための潜水調査(事前踏査)結果」,「『地質調査・海象調査の作業計画について』に関する質疑・回答」,「専門家についての資料」及び「専門家からの助言内容一覧」の14文書であると特定した。 (3)被告は,原告に対し,法9条1項に基づき,平成15年12月25日付けで前記14文書のうち「潜水調査実施要領」,「公共用財産使用協議書」,「地質調査・海象調査の作業計画について」,「地質調査・海象調査の作業計画について(参考資料)」,「地質調査・海象調査のための潜水調査(事前踏査)結果」の5文書の開示決定を 公共用財産使用協議書」,「地質調査・海象調査の作業計画について」,「地質調査・海象調査の作業計画について(参考資料)」,「地質調査・海象調査のための潜水調査(事前踏査)結果」の5文書の開示決定を,行政文書開示決定通知書により通知した(乙1)。 また,被告は,平成16年1月16日付けで,原告に対し,法9条1項に基づき,前記14文書のうち,「専門家についての資料」,「専門家からの- 3 -助言内容一覧」(以下,両文書を併せて「本件対象文書」という。)の2件の文書のうち,「専門家についての資料」の「氏名」,「所属等」及び「参加委員会等」欄及び「専門家からの助言内容一覧」の「備考」欄の記載(以下「本件不開示情報」と総称することがある。)については,法5条1号及び6号に規定する不開示情報に該当するものとして,法6条の規定により本件不開示情報を除く本件対象文書の部分開示決定(以下「本件部分開示決定」という。)を行い,行政文書開示決定通知書によりその旨通知した(甲2~4,乙2)。 さらに,被告は,原告に対し,同年2月9日付けで,前記14文書のうち,「潜水調査進捗状況表」,「業務日誌」,「週間予定表」,「実施計画書(潜水調査)」,「業務打合せ簿」,「β代替施設建設に係るボーリング・海象調査について(事前潜水踏査)」,「『地質調査・海象調査の作業計画について』に関する質疑・回答」の7文書の部分開示決定をし,行政文書開示決定通知書によりその旨通知した(乙3)。 (4)原告は,平成16年2月9日,本件部分開示決定を不服として,防衛施設庁長官に対して,審査請求をした。 防衛施設庁長官は,法18条の規定に基づく情報公開審査会への諮問及び答申を踏まえて,同年11月29日付けで,同審査請求を棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をし,同年12月1日,原 をした。 防衛施設庁長官は,法18条の規定に基づく情報公開審査会への諮問及び答申を踏まえて,同年11月29日付けで,同審査請求を棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をし,同年12月1日,原告に対しその旨通知した(甲8)。 (5)原告は,本件裁決を経て,平成17年2月28日,本件訴えを提起した。 (6)本件対象文書は,前記(1)のとおり,那覇防衛施設局が現地技術調査に係る作業計画を作成するに当たり,専門家から助言を得たが,それに関係する事項が記載された文書であり,「専門家についての資料」の「氏名」欄には専門家の氏名が,「所属等」及び「参加委員会等」の欄には各専門家が所属する団体名や役職,参加する委員会・学会や著書の名称等が,それぞれ記載- 4 -されている。 また,「専門家からの助言内容一覧」の「備考」欄には,それぞれの項目の助言を行った専門家の氏名が記載されている。(甲3,4,8) 争点及び争点に対する当事者の主張(1)本件不開示情報が法5条1号本文に該当するか。 (被告の主張)ア法5条1号の意義について法5条1号本文は,事業を営む個人の当該事業に関する情報以外の個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日,その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの,又は特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるものを不開示情報として定めている。 原告は,本件対象文書の氏名等は,専門家らのプライバシー情報そのものではなく,開示したとしても当該専門家らが何らかの悪影響を受けて正確な発言が阻害されたり,社会的批判によってその立場が脅かされたりするおそれはないし,顕名の要請もあることから,法5条1号本文には該当しないと主張するようである。 しかし,法は, の悪影響を受けて正確な発言が阻害されたり,社会的批判によってその立場が脅かされたりするおそれはないし,顕名の要請もあることから,法5条1号本文には該当しないと主張するようである。 しかし,法は,個人の権利利益の十分な保護を図るために特定の個人を識別することができる情報は,法5条1号ただし書イないしハの例外的開示事由に該当しない限り,不開示とするという立法政策(個人識別型)を採択した。そして,法5条1号本文は,「個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」については,プライバシー侵害の有無を考慮することなく,原則として不開示情報とすることを定めたものである。 したがって,法5条1号本文該当性は,当該情報が,個人に関する情報であるか否か及び個人識別性があるか否かによってのみ判断されるのであ- 5 -って,それら以外の考慮を持ち込む余地はなく,当該情報が開示されることによって何人かのプライバシーやその他の権利利益が侵害されるか否かを考慮すべきではなく,まして,当該行政文書に記載されたのが科学的知見であるかどうかなどといった文書全体の性質を考慮すべきものではない。 イ本件不開示情報について「専門家についての資料」の氏名の欄及び「専門家からの助言一覧」の「備考」欄には,いずれも専門家の氏名が記載されており,専門家の氏名は,法5条1号本文に規定する個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができる情報に該当する。 また,「専門家についての資料」の「所属等」及び「参加委員会等」欄には,各専門家が所属する団体名や役職,参加する委員会・学会や著書の名称等が記載されている。なお,「個人に関する情報」とは,個人の内心,身体,地位その他個人に関する一切の事項についての事実, 等」欄には,各専門家が所属する団体名や役職,参加する委員会・学会や著書の名称等が記載されている。なお,「個人に関する情報」とは,個人の内心,身体,地位その他個人に関する一切の事項についての事実,判断,評価等のすべての情報が含まれるものであり,個人に関連する情報全般を意味するため,個人の属性,人格や私生活に関する情報に限らず,個人の知的創作物に関する情報,組織体の構成員としての個人の活動に関する情報も含まれる。したがって,本件のような限られた専門分野においては,所属団体名等の情報も法5条1号本文に規定する個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができる情報に該当することは明らかである。 (原告の主張)ア法は,個人情報については,他の例外事由と同様に扱い公開義務を免除する定め方をし,個人情報が識別可能な情報すべてを不開示事由として,その上で一般的に当該個人の利益保護の観点から不開示とする必要のないもの及び保護利益を考慮しても開示する必要の認められるものを更に不開示事由から除外するという方式を採った。 しかし,法で不開示事由から更に除外される情報が規定されているとお- 6 -り,個人識別情報の中には,本来プライバシー情報として保護されなければならない情報とプライバシー情報に当たらない,若しくはそうであったとしても他の利益が優越するために開示すべき情報が混在しているはずである。 法のように,個人識別情報のすべてを原則として例外事由とすると,本来不開示とされるべきでない個人識別情報まで不開示とされてしまい,情報公開の趣旨が没却されかねない。したがって,法における個人識別情報該当性及び不開示事由の除外規定への該当性を解釈するに当たっては,その趣旨がプライバシーと知る権利の利益衡量にあるところを十分考慮して,プライバシー権保護の ない。したがって,法における個人識別情報該当性及び不開示事由の除外規定への該当性を解釈するに当たっては,その趣旨がプライバシーと知る権利の利益衡量にあるところを十分考慮して,プライバシー権保護のため真に非公開とすべきか否かについて判断されなければならない。 また,行政機関の行う行政事務を適正かつ円滑に遂行するという公益的な必要性から,行政運営情報をその性質上,非公開としなければならないことがあり得る。法5条6号では,行政運営情報を包括的に不開示事由とする定め方をしている。このような包括的な事由の定め方をした場合には,容易に不開示事由に該当することとされるおそれがあり,情報公開の趣旨を損なう危険があることから,その要件については厳格に解釈されなければならない。 イ匿名の必要性の有無本件では,専門家が科学的知見に基づいてした意見について,その内容を公開しつつ,その氏名だけを匿名にするという扱いがなされている。そこで,まず,何らかの意見を公表するに際して匿名でなされる場合の,その実質的理由について考察し,本件にあてはめる。 まず第1に,公表する意見がその個人のプライバシー情報に関係するものであって,プライバシー保護の観点から,その情報と結びつく個人の特定がなされないように配慮しなければならない場合が考えられる。しかし,- 7 -本件の場合,いずれも生物学に関わる学識経験者としての専門的知見を明らかにするものであって,助言者個人のプライバシー内容そのものを意見の対象,目的とするものではない。 第2に,意見内容の真実性,正確性などについて発言者が直接自己の名をもって責任を取りたくないという場合が考えられる。匿名での意見は顕名に比べて気安く述べることができることから,このような形式での意見収集をすることはあり得る。しかしながら,本件の場合 直接自己の名をもって責任を取りたくないという場合が考えられる。匿名での意見は顕名に比べて気安く述べることができることから,このような形式での意見収集をすることはあり得る。しかしながら,本件の場合,国の公共事業による環境影響に対する学識経験者の専門的知見の助言であるから,その真実性,正確性の担保なく助言を求めるものとは考えられない。したがって,匿名とされる趣旨がこのようなものではないことは明らかである。 第3に,発言者が特定され明らかにされることによって,その発言者の所属先や社会的地位により,何らかの影響を受けて正確な発言が阻害されたり,発言者の地位に悪影響が及ぼされたりする可能性があるため,発言者保護の観点から,また,その発言を円滑に求められる環境を保持するという観点から,匿名とする必要がある場合である。内部告発などはこの典型的な事例であろう。また,その発言により外部,対立者などから不当な批判や攻撃を受けることを防ぐという必要があるときもこれに含まれるであろう。 本件における専門家らが,それぞれどのような立場,地位にある者であるかについては,何ら明らかにされていない。しかしながら,その助言内容は,いずれも予定されている本件ボーリング調査の環境影響について,自然科学上の専門的知見に基づいてなされているにすぎず,それら専門家の所属先や地位等との関係で,発言によって何らかの悪影響が生じる場合はおよそ想定できない。そうであれば,他に考えられるのは,氏名を明らかにすることによって外部から不当な批判,圧力を加えられるおそれが大きく,そのような事態が生じた場合には助言者の協力が得られなくなると- 8 -いう危惧である。本件の専門家意見には,学識経験者の助言としては極めて軽率であり,科学的態度とはみられない問題点が少なくない。しかし,これらの じた場合には助言者の協力が得られなくなると- 8 -いう危惧である。本件の専門家意見には,学識経験者の助言としては極めて軽率であり,科学的態度とはみられない問題点が少なくない。しかし,これらの問題は,政治的若しくは社会的批判の対象として克服されるべきことではなく,科学的批判によるべきものである。そして,自然科学においては,それぞれの研究者が互いに研究成果を公表し,科学的批判にさらすことによって,その誤りが指摘され,あるいはその正しさが実証されていくものである。本件ボーリング調査による環境影響の有無についてもあくまでも科学的知見の問題であって,他の自然科学における研究と同様,かかる批判的検討に耐えることによってその科学性が検証されるのである。 したがって,本件の専門家意見が,その批判を回避する必要性は何ら存せず,むしろ顕名をして発言の所在を明らかにすることこそ必要である。 また,本件の意見内容は,あくまでも専門家の知見にすぎないのであるから,これに対する科学的批判とは異質の政治的,社会的批判によって,その発言者の立場が脅かされる可能性についても,極めて考えにくいことである。 以上のとおり,本件のような科学者による科学的知見の表明そのものは,あくまでも科学性の裏付けが必要なものであり,科学者同士の相互批判や検証によってその真理が明らかにされるものであるから,匿名で表明する理由は何ら存せず,むしろその性質からは顕名にすることこそ求められているというべきである。 (2)本件不開示情報が法5条1号ただし書イに該当するか。 (原告の主張)ア法5条1号ただし書イにいう「慣行として…公にすることが予定されている情報」の「慣行」は,単に行政庁の過去の実績を指すものと解すべきではない。そのように解釈した場合,行政庁の恣意的な運用によって除外事由へ 号ただし書イにいう「慣行として…公にすることが予定されている情報」の「慣行」は,単に行政庁の過去の実績を指すものと解すべきではない。そのように解釈した場合,行政庁の恣意的な運用によって除外事由への該当性が判断されることになり,情報公開の視点から極めて不当- 9 -な結果になってしまうのであり,行政機関における従前の取扱いや今後の取扱方針をもって法5条1号ただし書イの該当性を否定することは絶対に許されない。過去において行政裁量の問題だとして開示していなかった情報について,法上の不開示事由に該当するとしたのでは,結局のところ法の不開示事由の判断も行政裁量だという結果になりかねない。このような解釈が法の立法目的に反していることは明らかである。 イまた,ここでいう「慣行」とは,個人識別情報といえども社会一般の通念上公開されることが予定,予想されており,それについて特に弊害が認められないもの一般を指すものというべきである。 本件部分開示決定の対象となった情報は,ボーリング調査という公共工事による自然環境への影響に関する自然科学的知見の表明であり,このような見解表明は,顕名によってなされるのが一般である。そもそも,専門家の氏名が明らかにならなければ,当該意見が専門家のものであるのか否かを検討することさえ不可能である。そうすると,文書全体の性質から,それが専門家の科学的知見に基づくものであると判断される場合には,むしろ専門家の氏名も含めて公表しない限りは政府の説明責任が果たされたとはいえないのである。 平成15年12月12日の沖縄県議会米軍基地関係特別委員会では,与党議員からも本件不開示情報の不開示について批判がなされ,また,同月17日の名護市議会決議でも本件不開示情報の公表を要望する内容を含む決議がなされている。これらの見解が地方議会などで 委員会では,与党議員からも本件不開示情報の不開示について批判がなされ,また,同月17日の名護市議会決議でも本件不開示情報の公表を要望する内容を含む決議がなされている。これらの見解が地方議会などで表明されるということは,そもそも本件不開示情報のような情報が,その性質上公にされるべき内容であるという一般的理解があるからである。 また,専門家の氏名は,当該専門家の研究結果全体を表示する意味を持つものであり,専門的意見を引用するに当たっては,その出典を明らかにするのが通常である。このことは,当該専門家の意見を検証するに当たっ- 10 -ての慣行ないし慣習と言うべきであって,専門家の氏名は社会通念上公開されていることが予定,予想されるものである。 したがって,本件不開示情報が,「慣行として…公にすることが予定されている情報」に該当することは明らかである。 ウ被告は,当該専門家自身も非公表扱いをすることを望んでいるから公開が予定されていない情報であるという。しかし,このような立場を前提とすれば,当事者の意向次第で公開の有無についていかようにもできることになり不当である。前述のとおり,個人識別情報の保護がプライバシー保護の観点からなされるべきところ,法5条1号ただし書イの解釈についてもそのような視点で限定的に理解しなければならない。そうであれば,「慣行として…公にすることが予定されている情報」とは,単に個人識別情報を保持する行政庁やその個人識別情報の主体などの当事者の意向によって判断されるのではなく,プライバシー保護の観点から公にすることが差し支えない情報を広く含めるべきである。本件不開示情報は,そもそもプライバシー保護の必要性がない情報であり,この観点からしても,法5条1号ただし書イに該当することは明らかである。 (被告の主張)ア法5条 い情報を広く含めるべきである。本件不開示情報は,そもそもプライバシー保護の必要性がない情報であり,この観点からしても,法5条1号ただし書イに該当することは明らかである。 (被告の主張)ア法5条1号ただし書イにいう「慣行として公にされ」とは,慣習として,当該情報が現に公衆が知り得る状態に置かれていることをいうものとされるところ,本件の専門家の氏名等を公衆に対して公表し,知り得る状態に置く慣行,慣習はない。 また,「公にすることが予定されている情報」とは,将来的に公にする予定の下に保有されている情報をいうが,上記氏名等につき将来的に公にする予定もない。 本件対象文書における専門家からの助言については,那覇防衛施設局が現地技術調査の実施を環境面にできる限りの配慮をして取り進めるとの観- 11 -点から,より慎重を期すために,同局による検討のみにとどめることなく,環境に関する各分野の専門家からの助言も取り入れることとして得たものであり,また,これらの専門家も助言を行うに当たっては,その氏名等を非公表とすることを条件としたことから,これまでに氏名等の公表は一度も行っておらず,今後もそのような取扱いを変更することは予定していない。 したがって,助言を行った専門家は,特定の検討事項などについて専門的見地から検討することが法令によって定められた委員会の委員のような立場ではなく,那覇防衛施設局が自主的に行うこととした現地技術調査に係る作業計画の策定に関し,その環境対策が適切なものであるかどうかについて側面から助言する立場にあったものであり,本件における専門家の氏名等については,法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報ではないことから,法5条1号ただし書イには該当しないことは明らかである。 イ原告は,本件対象 門家の氏名等については,法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報ではないことから,法5条1号ただし書イには該当しないことは明らかである。 イ原告は,本件対象文書記載の情報が自然科学的知見の表明であることや名護市議会決議等で本件不開示情報の公表が要望されている点を挙げて公表慣行があるかのごとく主張するが,いずれも公衆に対して公表する慣行や慣習に当たるものでないことは明白であるし,将来的に公にする予定のあるものにも当たらない。 さらに,原告は,公開されることによる弊害やプライバシー保護の必要性がないことについて主張するが,法5条1号ただし書イの該当性判断に当たっては,公開による弊害やプライバシー保護の必要性等は考慮の対象にならない。原告の主張するように,同号ただし書イに該当するか否かの判断において文書全体の性質を考慮するというのであれば,本件対象文書の性質は,那覇防衛施設局が自主的に行うこととした現地技術調査に関し,より慎重を期すという観点から専門家の助言を得ることとし,その助言内- 12 -容を取りまとめて記載した文書であって,いわば事務,事業の適正を内部的に推し量る参考に供するためのものであり,研究発表のためや委員会報告等のための文書ではない。したがって,原告の主張は失当である。 また,原告は,行政機関における従前の取扱いや今後の取扱方針をもって法5条1号ただし書イの該当性を否定することは絶対に許されないと主張する。しかし,同号ただし書イの「慣行」とは,その組織内で,明文化されてはいないが,団結・親睦などのために必要なものとして従来行われてきたし,将来も行われることが期待される取決めや一定の手順などの数数であって,行政機関における取扱いも当然これに含まれるのであるから,原告の主張は失当である などのために必要なものとして従来行われてきたし,将来も行われることが期待される取決めや一定の手順などの数数であって,行政機関における取扱いも当然これに含まれるのであるから,原告の主張は失当である。 また,公表する慣行や公にすることが予定されているといった事項の存否についての判断が行政裁量の問題ではないことも明らかである。 (3)本件不開示情報が法5条1号ただし書ロに該当するか。 (原告の主張)ア法5条1号ただし書ロは,個人識別情報のプライバシー保護の必要性と,その開示によって得られる利益である「人の生命,健康,生活又は財産」との利益衡量によって判断すべきものであり,ここにいう「人の生命,健康,生活又は財産」は現に侵害されていることまで必要ではなく,その侵害を防止する必要性がある場合をも含むものである。 イ本件の開示対象となった「専門家についての資料」等は,那覇防衛施設局が本件ボーリング調査を実施するための環境条件をクリアするために事実上不可欠な専門家による助言であり,これらの助言による権威付けなしには本件ボーリング調査を実施することはできなかったものである。そして,本件ボーリング調査自体,α海域の環境に甚大な影響を与え,周辺住民の環境を享受する利益や漁民の漁業を営む権利が侵害されるおそれが大きいものであること,本件ボーリング調査は本件新基地建設と一体となる- 13 -ものであり,本件新基地建設は,更に甚大な環境破壊をもたらすばかりか,騒音や水質汚染等により周辺住民の健康に重大な影響を及ぼすおそれがあるものである。 したがって,専門家からの意見は,これら周辺の住民の生命,健康,生活又は財産に重大な影響をもたらす本件ボーリング調査及び本件新基地建設につながるものであって,これらの誤った意見によって甚大な被害を受ける可能性がある。 らの意見は,これら周辺の住民の生命,健康,生活又は財産に重大な影響をもたらす本件ボーリング調査及び本件新基地建設につながるものであって,これらの誤った意見によって甚大な被害を受ける可能性がある。このために,本件不開示情報を公開することにより科学的批判,検討を十分与えられる機会をもつ必要性が極めて高い。 ウ専門家の意見においては,意見を表明した者の氏名が,当該専門家の過去の研究成果等を表象するものであり,重要な意味を持つ。国家機関である被告がその施策を実施するに当たって依拠した専門家の意見が,公正な言論の場において批判検討の対象となることによって,国民の利益保護に直結することは明らかである。 エまた,国家機関の施策を実施するに当たって依拠した専門家の意見というのは,単なる私人の意見という意味を超えて公共的色彩を持つものである。したがって,比較衡量に当たり,専門家の氏名を全くの私人の氏名と同列に扱うべきではない。 もちろん,専門家といっても正当な保護を受けるべき個人であることはいうまでもないが,その保護については,氏名を不開示にするという言論の自由や知る権利を制限する方法で行うのではなく,より制限的でない他の手段を選択すべきである。 オこれに対して,本件不開示情報は,当事者たる専門家らのプライバシー保護の必要性がある情報ではなく,その保護の必要性は極めて低い。 したがって,両者の利益を衡量すれば,開示の必要性が高いことは明らかであり,法5条1号ただし書ロに該当することも明らかである。 (被告の主張)- 14 -ア法5条1号ただし書ロは,「人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」と規定しているところ,情報公開法要綱案第六(1)ニでは,「人の生命,身体,健康,財産又は生活を保護するため, 人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」と規定しているところ,情報公開法要綱案第六(1)ニでは,「人の生命,身体,健康,財産又は生活を保護するため,開示することがより必要であると認められる情報」と規定しており,「より必要であると認められる」とは,不開示とすることにより保護される利益と開示することにより保護される利益とを比較衡量し,後者が優越する場合をいうとされている。この比較衡量は,個人に関する情報の中でも個人的な性格が強いものから社会的性格が強いものまで様々なものがあること,人の生命・身体等の保護と財産・生活の保護とでは開示により保護される利益の程度に相当の差があること,特に個人の人格的な権利利益の程度に相当の差があることを踏まえ,個人の人格的な権利利益の保護に欠けることがないよう慎重な配慮が必要であるとされる。この比較衡量の趣旨は,法5条1号ただし書ロについても妥当する。 イ原告は,本件対象文書に記載された助言が「那覇防衛施設局が本件ボーリング調査を実施するための環境条件をクリアにするために事実上不可欠」のものであり,開示によって保護される利益は,「周辺住民の環境を享受する利益」,「漁民の漁業を営む権利」,「周辺住民の健康」であると主張するようであるが,まず,本件対象文書は,現地技術調査が環境影響評価法の対象とはならないものの,現地技術調査の実施を環境面にできる限りの配慮をして進めるとの観点から,那覇防衛施設局が作成した作業計画により慎重を期すために,環境に関する各分野の専門家から助言を得た文書であり,本件ボーリング調査実施のために法令上不可欠のものとして作成されたものではない。しかも,本件で不開示とされているのは,専門家の氏名等のみであって,助言内容自体は開示されている。原告が た文書であり,本件ボーリング調査実施のために法令上不可欠のものとして作成されたものではない。しかも,本件で不開示とされているのは,専門家の氏名等のみであって,助言内容自体は開示されている。原告が主張する上記「周辺住民の環境を享受する利益」等は,その内容自体が判然とせず,法5条1号ただし書ロの該当性判断として比較衡量の対象とする利- 15 -益となり得るかについて疑問なしとしないが,仮にこれを対象利益と考えたとしても,専門家の氏名等を開示したところで,同利益の保護が図られるものでないことは余りに明白である。 ウこれに対し,専門家の氏名等は,まさに専門家個人を具体的に特定し得る情報であり,個人的性格が強い情報である。β飛行場代替施設事業が沖縄県において大きく注目されている状況において専門家の氏名等を開示した場合には,任意の協力者である専門家に対して有形無形の影響が及び,その私生活の平穏を乱されるなど個人として守られるべき正当な権利利益に対して不当な悪影響が及ぶことも容易に想定し得るのであって,同権利は,氏名等を不開示とすることによって十分保護されねばならない。 エしたがって,本件不開示情報が,例外的に不開示情報から除外されるべき「人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」に当たらないことは明らかで,原告の主張は失当である。 (4)本件不開示情報が法5条1号ただし書ハに該当するか。 (原告の主張)本件不開示情報の対象となっている個人が公務員等であるかどうかについては明らかでないが,もしそうであれば,その部分については法5条1号ただし書ハに基づき除外事由として公開されるべきである。 これら専門家は,通常その公務内容が,その専門的な知識・経験に基づく職務であるはずである。例えば,大学研究者で ば,その部分については法5条1号ただし書ハに基づき除外事由として公開されるべきである。 これら専門家は,通常その公務内容が,その専門的な知識・経験に基づく職務であるはずである。例えば,大学研究者であるならば,その大学での職務自体がその研究分野についての研究・教育活動であり,外部から求められて表明する専門的知見についても,その公務である職務内容による成果を,その肩書きを持って述べるのである。このような実情からすれば,これら専門家である公務員等が,直接の指揮命令系統にある部門からの指示等により述べた意見等のみならず,それ以外の者からの求めにより明らかにする意見- 16 -等についても,その職務として行ったものというべきである。 しかも,情報公開の観点からすれば,かかる研究分野における職務に基づいて取得した専門的知見を非公開とすべき積極的理由も存しない。 したがって,本件不開示情報のうち,公務員等に係る部分については,法5条1号ただし書ハに該当する。 (被告の主張)法5条1号ただし書ハは,行政文書には,公務遂行の主体である公務員の職務活動の過程又は結果が記録されているものが多いため,政府の諸活動を説明する責務の全うと当該公務員個人としての権利利益の保護の調和の観点から規定されたものであり,「職務の遂行に係る情報」とは,公務員が行政機関その他の国の機関又は地方公共団体の機関の一員として,その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味し,例えば,行政処分その他の公権力の行使に係る情報,職務としての会議への出席,発言その他の事実行為に関する情報がこれに含まれると解される。しかるに,本件対象文書は,あくまでも那覇防衛施設局が自主的に行うこととした現地技術調査に係る作業計画の策定に関して,その環境対策が適切なものであるかどうか に関する情報がこれに含まれると解される。しかるに,本件対象文書は,あくまでも那覇防衛施設局が自主的に行うこととした現地技術調査に係る作業計画の策定に関して,その環境対策が適切なものであるかどうかにつき,各専門家に側面からの助言を求めたことに関するものであり,当該専門家自身が公務員としてその担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報でないことは明らかである。したがって,仮に本件対象文書記載の助言をした専門家の中に公務員がいたとしても当該専門家の所属や参加委員会等の情報は,法5条1号ただし書ハに該当しない。 なお,同号ただし書ハは,例外的に不開示情報から除かれるべきものとして,「当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」と規定しているところ,本件対象文書のうち,「専門家からの助言内容一覧」の備考欄に記載されているのは,専門家の氏名のみであるから,同文書の不開示情報は,もとより同号ただし書ハに該当しない。 - 17 -したがって,本件対象文書に記載された専門家がもし公務員であれば,その職務として行ったものというべきであるとして,同号ただし書ハに該当する旨の原告の主張は失当である。 (5)本件不開示情報が法5条6号に該当するか。 (被告の主張)ア法5条6号の意義について法5条6号は,「国の機関,独立行政法人等,地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより,次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」と規定する。 国の機関又は地方公共団体が行う事務又は事業は,公共の利益のために行われるものであり,公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報については,不開示とする合理的な理由があるといえる。 機関又は地方公共団体が行う事務又は事業は,公共の利益のために行われるものであり,公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報については,不開示とする合理的な理由があるといえる。 国の機関又は地方公共団体が行う事務又は事業は,広範かつ多種多様であり,公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれのある事務又は事業の情報については,不開示とする合理的な理由があるといえ,また,公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある事務又は事業の情報を事項的にすべて列挙することは技術的に困難であり,実益も乏しい。そのため,同号は,各機関に共通的に見られる事務又は事業に関する情報であって,公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報を含むことが容易に想定されるものを「次に掲げるおそれ」としてイからホまで例示的に掲げた上で,これらのおそれ以外については,「その他当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれのあるもの」として包括的に規定した。 イ本件不開示情報について防衛施設庁は,防衛施設を取得し,その安定的な運用の確保を図ること- 18 -を任務とする防衛庁の機関であり(防衛庁設置法39条,41条),那覇防衛施設局は,防衛施設庁の地方支分部局の1つである(防衛庁組織令219条)。本件対象文書は,米軍の使用に供する施設及び区域の取得,提供に関する事務(防衛庁設置法42条,5条19号参照)として実施するβ飛行場代替施設建設事業に関し,那覇防衛施設局が自主的に行うこととした現地技術調査に係る作業計画の策定に関して専門家から得た助言内容等をまとめたものであり,同文書に記載された専門家の氏名等は,国の機関が行う事務に関する情報である。 β飛行場代替施設については,建設場所であ 術調査に係る作業計画の策定に関して専門家から得た助言内容等をまとめたものであり,同文書に記載された専門家の氏名等は,国の機関が行う事務に関する情報である。 β飛行場代替施設については,建設場所であるαが非常に複雑な海底地形を有する場所を含むとともに,波浪の影響を大きく受けることから,この海域において安全な状態で機能し得る施設とすることが必要であり,代替施設の護岸に係る技術的な検討には,建設場所に係る地形,気象,海象及び地質に関するデータを使用しながら実施する必要があるのであって,これらのデータを収集するため現地技術調査を実施しているものである。 現地技術調査は,環境影響評価法の対象事業となっていないとはいえ,地域住民の生活環境及び自然環境に与える影響を最小限にとどめることが大切であるとの認識の下,より慎重を期すために専門家からの助言等も踏まえて作業計画を作成し,更には沖縄県から示された環境配慮事項についても真しに検討し,必要な措置を講じた上で実施しているところである。 以上のとおりの事業の性質上,同事業の遂行については,その適正な遂行を実現するため,環境面はもとより技術面等,必要に応じて多方面の専門家から助言を得ることとしているものであることから,助言を得る専門家との間での信頼関係の維持,確保は,本件の事業を適正に遂行する上で重要な事柄である。 前記(2)のとおり,専門家から助言を得るに際しては,その氏名等を公表しないことが条件とされており,その後,氏名等の公表が問題となった- 19 -際にこれらの専門家に再度確認したところ,やはり同様の意向が示された。 このような経緯があるにもかかわらず,これら専門家の意に反してその氏名等を公表した場合には,那覇防衛施設局と専門家との信頼関係が損なわれることは明らかである。また,一度上記のような専門 が示された。 このような経緯があるにもかかわらず,これら専門家の意に反してその氏名等を公表した場合には,那覇防衛施設局と専門家との信頼関係が損なわれることは明らかである。また,一度上記のような専門家の意向に反する対応をすれば,那覇防衛施設局のみならず,防衛施設庁全体と専門家との間の信頼関係が損なわれて協力関係等が期待できなくなり,ひいては,今後,防衛施設庁が行う事務ないし事業について,およそ学識経験者等の専門家の協力が得られなくなって,事業の遂行に支障を及ぼすことが容易に想定される。 したがって,本件不開示情報は,当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることは明らかであり,法5条6号に該当する。 また,原告は,当該事務ないし事業が一般的に秘匿を要するような性質のものではないことから,「当該事務又は事業の性質上」の要件を満たさないと主張しているようであるが,本号は,当該事務ないし事業自体の秘匿性を判断要素としているものではなく,この点でも相当でない。 (原告の主張)ア「当該事務又は事業の性質上」の要件に該当しないこと法5条6号は,単に「事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれのあるもの」を不開示事由としているのではなく,そのような支障のおそれが「当該事務又は事業の性質上」支障を及ぼすおそれがあるものでなければならない。 公共事業を遂行するに当たって事前に専門家から環境影響について意見を聴取することは一般にあり得ることであるが,このような事務ないし事業は,一般的にいって秘匿を要するような性質のものではない。同号イないしホの具体的類型は例示ではあるものの,「当該事務又は事業の性質- 20 -上」不開示が必要な類型を挙げているものであって,本件不開示情報は,それらと同程度の性質を有するものではない。 同号イないしホの具体的類型は例示ではあるものの,「当該事務又は事業の性質- 20 -上」不開示が必要な類型を挙げているものであって,本件不開示情報は,それらと同程度の性質を有するものではない。 専門家の氏名について,事業官庁と専門家との間で非公開を合意したとしても,それは,そのように合意したというだけであり,そのことによって,性質上,非公開とされるべきものではない。 イ信頼関係が損なわれるとの議論について本件の専門家による助言内容は,社会一般の通念では専門家が氏名を明らかにしてその専門的知見に基づく科学的見解を述べるものであって,匿名とする必要性に乏しいものである。したがって,仮に那覇防衛施設局と専門家の間に不開示の合意がなされていたとしても,それを開示したからといって,専門家の将来の研究等の活動に何ら具体的な支障が生ずるおそれは考えられず,このような実害が発生するということは想定できない。 そもそも,かかる見解の提供に際して匿名を条件とすること自体,その維持を期待する利益が存しないともいえよう。 さらに,被告は,将来への協力への懸念を表明するが,そもそも匿名を条件として見解表明を求めるという不正常な依頼を行うところに問題があるのであって,そのような合意を前提とせずに意見聴取をすれば済むのであるから,将来的にかかる協力等が得られなくなるおそれは存しない。 第3当裁判所の判断 争点(1)(本件不開示情報が,法5条1号本文に該当するか否か。)について(1)法5条1号本文は,「個人に関する情報(…)であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」を不開示情報と定めている。 ところで,地方公共団体の情報公開条例や諸外国の情報公開法制の中には,個人に関する情報のうち,個人のプライバ 月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」を不開示情報と定めている。 ところで,地方公共団体の情報公開条例や諸外国の情報公開法制の中には,個人に関する情報のうち,個人のプライバシー等の権利利益を害するおそれ- 21 -があるものに限って不開示情報とする方式(プライバシー保護型)を採用しているものもあるが,法の文言やその立法過程に照らすと,法は,いわゆるプライバシーの概念は,法的にも社会通念上も必ずしも確立したものではないことから,個人の権利利益の十分な保護を図るため,特定の個人を識別することができる情報は,原則として不開示とする方法(個人識別型)を採用したものと認められる。 そして,個人識別型を採用した結果,本来保護する必要性のない情報も含まれることとなるから,法は,5条1号本文の個人に関する情報に該当しても,同号ただし書イ,ロ,ハに該当する場合は,不開示情報から除外するという形式を採っているものである。 (2)そこで,本件不開示情報が,法5条1号本文の個人に関する情報に該当するかを検討する。 ア前記第2の1(3),(6)のとおり,本件対象文書のうち,「専門家についての資料」と題する文書には,「専門分野」,「氏名」,「所属等」,「参加委員会等」及び「備考」の欄があり,「氏名」,「所属等」及び「参加委員会等」の欄の記載が不開示とされている。 そして,同文書の「氏名」欄には,専門家の氏名が記載されており,「所属等」及び「参加委員会等」の欄には,各専門家が所属する団体名や役職,参加する委員会・学会や著書の名称等が記載されていることが認められる。 また,「専門家からの助言内容一覧」と題する文書には,「専門分野」,「項目」,「内容」及び「備考」の欄があり,そのうち「備考」の欄が不開示とされているところ,同欄には,それぞ ることが認められる。 また,「専門家からの助言内容一覧」と題する文書には,「専門分野」,「項目」,「内容」及び「備考」の欄があり,そのうち「備考」の欄が不開示とされているところ,同欄には,それぞれの項目について助言を行った専門家の氏名が記載されていることが認められる。 イ以上のとおり,「専門家についての資料」の「氏名」欄及び「専門家からの助言内容一覧」の「備考」欄には,専門家の氏名が記載されているこ- 22 -とが認められるところ,それらの欄に記載された専門家の氏名は,法5条1号本文に規定する個人に関する情報であることは明らかであるから,「専門家についての資料」の「氏名」欄及び「専門家からの助言内容一覧」の「備考」欄の記載は,同号本文の個人に関する情報に該当するといえる。 ウ次に,「専門家についての資料」の「所属等」,「参加委員会等」欄の記載について検討するに,法5条1号本文の個人に関する情報とは,個人の内心,身体,身分,地位その他個人に関する一切の事項についての事実,判断,評価等のすべての情報が含まれるものであり,個人に関連する情報全般を意味すると解されるから,同号本文の個人に関する情報には,個人の属性,人格や私生活に関する情報に限らず,個人の知的創作物に関する情報,組織体の構成員としての個人の活動に関する情報も含まれるというべきである。 そして,本件における各専門家の専門分野が,ジュゴン,海草藻類,サンゴ,魚類等という限定された専門分野であること(甲3)に照らすと,「専門家についての資料」の「所属等」,「参加委員会等」欄に記載された各専門家が所属する団体名や役職,参加する委員会・学会や著書の名称等も,それによって特定個人を識別できる情報であると認められるから,「専門家についての資料」の「所属等」,「参加委員会等」欄の記載 た各専門家が所属する団体名や役職,参加する委員会・学会や著書の名称等も,それによって特定個人を識別できる情報であると認められるから,「専門家についての資料」の「所属等」,「参加委員会等」欄の記載も,法5条1号本文の個人に関する情報に該当するといえる。 (3)なお,原告は,法における個人識別情報該当性及び不開示事由の除外規定への該当性の解釈については,その趣旨がプライバシーと知る権利の利益衡量にあることを十分考慮して,プライバシー権保護のため真に不公開とすべきか否かについて判断されなければならないと主張するが,前記(1)のとおり,法は,個人に関する情報に関して,個人識別型を採用した上で,不開示情報とされるもののうち,法5条1号ただし書イ,ロ,ハに該当するもの- 23 -を不開示情報から除外すると規定しているのであり,原告の上記主張は,独自の見解であるといわざるを得ず,採用することができない。 (4)以上より,本件不開示情報は,いずれも法5条1号本文の個人に関する情報に該当する。 争点(2)(本件不開示情報が法5条1号ただし書イに該当するか否か。)について(1)法5条1号ただし書イは,「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」は,不開示情報から除外すると定めている。 そして,現地技術調査に関する専門家の氏名の情報を公にすべきことを定めたような法令の存在は認められず,また,公にする慣行についてもこれを認めるに足りる証拠はない。 (2)この点,原告は,法5条1号ただし書イにいう「慣行」とは,単に行政庁の過去の実績を指すものと解すべきではなく,個人識別情報といえども社会一般の通念上公開されていることが予定,予想されており,それについて特に弊害が認められないもの一般をいうと主張し,沖縄県議会米 庁の過去の実績を指すものと解すべきではなく,個人識別情報といえども社会一般の通念上公開されていることが予定,予想されており,それについて特に弊害が認められないもの一般をいうと主張し,沖縄県議会米軍基地関係特別委員会で,本件部分開示決定について批判がなされ,名護市議会決議で本件不開示情報の公表を求める内容を含む決議がなされていることなどを挙げ,本件不開示情報がその性質上公にされるべきであるという一般的理解があると主張する。 しかしながら,沖縄県議会米軍基地関係特別委員会や名護市議会での決議等があったことをもって,本件不開示情報を公にする慣行があったと判断することはできず,また,原告の上記その余の主張は,いずれも独自のものといわざるを得ず,採用の限りでない。 また,原告は,専門家の氏名は,当該専門家の研究結果全体を表示する意味を持つものであり,専門的意見を引用するに当たっては,その出典を明ら- 24 -かにするのが通常であり,このことは,当該専門家の意見を検証するに当たっての慣行ないし慣習というべきであって,専門家の氏名は,社会通念上公開されていることが予定,予想されるものであるとも主張する。 しかしながら,本件対象文書は,各専門家がその研究結果を公に発表するための文書ではないから,それと同一視するかのような原告の上記主張は失当である。 (3)したがって,本争点に関する原告の主張は理由がないというべきである。 争点(3)(本件不開示情報が法5条1号ただし書ロに該当するか否か。)について(1)法5条1号ただし書ロは,「人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」は,不開示情報から除外すると定めている。 そして,同号ただし書ロに該当するか否かの判断に当たっては,開示することの利益と開示され 又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」は,不開示情報から除外すると定めている。 そして,同号ただし書ロに該当するか否かの判断に当たっては,開示することの利益と開示されないことの利益とを比較衡量することとなる。 (2)この点,原告は,本件対象文書等は,那覇防衛施設局が本件ボーリング調査を実施するための環境条件をクリアするために事実上不可欠の助言であり,これらの助言による権威付けなしには本件ボーリング調査ができず,そのボーリング調査自体,周辺海域の環境に甚大な影響を与え,周辺住民の環境を享受する利益や漁民の漁業を営む権利が侵害されるおそれが大きいものであること,本件ボーリング調査は本件新基地建設と一体となるものであり,本件新基地建設は,更に甚大な環境破壊をもたらすばかりか,騒音や水質汚染等により周辺住民の健康に重大な影響を及ぼすものであるから,本件不開示情報を開示する必要性は極めて高いと主張する。他方,本件不開示情報は,専門家らのプライバシー保護の必要性がある情報ではないため,開示されないことの利益は低いと主張する。 しかし,本件対象文書等は,そもそも本件ボーリング調査実施のために必- 25 -要不可欠であるとまでは直ちには認めるに足りないから,原告の主張は前提において誤っているといわざるを得ない。 また,本件不開示情報を除き専門家の助言内容自体は開示されているのであるから,これらの既に開示された情報に加えて,更に本件不開示情報も開示されなければ,原告の主張するような利益保護に不十分な自体が生じると判断することはできない。そして,他方において,本件不開示情報は,前記1のとおり,各専門家の氏名等個人を識別する情報であり,これを保護する必要性があることは明らかである。 そうすると,開示されないことの利益に比して きない。そして,他方において,本件不開示情報は,前記1のとおり,各専門家の氏名等個人を識別する情報であり,これを保護する必要性があることは明らかである。 そうすると,開示されないことの利益に比して開示することの利益が優越するとまで認めるに足りないというべきである。 (3)したがって,この点に関する原告の主張も,また理由がない。 争点(4)(本件不開示情報が法5条1号ただし書ハに該当するか否か。)について(1)法5条1号ただし書ハは,「当該個人が公務員(…)である場合において,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは,当該情報のうち,当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」を不開示情報から除外すると定めている。 これは,行政文書には,公務遂行の主体である公務員の職務活動の過程又は結果が記録されているものが多いが,政府の諸活動を説明する責務が全うされるようにするという観点からは,これらの情報を公にする意義が大きいが,他方,公務員についても,個人としての権利利益は,十分に保護される必要があるから,両者の要請の調和を図る観点から,どのような地位,立場にあるもの(「職」)がどのように職務を遂行しているか(「職務遂行の内容」)については,たとえ,特定の公務員が識別される結果となるとしても,個人に関する情報として不開示としないこととしたものと理解することができる。 - 26 -そして,「職務の遂行に係る情報」とは,公務員が行政機関その他の国の機関又は地方公共団体の機関の一員として,その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味するものと解される。 (2)そこで,本件不開示情報が法5条1号ただし書ハに該当するか否か検討する。 まず,前記1(2)アのとおり,「専門家についての資料」の「氏名」欄及び「専門家か ての情報を意味するものと解される。 (2)そこで,本件不開示情報が法5条1号ただし書ハに該当するか否か検討する。 まず,前記1(2)アのとおり,「専門家についての資料」の「氏名」欄及び「専門家からの助言内容一覧」の「備考」欄には,専門家の氏名が記載されていることが認められるところ,専門家の氏名が法5条1号ただし書ハに定める「当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」に該当しないことは明らかであるから,この点に関する原告の主張は,採用することができない。 次に,「専門家についての資料」の「所属等」及び「参加委員会等」の欄については,各専門家が所属する団体名や役職,参加する委員会・学会や著書の名称等が記載されていることは,前記第2の1(6)のとおりである。そして,証拠(甲8)及び弁論の全趣旨によれば,各専門家は,那覇防衛施設局に対して,それぞれの知識・経験に基づいて,専門家個人としての意見を述べたものであることが認められる。そうすると,そもそも各専門家の中に公務員が含まれること自体,これを認めるに足りる証拠はないが,その点を置くとしても,「専門家についての資料」における各専門家の助言内容は,専門家個人としての意見を述べたものであって,公務員が行政機関その他の国の機関等の一員として,その担任する職務を遂行する場合における当該活動そのもの,またはこれと直接の関連を有する情報であるとはいえないから,「専門家についての資料」の「所属等」及び「参加委員会等」の欄の記載もまた,法5条1号ただし書ハの「当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」に該当するとはいえない。 (3)したがって,この点に関する原告の主張もまた理由がない。 - 27 - 以上1ないし4で検討したところによると,本件不開示情報は,法5条1号本文の個人に関する情報 に該当するとはいえない。 (3)したがって,この点に関する原告の主張もまた理由がない。 - 27 - 以上1ないし4で検討したところによると,本件不開示情報は,法5条1号本文の個人に関する情報に該当し,かつ,同号ただし書イないしハのいずれにも該当しない。 そうすると,その余の点について判断するまでもなく,被告が,本件不開示部分を不開示とした本件部分開示決定は適法なものといえる。 第4 結論 以上の次第で,原告の被告に対する本件請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 那覇地方裁判所民事第1部西井和徒裁判長裁判官岩崎慎裁判官北村治樹裁判官
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