令和6(わ)91 地方公務員法違反

裁判年月日・裁判所
令和6年8月5日 鹿児島地方裁判所
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判決文本文1,871 文字)

令和6年8月5日宣告令和6年(わ)第91号 主文 被告人を懲役1年に処する。 この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、令和4年3月25日から令和6年3月24日までの間、鹿児島県警察本部警備部公安課外事対策室外事第二係に所属する警察官として、警備情報の収集、整理等の職務に従事していたものであるが第1 令和5年6月12日、鹿児島市鴨池新町10番1号鹿児島県警察本部において、Aに対し、自己が使用するスマートフォンのアプリケーションソフト「プラスメッセージ」のメッセージ機能を用いて、同警察本部警務部情報管理課照会センターに照会して入手したBの犯罪経歴情報を送信して教示し第2 同年9月20日頃から同年10月20日頃までの間に、同市(住所省略)社会医療法人CD病院敷地内において、前記Aに対し、鹿児島県警察が受理した告訴、告発事件の処理経過、関係者の氏名、生年月日等の個人に関する情報等(同年7月末日締め分)が記載された「告訴・告発事件処理簿一覧表」と題する書面10枚を交付し第3 令和6年3月11日、同市中央町1番地2日本郵便株式会社鹿児島中央郵便局において、鹿児島県警察が受理した告訴、告発事件の処理経過、関係者の氏名、生年月日等の個人に関する情報等(令和5年5月末日締め分)が記載された「告訴・告発事件処理簿一覧表」と題する書面47枚を福岡市(住所省略)前記A宛てに郵送し、令和6年3月12日、同所に配達させて同人に受領させもってそれぞれ職務上知り得た秘密を漏らしたものである。 (量刑の理由) 被告人は、個人の犯罪経歴情報に加え、100件以上の事件に関する処理経緯や関係者の情報を漏示しており、本件犯行によるプライバシーの侵害の程度は 秘密を漏らしたものである。 (量刑の理由) 被告人は、個人の犯罪経歴情報に加え、100件以上の事件に関する処理経緯や関係者の情報を漏示しており、本件犯行によるプライバシーの侵害の程度は高い。 被告人は、本件犯行の動機として、①記者からの信頼を得て同人から情報を得たかったこと、②コロナ関連施設で起きた事件の被害者に同情し、当該事件の捜査状況に疑問を感じたこと、③警察組織に対する抽象的な不満があったことを挙げるところ、被告人が捜査状況に疑問を感じていたという事件は、本件で情報が流出した100件以上の事件のうちの1つに過ぎず、判示第1の犯歴情報を含め、本件で流出した情報の大部分が被告人が抱いていた事件への疑念や警察組織への不満とは直接の関連性を有しないものであったことからすると、本件犯行の主たる動機は、被告人自身も述べているとおり、前記記者から求められた情報を提供することで記者の信頼を得たかったという点にあったものといえる。 そして、記者からの信頼ないし情報を得るためという主たる動機は、捜査情報の漏洩を正当化できるものではない。また、その余の動機についてみると、捜査資料や証拠品に対する警察の対応などが被告人が警察組織に対する疑念や不満を抱くことになった一要因とみられる一方で、自身が直接捜査に関与していない事件について断片的な情報により捜査状況に疑問を持った、捜査資料の記載を見落したことにより検察庁に送致されるべき証拠が送致されていないと誤信したなどと被告人が述べるところに照らすと、被告人自身の即断や思い込みにより、疑念や不満を募らせていた側面が小さくないことも否定できない。 これらの点を踏まえると、被告人が本件犯行に至った動機は、情報の対価として金銭を得るなどの専ら自己の経済的利益を図るためのものとは一線を画するものといえ ていた側面が小さくないことも否定できない。 これらの点を踏まえると、被告人が本件犯行に至った動機は、情報の対価として金銭を得るなどの専ら自己の経済的利益を図るためのものとは一線を画するものといえるが、量刑上考慮するにも限度があるといわざるを得ない。 以上によれば、被告人の刑事責任は軽視できないが、他方で、被告人に前科がないこと、被告人が本件犯行を認めて自身の考えの至らなかった点に向き合うともに、贖罪寄付を行うなど真摯に反省をしていること、被告人の妻が被告人の指導監督を誓約していることなど、被告人の更生を期待すべき事情も複数認められる。以上を 踏まえ、被告人には社会内での更生の機会を与えるのが相当であると判断した。 (求刑懲役1年)令和6年8月5日鹿児島地方裁判所刑事部 裁判官松野豊

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