令和2年6月4日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成29年(ワ)第10155号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和2年1月20日判決 主文 1 被告らは,原告Aに対し,連帯して1108万3040円及びこれに対する平成26年8月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告らは,原告Bに対し,連帯して220万円及びこれに対する平成26年8月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告らは,原告Cに対し,連帯して220万円及びこれに対する平成26年8 月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,これを3分し,その2を原告らの負担とし,その余を被告らの負担とする。 6 この判決は1項ないし3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは,原告Aに対し,連帯して2758万5863円及びこれに対する平成26年8月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告らは,原告Bに対し,連帯して770万円及びこれに対する平成26年8 月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告らは,原告Cに対し,連帯して770万円及びこれに対する平成26年8月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,被告Eの開設する被告病院に通院し,抗てんかん薬であるラミクター ル等の投与を受けていた亡Dの相続人である原告らが,亡Dが中毒性表皮壊死症 による両側肺炎及び肺出血により死亡したことについて,被告病院の医師である被告F及び被告Gには,添付文書の用法 ル等の投与を受けていた亡Dの相続人である原告らが,亡Dが中毒性表皮壊死症 による両側肺炎及び肺出血により死亡したことについて,被告病院の医師である被告F及び被告Gには,添付文書の用法・用量の定めに反したラミクタールを処方した過失及びラミクタールの投与により皮膚障害が発生する危険性等について十分な説明をしなかった過失があったと主張して,被告F及び被告Gに対しては不法行為に基づき,被告Eに対しては使用者責任に基づき,原告Aにつき損害 合計2758万5863円,原告B及び原告Cにつき各損害合計770万円並びにこれらに対する不法行為の日である平成26年8月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる。) ⑴ 当事者等ア亡Dは,昭和46年3月11日生まれの女性であり,平成26年9月9日,死亡した(死亡時43歳)。 原告Aは亡Dの夫,原告Bは亡Dの父,原告Cは亡Dの母である。亡Dには,原告らの他に相続人はいない。(甲C2) イ被告Eは,被告病院を開設運営する法人である。 被告F及び被告Gは,被告病院に勤務する医師である。 ⑵ 亡Dの診療経過等ア亡Dは,平成25年9月1日,a病院において,左前頭葉出血を伴う脳腫瘍を指摘され,同月12日,b病院において開頭脳腫瘍(膠芽腫)摘出術を 受け,同年10月1日から同年11月12日まで,同病院において,放射線化学療法を受けた。 イ亡Dは,同年12月12日,原告Aと共に,被告Fが非常勤医師として勤務していたcクリニックを受診し,被告Fの診察を受けた。以後,被告Fが亡Dの主治医となった。 ウ亡Dは,同月24日,被告病院を ,同年12月12日,原告Aと共に,被告Fが非常勤医師として勤務していたcクリニックを受診し,被告Fの診察を受けた。以後,被告Fが亡Dの主治医となった。 ウ亡Dは,同月24日,被告病院を受診し,以後抗てんかん薬であるイーケ プラ及びデパケンを継続して処方され(ただし,イーケプラは平成26年6月24日に中止された。),同年1月7日から,被告病院において,テモダール維持療法を受けていたが,同年7月22日のMRI検査の結果,左前頭葉脳溝付近に膠芽腫の再発の可能性が指摘され,同年8月18日のMRI検査の結果,再発していることが確認された。 エ被告Fは,同月19日,亡D及び原告Aに対し,脳腫瘍の再発が確認された旨説明するとともに,今後の治療方針について話をした。その際,亡D及び原告Aから,同月23日のサンバカーニバルに出場したい旨の希望が出された。 オ亡Dは,同月20日,けいれん発作が出現したことから,被告病院に救急 搬送され,被告病院脳神経外科を外来受診した。同日の外来当番医であった被告Gは,被告Fに相談の上,亡Dについて,ラミクタール錠100mg(バルプロ酸併用)1回1錠を1日2錠(1日合計200mg)及びマイスタン5mg1回1錠(1日1錠)として各7日分を処方した(以下,同日以降のラミクタールの処方を「本件処方」という。)。(乙A4・62~65頁) カ亡Dは,同月29日,ふらつきのため転倒し,被告病院を救急受診し,そのまま緊急入院した。 キ被告Fは,同年9月1日,亡Dを診察し,薬疹の可能性があると判断し,ラミクタール及びマイスタンの投与を中止するとともに,薬疹に対する治療を開始した。亡Dは,同月3日には,集中治療室に転床となり,皮膚科管理 の下治療が行われたが,同月9日,死亡した。 判断し,ラミクタール及びマイスタンの投与を中止するとともに,薬疹に対する治療を開始した。亡Dは,同月3日には,集中治療室に転床となり,皮膚科管理 の下治療が行われたが,同月9日,死亡した。亡Dの直接死因は,両側肺炎及び肺出血であり,その原因は,中毒性表皮壊死症(ToxicEpidermalNecrolysis。中毒性表皮壊死融解症とも言い,TENと略称する。以下「TEN」という。)であった(甲A4,乙A7・40頁)。 ⑶ 医学的知見 ア膠芽腫 膠芽腫は,脳実質内の神経膠細胞由来の癌腫であり,星細胞腫群のうち低分化型のものをいう。治療としては,手術で可能な限り摘出した後(全摘出は不可能である。),放射線療法,化学療法等が行われるが,一般的に予後は不良とされる。(甲B7,8)イラミクタール(一般名:ラモトリギン) ラミクタールは,抗てんかん薬である。ラミクタールの添付文書(平成26年8月改訂(第7版))には,以下の記載がある(甲B1)。 警告本剤の投与により中毒性表皮壊死融解症及び皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群とも言い,SJSと略称される。以下「SJ S」という。)等の重篤な皮膚障害が現れることがあるので,本剤の投与にあたっては十分に注意すること(「用法・用量に関連する使用上の注意」,「重要な基本的注意」,「副作用」及び「臨床成績」の項参照)。 用法・用量(てんかん患者(成人)に用いる場合で,バルプロ酸ナトリウムを併用する場合) 通常,ラモトリギンとして最初の2週間は1回25mgを隔日に経口投与し,次の2週間は1日25mgを1日1回経口投与する。その後は,1から2週間毎に1日量として25から50mgずつ漸増する。維持用量は1日100か ギンとして最初の2週間は1回25mgを隔日に経口投与し,次の2週間は1日25mgを1日1回経口投与する。その後は,1から2週間毎に1日量として25から50mgずつ漸増する。維持用量は1日100から200mgとし,1日2回に分割して経口投与する。 ウてんかん てんかんとは,種々の成因によってもたらされる慢性脳疾患であり,大脳ニューロンの過剰な発射に由来する反復性,てんかん性の発作を主徴とし,種々の臨床症状及び検査所見を呈する。 脳腫瘍に伴うてんかんに対する抗てんかん薬の予防的投与については,賛否が分かれるものの,比較的広く行われている(甲A3・3頁,甲A5・8 頁)。 抗てんかん薬としては,ラミクタールの他に,デパケン(一般名:バルプロ酸ナトリウム),マイスタン(一般名:クロバザム),イーケプラ(一般名:レベチラセタム)などがある(甲B5~7)。 エ SJS及びTENSJS 発熱と共に口唇・口腔,眼結膜,外陰部などの粘膜皮膚移行部に紅斑,水泡,びらんを認める重篤な全身性疾患である。原因の多くは薬剤と考えられる。(甲B9)TEN原因薬剤摂取後,急速に全身皮膚に広範囲に表皮の壊死性障害による水 疱,表皮剥離,びらんを認め,高熱と粘膜疹を伴う最重症型薬疹である。 SJSから進展することが最も多い。広範囲に及ぶ重症例では予後不良のこともある。(甲B9,11)SJSとTENは一連の病態であり,本邦では,皮膚のびらん面積が全体表面積の10%未満をSJS,10%以上をTENとしている。SJS 及びTENは,致死的となりうる重症型薬疹に含まれる。(甲B11,17,18,19) 3 争点及び争点についての当事者の主張⑴ ラミクタール投与上の過失の有無(原告らの いる。SJS 及びTENは,致死的となりうる重症型薬疹に含まれる。(甲B11,17,18,19) 3 争点及び争点についての当事者の主張⑴ ラミクタール投与上の過失の有無(原告らの主張) 以下の各事情によれば,ラミクタールの使用にあたっては,重症薬疹の発症を避けるため,バルプロ酸ナトリウム併用の場合,最初の2週間は,1日あたり25mgを隔日投与とし,漸増によって維持用量(100mgないし200mg)とすべきであるところ,被告F及び被告Gは,平成26年8月20日から同年9月2日までの間,亡Dに対し,同人がバルプロ酸ナトリウムを1日あ たり800mg服用している状況下で,連日,ラミクタール1日あたり200 mg(本件処方),マイスタン1日あたり5mgを各投与した。 アラミクタールの投与により,副作用として,SJS及びTEN等の重篤な皮膚障害が現れる可能性がある(甲B1,14,15)。 イラミクタールの投与については,重症薬疹予防のために,推奨された用法に従い,少量から漸増しなければならないとされている(甲B2~4,15, 16,23)。ラミクタールの添付文書においても,ラミクタールの用法・用量に関連する使用上の注意として,発疹等の皮膚障害の発現率は,定められた用法・用量を超えて投与した場合に高いことが示されているため,使用する薬剤の組合せに留意して用法・用量を遵守する必要があることが記載されている(甲B1)。 ウラミクタールは,てんかん患者に用いる場合,最初の2週間の用法・用量は,バルプロ酸ナトリウムを併用するときは,1日あたり25mgで隔日投与することと定められている(甲B1~4)。 エパルプロ酸ナトリウムは,ラミクタールの消失半減期を約2倍に延長する。 そのため,バルプロ酸 ロ酸ナトリウムを併用するときは,1日あたり25mgで隔日投与することと定められている(甲B1~4)。 エパルプロ酸ナトリウムは,ラミクタールの消失半減期を約2倍に延長する。 そのため,バルプロ酸ナトリウムと併用すると,ラミクタールの血中濃度が 急激に上昇し,副作用としての薬疹を惹起しやすくする可能性がある(甲B1,14)。 オバルプロ酸ナトリウムは,マイスタンによって血中濃度が上昇し,バルプロ酸の作用が増強されることがある(甲B5,6)。 カ SJS及びTENは死亡率の高い予後不良の疾患であり,とりわけTEN を発症した場合の死亡率は10~30%と高率である(甲B11~13,17~19,24)。 (被告らの主張)否認する。 以下の各事情によれば,本件処方当時,ラミクタールの投与がTENによる 死亡という結果を招く可能性は一般的知見ではなかったから,被告F及び被告 Gには,本件処方により亡Dが死亡することについての具体的危険性を予測することが不可能であった。 亡Dは,再発膠芽腫(遠隔再発)という極めて生命予後の悪い脳腫瘍患者で,予測生命予後は約3か月という状況であって,亡D及び原告Aの強い希望であるサンバ大会への出場を叶えるためには,てんかん発作の抑制が強く望まれた ことから,様々な抗てんかん薬の投与の適否や,短期間であること,薬剤の効果発現速度等を考え,ラミクタールを200mg処方することを選択するとともに,比較的即効性のあるマイスタン5mgを併用して処方したものであり,亡D及び原告Aの希望を前提に,慎重に薬剤を選択し処方内容を決めたものであって,薬剤副作用の発現については投与後の亡Dの状態を見ながら経過を踏 まえて適宜対応することとしていたのであるから,注意義務違反はない。 アラ ,慎重に薬剤を選択し処方内容を決めたものであって,薬剤副作用の発現については投与後の亡Dの状態を見ながら経過を踏 まえて適宜対応することとしていたのであるから,注意義務違反はない。 アラミクタールの投与によって,TENやSJS等の重篤な皮膚障害が発生する可能性があることは,本件処方当時も現在もラミクタールの一般的な薬理学的知見として異なるものではないが,それが「死亡」という結果を招く可能性については,知悉されていなかった(甲B1,乙B3,4)。ラミクタ ールの添付文書にも,平成27年2月のブルーレター(安全速報)(乙B17)に,平成26年9月から同年12月の4か月間にラミクタールに関する重篤な有害事象により死に至る症例が発生したことから,ラミクタールの副作用により死亡に至る可能性のあることが記載されたことを受けて,平成27年2月の添付文書改訂時に,「死亡に至った例も報告されている」旨の記 載がされたものであった(乙B11)。重篤副作用疾患別対応マニュアル中のSJSやTENの病態説明の中にも,当該疾患が死に至るものであるとの記載はなされていない(乙B18~21)。 イラミクタールを承認用量より高用量に投与したとしても,直ちに重症皮膚症状が出現するとはいえない(甲B20,乙B1の1・2,2の1・2)。ラ ミクタール市販後調査(国内販売後の初期データであり,非常に参考になる。) では,本件の2年前に914名に投与して,SJSの発症は3%,TENの発症は0.7%であったところ,重症皮膚症状を発症した102例の中で用法・用量非遵守例は42.1%とされている(甲B21)。 ウ TENやSJSは非常に稀な副作用である。ラミクタールの添付文書には,ラミクタールの副作用として,TEN及びSJSの発現率は0.5%, 用法・用量非遵守例は42.1%とされている(甲B21)。 ウ TENやSJSは非常に稀な副作用である。ラミクタールの添付文書には,ラミクタールの副作用として,TEN及びSJSの発現率は0.5%,国内 臨床試験の結果では,成人では335例中1例であり,発現率は0.3%であると記載されているにすぎない(甲B1・5,8頁)。また,医薬品副作用被害救済制度が施行された後の年間のSJS及びTENの発生頻度について,100万人当たりそれぞれ1.2ないし1.5%及び0.3ないし0. 5%(2006年,2007年)との報告もある(甲B11)。 エデパケン(バルプロ酸ナトリウム)を併用してラミクタールを高用量処方した場合に,TENの発症を引き起こす危険性が高いとはいえない。ラミクタールの添付文書には,「国内臨床試験における皮膚障害の発現率」について,バルプロ酸ナトリウム併用患者に承認用量よりも高い用量で投与した場合の皮疹発現率が10.4%と記載されているが,SJSの発現率について は,成人について335例中1例(0.3%)と記載されているにすぎないし,海外臨床試験における重篤な皮膚障害の発現率については,承認用量の場合及び承認用量より高い用量の場合のいずれについても,成人での発現率は0例(0%)と記載されている(甲B1・8頁)。 オ添付文書に記載された用法・用量と必ずしも整合しない処方がなされたと しても,そのこと自体が直ちに違法行為となるものではない。 ラミクタールの添付文書には,『「通常」,ラモトリギンとして最初の2週間は1日25mgを1日1回経口投与,次の2週間は1日50mgを1日1回経口投与し,5週目は1日100mgを1日1回又は2回に分割して経口投与する。その後は,1から2週間毎に1日量として最大100mg は1日25mgを1日1回経口投与,次の2週間は1日50mgを1日1回経口投与し,5週目は1日100mgを1日1回又は2回に分割して経口投与する。その後は,1から2週間毎に1日量として最大100mgずつ漸 増する。維持用量は1日100から200mgとし,1日1回又は2回に分 割して経口投与する。「症状に応じて適宜増減する」が,増量は1週間以上の間隔をあけて1日量として最大100mgずつ,1日用量は最大400mgまでとし,いずれも1日1回又は2回に分割して経口投与する。』と記載されている。 カ本件で,ラミクタールの初回量は200mgであり,初回量としては添付 文書において推奨されている用量を超えているが,ラミクタールの維持用量は200ないし400mgであることからすると,大量ないし過量とはいえない。 キ平成26年7月22日のMRI及び同月29日のメチオニンPETの所見から,亡Dの再発膠芽腫は,摘出腔辺縁再発ではなく,遠隔部位からの再 発であると確認されていた。 ク膠芽腫の遠隔再発後の平均生命予後は,一般に約3か月とされており,極めて予後不良であるとされている。 ケ亡Dの再発膠芽腫は,運動野近傍であり,けいれん発作が発生しやすい部位であった。実際,亡Dは,平成26年8月20日に意識消失を伴う全般性 発作を起こしていた。 コ亡D及び原告Aからは,本件処方の3日後のサンバカーニバルに出場したい旨の強い希望が出されており,発作を抑制する必要性があった。 ⑵ ラミクタール投与に関する説明義務違反の有無(原告らの主張) 上記⑴(原告らの主張)記載の各事情からすると,被告F及び被告Gは,本件処方を行うに際して,用法・用量において添付文書の定めを逸脱していること,それにもかかわらずなぜあえてそ 告らの主張) 上記⑴(原告らの主張)記載の各事情からすると,被告F及び被告Gは,本件処方を行うに際して,用法・用量において添付文書の定めを逸脱していること,それにもかかわらずなぜあえてそのような治療方法を勧めるのかの理由,これにより重篤な皮膚障害(SJS,TEN)発症の危険性が増大すると指摘されていること,SJSやTENを発症した場合に患者が置かれるであろう具 体的状況(病状等),SJSやTENを発症した場合に受け得る具体的な治療 方法,SJSやTENを発症すると治療が奏功せず死亡する可能性が10ないし30%あると指摘されていること,これらを踏まえた上での他の選択可能な治療方法とその利害得失,本件処方を行った場合と行わなかった場合の予後について説明をすべき義務があったにもかかわらず,これを怠った。 (被告らの主張) 否認する。上記⑴(被告らの主張)アないしエの各事情からすると,本件処方当時,ラミクタールの投与がTENによる死亡という結果を招く可能性は一般的知見ではなかったし,そもそもSJSやTENは非常に稀な副作用であることからすると,原告らの主張するような内容を説明する義務はない。 なお,被告Fは,平成26年8月26日の診察の際,亡D及び原告Aに対し, ラミクタールの一般的な開始量より多いこと,症状出現時の対処等について口頭で注意喚起するとともに,発作時の対応や抗てんかん薬による身体への影響等を記載した「けいれん発作の予防薬」と題する説明書(乙A13)を交付した。 ⑶ 因果関係 (原告らの主張)アラミクタール投与上の過失と結果との因果関係被告F及び被告Gの本件処方によって,亡Dは,TENを発症し,死亡するに至った。 イラミクタール投与に関する説明義務違反と結果との因果 主張)アラミクタール投与上の過失と結果との因果関係被告F及び被告Gの本件処方によって,亡Dは,TENを発症し,死亡するに至った。 イラミクタール投与に関する説明義務違反と結果との因果関係 被告F及び被告Gから,本件処方によって重篤な皮膚障害を発症させる危険性があり,その場合の生命予後等の説明を受けていれば,本件処方をあえて望むことはなかったのであるから,ラミクタール投与に関する説明義務違反によって,亡Dは,TENを発症し,死亡するに至った。 (被告らの主張) いずれも否認する。以下の各事情からすると,本件処方が,TENの発症・ 死亡を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性が立証されているとはいえない。 アラミクタールについては,用法用量非遵守によって皮膚障害が発生するとの高度の蓋然性は肯定されない(乙B1の1・2,2の1・2)。ラミクタールについては,用法用量の非遵守が皮膚障害のリスクファクターの第1とさ れているが,重篤な皮膚障害発現例のうち,用法用量を遵守した例は57. 8%という報告もあり,遵守例でも相当数の皮膚障害の発生があることが示唆されている(甲B20)。 イラミクタールを承認用量より高用量に投与したとしても,直ちに重症皮膚症状が出現するとはいえない(甲B20,乙B1の1・2,2の1・2)。ラ ミクタール市販後調査(国内販売後の初期データであり,非常に参考になる。)では,本件の2年前に914名に投与して,SJSの発症は3%,TENの発症は0.7%であったところ,重症皮膚症状を発症した102例の中で用法・用量非遵守例は42.1%とされている(甲B21)。 ウ TENやSJSは非常に稀な副作用である。ラミクタールの添付文書には, ラミクタールの副作用として,TE を発症した102例の中で用法・用量非遵守例は42.1%とされている(甲B21)。 ウ TENやSJSは非常に稀な副作用である。ラミクタールの添付文書には, ラミクタールの副作用として,TEN及びSJSの発現率は0.5%,国内臨床試験の結果では,成人では335例中1例であり,発現率は0.3%であると記載されているにすぎない(甲B1・5,8頁)。また,医薬品副作用被害救済制度が施行された後の年間のSJS及びTENの発生頻度について,100万人当たりそれぞれ1.2ないし1.5%及び0.3ないし0. 5%(2006年,2007年)との報告もある(甲B11)。 エデパケン(バルプロ酸ナトリウム)を併用してラミクタールを高用量処方した場合に,TENの発症を引き起こす危険性が高いとはいえない。ラミクタールの添付文書には,「国内臨床試験における皮膚障害の発現率」について,バルプロ酸ナトリウム併用患者に承認用量よりも高い用量で投与した場 合の皮疹発現率が10.4%と記載されているが,SJSの発現率について は,成人について335例中1例(0.3%)と記載されているにすぎないし,海外臨床試験における重篤な皮膚障害の発現率については,承認用量の場合及び承認用量より高い用量の場合のいずれについても,成人での発現率は0例(0%)と記載されている(甲B1・8頁)。 オラミクタールの添付文書には,「薬剤性過敏症症候群の症状」として,「血 液障害(好酸球増多,白血球増加,異形リンパ球の出現)及び臓器障害(肝機能障害)等が指摘されているところ,亡Dについて,平成26年8月26日にこれらの異常値は認められていない。 カ本件において,バルプロ酸ナトリウムとマイスタンとの併用によるバルプロ酸ナトリウムの血中濃度上昇は認められていな ところ,亡Dについて,平成26年8月26日にこれらの異常値は認められていない。 カ本件において,バルプロ酸ナトリウムとマイスタンとの併用によるバルプロ酸ナトリウムの血中濃度上昇は認められていない。同年8月26日の血液 検査では,バルプロ酸ナトリウムの血中濃度は93.4μg/ml(至適血中濃度50から100μg/ml),同月29日には,78.2μg/ml,9月2日には85.2μg/mlといずれも至適血中濃度の範囲内である(乙A5・238,240,243頁)。 ⑷ 損害の発生及びその額 (原告らの主張)ア亡Dの損害慰謝料 3000万円被告F及び被告Gの極めて重大な基本的注意義務違反により,亡Dが中毒性表皮壊死症という悲惨な病態によって死亡するに至ったことからす ると,亡Dの心痛は甚大であって,これを金銭的に評価すると,いかに控えめにみても,3000万円を下らない。 原告Aは,その3分の2である2000万円,原告B及び原告Cは各6分の1である各500万円を相続した。 イ原告Aの損害 医療費 4万9776円 葬儀関係費用 299万5018円カルテ開示費用 3万3264円慰謝料 200万円被告F及び被告Gの極めて重大な注意義務違反により,亡Dが中毒性表皮壊死症という悲惨な病態によって死亡するに至ったことからすると,原 告Aの心痛は甚大であって,これを金銭的に評価すると,いかに控えめにみても,200万円を下らない。 弁護士費用 250万7805円亡Dの損害の相続分及び原告Aの固有の損害の合計2507万8058円の1割相当 ウ原告B及び原告Cの損害慰謝料各200万円被告F及び被告Gの極めて重大な注意義務違反により,亡Dが中毒性表 相続分及び原告Aの固有の損害の合計2507万8058円の1割相当 ウ原告B及び原告Cの損害慰謝料各200万円被告F及び被告Gの極めて重大な注意義務違反により,亡Dが中毒性表皮壊死症という悲惨な病態によって死亡するに至ったことからすると,原告B及び原告Cの心痛は甚大であって,これを金銭的に評価すると,いか に控えめにみても,各200万円を下らない。 弁護士費用各70万円亡Dの損害の相続分並びに原告B及び原告Cの各固有の損害の合計各700万円の1割相当(被告らの主張) いずれも否認する。 亡D処方の目的・経過等,死亡に対する予見可能性の有無,死因に対する医学的議論等に照らし,過大である。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 前提事実に加え,証拠(後掲の各証拠のほか,甲A18,乙A12,原告A本人,被告F本人。ただし,いずれも以下の認定に反する部分は除く。)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実を認めることができる。 ⑴ 亡Dの診療経過等ア膠芽腫再発前の診療経過等 亡Dは,平成25年9月1日(以下,特に断りのない限り,平成25年については年の記載を省略する。),意識を失って倒れ,搬送先の病院において左前頭葉出血を伴う脳腫瘍を指摘され,同月7日,b病院に転院し,翌週に手術をすることとなった(乙A3・3頁)。 原告らは,b病院の医師から,亡Dの脳腫瘍は膠芽腫の疑いがあること, 膠芽腫の場合,手術後1年以内に再発したときの生命予後は半年程度であることなどの説明を受けた。 原告Aは,亡Dに対して,脳腫瘍であることは知らせたものの,脳腫瘍の中でも特に悪性の膠芽腫であることや,その生命予後については告知しないこととし,その旨を担当医師らにも伝え となどの説明を受けた。 原告Aは,亡Dに対して,脳腫瘍であることは知らせたものの,脳腫瘍の中でも特に悪性の膠芽腫であることや,その生命予後については告知しないこととし,その旨を担当医師らにも伝え,以後,亡Dは亡くなるまで の間,膠芽腫という病名や生命予後について知らされることはなく,これらに関わる説明は全て原告Aが受けていた(乙A12・5頁,原告A5,26~28,30,50頁,被告F4~7頁)。 原告Aは,口コミやインターネット,テレビ,雑誌書籍等により脳腫瘍の治療に定評のある病院を調べた結果,被告病院及び被告Fに亡Dを診て もらいたいと考え,9月7日午後6時30分頃,ひとりで被告病院救急外来を受診し,当直医に対し,亡Dの転院や手術について相談した。しかし,同日は土曜日であり,手術の早期実施が困難であることが想定されたため,原告Aは,予定どおりb病院において亡Dの治療を受させることとした。 (乙A4・1頁,原告A25~26,32頁) 亡Dは,9月12日,b病院において開頭脳腫瘍(膠芽腫)摘出術(ギ リアデル留置)を受けるとともに,10月1日から11月13日までの間,同病院において,放射線化学療法を受けた(乙A3・3,10~11頁)。 原告Aは,10月3日,被告Fが非常勤医師として勤務していたcクリニックをひとりで訪れ,被告Fに対し,今後の亡Dの治療を被告病院で行いたいこと,被告病院で行っている免疫療法などの最新の治療を受けさせ たいこと,ただし,亡Dには膠芽腫という病名及び生命予後を説明しないでほしいことなどを相談した。これに対し,被告Fは,治療途中で主治医を交代することは望ましくなく,患者本人に病名及び生命予後の告知を行わずに治療を行うこともできない旨を説明した。(乙A12・4~5頁,被 いことなどを相談した。これに対し,被告Fは,治療途中で主治医を交代することは望ましくなく,患者本人に病名及び生命予後の告知を行わずに治療を行うこともできない旨を説明した。(乙A12・4~5頁,被告F3頁,原告A4~5頁) 原告Aは,12月5日,再びcクリニックをひとりで訪れ,被告Fに対し,やはり亡Dに免疫療法等の治療を受けさせたいこと,b病院からはワクチン作成のために組織提供するのであれば主治医交代が条件であると言われたことなどを相談した。その結果,一度,亡Dを同行して,被告Fから免疫療法について説明を受ける機会を設けることとなった(乙A1 2・6頁,被告F3~4頁,原告A5~6頁)。 亡Dは,12月12日,原告らとともにcクリニックを受診し,被告Fの診察を受けた。被告Fが免疫療法について説明したところ(なお,原告Aが,膠芽腫という病名や生命予後について亡Dに説明しないでほしいと希望していたため,これらに関わる説明はされなかった。),亡Dも免疫療 法を受けることを希望した。被告Fとしては,患者本人に上記病名及び生命予後を告知せずに治療を行うことは不本意であったものの,原告Aや亡Dの熱意に応じて,以後,亡Dの主治医として治療を行うこととなった。 (乙A12・6~7頁,原告A6~7頁,被告F4~6頁)亡Dは,12月24日から,被告病院に通院するようになり,以後,平 成26年(以下,特に断りのない限り,平成26年については年の記載を 省略する。)1月7日から7月22日までの間,被告病院の外来を概ね月1回受診し,抗がん剤治療であるテモダール維持療法を受けた(乙A4・1~40頁)。 亡Dは,この間職場に復帰し,3月には,ライフワークとしていたサンバの練習や大会への出場を再開した(原告A7~8 1回受診し,抗がん剤治療であるテモダール維持療法を受けた(乙A4・1~40頁)。 亡Dは,この間職場に復帰し,3月には,ライフワークとしていたサンバの練習や大会への出場を再開した(原告A7~8頁)。 被告病院では,通院当初から,前医において処方されていた抗てんかん薬であるイーケプラ及びデパケンを継続して亡Dに処方していたところ,6月24日の診察時,亡Dから,イーケプラが処方された頃から発赤や掻痒感がある旨の訴えがあったため,被告Fは,イーケプラによる薬疹を疑い,イーケプラの服用中止を指示した(乙A4・32~33頁)。 その中止後である7月22日の診察時,亡Dに発赤が認められなかったことや,同人からサンバ大会に出場したい旨の希望があったこと,脳腫瘍摘出術後であり一剤は抗てんかん薬を服用しておくべきと考えたことから,被告Fは,イーケプラを再開しない代わりに,デパケンを400mgから通常服用量である800mgに増量して処方した(乙A4・36~3 7頁,12・8~9頁,被告F8~9頁)。 また,亡Dは,同日,テモダール治療の8クール目を開始した。 しかし,同日のMRI検査の結果,左前頭葉脳溝付近に膠芽腫の再発の可能性が指摘され,同月29日のメチオニンPET及び8月18日のMRI検査の結果,摘出腔の遠隔部位に膠芽腫が再発していることが確認され た(乙A4・35~40,51~55,A5・262~264)。 イ膠芽腫再発後の診療経過等被告Fは,8月19日,亡D及び原告Aに対し,脳腫瘍(膠芽腫)の再発が確認された旨説明した(ただし,亡Dに対しては膠芽腫という病名は伏せられた。)。そして,被告Fは,原告Aに対し,摘出腔とは離れた場所 に再発しており遠隔再発及び播種の可能性が否定できないこと,生命予 れた旨説明した(ただし,亡Dに対しては膠芽腫という病名は伏せられた。)。そして,被告Fは,原告Aに対し,摘出腔とは離れた場所 に再発しており遠隔再発及び播種の可能性が否定できないこと,生命予後 は3か月程度であり,症状の悪化なしで過ごせる期間は最初の1か月程度であることを説明した(被告F11頁)。 その上で,被告Fは,亡D及び原告Aに対し,早期に再手術を行う必要があるとして,その日程について8月22日,同月27日又は同月29日に行うことを提案したところ,亡D及び原告Aから,同月23日及び同月 29日に開催されるサンバの大会に出場したい旨の希望が出されたため,手術の予定日は9月8日とされた(乙A4・56~58頁,12・9~12頁,原告A9~10,37~38,51~52頁,被告F11~12頁)。 亡Dは,8月20日午前9時半頃,職場においててんかんの発作を起こしたことから,被告病院に救急搬送され,同日午前10時頃,被告病院脳 神経外科を外来受診した。そして,亡Dは,被告病院に駆け付けた原告Aとともに,同日の外来当番医であった被告Gの診察を受けた。 被告Gは,てんかんの発作を起していること,CT検査の結果腫瘍は大きくなっていないこと,抗てんかん薬を追加する必要があることを説明した。その際,原告Aは,同月23日のサンバカーニバルに出場するため, イーケプラの処方を再開できないか尋ねた。これを受けて,被告Gは,別の患者の手術中であった被告Fに院内PHSで相談の上,亡Dについて,ラミクタール錠100mg(バルプロ酸ナトリウム併用)を1日2錠(合計200mg)及びマイスタン5mgを1日1錠として各7日分を処方した(本件処方)。(乙A4・62~65頁,12・11~14頁,原告A1 1頁,被告F12~15頁 トリウム併用)を1日2錠(合計200mg)及びマイスタン5mgを1日1錠として各7日分を処方した(本件処方)。(乙A4・62~65頁,12・11~14頁,原告A1 1頁,被告F12~15頁)被告Gは,亡D及び原告Aに対し,ラミクタールについて,血中濃度を上げるため,普通は徐々に増やすけれども,サンバカーニバルが迫っており,徐々に増やすと血中濃度が上がらず効果を得られない可能性があるので,今回は通常量で処方する旨を説明した(原告A10~12,40,4 7頁)。 同日,原告Aが薬局で処方された薬を購入しようとしたところ,薬剤師が処方量について疑義照会をしたが,被告Gは上記処方量で良いと回答した(甲A9,原告A12~13頁)。 亡Dは,8月23日,浅草サンバカーニバルに出場し,サンバを踊った(原告A13,40頁)。 亡Dは,8月26日,原告Aとともに被告病院において被告Fの診察を受け,ふらつきと短期記憶力の低下の症状が出ていることを相談するとともに,同月29日のサンバの大会にも出場したい旨を相談した。 被告Fは,もしかしたら量が多いかもしれないが,サンバの大会を終えるまでは薬剤の変更を行わず,入院するまでの間は現状の治療を継続する こと,ふらつきについては,軽いてんかんが起こっている可能性があることを説明するとともに,脳浮腫の予防とてんかん発作を抑制するため,メニレットゼリーを追加して処方することとした。 なお,同日の検査の結果,炎症等の異常が窺える所見はなかったものの,被告Fは,亡D及び原告Aに対し,眠気など普段と違う感じがあればラミ クタールを半量にすること,一部分にポツポツと出るような皮膚異常が出現した場合にもラミクタールを半量にし,半量にしても悪化するようであれば中止するこ 対し,眠気など普段と違う感じがあればラミ クタールを半量にすること,一部分にポツポツと出るような皮膚異常が出現した場合にもラミクタールを半量にし,半量にしても悪化するようであれば中止することなどを伝えた。(甲A18・9~10頁,乙A4・67~68頁,12・14~15頁,原告A13~15,41~43頁,被告F15~16頁) ウ TENの発症等8月26日以降,亡Dは,徐々にふらつきが悪化し,同月29日午前4時頃,ふらつきのため転倒したことから,同日午前5時過ぎ頃,原告Aとともに被告病院を救急受診し,そのまま手術日までふらつきや血小板の管理,経過観察を行うために緊急入院することとなった。(甲A18・10~ 11頁,乙A4・69頁,5・1~5頁) 8月31日には,顔全体の発赤が強くなり,午後3時頃からは37.9度の発熱が認められた(乙A5・46~53頁)。 被告Fは,9月1日の朝,亡Dを診察し,前日からの症状に加え,肝機能値の上昇が見られたことから,薬疹の可能性が高いと判断し,ラミクタール及びマイスタンの投与を中止するとともに,強ミノファーゲンシーを 投与するなどの薬疹に対する治療を開始した(乙A5・54~64頁)。 9月2日,四肢体幹に全体的に膨隆を伴う発疹が認められ,掻痒感の訴えもあったため,被告病院皮膚科による診察が行われたところ,TENと診断され,同日からステロイドパルス療法等が開始された(乙A1・1~6頁)。 9月3日には集中治療室に転床となり,皮膚科管理の下治療が行われたが(乙A1・7~9,5・126~170頁,7・86頁),全身管理が必要と判断され,同月4日には,救命集中治療室に転床し,鎮静の上,人工呼吸器による呼吸管理の下,血液浄化療法等の治療が行われた(乙A6 (乙A1・7~9,5・126~170頁,7・86頁),全身管理が必要と判断され,同月4日には,救命集中治療室に転床し,鎮静の上,人工呼吸器による呼吸管理の下,血液浄化療法等の治療が行われた(乙A6・34~40頁)。 9月8日には,呼吸状態が悪化し,急性呼吸窮迫症候群と診断され,人工肺とポンプを用いた対外循環回路(ECMO)を導入するなどの治療が行われたが(乙A7・212頁),同月9日午後1時45分頃,モニター上心停止となり,午後2時32分,死亡が確認された(乙A7・320頁)。 亡Dの直接死因は,両側肺炎及び肺出血であり,その原因は,中毒性表 皮壊死症であった(甲A4,乙A7・40頁)。 エモデル事業の評価結果報告書一般社団法人日本医療安全調査機構の平成27年4月6日付け「診療行為に関連した死亡の調査分析事業評価結果報告書」には,次の各記載がある(甲A2,5)。 死因 ラミクタールによるSJSを発症,次第に重篤化しTENへ至ったと考えられる。集中的な治療(人工呼吸器,ECMO,CHDFなど)が積極的に施行されたが功を奏せず,最終的に肺炎,肺出血を併発し呼吸不全にて死亡したと考えられる。 調査及び評価の結果 2014年8月20日の初回痙攣発作に対する抗てんかん薬にはラミクタール以外にも適切な選択肢があり得た。ただし,他剤を選択したとしてもSJSの発症を予防できたかどうかは不明である。また,ラミクタールを添付文書通りに開始したとしてもSJSの発症の可能性はあった。しかしながら,本事例のような状況でラミクタールを最大量で投与開始する ことは標準的な選択とは言えず,あえて施行するのであれば,その必要性と効果,他の選択肢,リスクについて本人と家族に十分 。しかしながら,本事例のような状況でラミクタールを最大量で投与開始する ことは標準的な選択とは言えず,あえて施行するのであれば,その必要性と効果,他の選択肢,リスクについて本人と家族に十分に説明し同意を得た上で施行するべきであった。 ⑵ 事実認定の補足説明ア前段の認定に対し,原告Aは,被告Fから,膠芽腫が遠隔転移 して再発した場合の生命予後が3か月程度であり,症状の悪化なしで過ごせる期間は最初の1か月程度であることについて説明を受けていない旨供述する(原告A10,15,30~34,44~45,47,54頁)。 しかし,膠芽腫の再発が認められた場合の生命予後は一般的に4.9から10.4か月,播種が生じていた場合には約3か月とされている(乙A12・ 20頁)ところ,亡Dについて,摘出腔とは離れた場所に膠芽腫の再発が認められたにもかかわらず,その生命予後について医師が説明しないとは考え難い。しかも,原告Aは,亡Dが膠芽腫と診断された後から,自ら膠芽腫後の生存率の高い病院や治療法について調べるなどし,その過程で,再発膠芽腫の生命予後が厳しいことも知っていた(,原告A4,16頁) のであり,亡Dの全ての診察に付添いをしていたのである(原告A50頁) から,被告Fから膠芽腫の再発という説明を聞いたときに,生命予後について質問しないとは考え難い。 そうすると,原告Aの上記供述を信用することはできない。 イ後段の認定に対し,原告Aは,8月19日の時点では,同月29日のサンバの大会の話はしていない旨供述する(原告A38~39,41 ~43頁)。 しかし,亡Dの膠芽腫の再発部位や増大の早さからすると,早期手術が望ましく,現に被告Fは8月下旬の手術日を具体的に提案していたところ(原告A9~1 (原告A38~39,41 ~43頁)。 しかし,亡Dの膠芽腫の再発部位や増大の早さからすると,早期手術が望ましく,現に被告Fは8月下旬の手術日を具体的に提案していたところ(原告A9~10,51~52頁,被告F11~12頁),最終的には8月下旬を避ける形で9月8日に手術が予定されたことからすると,原告A及び亡Dか ら,8月29日のサンバの大会の話もあったと考えるのが自然である。 したがって,原告Aの上記供述を信用することはできない。 2 ラミクタール投与上の過失の有無(争点⑴)についてラミクタール投与上の注意義務について前記前提事実⑶イ及び後掲証拠によれば,ラミクタールの添付文書には,そ の冒頭に「警告」として,本剤の投与によりTEN及びSJS等の重篤な皮膚障害が現れることがあるので,本剤の投与にあたっては十分に注意することという文言が特に強調して記載されていること(甲B1),その本文中においては,①バルプロ酸ナトリウムを併用する場合の用法・用量として,最初の2週間は1回25mgを隔日に経口投与し,次の2週間は1日25mgを1日1回 経口投与し,その後は,1から2週間毎に1日量として25から50mgずつ漸増すること,②発疹等の皮膚障害の発現率は,定められた用法・用量を超えて投与した場合に高いことが示されているため,使用する薬剤の組合せに留意して用法・用量を遵守すること,③国内臨床試験の結果によれば,バルプロ酸ナトリウムを併用し,定められた用法・用量を遵守してこれを投与した場合の 皮膚障害の発現率は2.9%(102例中3例)であったのに対し,これを遵 守しなかった場合の皮膚障害の発現率は10.4%(173例中18例)であり,TENの発現頻度は不明であるが,SJSの発現頻度は547例中3 9%(102例中3例)であったのに対し,これを遵 守しなかった場合の皮膚障害の発現率は10.4%(173例中18例)であり,TENの発現頻度は不明であるが,SJSの発現頻度は547例中3例(0. 5%)であったことなどが記載されていると認められる(甲B1・1,3,5,8頁)。 このような添付文書の記載からすれば,ラミクタールにはSJSやTENと いった重篤な副作用の発現がみられるところ,臨床試験の結果によれば,初期投与量を減量して緩やかに漸増させることによってその発現率を低めることができることが確認されたので,上記の重篤な副作用を防ぐために,上記のとおり投与量を徐々に漸増させるという用法・用量の定めが設けられたことを容易に読み取ることができる。 また,後掲各証拠によれば,上記の添付文書のほかにも,本件処方時には,ラミクタールの製造販売業者及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)から,それぞれ,ラミクタールを用法・用量を遵守せずに投与すると皮膚障害の発現率が高くなるので,投与量の漸増などの用法・用量を遵守すべきであること,このような皮膚障害の中にはSJSやTENなどの重篤な皮膚障 害も含まれることなどが情報提供されるとともに(甲B2,3),本件処方時に存在していた医学文献等においても同趣旨の記載がされていたこと(甲B4,15,16,21)が認められる。そして,ラミクタールの副作用として挙げられているSJS及びTENは重症薬疹であって,とりわけTENを発症した場合の死亡率は10ないし30%であると認められること(甲B11~13, 17~19,24)からすると,その副作用の発現を防ぐ必要性は高いということができる。さらに,亡Dは以前に抗てんかん薬であるイーケプラを服用して薬疹と思われる皮膚症状 こと(甲B11~13, 17~19,24)からすると,その副作用の発現を防ぐ必要性は高いということができる。さらに,亡Dは以前に抗てんかん薬であるイーケプラを服用して薬疹と思われる皮膚症状が発現したことからすると(前記),薬疹の発症について注意すべき事情があったことも指摘することができる。 これらによれば,被告病院の医師には,亡Dにラミクタールを投与するに当 たり,SJSやTENなどの重篤な皮膚障害を回避するために,バルプロ酸ナ トリウムを併用する場合,添付文書の用法・用量に反する処方を行う合理的な理由がない限り,最初の2週間は1回25mgを隔日に経口投与し,次の2週間は1日25mgを1日1回経口投与し,その後は,1から2週間毎に1日量として25から50mgずつ漸増するという用法・用量を遵守する義務があったというべきである。 それにもかかわらず,被告病院の医師は,亡Dに対し,合理的な理由がないのに,上記の用法・用量を遵守せず,バルプロ酸ナトリウムであるデパケンを1日当たり800mg処方した状態で,平成26年8月20日から同年9月1日までの間,バルプロ酸ナトリウムを併用した場合の維持用量の上限である1日当たり200mgのラミクタールを処方したのであるから,ラミクタールの 投与上の過失があったことが認められる。 被告らの主張についてアこれに対し,被告らは,余命約3か月と予測された亡Dに人生最後のサンバを踊らせてあげたいとする原告Aの強い希望を受け,それを叶えるためには,てんかん発作を抑制する必要があったところ,サンバの大会までは本件 処方時(8月20日)から3日ないし9日間しかなく,添付文書どおりに投与量を漸増させていく余裕はなかったことから,ラミクタールの効果を十分に発揮させる があったところ,サンバの大会までは本件 処方時(8月20日)から3日ないし9日間しかなく,添付文書どおりに投与量を漸増させていく余裕はなかったことから,ラミクタールの効果を十分に発揮させるために本件処方を行った旨主張する。 しかし,本件処方を行ったとしても,サンバの大会までの短期間においてラミクタールの血中濃度を安定させることができたのかは疑義があること, たとえ投与量は少なかったとしても種類の違う抗てんかん薬を投与するだけで一定の発作抑制効果が認められることは,いずれも被告Fが供述するところであって(被告F60,61頁),これらによれば,被告らの上記主張を踏まえても,ラミクタールについて添付文書に反する本件処方をしたことについて合理的な理由があったと認めることはできず,これによっても前記認 定は左右されない。 イ被告らは,①ラミクタールの添付文書には,その副作用として,TEN及びSJSの発症率は0.5%とされ(甲B1),製薬会社のラミクタール市販後の調査において,SJSの発症率は3%,TENの発症率は0.7%とされていること,②同調査において,重症皮膚症状を発症した102例中,用法・用量を遵守しなかったのは42.1%であったこと(甲B21),③ 本件処方後の平成27年2月のブルーレターでラミクタールの副作用により死亡に至る可能性があることが記載されたことを受けて添付文書に死亡に至った例が報告された旨の改訂がされたことなどを指摘して,ラミクタールの処方によってTENやSJSを発症するのは非常に稀であるし,これを高用量で処方しても,直ちに重症皮膚症状が出現するとはいえないこと,本 件処方時にはラミクタールの投与が死亡という結果を招く可能性については知悉されていなかったことなどからすれば, し,これを高用量で処方しても,直ちに重症皮膚症状が出現するとはいえないこと,本 件処方時にはラミクタールの投与が死亡という結果を招く可能性については知悉されていなかったことなどからすれば,本件処方によって亡DがTENを発症し,死亡することを具体的に予見することはできなかった旨主張する。 しかし,①について,被告らが指摘するSJSやTENの発症率は,用法・ 用量を遵守した場合を含めた発症率であり,これを遵守しない場合のSJSやTENの発症率がそれよりも高い数値になることは見やすい道理であって(なお,国内臨床試験において,用法・用量を遵守しないでラミクタールを投与した場合の皮膚障害の発症率は,これを遵守して投与した場合と比較すると,約3倍の10.4%という高い数値であったことは前記のとおり である。),これを遵守しない場合のSJSやTENの発症率が稀であるといえるのかは疑問がある。また,②については,重症皮膚症状を発症した症例中における用法・用量の遵守例と非遵守例の内訳を示したものにすぎず,非遵守例の中での発症率を示したものではないし,それを措くとしても,独立行政法人医薬品医療機器総合機構による販売開始後の調査(甲B3)によれ ば,用法・用量を遵守した場合の重篤な皮膚障害の発症率は39.4%(2 51例中99例)とされているのに対し,用法・用量を遵守しなかった場合の発症率は60.6%(251例中152例)とされていることが認められ,②の調査とは異なる結果が出されていることからすると,②の調査結果を直ちに信用することはできない。さらに,③については,ブルーレターや添付文書改訂の経緯は被告らの主張するとおりであるが(乙B11,17),前記 ⑴認定のとおり,SJS及びTENは重症薬疹であることやTE 用することはできない。さらに,③については,ブルーレターや添付文書改訂の経緯は被告らの主張するとおりであるが(乙B11,17),前記 ⑴認定のとおり,SJS及びTENは重症薬疹であることやTENを発症した場合の死亡率が10ないし30%であることは,本件処方当時から認められるものであり,被告Fもこのことを十分認識していたのであるから(被告F38~39頁),本件処方をするに当たり,被告G及び被告Fは,添付文書の用法用量を大幅に超えたラミクタールを処方することにより,SJS及び TENを発症する危険性があり,これら(特にTEN)が発症した場合には死亡する危険があることを認識し得たものと認めることができる。 以上によれば,被告らの上記主張は,的確な根拠を欠くというべきであるから,採用の限りではない。 被告G及び被告Fの責任について 亡Dに対して本件処方を行った被告Gが上記の過失について責任を負うことはいうまでもない。他方,被告Fは,被告Gに対してラミクタールを投与するように指示したものの,その際に投与量については指示していないから,上記の過失について責任を負わない旨陳述・供述する(乙A12・11~14頁,被告F12~15,24~25頁)。 しかし,本件処方に当たって被告Gが被告Fに対して相談の電話をしたことは前記1⑴イのとおりであるところ,外来当番医として亡Dを1回限り診察したにすぎない被告Gが,主治医であった被告Fの指示がないにもかかわらず,添付文書に反する用法・用量でラミクタールを処方したとは考え難いし(被告Fは8月26日にラミクタールの処方量を把握したのにその内容を被告Gと 意見交換することもなく継続していること(被告F27頁)からも被告Gの独 断での処方量とは考え難い。) し(被告Fは8月26日にラミクタールの処方量を把握したのにその内容を被告Gと 意見交換することもなく継続していること(被告F27頁)からも被告Gの独 断での処方量とは考え難い。),仮に用法・用量について被告Fが具体的な指示をしていなかったとしても,被告Gに用法・用量の判断を委ねたものであって,8月26日に亡Dを診察した際,その用法・用量を中止することなく継続したことも考え合わせれば,本件処方について容認したものと認められるから,いずれにしても本件処方についての責任を免れるとはいえない。 したがって,被告Gのみならず,被告Fも上記の過失について責任を負う。 小括以上からすると,被告F及び被告Gには,亡Dに対し,ラミクタールを処方するに際して,添付文書に記載のとおり,最初の2週間はラミクタールを1回25mgを隔日に経口投与し,次の2週間は1日25mgを1日1回経口投与 し,その後は,1から2週間毎に1日量として25から50mgずつ漸増すべき義務があったにもかかわらず,最初の8月20日から1日200mgのラミクタールを投与し,これを9月1日まで継続したのであるから,被告F及び被告Gにはラミクタール投与上の過失があったと認められる。 3 ラミクタール投与に関する説明義務違反の有無(争点⑵)について 本件処方は,ラミクタールの添付文書に記載された用法・用量に従わない処方であり,そのような処方によって致死率が高いTEN及びSJS等の重篤な皮膚障害が現れる可能性があることは前記2に認定説示したとおりであるから,このような処方を行う医師には,添付文書と異なる処方を行う理由や,その場合に起こり得る副作用の内容や程度等について,患者が具体的に理解し得るように説明 すべき義務があったというべき あるから,このような処方を行う医師には,添付文書と異なる処方を行う理由や,その場合に起こり得る副作用の内容や程度等について,患者が具体的に理解し得るように説明 すべき義務があったというべきである。 しかし,前記1⑴認定のとおり,被告G及び被告Fは,通常よりも投与量が多いということや,皮膚症状が出現した場合の対応等について説明したにとどまり,SJSやTENを発症する可能性や発症した場合の治療方法等については説明していないから,被告G及び被告Fには,ラミクタール投与に関する説 明義務違反があったと認められる。 4 因果関係(争点⑶)について⑴ 前記1⑴ウ,エのとおり,亡Dは,本件処方から間もなくしてSJS及びTENを発症し,これを原因とする肺炎及び肺出血により死亡したことが認められるところ,ラミクタールにはSJSやTENといった重篤な皮膚障害を発症させるという副作用があり,その副作用は用法・用量を遵守しない場合に発現 しやすいとされていることは前記2で認定説示したとおりであるから,被告Fらが,添付文書の用法・用量を遵守してこれを投与していれば,TENを発症することはなく,死亡という結果を回避することができた高度の蓋然性があると認められる。 ⑵ また,被告Fらが前記3の説明義務を尽くしていれば,亡D及び原告Aがサ ンバの大会への出場を希望していたことを考慮しても,用法・用量を遵守しない場合の副作用の発現率の高さや副作用の重篤性にかんがみて,本件処方に同意しなかった高度の蓋然性があると認められる。 ⑶ 以上によれば,ラミクタール投与上の過失及び説明義務違反と亡Dの死亡との間には相当因果関係があると認められる。 これに対し,被告らは,①ラミクタールの用法・用量を遵守した例でも 上によれば,ラミクタール投与上の過失及び説明義務違反と亡Dの死亡との間には相当因果関係があると認められる。 これに対し,被告らは,①ラミクタールの用法・用量を遵守した例でも相当数の皮膚障害の発生があることや,②亡Dについて,8月26日の検査時には薬剤性過敏症症候群の症状とされる血液障害及び臓器障害(肝機能障害)等の異常値は認められていないことを指摘して,本件処方とSJSないしTENとの間に相当因果関係はない旨主張する。 しかし,①用法・用量を遵守しなかった場合に重篤な皮膚症状の発現率が高くなることは前記2で認定説示したとおりであるし,②TENは突然発症して急速に進行するとされていること(甲B9・228頁,12・281頁,13・104頁,18・33頁)からすると,8月26日に異常値が認められていないことを理由に因果関係を否定することはできず,被告らの上記指摘によって も前記認定は動かない。 5 損害の発生及びその額(争点⑷)について⑴ 亡Dの損害ア慰謝料 900万円亡Dは,膠芽腫の再発によって生命予後は約3か月と予測されていたこと(被告F30,57頁),しかし,上記4⑴のとおり,添付文書に反する本件 処方によってTENを発症し,予測されていた生命予後よりも早期に死亡したことが認められ,その他本件に現れた一切の事情も考慮すれば,同人の精神的苦痛に対する慰謝料は900万円をもって相当と認める。 イ上記慰謝料請求権について,亡Dの夫である原告Aはその3分の2である600万円,亡Dの両親である原告B及び原告Cは各6分の1である各15 0万円を相続したことが認められる。 ⑵ 原告Aの損害ア医療費 4万9776円証拠(甲C3)によれば,原告Aは,医療費として 亡Dの両親である原告B及び原告Cは各6分の1である各15 0万円を相続したことが認められる。 ⑵ 原告Aの損害ア医療費 4万9776円証拠(甲C3)によれば,原告Aは,医療費として4万9776円を支出したことが認められ,これを上記の各過失と相当因果関係のある損害と認め る。 イ葬儀関係費用 200万円証拠(甲C4)によれば,原告Aは,亡Dの葬儀関係費用として299万5018円を支出したことが認められるところ,そのうちの200万円をもって上記の各過失と相当因果関係のある損害と認める。 ウカルテ開示費用 3万3264円証拠(甲C5)によれば,原告Aは,カルテ開示費用として3万3264円を支出したことが認められ,これを上記の各過失と相当因果関係のある損害と認める。 エ慰謝料 200万円 原告Aは亡Dの夫であるところ,前記⑴アのとおり亡Dは膠芽腫の再発に よって生命予後は約3か月と予測されていたこと,しかし,本件処方によって予測されていた時期よりも早期に妻を失う結果となったこと,その他本件に現れた一切の事情を考慮すると,同人の慰謝料としては200万円をもって相当と認める。 オ弁護士費用 100万円 本件事案の内容・性質,原告Aに生じた損害の額その他諸般の事情を総合すると,本件と相当因果関係のある弁護士費用の額としては,前記⑴イ及び上記アないしエの合計額である1008万3040円の約1割である100万円をもって相当と認める。 カ合計 以上によれば,原告Aは,被告らに対し,合計1108万3040円の損害賠償請求権を有する。 ⑶ 原告B及び原告Cの損害ア慰謝料各50万円原告B及び原告Cは,亡Dの両親であるところ,前記⑴アのとおり亡Dは 被告らに対し,合計1108万3040円の損害賠償請求権を有する。 ⑶ 原告B及び原告Cの損害ア慰謝料各50万円原告B及び原告Cは,亡Dの両親であるところ,前記⑴アのとおり亡Dは 膠芽腫の再発によって生命予後は約3か月と予測されていたこと,しかし,本件処方によって予測されていた時期よりも早期に子を失う結果となったこと,その他本件に現れた一切の事情を考慮すると,同人らの慰謝料としては各50万円をもって相当と認める。 イ弁護士費用各20万円 本件事案の内容・性質,原告B及び原告Cに生じた損害の額その他諸般の事情を総合すると,本件と相当因果関係のある弁護士費用の額としては,前記⑴イ及び上記アの合計額である各200万円の1割である20万円をもって相当と認める。 ウ合計 以上によれば,原告B及び原告Cは,被告らに対し,それぞれ合計220 万円の損害賠償請求権を有する。 6 結論よって,原告Aの請求は,被告らに対し,連帯して1108万3040円及びこれに対する平成26年8月20日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,原告B及び原告Cの請求は,それぞれ, 被告らに対し,連帯して220万円及びこれに対する平成26年8月20日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,それらの限度で認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第35部 裁判長裁判官佐藤哲治 裁判官能登謙太郎 裁判官野口奈央は,転官のため,署名押印できない。 裁判長 裁判官佐藤哲治 裁判官能登謙太郎 裁判官野口奈央は,転官のため,署名押印できない。 裁判長 裁判官佐藤哲治
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