平成22(行ケ)10012 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成22年12月15日 知的財産高等裁判所 4部 判決 審決取消
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平成22年12月15日判決言渡同日原本受領裁判所書記官平成22年(行ケ)第10012号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成22年12月8日判決原告 X同訴訟代理人弁理士木内光春大熊考一茜ヶ久保公二町田正史被告アイリスオーヤマ株式会社同訴訟代理人弁理士松田雅章松田治躬近藤史代松田真砂美 主文 特許庁が取消2009-300445号事件について平成21年12月9日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1請求主文1項同旨第2事案の概要本件は,原告が,下記1の被告の本件商標に係る登録商標のうち,指定商品「LEDランプ」に係る商標登録について,不使用を理由とする当該登録の取消しを求める原告の下記2の本件審判請求が成り立たないとした特許庁の別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4のとおりの取消 事由があると主張して,その取消しを求める事案である。 本件商標本件商標(登録第4595453号商標)は,「エコルクス」の文字を標準文字により表してなり,平成13年8月24日に登録出願され,第11類「電球類及び照明器具」を指定商品として平成14年8月16日に設定登録されたものである(乙2,3)。 特許庁における手続の経緯原告は,平成21年4月14日,本件商標がその指定商品のうち,「LEDランプ」(以下「本件商品 定商品として平成14年8月16日に設定登録されたものである(乙2,3)。 特許庁における手続の経緯原告は,平成21年4月14日,本件商標がその指定商品のうち,「LEDランプ」(以下「本件商品」という。)について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって,不使用による取消審判を請求し,当該請求は,同月30日(以下「本件請求登録日」という。)に登録された(乙2,3)。 特許庁は,これを取消2009-300445号事件として審理し,平成21年12月9日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との本件審決をし,同月19日にその審決書謄本が原告に送達された(乙2,3,弁論の全趣旨)。 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,被告が本件審判の請求の登録前3年以内に,日本国内において,本件商品の包装に本件商標を付する行為を行ったから,本件商標の登録を取り消すことはできない,というものである。 取消事由本件商標の使用の有無についての認定判断の誤り(1)商標法2条3項1号に基づく本件商標の使用の有無について(2)商標法2条3項8号に基づく本件商標の使用の有無について(3)商標法50条2項ただし書の「正当な理由」の有無について第3当事者の主張 商標法2条3項1号に基づく本件商標の使用の有無について 〔被告の主張〕(1)商標の不使用取消審判における登録商標の使用の有無の認定は,商標使用者の業務上の信用維持という商標法の目的(商標法1条),登録時に現実の使用を要求しない登録主義の趣旨及び不使用取消審判制度の趣旨を総合勘案し,商標権者(被告)と審判請求人(原告)との取引・競業秩序の維持の観点に立った総合的な利益衡量によりされるべきである。 ことに,被告は,本件審 い登録主義の趣旨及び不使用取消審判制度の趣旨を総合勘案し,商標権者(被告)と審判請求人(原告)との取引・競業秩序の維持の観点に立った総合的な利益衡量によりされるべきである。 ことに,被告は,本件審判請求の事実を平成21年5月1日に初めて知ったものであるが,それまでに本件商品の開発その他に相当程度の費用をかけていたのだから,上記日時において,本件商標の使用を中止又は一時停止することが社会通念上極めて困難な状況になっていたのであり,本件商標の設定登録から使用開始が相当遅れたという以外に,被告には何ら帰責事由がないばかりか,本件商標が取り消されることにより甚大な不利益を被るものである。他方,原告は,平成20年10月23日,英字ゴシック斜体の商標「ECOLUX」を出願し,商願2008-89732号として受け付けられ,平成21年3月13日,本件商標等の登録を引用されて拒絶理由通知を受けたため,同年4月14日,当該出願に対して意見書を提出するとともに,本件審判を請求したものであるから,自己が使用しようとした商標と同一又は類似の本件商標の存在を確認しなかったという落ち度を克服するために本件審判請求に至ったものであり,しかも,仮に本件審判請求が認容されたとしても,本件商標の指定商品(電球類及び照明器具)から「LEDランプ」が除外されるだけで,類似範囲に基づく出願排除効により,原告の上記出願は,登録されないから,結局,原告による本件審判請求には実益がない。したがって,被告と原告との利益衡量から推し量れば,本件商標登録を維持することは,上記商標法の目的に照らし,また,自己の商標を使用しようとする者の業務上の信用の形成を図る行為をも広く保護するという観点からも,妥当なものである。 (2)商標法2条3項1号が「商品の包装に標章を付する行為」をも「使用」に含 また,自己の商標を使用しようとする者の業務上の信用の形成を図る行為をも広く保護するという観点からも,妥当なものである。 (2)商標法2条3項1号が「商品の包装に標章を付する行為」をも「使用」に含めたのは,そのようにしておきながら取引に用いないということは滅多にないの で,それだけで不使用による取消しを免れることができるようにしたものである。 そして,被告は,かねてより種々の準備を積み重ね,本件請求登録日の後ではあるが,本件商標を本件商品に付して宣伝広告活動等を行っており,特に,後記のとおり本件請求登録日には,本件商標と社会通念上同一と認められる標章を付した本件商品の包装用容器(以下「本件容器」という。)の写真が掲載された情報誌を店舗に向けて発送しているのだから,平成21年4月10日に本件容器に本件商標と社会通念上同一と認められる標章を付した行為は,その後の本件商標の使用を必然的かつ不可避的に備えたものであり,現実に商品を包装していなくても,実質的に,「商品の包装に標章を付する行為」に該当する。本件審決は,本件容器に本件商標と社会通念上同一と認められる標章が明示されたことをもって,既に本件商標が権利の上に眠る状態ではなく,真摯な使用意思に基づき,必然的かつ不可避的な状態で使用する状態になっていると認定し,併せて本件容器のデザインを「商品の包装」と実質的に同一視したものであるから,その事実認定に誤りはない。 なお,本件商品の生産開始は,同年6月11日であり,本件容器の量産開始は,同月28日ころである。そして,本件商品は,同年8月3日ないし5日に,本件商品及び本件容器の生産地である中国において本件容器に包装・梱包され,同月10日,我が国に入港した。 (3)本件審決は,①被告が平成20年12月から平成21年3月にかけて本件商品の販売に関する 件商品及び本件容器の生産地である中国において本件容器に包装・梱包され,同月10日,我が国に入港した。 (3)本件審決は,①被告が平成20年12月から平成21年3月にかけて本件商品の販売に関する計画・準備を現実に進めたこと,②被告が同年3月30日に本件商品に本件商標を採択使用することを決定したこと,③被告が同年4月10日に外部デザイン会社から前記のとおり本件容器のパッケージデザインの納品を受けたこと,④本件請求登録日よりも後である同年5月5日以降に,被告が本件容器を用いた本件商品の宣伝広告等を実際に行ったこと,の4点の事実全体から,本件商標は,既に権利の上に眠る状態ではなく,真摯な使用意思をもって覚せいした状態であって,本件商標が既に必然的かつ不可避的に使用される状態であることを認定し,商標法の目的(商標法1条)に照らして,本件商標の登録が取消しを免れる保護価 値を備えていると判断したものと解される。すなわち,本件審決は,上記①ないし④の各事実を間接事実として,これらから,本件商標が平成21年4月10日から本件請求登録日である同月30日までの間に使用されていた旨を推認したものではなく,その認定判断に誤りはない。 〔原告の主張〕(1)商標法2条3項1号の「商品の包装に標章を付する行為」は,商標に機能を生ぜしめる前段階の行為であるから,その認定は厳格に判断すべきであり,いまだ商品を包んでいない包装用の容器に商標を付したとしても,商品の包装に商標を使用したということはできない。 ところで,本件審決は,被告が本件容器のパッケージデザインについて,これを依頼していた外部デザイン会社から納品された平成21年4月10日に,本件容器に本件商標と社会通念上同一と認められる商標が明示されていたことをもって,「使用」(商標法50条,2条3項1号)に該 これを依頼していた外部デザイン会社から納品された平成21年4月10日に,本件容器に本件商標と社会通念上同一と認められる商標が明示されていたことをもって,「使用」(商標法50条,2条3項1号)に該当する旨の判断をしている。 しかしながら,被告が前同日に納品を受けたものは,「商品の包装」の前段階である「印刷された本件容器」の更に前段階である「本件容器のデザイン案」であるにすぎない。したがって,本件審決が上記納品の事実をもって「使用」を認定したことは,商標法2条3項1号の「商品の包装に標章を付する行為」の解釈を誤ったか,事実認定に見落としがある。 (2)本件審決は,前記〔被告の主張〕(3)に記載の①ないし④の4点の間接事実を認定し,これらの間接事実から,被告が平成21年4月10日から本件請求登録日である同月30日までの間に,「本件商品の包装(本件容器)に本件商標と同一の商標が付されていた」であろう旨を推認したものと解される。 しかしながら,被告は,本件審判請求登録前に本件商標が本件商品に現に使用された証拠を一切提出していないから,上記①ないし④の間接事実による上記推認は成り立たないばかりか,本件請求登録日よりも前の上記①ないし③の事実は,いずれも自他商品識別標識としての機能を果たし得ないような態様であり,これらを もって商標法2条3項1号の「使用」があったものとは認められない。 商標法2条3項8号に基づく本件商標の使用の有無について〔被告の主張〕(1)被告刊行の情報誌である平成21年5月5日付け「アイリスインフォメーション」371号(以下「本件情報誌」という。)には,「夏の商談会のご案内」との表題の下,本件商標を付した本件容器の写真が広告として表示されている。 (2)被告は,平成21年4月2日,本件情報誌について被告社内で編集を開始 本件情報誌」という。)には,「夏の商談会のご案内」との表題の下,本件商標を付した本件容器の写真が広告として表示されている。 (2)被告は,平成21年4月2日,本件情報誌について被告社内で編集を開始し,その後,編集・印刷及び製本作業を行って,同月30日,印刷会社から納品を受け,同日中に,宇都宮市所在の株式会社カンセキに対して26部を,愛知県刈谷市所在の株式会社カーマに対して155部を,それぞれ発送し,これらの本件情報誌は,同年5月1日,それぞれの目的地に配達された。 (3)被告が本件商標の使用を立証すべき期間は,本件請求登録日(平成21年4月30日)前3年間であり,本件請求登録日を含むところ,以上のとおり,被告は,本件請求登録日に,既に本件商標を付して本件商品に関する広告を掲載した本件情報誌を発送している。 しかも,被告は,本件請求の登録について同年5月1日になってから知ったものであり,本件請求登録日における発送行為により,上記広告の第三者への頒布は必然的かつ不可避的な状態となっていたから,被告による当該発送行為は,実質的に広告の頒布行為と認められ,商標法2条3項8号により,被告は本件商標を使用していたものと認められる。 〔原告の主張〕(1)商標法2条3項8号が広告等も「使用」の一態様として定義していることによれば,いまだ商標が人の視覚に訴える状態になく,商標の広告的機能を発揮し得る前の状態にあっては,業務上の信用の蓄積作用は起こらず,広告等が現実に第三者に配達される前の段階では,商標を広告を通じて視覚によって認識することも,商標の広告的使用による使用の蓄積もない。したがって,被告による本件情報誌の 発送行為は,上記「使用」には該当しない。 (2)仮に,被告による前記発送行為が「使用」に該当するとしても,商標法50条2項は,「審 用による使用の蓄積もない。したがって,被告による本件情報誌の 発送行為は,上記「使用」には該当しない。 (2)仮に,被告による前記発送行為が「使用」に該当するとしても,商標法50条2項は,「審判の請求の登録前3年以内」に日本国内で使用したことの立証を商標権者に求めているところ,上記発送行為は,本件審判請求登録前ではなく,本件請求登録日に行われたから,被告は,本件商標の使用の証明を行ったことにならない。 商標法50条2項ただし書の「正当な理由」の有無について〔被告の主張〕商標使用者の業務上の信用を維持するという商標法の目的(商標法1条),不使用取消審判制度の趣旨及び商標権者(被告)と審判請求人(原告)との取引・競業秩序の維持の観点に立った総合的な利益衡量に照らせば,ある商標についての具体的な使用計画の準備も,次の(1)ないし(7)の要件を満たす場合には,商標の不使用について「正当な理由」(商標法50条2項ただし書)があるものと解すべきである。 (1)商品の開発・販売に際し,自己の不使用登録商標を採択したこと(2)使用計画を開始する前に,現に不使用取消審判が請求されるという具体的な可能性を認識していなかったこと(及び不使用取消審判が請求されたことを知った時点では,既に商標の使用を開始していたこと)(3)使用計画に基づき当該不使用登録商標を使用するという真摯な意思が認められること(4)不使用取消審判の請求(登録)日までに,相当程度,商品の開発・販売計画が進行し,かつ,商標の使用計画も進行していること(5)不使用取消審判の請求(登録)日までに,商標権者以外の第三者に,商標の使用に関し必要不可欠な事項(例えば,広告又はパッケージデザインなどの作成の依頼)を行っていること(6)不使用取消審判の請求(登録)日以後,社会通念 登録)日までに,商標権者以外の第三者に,商標の使用に関し必要不可欠な事項(例えば,広告又はパッケージデザインなどの作成の依頼)を行っていること(6)不使用取消審判の請求(登録)日以後,社会通念上相当と認め得る期間内 に,現に商標の使用が行われ,かつ,継続されていること(7)不使用取消審判の請求人との関係で,商標法の目的に照らし,不公平とならないこと又は当該請求人に当該取消しに関し,実体的な利益が存しないことそして,被告は,上記(1)ないし(6)の要件をいずれも充足している。また,前記のとおり,仮に本件商標の登録が取り消されても,原告による英字ゴシック斜体の商標「ECOLUX」の出願は,結局登録されない。このように,本件審判請求には実益がなく,上記(7)の要件も,充足される。 よって,本件商標の不使用については,「正当な理由」があったものというべきである。 〔原告の主張〕商標法50条2項ただし書の「その登録商標の使用をしていないことについて正当な理由がある」とは,不可抗力等,商標権者において登録商標を使用できなかったことが真にやむを得ないと認められる特段の事情がある場合に限られると解すべきであるところ,被告が主張する事情は,いずれも被告の内部事情にすぎず,真にやむを得ないと認められる特別な事情とは認められないから,被告主張の解釈は,採用の余地がない。 また,原告は,平成20年までに自己の商品に本件商標と同一又は類似の標章を使用してきたから,本件商標の登録を取り消すことについて実益を有するし,平成22年6月14日付けで,本件商標の指定商品第11類における「LEDランプを除く,電球類及び照明器具」に係る部分の取消を求めて不使用取消審判の請求を行っているから,本件審決の取消しは,原告にとって実効的である。 さらに,本件商標の登録(平成 第11類における「LEDランプを除く,電球類及び照明器具」に係る部分の取消を求めて不使用取消審判の請求を行っているから,本件審決の取消しは,原告にとって実効的である。 さらに,本件商標の登録(平成14年8月16日)から本件請求登録日(平成21年4月30日)まで6年以上が経過しているのだから,被告は,その間に,本件商標の使用を開始することは可能であった。 第4当裁判所の判断 認定事実 証拠及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 (1)被告は,生活用品の企画,製造及び販売を事業内容とする会社であり,本件商標(平成14年8月16日登録)の商標権者であるが,被告の商品開発部担当者は,平成20年12月6日から,LEDランプの販売に向けて被告の他の部署との検討を開始し,同月8日,平成21年1月19日,同年3月2日及び同月16日,被告の社内での会議を開催して,LEDランプの実用テスト,その電気的改善,中国の工場との契約内容,同業他社の同種商品との比較等について検討を行った(甲1~7,9~11,29,乙2,3)。 そして,被告の社内では,同月30日の会議にて被告が販売予定のLEDランプ(本件商品)について,商標登録以来約6年8月にわたって未使用であった本件商標を採用することが決定され,被告の商品開発部担当者は,同年4月6日,外部会社に対し,本件商品の包装用容器のパッケージデザインを発注した(甲12~14,20,21,29,弁論の全趣旨)。 (2)前記外部会社の担当者は,平成21年4月8日,被告の担当者に対し,電子メールの添付ファイルで本件商品の包装用容器のパッケージデザインの案を送付したが,そこには,本件商標と社会通念上同一と認められる標章が付されていた(甲15,16,29)。 上記外部会社の担当者は,その後,被告の担当者からの電話 品の包装用容器のパッケージデザインの案を送付したが,そこには,本件商標と社会通念上同一と認められる標章が付されていた(甲15,16,29)。 上記外部会社の担当者は,その後,被告の担当者からの電話による要望を受けて,同月10日,被告の担当者に対し,改めて上記の案に修正を加えた本件商品の包装用容器のパッケージデザインを,やはり電子メールの添付ファイルにて送付したが,当該パッケージデザインにも,本件商標と社会通念上同一と認められる標章が付されていた(本件容器。甲17~19,29)。 (3)原告は,平成21年4月14日,本件審判を請求し,当該請求は,同月30日(本件請求登録日)に登録された(乙2,3)。 (4)他方,被告は,かねてより小売店に対して自社製品の広告や新商品の紹介等をする目的で,「アイリスインフォメーション」と題する情報誌を毎月2回刊行 し,各地の小売店に送付していたが,平成21年4月2日,同年5月5日付けの「アイリスインフォメーション」371号(本件情報誌。甲22,乙12)の編集を開始し,同年4月30日,印刷業者から製本された本件情報誌の納品を受けた。 本件情報誌の表紙の裏面には,「2009年夏の商談会のご案内」と題して同年5月26日ないし29日に被告の新商品等を小売店に説明する催しについての記載があり,その中には,被告が販売予定の家電用品として,本件容器のうちのある1面の前記パッケージデザインが2通り印刷されていた(甲22,乙12~16,19~21,37,38)。 そして,被告は,集荷店「仙台南」にて,同年4月30日午後9時27分,本件情報誌26部を,同日午後10時11分及び18分,本件情報誌合計155部を,それぞれ運送業者のトラックに積み込んで発送した。これらのうち,上記本件情報誌26部は,同年5月1日午後1時,宇都宮 ,本件情報誌26部を,同日午後10時11分及び18分,本件情報誌合計155部を,それぞれ運送業者のトラックに積み込んで発送した。これらのうち,上記本件情報誌26部は,同年5月1日午後1時,宇都宮市内の小売店である株式会社カンセキに,上記本件情報誌合計155部は,同日午後3時41分,愛知県刈谷市所在の小売店である株式会社カーマに,それぞれ配達された(乙22~26,37,38)。 (5)被告は,平成21年6月11日,本件商品の生産を,同月28日ころ,本件容器の量産を,いずれも中国において開始し,本件商品は,同年8月3日ないし5日,中国において本件容器に包装され,同月9日ころ,我が国に輸入されるに至った(乙39,40,42~47,59,61~64)。 商標法2条3項1号に基づく本件商標の使用の有無について(1)商標法2条3項1号所定の「商品の包装に標章を付する行為」とは,同号に並列して掲げられている「商品に標章を付する行為」と同視できる態様のもの,すなわち,指定商品を現実に包装したものに標章を付し又は標章を付した包装用紙等で指定商品を現実に包装するなどの行為をいい,指定商品を包装していない単なる包装紙等に標章を付する行為又は単に標章の電子データを作成若しくは保持する行為は,商標法2条3項1号所定の「商品の包装に標章を付する行為」に当たらないものと解するのが相当である。 (2)これを本件についてみると,前記認定のとおり,被告は,本件請求登録日以前から,本件容器に本件商標を付して販売するための準備を進めていたところ,被告が平成21年4月10日に外部会社から受領したものは,本件容器のパッケージデザインの電子データであるにすぎない。したがって,被告が上記電子データを受領し,これを保持することになったからといって,これをもって商標法2条 0日に外部会社から受領したものは,本件容器のパッケージデザインの電子データであるにすぎない。したがって,被告が上記電子データを受領し,これを保持することになったからといって,これをもって商標法2条3項1号所定の「商品の包装に標章を付する行為」ということはできない。 むしろ,前記認定のとおり,本件商品は,同年6月11日に中国において生産が開始されたものであるから,それよりも前に我が国において本件容器で本件商品を包装することは,不可能である。そして,本件商品が本件請求登録日よりも前に我が国において,被告により本件容器で包装されたと認めるに足りる証拠は存在しない。したがって,被告は,本件商標について,本件請求登録日よりも前の3年以内に我が国において商標法2条3項1号所定の「商品の包装に標章を付する行為」がされた事実を証明していないというほかない。 (3)よって,商標法2条3項1号に基づき本件商標の我が国における使用を認めた本件審決は,その解釈適用を誤るものといわなければならない。 (4)以上に対して,被告は,登録商標の使用の有無を商標権者と審判請求人との総合的な利益衡量により決定されるべきである旨を主張する。 しかしながら,商標法50条2項本文は,被請求人に登録商標の使用について証明を求めており,商標法2条3項は,「使用」の語義を並列的に規定しているところ,商標法のこれらの規定によれば,「使用」の事実の証明に当たって被告主張に係るような商標権者と審判請求人との間でいわば相対的に利益衡量をすれば足りるものと解すべき余地はない。 よって,被告の上記主張は,採用できない。 商標法2条3項8号に基づく本件商標の使用の有無について(1)商標法2条3項8号所定の標章を付した広告等の「頒布」とは,同号に並列して掲げられている「展示」及び「電磁的方法に ,採用できない。 商標法2条3項8号に基づく本件商標の使用の有無について(1)商標法2条3項8号所定の標章を付した広告等の「頒布」とは,同号に並列して掲げられている「展示」及び「電磁的方法により提供する行為」と同視でき る態様のもの,すなわち,標章を付した広告等が一般公衆による閲覧可能な状態に置かれることをいい,標章を付した広告等が一般公衆による閲覧可能な状態に置かれていない場合には,商標法2条3項8号所定の標章を付した広告の「頒布」に当たらないものと解するのが相当である。 (2)これを本件についてみると,前記認定のとおり,本件容器の写真が広告として掲載された本件情報誌が小売店に配達され,もって一般公衆による閲覧可能な状態に置かれたのは,平成21年5月1日である。したがって,被告が本件容器の広告写真が掲載された本件情報誌を頒布したのは,同日(平成21年5月1日)であるというべきであって,被告が前日(平成21年4月30日)に発送を行ったからといって,当該発送行為をもって本件商標を付した広告等の頒布に該当するとはいえない。そして,我が国において本件商標を付した広告等が本件請求登録日よりも前に,被告により頒布されたと認めるに足りる証拠は存在しない。したがって,被告は,本件商標について,本件請求登録日よりも前の3年以内に我が国において商標法2条3項8号所定の本件商品に関する広告の「頒布」がされた事実を証明していないというほかない。 (3)よって,前記判断に反する被告の主張は採用できない。 (4)なお,被告は,平成21年4月30日(本件請求登録日)の本件情報誌の発送行為が「頒布」に該当することを前提に,本件請求登録日の発送行為の立証をもって,商標法50条2項所定の「審判の請求の登録前3年以内」の日本国内での使用を証明した旨を主張す 登録日)の本件情報誌の発送行為が「頒布」に該当することを前提に,本件請求登録日の発送行為の立証をもって,商標法50条2項所定の「審判の請求の登録前3年以内」の日本国内での使用を証明した旨を主張する。 しかしながら,上記発送行為のみでは商標法2条3項8号所定の「頒布」に該当しないことは前記のとおりであるから,被告の主張は,その前提を欠くものとして採用できない。 小括以上のとおり,被告は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内で本件商標が使用されていたことを証明しておらず,これと判断を異にする本件審決は,取 消しを免れない。 商標法50条2項ただし書の「正当な理由」の有無についてなお,商標法50条2項ただし書にいう「正当な理由」とは,地震等の不可抗力によって生じた事由,第三者の故意又は過失によって生じた事由,法令による禁止等の公権力の発動に係る事由その他の商標権者,専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰することができない事由が発生したために,商標権者等において,登録商標をその指定商品又は指定役務について使用することができなかった場合をいうと解するのが相当であるところ,前記認定のとおり,本件商標に関しては,そのような不可抗力等の事由は,何ら認められない。 この点について,被告は,そのことに正当な理由がある旨をるる主張するが,独自の見解であって,到底採用の限りではない。 結論 以上の次第であるから,原告主張の取消事由は理由があり,本件審決は取り消されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官滝澤孝臣裁判官高部眞規子裁判官井上泰人 滝澤孝臣 高部眞規子 井上泰人

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