平成16(受)29 自動車損害賠償保障法に基づく損害てん補請求事件

裁判年月日・裁判所
平成17年6月2日 最高裁判所第一小法廷 判決 その他 大阪高等裁判所 平成15(ネ)878
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判決文本文4,020 文字)

主文 1 原判決のうち被上告人B1に関する部分を次のとおり変更する。 第1審判決のうち上記部分を次のとおり変更する。 (1) 上告人は,被上告人B1に対し,266万9559円及びうち63万3883円に対する平成12年12月1日から,うち172万3665円に対する平成14年2月2日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被上告人B1のその余の請求を棄却する。 2 上告人の被上告人B2及び同B3に対する上告を棄却する。 3 第1項に関する訴訟の総費用は,これを5分し,その1を被上告人B1の,その余を上告人の負担とし,前項の部分に関する上告費用は上告人の負担とする。 理由 第1 事案の概要 1 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。 (1) 被上告人ら3名の父であるD(大正12年10月20日生)は,平成11年8月29日午前3時35分ころ,兵庫県加古郡a町b)c番地のd先の信号機により交通整理の行われている交差点において,自転車を運転して自転車横断帯上を横断中,Eの運転する普通乗用自動車(以下「本件自動車」という。)に衝突されて死亡した(以下,これを「本件事故」という。)。 (2) Eには,交通閑散であった上,対面する信号機の信号が青色を表示していることに気を許して前方注視を怠り,制限速度時速60㎞のところを時速90㎞以上で本件自動車を走行させて交差点に進入した過失があり,他方,Dには,対面する信号機の信号が赤色を表示しているのに,これを無視して上記交差点を横断した過失がある。上記に加え,本件事故が夜間に発生したものであること,Dが本件事故当時75歳の高齢であったことなどに照らすと,Dの過失割合は5割である。 - 1 -(3) 本件事故によってDに発生した損害は,治 。上記に加え,本件事故が夜間に発生したものであること,Dが本件事故当時75歳の高齢であったことなどに照らすと,Dの過失割合は5割である。 - 1 -(3) 本件事故によってDに発生した損害は,治療費3万4000円,文書料3600円,逸失利益1089万2584円,慰謝料2100万円の合計3193万0184円である。 (4) 被上告人らは,Dの本件事故による損害賠償請求権を相続により3分の1ずつ取得した。 (5) 本件事故当時,本件自動車について自動車損害賠償保障法(以下「法」という。)で定める自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済の契約はいずれも締結されていなかった。 (6) 被上告人らは,平成12年11月30日,上告人に対し,法72条1項後段の規定による損害のてん補を請求し,平成14年2月1日,上告人から1079万4097円の支払を受けた。また,被上告人B1は,Dの葬儀費用として94万7767円を支出しており,国民健康保険法58条1項の規定により,葬祭費として5万円の支給を受けた。 2 本件は,被上告人らが,上告人に対し,法72条1項後段の規定に基づき,損害のてん補として既に支払を受けたものを除く残額の内金として,被上告人B1につき332万8136円及びこれに対する遅延損害金の支払を,その余の被上告人らにつき各290万3999円及びこれらに対する遅延損害金の支払を求める事案である。 第2 上告代理人都築弘ほかの上告受理申立て理由第2の2ないし8について【要旨1】法72条1項後段の規定による損害のてん補額の支払義務は,期限の定めのない債務として発生し,民法412条3項の規定により政府が被害者から履行の請求を受けた時から遅滞に陥るものと解するのが相当である。 したがって,被上告人らが上告人に対しててん補を請求した日の 定めのない債務として発生し,民法412条3項の規定により政府が被害者から履行の請求を受けた時から遅滞に陥るものと解するのが相当である。 したがって,被上告人らが上告人に対しててん補を請求した日の翌日からてん補すべき額に対する遅延損害金が発生するとした原審の判断は,正当として是認する- 2 -ことができる。論旨は採用することができない。 第3 同第2の9について 1 原審は,前記事実関係等の下において,次のとおり判断して,被上告人B1の上告人に対する請求につき,269万4559円及びうち65万8883円に対する平成12年12月1日から,うち172万3665円に対する平成14年2月2日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余を棄却した。 (1) 治療費,文書料,逸失利益及び慰謝料の合計3193万0184円に過失相殺をしてその5割を減額すると,1596万5092円となる。 被上告人らは,法72条1項後段の規定により,上告人から損害のてん補の一部として1079万4097円の支払を受けているから,これを1596万5092円から控除すると517万0995円となり,その3分の1は172万3665円である。 被上告人らが,上告人に対し,上記損害のてん補の請求をした平成12年11月30日の翌日である同年12月1日から1079万4097円の支払を受けた平成14年2月1日までの1596万5092円に対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金は93万6035円(円未満切捨て。以下同じ。)であり,その3分の1は31万2011円である。 (2) 被上告人B1がDの葬儀費用として支出した94万7767円から同被上告人が国民健康保険法58条1項の規定により支給を受けた5万円を控除した89万7767円に 1は31万2011円である。 (2) 被上告人B1がDの葬儀費用として支出した94万7767円から同被上告人が国民健康保険法58条1項の規定により支給を受けた5万円を控除した89万7767円に過失相殺をしてその5割を減額すると,44万8883円となる。 (3) 本件事故と相当因果関係のある被上告人B1の弁護士費用は21万円とするのが相当である。 - 3 -(4) したがって,被上告人B1の上告人に対する請求は,269万4559円及びうち65万8883円(葬儀費用分44万8883円及び弁護士費用分21万円)に対する平成12年12月1日から,うち172万3665円に対する平成14年2月2日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 2 しかしながら,原審の上記1(2),(4)の判断は是認することができない。その理由は次のとおりである。 法72条1項後段の規定により政府が被害者に対しててん補することとされる損害は,法3条により自己のために自動車を運行の用に供する者が賠償すべき責めに任ずることとされる損害をいうのであるから,法72条1項後段の規定による損害のてん補額は,被害者の過失をしんしゃくすべきときは,被害者に生じた現実の損害の額から過失割合による減額をした残額をいうものと解される。そして,法73条1項は,被害者が,健康保険法,労働者災害補償保険法その他政令で定める法令に基づいて法72条1項の規定による損害のてん補に相当する給付を受けるべき場合には,政府は,その給付に相当する金額の限度において,上記損害のてん補をしないと規定し,自動車損害賠償保障法施行令21条14号は,法73条1項に規定する政令で定める法令の一つとして国民健康保険法を挙げているから,同法58条1項の規定による葬祭費の ,上記損害のてん補をしないと規定し,自動車損害賠償保障法施行令21条14号は,法73条1項に規定する政令で定める法令の一つとして国民健康保険法を挙げているから,同法58条1項の規定による葬祭費の支給は,法73条1項に規定する損害のてん補に相当する給付に該当する。したがって,【要旨2】法72条1項後段の規定による損害のてん補額の算定に当たり,被害者の過失をしんしゃくすべき場合であって,上記葬祭費の支給額を控除すべきときは,被害者に生じた現実の損害の額から過失割合による減額をし,その残額からこれを控除する方法によるのが相当である。 そこで,被上告人B1が支出した葬儀費用94万7767円に過失相殺をしてその5割を減額すると47万3883円となり,これから上記葬祭費5万円を控除す- 4 -ると42万3883円となる。これに,上記1(1)の172万3665円及び31万2011円の合計203万5676円並びに同(3)の21万円を加算すると,被上告人B1に対しててん補すべき残額は266万9559円となる。 したがって,被上告人B1の上告人に対する請求は,266万9559円及びうち63万3883円に対する平成12年12月1日から,うち172万3665円に対する平成14年2月2日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は棄却すべきである。原審の上記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決のうち上記の額を超えて被上告人B1の請求を認容した部分は破棄を免れない。 第4 以上の次第で,原判決のうち被上告人B1に関する部分を主文第1項のとおり変更し,その余の被上告人に対する上告を棄却することとする。 よって,裁判官全員一致の意見で,主 部分は破棄を免れない。 第4 以上の次第で,原判決のうち被上告人B1に関する部分を主文第1項のとおり変更し,その余の被上告人に対する上告を棄却することとする。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官泉徳治裁判官横尾和子裁判官甲斐中辰夫裁判官才口千晴)- 5 -

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