主文 1 被告は,住宅等の賃貸借契約の賃借人(以下「原契約賃借人」という。)その他消費者を相手方として,上記賃貸借契約(以下「原契約」という。)から生ずる賃貸人(以下「原契約賃貸人」という。)に対する賃料等債務につき保証を受託することを含む「住み替えかんたんシステム保証契約」(以下「本件 契約」という。)を締結するに際し,別紙1契約条項目録記載の18条2項2号のような,原契約賃借人が賃料等の支払を2箇月以上怠り,被告において合理的な手段を尽くしても原契約賃借人本人と連絡がとれない状況の下,電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から原契約の目的たる賃借物件(以下「賃借物件」という。)を相当期間利用していないものと認められ,かつ,賃 借物件を再び占有使用しない原契約賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存するときに,原契約賃借人が明示的に異議を述べない限り,賃借物件の明渡しがあったものとみなす権限を被告に付与する条項を含む消費者契約の申込みまたは承諾の意思表示をしてはならない。 2 被告は,前項に係る条項が記載された契約書ひな形が印刷された契約書用紙 を廃棄せよ。 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用はこれを5分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告は,被告が,消費者との間で,「住み替えかんたんシステム保証契約」(本件契約)を締結するに際し,次の(1)から(5)までの契約条項を含む消費者契約の申込み又は承諾の意思表示を行ってはならない。 (1) 別紙1契約条項目録記載の13条1項のような,家賃債務保証受託者で ある被告に原契約賃貸人と原契約賃借人間の賃貸借契約(原契約)を無催告 承諾の意思表示を行ってはならない。 (1) 別紙1契約条項目録記載の13条1項のような,家賃債務保証受託者で ある被告に原契約賃貸人と原契約賃借人間の賃貸借契約(原契約)を無催告 解除する権限を付与する趣旨の条項(2) 別紙1契約条項目録記載の13条1項のような,被告が原契約の無催告解除権を行使することについて,原契約賃借人に異議がない旨の確認をさせる趣旨の条項(3) 別紙1契約条項目録記載の14条1項のような,被告が原契約賃借人に 対して事前に通知することなく原契約賃貸人に対する保証債務を履行することができるとする条項(4) 別紙1契約条項目録記載の14条4項のような,被告が原契約賃借人に対し求償権を行使するのに対し,原契約賃借人及び連帯保証人が原契約賃貸人に対する抗弁をもって被告への弁済を拒否できないことをあらかじめ承諾 する条項(5) 主文第1項同旨の条項 2 被告は,前項(1)から(5)までに係る条項が記載された契約書ひな形が印刷された契約書用紙を廃棄せよ。 3 被告は,その従業員らに対して,別紙2の内容記載の書面を配布せよ。 第2 事案の概要等 1 事案の概要及び前提事実被告は,住宅等の賃貸借契約(原契約)の当事者たる原契約賃貸人や原契約賃借人との間で締結する住み替えかんたんシステム保証契約(本件契約)に基づき,原契約賃借人が原契約賃貸人に対して負う賃料等債務につき原契約賃借 人のために連帯保証し,その対価として原契約賃借人から一定の保証料の支払を受けることを中核とする業務(以下「家賃債務保証業」という。)を営む株式会社である。その本店は東京都内に置いているものの,大阪府内にも事務所を有し,また,大阪府内の仲介業者を介して本件契約の申込み又は承諾行為を行っている 務(以下「家賃債務保証業」という。)を営む株式会社である。その本店は東京都内に置いているものの,大阪府内にも事務所を有し,また,大阪府内の仲介業者を介して本件契約の申込み又は承諾行為を行っている。 本件は,適格消費者団体(消費者基本法8条,消費者契約法2条4号,13 条)である原告が,被告に対し,本件契約に含まれている前記第1・1の(1)から(5)までに係る内容の各条項(以下「本件条項1」ないし「本件条項5」という。)は消費者契約法8条1項3号又は10条に規定する消費者契約の条項に該当してその効力が否定されるものであるとして,消費者契約法12条3項に基づき,本件条項1ないし5を含む消費者契約の申込み又は承諾の意思表 示の差止め(前記第1・1),本件条項1ないし5が記載された契約書用紙の廃棄(前記第1・2)及び被告従業員らに対する書面配布(前記第1・3)を求める事案である。 原告は,被告に対し,平成28年8月1日,消費者契約法41条1項に基づき,前記第1の1ないし3の各措置を採ることを請求し,同年10月24日, 本件訴えを提起した(甲5の1,2)。 本件条項1及び2は,いずれも別紙1記載の本件契約13条1項に係るものである。本件条項1(以下「本件被告解除権付与条項」ということもある。)は原契約の当事者でない被告にも原契約を無催告解除する権限を付与するものであり,本件条項2(以下「本件異議不存在確認条項」ということもある。) は被告が原契約の無催告解除権を行使することについて原契約賃借人において異議がない旨確認するものである。 本件条項3,4は,いずれも同別紙記載の本件契約14条に係るものである。 本件条項3(本件契約14条1項参照)は被告が原契約賃借人に対して事前に通知することなく原契約賃貸人 い旨確認するものである。 本件条項3,4は,いずれも同別紙記載の本件契約14条に係るものである。 本件条項3(本件契約14条1項参照)は被告が原契約賃借人に対して事前に通知することなく原契約賃貸人に対する保証債務を履行することができること とするものであり,本件条項4(本件契約14条4項参照)は被告が原契約賃借人に対して事後求償権を行使するのに対し,当該原契約賃借人及びその連帯保証人において原契約賃貸人に対する抗弁をもって被告への弁済を拒否できないことをあらかじめ承諾することとした部分である。 本件条項5(本件契約18条2項2号参照)は,一定の要件(主文第1項参 照)をいずれも満たす場合に,その明示的な異議がない限りにおいて,被告に, 原契約賃借人からの明渡しがあったものとみなす権限を付与するものである。 2 争点本件の主な争点は以下のとおりである。 (1) 本件被告解除権付与条項が消費者契約法に違反するかア本件被告解除権付与条項の解釈(争点1) イ消費者契約法10条前段該当性(争点2)ウ消費者契約法10条後段該当性(争点3)(2) 本件異議不存在確認条項が消費者契約法に違反するかア本件異議不存在確認条項の解釈(争点4)イ消費者契約法8条1項3号該当性(争点5) ウ消費者契約法10条前段該当性(争点6)エ消費者契約法10条後段該当性(争点7)(3) 本件契約14条1項及び同条4項が消費者契約法に違反するかア本件契約14条1項及び同条4項の解釈(争点8)イ同条項のうち,原契約賃借人の連帯保証人に対する部分についての消費 者契約法10条前段該当性(争点9)ウ同条項のうち,原契約賃借人に対する部分についての消費者契約法10条後段該当性(争点10, のうち,原契約賃借人の連帯保証人に対する部分についての消費 者契約法10条前段該当性(争点9)ウ同条項のうち,原契約賃借人に対する部分についての消費者契約法10条後段該当性(争点10,なお,同部分が消費者契約法10条前段に該当することについては,当事者間に争いがない。)エ同条項のうち,原契約賃借人の連帯保証人に対する部分についての消費 者契約法10条後段該当性(争点11)(4) 本件契約18条2項2号が消費者契約法に違反するかア本件契約18条2項2号の解釈(争点12)イ消費者契約法8条1項3号該当性(争点13)ウ消費者契約法10条前段該当性(争点14) エ消費者契約法10条後段該当性(争点15) 3 争点に対する当事者の主張(1) 争点1(本件被告解除権付与条項の解釈)について(原告の主張)本件被告解除権付与条項は,賃貸人が通常有する解除権について,受託保証人となった被告にもこれを付与するというものである。 本件被告解除権付与条項は,無催告解除を許容している点で,民法541条と比べ,解除権の行使をするための要件が緩やかになっている。下記(被告の主張)のように,本件被告解除権付与条項について,原契約賃借人に有利となるような要件が加重されているものと読むことはできない。 (被告の主張) 本件被告解除権付与条項が,原契約の解除権を,原契約賃借人の受託保証人となる被告に付与していることは認める。 しかし,本件被告解除権付与条項については,信頼関係破壊に関する従前の判例法理に基づき解釈すべきである。すなわち,不動産賃貸借では,賃借人保護と社会経済上の要請から,債務不履行の程度・態様が軽微である場合 は,信頼関係の破壊がないものとして,適法な催告をし の判例法理に基づき解釈すべきである。すなわち,不動産賃貸借では,賃借人保護と社会経済上の要請から,債務不履行の程度・態様が軽微である場合 は,信頼関係の破壊がないものとして,適法な催告をしても有効な解除とは扱わないし,また,無催告解除特約が存する場合も,原契約賃借人に催告をしなくてもあながち不合理とは認められない事情が存する場合にのみ有効なものとして扱われる(最高裁昭和43年11月21日第一小法廷判決・民集22巻12号2741頁参照,以下,同判決を「最高裁昭和43年判決」と いう。)。そして,本件被告解除権付与条項の適用がある場合にも,この判例法理が及ぶものであり,原契約賃借人は,原契約当事者間の信頼関係不破壊を根拠として解除権の行使の効力を争うことができる。 (2) 争点2(本件被告解除権付与条項の消費者契約法10条前段該当性)について (原告の主張) ア本件被告解除権付与条項は,賃貸借契約の当事者でない被告に同契約の解除権限を付与し,その権限行使者を拡張している。消費者である賃借人は,被告から解除権を行使されれば,賃貸借契約終了に基づき,建物明渡しなどの義務を負い,生活の本拠である建物の使用ができなくなるのであり,解除により法律関係の変動を強いられる可能性が増す。 また,原契約賃貸人と,本件契約で受託保証人となる被告との間では,原契約の解除に関する利害関係が異なり,そのため,被告に解除権を付与すれば,原契約賃貸人が契約の解除を希望していない場合でも原契約が解除されてしまうことが起こりうる。 イ加えて,本件被告解除権付与条項は,催告を要しないものとしている点 で,民法541条が適用される場面に比して消費者である原契約賃借人の義務を加重するものである。 ウ以上によれば,本件 イ加えて,本件被告解除権付与条項は,催告を要しないものとしている点 で,民法541条が適用される場面に比して消費者である原契約賃借人の義務を加重するものである。 ウ以上によれば,本件被告解除権付与条項は,任意規定である民法541条または民法上の一般法理と比べて,消費者の義務を加重するものといえる。 (被告の主張)ア否認ないし争う。本件被告解除権付与条項は,原契約賃借人において原契約の解除を免れない事由が生じた場合に,原契約の解除権限を被告に付与したものであり,原契約賃借人に特別な義務を課するものではない。 イ本件被告解除権付与条項は,被告に対して無催告解除の権限を付与する ものであるが,前記(1)(被告の主張)記載の判例法理を前提とするものでかつ,被告が解除権を取得する要件を,原契約賃借人に債務不履行がある場合のうち,原契約賃借人が滞納した賃料等の合計額が賃料3箇月分に達したときに限定するものである。よって,同部分は,任意規定の適用による場合に比べて,原契約賃借人の義務を加重するものではない。 (3) 争点3(本件被告解除権付与条項の消費者契約法10条後段該当性)に ついて(原告の主張)以下の事情によれば,本件被告解除権付与条項は,信義則に照らして消費者の利益を一方的に害するものといえ,消費者契約法10条後段に該当する。 ア本件被告解除権付与条項は,被告に原契約の解除権を付与する点で利益 相反性がある。 すなわち,被告は,原契約賃借人から委託されて保証人たる地位に就くものであり,被告と原契約賃借人とは保証委託契約の当事者たる地位にある。そして,被告は,原契約賃借人に対し,保証委託契約の趣旨に従い,善管注意義務(民法651条,644条)を負っており,正当な理由なく であり,被告と原契約賃借人とは保証委託契約の当事者たる地位にある。そして,被告は,原契約賃借人に対し,保証委託契約の趣旨に従い,善管注意義務(民法651条,644条)を負っており,正当な理由なく 委任者の利益に反する行動をすることは許されない。しかし,本件被告解除権付与条項に基づく解除権行使は,原契約賃借人に不利益であり,かつ,原契約賃貸人のために行われるものである。 また,被告に解除権を付与することで,その後の立退訴訟の代行と相まって,被告が,原契約賃借人から受領した保証料を原資として,同人に 対する明渡訴訟を提起することとなる。このような解除権の行使等は,賃貸人に対する便宜の提供となっており,被告の顧客獲得手段となっている。 これは,賃貸人が自らの費用で明渡訴訟を追行するという従前の実務を変更するもので,原契約賃借人への不利益が大きい。 イ本件被告解除権付与条項の実質的目的は,解除権行使及び明渡訴訟とい う法律事務を,原契約賃貸人に代わって被告が組織的・継続的に扱うという点にある。被告は,原契約賃貸人と比較して,原契約賃借人による賃料不払が長引くと損害が拡大するため,早期に契約を解除することを選択する傾向が強い。また,実際に,被告による未払賃料の取立て,建物からの追い出し行為及び立退き要求について,消費者から相当数の苦情が寄せら れており,弁護士法72条が想定する弊害が生ずるおそれがあるという点 で,消費者への不利益は大きい。 ウ本件被告解除権付与条項が,無催告解除を認める点については,生活基盤である住居を失うか否かという場面における催告の趣旨を軽視するものである。賃料3箇月分以上の遅滞があっても,催告しなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合に直ちに該当するものでは ある住居を失うか否かという場面における催告の趣旨を軽視するものである。賃料3箇月分以上の遅滞があっても,催告しなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合に直ちに該当するものでは ないことは明らかである。 エ原契約賃借人には,他の家賃債務保証業者の提供する同種の契約と比較して,より良い業者を選択する機会が事実上存在しない。したがって,本件契約は,市場による是正が構造上機能しない契約であるといえる。よって,本件被告解除権付与条項は,情報の質及び量並びに交渉力の格差によ り消費者が契約を余儀なくされる条項の典型例であり,原契約賃借人においてこれを拒否することは困難であるといえる。 オ被告が(被告の主張)オで主張する不利益は,被告自身が,自らの利益のために採用した本件契約の保証に係る条項の内容に由来するものに過ぎない。本件契約においては,被告は,保証範囲を限定し,滞納額が一定額 を超えた場合には賃貸人に対して原契約を解除することを促したり,以後の保証債務の履行の条件として原契約賃貸人に原契約の解除を義務付けたりすることにより,被告が負担するリスクを回避することが可能である。 被告がこのような対応をしないのは,上記イのとおり,原契約賃借人の負担において,原契約の解除や明渡請求等を行うことを可能とするためであ る。 被告には,消費者契約法違反の契約条項を使用する自由はないのであり,より消費者にとって不利益でない約定を設けることが可能であることは,消費者契約法10条後段の判断の基礎事情となるものである。 (被告の主張) 本件被告解除権付与条項は,消費者契約法10条後段に違反するものでは ない。このことは以下の事情から明らかである。 アそもそも保証委託契約における保証受託者は (被告の主張) 本件被告解除権付与条項は,消費者契約法10条後段に違反するものでは ない。このことは以下の事情から明らかである。 アそもそも保証委託契約における保証受託者は,委任者の財産を包括的に管理,代理する権限を有するものでなく,委任者との間の利益が相反する行為一般について制限を受けるものではない。本件契約についても,受託保証人である被告が,委託者である原契約賃借人の利益に反して,原契約 の解除権を行使してはならないとする法理は存しない。また,被告が本件被告解除権付与条項に基づいて原契約を解除したとしても,原契約賃貸人の解除による場合を超える格別の不利益を,原契約賃借人に被らせるものではない。 費用の負担については,原契約賃借人が被告に対して支払う保証委託料 は,被告から供与される信用の対価であり,その使途は,これを受領した被告が自由に決定し得るものである。たとえ,上記保証委託料から,解除後の手続に係る費用が支出されているとみることができるとしても,何ら問題はない。 イ本件被告解除権付与条項の実質的目的が,「解除権行使及び明渡訴訟と いう法律事務を被告が原契約賃貸人に代わって組織的・継続的に行う」点にあるとの原告の主張には理由がない。したがって,同条項があることにより,弁護士法72条が想定する弊害が生ずるわけではなく,原契約賃借人が,原契約賃貸人による解除によって一般的に被る以上の不利益を構造的に受けることになるものでもない。 被告は,原契約賃借人に対して金員の支払を求める際,原契約に係る未払賃料の取立てをしているのではなく,本件契約に基づく事前又は事後求償権を原契約賃借人に対して行使しているのであり,これが弁護士法72条により禁止されるものでないことは明らかである。ま 契約に係る未払賃料の取立てをしているのではなく,本件契約に基づく事前又は事後求償権を原契約賃借人に対して行使しているのであり,これが弁護士法72条により禁止されるものでないことは明らかである。また,被告が,違法な追い出し行為を行うことはあり得ない。原契約賃貸人と被告との間で解 除権行使の判断基準が異なることがあったとしても,解除原因が存する以 上,原契約賃借人に具体的不利益が発生するわけではない。 ウ上記(1)(被告の主張)のとおり,本件被告解除権付与条項は,一般の賃貸借契約における約定と同様,信頼関係破壊の法理などの枠組みの中で理解されるべきものである。「契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められない事情」の存在を要せずに原契約を解除し 得るような強力な権限を付与する規定であると解することは相当でない。 本件被告解除権付与条項によって原契約賃借人が受ける不利益は,「契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情」が存するときに,最終的な考慮の機会としての催告を受ける地位を失うというものに過ぎず,不利益の程度は極めて限定的である。 エ原告は,本件契約が,市場による是正が構造上機能しない契約であると主張するが,本件契約は,一般の消費者契約と異なるものでない。家賃債務保証業者が当事者となる保証委託契約について,市場メカニズムが機能しない特異な事情が存するとはいえない。むしろ,保証委託料は,特に競合他社との比較対象となりやすい事項であり,市場メカニズムが機能する 素地が存する。 オ本件契約が締結される場合,原契約賃貸人は,原契約が継続する限り,原契約賃借人の資力にかかわらず,家賃債務保証業者から賃料相当分の支払を受けることができる反面,原 する 素地が存する。 オ本件契約が締結される場合,原契約賃貸人は,原契約が継続する限り,原契約賃借人の資力にかかわらず,家賃債務保証業者から賃料相当分の支払を受けることができる反面,原契約が解除されて賃借物件が返還されると,その後,新たな賃貸ができるまでの間賃料相当額の収入を得られなく なる不利益(空室リスク)を負担することとなる。このように,原契約賃貸人は,本件契約締結後,原契約賃借人の資力に係るリスクを免れる一方,被告は,本件被告解除権付与条項がなければ,原契約賃貸人が原契約の解除権を行使し,原契約賃借人が建物明渡しをしない限り,原契約賃借人の負うべき債務を負い続け,その後原契約賃借人から求償を受けられないリ スクを無制限に負うこととなるのであり,このような不利益は甚大である。 (4) 争点4(本件異議不存在確認条項の解釈)について(原告の主張)本件異議不存在確認条項は,被告による無催告解除について,原契約賃借人に異議権の放棄をさせ,よって原契約賃借人に原契約解除の効力を争う権利を放棄させ,かつ,被告に対する損害賠償請求権を全部免除させる趣旨の 規定である。 本件異議不存在確認条項は,本件被告解除権付与条項の直後に続けて定められており,その文言及び形式からすると,被告による無催告解除について上記の法的効果を発生させる趣旨の条項と解するのが合理的である。 (被告の主張) 争う。 本件異議不存在確認条項は,本件契約13条1項前段記載の事由が生じた場合に,被告が原契約の無催告解除権を行使することに対し,「異議はない」ことを「確認」する趣旨の規定にすぎず,原契約賃借人にその効果を争う権利を予め放棄させるものではなく,かつ,被告の不法行為責任の全部を免除 する趣旨の規定で 行使することに対し,「異議はない」ことを「確認」する趣旨の規定にすぎず,原契約賃借人にその効果を争う権利を予め放棄させるものではなく,かつ,被告の不法行為責任の全部を免除 する趣旨の規定でもない。原契約賃借人は,本件被告解除権付与条項に係る事由が生じた場合であっても,信頼関係不破壊や無催告解除の不合理性を主張して解除の効力を争うことができる,というのが本件異議不存在確認条項の前提と解すべきである。 (5) 争点5(本件異議不存在確認条項の消費者契約法8条1項3号該当性) について(原告の主張)本件異議不存在確認条項は,被告による原契約解除権の行使が不法行為に該当する場合であっても,これによって生じた原契約賃借人の損害について,被告の民事上の賠償責任全部を免除させるものである。このような条項は, 被告の債務の履行に際してされた被告の不法行為により消費者である原契約 賃借人に生じた損害を賠償する責任の全部を免除させるものというべきであり,消費者契約法8条1項3号に該当する。 (被告の主張)争う。 前記(4)(被告の主張)記載のとおり,本件異議不存在確認条項は,本件 被告解除権付与条項に係る事由が生じた場合に,被告が原契約の無催告解除権を行使することに対し,「異議はない」ことを「確認」する趣旨の規定にすぎず,被告の不法行為に基づく損害賠償責任の全部を免除させる趣旨の規定ではない。 (6) 争点6(本件異議不存在確認条項の消費者契約法10条前段該当性)に ついて(原告の主張)原契約賃借人は,本件異議不存在確認条項の存在により,民法又は一般的な判例法理である信頼関係破壊の法理が適用される場合と比較して,より緩やかな要件の下に解除権行使を受けてしまう。また,その効果を争うことが 人は,本件異議不存在確認条項の存在により,民法又は一般的な判例法理である信頼関係破壊の法理が適用される場合と比較して,より緩やかな要件の下に解除権行使を受けてしまう。また,その効果を争うことが できず,被告に対する損害賠償請求を行うこともできなくなってしまう。このような趣旨の本件異議不存在確認条項は,任意規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する条項に該当する。 (被告の主張)否認ないし争う。 前記(4)(被告の主張)記載のとおり,原契約賃借人は,本件異議不存在確認条項の存在によっても被告による解除権行使の効果を争う権利を予め失うものではなく,かつ,被告に対する損害賠償請求権を失うものではない。 (7) 争点7(本件異議不存在確認条項の消費者契約法10条後段該当性)について (原告の主張) 本件異議不存在確認条項には,前記(6)(原告の主張)記載のような効果がある。したがって,本件異議不存在確認条項は,信義則に照らして消費者である原契約賃借人の利益を一方的に害する条項であるといえる。 (被告の主張)否認ないし争う。本件異議不存在確認条項の趣旨は,前記(4)(被告の主 張)記載のとおりであり,本件異議不存在確認条項は,信義則に照らして消費者である原契約賃借人の利益を一方的に害するものではない。 (8) 争点8(本件契約14条1項及び同条4項の解釈)について(原告の主張)ア本件契約14条1項及び同条4項は,被告が,原契約賃借人に対して事 前に通知することなく保証債務を履行することができ,かつ,被告の原契約賃借人に対する求償権の行使に関し,原契約賃借人及び同人の連帯保証人が,原契約賃貸人に対する抗弁をもって被告への支払を拒絶できない,との法的 ことなく保証債務を履行することができ,かつ,被告の原契約賃借人に対する求償権の行使に関し,原契約賃借人及び同人の連帯保証人が,原契約賃貸人に対する抗弁をもって被告への支払を拒絶できない,との法的効果を生じさせる条項である。 イそして,民法上の任意規定との関係についてみると,原契約賃借人によ る賃料の弁済,相殺,原契約賃貸人による免除,また賃借物件に瑕疵があることを理由とする賃料減額請求(民法611条1項)による賃料の減額等の事由がある場合,本件契約14条1項及び同条4項がなければ,原契約賃借人は,民法463条1項で準用する民法443条1項に基づき,同各事由を,事前通知を怠った被告に主張することができる。しかし,本件 契約14条1項及び同条4項が存することにより,事前通知を欠く場合であっても,同各事由を被告に主張することができなくなる。 また,原契約賃借人が賃料等について弁済,相殺,賃料減額請求をしたのに,そのことを受託保証人である被告に事後に通知しなかった場合,被告は,自らの代位弁済を有効なものとみなすことができる(民法463条 2項・443条2項)。この際,被告が,保証債務の履行の事前通知を 怠った場合,本件契約14条1項の特約がなければ,民法463条2項・443条2項の適用はなく,原契約賃借人は,依然として弁済,相殺及び賃料減額請求をしたことを主張することができる。しかし,本件契約14条1項及び同条4項が存することにより,被告は事前通知を発する義務を免除されることから,原契約賃借人が事後通知を怠った場合,被告の弁済 は有効なものとみなされ,原契約賃借人は原契約賃貸人に対して主張できた抗弁を被告に主張できなくなる。 (被告の主張)本件契約14条1項及び同条4項は,民法463条1項・44 ,被告の弁済 は有効なものとみなされ,原契約賃借人は原契約賃貸人に対して主張できた抗弁を被告に主張できなくなる。 (被告の主張)本件契約14条1項及び同条4項は,民法463条1項・443条1項に定める,主債務者たる原契約賃借人に対する事前通知義務を免除するもので ある。すなわち,上記条項は,被告の原契約賃借人に対する求償権の行使が制限されるとの民法463条1項・443条1項が定める法的効果を排除するものである。 本件契約14条1項及び同条4項が適用される結果,原契約賃借人は,常に「原契約賃貸人に対抗することができた事由」をもって被告に対抗するこ とができなくなる。しかし,本件契約14条4項の「原契約賃貸人に対抗することができた事由」は,原契約に基づく債務の不発生,又は弁済,免除,その他賃料債務の絶対的な消滅(不発生を含む。)を基礎付ける事由(絶対的消滅事由)を含むものではない。なぜなら,絶対的消滅事由が存する場合,その事由の限度で当然に保証債務も発生せず,又は消滅するため(成立又は 消滅における付従性),被告の原契約賃貸人に対する金員支払は「保証債務の履行」とはいえず,これを前提とする原契約賃借人に対する求償権も発生しないからである。 もっとも,被告の原契約賃貸人に対する保証債務の履行について,民法463条2項・443条2項は適用される。そして,本件契約14条1項によ り,被告の原契約賃借人に対する事前通知義務は免除されているから,事前 通知がない場合であっても民法463条2項・443条2項の適用があるものと解される。このように,原契約賃借人が,原契約賃貸人に対する賃料等の債務消滅行為(弁済,相殺等)について,連帯保証人である被告に対抗できなくなるのは,本件契約14条1項及び同条 項の適用があるものと解される。このように,原契約賃借人が,原契約賃貸人に対する賃料等の債務消滅行為(弁済,相殺等)について,連帯保証人である被告に対抗できなくなるのは,本件契約14条1項及び同条4項でなく,民法463条2項・443条2項の適用によるものに過ぎない。 (9) 争点9(本件契約14条1項及び同条4項のうち,原契約賃借人の連帯保証人に対する部分についての消費者契約法10条前段該当性)について(原告の主張)本件契約の連帯保証人は,本件契約の主債務者(原契約賃借人)が有している抗弁を援用して,債権者(被告)の請求を拒絶することができ,これは 一般的法理といえる。 本件契約14条1項及び同条4項は,被告が,保証債務の履行に先立ち,本件契約の連帯保証人に対し通知をしなかったとしても,本件契約の連帯保証人において,主債務者(原契約賃借人)が有していた抗弁を主張して,被告からの保証債務履行請求を拒むことができなくなるというものである。 よって上記の一般法理及び民法463条1項・443条1項が適用される場合に比して,消費者である上記連帯保証人の権利を制限するものである。 (被告の主張)争う。 本件契約14条1項及び同条4項は,本件契約の連帯保証人の有する権利 について何ら制限するものでなく,同人との関係で,消費者契約法10条前段に該当するものとはいえない。 (10) 争点10(本件契約14条1項及び同条4項のうち,原契約賃借人に対する部分についての消費者契約法10条後段該当性)について(原告の主張) ア本件契約14条1項及び14条4項の趣旨は,上記(8)(原告の主張) 記載のとおりである。 上記条項により,原契約賃借人が,原契約賃貸人に対して対抗することができた事由を ア本件契約14条1項及び14条4項の趣旨は,上記(8)(原告の主張) 記載のとおりである。 上記条項により,原契約賃借人が,原契約賃貸人に対して対抗することができた事由を有していたとしても,求償請求をしてきた被告に対して,上記各事由を主張することができなくなる。その結果,原契約賃借人は,賃料の二重払いに陥り,原契約賃貸人から賃料の過払い分を回収できなく なるリスクを負わされる。 また,天災により賃借物件に被害が発生した場合等において,賃貸人が修繕義務を履行しない場合,賃借人は,自ら必要な修繕を行い,賃貸人に対して,必要費償還請求権を反対債権として,毎月の賃料と対当額で相殺することが考えられる。しかし,本件契約14条1項及び同条4項による と,被告は,原契約賃借人への事前通知なく,支払期限に賃料の支払がないという一事により,原契約賃貸人に保証債務を履行し,賃貸人に求償権を行使することができ,原契約賃借人は必要費償還請求権を自働債権とする相殺をもって,被告に対して対抗することができなくなる。このような原契約賃借人の不利益は大きいものといえる。 イ民法443条1項において,事前の通知を要求し,これを怠った連帯債務者による求償を制限したのは,免責の通知を怠った過失のある求償権者よりも,過失のない被求償者を保護するという趣旨によるものである。このような趣旨は,委託を受けた連帯保証人に,事前の通知を要求し,かつこれを怠った連帯保証人による求償を制限した規定についても当てはまる。 そして,特に本件契約において,原契約賃借人が,原契約賃貸人に対して対抗することができる事由を有していたのにこれを被告に主張できなくなることの不利益と,被告が保証債務を履行したのに事前通知を怠ったために求償すること 約において,原契約賃借人が,原契約賃貸人に対して対抗することができる事由を有していたのにこれを被告に主張できなくなることの不利益と,被告が保証債務を履行したのに事前通知を怠ったために求償することができなくなる不利益とを比較すれば,前者の利益をより重視することが前記の法の趣旨にかなう。まして,被告は事業者であって, 保証債務の履行に先立ち消費者である原契約賃借人に通知を送付する態勢 を確立することは容易であるから,事前通知を不要としなければならない必要性は乏しい。 (被告の主張)アそもそも,原契約賃借人が賃料の支払をしないときに,原契約賃借人が原契約賃貸人に対して賃料請求を法的に拒絶し得る事由を有していること は多くない。よって,本件契約14条1項及び同条4項によって,原契約賃借人が不利益を受ける場面は極めて限定的である。 また,原契約賃借人は,原契約賃貸人に対して反対債権を有している場合には,たとえ被告が原契約賃貸人の請求に応じて債務を履行したことにより当月分の賃料債務と相殺する機会を失ったとしても,その翌月分以降 の賃料債務と相殺することが可能である。原契約の賃料債務について,家賃債務保証業者が,何箇月分にもわたって先払いするということはあり得ない。よって,たとえ被告からの求償請求に応じなければならないとしても,その求償請求に応じた上で改めて賃貸人に対して直接権利を行使すべきこととすれば,その不利益は相対的に小さい。 イ民法上の規定(民法463条1項・443条1項)に従うと,被告は,原契約賃借人からの抗弁事由の主張を受けるのを避けるため,保証債務の履行に先立ち,原契約賃貸人から請求を受けたことを原契約賃借人に通知する必要がある。定期給付債務である賃料債務について,保証債務の履行の都 借人からの抗弁事由の主張を受けるのを避けるため,保証債務の履行に先立ち,原契約賃貸人から請求を受けたことを原契約賃借人に通知する必要がある。定期給付債務である賃料債務について,保証債務の履行の都度このような通知をすべきコストは決して軽視できるものではない。 (11) 争点11(本件契約14条1項及び同条4項のうち,原契約賃借人の連帯保証人に対する部分についての消費者契約法10条後段該当性)について(原告の主張)本件契約の連帯保証人は,原契約において原契約賃借人の連帯保証人たる 地位にあるところ,原契約賃貸人に対する固有の抗弁事由を有していること は少なく,一般的には原契約賃借人が有していた抗弁事由を主張して,被告からの求償請求を拒絶することが想定される。 しかし,本件契約の連帯保証人は,本件契約14条1項及び同条4項により,原契約の連帯保証人として,原契約賃借人が原契約賃貸人に対して主張することのできた抗弁事由をもって,被告に対して対抗することができなく なるのであり,これは,民法上の原則と比べ,消費者である連帯保証人の利益を一方的に害するものというべきである。 (被告の主張)否認ないし争う。 (12) 争点12(本件契約18条2項2号の解釈)について (原告の主張)ア本件契約18条2項2号は,原契約賃借人が賃借物件を明け渡していないにもかかわらず,本件契約18条2項2号に掲げる要件が存する場合に,原契約賃借人が明示的に異議を述べない限り,賃借物件の「明渡しがあったものとみなす」条項である。この規定は,原契約賃借人が現実に賃借物 件の使用を終了しておらず,その占有を失っていない場合であっても,同条項に定める要件に該当する場合に,被告の判断で明渡しがあったものとみなすこ である。この規定は,原契約賃借人が現実に賃借物 件の使用を終了しておらず,その占有を失っていない場合であっても,同条項に定める要件に該当する場合に,被告の判断で明渡しがあったものとみなすことができ,これに対する反証を許さない趣旨の条項である。 そして,この条項は,本件契約18条3項,19条1項及び同条2項の規定と相まって,原契約賃借人が賃借物件に対する使用を終了しておらず 占有を失っていないにもかかわらず,①原契約賃貸人及び被告において賃借物件である建物内の動産類を任意に搬出・保管することにつき,原契約賃借人が異議を述べない旨,②上記搬出等をした日から1箇月以上搬出に係る動産類を引き取らないものについて,原契約賃借人に所有権を放棄させ,これを被告が随意処分することにつき,原契約賃借人において異議を 述べない旨,③上記搬出に係る動産類の保管料及び搬出・処分費用を原契 約賃借人が支払うこととする旨を定めたものといえる。よって,本件契約18条2項2号は,原契約賃借人が賃借物件に対する使用を終了しておらず,その占有を失っていない場合であっても,賃借物件内への立入り及び建物内等に存在する動産の任意搬出,処分等に係る全部の損害賠償責任を免除する趣旨の条項といえる。 イ本件契約18条2項2号は,被告に建物の明渡しがあったとみなす権限を付与する条項であり,その主体は被告である。そして,同項によれば,被告は,①原契約賃借人が賃料等の支払を2箇月以上怠り,②被告が合理的な手段を尽くしても原契約賃借人と連絡が取れない状況のもと,③電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から賃借物件を相当期間利用 していないものと認められ,かつ④原契約賃借人が賃借物件を再び占有使用しない意思が客観的に看取できる事情が存する もと,③電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から賃借物件を相当期間利用 していないものと認められ,かつ④原契約賃借人が賃借物件を再び占有使用しない意思が客観的に看取できる事情が存するとき,上記のとおり明渡しがあったとみなすことができるものとされているところ,被告は,①ないし④の事情が存する場合,原契約賃借人による賃借物件の使用が終了しておらず,その占有が残存しているような事態は想定しえない旨主張する。 しかし,①ないし③の事情に加え,④原契約賃借人が賃借物件を再び占有使用しない意思が客観的に看取できる事情があったとしても,原契約賃借人が賃借物件の占有使用を終了しておらず,その占有を失っていない場合も存する。もとより,本件契約18条2項2号に定める①ないし③の事情が相まって存する場合であっても,これにより直ちに原契約賃借人が賃 借物件の使用を終了したとの事実を直ちに認定することはできない。 したがって,本件契約18条2項2号は,上記アのとおり,原契約賃借人が賃借物件に対する使用を終了しておらず,その占有を失っていない場合であっても,賃借物件内への侵入及び建物内の動産の任意搬出,処分等に係る全部の損害賠償責任を免除する趣旨の条項であると解するのが相当 である。 (被告の主張)ア本件契約18条2項2号は,賃貸借契約終了に基づく法的義務履行としての「明渡し」を認めるに至らないときであっても,原契約賃借人が任意に建物から退去することにより賃借物件の使用を終了し,その占有を放棄して明渡しを志向しているものと認められる場合において,原契約賃借人 が明示的に異議を述べない限り,被告において建物の明渡しがあったものとみなすことができる旨約するものである。そして,本件契約18条3項,19条 ているものと認められる場合において,原契約賃借人 が明示的に異議を述べない限り,被告において建物の明渡しがあったものとみなすことができる旨約するものである。そして,本件契約18条3項,19条1項及び同条2項は,既に原契約賃借人が使用を終了し占有を失った後の建物について,占有侵害を伴わない態様における搬出及び処分について定めた合意であり,占有侵害を伴う搬出,処分を許容する趣旨の合意 ではない。 すなわち,一般に,原契約賃借人は,原契約終了時に原契約賃貸人に対して建物を明け渡さなければならず,具体的には,賃借物件から立ち退き,建物内にあった動産類を取り除いて,原契約賃貸人及び被告の立合いの下で原契約賃貸人に同建物の直接的な支配を移転することとなる。しかし, 原契約賃借人が賃借物件から退去し,既に賃借物件を明け渡してこれを返還したという認識又は意向を有しているにもかかわらず,法的な意味での明渡しがあったとみることが困難な場合も少なくない。そこで,このような場合でも明渡しの認識を有する原契約賃借人の認識をそん度し,原契約賃借人の明示的な異議がない限り,賃借物件内に動産類が存し,又は原契 約賃貸人に賃借物件の直接的な支配を移転する行為がなかった場合であっても,本件契約18条2項各号に定める事情が存する場合には,被告において法的な意味での「明渡し」があったものとみなすことができる旨を定めたのが同条項である。そして,このような場合に,賃借物件内に残置された動産類について,原契約賃貸人及び被告において任意に搬出・保管す ること,また被告等において搬出して保管している動産類のうち原契約賃 借人が1箇月以内に引き取らないものについて,原契約賃借人において,当該動産類全部の所有権を放棄し,以後被告が随意にこれを こと,また被告等において搬出して保管している動産類のうち原契約賃 借人が1箇月以内に引き取らないものについて,原契約賃借人において,当該動産類全部の所有権を放棄し,以後被告が随意にこれを処分することに「異議を述べない」旨を定め,さらに,これらの搬出・保管・処分に要した費用を原契約賃借人の負担とすることとしたのが,本件契約18条3項,19条1項及び同条2項である。 本件契約18条2項2号では,①原契約賃借人が賃料等の支払を2箇月以上怠り,②被告が合理的な手段を尽くしても原契約賃借人と連絡が取れない状況のもと,③電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から賃借物件を相当期間利用していないものと認められ,かつ④原契約賃借人が賃借物件を再び占有使用しない意思が客観的に看取できる事情が存すると きという要件が定められている。これらに該当する場合には,原契約賃借人による賃借物件の使用は当然に終了しており,その占有は失われている。 ①ないし④の要件を満たしているにもかかわらず,原契約賃借人による賃借物件の使用が終了しておらず,その占有が残存していると評価されるような事態は具体的には存在しない。 イ仮に,本件契約18条2項2号所定の事由が存する場合において,未だ原契約賃借人が賃借物件の使用を終了しておらず,したがって賃借物件についての占有が残存している事態があり得るとしても,上記条項をその趣旨目的に照らして解釈すると,このような場合には,上記条項を適用することはできず,被告において「明渡しがあったものとみなす」ことができ ないと解釈することとなる。 上記条項の規定が設けられた目的は,原契約賃借人が自らの意思により任意の退去をするなどして賃借物件の使用を終了したにもかかわらず,賃貸人又は被告にその連絡を ないと解釈することとなる。 上記条項の規定が設けられた目的は,原契約賃借人が自らの意思により任意の退去をするなどして賃借物件の使用を終了したにもかかわらず,賃貸人又は被告にその連絡をしないことから法的な意味における明渡しが実現されていない場合に,原契約賃借人及びその連帯保証人の債務がいたず らに拡大することを回避するという点にある。本件契約18条2項2号で は,原契約賃借人に,賃借物件を再び占有使用しない意思が客観的に看取できる事情が存することが要求されていることからも,上記の趣旨が端的に表れている。そうすると,本件契約18条2項2号は,賃借人が建物の使用を終了し,その占有を失った場合のみをその適用範囲とするものであって,原契約賃借人が賃借物件の使用を継続し,その占有が存するとき は適用範囲外であると解すべきである。 上記のような解釈は,現行法秩序上,法的手続によらない限り他人の占有を侵害・排斥することは原則としてできないことに照らしても相当である。すなわち,法的手続によらずに賃借物件の占有を侵害して行う搬出,処分(自力救済)を行うことができるのは,法的手続によったのでは権利 の実現が不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情がある場合に限られる。しかし,本件契約18条2項2号について,上記の特別事情のない場合であっても原契約賃借人の賃借物件に対する占有を侵害して行う搬出,処分をなし得るとの合意を含むとすれば,これは自力救済を容認する合意にほかならず,公序良俗に違反するために無効と 解される。本件契約に関し,当事者間にこのような合意を締結する意思があったと解釈することはできない。 (13) 争点13(本件契約18条2項2号の消費者契約法8条1項3号該当性)につ 効と 解される。本件契約に関し,当事者間にこのような合意を締結する意思があったと解釈することはできない。 (13) 争点13(本件契約18条2項2号の消費者契約法8条1項3号該当性)について(原告の主張) 上記(12)(原告の主張)のとおり,本件契約18条2項2号は,同契約18条3項,19条1項,同条2項と相まって,原契約賃借人において賃借物件の使用を終了しておらず,その占有を失っていないにもかかわらず,原契約賃借人の個別の承諾を得ることなく,賃借物件内の動産類を搬出,保管,処分することを可能とする条項である。このような行為は,原契約賃借人の 賃借物件に対する占有を違法に侵害するものとして不法行為に当たる可能性 が極めて高い。そして,本件契約18条2項2号は,同契約18条3項,19条1項,同条2項と相まって,上記のような違法行為自体に原契約賃借人が異議を述べないことを内容としており,これは被告の本件契約における債務の履行に際してされた上記不法行為により発生する損害賠償責任を全部免除させるものである。 (被告の主張)否認し,争う。本件契約18条2項2号は,被告が,賃借物件の明渡しがあったものとみなすことができる旨の規定に過ぎず,不法行為責任を免除する趣旨を含むものではない。また本件契約18条3項及び19条1項の「異議を述べない」との文言も不法行為責任を免除する趣旨を含むものではない。 一定の権限を事業者に付与する条項と,その権限の行使に関する事業者の不法行為責任を免除する条項とは明らかに次元を異にするものであり,消費者契約法8条1項3号に該当して無効となるのは後者の条項のみである。前者の条項をもって,消費者契約法8条1項3号に該当する規定とはいえない。 (14) 争点14(本件契 元を異にするものであり,消費者契約法8条1項3号に該当して無効となるのは後者の条項のみである。前者の条項をもって,消費者契約法8条1項3号に該当する規定とはいえない。 (14) 争点14(本件契約18条2項2号の消費者契約法10条前段該当性) について(原告の主張)ア本件契約18条2項2号は,本件契約18条3項,19条1項,同条2項と相まって,原契約賃借人において賃借物件の使用を終了しておらず,その占有権を失っていないにもかかわらず,明渡しがあったものとみなし, 賃借物件内の動産類を,原契約賃貸人又は被告が,法的手続を経ずに搬出,保管,処分することを認めるものである。これは,特段の事情がない限り自力救済によって権利を侵害されない,という原契約賃借人の権利を制限するものであるから,自力救済禁止の判例法理の適用による場合に比して,賃借人の権利を制限している。 裁判例では,利息制限法違反により無効となるような利率を収受するこ とを可能とする違約金支払条項について,消費者契約法10条に該当することを前提に消費者契約法12条に基づく差止めを認めている。したがって強行法規違反によって契約の条項が無効になる場合であっても,消費者契約法10条前段要件に該当しないということはできない。 イまた,消費者契約法10条において,同条に該当する条項として消費者 の不作為をもって新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項が例示されている。本件契約18条2項2号についても,その条項の定める要件が存する場合において,賃借人が明示的に異議を述べないという不作為をもって,明渡しがあったものとみなす規定であるから,消費者契約法10条前段に該当するものというべきである。 (被告の主張) 存する場合において,賃借人が明示的に異議を述べないという不作為をもって,明渡しがあったものとみなす規定であるから,消費者契約法10条前段に該当するものというべきである。 (被告の主張)ア否認し,争う。 本件契約18条2項2号は,上記(12)(被告の主張)のとおり,原契約賃借人が使用を終了し,占有を失った建物について,占有侵害を伴わない態様においてする搬出及び処分についてのみ適用される。よって, そもそも「自力救済の判例法理」を修正するものではなく,「自力救済の判例法理」の適用による場合に比して,原契約賃借人の権利を制限するものではない。 また,原告の主張は,消費者契約法10条に定める「法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は 消費者の義務を加重する」旨の主張とはいえず,公序良俗(強行規定)に違反して消費者の権利を制限する旨の主張に他ならない。現行の消費者契約法では,このような条項について,適格消費者団体に差止請求の権限が付与されているとはいえず,主張自体失当である。 原告の指摘する裁判例は,強行法規違反のみならず,強行法規違反で はないが任意規定と比較して信義則に照らし消費者の利益を一方的に害 するとの事由も主張されている事案であり,本件とは事案を異にする。 イさらに,本件契約18条2項2号は,原契約賃借人の一定の不作為のみによって賃借物件の明渡しがあったことをみなす旨の条項ではない。したがって,消費者契約法10条前段の例示規定を根拠とする原告の主張には理由がない。 (15) 争点15(本件契約18条2項2号の消費者契約法10条後段該当性)について(原告の主張)以下の事情を総合考慮すると,本件契約18条2項2号は,信義則に照ら は理由がない。 (15) 争点15(本件契約18条2項2号の消費者契約法10条後段該当性)について(原告の主張)以下の事情を総合考慮すると,本件契約18条2項2号は,信義則に照らして原契約賃借人の利益を一方的に害するものであるといえ,消費者契約法 10条後段に該当する。 ア家賃債務保証業者である被告としては,代位弁済額を低く抑えたいと考えるのが当然である。上記条項は,原契約賃借人の任意かつ現実の明渡し,又は原契約賃貸人による法的手続を待っていたのでは代位弁済額が拡大することから,実質的な自力救済による早期の明渡し実現を企図して設けら れたものである。そして,その条項は,原契約賃貸人及び被告による自力救済を認め,極めて重要な利益である原契約賃借人の賃借物件等に対する占有を侵害する内容となっており,賃借人に対して一方的にその不利益を強制するものである。 また,明け渡したとみなすための要件の判断は,被告が一方的に行うも のであるから,上記条項が,違法な行為の根拠として恣意的に利用される危険性が十分にある。 イ被告としては,原契約賃貸人の協力を得て通常の法的手続によって明渡しを実現すれば足り,上記条項がなくとも不利益はない。 法的手続に要する一定の期間分だけ,原契約賃借人の負う賃料債務等が 増加し,これにより被告の代位弁済額も増加することとなるが,被告は, 本件契約締結時,原契約賃借人から保証委託料を得ているのであるから,そのようなリスクを甘受するべきである。 ウ上記(3)(原告の主張)のとおり,原契約賃借人が,個別の契約条項について被告と交渉することは不可能である上,家賃債務保証業者を選択することも困難であるのが通常である。本件契約を締結するに際し,本件契 約18条2 張)のとおり,原契約賃借人が,個別の契約条項について被告と交渉することは不可能である上,家賃債務保証業者を選択することも困難であるのが通常である。本件契約を締結するに際し,本件契 約18条2項2号,同条3項,19条1項,同条2項のような原契約賃貸人及び被告による自力救済を許容する条項の存在を,原契約賃借人が明確に認識することは困難である。 (被告の主張)以下の事情を総合考慮すると,本件契約18条2項2号は,信義則に照ら して原契約賃借人の利益を一方的に害するものではなく,消費者契約法10条後段に該当しない。 ア本件契約18条2項2号は,上記(12)(被告の主張)のとおり,建物についての原契約賃借人の占有を侵害して行う動産類の搬出・保管,処分を許容する趣旨の合意ではなく,もとより自力救済を認める内容の合意で もない。 また,上記条項が許容する占有侵害を伴わない態様における残置物の搬出,処分は,本来的には法的手続によらずになし得るものなのであり,上記条項を根拠として,違法行為を行うことはあり得ない。 イ上記(12)(被告の主張)のとおり,原契約賃借人が賃借物件から退去 し,これを明け渡したという認識又は意向を有しているにもかかわらず,法的な意味での明渡しがあったものとみることが困難な場合も少なくない。 このような場合,法的手続を執るとなれば,少なくとも数箇月の期間と相当の費用を要することとなる。そのため,このような費用等の発生を阻止すべく,建物の明渡しがあったものとして取り扱うべき社会的要請が存在 し,かつ,予めその要件を可及的に具体的に規定する必要がある。 上記条項は,このような社会的要請を背景とする規定なのであり,仮に上記条項が無効となり,原契約賃借人が明示的に賃借物件の明渡し かつ,予めその要件を可及的に具体的に規定する必要がある。 上記条項は,このような社会的要請を背景とする規定なのであり,仮に上記条項が無効となり,原契約賃借人が明示的に賃借物件の明渡しをしない限り,法的手続によらなければならないということになれば,上記のような建物の円滑な明渡しの実現が著しく阻害され,そのコストを原契約賃借人が負担しなければならないこととなってしまう。 ウそもそも,本件契約18条2項2号は,本件契約締結後,原契約賃借人が,被告に対して異議を述べることにより,被告が明渡しがあったとみなすことを妨げることができる。よって,原契約賃借人と被告との間の情報及び交渉力の格差等によって原契約賃借人の利益が侵害されるものとはいえない。 第3 争点に対する判断等 1 証拠(甲8【枝番を付されたものをいずれも含む。】,9,11ないし14,18,28,乙2,39)及び弁論の全趣旨によれば,家賃債務保証業の概要・現状及び本件契約の契約書用紙について,以下の事実が認められる。 (1) 家賃債務保証業の概要・現状 ア家賃債務保証業者の業務の概要は,以下のとおりである。①まず,宅地建物取引業者が関与する一般的な賃貸借契約において,契約締結の際,家賃債務保証業者が予め契約条項等を定めて用意した契約書用紙を用いて,賃借人との間で家賃債務保証委託契約を,また賃貸人との間で家賃債務保証契約を締結し,賃借人から委託保証料を受領する。②その後,上記賃貸 借契約において家賃滞納などの事故が発生した場合,賃貸人からの請求に応じて滞納家賃に係る保証債務を履行し,その前後に,賃借人に対して上記保証に基づく求償権を行使しその支払を受ける。というものである。 本件契約のような家賃債務保証委託契約は,宅地建物取引業者が に応じて滞納家賃に係る保証債務を履行し,その前後に,賃借人に対して上記保証に基づく求償権を行使しその支払を受ける。というものである。 本件契約のような家賃債務保証委託契約は,宅地建物取引業者が関与する賃貸借契約の締結の直前又はこれと同時に,家賃債務保証業者が作成し た契約書用紙に賃借人及び連帯保証人が署名をすることにより締結される ことが多い(弁論の全趣旨)。 イ公益財団法人日本賃貸住宅管理協議会の内部組織として発足した家賃債務保証事業者協議会は,平成18年7月,家賃債務保証業者相互において「業務適正化に係る自主ルール」を定め,加入事業者への遵守を求めた。 また,家賃債務保証業者を構成員とする別の団体であり,被告が加入する 社団法人賃貸保証機構は,平成22年2月,「業務適正化に関する自主ルール」を定めた。 にもかかわらず,家賃債務保証業者の担当者による違法な態様の賃料取立てや,立退き強要などに関する相談が,担当部局に相当件数寄せられた。 国土交通省住宅局住宅総合整備課長は,平成21年2月16日,財団法 人日本賃貸住宅管理協会に対し,家賃債務保証業者から提出を受けた契約書面に,①文書の掲示等の手段により賃料の督促をすることを賃借人が承諾する条項,②一定の場合に,家賃債務保証業者が物件に立ち入ることを賃借人が承諾する条項,③一定の場合に,家賃債務保証業者に,物件開錠を阻害する権限を与えたり,物件の使用を禁止したりする権限を与える条 項,④一定の場合に賃貸借契約を解除する権限を家賃債務保証業者に付与する条項,⑤明渡し未了時に,賃借人の意思に反して物件内に立ち入って動産を搬出等することを認める条項など,法令に違反するおそれのある契約条項が見受けられたとして,業務の適正な実施の確保を求める文書を送 条項,⑤明渡し未了時に,賃借人の意思に反して物件内に立ち入って動産を搬出等することを認める条項など,法令に違反するおそれのある契約条項が見受けられたとして,業務の適正な実施の確保を求める文書を送付した。 ウ(ア) 他方,平成26年度に行われた公益財団法人日本賃貸住宅管理協会による調査報告書によると,住宅の賃貸人は,賃貸借契約の97パーセントにおいて何らかの保証を求めており,約6割が家賃債務保証業者を利用しているとされている。そして,平成22年度における家賃債務保証業者の利用割合が約4割(39パーセント)であったことと対比する と,高齢単身世帯の増加,人間関係の希薄化等を背景として,住宅の賃 貸借契約における家賃債務保証会社の利用が増加傾向にあるとされている。 (イ) さらに,内閣は,平成28年3月に「住生活基本計画(全国計画)」を閣議決定した,その中で住宅確保要配慮者の居住の安定の確保のため,空き家の活用促進や民間賃貸住宅を活用した新たな仕組みの構築 を含めた住宅セーフティネット機能の強化を打ち出した。これを受け,国土交通大臣の諮問機関である社会資本整備審議会の住宅宅地分科会に設置された「新たな住宅セーフティネット検討小委員会」において,「家賃債務保証について,一定の能力等を備えた適正な事業者が提供するものの活用を図るとともに,住宅確保要配慮者が事業者や保証内 容に関する情報を容易に入手できる仕組みとすること」が,具体的な施策の方向性として位置付けられた。 その後,国土交通省内で,家賃債務保証の情報提供等に関する検討会が設置され,同検討会において,任意の登録制を設けること,保証委託契約書の条項について消費者契約法等の規定に反するものを定め ないこと等が打ち出された。 (ウ) 上記 報提供等に関する検討会が設置され,同検討会において,任意の登録制を設けること,保証委託契約書の条項について消費者契約法等の規定に反するものを定め ないこと等が打ち出された。 (ウ) 上記の検討結果を踏まえ,平成29年10月25日,住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)の改正法が施行された。同法においては,住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸受託の登録制度を創設し(同法8条,17条 等),登録住宅に入居する住宅確保要配慮者の家賃債務保証を行う家賃債務保証業者のうち,一定の条件を満たすものは住宅金融支援機構による保険が受けられることとされた(同法20条)。 また,近時,高齢者等の住宅確保要配慮者に住居を確保させるための施策として,NPO法人,社会福祉協議会又は一般財団法人高齢者 住宅財団による家賃債務保証サービスの提供が行われており,地域の 居住支援協議会や地方公共団体において,民間の家賃債務保証業者と協定を締結し,高齢者等の住宅確保要配慮者を対象とした居住支援を実施する例がある。 エ国土交通大臣は,平成29年10月2日,家賃債務保証業者登録規程を定めた(甲28,平成29年国土交通省告示第898号)。この規程は, 家賃債務保証業を営む者の登録に関し必要事項を定め,その業務の適正な運営を確保することなどにより賃借人等の利益の保護を図ることを目的とするものである。同規程では,家賃債務保証業者は国土交通大臣の登録を受けることができること(3条1項)とし,その登録業者に対し,その登録申請の際,業務に係る内部規則,組織体制に関する事項や,求償権の行 使方法に関する事項を記載した書類を提出すること(4条2項),賃借人その他の者の権利利益を侵害することがない に対し,その登録申請の際,業務に係る内部規則,組織体制に関する事項や,求償権の行 使方法に関する事項を記載した書類を提出すること(4条2項),賃借人その他の者の権利利益を侵害することがないよう,適正にその業務を行うこと(11条),契約締結前及び契約締結時の書面の交付,説明(17,18条),求償権行使時の書面の交付等(19条),帳簿の備付け(20条),求償権譲渡の規制(23条)などを義務付けている。 被告は,家賃債務保証業者として国土交通大臣の登録を受けている。 (2) 本件契約の契約書用紙ア被告は,平成29年12月1日以降,「住み替えかんたんシステム保証契約書」と題する契約書用紙を用いて,本件契約に係る意思表示を行っている。本件契約の内容は,別紙3「<住み替えかんたんシステム>フォー シーズ(株)保証契約条項」記載のとおりである。同条項において,甲は原契約賃貸人,乙は原契約賃借人,丙は連帯保証人,丁は被告を意味する。 イ本件契約の契約書用紙は,保証サービスに関する重要事項の説明書(A4の大きさ),住み替えかんたんシステム保証申込書(概ねA4の大きさ)及び住み替えかんたんシステム保証契約書3通(A3の大きさのカーボン 用紙)が,上記の順番で一体として綴られている。 上記の重要事項の説明書には,①申込先の保証会社の名称及び問い合わせ先,②保証債務の範囲及び限度額,③保証期間,④保証委託料の額,⑤賃料等及び変動費の延滞時の取扱い,⑥事前求償,⑦その他の事項として明渡し時の費用負担等の内容が記載され,その下部には日付及び賃借人の署名欄が設けられている。このうち⑤には,賃借人が金員の支払を延滞し たときは,賃借人に連絡をすることなく,被告が賃貸人への支払を行うこと,賃借人が賃料の支払を れ,その下部には日付及び賃借人の署名欄が設けられている。このうち⑤には,賃借人が金員の支払を延滞し たときは,賃借人に連絡をすることなく,被告が賃貸人への支払を行うこと,賃借人が賃料の支払を3箇月分以上怠ったときは,賃貸人が無催告にて契約を解除することができること,支払を怠った賃料等及び変動費の合計額が賃料3箇月分以上に達したときは,被告が無催告で契約を解除することができることが記載されている。 上記重要事項の説明書の次頁には,住み替えかんたんシステム保証申込書及び住み替えかんたんシステム保証契約書3通がつづられ,上記保証申込書にボールペンで賃借人,連帯保証人及び賃貸人の氏名等を記入すると,その筆圧により,その下にある住み替えかんたんシステム保証契約書3通のカーボン用紙に同様の内容が記載されるようになっている。住み替えか んたんシステム保証契約書はA3のサイズであり,その表面右側及び裏面左側に,本件契約の条項が印字されている。 2 本件契約の性質及び趣旨の検討(1) 本件契約は,原契約賃貸人と原契約賃借人との間で賃貸借契約(原契約)が締結され,原契約賃借人のために個人保証人との間で連帯保証契約が締結 されることを前提として,原契約賃借人が,家賃債務保証業者である被告に対し,原契約賃貸人との間で保証契約を締結することを委託し,原契約賃貸人と被告が連帯保証契約を締結すること(本件契約4条,6条)を主たる内容とする契約である。また,本件契約には,被告が,原契約賃借人に対する事前ないし事後求償権その他の債権に係る人的担保として,個人連帯保証人 との間で連帯保証契約を締結する内容が含まれている。 そして,原契約賃借人と被告との間の保証委託契約に関しては,原契約賃借人の被告に対する保証委託料 担保として,個人連帯保証人 との間で連帯保証契約を締結する内容が含まれている。 そして,原契約賃借人と被告との間の保証委託契約に関しては,原契約賃借人の被告に対する保証委託料の支払義務(本件契約8条,9条),原契約賃借人の被告に対する各事由の通知,報告事務(本件契約11条)などのほか,本件の争点となっている本件被告解除権付与条項及び本件異議不存在確認条項(本件契約13条),事前通知義務免除及び抗弁放棄条項(本件契約 14条1項,4項),被告による明渡しみなし条項(本件契約18条2項)の各特約が含まれている。また,原契約賃貸人と被告との間の連帯保証契約についても,保証債務の範囲に関する定め(本件契約6条),原契約賃貸人による報告義務等(本件契約10条),建物明渡しに係る法的手続への協力義務(本件契約第17条)等が定められている。 このように,本件契約は,原契約(賃貸借契約)の存在を前提として,被告と原契約賃貸人との間で締結される連帯保証契約,被告と原契約賃借人との間で締結される保証委託契約,及び原契約賃借人の被告に対する求償金債務に係る,被告と個人連帯保証人との間の連帯保証契約の複合契約であると解することができる。 また,本件契約には,本件被告解除権付与条項(本件契約13条1項)など原契約の帰趨そのものに関する条項や,被告による明渡しのみなし条項(本件18条2項)など原契約の債務の履行に関する条項も含まれている。 これらの条項は,原契約に基づいて原契約当事者が負う権利義務自体に変容をもたらすものであって,原契約の特約として位置付けられる。 (2) 前提事実,証拠(甲7,乙2)及び弁論の全趣旨によれば,家賃債務保証業には以下のような機能があると認められる。 ア賃貸人はその所有建物 あって,原契約の特約として位置付けられる。 (2) 前提事実,証拠(甲7,乙2)及び弁論の全趣旨によれば,家賃債務保証業には以下のような機能があると認められる。 ア賃貸人はその所有建物を賃貸するにあたって,賃借人の賃料不払による未収リスクを抱えており,賃借人の資力の有無に強い関心を有している。 また,個人保証を徴求しても,保証人自身から契約を否認され,または保 証人自身の資力の問題で担保として機能しない場合もある。しかし,本件 契約のような家賃債務保証契約を締結したときは,当該業者の資力に問題があるという例外的な場合でない限りは,当該業者から迅速,確実に滞納家賃を回収することができ,その賃料の未収リスクを大幅に低減することができる。 イ他方,賃借人の立場からすると,家賃債務保証業者による機関保証を受 けることにより,賃借人自身の資力を補う信用供与を受けることができ,よって住居となる建物を賃借することが容易となる。特に,賃借人側に,保証人となるような個人的関係者が存しない場合であっても,家賃債務保証契約の締結により,個人保証人なしでの契約締結が可能となる場合もあり得る。 ウこのように,家賃債務保証契約には,賃貸借契約の当事者双方にメリットが存するものといえる。近時,「新たな住宅セーフティネット検討小委員会」最終とりまとめ(甲20)において,新たな住宅セーフティネット制度の構築に当たり,家賃債務保証について,適正な事業者が提供するものを前提としつつ,その活用を図ることや,住宅確保要配慮者がその事業 者や補償内容に関する情報を容易に入手できる仕組みを整えることが指摘されているのも,上記のメリットを前提としているものと解される。 (3) 以上を前提に,以下各争点について検討する。 3 争 者や補償内容に関する情報を容易に入手できる仕組みを整えることが指摘されているのも,上記のメリットを前提としているものと解される。 (3) 以上を前提に,以下各争点について検討する。 3 争点1(本件被告解除権付与条項の解釈)について(1) 本件被告解除権付与条項では,被告が,原契約賃借人による滞納賃料等 及び変動費の合計額が賃料3箇月分以上に達した場合,被告は原契約を無催告にて解除することができるとしており,その条項の文言上,原契約賃貸人と原契約賃借人との間の信頼関係が破壊されるに至ったことその他の要件は設けられていない。本件契約13条4項において,原契約賃貸人が催告なくして原契約を解除するための要件として,原契約賃借人が賃料の支払を3箇 月分以上怠ったことのほか,「原契約賃借人に賃料の支払能力がないことが 明らかとなり,原契約における賃貸人・賃借人者間の信頼関係が破壊された場合」という要件が設けられているのとは異なっている。 しかし,一般に,家屋の賃貸借契約において,賃借人が賃料を1箇月分でも遅滞したときは催告を要せず契約を解除することができる旨を定めた特約条項については,賃貸借契約が当事者間の信頼関係を基礎とする継続的契約 関係であることに鑑み,賃料が約定の期日に支払われず,これがため契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められない事情が存する場合に,無催告での解除権の行使を許す旨を定めた規定であると解されている(最高裁昭和43年判決)。このように,賃貸借契約に無催告解除特約が存する場合であっても,無催告解除が許容されるのは,賃料の不払に より,契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められない事情が存する場合に限られるものと解される。 そして, する場合であっても,無催告解除が許容されるのは,賃料の不払に より,契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められない事情が存する場合に限られるものと解される。 そして,前記のとおり,本件被告解除権付与条項は,原契約の特約として位置付けられるものである。本件被告解除権付与条項に基づく被告の解除権が,原契約賃貸人の解除権と同様,賃貸借契約を終了させ,賃借物件を明け 渡させるための手段として行使されるものであること,最高裁昭和43年判決に判示されるように,不動産賃貸借契約における賃貸人による解除特約については,継続的契約の当事者間の信頼関係を基礎とする限定解釈を及ぼすことが一般的であることに鑑みると,本件被告解除権付与条項についても,家屋賃貸借契約が当事者間の信頼関係を基礎とする継続的契約であることを 基礎とする信頼関係破壊の法理を前提としたものであると理解すべきである。 したがって,本件被告解除権付与条項は,原契約賃借人が賃料等及び変動費の支払を賃料3箇月分以上怠り,これがため原契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合に限り,被告が無催告で解除権を行使することができる旨を定めた規定である と解するのが相当である。 (2) これに対し,原告は,本件被告解除権付与条項について,原契約賃借人に有利となるような要件が加重されているものと読むことはできず,本件被告解除権付与条項は,原契約賃借人に3箇月分以上の賃料等及び変動費の不払がある場合には,被告に無催告解除権が直ちに付与される条項であると解すべきである旨主張する。 消費者契約法12条に基づく意思表示等の差止めの可否が問題となる契約条項の解釈に当たっては,当該消費者契約の条項の文 告に無催告解除権が直ちに付与される条項であると解すべきである旨主張する。 消費者契約法12条に基づく意思表示等の差止めの可否が問題となる契約条項の解釈に当たっては,当該消費者契約の条項の文言を基礎とした解釈をすることが重要であるが,その文言のみによって,本件被告解除権付与条項を,原契約賃貸人が民法その他の一般的法理に基づき有する解除権よりも緩やかな要件で原契約を解除する権限を付与した条項であると解釈するのは相 当とはいえない。上記(1)で説示したところに照らせば,本件被告解除権付与条項は,原契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合に限り,被告が無催告で解除権を行使することができる旨を定めた規定と解されるものである。これは,最高裁昭和43年判決等を基礎とする一般的法理に照らした解釈であり,消費者契約 法に基づく意思表示の差止めを免れるために恣意的にその適用範囲を狭めようとする事業者による目的論的解釈とは異なる。 よって,原告の上記主張は採用することができない。 4 争点2(本件被告解除権付与条項の消費者契約法10条前段該当性)について (1)ア民法は,契約の解除権をその当事者が行使するものとしており(民法541条),契約の帰趨については契約当事者のみの自由な意思に基づいて決せられ,第三者からの介入を受けない,というのが一般的な法理として存するものといえる。しかし,本件被告解除権付与条項は,原契約について,第三者たる被告に,その契約関係を一方的に終了させる権限を与え るものである。よって,本件被告解除権付与条項は,民法541条又は民 法上の一般的な法理と比較して,原契約賃借人の権利を制限するものといえ,また,原契約の債務の履行を怠ること 与え るものである。よって,本件被告解除権付与条項は,民法541条又は民 法上の一般的な法理と比較して,原契約賃借人の権利を制限するものといえ,また,原契約の債務の履行を怠ることにより,被告から解除権を行使される地位に立たされるという点で,原契約賃借人の義務を加重するものといえる。 イこれに対し,被告は,本件被告解除権付与条項は,原契約の解除を免れ ない事由が生じた場合に原契約の解除権限を被告に付与したものであって,原契約賃借人に何らかの義務を課するものでない旨主張する。 しかし,原契約の消長がその当事者でない被告によって決せられるということ自体により,原契約賃借人の権利を制限するものということができる。また,原契約賃借人の債務不履行が存し,原契約の解除を免れない事 由が生じた場合であっても,実際にどの程度著しい債務不履行に達したときに解除権を行使するかについては,当該契約の賃貸人によって異なることもあり得る。そして,本件被告解除権付与条項があることによって,原契約賃貸人においては未だ解除権を行使しない程度の事由であっても,被告が解除権を行使することによって原契約が終了させられる,という原契 約賃借人にとっての事実上の不利益があることは否定できない。 よって,被告の上記主張は採用することができない。 (2) 以上によれば,本件被告解除権付与条項は,原契約の当事者ではない被告に無催告解除権を付与するとの点において,消費者契約法10条前段の該当性を肯定することできる。なお,原告は,本件被告解除権付与条項が,催 告による解除権ではなく,無催告解除権を被告に付与している点においても,消費者契約法10条前段該当性が認められる旨主張するが,上記3で認定説示したとおり,本件被告解除権付与条項は,解 が,催 告による解除権ではなく,無催告解除権を被告に付与している点においても,消費者契約法10条前段該当性が認められる旨主張するが,上記3で認定説示したとおり,本件被告解除権付与条項は,解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められない事情が存する場合に無催告で解除権の行使を許す旨を定めたものであり,一般的な法理と同趣旨の定めがされてい るものと解されるのであって,この点については,民法その他の法律の公の 秩序に関しない規定の適用による場合に比し,原契約賃借人の権利を制限し,義務を加重するものとはいえない。 5 争点3(本件被告解除権付与条項の消費者契約法10条後段該当性)について(1) 以上を踏まえ,本件被告解除権付与条項が,消費者である原契約賃借人 を一方的に害するものといえるかについて検討する。 ア本件契約において,被告は,原契約賃貸人に対し,賃料,管理費・共益費その他の固定費(賃料等),光熱費等の変動費のうちの上限額,原契約終了の日の翌日から本件建物明渡し済みまでの各月分の賃料等に相当する損害金債務及び原状回復費用等(これは賃料2箇月分を限度とする。)に ついて,保証人としてその債務の支払義務を負う。このうち,賃料相当損害金の保証範囲は,最長で48箇月分とされている(民法446条2項,本件契約6条1項,4項)。したがって,本件契約を締結した原契約賃貸人は,原契約に基づき賃借物件を引き渡した後,その賃料等について,原契約賃借人が約定通りに弁済する場合にはこれを受領し,原契約賃借人が その支払を滞納した場合は,本件契約に基づく原契約賃貸人の義務(本件契約10条1項等)を履行すれば,被告からその保証債務の履行を受けることができるという点で,被告の資力に問題が生じない限りは その支払を滞納した場合は,本件契約に基づく原契約賃貸人の義務(本件契約10条1項等)を履行すれば,被告からその保証債務の履行を受けることができるという点で,被告の資力に問題が生じない限りは,賃料等の未払リスクを免れることができる,ということができる。他方,被告は,原契約賃借人の賃料滞納が発生した場合にその滞納分を支払い,よって, 原契約賃貸人に代わって原契約賃借人による求償債務未払のリスクを負担し,かつ,原契約賃借人が賃料不払を継続することによる保証債務拡大のリスクを負担することとなる。すなわち,本件契約締結後,原契約賃貸人は,原契約賃借人による賃料等の支払状況について特に注意せずとも,原契約賃借人又は被告から賃料等を概ね確実に全額受領できる地位を取得す る反面,被告は,原契約賃借人による賃料等の不払を填補し,かつ,原契 約賃借人から求償債務の支払を受けられないリスクを負担することとなる。 そこで,このような原契約賃貸人と被告との利害関係を修正し,原契約賃借人の一時的でない賃料不払が発生したときに原契約を継続させるか否かの判断及び決定権限を,原契約賃貸人だけでなく被告にも付与することにより,被告が負担するリスクの一部を原契約賃貸人に負担させようとす るのが,本件被告解除権付与条項であるとみることができる。このように,本件被告解除権付与条項は,原契約賃貸人と被告との間のリスク分配に関する約定であるとみることができるところ,被告は,原契約の当事者ではないものの,原契約から生じるリスクを負担するのであるから,このような立場にある被告に原契約の解除権を付与し,自らの負担するリスクをコ ントロールすることができる権限を与えることは,格別不合理なことではないといえる。 イ他方,原契約賃借人は,本件 のような立場にある被告に原契約の解除権を付与し,自らの負担するリスクをコ ントロールすることができる権限を与えることは,格別不合理なことではないといえる。 イ他方,原契約賃借人は,本件被告解除権付与条項により,原契約当事者でない被告の判断によって,原契約が一方的に終了させられるという不利益を受けることとなる。しかし,被告が無催告解除権を行使し得るのは, 原契約賃借人が賃料等及び変動費について賃料3箇月分以上を滞納し,かつ,これがため契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められない事情が存する場合に限られる。そして,仮に原契約賃貸人との間で,本件被告解除権付与条項と同内容の無催告解除特約が締結されているとすれば,原契約賃借人が賃料等及び変動費について併せて賃料 3箇月分以上を滞納し,これがため契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められない事情が存する場合には,原契約賃借人は,原契約が一方的に終了させられるという不利益を受忍せざるを得ない地位にある。 そうすると,本件被告解除権付与条項の行使条件は,一般的な無催告解 除特約に比して原契約賃借人にとって格別不利益なものであるとはいえず, 無催告解除権が原契約当事者でない被告に付与されたことによる原契約賃借人の不利益は限定的なものにとどまるものということができる。 (2)アこれに対し,原告は,本件被告解除権付与条項により,解除権行使及び明渡訴訟という法律事務を被告が継続的・組織的に扱うことになり,弁護士法72条が想定する弊害が生ずるおそれがある旨主張する。しかし, 本件被告解除権付与条項は,飽くまでも,原契約について原契約賃貸人がこれを解除することができる事情の存するときに,被告に対して原契約の解 が想定する弊害が生ずるおそれがある旨主張する。しかし, 本件被告解除権付与条項は,飽くまでも,原契約について原契約賃貸人がこれを解除することができる事情の存するときに,被告に対して原契約の解除権限を付与する趣旨の条項であって,原契約の解除権行使を背景に,被告に対して立退き交渉を許容するまでの趣旨を含むものではない。また,本件全証拠によっても,被告に原契約の解除権を付与することにより,従 前と比較して,弁護士法72条に反する違法な立退き交渉や明渡交渉が行われる危険性がどの程度高まるのかは定かではない。そして,被告は,国土交通大臣の定めた家賃債務保証業者登録規程に基づく登録をしており,同規程に基づき,原契約賃借人の権利を侵害する行為を行えば,その登録の取消し等の不利益を受けることが想定される。 上記の各事情を総合的に見れば,弁護士法72条が想定する弊害の発生のおそれを考慮しても,本件被告解除権付与条項が,信義則に照らして消費者である賃借人を一方的に害するものということはできない。 イまた,原告は,本件被告解除権付与条項について,受託保証人である被告に対して,原契約解除権を付与する点で利益相反性があると主張する。 (ア) 本件契約において受託保証人である被告は,原契約賃借人との間の保証委託契約に基づき,善良な管理者の注意をもって委任事務を処理すべき義務を負う(民法644条)。しかし,被告がこのような義務を負うことと,債権者である原契約賃貸人において原契約を解除し得るときに,保証受託者である被告も原契約を解除し得るとすることと は,必ずしも矛盾抵触するものであるとはいえない。一般に,賃借人 の債務を主たる債務とする保証人は,賃借人の債務不履行(賃料の不払,善管注意義務違反等)によりその保証債 することと は,必ずしも矛盾抵触するものであるとはいえない。一般に,賃借人 の債務を主たる債務とする保証人は,賃借人の債務不履行(賃料の不払,善管注意義務違反等)によりその保証債務額が高額になるおそれがあることから,その保証債務額の不当な高額化を抑止するための措置を採ることは必ずしも不当なことではない。 (イ) 原告は,原契約賃借人から受領する保証委託料を収益源としている 被告が,自ら原契約の解除権を行使することは,その後の立退き訴訟の代行と相まって,賃貸人が自らの費用で明渡訴訟を提起するという従前の実務を変更するもので,原契約賃借人への不利益が大きいとも主張する。 しかし,原契約賃借人が,本件契約によって被告から解除権を行使 されるのは,前記のとおり原契約賃貸人から解除権を行使され得る事情が存するときに限られる。また,本件契約における保証委託料は,初年度は賃料等1箇月分(及び変動費上限分),その後は,被告が保証債務を履行した回数が1回以下の場合は1万円,2回以下の場合は3万円と定められており(本件契約9条1項,3項),不当に高額な 約定がされているわけではない。このような事情に鑑みると,被告の収益源が原契約賃借人の支払う保証委託料であるとしても,被告が,上記の場合に限って,自ら解除権を行使することが,原契約賃借人との関係で著しく不当とはいえない。 (ウ) 以上によれば,利益相反性を理由として本件被告解除権付与条項が 原契約賃借人を一方的に害するものであるとする原告の主張は採用することができない。 ウ原告は,本件契約は,消費者である原契約賃借人において他の業者を選択する機会がないため,市場による是正が機能せず,情報の質及び量並びに交渉力の格差により消費者が契約を余儀なくされる条項 い。 ウ原告は,本件契約は,消費者である原契約賃借人において他の業者を選択する機会がないため,市場による是正が機能せず,情報の質及び量並びに交渉力の格差により消費者が契約を余儀なくされる条項の典型例である と主張する。 前記第3の1(1)アのとおり,本件契約のような家賃債務保証委託契約は,宅地建物取引業者が関与する賃貸借契約の締結の直前又はこれと同時に,家賃債務保証業者が作成した契約書用紙に賃借人及び連帯保証人が署名をすることにより締結されることが多いと認められる。このように,賃借人において,入居する建物を検討する際に,当該賃貸借契約と 併せて締結すべき家賃債務保証委託契約の内容を子細に検討する機会は乏しいともいえる。しかし,本件全証拠によるも,本件契約が,他の一般の消費者契約に比して,特に市場メカニズムが機能しない契約であると認めることはできない。このことに上記(1)で検討したところを総合すれば,原告が主張するところを勘案しても,未だ,本件被告解除権付与 条項が原契約賃借人を一方的に害するものであるとは認められない。 (3) 以上に検討したところによれば,本件被告解除権付与条項が,消費者契約法10条後段に該当するとの原告の主張は採用できず,本件条項1に係る意思表示の差止めの請求(前記第1の1(1))には理由がない。 6 争点4ないし争点6(本件異議不存在確認条項の解釈,消費者契約法8条1 項3号及び10条前段の各該当性)について(1) 原告は,本件異議不存在確認条項は,被告による無催告解除について,原契約賃借人に異議権の放棄をさせ,よって原契約賃借人に対して原契約解除の効力を争う権利を放棄させ,かつ,被告に対する損害賠償請求権を全部免除させる趣旨の規定である,と主張する。 て,原契約賃借人に異議権の放棄をさせ,よって原契約賃借人に対して原契約解除の効力を争う権利を放棄させ,かつ,被告に対する損害賠償請求権を全部免除させる趣旨の規定である,と主張する。 しかし,本件異議不存在確認条項の前提たる本件被告解除権付与条項については,原契約賃借人が賃料等及び変動費の支払を賃料3箇月分以上怠り,これがため原契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合に限り,被告が無催告で解除権を行使することができる旨を定めた規定であると解されることは,前記3で述べた とおりである。かかる解釈を前提とすれば,上記の要件を満たさない被告の 解除権行使は無効であると解されるところ,本件異議不存在確認条項には,このように無効と解される解除権行使がされた場合において,原契約賃借人が被告に対して取得する損害賠償請求権等の法的権利を放棄させたり,そもそも無効と解されるべき被告の解除権行使について,これを争う利益を放棄させたりするとの趣旨を読み取ることはできない。そうすると,本件異議不 存在確認条項は,本件被告解除権付与条項に基づく被告の有効な無催告解除権の行使について,原契約賃借人が「異議がない」ことを確認する旨の条項にすぎず,無効な解除権の行使の効力等を争う権利を放棄させる条項と解釈する余地はなく,また,被告に対する損害賠償請求権を免除させる条項と解釈する余地もないというべきである。これに反する原告の主張は,以上にお いて説示したところに照らし,採用することができない。 (2) そして,本件異議不存在確認条項を上記の趣旨に解することを前提とすると,本件異議不存在確認条項は,原契約賃借人が有すべき損害賠償請求権を放棄させたり,原契約賃借人においてその効力を争 い。 (2) そして,本件異議不存在確認条項を上記の趣旨に解することを前提とすると,本件異議不存在確認条項は,原契約賃借人が有すべき損害賠償請求権を放棄させたり,原契約賃借人においてその効力を争う権利を放棄させたりする条項とはいえないから,消費者契約法8条1項3号に該当するものとは いえず,また同法10条前段に該当するものともいえない。 (3) したがって,争点7について検討するまでもなく,本件異議不存在確認条項が,消費者契約法8条1項3号又は同法10条に該当するとの原告の主張は採用できず,本件条項2に係る意思表示の差止め請求(前記第1の1(2))には理由がない。 7 争点8(本件契約14条1項及び同条4項の解釈)について(1) 本件契約14条1項についてア本件契約14条1項は,原契約賃借人の連帯保証人たる地位にある被告が,原契約賃貸人に対して保証債務を履行するとき,原契約賃借人に対する事前の通知義務を免除するものである。 すなわち,現行民法上,保証人が,債権者から履行の請求を受けたこと を他の主債務者に通知しないで弁済するなどした場合,主債務者は,債権者に対抗することができる事由を有していたときは,その事由をもって弁済等をした連帯保証人に対抗できるものとされている(民法463条1項・443条1項)。本件契約14条1項は,この民法上の任意規定に対する特約である。 民法463条1項で準用される同法443条1項によれば,保証人から主債務者に対して求償金を請求されたとき,主債務者は,保証人に対する抗弁として,「債権者に対抗することができる事由」を主張することができる。そして,保証人は,これに対し,民法463条1項・443条1項に基づき,債権者から履行の請求を受けたこと(又は保証債務を する抗弁として,「債権者に対抗することができる事由」を主張することができる。そして,保証人は,これに対し,民法463条1項・443条1項に基づき,債権者から履行の請求を受けたこと(又は保証債務を履行する こと)を事前に主債務者に通知したことを主張し,よって主債務者の上記抗弁を排斥することができる。したがって,本件契約14条1項は,単に被告が保証債務を履行する際において,原契約賃借人に対する事前の通知義務を免除するというものに止まらず,被告の求償金請求に対し,原契約賃借人が「債権者に対抗することができる事由」(民法463条1項・4 43条1項)を抗弁として主張するのを予め妨げる効力を有するものと解される。すなわち,本件契約14条1項のような事前通知免除の合意をしたとの事実は,原契約賃借人の「債権者に対抗することができる事由」に係る抗弁に対する別の再抗弁として機能するものといえる。 イもっとも,ここでいう主債務者の「債権者に対抗することができる事由」 (民法463条1項・443条1項)には,主債務者が債権者に対して同種の反対債権を有していたこと(これにより相殺適状の状態にあったこと)は含まれる一方,債務の不発生,弁済,免除など,主債務自体の消滅(不発生を含む。)を基礎付ける事由(絶対的消滅事由)については,含まれないものと解すべきである。主債務者による弁済や,債権者による免除に より主債務自体が消滅した場合,保証債務の付従性(民法446条)から, 保証債務自体も消滅する。したがって,主債務者は,保証人による保証債務の履行がないとして,保証人による求償金請求を排斥することができる。 このように,保証人の事前通知義務を免除する合意が締結されていたとしても,保証人による求償金請求に対し,主債務者が,「保証 保証債務の履行がないとして,保証人による求償金請求を排斥することができる。 このように,保証人の事前通知義務を免除する合意が締結されていたとしても,保証人による求償金請求に対し,主債務者が,「保証債務の履行よりも先に主債務を弁済したこと」などの絶対的消滅事由を抗弁として主張 することは排斥されないと解される。 ウ他方,本件契約14条1項は,保証人である被告の事前通知義務を免除することにより,被告の原契約賃貸人に対する金員支払等について,民法463条2項・443条2項の適用場面を拡大する効果も有する。 すなわち,民法上,主債務者は,主債務を弁済したときは,委託を受け た保証人に対し,これを遅滞なく通知する義務がある。そして,主債務者がこの通知を怠った場合,保証人が,善意で保証債務の弁済として金員を支払ったときは,自らの弁済を有効であったものとみなすことができるものとされている(以上につき,民法463条2項・443条2項)。もっとも,民法上,保証人も,主債務者に対して,弁済の前に事前通知をする 義務を負っている(民法463条1項・443条1項)ところ,主債務者に対する事前通知義務を懈怠して保証人が債権者に金員を支払った場合,当該保証人は,既に弁済等により免責を得ていた主債務者に対し,民法463条2項・443条2項の規定により自己の弁済を有効であるとみなすことはできないものと解されている(最高裁昭和57年12月17日第二 小法廷判決民集36巻12号2399頁参照)。 そして,保証人の主債務者に対する事前通知義務を免除する特約が存する場合は,保証人は上記義務をそもそも負わないのであるから,主債務者への事前通知なくして民法463条2項・443条2項の規定により自己の弁済を有効であるとみなすことができるものと解さ する特約が存する場合は,保証人は上記義務をそもそも負わないのであるから,主債務者への事前通知なくして民法463条2項・443条2項の規定により自己の弁済を有効であるとみなすことができるものと解される。 以上の内容を,本件契約に即して検討すると,被告が,保証債務を履行 したとして原契約賃借人に対して求償金請求をした場合において,原契約賃借人から,被告より先に原契約賃貸人に対して主債務に係る弁済をした旨の抗弁を主張されたとき,被告は,民法の規定に従えば,自己の弁済を有効であるとみなすため,①原契約賃借人が主債務の弁済に係る事後通知を怠ったこと,②保証債務履行時,主債務につき弁済されていたことにつ き善意であったこと,③自己の保証債務の履行を有効とみなす旨の意思表示をしたことに加え,④被告が,保証債務の履行に先立って主債務者に通知をしたことを主張する必要がある。しかし,本件契約14条1項によれば,被告の原契約賃借人に対する事前通知義務が免除されているから,上記④に代わり,④’本件契約14条1項に係る合意をしたことを主張立証 すれば足りることとなる。そうすると,被告は,本件契約14条1項の定めにより,原契約賃借人に対する事前通知なくして,民法463条2項・443条2項の適用により自己の弁済を有効とみなすことができることとなり,上記条項により被告が保護される範囲が拡大されるものということができる。 エ以上の検討によれば,本件契約14条1項は,①被告の原契約賃借人に対する求償金請求について,原契約賃借人が被告に対し「債権者に対抗することができる事由」を主張することを妨げ,②被告が事前通知なくして弁済等をした場合であっても,民法463条2項・443条2項に基づき,有効な弁済等であったものとみなすことを に対し「債権者に対抗することができる事由」を主張することを妨げ,②被告が事前通知なくして弁済等をした場合であっても,民法463条2項・443条2項に基づき,有効な弁済等であったものとみなすことを可能とする点で,民法のみが適 用される場合とは異なる効果を有するものといえる。 (2) 本件契約14条3項及び同条項に基づく被告の法的地位本件契約14条3項は,原契約賃借人が原契約の支払期限後に原契約上の債務を履行した場合であって,その履行前に原契約賃貸人が被告に連帯保証債務の履行を請求していたときは,原契約賃借人は,①被告の保証債務の履 行に先立って自己の債務を履行し,②これを書面で被告に通知しない限り, 被告への償還義務を免れないものと定めている。これにより,被告は,保証債務を履行したとして原契約賃借人に求償金請求をした場合において,原契約賃借人から,被告より先に(ただし,原契約の支払期限後に)原契約賃貸人に対して主債務に係る弁済をした旨の抗弁を主張されたとき,i「原契約賃貸人が被告に対して保証債務の履行を請求したこと」,ii「i の請求が, 原契約賃借人による債務の履行前にされたこと」を,原契約賃借人の上記抗弁に対する反論として主張することができる。他方,原契約賃借人が,被告の保証債務の履行に先立って,自己の債務履行の事実を被告に書面で通知したことが,上記再抗弁に対する原契約賃借人の再反論として位置付けられる。 このように,被告は,原契約賃借人から主債務の弁済をした旨の抗弁を主張 された場合,民法463条2項・443条2項の要件該当事実と,本件契約14条3項該当事実のいずれかを主張することができる。 (3) 本件契約14条4項についてア本件契約14条4項は,原契約賃借人及びその連帯保証人は,被告 ・443条2項の要件該当事実と,本件契約14条3項該当事実のいずれかを主張することができる。 (3) 本件契約14条4項についてア本件契約14条4項は,原契約賃借人及びその連帯保証人は,被告から本件契約14条2項に基づく償還請求を受けたときに,原契約賃貸人に対 する抗弁をもって,被告への支払を拒むことができないことを予め承諾すると定めている。 同条項の適用される場面について,文言上,被告から本件契約14条2項に基づく償還請求を受けたときという限定が付されており,本件契約14条2項によれば,被告の原契約賃借人に対する償還請求は,「被告が前 項(本件契約14条1項)の保証債務の履行を行ったとき」に行い得るものとされている。そうすると,本件契約14条4項が適用されるのは,被告が本件契約に係る保証債務の履行をしたときに限られるものというべきである。そして,被告による金員支払より先に原契約賃借人が主債務の弁済等をしていたとしても,民法463条2項・443条2項,又は本件契 約14条3項により,被告が,原契約賃借人に対し,自らの保証債務の履 行が有効である旨主張できる場合は,「被告が本件契約14条1項の保証債務の履行を行ったとき」に当たり,本件契約14条4項の適用がある。 イまた,本件契約14条4項に定める「甲(原契約賃貸人)に対する抗弁」は,その文言に照らし,原契約賃借人及びその連帯保証人が,原契約賃貸人に主張できる事由が広く含まれるものと解されるところ,天災など,原 契約賃貸人の責めに帰すことができない事由により原契約目的物である建物が一部滅失し,又は一部損壊し修繕を要する状態となった際の,原契約賃借人の原契約賃貸人に対する同時履行の抗弁,建物修繕費などの必要費償還請求権(民法608条1項)及び 由により原契約目的物である建物が一部滅失し,又は一部損壊し修繕を要する状態となった際の,原契約賃借人の原契約賃貸人に対する同時履行の抗弁,建物修繕費などの必要費償還請求権(民法608条1項)及び賃借物件の一部滅失を原因とする原契約賃貸人に対する賃料減額請求権(民法611条1項)などは,いずれ も本件14条4項の適用により,被告に対してこれらを主張して償還請求を拒絶することはできなくなるものと解される。 8 本件契約14条1項及び同条4項の消費者契約法10条前段該当性について(争点9(同条項のうち,原契約賃借人の連帯保証人に対する部分についての消費者契約法10条前段該当性)に対する検討を含む。) 前記7で検討したとおり,本件契約14条1項には,①被告の原契約賃借人に対する求償金請求について,原契約賃借人が被告に対し「債権者に対抗することができる事由」(民法463条1項・443条1項)を主張することを妨げ,②被告が事前通知なくして弁済等をした場合であっても,民法463条2項・443条2項に基づき,有効な弁済等であったものとみなすことを可能と する効果がある。また本件契約14条4項には,被告が原契約賃借人に対して自らの保証債務の履行が有効であることを主張できる場合において,原契約賃借人の被告に対する抗弁の主張を妨げる効果がある。以上の内容は,原契約賃借人の法的地位に関し,任意規定である民法463条1項及び2項・443条1項及び2項が定める内容と比べ,その権利を制限し又は義務を加重するもの であるといえる。よって,本件契約14条1項及び同条4項は,消費者契約法 10条前段に該当するものといえる。また,原契約賃借人の連帯保証人についても,原契約賃借人の原契約賃貸人に対する抗弁の主張を援用することを妨げる 約14条1項及び同条4項は,消費者契約法 10条前段に該当するものといえる。また,原契約賃借人の連帯保証人についても,原契約賃借人の原契約賃貸人に対する抗弁の主張を援用することを妨げる効力を有するものであるから,本件契約14条1項及び同条4項は,消費者たる連帯保証人との関係においても,民法上の任意規定と比べてその権利を制限するものであるといえ,消費者契約法10条前段に該当する。これに反する 被告の主張は,以上において検討したところに照らし採用することができない。 9 争点10及び11(本件契約14条1項及び同条4項の消費者契約法10条後段該当性)について(1) 本件契約14条1項及び同条4項の定めにより生じる原契約賃借人の不利益 原告は,本件契約14条1項及び同条4項が,信義則に反して消費者である原契約賃借人の利益を一方的に害するものであると主張する。そこで,原契約賃借人の不利益が問題となる次の①②の場合について順次検討する。 ①原契約賃借人が賃料等の弁済をした後,被告が原契約賃貸人からの請求に応じ保証債務を支払った場合 ②原契約賃借人が,原契約賃貸人による修繕義務(民法606条1項)の不履行に基づく損害賠償請求権や必要費償還請求権(民法608条1項)など,原契約賃貸人に対する反対債権を有している場合ア(ア) 上記①の場合,すなわち,原契約賃借人が賃料等の弁済をした後,被告が保証債務を支払った場合,民法463条2項・443条2項,又 は本件契約14条3項が適用されるときには,原契約賃借人は,被告からの償還請求を拒むことができず,二重払いの不利益を受けることとなる。そして,本件契約14条1項に基づく事前通知免除の合意により,民法463条2項・443条2項は適用されやすくなることから,本件 らの償還請求を拒むことができず,二重払いの不利益を受けることとなる。そして,本件契約14条1項に基づく事前通知免除の合意により,民法463条2項・443条2項は適用されやすくなることから,本件契約14条1項の合意がない場合と比べれば,原契約賃借人が二重払い の不利益を受ける機会は多いものといえる。 (イ) しかし,本件契約の構造を踏まえると,原契約賃貸人は,原契約賃借人による賃料等の遅滞があった場合は速やかにこれを被告に通知して保証債務の支払を請求し,かつ,被告は,原契約賃貸人から上記請求を受けて保証債務を履行した場合,速やかに原契約賃借人に対してその求償金等を請求すると考えられる。すなわち,原契約賃貸人は, 原契約賃借人が賃料等の支払を遅滞したときはその状況を遅滞なく被告に通知するものとされ(本件契約10条1項1号),この通知を怠ったことにより未払賃料等が増加した場合はその増加分について保証されない可能性があり(本件契約10条2項),また上記通知を3回怠ったときには本件契約を無催告解除されるおそれもある(本件契 約12条3項2号)。また,被告にとって,賃料相当額の保証債務を支払った場合,これを放置すると更なる保証債務の履行を余儀なくされ,原契約賃借人の無資力による求償金未収リスクを拡大させることとなる。そのため,被告には,原契約を解除する権限が付与されている(本件契約13条1項)。このような本件契約の建て付けを考慮す ると,通常,原契約賃貸人は,原契約賃借人による賃料不払が発生し次第,これを被告に対して通知するとともに未払賃料等に係る保証債務の履行を請求し,被告は,これに応じた後,原契約賃借人に対して弁済の事実を通知するとともに求償金の請求をしているものと推認される。 そうする して通知するとともに未払賃料等に係る保証債務の履行を請求し,被告は,これに応じた後,原契約賃借人に対して弁済の事実を通知するとともに求償金の請求をしているものと推認される。 そうすると,原契約賃借人は,基本的には,被告から一月分の賃料等相当額について求償金請求を受けたときに,被告に対して賃料等を弁済済みであることを通知することが可能である。このようなやり取りが行われれば,その後に原契約賃借人と被告との間で継続して賃料等の二重払いが生じることは避けられる。よって,原契約賃借人が, 本件契約によって甘受すべき賃料等の二重払いのリスクは,基本的に は,賃料等1箇月分及び変動費,更新料程度であるということができる。 さらに,本件契約では,原契約賃貸人が,被告への請求以前に原契約賃借人から賃料等の支払を受けていたことが判明した場合,原契約賃貸人は,被告に対し,被告の支払額及び800円(支払費用)の金 員を支払う旨が定められており(本件契約10条3項),原契約賃借人から賃料等の支払を受けていた原契約賃貸人が,この定めにもかかわらずみだりに被告に保証債務の履行を請求するとは考えがたい。 (ウ) 以上によると,①の場合における原契約賃借人の不利益はあながち大きいものとはいえない。 イ(ア) 上記②の場合,すなわち,原契約賃借人が,原契約賃貸人による修繕義務(民法606条1項)の不履行に基づく損害賠償請求や必要費償還請求権(民法608条1項)など,原契約賃貸人に対する反対債権を有している場合,被告の金員支払に先立って,原契約賃借人が原契約賃貸人に対して,自らの債権を自働債権とする相殺の意思表示をしていた ときには,本来,その相殺により,原契約賃借人が負っていた賃料等の債務は消滅し,被告の負う保証 立って,原契約賃借人が原契約賃貸人に対して,自らの債権を自働債権とする相殺の意思表示をしていた ときには,本来,その相殺により,原契約賃借人が負っていた賃料等の債務は消滅し,被告の負う保証債務についても,主債務の消滅額に応当する部分について消滅する。このようなときには,原契約賃借人は,被告に対し,上記相殺の事実を主張し,賃料等債務が相殺によって全部又は一部消滅し,よって被告の保証債務もこれに応じて既に消滅していた ことを理由として,「被告が保証債務を履行したとき」(本件契約14条2項)に当たらないとして被告の求償金請求を拒むことが考えられる。 これに対し,原契約賃貸人に対して保証債務を履行した被告は,本件契約14条1項において,被告の原契約賃借人に対する事前の通知義務が免除されていることから,原契約賃借人に対し,民法463条2項及 び443条2項,又は本件契約14条3項に該当する事実を主張し, よって,自らの保証債務の履行が有効であることを主張することができる。これにより,原契約賃借人が予めした相殺は遡って無効となるものと解される。このように,本件契約14条1項によって,民法463条2項・443条2項等が適用されやすくなることから,原契約賃借人には,原契約賃貸人に対する債権を自働債権とする相殺により債権回収を 図る機会が減少するという不利益が生じるものとも考えられる。 また,原契約賃借人が原契約賃貸人に反対債権を有していたが,その相殺の意思表示をしないうちに,被告が保証債務の履行をした場合には,被告の事前通知義務が免除されているため(本件契約14条1項),被告からの事前通知がなかったとしても,反対債権を有していたことを もって被告に対抗することができなくなる(民法463条1項・443条 事前通知義務が免除されているため(本件契約14条1項),被告からの事前通知がなかったとしても,反対債権を有していたことを もって被告に対抗することができなくなる(民法463条1項・443条1項)。このような場合には,原契約賃借人にとって,賃料等債務との相殺により自働債権を回収する機会の一つが保証されなくなるものといえる。この点は原契約賃借人にとって不利益であるといい得る。 (イ) しかし,上記の不利益は,原契約賃借人が賃借物件を継続して使用 する限り,大きなものとはいえない。すなわち,原契約賃借人は,既発生の賃料等債務に係る相殺が民法463条2項・民法443条2項又は本件契約14条3項により無効とされた場合であっても,同じ債権をもって,将来発生する賃料等債務とその対当額において相殺することにより,原契約賃貸人に対する債務を免れるとともに,原契約賃 貸人に対する自働債権を回収することができる。また,原契約賃借人が上記の相殺を被告に通知すれば,その相殺により将来の賃料等債務が消滅し,これにより将来の保証債務も消滅する旨主張し,被告に対抗することが可能である(被告が原契約賃借人から相殺の通知を受けた場合,民法463条2項及び443条2項の要件を満たすとは考え 難く,また,本件契約14条3項による主張も妨げられる。)。よっ て,原契約賃借人による賃借物件の使用に支障がない場合には,原契約賃借人は将来発生する賃料等債務を受働債権とする相殺をすることによって,自らの債権回収を図ることができる。 また,原契約賃借人が相殺の意思表示をする前に被告が保証債務を履行した場合であっても,原契約賃借人は,上記と同様に,将来発生 する賃料等債務を受働債権とする相殺をすることによって,自らの債権回収を図ることができ が相殺の意思表示をする前に被告が保証債務を履行した場合であっても,原契約賃借人は,上記と同様に,将来発生 する賃料等債務を受働債権とする相殺をすることによって,自らの債権回収を図ることができる。 (ウ) 以上によると,②の場合に原契約賃借人に生じる不利益も大きいとはいえない。 ウ原告は,上記①②の場合に加え,③賃借物件の一部が滅失し,その使用 収益ができなくなってしまった場合にも不利益が生ずる旨主張する。しかし,このような場合も,原契約賃借人の賃料減額請求(民法611条1項)又は解除の意思表示(民法611条2項)が行われれば,原契約に基づき将来発生する賃料債務は減額され,又は賃料債務がそもそも発生しなくなる。そして,前記7の検討によれば,上記意思表示による賃料債務の減額 又は不発生の効果が生じた後は,原契約賃借人は,原契約賃貸人に対してはもちろんのこと,被告に対しても,主債務である賃料等債務の減額又は不発生により,保証債務も減額され又は発生していない旨を主張し,被告による求償金請求を拒むことが可能である。そうすると,賃借物件の一部滅失という場面においても,原契約賃借人の不利益があながち大きいとい うことはできない。 エ以上,原契約賃借人の不利益が問題となる場合について検討しても,本件契約14条1項及び同条4項によって,原契約賃借人に対して生じる不利益が大きいものということはできない。 (2) 本件契約14条1項及び同条4項による原契約賃借人の連帯保証人の不 利益 ア本件契約14条1項及び同条4項は,前記8に記載したとおり,原契約賃借人の連帯保証人との関係においても,主債務者である原契約賃借人が原契約賃貸人に対して対抗し得る事由を援用できないとするものであるが,上記(1)の検討を 同条4項は,前記8に記載したとおり,原契約賃借人の連帯保証人との関係においても,主債務者である原契約賃借人が原契約賃貸人に対して対抗し得る事由を援用できないとするものであるが,上記(1)の検討を前提とすると,これらの条項により,原契約賃借人に生じる不利益は大きいものとはいえない。また,上記(1)で言及したように 原契約賃借人が通常想定し得る適切な対応を採りさえすれば,これによって原契約賃借人の連帯保証人に生じる不利益も大きなものとはならないと考えられる。 イ原契約賃借人の連帯保証人は,原契約賃借人と異なり,賃借物件である建物に居住していないことが通常であり,賃借物件の一部が滅失していた り,賃借物件に修繕が必要な瑕疵があったりすることを容易に知り得ないこともあり得る。そして,このような場合で,原契約賃借人が賃借物件の一部滅失等を理由とする賃料減額の意思表示を遅滞なく行わなかったとき比較的大きい不利益を被る可能性も完全には否定できない。しかし,このような立場にあることから生じる原契約賃借人の連帯保証人の不利益は, 連帯保証人であることにより受忍すべきものと考えられる上,原契約賃借人から賃借物件の状況の通知を受けることなどにより軽減することが可能である。 ウしたがって,原契約賃借人の連帯保証人についても,本件契約14条1項及び同条4項によって生じる不利益は大きいものとはいえない。 (3) 本件契約14条1項及び同条4項の必要性又は許容性これに対し,以下の事情によれば,被告において,本件契約14条1項及び同条4項を設けることについては,その必要性及び許容性が認められる。 ア被告の保証債務の履行自体は,被告の通常業務の過程で反復的・集団的に起こるものである。よって,この保証債務履行の度に原契約賃借人に対 項を設けることについては,その必要性及び許容性が認められる。 ア被告の保証債務の履行自体は,被告の通常業務の過程で反復的・集団的に起こるものである。よって,この保証債務履行の度に原契約賃借人に対 する事前通知を行うことによるコストは,軽視できるものとはいえない。 イ一方,被告が,原契約賃貸人から保証債務履行請求を受けた場合において,原契約賃借人が原契約賃貸人に対して法的に対抗し得る事由を有していることが多くはなく,むしろ,例外的である(弁論の全趣旨)。 ウ原契約賃借人が賃料等を支払っていない場合,原契約賃貸人が被告に対して賃料等相当額の保証債務履行請求をすることは通常,予測可能である。 よって,原契約賃借人が,原契約賃貸人に対して法的に対抗すべき事由を有している場合,これを原契約賃貸人に対してだけでなく,賃借物件を管理する宅地建物取引業者や被告に対して通知する機会がないとはいえない。 エ金融機関の貸付けに際して,信用保証協会が個人又は事業者の債務を保証する場合において,その保証委託契約には,信用保証協会による保証債 務の履行について,主債務者に対する事前の通知義務を免除する特約が存し(乙16),その他の金融機関についても,同種の特約が存することが少なくない(乙13ないし15)。 (4) 小括以上によれば,本件契約14条1項及び同条4項は,原契約賃借人に関す る部分及び原契約賃借人の連帯保証人に関する部分のいずれについても,信義則に照らして消費者の利益を一方的に害するものということはできない。 したがって,本件条項3及び4が消費者契約法10条後段に該当するとの原告の主張は採用できず,同条項を含む契約締結の意思表示の差止め請求(前記第1の1(3)及び(4))についてはいずれも理由がない。 したがって,本件条項3及び4が消費者契約法10条後段に該当するとの原告の主張は採用できず,同条項を含む契約締結の意思表示の差止め請求(前記第1の1(3)及び(4))についてはいずれも理由がない。 10 争点12(本件契約18条2項2号の解釈)について(1) 本件契約18条の見出しは「賃借人の建物明渡協力義務」である。本件契約18条2項は,「乙(原契約賃借人のこと)は,原契約が終了するときは,甲(原契約賃貸人のこと)及び丁(被告のこと)の立会いの下,速やかに本件建物(賃借物件のこと)を明け渡すものとする。」と定める本件契約 18条1項に続いて定められている。その文言は,同項と異なり,原契約が 終了したことは本件契約18条2項の要件となっていない。このような本件契約18条の文言等に照らすと,本件契約18条2項2号は,原契約が原契約賃借人の賃料不払等債務不履行を原因とする解除によって終了したか否か,原契約終了の前提となる解除の意思表示が有効であるか否かにかかわらず,本件契約18条2項2号に定める一定の要件を満たすときは,被告において, 原契約賃借人において賃借物件の明渡しがあったものとみなす権限を付与することを約する条項であるということができる。 被告において上記権限を行使したことにより賃借物件の明渡しがあったとみなされたときは,原契約賃貸人は,原契約が終了したか否かにかかわらず,賃借物件を第三者に賃貸することが可能となり,その前提として,原契約賃 貸人自ら又は被告において,賃貸物件内及び駐車場,トランクルームその他の付帯施設内に残置した動産類を任意に外部に搬出保管する権限が付与されることとなる。このように,本件契約18条2項2号は,原契約が終了しているか否かを問うことなく,原契約賃借人において賃 ームその他の付帯施設内に残置した動産類を任意に外部に搬出保管する権限が付与されることとなる。このように,本件契約18条2項2号は,原契約が終了しているか否かを問うことなく,原契約賃借人において賃借物件を現実に使用していないことをうかがわせる一定の要件を満たすときは,原契約賃借人から の明示の異議がない限り,被告において,原契約賃借人からの賃借物件の明渡しを擬制することができるとする条項であり,この明渡し擬制の前提として,被告に原契約や民法で定める終了原因の有無を問わないで原契約を終了させる権限を付与しているものである。 上記の検討と,本件契約18条3項,19条1項及び同条2項が定める明 渡しがあったとみなされた場合の法律関係に照らすと,本件契約18条2項2号は,同条項に定める要件が存するときに,原契約が解除等を理由として終了したか,又は原契約終了の前提となる解除の意思表示が有効であるか否かにかかわらず,原契約を終了させ,①原契約賃貸人及び被告が賃借物件内に存する動産類を搬出保管することにつき,原契約賃借人において異議を述 べない旨,②①の搬出の日から1箇月以内に引き取らないものについて,原 契約賃借人に所有権を放棄させ,これを被告が随意処分することにつき,原契約賃借人において異議を述べない旨,③①の搬出に係る動産類の保管料等の費用を原契約賃借人が支払うこととする旨を定めた条項であると解するのが相当である。 (2) これに対し,被告は,本件契約18条2項は,飽くまで原契約賃借人が 賃借物件の使用を終了し,その占有を失ったことを前提とした約定であるところ,本件契約18条2項2号の要件に該当する場合,すなわち①原契約賃借人が賃料等の支払を2箇月以上怠り,②被告が合理的な手段を尽くしても原契約賃借人と その占有を失ったことを前提とした約定であるところ,本件契約18条2項2号の要件に該当する場合,すなわち①原契約賃借人が賃料等の支払を2箇月以上怠り,②被告が合理的な手段を尽くしても原契約賃借人と連絡が取れない状況のもと,③電気,ガス,水道の利用状況や郵便物の状況等から賃借物件を相当期間利用していないものと認められ, かつ,④原契約賃借人が賃借物件を再び占有使用しない意思が客観的に看取できる事情が存するときには,当然に原契約賃借人による賃借物件の使用は終了しており,その占有は失われている旨主張する。しかし,賃貸人の目的物返還請求権が発生するのは,飽くまで賃貸借終了時であり,上記①~④の要件は,賃貸借終了原因である解除権を発生させる要件の全部又は一部が発 生していることをうかがわせる事情であるとはいえるが,上記①~④の要件を全て満たしたからといって,解除権が発生したとも,解除の意思表示の効力が有効に発生したともいえず,原契約賃借人の関与なくして原契約の終了を擬制し,同擬制を前提として賃借物件の返還を事実上受けることを正当化させるものとはいえない。 (3) 被告は,本件契約18条2項2号所定の事由が存する場合において,上記(1)(2)のとおり原契約に基づく賃借物件の使用権限がなお存続する事態があり得るとしても,上記条項をその趣旨目的に照らして解釈すると,上記事態のような場合に上記条項を適用することはできず,被告において「明渡しがあったものとみなす」ことはできないと解釈されるものであるとも主張 する。しかし,本件契約18条1項とは異なり,上記条項については,その 適用に当たり原契約の終了が前提となっているとは定められていないところ,同条1項と同条2項2号とを比較して読んだ場合,被告の主張と異なり,原契 条1項とは異なり,上記条項については,その 適用に当たり原契約の終了が前提となっているとは定められていないところ,同条1項と同条2項2号とを比較して読んだ場合,被告の主張と異なり,原契約に基づく賃借物件の使用権限が存在する場合においても,同条項の要件に該当する場合には,明渡しがあったとみなされるとの解釈を前提とした本件契約の関係者の行動を誘発するおそれがある。そうすると,本件において, これと異なる被告の主張を採用することはできないというべきである。 11 争点13(本件契約18条2項2号の消費者契約法8条1項3号該当性)について(1)ア前記10で認定・説示したとおり,本件契約18条2項2号は,同条項に定める要件が存するときに,原契約を終了させる原因の有無や解除の 意思表示の有効性を問わずに原契約を終了させ,①原契約賃貸人及び被告が賃借物件内に存する動産類を搬出保管することにつき,原契約賃借人において異議を述べない旨,②①の搬出の日から1箇月以内に引き取らないものについて,原契約賃借人に所有権を放棄させ,これを被告が随意処分することにつき,原契約賃借人において異議を述べない旨,③①の搬出に 係る動産類の保管料等の費用を原契約賃借人が支払うこととする旨を定めた条項である。その「異議を述べない」という文言の趣旨に,原契約賃借人が,原契約賃貸人及び被告による賃借物件内の動産類の搬出・保管及び随意処分の各措置を受けいれ,拒絶しないことが含まれることは明らかである。 イそして,同条項が,原契約自体の終了原因の有無や解除の意思表示の有効性を問わずに同契約を終了させる趣旨のものであることに照らすと,本件契約18条2項2号の適用により,いまだ原契約が終了しておらず,原契約賃借人の占有が失われていない場合 の有無や解除の意思表示の有効性を問わずに同契約を終了させる趣旨のものであることに照らすと,本件契約18条2項2号の適用により,いまだ原契約が終了しておらず,原契約賃借人の占有が失われていない場合であっても,被告等は,本件契約18条3項,2項2号に基づき賃借物件内の動産類の搬出・保管を行い得 ることとなる。このような行為は,原契約が終了しておらず,いまだ原契 約賃貸人に賃借物件の返還請求権が発生していない状況で,被告等が自力で賃借物件に対する原契約賃借人の占有を排除し,原契約賃貸人にその占有を取得させることに他ならず,自力救済行為であって,本件契約の定めいかんにかかわらず,法的手続によることのできない必要性緊急性の存するごく例外的な場合を除いて,不法行為に該当する。また,本件契約19 条1項は,被告が本件契約18条3項,2項2号に基づいて動産類を搬出・保管し,原契約賃借人が,搬出から1箇月以内に引き取らないものについて,被告が随意処分することに異議を述べない旨定めるものであり,これは,原契約が終了しておらず,原契約賃借人が賃借物件に対する占有を失っていない場合にも適用される。 このような本件契約上の関連条項の文言に照らすと,本件契約18条2項2号は,同条3項及び19条1項と相まって,上記の各措置によって原契約賃借人が法律上保護された利益を侵害された場合であっても,これを理由とする損害賠償請求をしない旨,すなわち,被告等による上記の各措置が本件契約における債務の履行に際してされた原契約賃借人に対する不 法行為に該当する場合であっても,原契約賃借人にこれを理由とする損害賠償請求権を放棄させる趣旨も含むものと解するのが相当である。 ウしたがって,本件契約18条2項2号は,同条3項及び19条1項と相 行為に該当する場合であっても,原契約賃借人にこれを理由とする損害賠償請求権を放棄させる趣旨も含むものと解するのが相当である。 ウしたがって,本件契約18条2項2号は,同条3項及び19条1項と相まって消費者契約法8条1項3号に該当する条項であるということができる。 (2)アこれに対し,被告は,「異議を述べない」という文言は,通常,不法行為責任を免除するものではない旨主張する。 しかし,本件契約18条2項2号は,原契約につき民法上又は本件契約上の契約の終了原因の存否を問わず,本件契約18条2項2号に掲げる要件に該当する場合に,被告等に賃借物件内の動産類を搬出・保管・処分す る権限を付与する条項であることは前述のとおりである。そして,上記条 項に基づく動産類の搬出・処分について,本件契約18条3項及び19条1項において,原契約賃借人が「異議を述べない」旨定められている。このような本件契約の条項の建て付けや,「異議を述べない」との文言に照らすと,本件契約18条3項及び19条1項の「異議を述べない」との文言は,原契約賃借人の被告に対する損害賠償請求権を放棄するとの趣旨を 含む条項と解するのが相当である。 よって,被告の上記主張は採用できず,上記(1)の判断に変わりはない。 イまた,被告は,本件契約18条2項2号は,被告が賃借物件の明渡しがあったものとみなすことができる旨の規定に過ぎず,被告の権限の行使に関する不法行為責任を免除する条項ではない旨主張する。 しかし,本件契約18条2項2号そのものは被告が賃借物件の明渡しがあったものとみなすことができる旨を規定したものに過ぎないとしても,本件契約18条2項2号と同条3項,19条1項とを併せてみると,本件契約18条2項2号は,その権限の行使に関す が賃借物件の明渡しがあったものとみなすことができる旨を規定したものに過ぎないとしても,本件契約18条2項2号と同条3項,19条1項とを併せてみると,本件契約18条2項2号は,その権限の行使に関する事業者の不法行為責任を免除する条項の一部を構成しているものとみることができるのであって, 本件訴えにおける原告の差止請求は,上記の各条項のうち,本件契約18条2項2号のみを対象としてその差止をしようとするものと解することができる。そうすると,上記条項についても消費者契約法8条1項3号に該当する条項であるということができ,これに反する被告の上記主張を採用することができない。 (3) そして,被告は,現在,別紙3記載の各条項が記載された本件契約の契約書用紙を使用していることから,不特定多数の消費者との間で,本件契約18条2項2項を含む消費者契約の申込み又は承諾の意思表示を現に行い,又は行うおそれがあるものと認められる。 そうすると,本件条項5に係る他の争点(争点14及び15)を検討する までもなく,本件条項5を含む消費者契約の申込み等の意思表示の差止めを 求める原告の請求(前記第1の1(5))には理由がある。 また,原告は,上記消費者契約の申込み又は承諾の意思表示の停止又は予防に必要な措置として,契約書ひな形が印刷された契約書用紙を廃棄すること,及び被告の従業員に対し,別紙2記載の書面を配布することを請求している。このうち,本件契約18条2項2号が記載された契約書ひな形が印刷 された契約書用紙を廃棄することは,本件条項5を含む消費者契約に係る意思表示の停止又は予防のために必要な措置と認められる。よって,契約書ひな形が印刷された契約書用紙の廃棄を求める部分(前記第1の2)についても理由がある。 他方, 件条項5を含む消費者契約に係る意思表示の停止又は予防のために必要な措置と認められる。よって,契約書ひな形が印刷された契約書用紙の廃棄を求める部分(前記第1の2)についても理由がある。 他方,上記のように契約書用紙の廃棄を命じるのであれば,これにより被 告の従業員に対し,本件条項5を含む消費者契約を締結してはならないことは伝わるものといえるから,これに加えて,別紙2記載のような書面を従業員に配布する必要は認められない。よって,従業員らに対して別紙2の内容記載の書面を配布するよう求める部分(前記第1の3)には理由がない(この判断については,仮に本件条項5が消費者契約法10条に該当する場合で も同様である。)。 第4 結論以上によれば,原告の意思表示の差止め請求(前記第1の1)のうち,本件条項5を含む消費者契約の申込み又は承諾の意思表示の差止めを求めるものについては理由があるが,その余の請求については理由がない。また,原告の消 費者契約法12条3項所定の「必要な措置」の請求(前記第1の2及び3)のうち,本件条項5に係る差止め請求に関し,被告に,同条項が記載された契約書ひな形が印刷された契約書用紙の廃棄を求める請求には理由があり,その余の請求には理由がない。なお,仮執行宣言については,相当でないからこれを付さないこととする。 よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第4民事部 裁判長裁判官西村欣也 裁判官髙原知明 裁判官宮崎陽介 知明 裁判官 宮崎陽介
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