昭和58(オ)1289 建物収去土地明渡

裁判年月日・裁判所
昭和59年4月20日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所 昭和57(ネ)1667
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【DRY-RUN】主    文      本件上告を棄却する。      上告費用は上告人らの負担とする。          理    由  上告代理人猪狩庸祐、同大久保博の上告理由第一及び第二について  原審は、1(

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判決文本文4,400 文字)

主    文      本件上告を棄却する。      上告費用は上告人らの負担とする。          理    由  上告代理人猪狩庸祐、同大久保博の上告理由第一及び第二について  原審は、1(一) 被上告人は、昭和九年一二月一四日、上告人A1に対し、被上 告人所有の本件土地を、賃貸期間二〇年、普通建物所有の目的、権利金・敷金なく、 無断譲渡・転貸禁止の特約付きで賃貸した。(二) そして、本件賃貸借契約は、昭 和二九年一二月一四日期間二〇年として更新され、その後地上建物の無断増改築禁 止の特約がされ、上告人A2が連帯保証人となつたが、更に本件賃貸借契約は、昭 和四九年一二月一四日期間二〇年として更新された。(三) ところで、本件賃貸借 契約には、前示のとおり被上告人の承諾なしに建物の増改築をしてはならない旨の 特約があつたが、上告人A1は、昭和三七年一二月本件建物(1)について長男名義 で増改築の確認の申請をしたうえ、昭和三八年ころその増改築に着手し、土台石を 敷いた段階で被上告人に承諾を求めたので、被上告人がこれを承諾せず、その中止 を申入れたが、上告人A1はこれを聞きいれずに完成させてしまつた。そして、右 増改築により上告人A1宅の便所が被上告人の長男宅に接近して同人らに不快感を 与えるようになり、また、上告人A1は、右増改築部分に間借人をおいたが、被上 告人は、上告人らとの紛争を避けるため、特に抗議を申入れることはしなかつた。 (四) また、本件賃貸借契約には、前示のように被上告人の承諾なしに本件土地の 賃借権の譲渡・転貸をしてはならない旨の特約があつたが、上告人A1は、被上告 人の承諾を得ずに妻である上告人A2に本件建物(1)の所有権を移転して本件土地 を使用させ、かつ、昭和三八年二月八日上告人A2に本件建物(1)の所有権保存登 記をして、本件土地を転貸した。 1は、被上告 人の承諾を得ずに妻である上告人A2に本件建物(1)の所有権を移転して本件土地 を使用させ、かつ、昭和三八年二月八日上告人A2に本件建物(1)の所有権保存登 記をして、本件土地を転貸した。被上告人は、後日このことを知つたが、紛争を嫌 - 1 - つて抗議等の申入れをしなかつた。(五) 上告人らは、昭和五〇年一二月七日本件 建物(2)を隣地に接近して建築した。そのころ、これを知つた被上告人は、上告人 らに書面で右建物は、何時、誰が建てたのか明らかにするよう求めたが、上告人ら がこれに応じなかつたので、被上告人は、上告人らに重ねて書面でその回答を求め たが、上告人らはこれにも応じなかつた。(六) 昭和三八年ころから上告人A1の 賃料の支払が遅れ、また、被上告人は、本件土地を自ら使用する考えをもつていた が、本件賃貸借契約の解消は考えず、昭和四九年一二月一四日の賃貸借契約の更新 に先立ち、同月一二日上告人A1に対し更新料の支払を請求する旨予め通告し、昭 和五〇年六月一日D銀行株式会社の鑑定による本件土地の更地価格二五八五万三〇 〇〇円に基づき、借地権の価格をその七割にあたる一八〇九万七一〇〇円とし、更 に更新料をその一割にあたる一八〇万九七一〇円と算定してこれを上告人A1に支 払うよう求めた。(七) しかし、上告人A1がこれに応じなかつたので、被上告人 は、昭和五〇年一〇月三〇日右更新料の支払を求めて宅地調停の申立てをした。調 停は、一四回の期日が開かれ、主として、被上告人と上告人A1の代理人として出 頭した弁護士小林正基との間で更新料の額と支払方法のほかに、前記の上告人A1 の本件建物(1)の無断増改築、本件土地の賃借権の無断転貸、賃料支払の遅滞等の 問題等についても話合がなされた。その結果、賃料に関する問題は、賃料の増額も あつてその賃料額及び支払額が不明確になつ A1 の本件建物(1)の無断増改築、本件土地の賃借権の無断転貸、賃料支払の遅滞等の 問題等についても話合がなされた。その結果、賃料に関する問題は、賃料の増額も あつてその賃料額及び支払額が不明確になつていたが、双方の言分の隔たりが大き く早急に合意に達することが困難な状態にあつたので、調停成立後、右の点につき 更に話合いを続けることとした。そして、被上告人は、上告人A1の前記の不信行 為を不問に付することとし、不問に付したことによる解決料と本来の意味での更新 料との合計額を一〇〇万円に減額する旨申入れたところ、上告人A1はこれを了承 し、右一〇〇万円を昭和五一年一二月末日五〇万円、昭和五二年三月末日五〇万円 と二回に分割して支払うことを約したので、昭和五一年一二月二〇日上告人A1が - 2 - 被上告人に対し更新料一〇〇万円を右のとおり分割して支払う旨の調停が成立した。 (八) そして、上告人A1は、第一回の分割金五〇万円は約定のとおり支払をした が、第二回の分割金五〇万円は期限までに支払をしなかつた。そこで、被上告人は、 上告人A1に対し、昭和五二年四月四日到達の書面をもつて、右書面到達の日から 三日以内に第二回の分割金五〇万円を支払うよう催告したが、上告人A1がその支 払をしなかつたので、被上告人は、同月一〇日到達の書面をもつて本件賃貸借契約 を解除する旨の意思表示をした。(九) 上告人A1が、第二回の分割金五〇万円を 期限までに支払わず、かつ、被上告人の催告にも応じなかつたのは、調停の際被上 告人側が借地の範囲を明確にすることなどを先ず履行することを約束していたもの と考えていたこと、被上告人が従来、賃借人の不信行為について強く抗議をせず、 また、義務の履行を迫つたことがなかつたので、右分割金を期限までに支払わなく ても本件賃貸借契約が解除されるという事態に至ることは えていたこと、被上告人が従来、賃借人の不信行為について強く抗議をせず、 また、義務の履行を迫つたことがなかつたので、右分割金を期限までに支払わなく ても本件賃貸借契約が解除されるという事態に至ることはあるまいと思つていたか らであつた。しかし、調停成立の際、賃料については後日話合いすることが留保さ れたものの、被上告人が先ず借地の範囲を明確にすることなどの合意はされていな かつた。なお、上告人A1は、昭和五二年四月一六日被上告人に対し、第二回の分 割金五〇万円を弁済のため提供したが、被上告人がその受領を拒絶したので同月一 八日これを供託した、との事実を確定したうえ、2(一) 本件賃貸借契約は、昭和 九年に締結されて以降二回の更新がされているが、右契約締結当時権利金・敷金等 の差入れがなく、かつ、その間地価をはじめ物価が著しく値上りしているため、被 上告人が更新の際に借地権価格の一割に相当する更新料の支払を請求し、これにつ いて当事者双方が協議したうえその支払の合意がされたことの経緯から見ると、本 件更新料は、本件土地利用の対価として支払うこととされたものであつて、将来の 賃料たる性質を有するものと認められる。(二) 被上告人は、その所有土地の有効 利用を考え、また、上告人らの不信行為もあつたが、本件賃貸借契約の解消を求め - 3 - ず、その継続を前提として更新料を請求したものであるから、更新に関する異議権 を放棄し、その対価としての更新料を請求し、これについて更新料の支払が合意さ れたものと認めるべきである。(三) また、本件においては、上告人A1に建物の 無断増改築、借地の無断転貸、賃料支払の遅滞等の賃貸借契約に違反する行為があ つたが、本件調停は、これら上告人A1の行為を不問とし、紛争予防目的での解決 金をも含めた趣旨で更新料の支払を合意したものと認められる、と認定判 無断転貸、賃料支払の遅滞等の賃貸借契約に違反する行為があ つたが、本件調停は、これら上告人A1の行為を不問とし、紛争予防目的での解決 金をも含めた趣旨で更新料の支払を合意したものと認められる、と認定判断すると ころ、以上の認定判断は、原判決挙示の証拠関係及びその説示に照らし正当として 是認することができる。  ところで、土地の賃貸借契約の存続期間の満了にあたり賃借人が賃貸人に対し更 新料を支払う例が少なくないが、その更新料がいかなる性格のものであるか及びそ の不払が当該賃貸借契約の解除原因となりうるかどうかは、単にその更新料の支払 がなくても法定更新がされたかどうかという事情のみならず、当該賃貸借成立後の 当事者双方の事情、当該更新料の支払の合意が成立するに至つた経緯その他諸般の 事情を総合考量したうえ、具体的事実関係に即して判断されるべきものと解するの が相当であるところ、原審の確定した前記事実関係によれば、本件更新料の支払は、 賃料の支払と同様、更新後の本件賃貸借契約の重要な要素として組み込まれ、その 賃貸借契約の当事者の信頼関係を維持する基盤をなしているものというべきである から、その不払は、右基盤を失わせる著しい背信行為として本件賃貸借契約それ自 体の解除原因となりうるものと解するのが相当である。したがつて、これと同旨の 原審の判断は正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。  論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難す るか、又は原審の認定にそわない事実若しくは独自の見解に基づいて原判決を論難 するものにすぎず、採用することができない。  同第三について - 4 -  本件において、賃貸人に対する信頼関係を破壊すると認めるに足りない特段の事 情があるとは認められないとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係及びそ の説 ができない。  同第三について - 4 -  本件において、賃貸人に対する信頼関係を破壊すると認めるに足りない特段の事 情があるとは認められないとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係及びそ の説示に照らし、正当として肯認するに足り、その過程に所論の違法はない。論旨 は、採用することができない。  よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意 見で、主文のとおり判決する。      最高裁判所第二小法廷          裁判長裁判官    宮   崎   梧   一             裁判官    木   下   忠   良             裁判官    鹽   野   宜   慶             裁判官    大   橋       進             裁判官    牧       圭   次 - 5 -

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