【DRY-RUN】主 文 原告らの本件請求をいずれも棄却する。 ただし、昭和五六年七月五日に行われた東京都議会議員選挙の江戸川区 選挙区における選挙は違法である。 訴訟費用は被告の負
主文 原告らの本件請求をいずれも棄却する。 ただし、昭和五六年七月五日に行われた東京都議会議員選挙の江戸川区選挙区における選挙は違法である。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 第一当事者の求めた裁判(原告ら) 1 昭和五六年七月五日に行われた東京都議会議員選挙(以下「本件選挙」という。)の効力に関する原告らの異議申立につき、被告が同年七月二七日なした異議申立却下の決定(以下「本件決定」という。)を取消す。 2 本件選挙の江戸川区選挙区における選挙を無効とする。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 (被告)一本案前の答弁 1 原告らの訴を却下する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 二本案の答弁 1 原告らの請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 第二当事者の主張(原告ら)一請求の原因 1 当事者原告らは、本件選挙の江戸川区選挙区における選挙人であり、被告は本件選挙に関する事を管理する選挙管理委員会である。 2 原告らの異議申立に対する被告の決定(一) 原告らは、昭和五六年七月二四日被告に対し、本件選挙が各選挙区の人口に比例せず、憲法前文、同一四条一項、一五条一項、三項、四四条但書、九三条一項、公職選挙法(以下「公選法」という)一五条七項に違反する「東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例」(昭和四四年東京都条例第五五号)第一乃至第三条の定数配分規定(以下「本件配分規定」という)に基づき施行されたもので無効である旨主張し、公選法二〇二条一項により異議申立をしたが、被告は同月二七日本件決定をなし翌日該決定書を交付した。 (二) 被告の本件決定の理由は、「公選法第二〇二条の異議申立に関する れたもので無効である旨主張し、公選法二〇二条一項により異議申立をしたが、被告は同月二七日本件決定をなし翌日該決定書を交付した。 (二) 被告の本件決定の理由は、「公選法第二〇二条の異議申立に関する規定は、同法に基づき施行された選挙に管理執行上暇疵があつた場合に、これを無効として早期に適正な再選挙を実施せしめもつて選挙の自由と公正とを確保せんとするために設けられたものである。従つて、たとえ選挙を無効として再選挙を実施したとしても、その暇疵を是正しえない場合にまでも異議の申出を許容する趣旨ではない。また、本件選挙は、現行法制上適法に成立した条例に基づき適法に施行されたものである。」というものである。 3 本件決定の違法性と本件選挙の無効(一) 本件決定は公選法二〇二条一項に違反する。 本件決定の理由は、要するに、公選法二〇二条一項の異議申立は選挙の管理執行上の暇疵があつた場合を救済せんとするために設けられたものであり、本件配分規定の違憲・違法を主張する原告らの異議申立のような場合は予定しておらず不適法であるということである。 ところで、地方議会議員選挙においては、選挙の効力に不服のある者は、公選法二〇三条二項により異議申立手続を経なければ訴訟でその効力を争うことができない。その意味で同法二〇二条一項の異議申立は地方議会議員選挙の選挙人が選挙の適否を争うために不可避の手段であり、他に違憲・違法を主張して是正を求める方途は現行法制上存在しないのである。仮に被告の理由とするところが容れられるとすれば、現在、原告らの基本的権利が重大な侵害を受けているにもかかわらず救済の途は全く閉ざされてしまうことになる。これは、およそ国民の基本的権利を侵害する行政主体の行為に対してはできるだけその是正、救済の途が開かれるべきである、という憲法上の要請に著 るにもかかわらず救済の途は全く閉ざされてしまうことになる。これは、およそ国民の基本的権利を侵害する行政主体の行為に対してはできるだけその是正、救済の途が開かれるべきである、という憲法上の要請に著しく反するところである。 また原告らが異議申立の中で主張したのは、本件配分規定自体の違憲、違法性であるが、選挙規定に基づく単なる管理執行上の暇疵については異議申立が適法てあるが、本来それ以上に重大な暇疵というべき選挙規定それ自体の違憲、違法を理由としての異議申立は不適法であるというのは、本末転倒の謗りを免れない。公選法二〇二条一項の趣旨が、異議申立をもつて選挙人が選挙の適否を争う唯一、不可避の手続とし、もつて選挙の公正をはかろうとするものであるとすれば、以上述べた理由から原告らの異議申立は当然許容されるべきであり、これを本案に入らずして却下した被告の本件決定は同条の解釈を誤つたもので違法である。 なお、右のように定数格差により不当に基本的権利を侵害されている選挙人にできるだけ広くその是正の途を開く考え方は、すでに国政選挙に関する同法二〇四条の解釈としては判例上定着しているところ(最高裁昭和五一年四月一四日判決、東京高裁同五五年一二月二三日判決)であり、その解釈は地方議会議員選挙に関する同二〇二条一頃、二〇三条においても何ら差異を設けるべき理由はない。 (二) 本件選挙における投票価値の不平等本件選挙は、本件配分規定に基づき行われたものであるが、右配分規定は人口に比例せず、その結果本件選挙においては以下に述するとおり、最大過疎区の千代田区選挙区と原告らの居住する江戸川区選挙区では、議員一人当り人口の比率で一対四・五一(選挙直前の昭和五五年国勢調査の結果)、議員一人当りの有権者数の比率において一対三・七九の格差が生じており、これは地方自治体議 告らの居住する江戸川区選挙区では、議員一人当り人口の比率で一対四・五一(選挙直前の昭和五五年国勢調査の結果)、議員一人当りの有権者数の比率において一対三・七九の格差が生じており、これは地方自治体議員選挙における投票価値の平等を保障する憲法及び公職選挙法に違反するものであるから、これに基づく本件選挙は無効である。 (1) 本件選挙における定数配分(イ) まず、東京都の区部のなかにおける議員配分を検討してみる。本件原告たる選挙人らの選挙区は江戸川区選挙区(人口四九五、〇八六人議員定数四名、議員一人当りの人口一二三、七七一人)であるので、これと他区とを比較する。すると、千代田区選挙区(人口五四、八〇一人、定数二名、議員一人当りの人口二七、四〇〇人)との比較によつて、江戸川区内の選挙人は千代田区内のそれに比し、約四・五一分の一の投票価値しか有しない選挙権しか与えられていないことがわかる。このことは、仮りに、区部全区統一、一区で選挙をするならば、その際、千代田区内の選挙人には、四・五一票を与えているということと、実質的には変りがない。また、新宿、品川両選挙区は人口三四万人余りであり、江戸川区選挙区と比べるとはるかに少ないにもかかわらず、これに対して五名の議席の配分をしている。 公選法一五条七項に忠実に従つて議席配分するならば、これらの区での配分は現行と逆転し、新宿、品川、北各選挙区は五人から四人に減じ江戸川区選挙区は四人から五人に増やすべきことになる。 (ロ) 次に、公選法二六六条二項による区部と、市、郡、島部の配分をみてみよう。選挙直前の前記国勢調査によれば、区部人口は八、三四九、二〇九人てあり、市、郡、島部人口は、三、二五六、八六〇人である。この「人口に比例して」(同法一五条七項)現行一二七の議席を配分すると、区部九一・二九、市、郡、島 調査によれば、区部人口は八、三四九、二〇九人てあり、市、郡、島部人口は、三、二五六、八六〇人である。この「人口に比例して」(同法一五条七項)現行一二七の議席を配分すると、区部九一・二九、市、郡、島部三五・七一となる。ところが、本件配分規定による議員定数はこれに反し、区部一〇二人、市郡島部二五人となつている。すなわち、法に基づくあるべき適正な配分に比し、現実には、区部では一一人も多い議員配分がなされ、逆に市・郡・島部では、一〇人以上も少ない議員配分がなされていたことになる。この結果、区部に於ける各個の選挙区と、市、郡、島部に於ける各個の選挙区とを個別に比較対照していくと、最も極端な場合、千代田区選挙区に於いては五四、八〇一人の人口に対し二人の議員配分があるのに対し、八王子市選挙区の場合は三八七、一六二人の人口に対し同じ二人の議員配分しかない(投票価値の格差はここでは、約一対七にも達している。)という異常な事態を招来している。 (ハ) 投票価値の問題とは、後に詳述するように代表議員に対する国民(住民)の意思反映の権利の平等の問題である。この視点から言いかえるなら、千代田区選挙区と江戸川区選挙区の対比に於ては、千代田区の選挙人は、江戸川区の選挙人より絶対的に少ない人数で、江戸川区の選挙人より相対的により大きな発言力(意思反映力)を議会に対して有している、ということになるし、新宿、品川、北区等の選挙人は江戸川区の選挙人より絶対的に少ない人数で、かつ江戸川区選挙人より絶対的により大きな発言力を有しているということになる。ここに於いて代表制民主主義の大前提たる平等原則の崩壊は明白であるといわなければならない。 (2) 定数格差の推移次に、戦後の東京都議会議員選挙における定数格差の推移を、主に原告らの居住する江戸川区選挙区と最大過疎区の千代田 前提たる平等原則の崩壊は明白であるといわなければならない。 (2) 定数格差の推移次に、戦後の東京都議会議員選挙における定数格差の推移を、主に原告らの居住する江戸川区選挙区と最大過疎区の千代田区選挙区を例にとり概観する。 (イ) 東京都議会議員選挙の選挙の選挙区及び定数に関しては、戦後間もなく「東京都議会議員の選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例」(昭和二二年都条例第三一号)が制定された。 右条例において、江戸川区選挙区の議員定数は五名、千代田区選挙区は一名と定められた。同二一年四月二六日の人口調査をもとに当時の議員一人当りの人口数を算出すると、江戸川区選挙区三四、〇四〇人、千代田区選挙区五七、八八二人てあり、現状とは逆に千代田区民の投票価値が著しく低くなつていた。しかし、同二六年四月三〇日に実施された第二回東京都議会議員選挙では、その間に前記条例が一部改正されたことに伴い、江戸川区選挙区の定数は四名、千代田区選挙区は二名となり、議員一人当りの有権者数では、江戸川区選挙区二九、五一四人、千代田区選挙区三一、三二八人、東京都平均で三〇、六一九人となり、投票価値の平等化がほぼ保たれることになつた。 (ロ) ところが、昭和二〇年代末項より都心区からの人口の流出、周辺区、市、郡部への人口の流入という、いわゆるトーナツ化現象が見られるようになり、それは年々急速な進展を見せた。 千代田区の人口は同三〇年の国勢調査における人口をピークとしてその後減少の一途をたどつた(同三〇年一二三、七四五人、同五五年五四、八〇一人)のに対し、江戸川区の人口の伸びは、同二五年から四〇年までの間に二倍増と急激な増加をみせ、その後も増加が続いた(同二五年二〇八、八六一人、同五五年四九五、〇八六人)。右のような人口の変動にもかかわらず、両選挙区の議員定数 口の伸びは、同二五年から四〇年までの間に二倍増と急激な増加をみせ、その後も増加が続いた(同二五年二〇八、八六一人、同五五年四九五、〇八六人)。右のような人口の変動にもかかわらず、両選挙区の議員定数には何ら変更が加えられることがなかつたため、議員一人当りの有権者数についての格差は選挙毎に次第に拡大することになつた。 以下に昭和四〇年以降今回までの東京都議会議員選挙における議員一人当りの有権者数の格差を示す。 「1」 昭和四〇年七月二三日施行の第六回選挙千代田区選挙区三三、六九三人江戸川区 〃 五五、九九九人○北多摩 〃 九七、四一二人(参考―同選挙における最大過密区ー以下○印同じ。)右比率(千代田区対江戸川区ー以下同じ。)一対一・六六「2」 同四四年七月一三施行の第七回選挙千代田区選挙区三一、七〇七人江戸川区 〃 七二、八四二人○町田市 〃 一〇二、四一九人右比一対二・三「3」 同四八年七月八日施行の第八回選挙千代田区選挙区二八、八一二人江戸川区 〃 七七、六五八人○町田市 〃 一四八、六三〇人右比率一対二・七「4」 同五二年七月中〇日施行の第九回選挙千代田区選挙区二四、四〇七人江戸川区 〃 八〇、一五一人○南多摩選挙区 〃 一六三、〇〇九人右比率一対三・三「5」 本件選挙千代田区選挙区二二、三四一人江戸川区 〃 八四、六四六人 〃 一六三、〇〇九人右比率一対三・三「5」 本件選挙千代田区選挙区二二、三四一人江戸川区 〃 八四、六四六人○西多摩 〃 一三七、六四七人右比率一対三・八選挙毎に千代田、江戸川両選挙区間の格差が拡大しているのがよくわかる。 (三) 定数格差を放置した東京都の責任(1) 前述のような定数格差の問題は、昭和四〇年ごろより顕在化しはじめ、東京都内部でも検討がはじめられるに至つた。 しかし、現実の改定は遅々として進まなかつた。その後地方自治法九〇条の改正に伴い、前記条例が同四四年全面改正され、本件配分規定を規定する現行の「東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例」(昭和四四年条例五五号以下「本件条例」という。)が制定されたが、定数については、北多摩地区に増員があつたのみで、区部、南多摩及び西多摩地区については従前どおりと放置された。昭和四〇年以降区部についてなされた定数是正としては、同四八年東京都条例第五七号による本件条例の一部改正に基づく台東、品川両選挙区の定数一名減、練馬区選挙区の一名増だけであつて(市、郡部においても本件条例制定後は、選挙区の分割を除けば、町田市選挙区の一名増、次に述べる日野市選挙区の新設がなされただけである)、江戸川区選挙区などは、著しい格差にもかかわらず放置された。本件選挙前の同五六年三月二〇日、東京都は前年の国勢調査の結果を議員定数に反映させるためとして、本件条例の一部を改正した(同年都条例第五号)が、その改正内容は日野市選挙区(定数一名)を新設したのみであつた。 (2) 右国勢調査の結果によれば、本件選挙において投票価値に著しい格差が生ずることは明らか の一部を改正した(同年都条例第五号)が、その改正内容は日野市選挙区(定数一名)を新設したのみであつた。 (2) 右国勢調査の結果によれば、本件選挙において投票価値に著しい格差が生ずることは明らかな事実(江戸川区、八王子市両選挙区における議員一人当りの人口を千代田区のそれと対比すると、それぞれ一対四・五一、一対七であつた)であつたにもかかわらず、前記の他何ら是正措置はとらなかつたのである。このように、東京都が今日まで何ら抜本的な定数是正措置をとらなかつたことの結果として、人口増加の著しい二三区内の周辺区、あるいは市、郡部の住民は、都心区の住民に比してはなはだしい投票価値の低下に見舞われることになつた。 各選挙区における本件選挙時の議員一人当りの人口を最大過疎区の千代田区のそれと比較する(カツコ内は一人当り有権者数の比率)と次のとおりであり、いかに江戸川区を含む周辺区、市、郡部の投票価値が低くなつているかがわかる。 練馬区選挙区一対五・一五(一対四・三六)八王子市 〃 一対七・〇六(一対五・六九)足立区 〃 一対四・五一(一対三・七六)府中市 〃 一対七・〇〇(一対五・七七)葛飾区 〃 一対三・八三(一対三・三一)三鷹市 〃 一対六・〇〇(一対五・一二)既に昭和四〇年代初めから定数格差の問題が顕在化していたにもかかわらず、右程度に至るまで何ら根本的な是正措置をとらず、一五年以上にわたり放置しつづけてきた東京都の責任は重大である(なお、法・条例の改正経緯については、さらに三1で詳述する。)。 (四) 憲法・法律と投票価値の平等(1) 憲法と投票価値の平等日本国憲法は、主権在民の民主主義体制を人類普遍の原理として宣明し(前文)、その民主主義法制としては、「正当に選挙された 。)。 (四) 憲法・法律と投票価値の平等(1) 憲法と投票価値の平等日本国憲法は、主権在民の民主主義体制を人類普遍の原理として宣明し(前文)、その民主主義法制としては、「正当に選挙された国会に於ける代表者を通じて」国政を担う、代表民主制を採用している。「国政は国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者かこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」(前文)という、リンカーンのゲテイズバーグ演説以来の民主主義の真髄を代表民主制に於て実現するための不可欠の前提条件は、その「代表」が、正しく主権者たる国民の意思を適正・忠実に反映し、代表するものとなつていることにある。そして、「すべての基本的人権を享有」(一一条)し、「法の下において平等」(一四条)である主権者たる国民が、その意思を正しく代表に反映させる為の最低条件は次の二つとなる。すなわち、その第一は、代表選出の選挙に於ける選挙資格の平等が守られることであり、この点については、憲法一四条一項、一五条一項、三項、四四条但書等に照し、制限選挙等の不平等選挙が許されないものであることは、明文上も明らかである。同時に、第二に、この平等選挙は、現行法体系の如く代表民主制の具体的形態として、選挙区を細分し、選挙区毎に代表を選出する地域代表制によつている場合には、平等の形式的側面である資格についてのみでなく、より実質的には、選挙権の内容すなわち、投票価値そのものの平等を、異なる選挙区相互の間に実現しなければならないものであることも、事の本質ならびに、これらの規定の趣旨からして明らかである。そして、憲法上のこうした原理については、周知のとおり最高裁昭和五一年四月一四日大法廷判決、東京高裁昭和五五年一二月二三日判決などにより判例上も確認されているところであ の趣旨からして明らかである。そして、憲法上のこうした原理については、周知のとおり最高裁昭和五一年四月一四日大法廷判決、東京高裁昭和五五年一二月二三日判決などにより判例上も確認されているところである。これらの判決はいずれも国政選挙に関するものであるが、地方議会議員選挙に於ても、何ら異なるところはない。すなわち、第一に、憲法前文に謳われている主権在民の代表民主制の原理は、その憲法体系の中に組み込まれている地方自治(第八章)についても、普遍的に適用さるべきものであること明らかである。第二に、平等選挙を直接基礎づける憲法一四条一項、同一五条一項、三項は、国会議員の選挙と地方議会議員の選挙(九三条二項)であるとを問わず均しく選挙に於ける国民の平等権を保障している。第三に、実質的に考えても、仮りに地方議会議員選挙に於て不平等選挙が許されるとするなら、国民にとつて身近な地方自治行政の方法づけをする機関であり、かつ、国会(法律)により膨大な事項について細部の取り決めを任され(条例委任)ている機関が、国民(住民)の意思を全く反映しないものとなることもありうることになり、民主主義の原理は根底から崩れてしまうであろう。 以上により、憲法上、平等選挙の原則が、民主主義体系の根本に関わる重要なものとして位置づけられていることが明らかとなつた。 (2) 法律と投票価値の平等本件選挙は地方議会議員選挙であるが、公選法一五条は、その七項で特に、「各選挙区に於て、選挙すべき……議員の数は、人口に比例して、条例で定めなければならない。」と定め、地方公共団体議会議員選挙に於ける議員定数配分条例が、人口比例の原則に依る平等選挙を保障すべきものであることを命じている。この結果、各地方公共団体議会で定める議員定数配分の条例は、前記の如き憲法上の諸原則に従わなければならな ける議員定数配分条例が、人口比例の原則に依る平等選挙を保障すべきものであることを命じている。この結果、各地方公共団体議会で定める議員定数配分の条例は、前記の如き憲法上の諸原則に従わなければならないのは勿論、公選法一五条七項をも遵守すべきである、ということになる。そして、条例(本件の場合は本件配分規定)が、憲法並びに公選法の右規定に違反するものてあるときは、当該条例が違憲、違法なものとしてその効力そのものを否定さるべきであることは言うまでもない。 (五) 周辺区格差の象徴としての投票価値の不平等原告らの居住する江戸川区は近年急激に人口が流入した地域であるが、これらに対し東京都をはじめとする行政主体はその対応が遅れかつ不十分であるため、区民の中から様々な不満が出ている。下水道の普及率の低いこと、東京都の教育、病院、公園などの公共施設の建設・設置水準が他区(とりわけ都心区)より著しく低いことなどである。これらはいわゆる周辺区格差といわれるものであるが、議員定数格差もこのような東京都の行政上の格差の一つの象徴としてとらえることができる。 本件訴訟の提起は、東京都に対する原告らの右の如き周辺区格差の是正を求める要求の一環として位置づけられるものである。 (六) 結論本件選挙は、本件配分規定に基づき行われたものであるが、右配分規定は人口に比例せず、既に述べてきたように本件選挙における最大過疎区の千代田区選挙区と江戸川区選挙区では、議員一人当りの人口の比率で一対四・五一、議員一人当りの有権者数の比率で一対三・八の格差があり、これは地方自治体議員選挙における投票価値の平等を保障する憲法前文、同一四条一項、一五条一項、三項、四四条但書、九三条一項、公職選挙法一五条七項に違反し、これに基づく本件選挙は無効てある。 よつて、公職選挙法二〇三条 挙における投票価値の平等を保障する憲法前文、同一四条一項、一五条一項、三項、四四条但書、九三条一項、公職選挙法一五条七項に違反し、これに基づく本件選挙は無効てある。 よつて、公職選挙法二〇三条に基づき、違法な被告の却下決定の取消しを求めるとともに、原告らの選挙区である江戸川区選挙区における本件選挙を無効とする旨の判決を求める。 二本案前の抗弁に対する反論 1 原告らの訴の適法性都道府県議会議員選挙の「効力に関し不服のある選挙人」は、公選法二〇二条により当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に対し異議の申立をなし、更にその決定に不服がある場合は同法二〇三条により訴訟を提起することができることとなつている。このような訴訟の提起があつた場合、裁判所が、いかなる事由のある場合に選挙無効の判決をすべきかについては、同法二〇五条が「選挙の規定に違反していること」「その規定違反のため選挙の結果に異動を及ぼすおそれのあること」の二要件を規定しているが、これは専ら本案である選挙無効の請求を理由あらしめるための要件であるにすぎず、の適法要件としては、同法二〇二条、二〇三条の規定する、原告及び被告の資格、出訴期間、異議申立前置等が遵守され、かつ真に選挙の無効を主張するものであれば何ら欠けるところはないのである。 そして、原告らの本訴請求がこれら同法の定める訴訟要件を充たしたものであることは疑いの余地もなく、被告の本案前抗弁は何ら理由がなく排斥されるべきである。 2 被告の見解に対する反論(一) 被告は議員定数条例の違憲・違法を理由として選挙の無効を争うことは、同法二〇三条による訴訟の本来予想しないところであり、その訴は不適法であるので却下されるべきであると主張する。原告らは被告の右主張が排斥されるべきであると確信するが、その理由は請 無効を争うことは、同法二〇三条による訴訟の本来予想しないところであり、その訴は不適法であるので却下されるべきであると主張する。原告らは被告の右主張が排斥されるべきであると確信するが、その理由は請求原因3(一)で定数条例の違憲違法を理由として同法二〇二条の異議申立が許される根拠として述べたところと同一である。 これに対し、被告は、同条の訴訟が民衆訴訟であることを挙げ、本来権利救済を目的としたものではないのだから、権利の侵害の救済を理由とする原告の主張は失当であるとし、むしろ抗告訴訟の途が選択されてしかるべきであるとする。 しかし選挙の効力を争う抗告訴訟が許されないことは公選法、行政事件訴訟法の諸規定から明らかなところであり、公選法は、選挙の重要性に鑑み、その公正な監視を選挙人に委ねることとし、その公正の担保として同法二〇三条において必ずしも自己の権利が侵害されたことと関わりなく選挙人という資格により提起できる民衆訴訟を規定した。しかし、これは公益上の必要から権利を侵害されていない選挙人でも訴訟を提起できることを定めたものであり、前述のように選挙に関しは抗告訴訟が許ざれていない関係上、選挙により違法に権利を侵害された選挙人もまたその救済を求めるためには同条によつて訴訟を提起せざるを得ないのである。その意味で、同法二〇三条は、選挙の公正さを担保する役割と併せて、無効な選挙により基本的権利を侵害された者に対する救済の役割をも内包していることは明らかであり、被告の主張は的外れのものである。 また、被告が主張する地方自治法一二条および七四条の条例制定、改廃の直接請求は、地方公共団体の長に対して議会を招集し、付議することを義務づけるものにすぎず、また原告らが本訴で求めているような今回の選挙に関しての救済には全く無力であり、このような制度が存する 改廃の直接請求は、地方公共団体の長に対して議会を招集し、付議することを義務づけるものにすぎず、また原告らが本訴で求めているような今回の選挙に関しての救済には全く無力であり、このような制度が存することをもつて、公選法二〇三条の訴訟による救済の必要性をいささかなりとも減ずるものではないことは明らかである。 (二) 被告は、本件選挙を無効とし、それゆえ江戸川区選挙区に於ける当選人の当選の効力を否定した場合、現行法上右当選人に代る正当な議員を選出すべき再選挙の方途が存在しないことを理由に、本件請求を却下すべきてあると主張している。そして、再選挙の方途が現状では存在しないがゆえに、無効判決は議会の今後の存続すらも不可能ならしめることになる、という被告の主張は、一見憲法が到底容認しない事態として、重大な考慮を要求するものであるかの如く映ずる。しかし、ここには一つのトリツクが隠されている。再選挙不能=議会麻痺という不都合な事態は、選挙の効を宣言する判決それ自体によつて招来されるものではなく、あくまでもそれは、選挙の効力が定数配分条例の違憲無効を理由として否定された場合についての再選挙の方途を具体的に定めていない議会や行政機関側の怠慢によるものである。ゲリマンダーやハトマンダーと言われた例を引き合いに出す迄もなく、議会内多数派党派により定数配分条例が、憲法原則から逸脱或は之に違反する事態は常に予測される。 そうであるとするならば、そのような違憲条例に基づいて選挙が強行されてしまい、その選挙の効力が後日裁判所により否定された場合についての是正方法を予め講じておくことは、裁判所に違憲立法審査権を与えている憲法に照らし、議会としてとるべき当然の責務といえよう。「法の不備」とは、即ち議会の怠慢であり、現今の如く、内閣提案立法が殆んどを占めるという現状では ておくことは、裁判所に違憲立法審査権を与えている憲法に照らし、議会としてとるべき当然の責務といえよう。「法の不備」とは、即ち議会の怠慢であり、現今の如く、内閣提案立法が殆んどを占めるという現状では、それはひいては、行政の怠慢である。被告の主張は、自らも含まれる行政の怠慢を理由として、憲法に反する事態を事実上追認することを求める如きものである。 しかも、本件の場合、具体的には現行法上は、再選挙の方法がないとは言え、現実に存在しないとは必ずしも言いえない。けだし、例えば裁判所の違憲無効判決を受け、立法府が、自ら及び東京都議会の責任に於て、生ぜしめた異常な事態を解決するため、緊急に臨時法(東京都議会議員定数の適正化と都議会再建のための臨時法)を制定し、この臨時法の下に再選挙を施行することは必ずしも不可能とは言えまい。これはあくまで一例にすぎないが、地方議会そのものが、自ら憲法によつて与えられている民主的自治権を否定する如き定数条例を制定することによつて招いた事態の解決方法としては、このように、一時的に公正な第三者機関(国会、裁判所等)の管理下ての選挙実施という方法も許される可能性があろう。(米アイオア州憲法三条三六項は、この方向をとつている。)(三) 被告は、本訴請求に関し、高度の政治問題であることを理由とし、司法権が濫りにこれに介入すべき筋合のものではないと主張する。 しかし、原告らが本訴で問題としているのは、選挙権に対する違法な侵害である。選挙権は、さきに詳述したとおり、民主政治に不可欠な極めて重要な基本的権利であり、それだけにその侵害に対しては一層きびしい司法的精査に服せしめられるべきといわなければならない。 3 結び以上のとおり、被告の本案前抗弁は排斥されるべきものであり、この点に関しては、判例でも、最高裁昭和三九年二月五 しては一層きびしい司法的精査に服せしめられるべきといわなければならない。 3 結び以上のとおり、被告の本案前抗弁は排斥されるべきものであり、この点に関しては、判例でも、最高裁昭和三九年二月五日大法廷判決以降再三判断が示されており確定している。 三原告の主張(被告の主張に対する反論) 1 都議会議員定数をめぐる公選法及び地方自治法の改正、定数条例の改正の経緯(一) 公選法二六六条二項の新設と定数条例改正に関する都議会内の議論(1) 背景事情昭和三〇年代に入り急速に進行した都心部から周辺部への人口の流出現象は、昭和三〇年代当初にはほぼ各選挙区の人口に比例していた都議会議員定数の配分を徐々に不均衡なものにしていつた。昭和三七年頃には、都心選挙区と周辺区及び市郡部選挙区との定数配分の不均衡は極めて顕著なものとなり、到底公選法旧一五条七項の定める人口比例原則から容認しえないと考えられるまでに至り、都議会では、超党派で自治省及び国会に対し、このような不正常な事態を解消すべき議員定数上限枠引上げを中心とした法改正を強く要求していた。公選法二六六条二項は、そのような背景のなかで新設されたものであつた。 (2) 立法の経緯公選法二六六条二項新設の議案は、第四〇回国会(昭和三六―三七年)に他の公選法の条項の改正案とともに提出されたが、連座制の強化など議論の多い改正点が多々あつたため、両議院の委員及び本会議での討論でも同条項の新設については全く触れられることがなかつた。このようにして、公選法二六六条二項は、それがどのような目的のために新設されるのか、どのように解釈すべきなのかについて、全く国会で議論されることがないまま、可決されるに至つた。 (3) 公選法二六六条二項の役割公選法二六六条二項は、もともと総定数増加による定数是正を れるのか、どのように解釈すべきなのかについて、全く国会で議論されることがないまま、可決されるに至つた。 (3) 公選法二六六条二項の役割公選法二六六条二項は、もともと総定数増加による定数是正を意図していた都の強い働きかけによつて新設されたものであつたが、結果として新設された同条項は定数の是正を体現したものではなく、むしろ巧みに選挙区間の定数の不均衡を隠ぺいする役割を果すものであつた。それのみにとどまらず、同条項は行政庁の恣意的な解釈により定数不均衡を是認する法的な根拠とさえされてしまつたのである。すなわち、同条項は、「1」特別区の存する区域を定数配分の上で一つとみなすことによつて、特別区内の都心区と人口増加の著しい近郊市郡部との間の大きな定数の不均衡を隠ぺいする、「2」特別区内の定数の配分は人口比例によらなくてもよいとの行政解釈をとるとによつて、特別区内の都心区と周辺区の定数不均衡をも正当化する、という役割を担つたのである。 公選法二六六条二項の新設は、本来人口の移動に伴つて定数の是正をはかつていかなければならないにもかかわらず(同法旧一五条七項から当然のことである)、むしろ法律に違反する現状を是認するために法規自体を歪めて例外を設けたものといえる。同条項新設の理由としては抽象的に特別区の特殊事情ということが挙げられるのが常であるが、この特殊事情というのも、内容をつきつめれば昼間人口の問題につきるのであり、昼間人口問題が人口比例による定数配分を否定する根拠にならないことは、後に述べるとおりである。 このように、特別区の特殊事情というのは単なる名目にすぎず、定数の不均衡な現状をなんとか正当化しようというところに公選法二六六条二項新設の理由が存するのである。同条項の解釈に関しても、同条項は特別区の存する区域内の定数配分については何 単なる名目にすぎず、定数の不均衡な現状をなんとか正当化しようというところに公選法二六六条二項新設の理由が存するのである。同条項の解釈に関しても、同条項は特別区の存する区域内の定数配分については何ら触れていないのであつて、当然その基準は、同法旧一五条七項の適用により単純人口比例原則によるべきことになるはずである。 (4) 公選法二六六条二項新設に伴う定数条例改正の審理経過同法二六六条二項が新設された後、被告は、この法改正を踏まえ、都議会議員定数条例の改正案を作成し、都議会に提出した。これは、同条項の行政解釈をも早速とり入れたものであつて、当然のことながら従前と全く同一の現状維持の定数配分案であつた。ところが都議会では、この改正案をめぐり委員会及び本会議で活発な論議がなされた。 当時総務首都整備委員会で交わされた議論の内容を簡単に要約すると、「1」被告は定数不均衡を是認する改正案を提案する理由として都心区の昼間人口の大きさや、都財政に占める高い担税力を挙げているが、これらは定数格差を是認する理由になり得ない。「2」公選法二六六条二項の特例に従つて定数配分することはゲリマンダーなどの悪弊を残すことになり不当である。「3」定数配分の基準としては単純人口比例原則こそ正当である。等であつた。論議の末、同委員会は結論として公選法二六六条二項の特例による定数配分は不当であるが、次回選挙が近々に迫つていることでもあるので、やむを得ず暫定的に昭和三八年施行の選挙に限つて現行定数配分のまま選挙を行ない、将来はこの特例によることなく単純人口比例の原則による旨決議し、改正条例案を本会議に回付した。本会議ではこれを受け、同改正条例案を可決するとともに右と同様の趣旨の付帯決議を行つた。 以上の経過に明らかなとおり、都議会においては公選法二六六条二項の改正にも 議し、改正条例案を本会議に回付した。本会議ではこれを受け、同改正条例案を可決するとともに右と同様の趣旨の付帯決議を行つた。 以上の経過に明らかなとおり、都議会においては公選法二六六条二項の改正にもかかわらず、この特例は不当なものてあり、定数配分はあくまで単純人口比例原則によるべきであることが確認され、特例による選挙は厳に昭和三八年施行の選挙のみにとどめ、将来は単純人口比例原則に従うべきことが決議されていたのである。 (二) 地方自治法九〇条二項及び公選法一五条七項但書の新設(1) 背景事情昭和三七年改正された定数条例は、前記のように次の選挙までに改正されるべきであるとの付帯決議付の暫定的なものであつた。そのため定数条例の改正は都にとつて急務になつていた。そのため、昭和四〇年以降、同四四年の都議会議員選挙に向けて定数条例改正の作業が都議会事務局のサイドで本格的に進められることとなつた。しかし、昭和三七年の条例改正時の、定数配分は単純人比例原則による、との確認にもかかわらず、その改正作業の姿勢は極めて現状維持的な後退したものであり、まず基本方針として各選挙区の現行議員数については全く削減を加えないことが大前提とされた。そのため、「1」特別区間における定数格差については公選法二六六条二項の行政解釈を採用し、既に格差が顕著であつたにもかかわらず、そのまま据置ということにされ、「2」ただ、公選法二六六条二項の新設にもかかわらず特別区の存する区域とそれ以外の市郡部との定数の不均衡は、周辺部への人の流出現象のその後の進展により一層顕著なものとなつていたので、この点は改正せざるを得ない、というのが事務局サイドの改正方針であつた。単純人口比例によるべしとの都議会での確認は全く骨抜きとされてしまつたのである。 ところで前記「2」の改正は、特別区の たので、この点は改正せざるを得ない、というのが事務局サイドの改正方針であつた。単純人口比例によるべしとの都議会での確認は全く骨抜きとされてしまつたのである。 ところで前記「2」の改正は、特別区の存する区域の現行議員数はそのままにして、これとの対比で市郡部の定数を改正するというものであつたため、当然市郡部の定数は現行より増加し、全体としての現行の議員定数では足りないということになつた。都内部での試算によれば、市郡部に新たに六名の定員増を要し、都全体の総定員数を現行一二〇から一二六にする必要が指摘されていた。しかし、当時地方自治法九〇条は都道府県議会の議員数の上限を一二〇名と制限していたため、都が特別区の存する区域と市郡部との定数格差に前記手直しを加えるためには、是非とも地方自治法九〇条の改正が必要であつた。そのため、都は自治省及び内閣の諮問機関である選挙制度審議会に同法改正の要請を繰りかえすこととなつた。その結果として成立したのが地方自治法九〇条二項の新設であつた。 この条項は、以上のような背景事情を知らなければ、その立法趣旨(国会では単に「最近の特別区の区域における都の行政の実態とその制度上の特殊性に鑑み、都の議会の議員の定数について特例を設けることとする」と述べられているが、抽象的で趣旨不明である。)、どうしてこのような規定の仕方になつたのか(例えば「一五〇万人」という数字がどこから出てきたのか)が恐らく理解できないであろう。しかし、この条項に基づいて計算すると都の議員定数が丁度一二六(都議会事務局サイドの試算と全く同数)となることがわかれば、この条項が特別区の特殊事情などの装いをこらしてはいるが、要するに現状の議員数を変更しないまま、定数を手直ししようという都の意向が反映されて新設されたものであることが、理解されるのである。 れば、この条項が特別区の特殊事情などの装いをこらしてはいるが、要するに現状の議員数を変更しないまま、定数を手直ししようという都の意向が反映されて新設されたものであることが、理解されるのである。 更に重要なのは、本条項の新設に伴つて、地方議会議員選挙における人口比例原則を規定した公選法一五条七項に但書が設けられたことである。すなわち、都の特例的取扱いは、単に都に対する例外的規定を新設させただけではなく、地方選挙一般に適用のある原則的規定に一般的除外規定を設けさせることとなつた。 (2) 立法の経緯地方自治法九〇条二項の新設議案は、第六一回国会(昭和四三年ー四四年)に政府より提出され、さしたる議論もないまま可決されている。同条項改正案に伴つて提出された公選法一五条七項但書新設議案についても全く議論がなされていない。 (3) 現行定数条例(本件条例)の制定地方自治法九〇条二項、公選法一五条七項但書の新設をうけ、昭和四四年都議会では定数条例の全面改正の審議に入り、現行定数条例(本件条例)を制定した。本件条例は前述した改正方針から明らかな様に、現状維持を基本としたものであつて、特別区間の格差是正には全く触れず、地方自治法九〇条二項新設により生じた六名の増員を市郡部にふりわけるというだけのものであつた。格差是正のための抜本的解決はされなかつたのである。 (三) 地方自治法九〇条二項の再改正昭和四四年の地方自治法九〇条二項の新設に伴う増員六名を市郡部に配分したことにより、区部対市郡部の定数格差は一旦縮小されたが、その後も人口の周辺部への流出現象はとどまることがなく、昭和四〇年後半以降、区部と市郡部の定数格差は再び顕著なものとなつた。都は当初公選法一五条七項但書を根拠にその不均衡を放置していたが、同五〇年の国勢調査の結果はそのような姿勢 象はとどまることがなく、昭和四〇年後半以降、区部と市郡部の定数格差は再び顕著なものとなつた。都は当初公選法一五条七項但書を根拠にその不均衡を放置していたが、同五〇年の国勢調査の結果はそのような姿勢を許さないまでに定数格差を顕在化させた。昭和四四年の定数配当基数は、区部一〇三・〇八八(実際の議員数一〇三名)、市郡部二二・四九四(同二二名)であつたが、同五〇年の配当基数は、区部九二・五八六(同一〇二名)、市郡部三二〇四九(同二二名)となつていたのである。このような現実を前に、都は再び定数条例の改正を検討せざるを得なかつたが、結局その方針は定数配分の抜本的改正ではなく、従前と同じく現状を維持したままで、総定員数を増員させ手直しをはかるということに落着いた。 このような都の意向と要請を受け、昭和五三年地方自治法九〇条二項が再び改正された。同条項の改正により同条項中の「一五〇万人」(これはもともと何らの根拠もない数字である)が「一〇〇万人」に引き下げられた結果、都は定数を一二八名まで増員できることとなつたのである。同条項の改正議案は第八〇回国会(昭和五一ー五三年)に提出されたが、国会では委員会及び本会議で全く論議されないまま可決されている。 地方自治法九〇条二項の改正の後、都では定数条例を改正し昭和五二年六月三日に定数を一二六名に、同五六年三月同一二七名に増員させて今日に至つている。 (四) 結び選挙民一人一人の投票権の価値が平等であることは、民主主義の大原則である。 人口の移動現象によつてその価値の不均衡か生じているとすれば、それは極めて大きな問題であり、直ちに新しい人口分布に見合つた定数配分の是正がなされ、投票権の平等が回復されなければならないのは当然であろう。しかるに東京都は、今まで述べたように投票権の価値に不均衡が生じているにもかかわ であり、直ちに新しい人口分布に見合つた定数配分の是正がなされ、投票権の平等が回復されなければならないのは当然であろう。しかるに東京都は、今まで述べたように投票権の価値に不均衡が生じているにもかかわらず、定数配分の抜本的解決を行おうとはせず、国に要請して都だけの特例立法措置を設けさせることによつて格差を巧みに隠ぺいし、あるいは増員により若干の手直しを加えるだけで済ませてきたのである。 その根底にあるものは各選挙区の現行議員数は削減しないという一種の既得権的観念であることは疑いない。しかし人口の移動現象は今後も続くことが予想される。抜本的な定数是正以外に真の解決策はあり得ない。 2 裁量権をめぐる被告の主張について被告はまず、地方公共団体議会(とくに都議会)議員定数配分については、当該議会に、国政選挙(衆参両院選挙)に於けるより以上に、広い裁量権が認められているとの一般論を展開する。その論拠として被告の挙げるのは、第一に、地方自治の理念(「一、地方公共団体の議会が有する裁量権」)であり、第二に、公選法一五条七項但書「特別事情」規定であり、第三に、公選法二六六条二項である。そこでまず、これらの点について検討し、それがすべて根拠のないものであることを明らかにする。 (一) 地方自治の原則と投票価値の平等被告は、地方自治の理念から、住民の自由で濶達な自治意識による運営の重要性、法の制約を最小限にして自主的に運営されることの重要性を指摘する。このこと自体にはおそらく何人も異論はないであろう。ところが、被告は、そこから「故に」として、定数条例の適否の問題は、憲法……との関係で極端に不平等である場合は格別、それ以外は常に立法政策の問題に留まり、違憲問題を生ずる余地はないと結論づけている。言いかえるなら、地方議会の行為は、極端に違憲でなければ 否の問題は、憲法……との関係で極端に不平等である場合は格別、それ以外は常に立法政策の問題に留まり、違憲問題を生ずる余地はないと結論づけている。言いかえるなら、地方議会の行為は、極端に違憲でなければ、違憲問題は生じないというのである。この乱暴な議論が何故に前段の嵩高な理論と「故に」で結びうるのか原告らには到底理解できない。 地方自治の本旨が全うされるためには、「住民の住民による住民のための政治」がここに於ても貫徹されることが不可欠であることは、被告が前段で述べる通りである。そして、選挙に於ける投票価値の平等原則は、憲法上、このような民主制実現の最善の方途及び前提として捉えられているものであることは、さきに述べた通りである。そうであるならば、自治の原則に従い議会が都民全体の意思が十分都政に反映しうるような公正かつ効果的な代表制度を確立すべく定める定数配分条例は、国の選挙に於けると全く同じく投票価値の平等原則を可能な限り尊重し、そうすることによつて住民の民主主義的権利を十分に平等に保障するものでなくてはならないということは、自明の理となる筈である。国会議員選挙に於ける最高裁判決等では合理性を有する不平等か否かを違憲・合憲の判定基準としていることは、周知の通りである。してみると、極端な不平等か否かを判定基準にすべし、とする被告の主張は、明らかに右に反し、地方公共団体議会議員定数の配分については、国会に於けるより投票価値の平等を重視しなくてよい、との主張と理解される。しかし、この主張は、自治権を憲法に違反することのできる自治権と捉え、自主性を憲法に違反することのできる自主性とでも捉えない限り成り立ち得ない。地方自治といえども憲法上の諸原則に拘束される。否、むしろ、憲法上の諸原則を遵守することによつて、はじめて、地方自治の理念は全うされるのであ 反することのできる自主性とでも捉えない限り成り立ち得ない。地方自治といえども憲法上の諸原則に拘束される。否、むしろ、憲法上の諸原則を遵守することによつて、はじめて、地方自治の理念は全うされるのである。 (二) 公選法一五条七項但書について昭和四四年法改正により加えられた同条項但書についての被告の主張は、「逐条解説公職選挙法」(自治省選挙部選挙課長大林勝臣外一名共著)の説明を殆んどそのままの形で流用したもののようであるが、その解説に於ても、被告が流用した部分に続いて、この「特例は、あくまでこのような特別の事情のある場合に限つて適用されるものであり、その場合に於ても、……地域間の実質的均衡を図るための最小限度の範囲にとどめること」と、人口比例原則の重要性を改めて喚起しているのであり、決して、被告が言わんとする如く「人口比例によらない配分を広く議会の裁量に」まかせたようなものではない。 又、被告自身が述べているように、「議員が単なる選出単位たる地域の利益代表に留まるのでなく、全都的利益を代表する者である」ことを想起するならば、同条項但書規定をこの解説が述べるような理由(=「それぞれの地域の代表を、それぞれの地域の特殊性に応じて確保する」ことにより「行政の円滑な推進を期す」ること)によつて、憲法上の要請たる投票価値の平等原則に例外を設けうるとする解釈・運用は、違憲の疑いが極めて強いものといわざるを得ない。けだし、平等な投票権の要請は、憲法上の基本的人権の範疇の問題であり、これに比し、解説が挙げ、被告が流用している理由は、単なる行政の都合や便宜の問題にすぎないからである。 最後に、仮に一般論として被告の立場を採るとしても、そのことから、都心区(中央、千代田)の配分を人口比例より多くし、周辺区の配分を少なくしなければならないことの説明はつ 題にすぎないからである。 最後に、仮に一般論として被告の立場を採るとしても、そのことから、都心区(中央、千代田)の配分を人口比例より多くし、周辺区の配分を少なくしなければならないことの説明はつかない。その為には、都心区の行政需要が周辺区のそれより高く、しかも、この需要が十分に満たされていないという事実が前提とされなければならない。しかし、現実にはこれら都心区は、巨額の法人税、固定資産税収入などにより財政的には他のどこよりも豊かであり、その結果、公園、公的施設(公民館、文化施設、下水道等)等の面でも他のどこよりも恵まれた環境に置かれている。これに比し、周辺区は道路、下水道、学校、公的住宅、公園、各種公的施設等、あらゆる面で、行政需要が満たされない侭、需要と現実の行政サービス充足との格差は広がる一方であるといつても過言ではない。してみると、被告のいうような理由による特別事情での配分の例外規定を仮りに合憲とするならば、東京都の場合それは行政需要が山積し、これへの対応が大きく立ち遅れている周辺区への配分を多めにするということになるはずである。 (三) 公選法二六六条二項について被告は、再三に亘り、同条項の解釈として「特別区内の配分については、人口比例のみに基づくことなく、……議会が適宜これを定めることを認めている」と主張している。これは明らかに、前記逐条解説の誤読に基づくものてあろう。つまり、逐条解説は「各選挙区に於ける議員の定数」という表題のもとに、一五条七項を説明しているが、まず人口が、国勢調査等の結果によるべきことを解説し、次いで、二六六条二項により都の議会では特別区の存する区域を一の選挙区とみなして、定数を配分し、それを更に特別区内の各選挙区に配分することができることを解説している。そして解説は、それにすぐ続けて「この場合かな 六条二項により都の議会では特別区の存する区域を一の選挙区とみなして、定数を配分し、それを更に特別区内の各選挙区に配分することができることを解説している。そして解説は、それにすぐ続けて「この場合かならずしも人口比例によらなくてもよいが、人口比例を原則とし、特に合理的理由がある場合は、おおむね人口を基準としながら、当該理由に基づく合理的基準により調整を加えて配分することが適当であろう」と述べている。被告はおそらくこの記述から、所論の如き解釈を主張しているのであろうが、これは、解説が、それにすぐつづけて、項を改め「ただし書の規定が入る迄は、各選挙区ごとに選挙すべき数は、必ず人口に比例して条例で定めることとされていた」との書き出しで、前記但書についての解説に入つていることからも明らかな通り「この場合」以下の解説の記述は、一五条七項但書を念頭に置いたものといわざるを得ない。この点での被告の主張は全くの謬論というべきである。 なお、被告が特別区の沿革としてしきりに主張する諸事情は、本件争点とは殆んど関連がないものであるが、あえて一言指摘すると、被告のいうように、特別区は全体として一体であり、各区毎の独立性は市町村に比して弱いという事情は、そうであるならば一層、その一体性のある特別区内に於ては、単純に、機械的に、人口比例により議員配分をすればよい、ということを裏付けこそすれ、その逆に、特別区内に於て地域を区切つて、特殊性を強調し配分に格差を設けなければならない、ということを決して裏付けるものではない。 3 人口比例の概念についての被告の主張について被告は、以上概観したような論拠により、地方議会議員の定数配分に於ける議会の裁量権を強調しているが、更に、それを前提にして、一五条七項の人口比例の規定そのものの意味を全く独創的な論理を使つてすりかえて 告は、以上概観したような論拠により、地方議会議員の定数配分に於ける議会の裁量権を強調しているが、更に、それを前提にして、一五条七項の人口比例の規定そのものの意味を全く独創的な論理を使つてすりかえてしまつた。被告によれば、一対四の投票価値の差は、一五条七項本文の人口比例原則そのものの範囲内の問題であり、そこには特別事情は何ら必要とされないというのである。この被告の立場は、特別事情がある場合には、当然それ(一対四)以上の投票価値の差が認められるとの主張を内包している。しかし、被告が任意合区の規定を足がかりに展開するこの論理は詭弁以外の何者でもない。けだし、第一に定数を減らす選挙区として何故わざわざ最小複数区たる二人区を選ばなければならないのかが不明である。 実際には、最大複数区から回せばよいのであるから、ことさらに極端な例をひいての被告の論理は全くの空論というしかない。第二に、この合区に関する規定そのものが一五条七項の人口比例原則に対する法定の例外規定なのであるから、被告のようにこの規定から逆に原則規定たる人口比例原則を解釈することは、方法論としても正しくない。 4 被告の主張する本件の特別事情について被告の一般論(「人口比例原則に対し、地方議会にはこの例外をつくる広範な裁量権が与えられている」という)が成り立ち得ないものであることは、以上に検討した通りである。国政選挙と地方選挙とで投票価値の平等原則に差を設けてもよいとすべき理由は、何一つ見当らない。そして、公正で効果的な代表の実現という目的を考えるとしても、人口比例の原則による以上、その原則からの偏差の許容度、非人口的要素容認の程度には自ずから限界があり、おおむね二対一以上の格差は、いかなる非人口的要素によつても、これを正当化することができるものではない。 ところで、被告は、このよう からの偏差の許容度、非人口的要素容認の程度には自ずから限界があり、おおむね二対一以上の格差は、いかなる非人口的要素によつても、これを正当化することができるものではない。 ところで、被告は、このような誤りに満ちた一般論的立場を前提にしつつ、「人口比例によらなくてもよい特別の事情」をあげて本件条例の効力について主張しているので、最後にこれについて検討を加える。(なお、被告は、「選挙施行の都度、条例制定権能を有する議会に於て、真摯な討議を経て所要の改正が加えられてきた」と主張するが、これは明白に事実に反する。選挙の都度改正してきたという事実はないし、改正が問題とされ討議されている場合でも、それは極めて部分的な問題についての討議にとどまり、本件で問題となつている人口比に対し、現実の定数配分が大きく食い違いを生じているという問題の討議、すなわち、選挙区割りの再検討を含む全選挙区に於ける定数配分の抜本的改正が真摯に討論され実行に移されたことは全くない。このことを指して原告らは漫然と放置してきたと主張しているのである。)(一) 昼間人口論について被告は、被告の唯一の実質的論拠と思われる昼間人口論を持ち出している。この被告の論理の特徴の第一は、はじめは「昼間人口のもたらす行政需要の影響」と述べ、考慮さるべき特別事情は「行政需要」(のばらつき等)であると言いながら、いつの間にかそれは「昼間人口が多いこと」それ自体が特別事情であるかの如き主張にすり替つている点にある。昼間人口と夜間人口とのそれ自体の問題は、選挙人に、どの選挙区での選挙権を与えるかを決する際、選挙人の選挙区との接点をどこに着目して把握するか、の指標としての意味以上ではありえない。現行法体系は、この問題については、居住(つまり夜間人口)を基準に把握するということで統一されているのであ 、選挙人の選挙区との接点をどこに着目して把握するか、の指標としての意味以上ではありえない。現行法体系は、この問題については、居住(つまり夜間人口)を基準に把握するということで統一されているのであり、「自分は勤め先(例えば千代田区内の会社)周辺で一日のうち十数時間を過ごし、自宅(例えば江戸川区内)には、単に寝に帰るだけだから、千代田区で投票させて欲しい」と言うことはできない。昼間人口が多いことそれ自体を理由に、本件の如く、千代田区住民に江戸川区住民の三・八倍の投票権(価値)を与えてよしとする被告の見解は、実質的には、千代田区住民には、居住者としての自分自身の投票権の外、通勤者(昼間人口)としての他人の投票権の代理行使を認めること、と同一の意義を内包する。昼間人口が問題となるのは、あくまでそのことにより行政需要その他の面で、どのような特別事情が生じているのか、という限りに於てであることを忘れてはならない。しかる時は、先に見たように、現在の東京都の現状に於ては、行政サービス等の立ち遅れは昼間人口の多い都心区にではなく、むしろ昼間人口が少ない周辺区に際立つているのである。しかも、仮に昼間人口が多いことによつて何らかの行政需要が生ずるとしても、それが夜間人口(住民)に大きな投票価値を与えることによつて、解決されるかどうか、その関連性は不明である。 (二) 歴史的事実について被告は、従来二三区を独立選挙区とし、各区は最低二人区としてきた歴史的事実があると主張するが、先に被告自身が主張するように、二三区内についてはこれを一体として把え、それほど各区の独立性を問題とする必要はないというのであれば、人口比例に応じた結果として、一人区が生じたとしても何ら不都合はないはずであり、どうしても最低二人との立場をとるなら、任意合区の制度の活用により投票価 独立性を問題とする必要はないというのであれば、人口比例に応じた結果として、一人区が生じたとしても何ら不都合はないはずであり、どうしても最低二人との立場をとるなら、任意合区の制度の活用により投票価値の平等権をそれほど侵害せずに、一人区出現を回避することは容易にできるのであるから、これ又、論拠としては極めて薄弱だと言わざるを得ない。 5 結び以上、検討を加えてきたように、被告の主張はいずれも採りえないものであること明らかである。しかも、大切なことは、本件で問題となつている定数配分は、三〇年以上も前に、その当時の諸事情を踏まえて制定されたものであつて、決してその当時から大きく変容した現在の諸事情を踏まえ、これについて真摯な討議をした上で、制定されたものではない、という厳然たる事実である。 被告の主張は、全体として見ると結局、地方議会議員選挙に於ては国政選挙に於けるように投票価値の平等原則ーすなわち、選挙に於ける国民の基本的人権ーを第一義的に尊重する必要はなく、行政の都合、便宜を第一義的に優先してもよい、との思想に貫かれており、恐るべき地方自治軽視の発想であると言わざるを得ない。 (被告)一本案前の抗弁 1 (一) 原告らが請求の原因として主張するところは、本件配分規定は憲法前文、一四条一項、一五条一項、三項、四四条但書、九三条一項及び公選法一五条七項に違反するから、その効力がなく、かかる効力なき条例に基づき施行された本件選挙の江戸川区選挙区の選挙は無効であるというのみであつて、当該選挙区にかかる選挙の管理執行上の瑕疵は全く無効事由として主張していないところ、本件のごとき定数配分規定そのものの違憲、違法を事由とする訴訟については、もし、配分規定それ自体に瑕疵があつたとしても選挙管理委員会の権能をもつては是正不可能なことであり、そ 主張していないところ、本件のごとき定数配分規定そのものの違憲、違法を事由とする訴訟については、もし、配分規定それ自体に瑕疵があつたとしても選挙管理委員会の権能をもつては是正不可能なことであり、その限りで選挙管理委員会が被告適格を有し得ないことは、明らかである。従つて爾余の点につき論ずるまでもなく、この点において原告らの訴は既に不適法として却下を免れないというべきである。 (二) 仮に、右主張が容れられないとすれば、そもそも公選法二〇二条及び二〇三条に基づく選挙訴訟は、当該選挙の管理執行上瑕疵があつた場合、これを無効として早期に改めて適法な再選挙を実施せしめることを目的として規定したものであり、被告を選挙管理委員会としていること及び短期間内の再選挙を予定していること(公選法一一〇条)からしても右は明らかなところといわなければならず、たとえ選挙を無効としたとしても公選法の規定する期間内の再選挙の実施が困難であつたり、仮りに再選挙を実施するとしても、その瑕疵を是正することができないことが明らかなような場合までも対象とした規定ではなく、かかる論拠の正当な所以は、行政事件訴訟法五条及び四二条において、公選法に規定される訴訟は民衆訴訟の一種として、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起されるものに限り、しかも法律に定める事項に限り許されるものと明定されており、しかも公選法二一九条をもつて行政事件訴訟法三一条の事情判決の規定を殊更排除している点に鑑みて明らかなところといわなければならない。よつて、原告らの訴は民衆訴訟として許容されている事項以外の事項を目的とした訴として却下を免れない。 (三) 原告らは、右のような理論に基づき、原告らの訴が却下されてしまうとすれば、選挙の管理執行上の瑕疵以上の違法性を帯び、現に原告らの基 ている事項以外の事項を目的とした訴として却下を免れない。 (三) 原告らは、右のような理論に基づき、原告らの訴が却下されてしまうとすれば、選挙の管理執行上の瑕疵以上の違法性を帯び、現に原告らの基本的権利(「投票の結果価値の平等」)が重大な侵害を受けているにも拘らず、救済の途を閉されてしまうのであつて右の如き被告の主張は本末転倒の謗りを免れない、と反論する。しかしながら、前述した如く選挙訴訟は、原告らの権利救済を目的とした制度ではなく、行政機関の法規に適合しない行為の是正を求めるため選挙人の資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で法律で定められた事項に限り提起が認められる行政訴訟上の特別の訴の一方式に過ぎない。それ故、若しそれ原告ら主張の如き個人の権利救済をその目的としているものとすれば、もともと選挙訴訟にはなじまず行政訴訟の原則である抗告訴訟としてこれを問擬すべきこととなろう。 (四) 選挙訴訟が前述した如き限定的規定として設けられた所以は、選挙法の実体規定を違憲とする判決が下れば、選挙は全部無効となり、議員は失格し、議会の権能は止まり、収拾し難い結果を生じ、たとえ本件の如き事案につき提訴の途を開かなかつたことにより仮りに投票権の結果価値につき不平等という結果が生じたとしても、議会の機能喪失その他収拾し得ない事態の発生に比すると軽重の差があまりにも明白であるからである。 特に地方公共団体においては、議会が唯一の議事機関であることから、仮りに前記定数条例に基づく定数配分規定が違法とされた場合条例改正に着手しようにも本件選挙に基づく議員は失格し、議事機関たる議会そのものが存在しないことになり、従つて審議が不可能となる。このことにより、再選挙を行うため必須の条件たる定数配分規定の改正が不可能となり、地方公共団体の制度上予想し難 議員は失格し、議事機関たる議会そのものが存在しないことになり、従つて審議が不可能となる。このことにより、再選挙を行うため必須の条件たる定数配分規定の改正が不可能となり、地方公共団体の制度上予想し難い状況を招来する結果となるのである。(国会の場合は、二院制を採つているので、衆議院が解散しても、参議院の緊急集会により法律審議は形式上可能である。)(五) なお、原告らは、原告らの投票権の侵害については選挙訴訟以外に他に救済される方法がないと主張するけれども、前述した如く個人の権利侵害を根拠とするのであれば、行政訴訟の常道に従い抗告訴訟の途が選択されてしかるべきであろうし、また、原告ら主張の目的を達成するためには前記定数条例の改正が必要不可欠なことというべきところ、条例改正については、地方自治法一二条及び七四条があり、原告らの如き選挙権者は直接該条例の改正請求がなし得るのである。従つて、若し、原告らの主張が都民全般の肯認するところであれば、この方法により目的を達成することが可能といわなければならないから、救済方法がないとの原告らの主張はきわめて不相当な主張というほかない。 2 原告らの請求は、左の点から考えても、訴の利益を欠き却下を免れない。 地方自治法九〇条四項によれば、議員定数の変更は一般選挙の場合でなければできないものとされており、選挙区別定数の変更もまた論理上右同様と解せざるを得ない。ところで、若し原告らの主張が容認されると仮定して考えてみれば、江戸川区選挙区の議員数はこれを増加せざるを得ず、このことは全体の定数増加となり右九〇条に真正面から抵触する。 加えて当該選挙区の選挙が無効であると宣言された場合には、それ自体に起因して全体として新たな不均衡の結果が招来されることを、特に指摘しておく必要がある。すなわち本件選挙を無効とする から抵触する。 加えて当該選挙区の選挙が無効であると宣言された場合には、それ自体に起因して全体として新たな不均衡の結果が招来されることを、特に指摘しておく必要がある。すなわち本件選挙を無効とするならば、これを上廻る議員一人当り人口を有する選挙区についても当然当該選挙区における選挙を無効としなければ均衡を失することになることは明白といわねばならない。しかるに、このような選挙区における選挙を無効とし、その再選挙を施行する方法は、現行公選法に定められていないから、より格差が大きいことが明らかである選挙区における選挙はこれが有効とされ、有効とされる選挙区より格差の小さい本件選挙のみを無効とし、現に都政にたずさわつている議員の地位を喪失せしめることになるが、かかる奇怪な論理は到底容認しうるところではない。容認しえないとすれば、より格差の大きい選挙区の再選挙をいかなる方法によつて施行することになるのであろうか。 また、仮に全体の定数を増加させずに江戸川区選挙区の議員数を増加させようとすれば、選挙区別定数の全面改正を行わざるを得ず、しかも、既に有効として確定した他の選挙区の議員の地位を一選挙区の為に一方的に剥奪することなど法理上も許されないところといわなければならないであろう。結局、原告らの本訴請求は、条例を改正し議員定数を増加するか、しからずんば定数の再配分を行わない限りその目的を達し得ないものであり、しかも、かかる改正は前述した如く次の一般選挙の場合に限り認められているに過ぎないから、原告らの選挙無効請求が容認されると仮定してみても、これに適合する条例改正の途はなく、従つて右に基づく再選挙は絶対に不可能といわざるを得ない。要するに、このような行政措置で是正することが不可能なことを目的とする訴は、もともと訴の利益を欠く不適法な訴として却下を免 例改正の途はなく、従つて右に基づく再選挙は絶対に不可能といわざるを得ない。要するに、このような行政措置で是正することが不可能なことを目的とする訴は、もともと訴の利益を欠く不適法な訴として却下を免れないものである。 原告は現行法上再選挙の方法がないことを承認し、しかも、右欠陥は立法の怠慢であつて、無効判決後適宜立法措置を講ずれば足りるとの所説を展開しているが、原告の主張のような全部無効論に立脚する限り、現在の都議会議員全員は住民の代表とはいえずその資格を有しない者となるから、定数条例の改正自体を行い得ないこととなろう。また、原告の主張する国会における立法措置については、地方自治法及び公選法により都議会議員の定数及びその選挙区別配分を当該団体の自治立法権に基づく条例に委ねていることからして、定数配分自体を法律で定めることはできないと解すべきであり、仮に国会での立法措置が可能であるとしても、憲法九五条の規定にかんがみても到底短期間でこれをなし得るとは解し得ず、結局、議会のない都となつてしまい、地方自治体として機能しない存在と化してしまうであろう。要するに、原告の主張は現行選挙制度の法体系を無視した空論に過ぎず、既に被告が再三にわたり主張しているように、再選挙の方法の不存在はそれ自体に立法意思が明確にされているというべく、立法の怠慢ではなく、原告の如き請求を原因とする選挙無効訴訟の如きは司法審査の対象外との立法趣旨に基づくものである。 3 本件訴は、高度の政治問題に属する事項を請求の目的としているものであるから、司法審査になじまないものとして却下を免れない。 高度の政治問題は司法審査の対象とならないものであるところ、議会主義を採用する現憲法下においては、その議会構成因子たる議員定数、選挙区、選挙区別定数等は地方自治体にとつて高度の政治的課 免れない。 高度の政治問題は司法審査の対象とならないものであるところ、議会主義を採用する現憲法下においては、その議会構成因子たる議員定数、選挙区、選挙区別定数等は地方自治体にとつて高度の政治的課題であり、本件の如き議員定数配分問題は歴史的、社会的事情等を踏まえ、時代に適応するよう政治ないし立法の分野で解決さるべき性質の問題であつて他の機関が濫りにこれに介入すべき筋合のものではない。 司法には違憲立法審査権が付与されている。したがつて、たとえ政治問題として自治体の議会の専権事項とされている事項についても、司法はその違憲の有無を審査し得るものであるとの見解が成り立ち得る。しかしながら、政治問題として地方自治体の議会の専権事項とされた事項につき、司法権が介入し得る場合は、その司法的決定のために満足すべき規準が存在する場合に限られ、右以外の場合は司法判断不適合として、司法審査を抑制しなければならないものである。 これを本件についてみると、ある選挙区の議員一人当りの人口を他の選挙区のそれと比較した場合において、その較差がいかなる数値を超えれば、選挙権に極端な不平等を生ぜしめたといえるか、もともと人口差以外の諸要素も総合勘案の上決せられなければならない問題であるから、何人にとつても一見明白な規準など存しないというほかはないのである。もつとも、公選法一五条七項は選挙区別定数につき人口比例の原則をかかげながら、その但書において事情によつては人口比例の原則によらないことをも容認している。従つて、地方公共団体は、人口以外の各種の諸要素を勘案し、これを決定し得るものといわなければならない。 いずれにしても、本件の如き選挙区別定数の是非については、これを決定する明白な規準を司法権が持ち合せていないことは明らかであるから、司法は立法を尊重し、その判断を抑 るものといわなければならない。 いずれにしても、本件の如き選挙区別定数の是非については、これを決定する明白な規準を司法権が持ち合せていないことは明らかであるから、司法は立法を尊重し、その判断を抑制しなければならない。 二請求原因の認否 1 請求原因1、2(一)、(二)の各事実は認める。 2 同3(一)の主張は争う。同3(二)のうち、各人口数、議員数等の諸数値は、(2)(イ)の千代田区選挙区の定数が一名と定められ、議員一人当り人口が五七、八八二人であつたとの点を除き、すべて認め、その主張はすべて争う。右千代田区選挙区の定数は二名であつた。同3(三)の事実は概ね認め、同3(四)、(五)、(六)の主張は全部争う。 三被告の主張(原告の主張に対する反論) 1 地方公共団体の議会が有する裁量権憲法一五条及び九二条、九三条によれば、地方公共団体の組織及び運営に関する事項は地方自治の本旨に基づき法律で定めることとされ、その議決機関たる議会の議員の選挙制度についても、当該地方公共団体の構成員たる住民が直接選挙によつて議員を選出すると定める以外に特段の制約条項はない。 このような規定のあり方は、地方自治が民主主義の実現のために不可欠なものであると同時に、本来地方公共団体はその構成員たる住民の自由で・達な自治意識によつて運営されるべきものであることを認識させるものである。また、そのためには法の制約は必要最小限に留めて、住民、より具体的には、その代表である長(すなわち知事及び市町村長)並びに議会の良識に基づく意思決定によつて、地方公共団体が自主的に運営されるべきであるとの崇高な自治の理念を示しているものである。 従つて、前記憲法の趣旨に則り制定された法律(地方自治法、公選法)に基づき、地方公共団体が制定している議員定数条例は、当該地方公共団 営されるべきであるとの崇高な自治の理念を示しているものである。 従つて、前記憲法の趣旨に則り制定された法律(地方自治法、公選法)に基づき、地方公共団体が制定している議員定数条例は、当該地方公共団体の議会の議員が単なる選出単位たる地域の利益代表に留まるものではなく、全都的利益を代表するものである点を考慮し、都民全体の意思が十分都政に反映しうるような公正かつ効果的な代表制度を確立すべく、当該地方公共団体の議会がその裁量権を行使してこれを決定した所産であるといわなければならない。故に定数条例の適否の問題は、憲法一四条の平等条項との関係上、それが極端に不平等である場合は格別、それ以外は常に立法政策の当否の問題に留まり、違憲問題を生ずる余地はないといわなければならない。 2 都道府県議会議員の定数配分に関する法律の規定都道府県議会の議員定数配分については、地方自治の基本法たる地方自治法(昭和二十二年法律第六七号)において、議員定数の上限を定め(同法九〇条)、公選法において、議員を選出するについての選挙区の決め方及び各選挙区に対する定数の配分方法を定めている。(同法一五条、二六六条及び二七一条)即ち(一) 都議会議員定数の上限地方自治法九〇条の規定によれば、直近の国勢調査(昭和五五年一〇月一日現在)における人口に基づいて算出される東京都議会議員定数の上限は、一二八人である。(この限度の下に都議会は本件選挙における議員の総定数を一二七人と定めた。)(二) 選挙区の決め方公選法によれば、議員の選挙区は郡或いは市の区域による(同法一五条一項)が、郡市の人口が当該都道府県の人口を当該都道府県の議会の議員定数をもつて除して得た数(以下「議員一人当り人口」と略称する。)の半数に達しない場合には、隣接の郡市と合せて一選挙区を設けなければなら が、郡市の人口が当該都道府県の人口を当該都道府県の議会の議員定数をもつて除して得た数(以下「議員一人当り人口」と略称する。)の半数に達しない場合には、隣接の郡市と合せて一選挙区を設けなければならない。(強制合区規定、同条二項)これに対して、人口が議員一人当り人口の半数以上あつてなお議員一人当り人口に達しない郡市については、独立した選挙区とするか或いは隣接する他の郡市と合せて選挙区を設けるかの選択を全く当該都道府県議会の裁量に委ねている。(任意合区規定、同条三項)更に、合区選挙区を設けるに当り、どのような郡市をもつて合区選挙区とするかもまた議会の裁量による。(同条四項及び六項)(三) 議員定数の配分方法公選法は、議員定数の配分方法について、次のとおり定めている。すなわち、各選挙区に対する定数配分は、原則として人口比例とするが、特別な事情がある場合には地域間の均衡を考慮して人口以外の諸要素をも総合勘案して行うことができる。(同条七項)全国的な傾向となつた近年の激しい都市部への人口集中化現象に伴い、都市中心部では、昼間人口が著しく増加し、それに反して夜間常住人口が減少するという状況が生じ、周辺部はこれと逆の現象を呈するようになり、更には郡部においてみられる急激な人口減少等に起因して、常住する住民数と地方公共団体の行政需要とが必ずしも一致しない状況が顕在化してきた。このような状況をふまえ、都道府県の役割は市町村を包括する広域の地方公共団体として市町村行政の補完及び広域にわたる行政を推進することにあるから、その公正円滑な運営を期するため各選挙区に対する定数を機械的な人口に比例して行うのではなく、人口比例原則に特例を設け、それぞれの地域の特性に応じて均衡のとれた配分を議会の裁量により可能ならしめようとするところにこのような規定 め各選挙区に対する定数を機械的な人口に比例して行うのではなく、人口比例原則に特例を設け、それぞれの地域の特性に応じて均衡のとれた配分を議会の裁量により可能ならしめようとするところにこのような規定が設けられた所以かある。 前述の事情に基づく特例に加え、東京都においては特別区の存する区域が一体として都市を形成しているという実態(詳細は後述する。)に照らし、公選法は次のような東京都に限り適用される特別の規定を設けている。すなわち、都議会議員選挙における選挙区及び各選挙区に配分する定数については、先づ特別区の存する区域を一市と看做して他の郡及び市との間に定数配分を行い、次いで特別区の存する区域に配分された定数について各選挙区に配分することができる。更に特別区内の定数配分については、人口比例のみに基づくことなく特別区において顕著な昼間人口と夜間人口の較差、常住人口数と行政需要とのアンバランス、特別区特有の歴史的沿革などの諸事情を考慮して、都議会が適宜これを定めることを認めている。 (同法二六六条二項)以上のような特別措置は、前述した地方自治の精神に、より適合する公正且つ効果的な代表制度確立のためのものであるから、違憲問題を生ずる余地はない。従つて、この特例を適用して制定された条例もまた適法であつて違憲とされる道理はない。 3 都議会議員定数配分の経緯以下、現実の都議会議員定数配分の経緯を述べ、右定数配分条例が違憲違法でない理由を明らかにする。 (一) 特別区制度の沿革と現状特別区制度は、特別区の存する区域(いわゆる二三区の区域)が全体として一都市を形成している実態に基づき、この区域における効果的な大都市行政の運営を図り、もつて地域住民の福祉増進に寄与するため、通常の地方制度(市町村と府県の二層構造)の特例として設けられた東京都に特 一都市を形成している実態に基づき、この区域における効果的な大都市行政の運営を図り、もつて地域住民の福祉増進に寄与するため、通常の地方制度(市町村と府県の二層構造)の特例として設けられた東京都に特有の制度である。この制度は、前述目的のため法制上都を一般的府県機能に加えて市町村機能の一部をも併せ持つ自治体として位置付け、更に特別区の行財政について幅広い調整権を都に付与している。この結果、特別区は原則として市と同様に位置付けられているが、その機能についていえば市と全く同一という訳ではない。 このような都に特有な大都市制度である特別区制度が設けられた所以は、その存する区域が、明治以来一つの都市として法制上位置付けられており、事実上も一体の都市として発展し現在に至つているという経緯があることにある。 (1) この特別区の沿革は、明治一一年の郡区町村編成法外二法の制定により東京府下に神田区等一五区が設置されたことに始まる。その後明治二二年の市制、町村制施行によりこの一五区の区域をもつて東京市が成立するが、その際一五区は東京市の区として存置され、区長は市参事会の選任(明治四四年市制の一部改正により市長の選任)とされる等東京市の下部機構(いわゆる行政区としての性格)に位置付けられた。以後昭和七年東京市の市域拡大により周辺五郡八二町村が東京市に編入され、この区域をもつて新たに二〇区が設置され、東京市の下部機構たる区は三五区となつた。 更に、昭和一八年に至り東京都制の施行により東京市は廃止されたが、区はそのまま東京都の内部機構の区として位置付けられた。(例えば区長は都書記をもつて充てる。処理する事務は財産及び営造物に関する事務並びに都条例に定める事務に限定する。)その後昭和二二年三月、三五区の統廃合が行われ二二区となつた。 昭和二二年五月地方自治法 ば区長は都書記をもつて充てる。処理する事務は財産及び営造物に関する事務並びに都条例に定める事務に限定する。)その後昭和二二年三月、三五区の統廃合が行われ二二区となつた。 昭和二二年五月地方自治法の制定により、東京都の区は特別区として一般の市に準じた基礎的自治体として位置付けられたが、一方都も市としての性格を失なわず、都と特別区との間の事務配分は一般の県と市の関係のように明確ではなかつた。しかし、特別区は基礎的自治体として条例規則の制定権、区税の賦課徴収権などを有し、併せて区長は、公選によることとされた。なお、同年八月練馬区が板橋区から分離し現在の二三区となつた。 その後昭和二七年八月、大都市行政の統一的能率的な処理を確保し、特別区の存する区域内における住民の福祉の増進を図ることを目的として、地方自治法の改正が行われた。この改正は、区の自治権を制限する方向で都区間の事務配分を明確にし、両者間の事務及び財源配分の合理化を図つたものである。この結果、区長も公選制から都知事の同意を得て区議会が選任する議会任命制に変り、また事務処理権能も縮少され、区は、法に限定列挙されたもののみを処理することとなつた。 以後昭和三九年及び同四九年の地方自治法の改正を経て、その事務処理機能も次第に拡大され、区長は公選制となつたが、依然として二三区が相互に深く結びつき全体として一都市を形成している実態には変化がみられない。従つて、このような都と区との関係は、一般の県と市との関係とは異なり、同一には論じ得ないところである。 (2) このような都と特別区との関係から、行政法令上も特別区の存する区域全体を一都市と認識する考え方は確立されているところであり、地方自治法二八一条乃至二八三条、地方税法七三六条、七三七条及び七三九条地方交付税法二一条、公選法二六六条、消防 法令上も特別区の存する区域全体を一都市と認識する考え方は確立されているところであり、地方自治法二八一条乃至二八三条、地方税法七三六条、七三七条及び七三九条地方交付税法二一条、公選法二六六条、消防組織法一六条乃至一八条、消防法三七条の規定などをその例としてあげることができる。 (3) 特に、特別区の存する区域においては、その居住地の如何にかかわらず住民に一定水準の行政サービスが確保されるよう、それぞれの区に財政的裏付を保障する制度が設けられている。 即ち、これは、都区財政調整制度と称せられる都と特別区との間にのみ設けられた制度である。 この制度は、地方自治法の制定と共に設けられ、同法二八三条に基づいた都条例を根拠としている。その内容は、都が特別区の存する区域において地方税法に基づき賦課徴収する市町村税のうちの特定税目の一定割合(昭和五五年度においては固定資産税、市町村住民税のうち法人分相当分、特別土地保有税の合計税額の一〇〇分の四四)及び以下に述べる「納付金」を財源として、公開されている各区共通の測定単位に基づき基準財政需要額と基準財政収入額とを算定し、前者が後者を上廻る特別区にはその差額を交付し、逆の特別区に対してはその差額を「納付金」として納入させるものである。 (4) また、各特別区はその地域環境、沿革、人口、交通機関などの諸条件の違いから、それぞれが特色ある地域性を示しながら、なおかつ一体の都市として発展を遂げ現在に至つている。従つて、現時点における例えば都市施設の整備状況などに着目すれば、各区が全く均一な状況にないことが認められるが、これをもつて地域的格差と解するのは、軽卒に過ぎるといわざるを得ない。何故かなら、これは明治以来の長い歴史的過程において、各種施策がその時々の行政需要に基づきなされてきた結果のあらわれであつ るが、これをもつて地域的格差と解するのは、軽卒に過ぎるといわざるを得ない。何故かなら、これは明治以来の長い歴史的過程において、各種施策がその時々の行政需要に基づきなされてきた結果のあらわれであつて、比較的早い時期から都市的形態を呈していた地域においては、それら施設の整備が早く行われたのに対し、近時に至り急激な都市化が進んだ地域においては、それら施設が未だ整備途上にあるがための差に過ぎないというべきであり、もともと地域格差をもつて論ずべき筋合のものではなく、あくまで一時的現象として論ぜられるべき性質のものである。 (二) 都議会議員の定数配分に関する法改正の推移近時において、急激な都市への人口集中が顕在化してきたが、かかる状況の下で、住民の意思を行政に十分反映せしめうる公正かつ効果的でより安定した代表制度を確立するため、地方自治法及び公選法は、種々の規定整備を行つてきた。 (1) 昭和三五年の国勢調査の結果、東京都への人口集中化現象が顕在化した。特に周辺地域において、その現象が著しく、都心部の夜間常住人口は相対的に減少した。更に都心部においていわゆる昼間人口が激増した。このことから、議員定数配分を夜間の常住人口に比例して行うということが、行政需要の実態を考慮するならば、必ずしも適当ではない状況となつた。この状況を踏まえ、昭和三七年法律第一一二号により所要の規定改正が行われた。 「1」 公選法二六六条二項の新設東京都における議会の議員定数配分について同法一五条の人口比例原則の例外を設けた。すなわち、特別区にあつては、その存する区域を一市と看做して他の都市との間に定数配分を行い、これにより得た特別区全体の定数を各特別区を選挙区としてそれぞれに配分する。更に各区に定数を配分する場合には、必ずしも人口比例によらなくともよいとした。(な 看做して他の都市との間に定数配分を行い、これにより得た特別区全体の定数を各特別区を選挙区としてそれぞれに配分する。更に各区に定数を配分する場合には、必ずしも人口比例によらなくともよいとした。(なお、この時点において右一五条七項には、ただし書の規定は設けられていない。)「2」 同法二七一条二項の新設都市部への人口集中とは対照的に、特に島部においては、人口減少に著しいものがあつた。このため昭和三七年一月一日現在設けられている島部を区域とする選挙区にあつては、その人口が減少し、当該都道府県の平均議員一人当り人口の半数に達しなくなつても、当分の間強制合区の対象から除外し、独立選挙区の維持を可能とした。(この結果、東京都においても昭和三五年国勢調査の結果議員一人当り人口の半数を下廻つた島部選挙区を独立選挙区として維持することが可能となつた。)(2) 昭和四〇年国勢調査に基づく人口異動の実態を踏まえ、昭和四一年法律第七七号により所要の規定改正が行われた。 公選法二七一条二項の一部改正強制合区の対象から除外する選挙区を、昭和四一年一月一日現在設けられている全ての選挙区に適用拡大した。これは、農村部における過疎化及び都市部への人口集中、更には都市部内部における人口流動が全国的な傾向となり、機械的な人口比例に基づく定数配分では、独立選挙区とはなり得ず、さりとて他の郡市と合区選挙区を構成することもまた適当でないと考えられる選挙区の発生が全国的となつたことから、これに対応する途を開いたものである。(なお、東京都選挙管理委員会事務局が昭和五四年七月一九日現在で全国を対象に実施した調査によれば、本条項の適用による独立選挙区は六都県九選挙区存在する。)(3) 更に昭和四四年法律第二号により所要の規定改正が行われた。 「1」 公選法一五条七項た 九日現在で全国を対象に実施した調査によれば、本条項の適用による独立選挙区は六都県九選挙区存在する。)(3) 更に昭和四四年法律第二号により所要の規定改正が行われた。 「1」 公選法一五条七項ただし書の新設前述のとおり、特別区の存する区域の選挙区間にあつては既に認められていることではあるが、他の全ての選挙区においても議員定数の配分について、必ずしも人口比例によらなくともよいとした。 この改正の趣旨は、全国的傾向となつた人口の都市部集中に起因する郡部人口の減少、都市部における昼間人口の増大及びこれに基づく行政需要の増加、更には都市中心部における夜間常住人口の減少などを、議員定数の人口比例配分を妨げる特別な事情と認識し、とくに都道府県行政の役割が広域にわたる行政及び市町村行政の補完にあるところから、その円滑な推進を図るため、従来の機械的人口比例に基づく選挙区間の定数配分に特例を設け、それぞれの地域の状況に即した定数配分を可能なさしめる途を設けたのである。 従つて、このような法改正の趣旨に照らせば、特別区の存する区域内における定数配分が単に夜間常住人口に比例していないことのみをもつて直ちに違法であるとする主張は、当を得たものではなく、むしろ、夜間人口以外の諸要素を適切に評価し、地域間の均衡を保持した配分を行うことこそ実情に即した適正な配分方法と言うことができる。 「2」 地方自治法九〇条二項の新設同条第一項は、都道府県の議会の議員の総定数の上限を一二〇人と定めているが、東京都についてはこれを上廻つて定数を定めうる特例を設けた。すなわち都が一般的府県行政に加えて、特別区の存する区域においては市としての役割を担つている法制上の特殊性に鑑み、特別区の人口一五〇万人に付一人の割合で定数を増加することができるとした。(この場合の上限を一三 一般的府県行政に加えて、特別区の存する区域においては市としての役割を担つている法制上の特殊性に鑑み、特別区の人口一五〇万人に付一人の割合で定数を増加することができるとした。(この場合の上限を一三〇人とする。)(4) 昭和五〇年国勢調査により、東京都における人口流動が一層激化したことが明らかになつたため、昭和五二年法律第四六号により所要の改正が行われた。 自治法九〇条二項の一部改正前項「2」に述べた都における定数増加の特例について、特別区の人口一五〇万人に付一人を、人口一〇〇万人に一人の割合とした。(この結果都議会議員定数の上限は、一二五人から一二八人となつた。)(三) 公選法における人口比例の概念ここで、公選法にいう都議会議員選挙における人口比例原則とは如何なる内容をもつものであるかを検討してみる。 公選法は、議員定数の選挙区別配分を人口比例で行うことを原則としているが、もとよりそれは、各選挙区の議員一人当り人口の完全な一致を意味するものではない。法の規定からして議員一人当り人口の間に次のような差が生ずるのは自明のことであり、また当然、法が予定しているところである。すなわち、当該都道府県の議員一人当り人口の平均を一とした場合、それに対する指数〇・五以上一・〇未満の都市については、隣接の郡市と合せて一つの選挙区(合区選挙区)とせずに、当該郡市のみをもつて独立の選挙区とすることができる。従つて、仮りにこのような郡市が多数存在し、(このような事例は特異なものではなく常に存在しうる。)これらの郡市をそれぞれ独立選挙区としようとすれば、そのそれぞれに定数一人を配分しなければならず、必然的に議員の総定数が、法の上限を超えてしまうことになり、特定の選挙区において、定数の減数が必要となる。例えば、前記指数二・〇を超える選挙区の定数を一 のそれぞれに定数一人を配分しなければならず、必然的に議員の総定数が、法の上限を超えてしまうことになり、特定の選挙区において、定数の減数が必要となる。例えば、前記指数二・〇を超える選挙区の定数を一人とするようにである。 その結果、指数〇・五で定数一人を配分された選挙区と指数二・〇を超えてなお定数一人の選挙区との間では、議員一人当り人口には「一対四以上」のひらきが生じることとなる。これは、公選法が明文をもつて許容している選挙区間の議員一人当り人口のひらきである。 いいかえるならば、法のいう人口比例の原則とは、一対四程度のひらきが生じても、なおこれをその概念に内包するものといい得るのである。かてて加えて、公選法一五条七項ただし書及び二六六条二項の規定の趣旨に鑑みるならば、議員一人当り人口のひらきが前記一対四程度に留まらず、それ以上のひらきが存在しても、それが特別の事情に基づくものであれば、法はそれを許容範囲にあるものとして、当然に有効と想定しているということができるのである。 従つて、議員定数配分に当り公選法が原則とする人口比例は、厳密な算術的な意味のものでないことは当然であり、更に前述法改正の趣旨を併せ考慮するならば、選挙区に定数を配分する際、議会は極めて広い裁量権を持つものといい得るのであつて、選挙区間の議員一人当り人口にひらきがあるからといつて、それのみをとらえ、直ちに違憲違法というのは全く当を得ない主張というほかない。 因みに、本件選挙における各選挙区間の議員一人当り人口を、直近の資料である昭和五五年国勢調査による人口(夜間常住人口)について検証する。特別区の存する区域の議員一人当り人口は八一、八五五人であり、最大人口を示す西多摩選挙区のそれは二〇四、二三九人であり、この両選挙区間の比は一対二・五〇(小数位以下第三位四捨五入以 ついて検証する。特別区の存する区域の議員一人当り人口は八一、八五五人であり、最大人口を示す西多摩選挙区のそれは二〇四、二三九人であり、この両選挙区間の比は一対二・五〇(小数位以下第三位四捨五入以下この項において同じ)を示すにすぎない。この程度のひらきは、特別の事情を云々するまでもなく当然に法の容認するところである。また特別区の各選挙区について同様に比較すると、議員一人当り人口について最小の千代田区選挙区のそれは、二七、四〇一人であるのに対し、最大の練馬区選挙区のそれは一四一、〇三五人であり両者の比は一対五・一五である。原告らの属する江戸川区選挙区のそれは一二三、七七二人てあり、同様の比較において一対四・五二である。また、特別区全体と千代田区選挙区との比は一対二・九九である。この程度のひらきも、前述した東京都における特例規定の適用の結果によるものであり、違憲違法を論ずる余地は全くないところといわなければならない。 (四) 定数条例改正の推移本件条例を沿革的にみると、昭和二二年都条例第三一号として初めて制定され、爾来数次にわたる改正を経て現在に至つているものである。今回の改正を含め昭和三七年以降の改正経緯を以下に述べるが、いずれの改正においても前述した憲法並びに地方自治法及び公選法の各規定に適合しており、その内容及び改正手続に何らの違憲違法はない。従つて、本件条例は過去及び現在において適正な条例であるといわなければならない。 (1) 昭和三七年改正において、選挙区別定数配分について公選法二六六条二項(特別区の存する区域を一市と看做し定数配分を行う)及び二七一条二項(島部選挙区について人口が減少しても独立選挙区とする。)の規定を適用した。この結果、定数配分は次のとおりとなり、選挙区及び各選挙区に配分すべき定数には変更がなかつた。 を行う)及び二七一条二項(島部選挙区について人口が減少しても独立選挙区とする。)の規定を適用した。この結果、定数配分は次のとおりとなり、選挙区及び各選挙区に配分すべき定数には変更がなかつた。 区分人口人口のみに基づく議員配分基数条例定数東京都計九、六八三、八〇二一二〇・〇〇〇一二〇特別区計八、三一〇、〇二七一〇二・九七六一〇二内千代田区選挙区一一六、二九九一・四四九二市郡部計一、三三五、〇九四一六・五四四一六島部計三八、六八一 〇・四七九一なお、右昭和三七年の条例改正においてなされた付帯決議は、定数配分の原則が人口比例にあつたこと及び次回以降定数配分規定の改定に際してはこの原則を踏まえ人口動態に応じた定数配分を検討すること並びに人口増加に対応して議員総定数の増員に努力することの決意を内外に示したものであり、都議会は右決議の趣旨と共にその後における昭和四一年法律第七七号による公選法二七一条二項中独立選挙区として存置する対象を島部を区域とする選挙区のみならず、昭和四一年一月一日現在存置されている全ての選挙区に拡大するとの法改正及び昭和四四年法律第二号による同法一五条七項に但書を新設した趣旨をも勘案して所要の改正をしてきているのであるから、付帯決議の趣旨は充分生かされており、原告主張のごとくこれが没却されたなどのことはない。 (2) 昭和四四年改正(同年三月都条例第五五号による全部改正)において、 改正をしてきているのであるから、付帯決議の趣旨は充分生かされており、原告主張のごとくこれが没却されたなどのことはない。 (2) 昭和四四年改正(同年三月都条例第五五号による全部改正)において、前述の選挙法改正に伴い、次の通り選挙区及び選挙区別定数配分の改正を行つた。 「1」 自治法九〇条二項の新設(特別区の存する区域の人口一五〇万人に付定数一人の割合で増加できる旨の議員定数の上限引上げ)により、議員定数の総数を一二〇人から一二六人とした。 「2」 増加分六人を多摩地区(特別区及び島部以外の地区)に配分し、多摩地区において選挙区の分区及び合区を行つた。 「3」 特別区の存する区域を一市として他の郡市との間に定数配分を行う場合に、公選法一五条七項ただし書を適用する。この結果特別区の存する区域に対し配分される定数は一〇三人のまま変更を生じなかつた。 (3) 昭和四五年国勢調査に基づく特別区の存する区域における人口が、八八四万余人であつたことに伴い、議員定数の上限が一二六人から一二五人に減少した。また、選挙区別の人口数にも変動があつたので、昭和四八年には、次の通り所要の改正を行つた。 「1」 特別区の存する区域における各選挙区別定数の見直しにより、この区域に配分される定数を、一〇三人から一〇二人とした。(台東区選挙区及び品川区選挙区において各一人の定数減、並びに、練馬区選挙区において一人の増が行われた。)「2」 多摩地区において、従前の北多摩第二選挙区(府中市、小金井市、国分寺市及び国立市の区域をもつて構成、定数四人)を分区し、府中市の区域をもつて府中市選挙区(定数一人)及び残余の区域をもつて北多摩第二選挙区(定数三人)を設けた。その他郡部町村の市制施行に伴なう規定整備を行つた。 この結果、選挙時における定数配分は、次の通りとなつ をもつて府中市選挙区(定数一人)及び残余の区域をもつて北多摩第二選挙区(定数三人)を設けた。その他郡部町村の市制施行に伴なう規定整備を行つた。 この結果、選挙時における定数配分は、次の通りとなつた。 区分人口人口みに基づく議員配分基数条例定数東京都計一一、四〇八、〇七一一二五・〇〇〇一二五特別区計八、八四〇、九四二九六・八七一一〇二内千代田区選挙区七四、一八五 〇・八一二二市郡部計二、五三三、八六二二七・七六三二二島部計三三、二六七 〇・三六四一(4) 昭和五二年の地方自治法九〇条二項の一部改正(議員定数増加の基礎人口を特別区の存する区域の人口一五〇万人に付定数一人を人口一〇〇万人に付定数一人とする。)に伴い、議員総定数の上限が一二八人となつたことから、その総定数を一二人から一二六人に改正、これにより多摩地区において次の通り選挙区の分区及び定数配分の改正を行つた。 「1」 町田市選挙区において定数を一人から二人に増員した。 「2」 北多摩第一選挙区(定数三人)を、北多摩第一選挙区(定数二人)と北多摩第五選挙区(定数一人)とに分区した。 なお、審議の過程において、一部の議員からこれとは別に、「1」千代田区選挙区の定数を二人から一人とする。「2」町田市選挙区の定数を一人から二人に増加する、ことを内容とする改正案が提出され併せて審議されたが、最終的には提案者によりこの案は撤回された。このことは、また、特別区 の定数を二人から一人とする。「2」町田市選挙区の定数を一人から二人に増加する、ことを内容とする改正案が提出され併せて審議されたが、最終的には提案者によりこの案は撤回された。このことは、また、特別区の存する区域内においては、合区選挙区をつくらず、定数配分についても各選挙区ごと最低二人とすることが議決権を有する都議会において再度確認されたことを意味する。 この結果、本選挙における定数配分は、次の通りとなつた。 区分人口人口のみに基づく議員配分基数条例定数東京都計一一、六七三、五五四一二六・〇〇〇一二六特別区計八、六四六、五二〇 九三・三二七一〇二内千代田区選挙区六一、六五六 〇・六六五二市郡部計二、九九三、〇四七三二・三〇五二三島部計三三、九八七 〇・三六六一(5) 昭和五六年改正において議員総定数を一二六人から一二七人に増員し、南多摩選挙区(定数一人)から日野市選挙区を分区し、これに定数一人を配分した。 なお、この定数条例改正に際し、都議会は、都議会各派から選出された委員(議員)をもつて定数問題を検討する機関(六人委員会と称した。)を設置し、同委員会は、数次に亘り慎重な討議を重ね前記内容の改正案を取りまとめた。これを都議会は、全会一致で議決したものである(これまでの条例改正においても同様の審議方式が採られてきた。)。 (五) 条例改正において考慮された特別の事情都議会議員の定数条例は、以下に記 た。これを都議会は、全会一致で議決したものである(これまでの条例改正においても同様の審議方式が採られてきた。)。 (五) 条例改正において考慮された特別の事情都議会議員の定数条例は、以下に記す特別事情を考慮し、地域間の均衡を保つているものであるから適法である。 定数条例については、人口の流動性が著しい現況下において都民全体の意思を都政に反映しうる公正でかつ効果的な代表制度を指向しつつ、都議会議員選挙施行の都度、条例制定機能を有する議会において、法改正の趣旨及び都において考慮すべき諸般の事情について真摯な討議を経て所要の改正が加えられてきた。従つて、このことは、定数配分規定については法改正の趣旨に則りその都度有効適切な措置がなされてきたと言うべきであつて、漫然と放置してきたなどとの原告らの主張は事実を見誤つており、失当も甚しい。 更に、都心部における昼間入口のもたらす行政需要の都政への影響、都市住民の生活の多面性及び流動性などを考慮するならば、単純な夜間の常住人口のみに基づいて定数配分を行うことは、むしろ特別区の存する区域においては勿論のこと、東京都のような大都市における議会への住民の代表を配分する方法として実情にそわず、前記の如き夜間人口以外の諸要素をも適切に評価することこそ実情に即した適正な配分方法というべく、都議会は右を特別事情の大きな要素のひとつととらえ、前記の如き条例改正を行つてきたものである。 仮に昼間人口に基づいた現行選挙区に対する定数配分を試みると、次の通りとなる。(ただし昼間人口について現時点で得られる最新資料は昭和五〇年国勢調査に基づくものである。)区分人口議員配分基数現行定数東京都計一三、三五九、五一一人一二七・〇〇〇(一二七人) 〇年国勢調査に基づくものである。)区分人口議員配分基数現行定数東京都計一三、三五九、五一一人一二七・〇〇〇(一二七人)一二七特別区計一〇、七二五、三八六人一〇一・九五九(一〇二人)一〇二市郡部計二、五九九、九六〇人二四・七一六(二四人)二四島部計三四、一六五人 〇・三二二(一人)一(島部については公選法二七一条一項の規定を適用して定数を配分する。)特別区の存する区域においても、千代田区選挙区においては昼間人口が九三四、四二七人と夜間常住人口の一七倍以上を示し、その差が極めて大きい。これに対する配分基数も八・八八三人(九人)となる。一方、原告らの所属する江戸川区選挙区についての配分基数は三・九七六(四人)である。 また、特別区の存する区域全体に対する定数配分は、昭和二六年施行の選挙時以来一〇二人(ただし、昭和三四年から同四四年までに施行された四回の選挙については、一〇三人)と変らず、その間一貫して二三区を各々独立選挙区とし、各選挙区に配分する議員定数は最低二人としてきた歴史的事実がある。 従つて、二三特別区選挙区において、このような沿革、更には夜間の常住人口及び昼間人口その他の諸要素を総合勘案のうえ各区に対する定数配分を行つてきたということは、真に都の実態に沿つた適切なものと言うべきであつて地域間の均衡も保たれているから、公選法第二六六条第二項並びに第一五条第七填ただし書の規定に適合しており、何ら公選法の規定に違背するものではない。 4 結びこれまてるゝ述べてきたように東京都は、他の道府県と全く同一には論じられないところであり、選挙法制上も都の特殊性を配 し書の規定に適合しており、何ら公選法の規定に違背するものではない。 4 結びこれまてるゝ述べてきたように東京都は、他の道府県と全く同一には論じられないところであり、選挙法制上も都の特殊性を配慮して、議員定数並びにその配分に関し各種の特例規定(公選法及び地方自治法)が設けられ現在に至つているのであつて、都議会は、右特例規定の精神に則り選挙区別定数配分についても、その裁量権を行使して真摯な討議を経て適宜適正な条例改正を行つてきたものであり、その手続の点においても何らの瑕疵はない。従つて、本件選挙の基礎をなす本件配分規定に違憲違法はなく、それに基づき施行された本件選挙も適法であるから、原告らの主張はその理由かなく、失当として棄却を免れない(なお、原告らは、単純人口比例による定数配分によれば江戸川区選挙区の定数が一名増加すべきであるとする主張のであるから、少なくとも現に選出されている議員は適式に選出された議員とみるべきであつて、その議員資格を喪わしめる理由がなく、この点からみても本件江戸川区選挙区の選挙を無効とすべき事由もないということになろう。)。 第三証拠(省略) 理由 一請求原因1、2の各事実(当事者及び原告らの異議申立に対する被告の決定に関する事実)は当事者間に争いがない。 二本件訴の適法性について原告らの本訴請求は、本件条例一条ないし三条の本件配分規定は違憲、違法であるから、公選法二〇三条により本件選挙を無効とすることを求めるというものであるところ、被告は、このような理由による訴は、同条に基づく訴としては不適法であると主張する。 <要旨第一>1 そこで判断するに、公選法二〇三条が、地方公共団体の議会の議員の選挙の効力に関する訴訟は同法二</要旨第一>〇二条による都道府県の選挙管理委員会の しては不適法であると主張する。 <要旨第一>1 そこで判断するに、公選法二〇三条が、地方公共団体の議会の議員の選挙の効力に関する訴訟は同法二</要旨第一>〇二条による都道府県の選挙管理委員会の決定又は裁決に対してのみその選挙管理委員会を被告として提起すべきものと定めていること、右訴訟は公選法その他の選挙法令の規定に違反して施行された選挙の効力を失わせ、改めて適法な再選挙を行わせることを目的とするものであり(公選法一一〇条参照)、同一の選挙法令に基づく適法な再選挙が可能であることを前提としていると解されることなどを考えると、右二〇三条に基づく訴は、選挙の管理、執行上の瑕疵によりその効力を失わせるべき場合を念頭において制定されたものであり、当該選挙の基礎となつた条例の違憲、違法を理由として選挙の効力を失わせることまでは予定していなかつたとも解することができる。しかし、選挙の基礎となつた条例自体が違憲、違法であることは、当該選挙の効力に関し、選挙の管理、執行上の瑕疵以上に重大な瑕疵であるのに、現行法上、右二〇三条以外には選挙の効力を争うべき訴訟を定めた規定は存在せず、これを右二〇三条の訴の対象外とするときは、これについての司法的救済、是正の途をとざすというきわめて不当な結果となることを考えれば、選挙人は、これを選挙無効の事由と主張して右二〇三条の訴を提起することができると解すべきである。そして、このような判断は、国民の基本的権利を侵害する公権力の行使に対してはできるだけ是正、救済の途が開かれるべきであるという憲法上の要請に照らしても、是認されるべきである(最高裁昭和五一年四月一四日大法廷判決民集三〇巻三号二二三頁参照)。 2 なお、被告は、定数配分規定の違法を理由に当該選挙区の選挙を無効としても、条例改正により当該選挙区の定数だけを是正 きである(最高裁昭和五一年四月一四日大法廷判決民集三〇巻三号二二三頁参照)。 2 なお、被告は、定数配分規定の違法を理由に当該選挙区の選挙を無効としても、条例改正により当該選挙区の定数だけを是正して再選挙を実施することは不可能であり、このような行政措置で是正することが不可能なことを目的とする訴は訴の利益を欠き不適法であると主張するが、条例改正等により定数を是正することが絶対的に不可能であるかどうかについては、原告らの主張するように、なお検討の余地があるばかりでなく、このような理由から、直ちに訴えの利益を欠くとの結論を導き出すことは、本末転倒の不当な議論というべきであり、採用することができない。 3 また、被告は、本訴請求が高度の政治問題に属する事項を請求の目的としているから、司法審査になじまない旨の主張をするが、なるほど地方自治の理念の下では地方公共団体の議会議員の定数配分をどうするかについても議会に一定の裁量が認められるべきであり、そのかぎりにおいて、それが政治問題である側面を有することは承認しうるが、後述のとおり、各選挙人の投票の価値の平等が憲法上の要請であり、地方公共団体の議会議員の選挙に関し、これを明文化した公選法一五条七項が存在する以上、定数配分規定の違憲性、違法性についての判断が司法審査を排除するほどの高度な政治問題とは到底いえないことが明らかである。 4 そして、前述のとおり、原告らの公選法二〇二条一項による異議申立に対する本件決定が原告らに交付されたのは昭和五六年七月二八日であるところ、本訴が提起されたのがそれから三〇日以内である同年八月二五日であることは本件記録上明らかであるから、本訴は公選法二〇三条の訴として適法というべきである。 二本件定数配分規定の違憲・違法性の有無について原告らは、本件定数配分規定は 内である同年八月二五日であることは本件記録上明らかであるから、本訴は公選法二〇三条の訴として適法というべきである。 二本件定数配分規定の違憲・違法性の有無について原告らは、本件定数配分規定は人口に比例せず、地方公共団体の議会議員の選挙における投票価値の平等を保障する憲法前文、同一四条一項、一五条一項、三項、四四条但書、九三条一項、公選法一五条七項に違反すると主張するので、検討する。 1 憲法・公選法と投票価値の平等(公選法一五条七項、二六六条二項の解釈)(一) 憲法一四条によつてすべて法の下に平等であるとされる国民は、同法一五条一項、三項による公務員の選挙における選挙権の行使の場においても平等に取扱われるべきであり、しかも、それは形式的な選挙資格の平等だけではなく、より実質的な投票価値の平等をも内包するものと解すべきであつて、したがつて、選挙区制をとる選挙にあつては各選挙区間で選挙人の投票価値に不平等が生じないように定数の均衡がはかられるべきことは憲法上の要請である。このことは、憲法四三条一項、四四条但書の存する国会議員の選挙についてあてはまるだけではなく、憲法九三条により住民の直接選挙によつて選挙されるべき地方公共団体の議会の議員の選挙についても、その議会が地方自治の本旨にのつとり住民の意思を忠実に反映すべきものであることに照らしても、同様にあてはまるということができる。 (二) そして、選挙区制の選挙における投票価値の平等は、なによりも各選挙区への議員定数の配分が人口に比例してなされることにより実現されるべきものである。 しかし、公選法一五条一項は都道府県の議会議員の選挙の選挙区は郡市の区域によるとの原則を採用しているところ(同法二六六条一項は特別区について市に関する規定を適用すると定めているから、都議会議員選挙に関し し、公選法一五条一項は都道府県の議会議員の選挙の選挙区は郡市の区域によるとの原則を採用しているところ(同法二六六条一項は特別区について市に関する規定を適用すると定めているから、都議会議員選挙に関し特別区の存する区域では、特別区の区域が選挙区となる。)、このように行政区画によつて選挙区割をするとなれば、市(特別区を含む。以下同じ。)、郡の各人口が定数配分するについて過不足がないことはむしろ稀であろうから、人口に正確に比例して定数配分することは断念せざるをえない。しかしながら、行政区画による選挙区割は姿意的な、あるいは不自然な区割を抑制するうえでも、また歴史的、地域的まとまりを重視する点でも合理性があるといえるから、その結果として生ずる各選挙区間の定数の不均衡、選挙人の投票価値の不平等が極端に拡大しないような配慮がなされているかぎり、このような選挙区割規定自体が違憲であるということはできない。そして、同法一五条二項のいわゆる強制合区規定同三項のいわゆる任意合区規定も、右のような不均衡、不平等が極端に拡大しないための措置を定めた規定であるということができる。それゆえ、右一五条一ないし三項の選挙区割に関する規定それ自体を違憲とみる余地はないというべきである。 <要旨第二>そして、各選挙区において選挙すべき地方公共団体の議員の数(以下「議員定数」という。)に関し、</要旨第二>同法一五条七項は、「人口に比例して、条例で定めなければならない。ただし、特別の事情があるときは、おおむね人口を基準とし、地域間の均衡を考慮して定めることができる。」と規定しているが、同項の趣旨を、投票価値の平等という憲法上の要請に照らして解釈すると、議員定数の配分にあたつては、各選挙区の人口が最も重要かつ基本的な要素となるべきであるからできるだけその人口に正確に比例させ が、同項の趣旨を、投票価値の平等という憲法上の要請に照らして解釈すると、議員定数の配分にあたつては、各選挙区の人口が最も重要かつ基本的な要素となるべきであるからできるだけその人口に正確に比例させて配分を行うべきであるとの原則が、同項本文において明文化されたものということができる。しかし、投票価値の平等といつても議員定数を人口に比例させることが唯一絶対の基準であるとまではいえず、むしろ投票価値の平等は、議会が選挙制度、代表民主制の原理からみて正当に考慮することができる他の政策目的との関連で調和的に実現されるべきものであり、定数配分にあたつて、形式的に人口のみを基準としたのでは、いわゆる公正かつ効果的な代表という見地からみて不相当である場合もあり得、このような場合にそれぞれの具体的な特殊事情を正当に考慮して地域間の本質的な均衡をはかるために、人口比例からある程度はずれた配分をすることも、投票価値の平等という憲法上の要請に反しないものというべきであり、同項但書はこのような趣旨を明文化したものということができる。このように同項但書は、あくまで投票価値の平等の実現を前提とするものであり、人口比例の原則から著しくはずれた定数配分を地域間の均衡の名の下に合法化する規定ではないのであつて、このような意味で憲法に違反するものではないということができる。 ところで、何をもつて同項但書にいう特別の事情とみるか、それをどのように考慮するか、いかなる状態をもつて地域間の均衡がはかられているとみるかといつた点については、一義的で客観的な基準を見出すことは困難であり、各議会がこれを議決するにあたつては、地方自治の本旨に照らして、種々の政策的判断を含む相当な裁量権を行使することができると考えられ、議決にあたつてその裁量権を合理的に行使したものとして是認することが 議会がこれを議決するにあたつては、地方自治の本旨に照らして、種々の政策的判断を含む相当な裁量権を行使することができると考えられ、議決にあたつてその裁量権を合理的に行使したものとして是認することができるか否かによつて、当該定数配分規定が同項に違反するか否かを判断すべきである。しかし、前述のようにあくまで投票価値の平等が前提である以上、当該配分規定の適用による各選挙人間の投票価値の不平等が通常特別の事情として考えられる種々の事情があつたとしても、なお一般的にみて到底合理的とは考えがたいほどの格差にまで達しているときは、もはや議会の裁量権の合理的行使の範囲を超えているものと推定すべきであつて、このような著しい格差をなお正当化するような特段の理由が示されないかぎり、その配分規定は同項に違反するというべきである。 なお、前述のとおり、市郡の区域をもつて選挙区とするとの原則を採用し(同法一五条一項)その区域の人口が議員一人当りの人口(当該都道府県の人口をその議会の議員定数で除して得た数)の半数に達しないときは、隣接する他の郡、市(特別区)の区域と合せて一選挙区を設けなければならず(同条二項、いわゆる強制合区規定)、その区域の人口が議員一人当りの人口の半数以上であつても議員一人当りの人口に達しないときは隣接する他の郡、市の区域と合せて一選挙区を設けることができる(同条三項、いわゆる任意合区規定)との選挙区割に関する公選法の規定からすると、数理的には、議員一人当りの人口の半数をわずかに上まわる人口の郡、市の区域を独立の一選挙区としうる結果、議員一人当りの人口の二倍に近い人口の郡、市の区域の選挙区の議員定数の配分を一人とする事態も生じうることになるが、このような配分結果は、右各規定があるからといつて、当然に許容されるものではなく、任意合区規定の活用 口の二倍に近い人口の郡、市の区域の選挙区の議員定数の配分を一人とする事態も生じうることになるが、このような配分結果は、右各規定があるからといつて、当然に許容されるものではなく、任意合区規定の活用、全体の定数配分の見直しなどによつて、このような配分結果にならぬようにする余地がないかどうかなどの検討をふまえて、投票価値の平等、人口比例の原則を基本原理とする同条七項に違反するかどうかが吟味されなければならないのである。ましてや、右各規定を根拠とし、合区問題を度外視して、各選挙区の議員一人当り人口(当該選挙区の人口を配分された議員定数で除して得た数)の格差が最多区と最少区とで四対一程度までは当然に許容されると解することは、到底許されない。同様に、公選法二七一条二項は、その区域の人口が議員一人当りの人口の半数にも達しなくなつた選挙区についても、合区しないことができる場合を規定しているが、歴史的沿革、地理的情況などの特殊事情により、地域間の実質的均衡をはかるためには、当分の間合区をしないことが相当である場合もありうるから、この規定自体は憲法に違反するとはいえないが、その適用の結果としての定数配分が当然に、憲法や公選法一五条七項に違反しないことにはならず、ましてや、この規定を根拠にその適用の結果生じうる定数配分上の格差と同程度の格差が一般的に公選法上当然に是認されていると解することは到底できない。 ただ、郡、市の区域をもつて選挙区とするとの原則を採用し、これを修正するものとしてすでにみたような合区に関する規定をおいた結果、全体の定数をいかに忠実に人口に比例して配分しようとしても、各選挙区の定数に相当な格差が生ずることは避けがたい。人口比例の原則を修正するに足りる要素の有無、程度は具体的なそれぞれの場合によつて異なるものというべく、したがつて、こ 比例して配分しようとしても、各選挙区の定数に相当な格差が生ずることは避けがたい。人口比例の原則を修正するに足りる要素の有無、程度は具体的なそれぞれの場合によつて異なるものというべく、したがつて、これ以上の数値の場合には憲法、公選法の趣旨に違反しその数値に達するまではそうでないとの画一的な基準を設けることは当を得たものではない。それゆえ都道府県議会の議員定数の各選挙区への配分について、公選法一五条七項違反とするにいたらない最大格差(当該選挙区の議員一人当り人口が最少の選挙区とそれが最多の選挙区との右議員一人当り人口の比率)の絶対的基準を見出すことは困難といわざるを得ない。 <要旨第三>(三) ところで、都議会議員の定数配分については、公選法二六六条二項が、まず、特別区の存する区域</要旨第三>(二三区の全域)を一つの選挙区とみなして、この選挙区と二三区以外の区域の各選挙区とに議員定数を配分し、次いで、この二三区全域に配分された議員定数を各特別区を区域とする選挙区(以下「特別区選挙区」という。)に配分する方法をとることができる旨の特別の定めをしているが、この方法をとつた場合には、特定の特別区選挙区と二三区以外の区域の選挙区との間の定数配分の上で不均衡を生ずる結果になることも否定し得ない。 しかし、地方自治法二八一条、同条の三、三八二条、同条の二その他の行政法令において、特別区の存する区域(二三区全域)を一体として取扱い、大都市としての一体性を確保する措置がとられており、特別区制の歴史的沿革からみても、特別区の存する区域が全体として一都市を形成していることは公知の事実であつて、右二六六条二項が、都議会議員の定数配分にあたり特別区の存する区域を一つの選挙区とみなす方法を採用したことにはそれなりの理由を見出すことができるから、同条項をもつて、投 ることは公知の事実であつて、右二六六条二項が、都議会議員の定数配分にあたり特別区の存する区域を一つの選挙区とみなす方法を採用したことにはそれなりの理由を見出すことができるから、同条項をもつて、投票価値の平等という憲法上の要請に反する疑いがあるとすることはできない。そして、右のように特別区の存する区域が全体として一都市を形成しているという事実は、同条項後段により特別区の存する区域に配分された議員定数を各特別区選挙区に配分するにあたり、一般の場合以上に厳格に、人口に比例させるべきであり、これを緩和すべき特別の事情が存在するとの判断はより慎重になされるべきであると解する根拠にはなつても、一般の場合以上に人口比例の原則からはずれてもよいと解する根拠には到底なりえないことが明らかである。同条項後段をもつて特別区選挙区間の定数配分格差を一般の場合以上に容認した規定であるかのような解釈は、その文言からしても、到底採り得ないところである。 2 そこで、本件配分規定が投票価値の平等という憲法上の要請をふまえて右1項のように解釈すべき公選法一五条七項に違反するか否かについて検討する。 (一) 本件配分規定の不可分性地方自治法九〇条一項は、都道府県の議会の議員定数の上限を一二〇人と法定し、同条二項は、特に都議会の議員定数について、特別区の存する区域の人口を一〇〇万人で除して得た数を限度として、その上限を増加させることができると定めているところ、成立に争いのない甲第五号証、乙第一〇号証によれば、昭和五五年一〇月一日実施の国勢調査の結果による特別区の存する区域の人口は約八三五万人であることが認められるから、東京都議会の議員定数の上限は、本件選挙の行われた昭和五六年七月当時一二八人と法定されていたことになる。そして、このように議員定数が法定されている場合に 口は約八三五万人であることが認められるから、東京都議会の議員定数の上限は、本件選挙の行われた昭和五六年七月当時一二八人と法定されていたことになる。そして、このように議員定数が法定されている場合には、定数配分規定を可分とみて、選挙の効力が争われている当該選挙区に関する部分だけをとり上げてその効力を判断し、その選挙区の議員定数だけを増加させることにより定数配分の不均衡を是正する方法は、右法定された議員定数に牴触してとりえないのであり、定数配分規定を不可分一体とみて、その全体の効力を判断し、全体の定数配分の見直しにより、各選挙区間の定数配分の不均衡を是正する以外に方法はないというべきである。そこで、以下においても、本件定数配分規定を不可分一体のものとして、その効力を判断する。 (二) 一選挙区とみなされた二三区全域と二三区以外の各選挙区との間の定数配分(公選法二六六条二項前段)前示乙第一〇号証、成立に争いのない甲第七、第八号証、乙第一五ないし第一七号証によれば、本件条例の施行された後の昭和四四年、同四八年、同五二年、同五六年の各七月施行の各都議会議員選挙について、その直前の国勢調査の結果による人口、配当基数(条例による議員の総定数に、当該選挙区の人口の都全体の人口に占める比率を乗じて得た数、すなわち、総定数を各選挙区に人口割した数値。)、条例による議員定数、右定数による議員一人当り人口、その議員一人当り人口について都平均を一〇〇とした場合の指数のそれぞれを、都全体、二三区全域、二三区以外を区域とする各選挙区、及び市郡部全体について集計すると、別表(一)のとおりであることが認められる(このうち、請求原因3(二)に挙示された数値は当事者間に争いがない。)。そして、これによると、本件選挙においては、二三区全域は配当基数九一・二九〇人であるの 表(一)のとおりであることが認められる(このうち、請求原因3(二)に挙示された数値は当事者間に争いがない。)。そして、これによると、本件選挙においては、二三区全域は配当基数九一・二九〇人であるのにこれを一〇人以上上まわる一〇二人の定数配分をうけているのに対し、八王子市選挙区は配当基数四・二三三人であるのに、これを二人以上下まわる二人の定数配分を、町田市選挙区、西多摩郡選挙区、府中市選挙区は、配当基数がそれぞれ三・二二九人、二・二三三人、二・〇九九人であるのに、いずれもこれを一人以上下まわる二人、一人、一人の定数配分をうけたことになり、この結果、議員一人当り人口の最多の西多摩郡選挙区の議員一人当り人口は、都平均の二・二倍以上に達し、二三区全域のそれとの格差も約一対二・五に達していたことになる(なお、議員一人当り人口が最少である島部選挙区との格差は約一対六・〇であるが、配当基数〇・三六九人の島部が独立の選挙区として定数一人が配分されたのは前述の公選法二七一条二項適用の結果であり、歴史的沿革、島部の地理的条件などを考えれば、この定数配分が裁量権の不合理な行使ではないことは容易に承認しうるから、これを重大な定数不均衡としてとりあげるのは相当でない。)。 しかも、別表(一)によれば、これに近い定数不均衡の存在は、昭和五〇年一〇月一日実施の国勢調査の結果によつてもすでに明らかであつたというべきであり、そして、それがさらに拡大しつつあることは容易に推測することができたはずであるのに、前示乙第一〇号証、第一五号証成立に争いのない乙第二、第三号証によれば、都議会は、本件配分規定について昭和五二年六月に、右昭和五〇年国勢調査結果によれば配当基数二・七三三人となる町田市選挙区の定数を一人から二人へ増加し、これに伴い総定数を一二五人から一二六人に増加する 都議会は、本件配分規定について昭和五二年六月に、右昭和五〇年国勢調査結果によれば配当基数二・七三三人となる町田市選挙区の定数を一人から二人へ増加し、これに伴い総定数を一二五人から一二六人に増加する改正をし(なお、公選法一五条三項の適用上、一選挙区として維持し得なくなつた北多摩第一選挙区(定数三人)を、同第一選挙区(定数二人)、同第五選挙区(定数一人)に分区した。)、また、昭和五六年三月に、昭和五五年国勢調査結果によれば配当基数三・一三二人となる南多摩郡選挙区(定数一人)を各定数一人の南多摩郡選挙区と日野市選挙区に分区して、これに伴い総定数を一二六人から一二七人に増加する改正をしただけで、特別区の存する区域に対する定数配分には、全く変更を加えず、議員総定数を増加させることにより、市郡部の選挙区のうち議員一人当り人口が最多の選挙区についてのみ、わずかの定数増をはかつたものであることが認められる(この結果、別表(一)によれば、二三区及び島部を除く区域(市郡部)の各選挙区の本件選挙当時の配分基数は計三五・三三九人であるのに、本件配分規定による定数は計二四人で一一人以上も下まわる結果となつている。)。 そして、別表(一)によれば、このような議員定数の不均衡が生じたのは、本件条例の制定された昭和四四年以降、二三区内の人口が一貫してやや減少する傾向にあるのに対し、市郡部の人口は相当急激に増加した(昭和四〇年の約一九四万人が昭和五五年には約三二三万人となり、約六七パーセント増加。)ためであるということができるが、このような急激な人口変動につねに即応してこの人口変動に符合した定数配分規定の改正を行わなければ、議会がその裁量権を不合理に行使したことになるかどうかは、なお検討の余地があるにしても、都議会における前記の改正経緯は、このような人口変動の結果と 口変動に符合した定数配分規定の改正を行わなければ、議会がその裁量権を不合理に行使したことになるかどうかは、なお検討の余地があるにしても、都議会における前記の改正経緯は、このような人口変動の結果として重大な定数不均衡がすでに生じ、しかもそれが拡大する傾向にあることを認識しながら、本件配分規定全体の見直しをせず、もともと法律上限界があり、立法政策上も疑問がある議員総数の増加によつて、僅かに不均衡を是正してきたにすぎないとの評価をせざるをえない。そして、その結果として本件選挙時に生じていた二三区全域と西多摩郡、八王子市等の各選挙区との間の前述のとおりの定数不均衡については、他にこのような不均衡もやむをえないとするに足りる特段の事情がないかぎり、本件配分規定を公選法一五条七項に違反すると判断するに足りる程度に達していたものといわざるをえない。 しかし、本件配分規定が不可分一体としてその効力を判断されるべきものであるといつても、本訴請求は、特別区の存する区域である江戸川区選挙区の選挙の効力を争うものであり、次に判断するとおり、本件配分規定中の特別区選挙区間の定数配分に関して公選法一五条七項違反が認められる以上、二三区全域とそれ以外の区域の各選挙区との間の定数配分が違法であるか否かについて、ここで、これ以上の判断を加えることは要しないというべきである。 (三) 特別区選挙区間の定数配分(公選法二六六条二項後段)(1) 前示甲第七、第八号証、乙第一〇号証、第一五ないし第一七号証によれば、昭和四四年、同四八年、同五二年、同五六年の各七月施行の各都議会議員選挙について、その直前の国勢調査による人口、配当基数(ただし、公選法二六六条二項前段により二三区全域に配分された定数を総定数とし、これに、各特別区の人口の二三区全体の人口に占める比率を乗じて得た 選挙について、その直前の国勢調査による人口、配当基数(ただし、公選法二六六条二項前段により二三区全域に配分された定数を総定数とし、これに、各特別区の人口の二三区全体の人口に占める比率を乗じて得た数。)、条例による議員定数、右定数による議員一人当り人口、その議員一人当り人口について二三区平均を一〇〇とした場合の指数のそれぞれを、二三区全域(平均)、各特別区選挙区ごとに集計すると、別表(二)のとおりであることが認められる(このうち、請求原因3(二)に挙示された各数値については、当事者間に争いがない。)。 そして、これによると、本件選挙において、本件配分規定によつて配当基数を一人以上上まわる定数を与えられた選挙区が、千代田(配当基数〇・六六九人↓定数二人。以下同様に表示する。)港(二・四五六人四人)、台東(二・二七二人四人)、墨田(二・八四三人↓四人)、荒川(二・四二〇人↓四人)の五選挙区、配当基数をほぼ一人上まわる定数を与えられた選挙区が、中央(一・〇一〇人↓二人)渋谷(三・〇一七人↓四人)、新宿(四・九九人↓五人)の三選挙区あつたのに対し、配当基数を二人以上下まわる選挙区が、練馬(六・八九一人↓四人)、足立(七・五七〇人↓五人)江戸川(六・〇四八人↓四人)の三選挙区、配分基数を一人以上下まわる選挙区が、世田谷(九・七三五人↓八人)、板橋(六・〇八四人↓五人)葛飾(五・一三三人↓四人)の三選挙区あつたことになる。そして、このような定数配分の結果、議員一人当り人口の二三区平均を一〇〇とした場合の指数も、最小の千代田区選挙区は三三・五、次いで中央区選挙区か五〇・五、台東区選挙区が五六・八、荒川区選挙区が六〇・五、港区選挙区が六一・四と著しく低い選挙区がある反面、それが最大の練馬区選挙区は一七二・三、次いで足立区選挙区が一五一・四、江戸川区 選挙区か五〇・五、台東区選挙区が五六・八、荒川区選挙区が六〇・五、港区選挙区が六一・四と著しく低い選挙区がある反面、それが最大の練馬区選挙区は一七二・三、次いで足立区選挙区が一五一・四、江戸川区選挙区が一五一・二と著しく高い選挙区があり、議員一人当り人口の最少の千代田区選挙区とそれが最多の練馬区選挙区との格差は約一対五・一五(同様に、千代田と足立、千代田と江戸川の各選挙区間の格差はいずれも約一対四・五)に達していたのである。 そして、前示乙第二、第三号証、成立に争いのない乙第一号証、第四ないし第七号証によれば、本件条例は昭和四四年三月に「東京都議会の選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例」(昭和二二年東京都条例第三一号。以下「旧条例」という。)の全部を改正して制定されたものであるが、各特別区の議員定数については、旧条例が昭和三三年改正されたものをそのまま引継いだものであり、本件条例制定後も、昭和四八年三月の改正により、台東区選挙区の定数を五人から四人に、品川区選挙区の定数を六人から五人に、各一人減少させ、練馬区選挙区の定数を三人から四人に一人増加させただけであることが認められる。 ところが、前示甲第五号証、乙第一〇号証、第一五ないし第一七号証、成立に争いのない甲第二号証、乙第一八号証によれば、この間の昭和三五年ないし同五五年の各国勢調査結果による、前述の配当基数と定数とに開きが大きい各選挙区における人口の推移は、別表(三)のとおりであることが認められ、同表によれば、二三区全体の人口には大幅な変動がないのに、いわゆる都心区を中心に人口の減少が著しく、その間人数的には、台東区が約一三万三〇〇〇人、墨田区が約九万九〇〇〇人、荒川区が約八万七〇〇〇人それぞれ減少し、比率的には、昭和三五年を一〇〇とした指数で昭和五五年に千代田区が四 の減少が著しく、その間人数的には、台東区が約一三万三〇〇〇人、墨田区が約九万九〇〇〇人、荒川区が約八万七〇〇〇人それぞれ減少し、比率的には、昭和三五年を一〇〇とした指数で昭和五五年に千代田区が四六・九に、中央区が五一・二に、台東区が五八・三にそれぞれ減少したことが特に顕著であるのに対して、いわゆる周辺区を中心に人口の著しい増加があり、練馬区約二五万八〇〇〇人増・前記指数一八四・六、足立区約二一万人増・前記指数一五一・六、江戸川区約一七万八〇〇〇人増前記指数一五六・四となつたことが特に顕著である。 そして、このような著しい人口変動に対し、前述のとおり本件配分規定のうち特別区選挙区に関する部分が殆んど改正されなかつた結果として、別表(二)によれば、議員一人当り人口の最少の千代田区選挙区と最多の練馬区選挙区との格差(最大格差)は昭和四四年選挙時に一対約三・一、同四八年選挙時に一対約三・六同五二年選挙時に一対約四・五と急激に拡大し、前述のとおり本件選挙時にはそれが一対五・一五に達したものであること、また議員一人当り人口の二三区平均値(一〇〇)からの乖離の著しい選挙区も、昭和四四年選挙時には、千代田五三・九、台東六六・三、練馬一六七・八が特に著しい程度であつたのが、昭和四八年選挙時には、千代田四二・八、中央五九・九、港六四・六、練馬一五二・三、葛飾一三三・五に、昭和五二年選挙時には千代田三六・四、中央五三・一、台東六一・二、港六一・八、荒川六四・三、練馬一六五・一、足立一四三・七、江戸川一三九・七と次第に増加し、その乖離の程度も大きくなり、本件選挙時には前述のとおりとなつたものであることが明らかである。 <要旨第四>(2) 以上のような事実関係にもとづいて考えるに、本件選挙時の特別区選挙区間の定数配分の不均衡</要旨第四>は、千代田区選挙区 には前述のとおりとなつたものであることが明らかである。 <要旨第四>(2) 以上のような事実関係にもとづいて考えるに、本件選挙時の特別区選挙区間の定数配分の不均衡</要旨第四>は、千代田区選挙区と練馬区選挙区間の格差(最大格差)が一対五・一五と著しいばかりでなく、配当基数と現実の配分定数に二人以上の差がある選挙区が三選挙区、一人以上の差がある選挙区が八選挙区、ほぼ一人に近い差がある選挙区が三選挙区の多数にのぼり、このため議員一人当り人口の二三区の平均値からの乖離が大きな選挙区も多数生じていたのであるから、これらいずれの点からみても投票価値の平等を著しくそこなう程度に達していたといわざるをえない。そして、このような定数不均衡は、前述のように二三区内の急激の人口配置の変動、すなわち、都心区からの人口流出と周辺区への人口流入(いわゆるドーナツ化現象)が急速に進展したことが原因であることは前述のとおりであるが、このような急激な人口配置の変動について、議員定数の配分をどのように対応させていくかなどについての議会に認められるべき政治的裁量を考慮に入れたとしても、右にみたような投票価値の不平等は、一般的に合理性を有するとは到底考えられない程度に達していたといわなければならない。そして、右のようなドーナツ化現象による二三区内の人口配置が一時的なものではなく、恒常的なものであることは別表(三)によつても明らかであり、それを原因とする著しい定数不均衡、投票価値の不平等は、すでにみたとおり昭和四八年以前から顕在化していたのであり、しかも、当時においてもそれが拡大しつつあつてさらに顕著な不均衡、不平等を招くであろうことは容易に推測することができたはずであるから、都議会はこのような不均衡、不平等を長期間にわたり放置したものというべく、一般に、議会としては、 しつつあつてさらに顕著な不均衡、不平等を招くであろうことは容易に推測することができたはずであるから、都議会はこのような不均衡、不平等を長期間にわたり放置したものというべく、一般に、議会としては、憲法、公選法上、裁量により合理的期間内にその是正をすれば足りると解しても、その合理的期間内にその是正を行わなかつたものと断ぜざるをえない。以上のとおりであつて、本件配分規定による本件選挙時の定数不均衡、投票価値の不平等は、議会において通常考慮しうる諸般の事情を斟酌してもなお一般に合理性を有するとは到底考えられない程度に達していたものであつて、議会の合理的裁量の限界を超えていると推定され、しかも議会はかかる不平等を許容された合理的期間内に是正しなかつたことになるから、このような著しい不平等がなお正当化できるような特段の理由が示されないかぎり、本件配分規定は、投票価値の平等という憲法上の要請に基づく公選法一五条七項に違反すると判断せざるをえない。 (3) ところで、被告は、右のような著しい不均衡、不平等を正当化しうる特段の理由、公選法一五条七項但書の特別の事情として、千代田区などの都心区ではいわゆる昼間人口がきわめて多くそれだけ行政需要も大きいこと及び二三区を独立選挙区として最低二人の定数を配分してきた歴史的事実をあげる。 そして、成立に争いのない乙第一一号証、第二〇号証によれば、昭和五〇年国勢調査の結果による昼間人口は、千代田区、中央区、港区のいわゆる都心区では人口(夜間常住人口)の、それぞれ一五・一倍、七・三倍、三・二倍に達するものであることが認められる。しかし、選挙人に対する選挙権は住所地すなわち夜間常住地で与えられるものであつて、通勤、通学場所で選挙権を行使しうるものではない以上、昼間人口が多いことが行政需要の増加要因であることは否定し られる。しかし、選挙人に対する選挙権は住所地すなわち夜間常住地で与えられるものであつて、通勤、通学場所で選挙権を行使しうるものではない以上、昼間人口が多いことが行政需要の増加要因であることは否定しがたいとしても、他地域で選挙権を行使する昼間人口者のために都心区の住民(選挙人)が他の区の選挙人の数倍の投票価値を有する選挙権を行使することが合理的であるとすることは到底是認しがたいところといわざるをえない。とくに前示乙第二〇号証によれば、昼間人口の中には都議会議員選挙についての選挙権を有しない他県の住民が多数含まれていることが認められる点及び都議会議員は全都民の代表であつて、各区民の代表ではなく、ましてや各区の昼間人口者の代表ではないことも右判断の正当であることを基礎づけるものといえる(なお、都議会議員が選挙区の利益代表的役割をはたしている現実は否定しがたいとしても、周辺区の住民が都心区に通勤、通学して、その昼間人口を形成しているという事実は、右住民が都心区での都政にも密接な利害関係を有していることを意味し、したがつて、その住民の利益を事実上代表する周辺区選挙区選出議員も、そのことに無関心ではいられない筈であることを考えれば、昼間人口を考えて都心区の議員定数を多く配分しないと、それに基づいて増大した行政需要を充足させるに足りる都政が期待できないとの立論自体にも疑問がある。)。 しかも、前示乙第一一号証、第一五号証によれば、練馬区選挙区と荒川区選挙区の場合をみると、昭和五〇年において議員一人当り人口の格差は、荒川一対練馬約二・六であつたが、これを昼間人口でみても荒川一対練馬約二・一と二倍以上の格差があつたことが認められ、昼間人口が約二倍の練馬区の方が相対的に議員数が遥かに少ないことが明らかであるから、議員定数配分にあたつて各選挙区の昼間人口 間人口でみても荒川一対練馬約二・一と二倍以上の格差があつたことが認められ、昼間人口が約二倍の練馬区の方が相対的に議員数が遥かに少ないことが明らかであるから、議員定数配分にあたつて各選挙区の昼間人口が考慮されているとの主張自体が疑問といわざるを得ない。 次に、前示乙第一号証、成立に争いのない乙第一三号証の一によれば、昭和二二年の旧条例制定以来、特別区については、合区されることなく独立の選挙区として維持され、また、最低二人の定数が配分されてきたことが認められ、成立に争いのない甲第四号証(東京都議会関係法規集)中の旧条例二条の千代田区選挙区「一人」の記載は前示乙第一三号証の一、成立に争いのない乙第二五号証の一、二によれば、「二人」とすべきところを誤植したものであることが明らかである。このように特別区を独立の選挙区としてきたことは被告主張のとおりであるが、少なくとも昭和四四年までは公選法一五条三項の任意合区規定の適用の余地がある特別区選挙区は存在せず、同法一五条一項により当然に独立の選挙区とすることが必要であつたこと及び本件選挙時にも、千代田区、中央区の各選挙区について右一五条三項の適用の余地が生じていたにすぎないことが別表(一)、(二)により明らかである。 それゆえ、特別区選挙区を独立の選挙区として維持することを合理的とするに足りる歴史的事実が存在するとは到底いえない。また特別区選挙区に配分される議員定数が最低二人であつたことは被告主張のとおりであるが、前示乙第一号証と成立に争いのない甲第二号証を対比すると、旧条例制定当時の人口に比例して特別区選挙区に配分すると、千代田区、江東区選挙区の各二人となり、これが定数の最低値であつたことが明らかであり、別表(二)のとおり、その後の人口変動の結果、千代田区、中央区の各選挙区では配当基数が二人を大 挙区に配分すると、千代田区、江東区選挙区の各二人となり、これが定数の最低値であつたことが明らかであり、別表(二)のとおり、その後の人口変動の結果、千代田区、中央区の各選挙区では配当基数が二人を大幅に下まわるようになつても、定数二人がそのまま維持されてきたというにすぎないから、これをもつて著しい定数不均衡が生じてもなお定数二人を配分することを合理的とするに足りるほどの歴史的事実であるとは到底いうことができない。 (4) 以上のとおり、本件配分規定について、前述のような投票価値の不平等が生ずることを正当化しうるような特段の理由を見出すことはできないから、右規定は全体として投票価値の平等という憲法上の要請に基づく公選法一五条七項に違反するというべきである。 四本件選挙の効力について以上のとおり、本件選挙は公選法一五条七項に違反する本件配分規定に基づいて施行されたものであつて違法であるが、これを理由に江戸川区選挙区における本件選挙を無効とする判決をし、その選出議員の資格を失わせることは、ある意味ではより重大な瑕疵があるともいうべき過剰配分選挙区の選出議員の資格に影響がない以上、結果的にはかえつて投票価値の平等という憲法上の要請に背反することになる。そして選挙無効とされた江戸川区選挙区において適法な再選挙を行うためには本件配分規定の改正が必要てあるところ、前述したような本件配分規定の違法性の内容からみても、また議員の総定数の変更は一般選挙の場合でなければ行えないとの地方自治法九〇条四項の規定に照らしても、その改正は江戸川区選挙区への定数配分を増加させるだけですませることは許されず、全体としての定数配分の見直し、是正を必要とするべきものであるが、このような改正を江戸川区選挙区選出議員の関与なしで行うことは相当かどうか疑問があるばかりでな 増加させるだけですませることは許されず、全体としての定数配分の見直し、是正を必要とするべきものであるが、このような改正を江戸川区選挙区選出議員の関与なしで行うことは相当かどうか疑問があるばかりでなく、その再選挙については、他の選挙区選出議員の資格がそのままである以上は、都議会議員の総人数か地方自治法九〇条一、二項の議員定数の上限をこえることになることが必定である。以上のような法律上、事実上の難点を考えると、本件においては、その選挙の違法を選挙を無効とすることに直結させることなく、行政事件訴訟法三一条一項において示された一般的法の基本原則に従い、選挙を無効とすることを求める原告らの請求を棄却するとともに、本件選挙のうち原告らの所属する江戸川区選挙区の選挙が違法であることを宣言するにとどめるのが相当である。選挙関係訴訟について右行政事件訴訟法三一条の適用を排除する旨の公選法二一九条の規定は、定数配分規定の違法により選挙が違法となる本件のような場合をも予想して規定されたものでないと解すべきでてあるから、右判断を左右するものではない。 五本件決定取消請求について本件決定取消請求は、前述のとおり公選法二〇三条二項が地方公共団体の議会の議員の選挙の効力に関する訴訟は都道府県選挙管理委員会の決定又は裁決に対してのみ提起することができる旨を規定しているために、なされたものであつて、原告らの本訴の目的が本件選挙を無効とすることにあり、本件決定取消請求はこれに付随するものとして求められているにすぎないことは明らかであるから、選挙無効の請求について前述のような判断に達した以上、本件決定自体に仮に瑕疵があつたとしても、これを取消す利益ないし必要はないというべきであり、本件決定取消請求も棄却すべきである。 六結論よつて、原告らの本訴請求を棄却し な判断に達した以上、本件決定自体に仮に瑕疵があつたとしても、これを取消す利益ないし必要はないというべきであり、本件決定取消請求も棄却すべきである。 六結論よつて、原告らの本訴請求を棄却し、本件選挙のうち江戸川区選挙区における選挙が違法であることを宣言することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民訴法九二条但書を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官森綱郎裁判官藤原康志裁判官小林克己)別紙 (一)<記載内容は末尾1添付>別紙 (二)<記載内容は末尾2添付>別紙 (三)<記載内容は末尾3添付><記載内容は末尾4添付>
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