令和6年3月11日判決言渡 令和5年(行ケ)第10095号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和6年1月17日判決 原告エルメス・アンテルナショナル 同訴訟代理人弁護士高松薫 同石田晃士 同岩田貴鈴 同訴訟復代理人弁護士廣原良哉 被告特許庁長官 同指定代理人白鳥幹周 同豊瀬京太郎 同須田亮一 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由【略語】本判決においては、以下の略語を用いる。 (略語) (意味) ・本願商標:別紙1「商標目録」記載の商標(橙色と茶色の色彩の組合せのみからなる商標) ・本件包装箱:本願商標を付した包装箱(ただし、原告は、需要者から「オレンジボックス」と呼ばれているとの理由で、その名称を用いているので、原告の主張中では「オレンジボックス」の用語を用いることがある。) ・本件アンケート調査1:原告の委託に係る令和2年4月実施の本願商標の出所識別度に関するアンケート調査(甲63)。本件包装箱から「エルメス」を想起できた者が ス」の用語を用いることがある。)・本件アンケート調査1:原告の委託に係る令和2年4月実施の本願商標の出所識 別度に関するアンケート調査(甲63)。本件包装箱から「エルメス」を想起できた者が36.9%(純粋想起)ないし43.1%(助成想起)との結果が得られたとされる。 ・本件アンケート調査2:原告の委託に係る令和5年8月(本件審決後)実施の本願商標の出所識別度に関するアンケート調査(甲169)。本件包装箱から 「エルメス」を想起できた者が39.2%(純粋想起)ないし44.4%(助成想起)との結果が得られたとされる。(なお、本件アンケート調査1、2を併せて「本件各アンケート調査」という。)・被告提示事例:別紙2「商品の包装箱の色彩の事例」記載の事例(個別には「被告提示事例ア(ア)」又は単に「事例ア(ア)」などという。) 第1 請求特許庁が不服2021-13743号事件について令和5年4月6日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯(争いのない事実) (1) 原告は、平成30年10月25日、本願商標について商標登録出願をした(商願2018-133223)。なお、別紙1「商標目録」記載の指定商品及び指定役務は、令和2年6月30日付け補正後のものである。 (2) 原告は、令和3年6月30日付けで拒絶査定を受けたため、同年10月8日、拒絶査定不服審判を請求した。 特許庁は、上記請求を不服2021-13743号事件として審理を行 い、令和5年4月6日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(本件審決)をし(出訴期間として90日を付加)、その謄本は同年4月26日原告に送達された。 (3) 原告は、同年8月23日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を 判の請求は、成り立たない。」との審決(本件審決)をし(出訴期間として90日を付加)、その謄本は同年4月26日原告に送達された。 (3) 原告は、同年8月23日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨(1) 商標法3条1項3号及び6号について本願商標は、色彩のみからなるものであるところ、本願商標をその指定商品又は指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品又は役務のイメージや美感を高める等、商品又は役務の魅力の向上等に資す るため、通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり、その色彩について、商品若しくは役務の出所を表示するものとして又は自他商品役務を識別するための標識として認識することはないというべきである。 したがって、本願商標は、その指定商品との関係において、商品の特徴 (色彩)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから商標法3条1項3号に該当し、また、その指定役務との関係において、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標というべきであるから同項6号に該当する。 (2) 本願商標の使用による自他商品役務識別力の獲得について ア原告は、約60年の長きにわたり、我が国においてエルメスブランドの商品(本願の指定商品又は指定役務に係る商品を含む。)を継続的に販売等しており、それに使用されている「HERMES」の文字及び馬車と人を描いた図形は、原告の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の需要者に相当程度広く認識されているといえる。また、それらの商品の販 売に際して、本願商標を付した包装箱(本件包装箱)が用いられているほ か、ブランド全体又は個別商品の広 て、我が国の需要者に相当程度広く認識されているといえる。また、それらの商品の販 売に際して、本願商標を付した包装箱(本件包装箱)が用いられているほ か、ブランド全体又は個別商品の広告宣伝において、本願商標又はこれを構成する色彩を用いた図柄や構造物(下記イにおいて「本件図柄等」という。)がしばしば使用されている事実が認められる。 イしかし、①本件包装箱が用いられた数量は不明であり、また、広告宣伝における本件図柄等の使用は、上記「HERMES」等の商標と同等に長 期継続的に行われていたと認めることはできず、②本件図柄等について、ウェブサイト等における使用はアクセス数が不明であり、広告物における使用、イベントや店舗等での使用については使用地域が相当程度限定的であり、また、③原告による本願商標又はこれを構成する色彩の使用に際しては、多くの場合、需要者の注意を強く引くように「HERMES」の文 字や馬車と人を描いた図形等が用いられており、これらの文字等から商品等の出所が認識・認識され得ることは否定できない。 ウ本願商標の指定商品及び指定役務は、その需要者に日本全国の一般消費者が含まれるものが少なくないところ、原告の提出した本件アンケート調査1では、その調査の対象者が、原告が直営店舗を有する都道府県のうち の9都道府県エリアの「30歳~59歳男性・女性」かつ「世帯年収1000万円以上」の者に限られており、調査対象の範囲の設定に問題がある上、正答率は36.9%~43.1%にすぎず、その結果によって、本願商標が原告の業務に係る商品又は役務を表すものとして需要者の間で広く知られているものであると判断することは到底できない。 エしたがって、本願商標が、その指定商品及び指定役務との関係において、使用をさ 業務に係る商品又は役務を表すものとして需要者の間で広く知られているものであると判断することは到底できない。 エしたがって、本願商標が、その指定商品及び指定役務との関係において、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるに至っているとは認められない。 3 本件審決の取消事由本願商標の使用による自他商品役務識別力の獲得を否定した判断の誤り 第3 当事者の主張 【原告の主張】本願商標は、原告がその商品の包装箱の色彩として長期、独占的かつ継続的に使用した結果、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものになっており、独占適応性が否定されるものでもないのに、これと異なる認定判断に基づいて、商標法3条1項3号及び6号により商標登録す ることができないとした本件審決の判断は誤りである。 1 本願商標の使用による自他商品役務識別力の獲得について(1) 原告の「エルメス」ブランドの著名性原告のブランド「エルメス」は、1837年にフランスで創業され、バッグ、高級婦人服、アクセサリー、香水等で知られる、日本国内はもとより世 界中で著名な高級ブランドである(甲151、153)。 日本国内では、昭和39(1964)年、西武百貨店と提携して全国に15の専門店を出店してから、高い品質及びファッション性が広く知られるようになり、昭和58(1983)年に日本子会社が設立されて以降さらに積極的な販売活動が行われ、令和2年時点で全国に29の直営店舗を有してお り(甲6)、公式オンラインストアでは日本全国から商品購入が可能である(甲7)。「エルメス」ブランドの商品の人気は高く、著名なファッション誌では特集が組まれるな 国に29の直営店舗を有してお り(甲6)、公式オンラインストアでは日本全国から商品購入が可能である(甲7)。「エルメス」ブランドの商品の人気は高く、著名なファッション誌では特集が組まれるなど継続的に掲載され、ファッションブランドのランキングでも常に上位にある(甲8~15)。 (2) 本願商標の使用状況等 ア原告は、本願商標の色彩を付した包装箱(オレンジボックス)を、「エルメス」ブランドの商品の包装箱として、1960年代以降一貫して使用している。包装にオレンジボックスを使用しない商品は、一部の香水、馬具、包装困難な大型商品に限られる。 日本国内における「エルメス」ブランドの商品の年間売上高は、平成3 0(2018)年で約●●●●円であり、本願指定商品に限っても約● ●●●円に上る(甲5)。 また、オレンジボックスの使用数量は以下のとおりである(甲158、159)。 商品全体指定商品平成24(2012)年約●●●個 平成27(2015)年約●●●個平成30(2018)年約●●●個約●●●個令和元(2019)年約●●●個令和2(2020)年約●●●個令和3(2021)年約●●●●個約●●●個 令和4(2022)年約●●●●個約●●●個イ原告は、オレンジボックスを単なる包装にとどまらないブランドの象徴として位置付けており、オレンジボックスの図柄や構造物を、以下の媒体や方法により、広告宣伝として継続的に使用している。 (ア) 平成24年以降の公式ウ 単なる包装にとどまらないブランドの象徴として位置付けており、オレンジボックスの図柄や構造物を、以下の媒体や方法により、広告宣伝として継続的に使用している。 (ア) 平成24年以降の公式ウェブサイト、SNS(甲25、27、28、 32、33、35~38、40、41、66~71)このうち、毎年12月~1月にかけて動画を配信する特設サイト「NOEL」のアクセス数は以下のとおりである(甲160)。 令和元(2019)年 700万回令和2(2020)年 1000万回 令和3(2021)年 540万回令和4(2022)年 320万回(イ) 昭和54(1979)年以降の新聞広告(甲42、72~100、162、163)新聞広告は大きなカラー広告であり、特定の商品の掲載がなく、オレ ンジボックスの図柄が象徴的に用いられている。また、読売広告大賞 及び朝日広告賞を計5回受賞しており(甲102~106)、本願商標が需要者に強く印象付けられたことを裏付けている。 (ウ) 平成26(2014)年と令和4(2022)年の各クリスマスシーズンにおける「Yahoo!Japan」ほか10以上のウェブサイトのデジタル広告(甲42、162、163) (エ) 平成29(2017)年以降の主要な建物、駅構内での屋外掲示(甲43、107~110)(オ) 平成9年(1997)年発行の原告公認書籍等(甲17、44、45、111、161)(カ) 昭和61(1986)年以降の各店舗(工事中の仮囲いを含む。)、 各種イベント会場等の内外装や展示(甲46~50、69、70、113~115、162~168)その使用地域は、東 (カ) 昭和61(1986)年以降の各店舗(工事中の仮囲いを含む。)、 各種イベント会場等の内外装や展示(甲46~50、69、70、113~115、162~168)その使用地域は、東京・大阪・名古屋の三大都市圏に及んでおり、十分に広範である。 ウ本件審決は、上記第2の2(2)イ③の指摘をするが、商品や包装にはそ の出所たる企業等の名称や記号・文字等が付されるのが通常であり、使用に係る商品や包装等において、色彩に加えて企業等の名称や記号・文字等が付されることのみによって、使用に係る色彩が自他商品役務識別力を獲得する余地がなくなるわけではない(知財高裁平成20年5月29日判決〔コカ・コーラボトル立体商標事件〕・判例時報2006号36頁参照)。 実際、「MONO」、「7ELEVEN」、「FamilyMart」の文字と共に使用されていた各色彩商標は、いずれも識別力を有するとして商標登録が認められている。 オレンジボックスの場合、「HERMES」等の文字・図形を明確に視認できるのは箱を上方向から近距離で視認した場合に限られるのに対し、 本願商標の色彩は方向、距離を問わず需要者の目に付きやすく、他にな い特徴的な配色で看者に強い印象を与えるから、オレンジボックスに「HERMES」等の文字・図形が付されていることをもって、自他識別力を否定すべきではない。 エ指定商品「香料」及び「紙製箱」等における使用について被告は、後記【被告の主張】2(2) において、第3類「香料」及び第1 6類「紙製箱」等についての使用の事実を争っているが、以下のとおり失当である。 (ア) 原告は、販売する商品の一つとして、本願商標を付した収納箱とハンカチのセットを「ハンカチボックス」として販売 6類「紙製箱」等についての使用の事実を争っているが、以下のとおり失当である。 (ア) 原告は、販売する商品の一つとして、本願商標を付した収納箱とハンカチのセットを「ハンカチボックス」として販売しており(甲41)、第16類の紙製箱及び第35類の紙製箱の小売等役務(小売又 は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供をいう。以下、「香料」との関係でも同様に用いる。)について本願商標を使用している。 (イ) 指定商品第3類の「香料」とは、「化粧品などに芳香をそえるために加える物質」(乙66)であり、原告は第3類の香料及び第35類 の香料の小売等役務について本願商品を使用している(甲21、乙61)。仮に、香料と香水類が「指定商品の同一性が損なわれないもの」といえないとしても、両者は極めて密接な関連を有し、取引者・需要者も共通するから、香水類について自他商品役務識別力を有している本願商標は、香料についても取引者・需要者が原告の販売に係る商品 等と認識することができる。 なお、審決取消訴訟の審理範囲は、審判等で実際に争われた特定の違法事由に限定されており、審判等で争われなかった事実や理由を審決取消訴訟で追加することは許されない。原告は、審査官から「香料」について本願商標を使用していないとの指摘を受けておらず、この点 は争点化していなかったから、本件訴訟においてこれを拒絶理由とし て追加することはできない。指定商品及び指定役務の補正ができない現時点で拒絶理由とする行為は、時機に後れた攻撃防御方法(行政事件訴訟法7条、民事訴訟法157条)というべきである。 (3) 需要者の認識についてア雑誌、ウェブサイト等 「エルメス」ブランドの商品を掲載する雑誌記事(甲51~56)や中古品等の展 訟法7条、民事訴訟法157条)というべきである。 (3) 需要者の認識についてア雑誌、ウェブサイト等 「エルメス」ブランドの商品を掲載する雑誌記事(甲51~56)や中古品等の展示(甲57~60、116、117)では、商品とともにオレンジボックスの写真が掲載される例が多数あり、商品の購入者のSNS(甲118~122)では、オレンジボックスのみが掲載される例もある。 また、第三者のウェブサイト・SNS媒体では、オレンジボックスやその色彩そのものを主題にした記事が多数存在し(甲18、19、61、62、135~144)、「エルメスといえばこのオレンジの箱」などと評されている。オレンジボックスを積み上げてタワー状にした写真を掲載するもの(甲123~134)もあり、これらの写真は「HERM ES」等の文字・図形の商標が視認できない状態で撮影されている。 このように、需要者においては、本願商標の色彩自体が「エルメス」ブランドの象徴と認識されていることが分かる。 イ一般消費者の認識原告による広告宣伝(上記(2)イ)は、新聞、ウェブサイト、SNS、 百貨店・路面店、イベント等、いずれも一般消費者が日常的に接する広告媒体であるから、一般消費者においても、エルメスブランドの象徴として本願商標の色彩を記憶、認識している。 同じくハイブランドである「バーキン」、「ケリー」のハンドバックの立体的形状の商標については、いずれも原告の長年にわたる使用、広 告宣伝により自他商品役務識別力を獲得したものとして、商標法3条2 項が適用され、商標登録が認められている。 ウアンケート調査の結果について(ア) 原告は、令和2年4月、本願の指定商品の主な需要者である30~50歳代の高所得者層(世帯 3条2 項が適用され、商標登録が認められている。 ウアンケート調査の結果について(ア) 原告は、令和2年4月、本願の指定商品の主な需要者である30~50歳代の高所得者層(世帯年収1000万円以上)の男女を対象に、本願商標の出所識別度に関する本件アンケート調査1を実施した。 これは、3種類の箱に本件商標の色彩を付したイラストを示した上で、ブランド名を自由回答するもの(純粋想起)及び「エルメス」ブランドを含む10ブランドの選択肢から選ぶもの(助成想起)である。 その結果、純粋想起では36.9%、助成想起では43.1%、合計では45.1%が、本願商標の色彩のみから原告の「エルメス」ブラ ンドを識別できていた。 (イ) 原告は、令和5年8月、本願の指定商品の主な需要者である30歳代~50歳代の男女で、バッグ、アクセサリー・時計、コスメ・香水のいずれかに興味があり、これらを半年以内に購入した者(世帯年収の条件なし)を対象に、同じ内容の本件アンケート調査2を実施した。 その結果、純粋想起では39.2%、助成想起では44.4%、合計では46.2%が、本願商標の色彩のみから原告の「エルメス」ブランドを識別できていた。 (ウ) 本件各アンケート調査の対象エリアは、日本の人口分布や地形学的なバランスを考慮し、首都圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)、中京圏 (愛知)、近畿圏(兵庫、大阪)、北海道、福岡の各都道府県とし、年齢層については、収入や年齢等からみて本願の指定商品を購入できない学生世代や定年退職後の高齢者世代を含む層を除いた。 また、本願の指定商品は、香水や香料、宝飾品、時計、ハンドバッグ、乗馬用具といった奢侈品が多く含まれるから、その需要者 を購入できない学生世代や定年退職後の高齢者世代を含む層を除いた。 また、本願の指定商品は、香水や香料、宝飾品、時計、ハンドバッグ、乗馬用具といった奢侈品が多く含まれるから、その需要者層は収入が 平均以上の高所得者層が中心と考えられる。 需要者の認知度を図るアンケート調査においては、需要者層の大半を対象者として含めていれば問題はないのであって、上記各アンケートの対象者は合理的に設定されている。 (エ) ファッション製品に関するブランドの識別度調査においては、認知度が15%を超えるものは「需要者の間で広く知られているもの」とい うべきであるから(東京地裁平成12年6月28日判決〔LEVI’S事件〕・判例時報1713号115頁、同判決に言及する甲172、知財高裁令和5年(行ケ)第10003号同年8月10日判決〔ドクターマーチン位置商標事件〕参照)、需要者の認知度が40%を超える本願商標は、原告の業務に係る商品又は役務を表すものとして需要 者の間に広く知られているというべきである。 (4) 取引の実情についてア商標法3条2項の適用においては、当該商標が出所識別機能を有するに至っていれば足り、商標が独占排他的に使用されていることまでは要しない。 イ現時点で、本願の指定商品・役務を取り扱う業界で、本願商標と類似する色彩を使用した包装箱は見当たらない。 包装箱等の色彩に関する被告提示事例は、オレンジボックスの模倣品である同事例イ(イ)、(ウ)を除き、いずれも本願商標とは態様が異なり、本願商標と類似しない。 箱状の商品又は包装の全体を橙色とし、箱のいずれか一面の縁(周囲)に茶色の近似色を使用したものは本願商標に類似するといえるが、それ 願商標とは態様が異なり、本願商標と類似しない。 箱状の商品又は包装の全体を橙色とし、箱のいずれか一面の縁(周囲)に茶色の近似色を使用したものは本願商標に類似するといえるが、それ以外の茶色その他の近似色が使用されていない、あるいはいずれか一面の縁(周囲)以外に使用されているものは、本願商標と類似するものではない。類似の範囲に「箱状の商品又は包装の大部分を橙色で彩色し、 箱の縁等の一部に茶色その他の近似色が使用されたもの」が含まれると する被告の主張は、広きに失するものである。 ウなお、被告提示事例イ(ウ)の箱(乙40)は、原告の模倣品対策により、現在は市場にない(甲171)。原告は、模倣品に厳しい姿勢で臨み、使用を中止させており(甲170)、被告提示事例イ(イ)の箱(乙39)についても対応を検討中である。 このようなオレンジボックスの模倣品は、本願商標が周知著名で高い識別性と顧客吸引力を有しているからこそ存在するといえ、需要者もそのような箱を模倣品として認識している(菓子の包装箱に関する甲174、175のブログ)。 2 独占適応性について (1) 本願商標は、(包装)箱の全体においてRGBの組合せ(R221、G103、B44)により特定される橙色、上部周囲においてRGBの組合せ(R94、G55、B45)により特定される茶色の構成からなる商標であり、特定された色彩の組み合わせ及び色彩を付する位置により限定されているから、他の事業者の色彩選択の幅を過剰に狭めるものではない。 (2) 本願商標の色彩を付した箱についての取引の実情(上記1(4))を考慮しても、本願商標の商標登録により他の事業者の色彩の自由な使用が殊更に制限されるものではなく、独占適応性は否定されない。 (2) 本願商標の色彩を付した箱についての取引の実情(上記1(4))を考慮しても、本願商標の商標登録により他の事業者の色彩の自由な使用が殊更に制限されるものではなく、独占適応性は否定されない。 3 他国との整合性について原告の本国であるフランス及び米国においては、原告の出願した橙色のみの 色彩商標が商標登録されている(甲64、65)。なお、両国を含む地域の売上額は、日本よりも低い。 【被告の主張】本件審決の認定判断は正当であって、原告主張の違法はない。 1 総論 商標法3条1項3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされる趣旨は、 このような商標は、商品の産地、販売地、品質その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであり、独占適応性を欠くとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないことによるもの と解される(最高裁昭和53年(行ツ)第129号同54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁)。 そして、商品の色彩は、商品の特性であるといえるから、同号所定の「その他の特徴」に該当するものと解される。そして、商品の色彩は、古来存在し、通常は商品のイメージや美観を高めるために適宜選択されるものであり、また、 商品の色彩には自然発生的な色彩や商品の機能を確保するために必要とされるものもあることからすると、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、原則として何人も自由に選択して使用できるものとすべきである(知財高裁令和元年(行ケ)第10146号同2年8月19 ことからすると、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、原則として何人も自由に選択して使用できるものとすべきである(知財高裁令和元年(行ケ)第10146号同2年8月19日判決〔日立建機油圧ショベル事件〕)。 2 本願商標の使用による自他商品役務識別力の獲得について(1) 原告主張の「エルメス」ブランドの著名性及び本願商標の使用状況等については、本件審決の記載事項の限度で認め、その余は不知又は争う。 原告の主張する本願商標の使用態様、使用実績においては、多くの場合、「HERMES」の文字や馬車と人を描いた図形等が、需要者の注意を強く 引くように包装箱中央や包装用リボンに用いられていることを考慮すべきである。 (2) 指定商品「香料」及び「紙製箱」等における使用についてア商標法3条2項は、出願に係る商標と外観において同一とみられる商標が指定商品に使用されたことを前提として判断すべきところ、本願の指定 商品及び指定役務のうち、第3類「香料」及び第16類「紙製箱、紙袋、 紙製の包装袋」については、原告が商品として製造、販売している事実、その小売等役務を提供している事実はなく、取引の実情を考慮して同一性が損なわれないといえるものについての使用の事実もない。 イ原告は、「ハンカチボックス」(甲41)の販売は第16類紙製箱、第35類紙製箱の小売等役務についての本願商標の使用に当たると主張する。 しかし、商品の包装への使用であるか、商品への使用であるかは、商標法上の意義が全く異なるのであって、甲41のハンカチセットに示された箱状の物は、商品であるハンカチの取引に際し付随的に用いられる包装箱又は収納ケースにすぎないと考えられ、「紙製箱」という商品について本願商標を使用し なるのであって、甲41のハンカチセットに示された箱状の物は、商品であるハンカチの取引に際し付随的に用いられる包装箱又は収納ケースにすぎないと考えられ、「紙製箱」という商品について本願商標を使用しているとはいえない。また、「紙製箱」の小売 等役務について本願商標を使用しているともいえない。 ウ 「香料」とは「食品、化粧品などに芳香をそえるために加える物質」(乙66)であり、「香水類」と同一の事業者により製造、販売されることが一般的ということはなく(乙71~74)、用途、需要者も共通しない。 (3) 需要者の認識についてア本願の指定商品は、一部に原告が提供するような高価な商品が含まれ、その需要者に高所得者層が含まれるとしても、日常的に消費される比較的安価な商品も多数あり、本願の指定役務は、いずれも指定商品に係る小売等役務である。それらの需要者は一般消費者であり、高所得者層、特定の 年齢層、特定の地域在住者、ファッションに興味を持つ層に限定されない。 イ本願商標の構成及び態様がありふれたものであること(後記(4))、原告の広告宣伝は比較的ファッション情報に高い関心を有する需要者層に向けられたものであること、本件各アンケート調査の結果(後記ウ)からみて一般消費者の認知度は高くないことからすれば、本願商標の指定 商品の需要者全体において、「エルメス」ブランドの広告宣伝に着目し、 「HERMES」等の文字・図形のみならず本願商標の色彩にまで気に留め、記憶する需要者層は限定的と考えられる。 ウ本件各アンケート調査の結果について(ア) 本件アンケート調査1の対象者は、高級ブランド品を買うだけの経済的余裕がある高所得者層、特定の年齢層、特定の地域に限定されて いる。上記のとおり本件指定 各アンケート調査の結果について(ア) 本件アンケート調査1の対象者は、高級ブランド品を買うだけの経済的余裕がある高所得者層、特定の年齢層、特定の地域に限定されて いる。上記のとおり本件指定商品・役務の需要者は全国の一般消費者を含み、全体の12.6%にすぎない年収1000万円超の世帯(乙65)に限られない。 また、質問には「これはとあるファッションブランドが商品の包装としている包装箱の色彩です。」という前提があるから、第16類「紙製 箱」等についての対象者の認識は表れていない。 そして、以上の問題のある調査の結果においての正答率も、高いものとはいえない。 (イ) 本件アンケート調査2の対象者は、対象地域、年齢、性別は本件アンケート調査1と同じである上(質問も本件アンケート調査1と同様で ある。)、対象者とされた「バッグ、アクセサリー・時計、コスメ・香水のいずれかに興味があり、かつ、こられを半年以内に購入した者」は、それら商品に対する購買意欲や関心が強く、高級ブランド品が身近に存在する可能性が高い層である。本願の指定商品は上記のバッグ等以外の「紙製箱」、「文房具類」等も含む上、上記バッグ等も生活 必需品であり、日常的に関心のない者も必要に応じて購入するものである。 そして、このように限定された対象者においてさえ、本願商標から「ルイ・ヴィトン」を想起した者が27.2%もいる。 (4) 取引の実情について ア包装箱等の色彩に関する被告提示事例のとおり、箱の表面を広く橙色と するものや橙色と茶色の2色とするものは、本願の指定商品又は指定役務の分野における包装箱(事例ア)、第16類の指定商品である紙製箱その他の包装用品(事例イ)、その他の様々な商品の 橙色と するものや橙色と茶色の2色とするものは、本願の指定商品又は指定役務の分野における包装箱(事例ア)、第16類の指定商品である紙製箱その他の包装用品(事例イ)、その他の様々な商品の包装箱(事例ウ)において、多数の事業者によって製造、販売されている(乙18~34、38~60)。 本願商標は、色彩を付する位置が橙色については箱全体、茶色については箱の上部周囲と特定されているものの、この点についても、いずれも紙製箱等の商品又は商品の包装において通常色彩が施される箇所であって、上記事例のとおり広く使用されている。 イ登録商標の効力は、同一のみならず類似する商標や指定商品に類似する 商品・役務にまで及ぶから(商標法37条)、商標の登録適格性の判断に当たっては、同一商標及び同一商品・役務に係る事情のみならず、本来自由に使用できる標章(色彩)の使用が事実上制限されたり、萎縮効果が生じるような類似の商標や類似の商品・役務を含め、ある程度幅を持たせた分野における取引の実情を考慮する必要がある。 ウ橙色と茶色はいずれもありふれた色彩であり、暖色であって、同系色で相性の良い色彩であることから、本願の指定商品と関連するファッションの分野でも茶色は橙色に合う色とされている(乙15、16)。 さらに、人が視覚によって見分け、記憶できる色彩には限界があり、あいまいなカテゴリーによって記憶されること(乙69、70)、商標の 類否は離隔的観察を前提とすべきことからすれば、箱の大部分に橙色、縁等にわずかに茶又は近似する色が使用されているものも、本願商標と見分けることは困難である。これは、本件アンケート調査2において、本願商標の色彩とは色相・明度・彩度が異なり、茶色は上部周囲に施されていない ずかに茶又は近似する色が使用されているものも、本願商標と見分けることは困難である。これは、本件アンケート調査2において、本願商標の色彩とは色相・明度・彩度が異なり、茶色は上部周囲に施されていない「ルイ・ヴィトン」の包装箱(被告提示事例ア(シ)、乙29参 照)を想起した者が27.2%もいることからも裏付けられる。 そうすると、本件においては、本願商標の色彩に近似する表示全般、つまり橙色と茶色を組み合わせてなる色彩や、箱の大部分を橙色で彩色し箱の縁等の一部に茶色その他の近似色を使用して成る色彩、第16類「紙製箱」等を含む商品又は他の商品の包装の色に表示する使用例について考慮すべきである。 エ原告が使用を中止させたとする事例イ(ウ)の箱(乙40)については、販売中止の理由は明らかではなく、模倣品とみるべき根拠はない。また、本件審決時において市場に存在したことに変わりはない。 3 独占適応性について(1) 色彩商標における商標法3条2項の適用については、上記1のとおり、色 彩は本来的に商品又は役務の出所を表示する機能を有さず、原則として何人も自由に選択し使用できるとの前提で判断すべきである。 (2) 上記2(4)のとおり、本願商標の色彩、組合せ及び色彩の付される位置はいずれもありふれたものであり、本願の指定商品又は指定役務の分野における包装箱、指定商品中の「紙製箱」その他の包装用品、その他の様々な商品 の包装箱において、多数の事業者によって製造、販売されている実情がある。 (3) したがって、本願商標の登録を認めた場合、上記のとおり商取引全般において多数の事業者により広く使用されている色彩について、本願商標に類似すると判断され得る使用態様が事実上制限されることになり、ファッション って、本願商標の登録を認めた場合、上記のとおり商取引全般において多数の事業者により広く使用されている色彩について、本願商標に類似すると判断され得る使用態様が事実上制限されることになり、ファッション分野を中心とする指定商品や包装箱、紙製箱等に係る分野において、現在及 び将来の色彩使用の自由が著しく制限され、他の事業者に著しい萎縮効果を及ぼすことになる。 4 他国との整合性について商標登録の適格性は、我が国における商標法の規定及び解釈と取引の実情を勘案して判断すべきものである。 第4 当裁判所の判断 1 原告は、本願商標は原告がその商品の包装箱の色彩として長期、独占的かつ継続的に使用した結果、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものになっており、独占適応性が否定されるものでもない旨主張する。この主張は、本願商標が、指定商品との関係で商標法3条1項3号に該当するとしても同条2項に該当し、指定役務との関係では同条1項 6号該当性が否定されるとの趣旨をいうものと解されるので、以下、その前提で検討する(原告は、指定商品との関係で本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした本件審決の判断部分は、本件審決の取消事由としていない。)。 2 色彩のみからなる商標と商標法3条2項等について(1) 平成26年法律第36号による改正(以下「平成26年改正」という。) 前の商標法2条1項は、「商標」の定義として、「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」と規定しており、文字、図形等と結合していない色彩のみの商標は商標法の保護の対象外であった。しかし、色彩のみや音といった「新しい商標」を保護対象とする諸外国の状況もあり、企業のブランド戦 との結合」と規定しており、文字、図形等と結合していない色彩のみの商標は商標法の保護の対象外であった。しかし、色彩のみや音といった「新しい商標」を保護対象とする諸外国の状況もあり、企業のブランド戦略の多様化が進む中で、我が国に おいてもこうした「新しい商標」の保護ニーズが高まることとなり、平成26年改正により、色彩のみからなる商標が商標法の保護対象として認められることとなった。 しかし、色彩は商品等に自ずと付随する特性という一面を不可避的に有するところ、通常はこうした商品特性にすぎない色彩が自他商品役務識別力を 有するといえるためには、使用による識別力の獲得その他の特段の事情が必要になると解される。この点について平成26年改正は何ら触れておらず、商標法3条1項3号、6号、同条2項等の解釈・適用に(すなわち、色彩以外の商品特性と同じ土俵での議論に)ゆだねている。その意味で、平成26年改正は、色彩商標に係る識別力獲得について例外的な取扱いを定めたもの ではないが、同改正の背景に、企業の多様なブランド戦略を支援しようとい う観点があったことを踏まえ、そのような立法趣旨が損なわれないような解釈運用が求められていると解される。 (2) このような観点から、本願商標の特徴を具体的に検討するに、本願商標は、別紙商標目録記載のとおり、橙色(RGBの組合せ:R221、G103、B44)と茶色(RGBの組合せ:R94、G55、B45)の色彩の組合 せからなり、箱全体において橙色、上部周囲に茶色とする構成からなるものである。 願書の商標の詳細な説明の記載に照らすと、本願商標は、全体が橙色の「箱」状の物品を想定して、その「上部周囲」(上面と側面が接合するラインを指すものと理解される。)に沿って、輪郭を縁取るように 。 願書の商標の詳細な説明の記載に照らすと、本願商標は、全体が橙色の「箱」状の物品を想定して、その「上部周囲」(上面と側面が接合するラインを指すものと理解される。)に沿って、輪郭を縁取るように茶色が付され ている構成からなるものと理解され、その意味で、立体的形状と色彩の結合商標類似の要素も含まれているといえる。もちろん、同説明中に「商標見本における破線は、箱の形状の一例を示したものであり、商標を構成する要素ではない」と明記されていることから、本来的な意味での立体的形状と色彩の結合商標ではなく、分類としては「色彩の組合せのみからなる商標」であ ることに変わりはないと解されるが、本願商標が「『立体的形状と色彩の結合商標』類似の要素も含まれている『色彩の組合せのみからなる』商標」という特徴を有することを正しく理解し、その特徴に即応した判断が求められるというべきである。 (3) 被告は、本願商標の橙色と茶色の色彩、組合せ及び色彩の付される位置は いずれもありふれたものであり、これに近似する表示全般を本願商標と見分けることは困難である、本願商標に近似する色彩は、様々な商品の包装箱において多数の事業者によって使用されている実情がある(包装箱等の色彩に関する被告提示事例)、などと主張する。 確かに、橙色と茶色は同系色で、ファッションの分野でも橙色と相性がよ く合わせやすい色とされている(乙16)と認められるほか、色彩のわずか な違い程度であれば、近似色との識別が困難な場合があること等は、被告の主張するとおりといえる。 しかし、本願商標は、より商標登録のハードルが高いと考えられる単一色の色彩商標と異なることはもとより、単なる橙色と茶色の組合せをもって特定されるものでもなく、上記(2)で述べたと おりといえる。 しかし、本願商標は、より商標登録のハードルが高いと考えられる単一色の色彩商標と異なることはもとより、単なる橙色と茶色の組合せをもって特定されるものでもなく、上記(2)で述べたとおり、箱全体の橙色とその上部 輪郭を縁取るように付された茶色を組み合わせた特有の構成を有するものである。このような構成は、RGB比率の絶妙なバランスと相まって、明るい橙色と落ち着いた茶色のコントラストを通じて橙色の華やかさを強調し、茶色の縁取りが箱の輪郭のシャープさを印象付けるものであり、特に、茶色をあえて上部周囲だけに使用するにとどめたことで、シンプルな中に気品を感 じさせる構成になっているといえる。これを単純な「ありふれた色彩の組合せ」というのは、適切な理解とはいえない。 また、被告は、本願商標が「ありふれた色彩の組合せ」にすぎないと評価する根拠の一つとして、包装箱等の色彩に関する被告提示事例を挙げているが、この点の被告の主張を採用できないことは、後記5(1)に詳述するとお りである。 3 本願商標の使用及び需要者の認識に関する認定事実後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (1) 「エルメス」ブランドについて原告は、約60年にわたり、我が国において「エルメス」ブランドの商品 (本願の指定商品に係る商品を含む。)を、全国の百貨店における専門店及び独立店(令和2年6月時点で合計29店)、公式ウェブサイトにおいて継続的に販売しており、その年間売上高は、平成26年で約●●●●円、平成30年で約●●●●円であり、うち本願の指定商品に含まれる商品(第3類香水、第14類腕時計、宝飾品等、第16類文房具類等、第18類ハンドバ ッグ、旅行かばん、馬具など)の年間売上高は、平成26年で約●● ●●●●円であり、うち本願の指定商品に含まれる商品(第3類香水、第14類腕時計、宝飾品等、第16類文房具類等、第18類ハンドバ ッグ、旅行かばん、馬具など)の年間売上高は、平成26年で約●●●●円、 平成30年で約●●●●円である(甲1、5~7)。 また、原告の「HERMES」の文字からなる商標や馬車と人を描いた図形等の商標は、著名な商標として一般消費者にも浸透している(争いがない。)。 (2) 本願商標の使用状況 ア原告は、「エルメス」ブランドの商品(香水、化粧品、ネックレス等の宝飾品、腕時計、万年筆、日記帳、写真立て、パスポートホルダー、バッグ・鞄、財布、カード入れ、ブリーフケース、皮革製キーケース、化粧品収納ポーチ、馬具等)の包装箱として、長年にわたり本願商標の色彩を付した本件包装箱(通称オレンジボックス)を用いており、我が国における その使用数量は、平成30年では販売商品全体で約●●●個、本願の指定商品に含まれる商品(原告提出の表〔甲159〕の表記では、第3類として香水等、第14類時計、宝飾品等、第16類写真立て、第18類ハンドバッグ、馬具等)で約●●●個であり、令和4年では販売商品全体で約●●●●個、上記商品で約●●●個であった(甲20~24、158、15 9)。 イただし、本願の指定商品のうち第3類の「香料」及び第16類の「紙製箱、紙袋、紙製の包装袋、包装紙」(以下「紙製箱等」という。)については、原告が商品として製造、販売している事実は認められず、これらの商品について第35類の小売等役務をしている事実も認められない(この 点は、後記4(4)において詳述する。)。 (3) 原告の広告宣伝等ア原告は、「エルメス」ブランドの広告宣伝として、平成24(2012年)年以降 役務をしている事実も認められない(この 点は、後記4(4)において詳述する。)。 (3) 原告の広告宣伝等ア原告は、「エルメス」ブランドの広告宣伝として、平成24(2012年)年以降の公式ウェブサイト、動画配信サイト「Noel」やSNS(甲25、27、28、32、33、35~38、40、41、66~7 1)、平成23(2011)年以降の全国紙における新聞広告(甲72~ 100、162、163)、令和4(2022)年のクリスマスシーズンにおける「Yahoo!Japan」ほか10以上のウェブサイトのデジタル広告(甲162、163)、平成29(2017)年以降の東京、大阪の駅構内や百貨店での屋外掲示(甲43、107~110)、平成9年(1997)年発行の原告公認書籍ほかの書籍等(甲17、44、45、 111、161)、平成10年(1998年)の銀座店や平成24(2012)年以降の百貨店店舗の仮囲い等(甲46、164、165)、原告店舗内やイベント会場のディスプレイ等により、本件包装箱やその配色をデザイン化した図柄を用いた広告宣伝を継続的に行ってきた。 イ上記の広告宣伝の多くにおいて、原告の著名な商標である「HERME S」の文字からなる商標や馬車と人を描いた図形等の商標が本件包装箱の中央上部等に付されている一方、例えば新聞広告において本件包装箱をクリスマスツリーの飾りつけやツリーそのものに見立てたもの(甲72)があったり、本件包装箱の図柄を広告、仮囲いやディスプレイ全体に用いたり(甲46、72、164等)、本件包装箱を広告の中心に置いてその存 在を強調し、全体の色彩の中でも目立つようにしたもの(甲87等)があるなど、本件包装箱やその配色を印象付けるものも多いと認められる。また、上記の広告宣 、本件包装箱を広告の中心に置いてその存 在を強調し、全体の色彩の中でも目立つようにしたもの(甲87等)があるなど、本件包装箱やその配色を印象付けるものも多いと認められる。また、上記の広告宣伝のほとんどは、特定の商品ではなく「エルメス」ブランドそのものを広告宣伝するものと認められる。 (4) 需要者の認識に関する事情 ア 「エルメス」ブランドの商品に関するファッション雑誌等の記事には、商品とともに本件包装箱が掲載されるものも少なくない(甲52~55)。 また、「エルメス」ブランドの商品の中古販売を行うウェブサイト等(甲57~60、116、117)には、商品とともに本件包装箱の写真が掲載される例が多数ある。さらに、商品の購入者等の第三者のウェブサイト やSNSでは、本件包装箱のみが掲載される例や、本件包装箱やその色彩 を主題にした記事(甲18、19、61、62、118~122、135~144)が多数存在し、「エルメスといえばこのオレンジの箱」などと評されている。 イ本件アンケート調査1(甲63)原告は、令和2年4月、株式会社インテージに委託して、インターネッ ト調査の方法による次のとおりの本件アンケート調査1を行った。 (ア) 調査対象者対象エリアは北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、兵庫、大阪、福岡の各都道府県、対象者の年代は30歳~59歳、性別は標準設計で男性700名、女性1300名(合計2000名)、世帯年収10 00万円以上(イ) 質問構成Q1 性別Q2 年齢Q3 本願商標と同じイラスト、箱の形を厚い直方体としたもの及び 円柱形としたものの3つのイラストを提示し、「これは、とあるファッションブランドが商品の Q1 性別Q2 年齢Q3 本願商標と同じイラスト、箱の形を厚い直方体としたもの及び 円柱形としたものの3つのイラストを提示し、「これは、とあるファッションブランドが商品の包装に使用している包装箱の色彩です。 この色彩を使用しているファッションブランドとしてあなたが思い浮かべたブランド名を自由にご記入ください。」(純粋想起)Q4 Q3と同じ3つのイラストを提示し、「これは、とあるファッ ションブランドが商品の包装に使用している包装箱の色彩です。この色彩を使用しているファッションブランドとしてあなたが思い浮かべたブランド名を以下からお選びください。」とし、選択肢としてGUCCI(グッチ)、HERMES(エルメス)、CHANEL(シャネル)ほか10のブランド名及び「この中にあてはまるも のはない」を示す。(助成想起) (ウ) 回収状況依頼数1万3296、有効回答数2082(エ) 回答結果Q3 「エルメス」を識別できているものが769(36.9%)、その他の回答が704(33.8%)、「知らない・わからない」 が609(29.3%)、合計2082Q4 HERMES(エルメス)が(43.1%)、他の回答のうちLOUISVUITTON(ルイ・ヴィトン)が436(20. 9%)、「この中にあてはまるものはない」が451(21. 7%)、合計2082 なお、「合算集計」として、Q3で正答した769と、Q3が不正答でQ4で正答した171の合計は940(45.1%)ウ本件アンケート調査2(甲169)原告は、令和5年8月、株式会社マクロミルに委託して、インターネット調査の方法による次のとおりの本件アンケート調査2を行った。 計は940(45.1%)ウ本件アンケート調査2(甲169)原告は、令和5年8月、株式会社マクロミルに委託して、インターネット調査の方法による次のとおりの本件アンケート調査2を行った。 (ア) 調査対象者バッグ、アクセサリー・時計、コスメ・香水のいずれかに興味があり、これらを半年以内に購入した者(世帯年収の条件なし)対象エリア、対象者の年代、性別(標準設計)は本件アンケート調査1に同じ (イ) 質問構成Q1 本件アンケート調査1のQ3に同じQ2 本件アンケート調査1のQ4に同じ(ウ) 回答結果Q1 「エルメス」を識別できているものが808(39.2%)、 その他の回答が880(42.7%)、「知らない・わからない」 が372(18.1%)、合計2060Q2 HERMES(エルメス)が915(44.4%)、他の回答のうちLOUISVUITTON(ルイ・ヴィトン)が561(27.2%)、「この中にあてはまるものはない」が275(13.3%)、合計2060 なお、「合算集計」として、Q1で正答した者と、Q1が不正答でQ2で正答した者の合計は46.2%(母数2060)(5) 類似の色彩の使用例について包装箱の色彩に関する被告提示事例は、別紙2「商品の包装箱等の色彩の事例」のとおりであり、以下の包装箱等が、原告以外の事業者によって使用 されている。 【事例ア本願の指定商品又は指定役務の分野における包装箱】(ア)~(エ) 香水(乙18~21)(オ)~(キ) 美容クリーム、美容ジェル(乙22~24)(ク) 時計(乙25) ( 願の指定商品又は指定役務の分野における包装箱】(ア)~(エ) 香水(乙18~21)(オ)~(キ) 美容クリーム、美容ジェル(乙22~24)(ク) 時計(乙25) (ケ)、(コ) インク(乙26、27)(サ) カードケース(乙28)(シ) 長財布(乙29)(ス)、(セ) ネックレス及びボックス(乙30、31)(ソ)、(タ) 時計収納ケース(乙32、33) (チ) ペンケース(乙34)【事例イ第16類の指定商品である紙製箱その他の包装用品】(ア) 洋菓子箱(乙38)(イ) 香水・化粧品・財布ギフトパッケージボックス(乙39)ただし、1個の価格が6515円であり、香水等のセット商品であ る可能性がある。 (ウ)~(サ) ギフト用の箱(乙40~48)(シ) 手提げ袋(乙49)【事例ウ様々な商品分野における商品の包装箱】(ア) 焼き菓子(乙50、51)(イ)~(エ) チョコレート(乙52~54) (オ) 焼き菓子(乙55)(カ)~(コ) その他(乙56~60) 4 本願商標の使用による自他商品役務識別力の獲得について(1) 前記3の認定事実によれば、原告が展開する「エルメス」ブランドは、我が国においても相当の長期間にわたる直営店等での商品の販売や公式ウェブ サイトその他のウェブサイト、全国紙、駅構内や百貨店での屋外掲示、原告の店舗内外のディスプレイ等における広告宣伝により、著名なものとなっていると認められる。その著名の程度は、我が国における歴史の長さ、圧倒的な販売実績、一般消費者への露出の多い活発な広告宣伝等を通じて、あるゆるファッションブランドの中でもトップクラスの地位にあると解される。 その著名の程度は、我が国における歴史の長さ、圧倒的な販売実績、一般消費者への露出の多い活発な広告宣伝等を通じて、あるゆるファッションブランドの中でもトップクラスの地位にあると解される。 また、「エルメス」ブランドの商品の販売時には本願商標を付した本件包装箱(通称オレンジボックス)が用いられ、「エルメス」ブランドの広告宣伝においても本件包装箱やその配色をデザイン化したものが意識的・戦略的に用いられている。 以上の認定に弁論の全趣旨を総合すれば、本件包装箱、ひいては本願商標 は、原告のブランド戦略に明確に位置づけられた「エルメス」の象徴として用いられているものと認められる。そして、このような本件包装箱の使用及び宣伝広告を通じて、少なくとも、「エルメス」のような高級ファッションブランド商品の購入者やこれに関心を有する消費者の間では、本願商標を付した本件包装箱(オレンジボックス)は、原告の展開する「エルメス」ブラ ンドに係るものであるとの認識が広く浸透しているものと認められる。 (2) しかし、本願の指定商品及び指定役務は別紙商標目録のとおり多岐にわたり、その中には第3類の革用クリーム、第14類の時計、キーホルダー、第16類の紙製箱等、文房具類、日記帳、写真立て、第18類のリュックサック、カード入れ、傘のように、安価な日用品として取引されることが少なくないものが含まれているから、その需要者は広く消費者一般であると解する のが相当であり、「エルメス」のような高級ファッションブランド商品の購入者やこれに関心を有する消費者に限られないというべきである。 そのような一般消費者を基準に考えた場合、「エルメス」ブランド自体は広く知られているにしても、これを認識させる具体的な標章としては、著名な 関心を有する消費者に限られないというべきである。 そのような一般消費者を基準に考えた場合、「エルメス」ブランド自体は広く知られているにしても、これを認識させる具体的な標章としては、著名な「HERMES」の文字商標や馬車と人を描いた図形商標である可能性も あり、これら文字商標や図形商標を離れて、色彩商標である本願商標それ自体から「エルメス」ブランドを認識できるようになっているとまで、直ちに認めることはできない。 このような場合に、本願商標と併用されている文字商標等の影響を排除し、本願商標だけに着目して、その識別力の有無・程度を明らかにするための資 料として、認知度アンケート調査が有用なことが少なくない。本件においても、原告から本件各アンケート調査の結果が提出されているので、次にその検討を行う。 (3) 本件各アンケート調査の内容及び結果は上記3(4)イ、ウのとおりであり、アンケート調査における認知度という意味では、本願商標の自他商品役務識 別力の獲得を認め得る結果になっているといえる(被告は正答率が高いとはいえない旨主張するが、正当な評価とはいえない。)。 しかし、アンケート対象者の設定についてみるに、対象者がいずれも30歳~59歳に限定されている上、本件アンケート調査1については「世帯年収1000万円以上」、本件アンケート調査2については「バッグ、アクセ サリー・時計、コスメ・香水のいずれかに興味があり、これらを半年以内に 購入した者」に限定されていることから、各対象者の中心は「エルメス」のような高級ファッションブランド商品の購入者やこれに関心を有すると考えられる者であって、広く一般消費者を対象としたものとはいえない。 原告は、収入や年齢等からみて本願の指定商品を購入 ス」のような高級ファッションブランド商品の購入者やこれに関心を有すると考えられる者であって、広く一般消費者を対象としたものとはいえない。 原告は、収入や年齢等からみて本願の指定商品を購入できない学生世代や定年退職後の高齢者世代を含む層を除くことには合理性がある、本願の指定 商品は奢侈品が多く含まれるからその需要者層は高所得者層が中心と考えられると主張するが、これらは「エルメス」ブランドの商品の特性としてはともかく、本願の指定商品、指定役務全般に当てはまるものではないから、原告の主張には理由がない。 さらに、上記各アンケートの質問は、「これは、とあるファッションブラ ンドが商品の包装に使用している包装箱の色彩です。」との、特定のファッションブランドの包装箱であるという答の一部を含む内容となっているから、本件アンケート調査1のQ3、本件アンケート調査2のQ1とも、厳密には「純粋想起」とはいえない。 以上によれば、本件各アンケート調査の結果は、本願商標の需要者として 想定すべき一般消費者の認識を的確に示すものということはできず、本願商標の自他商品役務識別力の認定証拠としては不適当といわざるを得ない。他に、一般消費者において、「エルメス」の著名な文字商標や図形商標を離れて、本願商標それ自体から「エルメス」ブランドを認識できるようになっていると認めるに足りる証拠はない。 (4) 以上の点を措くとしても、本願の指定商品のうち第3類の香料及び第16類の紙製箱等については、原告が商品として製造、販売している事実は認められず、これらの商品に係る第35類の小売等役務の提供をしている事実も認められない。したがって、これらの指定商品・役務について、本願商標の使用により自他商品役務の識別力を獲得したと認める 事実は認められず、これらの商品に係る第35類の小売等役務の提供をしている事実も認められない。したがって、これらの指定商品・役務について、本願商標の使用により自他商品役務の識別力を獲得したと認める余地はないことになる。 原告は、ハンカチボックス(甲41)の販売は第16類紙製箱、第35類 紙製箱の小売等役務についての本願商標の使用に当たると主張するが、甲41の商品名は「ハンカチボックス《ハンカチ》」であり、商品の説明もハンカチについてのものしかないことからすると、商品である「ハンカチ」の包装に本願商標を付して販売するものと認められ、商品としての「紙製箱」あるいはその小売等役務について使用したものとは認められない。 また、「香料」とは「食品、化粧品などに芳香をそえるために加える物質」(乙66・広辞苑第7版)であり、香水・化粧品の原料となる香料の販売業者(乙71)、加工食品の原料となる香料の販売業者(乙72)が存在する一方、原告や他の香水・化粧品の製造販売業者(乙73、74)が香料の製造販売を行っている事実も認められないから、香水と香料の取引者・需要者 が共通するとは認められない。 なお、本件の審判手続においては、本願の指定商品との関係では商標法3条2項該当性が、本願の指定役務との関係では同条1項6号該当性が争われ、審理判断されていると認められるから(甲153~155)、上記の点が本件訴訟の審理範囲内にあることは明らかであるし、被告の主張が時機に後れ たもので訴訟の完結を遅延させるものと認めることはできないから、時機に後れた攻撃防御方法(行政事件訴訟法7条、民事訴訟法157条)に当たるものでもない。 (5) 原告は、橙色の色彩商標の商標登録が認められている原告の本国フランス及び米国との整合性 から、時機に後れた攻撃防御方法(行政事件訴訟法7条、民事訴訟法157条)に当たるものでもない。 (5) 原告は、橙色の色彩商標の商標登録が認められている原告の本国フランス及び米国との整合性についても主張しているが、本願商標とは商標自体も指 定商品・役務も異なるものであって(甲64、65の各1、2)、整合性を問題とする前提を欠くものである(なお、工業所有権の保護に関するパリ条約6条の5B2も参照)。 (6) 小括以上に述べたところを要約すると、第1に、本件包装箱の使用及び宣伝広 告を通じて、少なくとも、「エルメス」のような高級ファッションブランド 商品の購入者やこれに関心を有する消費者の間では、本願商標を付した本件包装箱(オレンジボックス)は、原告の展開する「エルメス」に係るものであるとの認識が広く浸透しているものと認められるが、本願の指定商品及び指定役務に照らすと、本願商標の需要者としては一般消費者を想定すべきであり、そうした需要者を基準に考えた場合、本願商標それ自体から「エルメ ス」ブランドを認識できるに至っていると即断することはできない。本件各アンケート調査の結果も、この点の認定証拠として不適当である。第2に、本願の指定商品のうち第3類の香料及び第16類の紙製箱等並びにこれらの商品に係る第35類の小売等役務については、本願商標の使用の事実が認められず、これら指定商品・役務について、本願商標の使用による自他商品役 務識別力の獲得を認めることはできない。 したがって、その余の点について判断するまでもなく、原告主張の取消事由は認められないことに帰する。本件審決が、指定商品との関係で商標法3条1項3号該当性を認めた上同条2項の適用を否定した判断、指定役務との関係で同条1項6号該当性を認め までもなく、原告主張の取消事由は認められないことに帰する。本件審決が、指定商品との関係で商標法3条1項3号該当性を認めた上同条2項の適用を否定した判断、指定役務との関係で同条1項6号該当性を認めた判断に誤りはない。 5 その他の論点について以下は、本件訴訟の帰趨に影響を及ぼすものではないが、包装箱等の色彩に関する被告提示事例の評価及び独占適応性の問題について、当裁判所の考えを示しておく。 (1) 包装箱等の色彩に関する被告提示事例の評価について ア商品の包装箱等についての取引の実情として、別紙2「商品の包装箱等についての色彩の事例」にある包装箱等が、原告以外の事業者によって製造、販売されていることが認められる。 イそこで、被告提示事例を個別に検討するに、事例イ(イ)(乙39)、事例イ(ウ)(乙40)及び事例ウ(ア)(乙50、51)は、本願商標の色彩 及びその配色の特徴が比較的類似していると解されるが、このうち、事 例イ(ウ)及び事例ウ(ア)は、本願の指定商品及び指定役務と異なる洋菓子(キャラメル、パイ)の包装箱に関するものである上、証拠(甲170、171)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、事例イ(ウ)の商品は原告の知的財産権を侵害するものであるとして、警告書を送付して相手方事業者と交渉したところ、相手方事業者は、令和5年10月までに、当該商 品の展示販売を中止するとともに、「本件色彩(箱全体に橙色、上部周囲に茶色の色彩)がエルメスの商品及び役務を示す表示として広く認識されていることを理解し、今後は本件商品(本件色彩と類似する色彩を付したギフト箱)及び本件色彩と類似の色彩を付したギフト箱を展示販売しないことを誓約いたします」との誓約書を原告に差し入れたこと、 原告は とを理解し、今後は本件商品(本件色彩と類似する色彩を付したギフト箱)及び本件色彩と類似の色彩を付したギフト箱を展示販売しないことを誓約いたします」との誓約書を原告に差し入れたこと、 原告は、これ以外にも、侵害品と判断した商品を発見した場合、同様の対応をしており、警告書の送付を行うケースは年間30~40件程度あること、事例イ(イ)についても、対応を検討中であることが認められる。 これに対し、被告は、事例イ(ウ)の商品につき、販売中止の理由は明らかでなく、これを模倣品とみるべき根拠はない旨主張するが、当該商品 の形態及び上記誓約書の文言を総合すれば、相手方事業者は、当該商品の製造販売が不正競争防止法2条1項1号の不正競争に当たることを自認して販売を中止したものと推認できる。 そうすると、このような侵害品が市場に存在するとの事実は、本願商標の色彩及びその配色の特徴がありふれたものであることを根拠づける ものではなく、むしろ、本件包装箱(本願商標)の色彩及びその配色の特徴が高い顧客吸引力を有することを示唆するものといえる。 ウ包装箱等の色彩に関する被告提示事例のうち、上記イで触れたもの以外の事例は、本願商標の特徴である茶色の縁取りが全くないか、その範囲が本願商標と異なり、「上部周囲」以外にも及んでいるようなものであ って(本願商標が茶色をあえて上部周囲だけに使用していることは上述 のとおりであり、その違いは全体の印象に大きく影響する。)、本願商標の色彩及びその配色がありふれたものであることを根拠づけるものとはいえない。 この点に関し、被告は、商標の類否は離隔的観察を前提とすべきことからすれば、箱の大部分に橙色、縁等にわずかに茶又は近似する色が使 用されているものも、本願商標と見分ける ものとはいえない。 この点に関し、被告は、商標の類否は離隔的観察を前提とすべきことからすれば、箱の大部分に橙色、縁等にわずかに茶又は近似する色が使 用されているものも、本願商標と見分けることは困難であると主張する。 しかし、この主張は、前記2(2)で述べた本願商標の特徴を的確に踏まえたものといえない上、本願商標の使用、宣伝広告等を通じて需要者の認識が変化することも踏まえて検討すべきものであって、一概に被告主張のように決めつけることはできないというべきである。 (2) 独占適応性の問題について被告は、本願商標の登録を認めた場合、多数の事業者によって広く使用されている色彩について、本願商標に類似すると判断され得る使用態様が事実上制限されることになり、ファッション分野を中心に、色彩使用の自由が著しく制限され、他の事業者に著しい委縮効果を及ぼすことになる旨主張する。 しかし、まず、本願商標は、単なる橙色と茶色の組合せをもって特定されるものではなく、箱全体の橙色とその上部輪郭を縁取るように付された茶色を組み合わせた特有の構成を有するものであって、その商標登録を認めたからといって、単純に色彩の独占がもたらされるわけではないし、このような特有の構成を備えた色彩の組合せが多数の事業者によって広く使用されてい るという取引の実情が認められるわけでもない(上記(1)参照)。また、仮に本願商標の登録が認められたとしても、これに類似すると判断される使用態様は、実際上、不正競争防止法2条1項1号の不正競争にも当たる場合が少なくないと解され(被告提示事例イ(ウ)の販売中止の経緯参照)、その委縮効果を過大に評価すべきでない。 (3) 以上のとおり、当裁判所は、結論において原告の請求を棄却すべきものと くないと解され(被告提示事例イ(ウ)の販売中止の経緯参照)、その委縮効果を過大に評価すべきでない。 (3) 以上のとおり、当裁判所は、結論において原告の請求を棄却すべきものと 判断するものではあるが、上記(1)、(2)に関する被告の議論に与するものでないことは付言しておく。 6 結論よって、原告の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官宮坂昌利 裁判官 本吉弘行 裁判官頼晋一 別紙1 商標目録 【商標】 【商標の詳細な説明】 商標登録を受けようとする商標は、色彩の組合せのみからなるものであり、箱全体において、橙色(RGBの組合せ:R221、G103、B44)、上部周囲に茶色(RGBの組合せ:R94、G55、B45)とする構成からなる。なお、商標見本における破線は、箱の形状の一例を示したものであり、商標を構成する要素ではない。 【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】第3類香水、香料、薫料及び香水類、ボディーローション、身体防臭用化粧品、浴用及びシャワー用のジェル、アフターシェーブローション、革用クリーム第14類宝飾品、ネックレス、ブレスレット、指輪、イヤリング、ペンダント、 宝飾品用チャーム、時計用具、腕時計、時計、時計バンド、キーホルダー、宝飾品のスカーフ留め第16類紙製 第14類宝飾品、ネックレス、ブレスレット、指輪、イヤリング、ペンダント、 宝飾品用チャーム、時計用具、腕時計、時計、時計バンド、キーホルダー、宝飾品のスカーフ留め第16類紙製箱、紙袋、紙製の包装袋、包装紙、文房具類、日記帳、写真立て、パスポートホルダー第18類ハンドバッグ、旅行かばん、リュックサック、ビーチバッグ、肩掛 けかばん、札入れ、財布、カード入れ、ブリーフケース、皮革製キーケース、皮革製小物入れ、スーツケース、化粧品収納用ポーチ、小型 クラッチバッグ、乗馬用具、くら、馬具、馬用毛布、くら用覆い、鞍の下敷き布、乗馬用むち、傘第35類香水・香料、薫料及び香水類・ボディーローション・身体防臭用化粧品・浴用及びシャワー用のジェル・アフターシェーブローション・革用クリームの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便 益の提供、宝飾品・ネックレス・ブレスレット・指輪・イヤリング・ペンダント・宝飾品用チャーム・時計用具・腕時計・時計・時計バンド・キーホルダー・宝飾品のスカーフ留め・スカーフ留め(宝飾品を除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、紙製箱・紙袋・紙製の包装袋・包装紙・文房具類・日記帳・写 真立て・パスポートホルダーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、ハンドバッグ・旅行かばん・リュックサック・ビーチバッグ・肩掛けかばん・札入れ・財布・カード入れ・ブリーフケース・皮革製キーケース・皮革製小物入れ・スーツケース・化粧品収納用ポーチ・小型クラッチバッグ・乗馬用具・くら・馬具・馬 用毛布・くら用覆い・鞍の下敷き布・乗馬用むち・傘の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供以上 納用ポーチ・小型クラッチバッグ・乗馬用具・くら・馬具・馬 用毛布・くら用覆い・鞍の下敷き布・乗馬用むち・傘の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供以上
▼ クリックして全文を表示