令和2(ワ)28563 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年11月28日 東京地方裁判所
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判決文本文23,431 文字)

- 1 -令和4年11月28日判決言渡同日原本交付裁判所書記官令和2年第28563号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和4年8月8日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり (以下、上記目録記載の各原告を、各原告欄の記載に従い「原告1」などという。)主文 1 本件訴えのうち、原告15の被告に対する請求に係る部分を却下する。 2 その余の原告らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は、原告らに対し、それぞれ10万円及びこれに対する令和2年12月 29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の要旨本件は、夫婦が婚姻中に別居したことにより、又は離婚したことに伴って別居したことにより、未成年の子と自由に面会することができなくなった親(以 下「別居親」といい、他方の親を「同居親」という。)、祖父母若しくは両親の別居及び離婚に伴い別居親と自由に面会することができなくなった子の立場にあるか、又はあった原告らが、親と子、祖父母と孫の面会交流権について具体的に規定を設ける立法措置を採らなかった立法不作為の違法を理由に、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金10万円及びこれに 対する不法行為後の日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで平成29年法- 2 -律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実等(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実等)⑴ 原告らの立場 ア原告1、原告4から原告13まで及び原告15は、別居 である。 2 前提事実等(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実等)⑴ 原告らの立場 ア原告1、原告4から原告13まで及び原告15は、別居親の立場にある又はあった者である。(甲84、87から92まで、94、95、96の2、97、99)イ原告2及び原告3は、子である原告1が配偶者と別居したことにより、未成年の孫と自由に面会することができなくなった祖父母の立場にある者 である。(甲85、86)ウ原告14(平成20年生まれ)は、両親が離婚したことにより、片親と自由に面会することができなくなった未成年の子であり、原告16(平成12年生まれ)及び原告17(平成16年生まれ)は、平成23年に両親が別居したことにより、親である原告15と自由に面会することができな くなったが、平成28年の両親の離婚に伴い、原告15が同居し監護養育するようになった子である。(甲98、104、106)⑵ 本件に関係する我が国が批准した条約の定め等ア市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和54年条約第7号。以下「B規約」という。)23条4項 この規約の締約国は、婚姻中及び婚姻の解消の際に、婚姻に係る配偶者の権利及び責任の平等を確保するため、適当な措置をとる。その解消の場合には、児童に対する必要な保護のため、措置がとられる。 イ児童の権利に関する条約(平成6年条約第2号)3条2項 締約国は、児童の父母、法定保護者又は児童について法的に責任を有- 3 -する他の者の権利及び義務を考慮に入れて、児童の福祉に必要な保護及び養護を確保することを約束し、このため、すべての適当な立法上及び行政上の措置をとる。 9条1項締約国は、児童がその父母の する他の者の権利及び義務を考慮に入れて、児童の福祉に必要な保護及び養護を確保することを約束し、このため、すべての適当な立法上及び行政上の措置をとる。 9条1項締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されない ことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない。このような決定は、父母が児童を虐待し若しくは放置する場合又は父母が別居しており児童の居住地を決定しなければならない場合のような特定の場合におい て必要となることがある。 9条3項締約国は、児童の最善の利益に反する場合を除くほか、父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する。 18条1項締約国は、児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有するという原則についての認識を確保するために最善の努力を払う。父母又は場合により法定保護者は、児童の養育及び発達についての第一義的な責任を有する。児童の最善の利益は、これらの者の基本的な関心事項とな るものとする。 ウ国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(平成26年条約第2号。 以下「ハーグ条約」という。)5条この条約の適用上、 a 「監護の権利」には、子の監護に関する権利、特に、子の居所を決- 4 -定する権利を含む。 b 「接触の権利」には、一定の期間子をその常居所以外の場所に連れて行く権利を含む。 21条接触の権利について内容を定め、又は効果的な行使を確保するように 取り計らうことを求める申請は、締約国の中央当局に対して、子の返 をその常居所以外の場所に連れて行く権利を含む。 21条接触の権利について内容を定め、又は効果的な行使を確保するように 取り計らうことを求める申請は、締約国の中央当局に対して、子の返還を求める申請と同様の方法によって行うことができる。 中央当局は、接触の権利が平穏に享受されること及び接触の権利の行使に当たり従うべき条件が満たされることを促進するため、第7条に定める協力の義務を負う。中央当局は、接触の権利の行使に対するあらゆ る障害を可能な限り除去するための措置をとる。 中央当局は、接触の権利について内容を定め、又は保護するため及び接触の権利の行使に当たり従うべき条件が尊重されることを確保するため、直接に又は仲介者を通じて、手続を開始し、又はその開始について援助することができる。 エ我が国が締約国となっている条約機関から日本政府に対する勧告児童の権利に関する条約43条に基づき設置された条約機関である児童の権利に関する委員会は、日本政府の報告に対し2019(平成31)年2月1日付けで採択した総括所見において、児童の最善の利益である場合に、外国籍の親も含めて児童の共同養育を認めるため、離婚後の親子関係 について定めた法令を改正し、また、非同居親との人的な関係及び直接の接触を維持するための児童の権利が定期的に行使できることを確保するため、十分な人的資源、技術的資源及び財源に裏付けられたあらゆる必要な措置をとることを求める勧告をした。(甲45)⑶ 関連訴訟 原告13及び原告15は、別居親と子の面会交流権は憲法上保障されてお- 5 -り、その権利行使の機会を確保するために必要な立法措置を採ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたって立 面会交流権は憲法上保障されてお- 5 -り、その権利行使の機会を確保するために必要な立法措置を採ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたって立法措置を怠ったことは違法である旨主張して、他の者と共同原告となり、国に対して、国家賠償法1条1項による損害賠償請求権に基づき、慰謝料の支払を求める訴えを東京地方裁判所に提起した(以下、この訴 えに係る訴訟を「本件前訴」という。)。 東京地方裁判所は、国家賠償法1条1項の違法性が認められないなどとして、上記共同原告の請求を棄却する判決をし、これに対して上記共同原告が控訴をしたところ、東京高等裁判所は、令和2年6月23日に口頭弁論を終結し、同年8月13日に控訴を棄却する旨の判決をした。本件前訴の判決は 令和3年7月7日に確定した。 (乙1の1・2、乙2、5の1から3まで) 3 争点及びこれについての当事者の主張⑴ 本件訴えの提起が信義則に反するか(本案前の主張)(被告の主張) 本件前訴は、原告13及び原告15が主張した国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権の全部について審理した上で、当該請求権は全く現存しないとの判断を示したものであるから、本件における原告13及び原告15の訴えは、信義則に反し不適法である(最高裁平成9年第849号同10年6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1147頁参照)。 (原告13及び原告15の主張)争う。 本件前訴では、憲法上の権利としての面会交流権についての立法不作為の違法性が争点とされたのであり、親と子の面会交流権が人格的な利益に含まれることを前提とした立法不作為の違法性は争点となっておらず、判示もさ れていないのであるから 交流権についての立法不作為の違法性が争点とされたのであり、親と子の面会交流権が人格的な利益に含まれることを前提とした立法不作為の違法性は争点となっておらず、判示もさ れていないのであるから、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権の全- 6 -部について審理した上で、当該請求権は全く現存しないとの判断が示されたとはいえない。 ⑵ 原告13及び原告15の請求が既判力に抵触するか(被告の主張)原告13及び原告15は、本件と訴訟物を同一とする本件前訴の原告であ るところ、本件前訴ではその請求を棄却する判決がされ、この判決は令和3年7月7日に確定しているのであるから、原告13及び原告15による請求は、本件前訴の確定判決の既判力により棄却されるべきである。 (原告13の主張)原告13は、本件において、本件前訴の事実審の口頭弁論終結(令和2年 6月23日)後に、子と面会交流ができなくなったことを請求原因事実として主張しており、本件前訴の確定判決の既判力に抵触しない。 (原告15の主張)原告15は、本件において、令和2年9月26日に診断されたPTSD(心的外傷後ストレス障害)の後遺障害を損害として主張しており、同障害 は子らと面会交流ができなくなったことによって、本件前訴の事実審の口頭弁論終結(令和2年6月23日)後に発症したものであるから(甲78の1から3まで)、本件前訴の確定判決の既判力に抵触しない。 ⑶ 親と子の面会交流権についての立法不作為の違法性(原告らの主張) ア親と子の面会交流権について、面会交流が自由に、円滑かつ滞りなく行われるための実体的権利義務規定、手続規定、強制執行規定及び制裁規定といった具体的な権利義務規定を設ける立法措置が 張) ア親と子の面会交流権について、面会交流が自由に、円滑かつ滞りなく行われるための実体的権利義務規定、手続規定、強制執行規定及び制裁規定といった具体的な権利義務規定を設ける立法措置がされていない(以下、この立法措置がされていない状態を「立法不作為1」という。)。 イ立法不作為1は、以下のとおり、憲法13条、14条1項及び24条2 項に違反するというべきである。 - 7 - 憲法13条種々の裁判例、外国の法制度及び親と子の面会交流権が前国家的・始原的な自然権に由来すること等に照らすと、親と子の面会交流権は、憲法13条が保障する親と子のそれぞれの人格権や幸福追求権に含まれる。 このことは、最高裁昭和43年第1614号同51年5月21日大法 廷判決・刑集30巻5号615頁(以下「旭川学テ判決」という。)が、自然権としての親の子に対する教育権を認めたことからも明らかである。 したがって、立法不作為1は、憲法13条により保障された親と子の面会交流権を合理的な理由なく制限するものであり、同条に違反しているというべきである。 仮に、親と子の面会交流権が、憲法13条により憲法上の権利として保障されていないとしても、親による子の養育は子と親の双方にとって人格的な利益であり、親と子の面会交流が親による子の養育の一場面であることからすると、親と子の面会交流権も子と親の双方にとって人格的な利益である。したがって、親と子の面会交流権は、人格的な利益と して、憲法14条1項や同法24条2項の適用上考慮されるべきである。 憲法14条1項立法不作為1によって、同居親は子と共に生活をし、子と触れ合いながら子の養育や教育等を行っているのに対して、別居親は子と触れ合うことが制 れるべきである。 憲法14条1項立法不作為1によって、同居親は子と共に生活をし、子と触れ合いながら子の養育や教育等を行っているのに対して、別居親は子と触れ合うことが制限され、子は別居親と触れ合うことが制限されることになる。 立法不作為1は、諸外国の法制度と比較しても合理的な理由なく、同居親と子の関係と別居親と子の関係を差別するものである。 また、立法不作為1によって、同居親は、別居親と子が面会交流を行うことを許可する特権を有しているのに対して、別居親はそのような権利を有していないのであって、立法不作為1は合理的な理由なく、同居 親と別居親を差別するものである。 - 8 -したがって、立法不作為1は、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反しているというべきである。 憲法24条2項上記の主張に照らせば、立法不作為1は個人の尊厳と両性の本質的平等について定めた憲法24条2項にも違反しているというべきである。 仮に、親と子の面会交流権が憲法上の権利でないと解釈されたとしても、憲法24条2項は、憲法上直接保障された権利とまではいえない人格的な利益をも尊重すべきこと、両性の実質的な平等が保たれるように図ること等について、十分に配慮した法律の制定を求めている(最高裁平成26年第1023号同27年12月16日大法廷判決・民集69 巻8号2586頁参照)。 両親の離婚や別居という、別居親や子からすると自ら選び、正せない、やむを得ない事柄であるにもかかわらず、夫婦関係の清算等とは関係がない憲法上の権利や人格的な利益である子と別居親の面会交流権が同居親の同意なくして行えないという不利益が及ぼされることは、個人の尊 やむを得ない事柄であるにもかかわらず、夫婦関係の清算等とは関係がない憲法上の権利や人格的な利益である子と別居親の面会交流権が同居親の同意なくして行えないという不利益が及ぼされることは、個人の尊 厳と両性の本質的平等の要請に照らしても合理性を欠くため、憲法24条2項に違反しているというべきである。 ウ以下のとおり、立法不作為1を補う立法措置を採ることが必要不可欠であり、その立法義務を国会(国会議員)が負っていることは明白である。 立法不作為1は、上記イのとおり、憲法上の権利である親と子の面会 交流権を制限するものであり、憲法13条、14条1項及び24条2項に違反することから、立法不作為1を補う立法を行う義務が国会に認められることは明らかである。 憲法98条2項から、我が国が締約国となっている条約や、その条約機関から日本政府に対して出された法改正を求める勧告は、日本国憲法 の解釈に影響を与える立法事実として存在している。 - 9 -したがって、B規約23条4項、児童の権利に関する条約3条2項、9条1項、3項、18条1項、平成31年2月1日付け児童の権利に関する委員会からの勧告(前提事実⑵エ)、ハーグ条約5条から、立法不作為1を補う立法を行う義務が国会に認められることは明らかである。 また、法務省の調査において調査対象となったほとんどの国に離婚後 の子と親の面会交流の実施状況を公的機関が監視するなどの支援制度があること(甲40の1から3まで)、法務省も参加する家族法研究会において、法的性質や取決めの実効性を高める方策などの面会交流の立法の在り方が議論されていること(甲48の1、2)、自由民主党政務調査会の司法制度調査会が、令和2年6月、離婚後の親権制度の在り方、 養育費の確保、面会交 実効性を高める方策などの面会交流の立法の在り方が議論されていること(甲48の1、2)、自由民主党政務調査会の司法制度調査会が、令和2年6月、離婚後の親権制度の在り方、 養育費の確保、面会交流の改善などの課題について、諸外国の取組に学びつつ党内の関係組織とも連携して、引き続き検討を進めていく旨提言したこと(甲49)からも、立法不作為1を補う立法を行う義務が国会に認められる。 最高裁平成25年第1079号同27年12月16日大法廷判決・ 民集69巻8号2427頁は、諸外国の立法の動向が、日本国憲法の解釈に影響を与える立法事実であることを示している。そして、我が国の面会交流権が制限された法律制度やそれを変えようとしない国会の立法不作為を強く非難するEUの請願委員会及び本会議の各非難決議(甲50、51)が採択され、我が国に対して法改正を求めていることからす ると、立法不作為1を補う立法を行う義務が国会に認められることは明らかである。 最高裁昭和43年第932号同48年12月12日大法廷判決・民集27巻11号1536頁からすれば、私人による人権侵害の態様、程度が社会的に許容し得る限界を超えるときは、立法措置によって是正を 図る立法義務があるところ、立法不作為1が是正されない下では、同居- 10 -親の意思によって、基本的人権である別居親と子の面会交流権が制限されているのであるから、立法不作為1を補う立法を行う義務が国会に認められることは明らかである。 最高裁平成24年第984号、同第985号同25年9月4日大法廷決定・民集67巻6号1320頁が子が自ら選び、正せない事柄を理 由に不利益を及ぼすことは許されない旨の判示をしていること、前掲最高裁平成25年第1079号同27年12月16日大法廷 日大法廷決定・民集67巻6号1320頁が子が自ら選び、正せない事柄を理 由に不利益を及ぼすことは許されない旨の判示をしていること、前掲最高裁平成25年第1079号同27年12月16日大法廷判決が親子法は子の福祉や子の保護を実現するためにあり、親の不都合を防止するための制度ではないことを確認したと解釈できることからすると、子が親と面会交流を行うことを制限した立法不作為1について、これを補う 立法を行う義務が国会に認められることは明らかである。 エ上記イ、ウのような状況であるにもかかわらず、前記アのとおり、国会は正当な理由なく長期にわたって立法不作為1を補う立法措置を採ることを怠っている。 (被告の主張) ア立法不作為1は、以下のとおり、憲法13条、14条1項及び24条2項に違反しない。 憲法13条違反の主張について親と子の面会交流権は、その法的性質や権利性のみならず、その具体的な権利内容、法的効果も一義的なものでなく、これを特定することは 困難であって、このように曖昧な権利が憲法13条によって保障されているとはいえない。 憲法14条1項違反の主張について同居親と別居親とでは、その置かれている状況や立場が異なり、同居親については、面会交流というものを観念できないのであるから、別居 親の面会交流権について同居親と別居親との間の差異が憲法14条1項- 11 -に違反しているということはできない。 仮に、同居親と別居親との対比が可能であるとしても、その差異は、社会的事実としての別居の有無により生ずるものであって、面会交流に関する立法不作為によって親と子の交流の機会に不平等が生じたものではないから、その差異を法的差別とみることはできない。 憲法24条2項違反の主張 居の有無により生ずるものであって、面会交流に関する立法不作為によって親と子の交流の機会に不平等が生じたものではないから、その差異を法的差別とみることはできない。 憲法24条2項違反の主張について原告らの主張は、立法不作為1が憲法14条1項に違反するゆえに憲法24条2項に違反するという点に尽きるのであるから、と同様に、同項に違反するとはいえない。 この点をおくとしても、原告らは、立法不作為1が個人の尊厳と両性 の本質的平等の要請に照らして合理性を欠くかについて、何ら主張していない。 イ以下のとおり、立法不作為1を補う立法措置を採ることが必要不可欠であり、その立法義務を国会が負っていることが明白であるとはいえない。 親と子の面会交流権が憲法上保障されているとは認められないため、 立法不作為1を補う立法措置の必要不可欠性や立法義務の明白性について検討する前提を欠いている。 この点をおくとしても、面会交流が自由に、円滑かつ滞りなく行われるための実体的権利義務規定、手続規定、強制執行規定及び制裁規定の内容は極めて曖昧かつ不明確であるから、その立法措置の必要不可欠性 や立法義務の明白性は認められない。 民法766条1項の適用又は類推適用により、子の監護に関する事項として、「子の利益を最も優先して考慮し」て父母の協議で定めるものとされ、協議により定めることができないときは、家庭裁判所がこれを定めることとされており、別居親が子と面会交流することが子の利益に かなうと考えるのであれば、家庭裁判所に、「子の監護に関する処分」- 12 -(家事事件手続法別表第2の3項)の一内容として、監護親に対して別居親と子の面会交流をさせるよう命じる審判の申立てをすることができ、当該審判において面会交流の日 の監護に関する処分」- 12 -(家事事件手続法別表第2の3項)の一内容として、監護親に対して別居親と子の面会交流をさせるよう命じる審判の申立てをすることができ、当該審判において面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められ、監護親がすべき給付の特定に欠けることがないといえる場合には、当該審判に基づき間接強制をするこ とができる(最高裁平成24年第48号同25年3月28日第一小法廷決定・民集67巻3号864頁)のであるから、新たな立法措置を採ることが必要不可欠であるとはいえない。 ウ以上のとおり、国会は正当な理由なく長期にわたって立法不作為1を補う立法措置を採ることを怠っているとはいえない。 ⑷ 祖父母と孫の面会交流権についての立法不作為の違法性(原告らの主張)ア立法不作為2祖父母と孫の面会交流権について、面会交流が自由に、円滑かつ滞りなく行われるための実体的権利義務規定、手続規定、強制執行規定及び制裁 規定といった具体的な権利義務規定を設ける立法措置がされていない(以下、この立法措置がされていない状態を「立法不作為2」という。)。 イ立法不作為2は、以下のとおり、憲法13条、14条1項及び24条2項に違反するというべきである。 憲法13条 種々の裁判例、外国の法制度及び祖父母と孫の面会交流権が前国家的・始原的な自然権に由来すること等に照らすと、祖父母と孫の面会交流権は、憲法13条が保障する祖父母と孫のそれぞれの人格権や幸福追求権として保障されている。 立法不作為2は、憲法13条により保障された祖父母と孫の面会交流 権を合理的な理由なく制限するものであり、同条に違反しているという- 13 -べきである。 仮に、祖父 されている。 立法不作為2は、憲法13条により保障された祖父母と孫の面会交流 権を合理的な理由なく制限するものであり、同条に違反しているという- 13 -べきである。 仮に、祖父母と孫の面会交流権が、憲法13条が保障する人格権や幸福追求権に含まれる基本的人権として保障されていないとしても、祖父母と孫との触れ合いの時間とその思い出は、祖父母にとっても孫にとっても互いの人格に影響を与え、人格の成長を促す存在であって、当該人 格的な利益は、祖父母にとっても、孫にとっても、当然に失われるものではなく、また、失われるべきものでもないから、祖父母と孫との面会交流権は、祖父母にとっても、孫にとっても、人格的な利益である。 したがって、祖父母と孫の面会交流権は、人格的な利益として、憲法14条1項や同法24条2項の適用において考慮されるべきである。 憲法14条1項立法不作為2によって、同居親は子と共に生活をして、子と触れ合いながら、子の養育や教育等を行っているのに対して、祖父母は孫と触れ合うことが制限され、孫は祖父母と触れ合うことが制限されており、立法不作為2は、祖父母と孫の面会交流権が親と子の面会交流権と対とな り、互いに補完して子(孫)の福祉を保護し、実現する役割を生むにもかかわらず、合理的な理由なく、同居親と子の関係と祖父母と孫の関係を差別するものである。 また、立法不作為2によって、同居親は、祖父母と孫が面会交流を行うことを許可する特権を有しているのに対して、祖父母はそのような権 利を有していないのであって、立法不作為2は合理的な理由なく、同居親と祖父母を差別するものである。 したがって、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反しているというべきである。 憲法24条2項 ないのであって、立法不作為2は合理的な理由なく、同居親と祖父母を差別するものである。 したがって、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反しているというべきである。 憲法24条2項 上記の主張に照らせば、立法不作為2は憲法24条2項にも違反し- 14 -ているというべきである。 仮に、祖父母と孫の面会交流権が憲法上の権利でないと解釈されたとしても、憲法24条2項は、憲法上直接保障された権利とまではいえない人格的な利益をも尊重すべきこと、両性の実質的な平等が保たれるように図ること等について、十分に配慮した法律の制定を求めている(前 掲最高裁平成26年第1023号同27年12月16日大法廷判決参照)。 両親の離婚や別居という、祖父母や子からすると自ら選び、正せない、やむを得ない事柄であるにもかかわらず、夫婦関係の清算等とは関係がない憲法上の権利や人格的な利益である祖父母と孫の面会交流権が同居 親の同意なくして行えないという不利益が及ぼされることは、個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らしても合理性を欠くため、憲法24条2項に違反しているというべきである。 ウ以下のとおり、立法不作為2を補う立法措置を採ることが必要不可欠であり、その立法義務を国会が負っていることは明白である。 立法不作為2は、上記イのとおり、憲法上の権利である祖父母と孫の面会交流権を制限するものであり、憲法13条、14条1項及び24条2項に違反することから、立法不作為2を補う立法を行う義務が国会に認められることは明らかである。 また、祖父母の面会交流権は親の面会交流権と対となり、互いに補完 して子(孫)の福祉を保護し、実現する役割を果たしていることからすると、上記⑶の原告らの主張ウからまでは、祖父母 ある。 また、祖父母の面会交流権は親の面会交流権と対となり、互いに補完 して子(孫)の福祉を保護し、実現する役割を果たしていることからすると、上記⑶の原告らの主張ウからまでは、祖父母と孫の面会交流権についても妥当するのであり、立法不作為2を補う立法を行う義務が国会に認められることは明らかである。 エ上記イ、ウのような状況であるにもかかわらず、前記アのとおり、国会 は正当な理由なく長期にわたって立法不作為2を補う立法措置を採ること- 15 -を怠っている。 (被告の主張)上記⑶の被告の主張は、祖父母と孫の面会交流権についての立法不作為の違法性についても同様に妥当するから、立法不作為2は、憲法13条、14条1項及び24条2項に違反せず、立法不作為2を補う立法措置を採 ることが必要不可欠であり、その立法義務を国会が負っていることが明白であり、国会が正当な理由なく長期にわたって立法不作為2を補う立法措置を採ることを怠っているとはいえない。 ⑸ 原告らの損害の発生及びその数額(原告らの主張) 原告らは、立法不作為1又は立法不作為2によって、親と子又は祖父母と孫の面会交流権を侵害され、多大な精神的苦痛を被った。その慰謝料の額はそれぞれ10万円を下らない。 (被告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点⑴(本件訴えの提起が信義則に反するか)について⑴ 原告13について一件記録によれば、原告13は、本件において、子との面会交流が令和2年2月23日までは実施できていたが、その後は実施がままならなくなり、 同年3月の履行勧告も功を奏さないなどしていたところ、同年9月の家庭裁判所における調停期日において、相手方による面会交流の機会の確保を裁判所に求 きていたが、その後は実施がままならなくなり、 同年3月の履行勧告も功を奏さないなどしていたところ、同年9月の家庭裁判所における調停期日において、相手方による面会交流の機会の確保を裁判所に求める原告13に対し、調停委員等からその困難を言われたことなどの事実を、原告13の権利又は法律上保護すべき利益の侵害に係る事実として主張していることが認められる。こうした事情は、本件前訴の事実審の口頭 弁論終結後に生じたものといえる。 - 16 -こうした事情は、本件前訴において審理の対象とならなかったことが明らかであって、被告において紛争が解決されたとの合理的期待が生じるとは直ちにいえない。したがって、原告13による本件訴えの提起が信義則に反するということはできない。 この点に関し、被告は、原告13による本件訴えの提起は、金銭債権の数 量的一部請求を前訴とする場合の残部請求と同視すべきである旨主張するが、上記に説示のとおり、被侵害利益を異にするものであるから、上記のように同視することはできず、被告の主張は採用することができない。 ⑵ 原告15についてア一件記録によれば、原告15は、本件において、前訴の事実審の口頭弁 論終結までに生じた事情のみを被侵害利益に係る事情として主張し、平成26年4月には精神疾患の診断を受けるなどした旨も主張しているところ、本件前訴において主張していない点は、令和2年9月26日に原告15がPTSDの後遺障害があると診断された旨の損害を受けた事実であることを明らかにしていることが認められる。そうすると、本件前訴と本件とは、 いずれも訴訟物である権利関係を同じくし、また、権利等の侵害及び損害の発生の基礎となる事情をもほぼ同じくしているといえるから、本件前訴の審理判断によって、紛争が解 ると、本件前訴と本件とは、 いずれも訴訟物である権利関係を同じくし、また、権利等の侵害及び損害の発生の基礎となる事情をもほぼ同じくしているといえるから、本件前訴の審理判断によって、紛争が解決したとの合理的期待を被告に生じさせるものとみるべきである。 したがって、原告15の本件訴えは、上記認定に係る後遺障害の診断を 考慮したとしても、実質的に前訴で認められなかった請求及び主張を蒸し返すものであり、前訴の確定判決によって当該請求権の全部について紛争が解決されたとの被告の合理的期待に反し、被告に二重の応訴の負担を強いるものというべきであるから、特段の事情がない限り、信義則に反して許されないというべきである(前掲最高裁平成10年6月12日第二小法 廷判決参照)。 - 17 -イ原告15は、親と子の面会交流権が人格的な利益に含まれることは、本件前訴の事実審の口頭弁論終結後に言い渡された判決(東京高等裁判所令和3年第1297号同年10月28日判決。甲53、乙4)によって初めて明らかになったものであり、これを前提とした立法不作為の違法性について法的判断を求める法的利益を有する旨主張する。しかしながら、 個々の裁判例の判断は他の裁判所の判断を拘束するものではないし、この点をおくとしても、原告15の引用する裁判例は、親による子の養育関係が親にとっても子にとっても人格的な利益である旨を判示したにすぎず、親と子の面会交流権が人格的な利益である旨を判示したものではないことからすると、本件前訴の事実審の口頭弁論終結後に上記判決がされたこと は、上記の特段の事情に当たらない。 ウ以上のとおりであり、その他の本件全証拠によっても、上記特段の事情があるとは認められないから、本件訴えのうち原告15の請求に係る部分は信義 れたこと は、上記の特段の事情に当たらない。 ウ以上のとおりであり、その他の本件全証拠によっても、上記特段の事情があるとは認められないから、本件訴えのうち原告15の請求に係る部分は信義則に反し、不適法である。 2 争点⑵(原告13及び原告15の請求が既判力に抵触するか)について 被告は、原告13及び原告15につき、本件前訴の既判力に抵触する旨を主張する。 前記1説示のとおり、本件訴えのうち原告15の請求に係る部分は不適法であるから、原告13について判断すると、前記1に説示のとおり、原告13は、本件前訴の事実審の口頭弁論終結後の事情を、その被侵害利益の基礎となる事 情として主張しているといえる。そうすると、本件における原告13の請求について、本件前訴の既判力が及ぶ余地はないといわざるを得ない。この点に係る被告の主張は理由がない。 3 争点⑶(親と子の面会交流権についての立法不作為の違法性)及び争点⑷(祖父母と孫の面会交流権についての立法不作為の違法性)について ⑴ 国家賠償法1条1項の違法性について- 18 -原告らは、立法不作為1及び立法不作為2がいずれも国家賠償法1条1項の適用上違法になる旨主張するところ、国会議員の立法行為又は立法不作為が同項の適用上違法となるかどうかは、国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違反したかどうかの問題であって、立法の内容又は立法不作為の違憲性の問題とは区別されるべきであり、 仮に当該立法の内容又は立法不作為が憲法の規定に違反するものであるとしても、そのゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに違法の評価を受けるものではない。しかしながら、①立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害す 反するものであるとしても、そのゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに違法の評価を受けるものではない。しかしながら、①立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、②国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法 措置を採ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けるものというべきである(最高裁昭和53年第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁、最高 裁平成13年(行ツ)第82号、第83号、同年(行ヒ)第76号、第77号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁、前掲最高裁平成25年第1079号同27年12月16日大法廷判決参照)。 ⑵ 争点⑶(親と子の面会交流権についての立法不作為の違法性)についてア立法不作為1の憲法13条違反をいう点について 原告らは、別居親につき親子間の面会交流権に関する権利義務規定を設ける立法措置を講じていない立法不作為1が、憲法13条により保障される親子間の面会交流権を侵害するとし、この権利は、親と子の立場にあることから前国家的、始原的な自然権であること、外国の法制度等から、同条により保障される憲法上の権利であると主張する。 しかし、原告らが主張する前国家的、始原的な自然権という概念は必- 19 -ずしも明確ではなく、これに当たるからといって直ちにこれが憲法上保障される権利であると解することはできない。また、外国の法制度において権利として確立しているからといって、直ちに は必- 19 -ずしも明確ではなく、これに当たるからといって直ちにこれが憲法上保障される権利であると解することはできない。また、外国の法制度において権利として確立しているからといって、直ちにこれが我が国の憲法上保障される権利であると解することもできない。その上、面会及び交流の具体的な内容が明らかでないのみならず、その実現に相手方の対応 が必要と解されることからすれば(なお、原告14は、自分との面会交流に拒否的態度を示す別居親との面会交流ができないことを問題視している(甲98、弁論の全趣旨)。)、これを別居親又は子の個人の人格権や幸福追求権として保障されると解することには疑問がある。 原告らは、旭川学テ判決が、自然権としての親の子に対する教育権を 認めたと解釈できることから、親と子の面会交流権も、前国家的・始原的な自然権に由来している旨主張する。しかしながら、旭川学テ判決は、子の教育の最も始源的かつ基本的な形態は、親が子との自然的関係に基づいて子に対して行う養育、監護の作用の一環として現れるという社会的事実を指摘するにとどまっており、自然権としての親の子に対する教 育権が認められることを判示する趣旨と解することはできない。 この点をおき、仮に原告らが主張する親と子の面会交流権が憲法13条により保障される権利であると解したとしても、こうした自由権は、国又は公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので、専ら国又は公共団体と個人との関係を規律するも のであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではないと解される(前掲最高裁昭和48年12月12日大法廷判決参照)ことに照らすと、面会交流権を具体的に私人間において保障する法律を国が立法する義務を負うとは、直ちに解す 律することを予定するものではないと解される(前掲最高裁昭和48年12月12日大法廷判決参照)ことに照らすと、面会交流権を具体的に私人間において保障する法律を国が立法する義務を負うとは、直ちに解することができない。 この点に関し、原告らは、①最高裁判決(前掲最高裁平成25年第 1079号同27年12月16日大法廷判決)に、親子法が子の福祉の- 20 -保護のために運用されることが求められる旨の判示があり、こうした判示に照らすと立法義務があると解すべきである、②前掲最高裁昭和48年12月12日大法廷判決からすれば、私人による人権侵害の態様、程度が社会的に許容し得る限界を超えるときは、立法措置によって是正を図る立法義務がある、③現行法は、同居親の同意がなければ別居親と子 との自由な面会交流権が実現しないことに照らして立法義務がある旨を主張する。 しかし、上記①については、そうした判示を見出すことはできない。 上記②の判示は、立法による是正の余地があることをいうにすぎず、直ちに国会に立法義務を課するものとは解し得ないし、仮に何らかの立法 義務を課し得るとしても、原告らが前記第2の3⑶の原告らの主張ウで指摘する諸外国の状況や我が国における近時の検討状況(甲40の1から3まで、甲48の1、2、甲49、57)を踏まえても、制度の在り方については様々なものが想定されるため、立法義務の存在が明白であるとは認められない。上記③については、民法その他の現行法を通覧 しても、監護権者その他の同居親に、他人と子の面会に同意の権利、権限が付与されているとは解されないから、その前提を欠く。 したがって、立法不作為1が憲法13条に違反するとはいえない。 イ立法不作為1の憲法14条1項違反をいう点について原告らは、現 、権限が付与されているとは解されないから、その前提を欠く。 したがって、立法不作為1が憲法13条に違反するとはいえない。 イ立法不作為1の憲法14条1項違反をいう点について原告らは、現行法が、別居親と子の面会交流を同居親が許可する特権 を認めているのに対して別居親がこうした特権を有しないこと、この許可の有無によって、子の養育という権利としての人格的利益の享受の点で別居親と同居親とに差異が生じていると主張する。 しかし、上記アに説示したとおり、現行法が同居親に子の面会交流の許可権を付与したと解される規定は見当たらないから、上記の「特権」 の有無の点で同居親と別居親とに法的な差異はないし、上記の利益の享- 21 -受の点でも法的な差異はないといわざるを得ない。むしろ、同居親と別居親との間において、子との人的な交流について、時間や方法等の面に差異が生じるのは、子との同居の有無という社会的事実に起因するのであって、憲法14条1項が絶対的な平等を保障したものではなく、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取 扱いを禁止する趣旨であると解すべきであるとする判例(最高裁昭和37年第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁、最高裁昭和45年第1310号同48年4月4日大法廷判決・刑集27巻3号265頁参照)の趣旨に照らすと、これをもって同居親と別居親との間で法的な差別的取扱いがされていると評価すること はできない。 したがって、立法不作為1が憲法14条1項に違反しているとはいえない。 ウ立法不作為1の憲法24条2項違反をいう点について原告らは、別居親と子の面会交流を同居親が許可する特権を認めてい るのに対して別居親がこうした特権を有し 違反しているとはいえない。 ウ立法不作為1の憲法24条2項違反をいう点について原告らは、別居親と子の面会交流を同居親が許可する特権を認めてい るのに対して別居親がこうした特権を有しないことなどの上記イの事由により、別居親と子が相互に触れ合うことが制限されており、同居親と子の関係と別居親と子の関係の区別に合理的な理由がないから、立法不作為1が憲法24条2項に違反すると主張する。 しかし、この主張は、結局、上記の事情が憲法14条1項に違反する ことから24条2項にも違反することをいうものと解されるところ、上記イ説示のとおり、上記の事情は憲法14条1項に違反するとはいえないから、原告らの上記主張は前提を欠くものというほかない。 この点をおくとしても、原告の主張する別居親と子との面会交流権は、単に人と人との間の面会交流をいうのでなく、別居親と子という関係に ある者の面会交流をいうものであるから、憲法24条2項にいう「婚姻- 22 -及び家族に関するその他の事項」に該当するものと解される。 こうした事項は、国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ、それぞれの時代における夫婦や親子関係についての全体の規律を見据えた総合的な判断を行うことによって定められるべきものである。したがって、その内容の詳細については、憲法が一義的 に定めるのではなく、法律によってこれを具体化することがふさわしいものと考えられる。憲法24条2項は、このような観点から、婚姻及び家族に関する事項について、具体的な制度の構築を第一次的には国会の合理的な立法裁量に委ねるとともに、その立法に当たっては、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきであるとする要請、指針を示すこと によって、その裁量の限界を画 制度の構築を第一次的には国会の合理的な立法裁量に委ねるとともに、その立法に当たっては、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきであるとする要請、指針を示すこと によって、その裁量の限界を画したものといえる。(前掲最高裁平成25年第1079号同27年12月16日大法廷判決参照)ところで、現行の法制度の下では、別居親と子の面会交流については、民法766条1項により、子の監護に関する事項として、子の利益を最も優先して考慮して父母の協議で定めるものとされ、上記の協議により 定めることができないときは、同条2項により、家庭裁判所がこれを定めることとされている。 親と子の面会交流は、仮にこれを親の人格的な権利や利益であるとみるとしても、それが他方で養育を受ける子の利益となることも必要となると考えられる一方、子は発達の途上にあり、単独で面会交流の当否を 適切に判断することには困難があると考えられる。こうしたことに照らすと、面会交流を私法上の権利として構成せず、子の扶養、監護に第一次的な義務を負う(民法818条、820条)父母の協議により定めることとしたことが、直ちに個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠く制度であるということはできない。そうすると、国会 による現行法の制定が裁量を逸脱しているとはいえない。 - 23 -原告らは、現行の法制度では全ての事案で別居親と子との面会交流が即時かつ現実に実現できるわけではない旨主張し、「親子審判制度」なるものを導入すべきである旨主張する。しかしながら、現行の法制度に不十分な点があり、より適切な法制度が存在し得るとしても、上記説示のとおり、現行の法制度自体が個人の尊厳と両性の本質的平等の要請 に照らして合理性を欠くものとはいえない以上、立法不 の法制度に不十分な点があり、より適切な法制度が存在し得るとしても、上記説示のとおり、現行の法制度自体が個人の尊厳と両性の本質的平等の要請 に照らして合理性を欠くものとはいえない以上、立法不作為1を補う立法をすべきかどうか、言い換えれば「親子審判制度」なるものを導入すべきかどうかは、国会の立法裁量の範囲内に属するのであって、原告らの主張は上記の判断を左右しない。 したがって、立法不作為1が憲法24条2項に違反するとはいえない。 エ立法不作為1の条約違反をいう点についてB規約23条4項(前提事実⑵ア)原告らは、立法不作為1はB規約23条4項前段が規定している「婚姻に係る配偶者の権利及び責任の平等」に反しており、同項後段が「その解消の場合には、児童に対する必要な保護のため、措置がとられる。」 と規定していることから、国会が立法不作為1を補う立法を行う義務を負う旨主張する。 しかしながら、同項前段の内容は、結局のところ、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した法律の制定を求める憲法24条2項と同様の趣旨をいうものとみられるところ、立法不作為1が同項に違反しないこと は上記ウ説示のとおりである。同項後段も同様にみることはできるが、仮にそうでないとしても、現行の民法766条は、上記ウ説示のとおり、子の利益を最も重視して面会交流について定めるべきことを規定しているから、同項後段の要請を満たしているということができる。 したがって、B規約が立法不作為1を補う立法を行うことを義務付け ているにもかかわらず、我が国がこれを怠り、B規約に違反していると- 24 -はいえない。 児童の権利に関する条約(前提事実⑵イ)a 原告らは、児童の権利に関する条約3条2項から、児童の父母が児童の福 わらず、我が国がこれを怠り、B規約に違反していると- 24 -はいえない。 児童の権利に関する条約(前提事実⑵イ)a 原告らは、児童の権利に関する条約3条2項から、児童の父母が児童の福祉に必要な保護及び養護を確保できる立法義務が国会にあるため、国会が立法不作為1を補う立法義務を負う旨主張する。 しかしながら、上記ウ説示のとおり、現行の法制度は、児童の福祉に必要な保護及び擁護を確保できないものとはいえないのであって、同項の要請を満たしているということができる。 b 原告らは、児童の権利に関する条約9条1項から、両親の別居や離婚により、児童がその父母から分離されないように、国会が立法不作 為1を補う立法義務を負う旨主張する。 しかしながら、同項は、子が親から引き離されることのできる場合を限定した規定であって、面会交流について定めたものとみることはできないのであるから、同項により、国会が立法不作為1を補う立法義務を負うとはいえない。 c 原告らは、児童の権利に関する条約9条3項から、両親の別居や離婚により父母の一方から分離されている児童が、別居親との人的な関係及び直接の接触を維持するための児童の権利を定期的に行使できるように、国会が立法不作為1を補う立法義務を負う旨主張する。 しかしながら、同項は、その文理上、あくまで子の面会交流権を尊 重する旨の規定にすぎず、面会交流権に関して具体的な立法を義務付けているものとはいえない。 d 原告らは、児童の権利に関する条約18条1項は、両親の別居や離婚をした場合であっても、児童がその父母から「児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有する」状態が解消されないように、国 会が立法不作為1を補う立法義務を負う旨主張する。 - 25 - た場合であっても、児童がその父母から「児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有する」状態が解消されないように、国 会が立法不作為1を補う立法義務を負う旨主張する。 - 25 -しかしながら、同項の内容は具体的なものではなく、児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有する状態を維持するために、別居親と子の面会交流権についての定めを設ける必要があるか、また、どのような内容の定めを設ける必要があるかは必ずしも明らかであるということはできず、同項の規定により国会が立法不作為1を補う立 法義務を負うとはいえない。 e 原告らは、児童の権利に関する委員会が採択した総括所見における勧告(前提事実⑵エ)により、国会が「児童の最善の利益である場合に、外国籍の親も含めて児童の共同養育を認めるため、離婚後の親子関係について定めた法令を改正」する立法義務を負い、「非同居親と の人的な関係及び直接の接触を維持するための児童の権利が定期的に行使できることを確保する」ことを内容とする立法措置を行う立法義務を負うことに照らせば、国会が立法不作為1を補う立法義務を負う旨主張する。 しかしながら、我が国が締約国となっている条約上の条約機関から 我が国に対して法改正を求める勧告がされたからといって、当該条約の枠内でいかなる立法措置を採るかは各締約国の裁量に委ねられるべきものであるから、これによって直接何らかの具体的な立法義務が生じるということはできない。 f したがって、児童の権利に関する条約が立法不作為1を補う立法を 行うことを義務付けているにもかかわらず、我が国がこれを怠り同条約に違反しているとはいえない。 ハーグ条約5条(前提事実⑵ウ)原告らは、ハーグ条約5条の「接触の権利」には面会交流権が含まれ ことを義務付けているにもかかわらず、我が国がこれを怠り同条約に違反しているとはいえない。 ハーグ条約5条(前提事実⑵ウ)原告らは、ハーグ条約5条の「接触の権利」には面会交流権が含まれると解されるところ、我が国の国内法では面会交流権についての具体的 な権利義務規定が設けられておらず、同居親の同意がなければ面会交流- 26 -権が実現できないのであるから、国会が立法不作為1を補う立法義務を負う旨主張する。 確かに、ハーグ条約5条の「接触の権利」には、面会交流権が含まれると解されるが、ハーグ条約は、「接触の権利」の実現に関して、中央当局の役割や関与について定めているものの(21条(前提事実⑵ウ ))、裁判手続については何ら具体的な規定を置いておらず、現行の法制度とは別の新たな具体的な立法を義務付けるものとはいえない。 したがって、ハーグ条約が立法不作為1を補う立法を行うことを義務付けているにもかかわらず、我が国がこれを怠りハーグ条約に違反しているとはいえない。 オ小括このほか、原告らは、諸外国の立法の動向や各判例の趣旨に照らし、立法不作為1を補う立法を行う義務が国会に認められることは明らかであると主張するが、上記に説示するところによれば、原告らの上記主張は採用することができない。 以上のとおりであるから、別居親と子の面会交流権がそれぞれ憲法上保障されており、その権利行使のために所要の立法措置を採ることが必要不可欠であって、それが明白であるということはできない。したがって、別居親と子の面会交流権についての立法不作為1は、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けるものではない。 ⑶ 争点⑷(祖父母と孫の面会交流権についての立法不作為の違法性)についてア立法不作 会交流権についての立法不作為1は、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けるものではない。 ⑶ 争点⑷(祖父母と孫の面会交流権についての立法不作為の違法性)についてア立法不作為2の憲法13条違反をいう点について原告らは、別居親と子との面会交流権と同様の根拠により、祖父母と孫の面会交流権が憲法13条によって保障される権利であると主張する。し かし、この点についても、前記⑵ア及び説示のとおり、そもそも個人- 27 -の人格権や幸福追求権として保障されると解することに疑問がある上、仮にこうした権利として保障されるとしても、国会に立法義務があると直ちに解することはできない。 イ立法不作為2の憲法14条1項違反をいう点について原告らは、この点についても、別居親についてと同様に、現行法が同居 親に子とその祖父母との面会交流を許可する特権を認めているのに対して祖父母はこうした特権を有しないこと、この許可の有無によって子(孫)の養育という人格的利益の享受の点で祖父母と同居親との差異が生じていると主張する。しかし、前記⑵イ及び説示と同様のことが当てはまるというべきである。 したがって、立法不作為2が憲法14条1項に違反しているとはいえない。 ウ立法不作為2の憲法24条2項違反をいう点について原告らは、この点についても、別居親についてと同様の理由から、立法不作為2が憲法24条2項に違反すると主張する。 しかし、前記⑵ウ説示のとおり、この主張はその前提を欠く。 この点をおくとしても、前記⑵ウ説示のとおり、祖父母と子との面会交流は、憲法24条2項の「婚姻及び家族に関するその他の事情」に該当するものと解される。現行の法制度は、父母にのみ親権を付与し、子の監護に をおくとしても、前記⑵ウ説示のとおり、祖父母と子との面会交流は、憲法24条2項の「婚姻及び家族に関するその他の事情」に該当するものと解される。現行の法制度は、父母にのみ親権を付与し、子の監護に関する権利及び義務を有するものとしていて、この点は、子との近接 性に照らし、直ちに不合理なものということはできない。そして、これを前提とした場合において、前記説示のとおり、面会交流を私法上の権利として構成せず、父母の協議により定めるという規定を置くにとどめたことが、直ちに祖父母と子の個人の尊厳等の要請に照らして合理性を欠く制度であるということはできない。 したがって、立法不作為2が憲法24条2項に違反するとはいえない。 - 28 -エ立法不作為2の条約違反等をいう点について原告らは、立法不作為1におけるのと同様、B規約、児童の権利に関する条約及びハーグ条約が立法不作為2を補う立法を行うことを義務付けているにもかかわらず、我が国がこれを怠っている旨主張するが、上記各条約(前提事実⑵アからエまで)の文理上、祖父母と孫との面会交 流については言及されていないから、原告らの上記主張はその前提を欠く。この点はおくとしても、我が国が上記各条約に違反しているとはいえないことは、前記⑵エ説示のとおりである。 また、原告らは、立法不作為1におけるのと同様、諸外国の立法の動向や各判例の趣旨に照らし、立法不作為2を補う立法を行う義務が国会 に認められることは明らかであると主張するが、これまで説示してきたところによれば、原告らの上記主張は採用することができない。 4 結論以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告らの訴えのうち原告15の請求に係る部分は不適法であるから却下することとし、そ ば、原告らの上記主張は採用することができない。 4 結論以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告らの訴えのうち原告15の請求に係る部分は不適法であるから却下することとし、その余の 原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第12部 裁判長裁判官成田晋司 裁判官萩原孝基 裁判官池口弘樹- 29 -(別紙)当事者目録については、記載を省略。

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