令和2(ワ)28563 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年11月28日 東京地方裁判所
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判決文本文25,138 文字)

- 1 - 令和4年11月28日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官 令和2年 第28563号 損害賠償請求事件 口頭弁論終結日 令和4年8月8日 判 決 当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり 5 (以下、上記目録記載の各原告を、各原告欄の記載に従い「原 告1」などという。) 主 文 1 本件訴えのうち、原告15の被告に対する請求に係る部分を却 下する。 10 2 その余の原告らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事 実 及 び 理 由 第1 請求 被告は、原告らに対し、それぞれ10万円及びこれに対する令和2年12月 15 29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の要旨 本件は、夫婦が婚姻中に別居したことにより、又は離婚したことに伴って別 居したことにより、未成年の子と自由に面会することができなくなった親(以 20 下「別居親」といい、他方の親を「同居親」という。)、祖父母若しくは両親の 別居及び離婚に伴い別居親と自由に面会することができなくなった子の立場に あるか、又はあった原告らが、親と子、祖父母と孫の面会交流権について具体 的に規定を設ける立法措置を採らなかった立法不作為の違法を理由に、被告に 対し、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金10万円及びこれに 25 対する不法行為後の日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで平成29年法 - 2 - 律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を 求める事案である。 2 前提事実等(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨 により容易に認められる事実等) ⑴ 原告らの立場 5 ア 原告1、原告4から原告13まで及び原告15は、別居 である。 2 前提事実等(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨 により容易に認められる事実等) ⑴ 原告らの立場 5 ア 原告1、原告4から原告13まで及び原告15は、別居親の立場にある 又はあった者である。(甲84、87から92まで、94、95、96の 2、97、99) イ 原告2及び原告3は、子である原告1が配偶者と別居したことにより、 未成年の孫と自由に面会することができなくなった祖父母の立場にある者 10 である。(甲85、86) ウ 原告14(平成20年生まれ)は、両親が離婚したことにより、片親と 自由に面会することができなくなった未成年の子であり、原告16(平成 12年生まれ)及び原告17(平成16年生まれ)は、平成23年に両親 が別居したことにより、親である原告15と自由に面会することができな 15 くなったが、平成28年の両親の離婚に伴い、原告15が同居し監護養育 するようになった子である。(甲98、104、106) ⑵ 本件に関係する我が国が批准した条約の定め等 ア 市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和54年条約第7号。以下 「B規約」という。)23条4項 20 この規約の締約国は、婚姻中及び婚姻の解消の際に、婚姻に係る配偶者 の権利及び責任の平等を確保するため、適当な措置をとる。その解消の場 合には、児童に対する必要な保護のため、措置がとられる。 イ 児童の権利に関する条約(平成6年条約第2号) 3条2項 25 締約国は、児童の父母、法定保護者又は児童について法的に責任を有 - 3 - する他の者の権利及び義務を考慮に入れて、児童の福祉に必要な保護及 び養護を確保することを約束し、このため、すべての適当な立法上及び 行政上の措置をとる。 9条1項 締約国は、児童がその父母の する他の者の権利及び義務を考慮に入れて、児童の福祉に必要な保護及 び養護を確保することを約束し、このため、すべての適当な立法上及び 行政上の措置をとる。 9条1項 締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されない 5 ことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条 件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益の ために必要であると決定する場合は、この限りでない。このような決定 は、父母が児童を虐待し若しくは放置する場合又は父母が別居しており 児童の居住地を決定しなければならない場合のような特定の場合におい 10 て必要となることがある。 9条3項 締約国は、児童の最善の利益に反する場合を除くほか、父母の一方又 は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係 及び直接の接触を維持する権利を尊重する。 15 18条1項 締約国は、児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有すると いう原則についての認識を確保するために最善の努力を払う。父母又は 場合により法定保護者は、児童の養育及び発達についての第一義的な責 任を有する。児童の最善の利益は、これらの者の基本的な関心事項とな 20 るものとする。 ウ 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(平成26年条約第2号。 以下「ハーグ条約」という。) 5条 この条約の適用上、 25 a 「監護の権利」には、子の監護に関する権利、特に、子の居所を決 - 4 - 定する権利を含む。 b 「接触の権利」には、一定の期間子をその常居所以外の場所に連れ て行く権利を含む。 21条 接触の権利について内容を定め、又は効果的な行使を確保するように 5 取り計らうことを求める申請は、締約国の中央当局に対して、子の返 をその常居所以外の場所に連れ て行く権利を含む。 21条 接触の権利について内容を定め、又は効果的な行使を確保するように 5 取り計らうことを求める申請は、締約国の中央当局に対して、子の返還 を求める申請と同様の方法によって行うことができる。 中央当局は、接触の権利が平穏に享受されること及び接触の権利の行 使に当たり従うべき条件が満たされることを促進するため、第7条に定 める協力の義務を負う。中央当局は、接触の権利の行使に対するあらゆ 10 る障害を可能な限り除去するための措置をとる。 中央当局は、接触の権利について内容を定め、又は保護するため及び 接触の権利の行使に当たり従うべき条件が尊重されることを確保するた め、直接に又は仲介者を通じて、手続を開始し、又はその開始について 援助することができる。 15 エ 我が国が締約国となっている条約機関から日本政府に対する勧告 児童の権利に関する条約43条に基づき設置された条約機関である児童 の権利に関する委員会は、日本政府の報告に対し2019(平成31)年 2月1日付けで採択した総括所見において、児童の最善の利益である場合 に、外国籍の親も含めて児童の共同養育を認めるため、離婚後の親子関係 20 について定めた法令を改正し、また、非同居親との人的な関係及び直接の 接触を維持するための児童の権利が定期的に行使できることを確保するた め、十分な人的資源、技術的資源及び財源に裏付けられたあらゆる必要な 措置をとることを求める勧告をした。(甲45) ⑶ 関連訴訟 25 原告13及び原告15は、別居親と子の面会交流権は憲法上保障されてお - 5 - り、その権利行使の機会を確保するために必要な立法措置を採ることが必要 不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長 期にわたって立 面会交流権は憲法上保障されてお - 5 - り、その権利行使の機会を確保するために必要な立法措置を採ることが必要 不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長 期にわたって立法措置を怠ったことは違法である旨主張して、他の者と共同 原告となり、国に対して、国家賠償法1条1項による損害賠償請求権に基づ き、慰謝料の支払を求める訴えを東京地方裁判所に提起した(以下、この訴 5 えに係る訴訟を「本件前訴」という。)。 東京地方裁判所は、国家賠償法1条1項の違法性が認められないなどとし て、上記共同原告の請求を棄却する判決をし、これに対して上記共同原告が 控訴をしたところ、東京高等裁判所は、令和2年6月23日に口頭弁論を終 結し、同年8月13日に控訴を棄却する旨の判決をした。本件前訴の判決は 10 令和3年7月7日に確定した。 (乙1の1・2、乙2、5の1から3まで) 3 争点及びこれについての当事者の主張 ⑴ 本件訴えの提起が信義則に反するか(本案前の主張) (被告の主張) 15 本件前訴は、原告13及び原告15が主張した国家賠償法1条1項に基づ く損害賠償請求権の全部について審理した上で、当該請求権は全く現存しな いとの判断を示したものであるから、本件における原告13及び原告15の 訴えは、信義則に反し不適法である(最高裁平成9年 第849号同10年 6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1147頁参照)。 20 (原告13及び原告15の主張) 争う。 本件前訴では、憲法上の権利としての面会交流権についての立法不作為の 違法性が争点とされたのであり、親と子の面会交流権が人格的な利益に含ま れることを前提とした立法不作為の違法性は争点となっておらず、判示もさ 25 れていないのであるから 交流権についての立法不作為の 違法性が争点とされたのであり、親と子の面会交流権が人格的な利益に含ま れることを前提とした立法不作為の違法性は争点となっておらず、判示もさ 25 れていないのであるから、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権の全 - 6 - 部について審理した上で、当該請求権は全く現存しないとの判断が示された とはいえない。 ⑵ 原告13及び原告15の請求が既判力に抵触するか (被告の主張) 原告13及び原告15は、本件と訴訟物を同一とする本件前訴の原告であ 5 るところ、本件前訴ではその請求を棄却する判決がされ、この判決は令和3 年7月7日に確定しているのであるから、原告13及び原告15による請求 は、本件前訴の確定判決の既判力により棄却されるべきである。 (原告13の主張) 原告13は、本件において、本件前訴の事実審の口頭弁論終結(令和2年 10 6月23日)後に、子と面会交流ができなくなったことを請求原因事実とし て主張しており、本件前訴の確定判決の既判力に抵触しない。 (原告15の主張) 原告15は、本件において、令和2年9月26日に診断されたPTSD (心的外傷後ストレス障害)の後遺障害を損害として主張しており、同障害 15 は子らと面会交流ができなくなったことによって、本件前訴の事実審の口頭 弁論終結(令和2年6月23日)後に発症したものであるから(甲78の1 から3まで)、本件前訴の確定判決の既判力に抵触しない。 ⑶ 親と子の面会交流権についての立法不作為の違法性 (原告らの主張) 20 ア 親と子の面会交流権について、面会交流が自由に、円滑かつ滞りなく行 われるための実体的権利義務規定、手続規定、強制執行規定及び制裁規定 といった具体的な権利義務規定を設ける立法措置が 張) 20 ア 親と子の面会交流権について、面会交流が自由に、円滑かつ滞りなく行 われるための実体的権利義務規定、手続規定、強制執行規定及び制裁規定 といった具体的な権利義務規定を設ける立法措置がされていない(以下、 この立法措置がされていない状態を「立法不作為1」という。)。 イ 立法不作為1は、以下のとおり、憲法13条、14条1項及び24条2 25 項に違反するというべきである。 - 7 - 憲法13条 種々の裁判例、外国の法制度及び親と子の面会交流権が前国家的・始 原的な自然権に由来すること等に照らすと、親と子の面会交流権は、憲 法13条が保障する親と子のそれぞれの人格権や幸福追求権に含まれる。 このことは、最高裁昭和43年 第1614号同51年5月21日大法 5 廷判決・刑集30巻5号615頁(以下「旭川学テ判決」という。)が、 自然権としての親の子に対する教育権を認めたことからも明らかである。 したがって、立法不作為1は、憲法13条により保障された親と子の 面会交流権を合理的な理由なく制限するものであり、同条に違反してい るというべきである。 10 仮に、親と子の面会交流権が、憲法13条により憲法上の権利として 保障されていないとしても、親による子の養育は子と親の双方にとって 人格的な利益であり、親と子の面会交流が親による子の養育の一場面で あることからすると、親と子の面会交流権も子と親の双方にとって人格 的な利益である。したがって、親と子の面会交流権は、人格的な利益と 15 して、憲法14条1項や同法24条2項の適用上考慮されるべきである。 憲法14条1項 立法不作為1によって、同居親は子と共に生活をし、子と触れ合いな がら子の養育や教育等を行っているのに対して、別居親は子と触れ合う ことが制 れるべきである。 憲法14条1項 立法不作為1によって、同居親は子と共に生活をし、子と触れ合いな がら子の養育や教育等を行っているのに対して、別居親は子と触れ合う ことが制限され、子は別居親と触れ合うことが制限されることになる。 20 立法不作為1は、諸外国の法制度と比較しても合理的な理由なく、同居 親と子の関係と別居親と子の関係を差別するものである。 また、立法不作為1によって、同居親は、別居親と子が面会交流を行 うことを許可する特権を有しているのに対して、別居親はそのような権 利を有していないのであって、立法不作為1は合理的な理由なく、同居 25 親と別居親を差別するものである。 - 8 - したがって、立法不作為1は、法の下の平等を定めた憲法14条1項 に違反しているというべきである。 憲法24条2項 上記 の主張に照らせば、立法不作為1は個人の尊厳と両性の本質的 平等について定めた憲法24条2項にも違反しているというべきである。 5 仮に、親と子の面会交流権が憲法上の権利でないと解釈されたとして も、憲法24条2項は、憲法上直接保障された権利とまではいえない人 格的な利益をも尊重すべきこと、両性の実質的な平等が保たれるように 図ること等について、十分に配慮した法律の制定を求めている(最高裁 平成26年 第1023号同27年12月16日大法廷判決・民集69 10 巻8号2586頁参照)。 両親の離婚や別居という、別居親や子からすると自ら選び、正せない、 やむを得ない事柄であるにもかかわらず、夫婦関係の清算等とは関係が ない憲法上の権利や人格的な利益である子と別居親の面会交流権が同居 親の同意なくして行えないという不利益が及ぼされることは、個人の尊 やむを得ない事柄であるにもかかわらず、夫婦関係の清算等とは関係が ない憲法上の権利や人格的な利益である子と別居親の面会交流権が同居 親の同意なくして行えないという不利益が及ぼされることは、個人の尊 15 厳と両性の本質的平等の要請に照らしても合理性を欠くため、憲法24 条2項に違反しているというべきである。 ウ 以下のとおり、立法不作為1を補う立法措置を採ることが必要不可欠で あり、その立法義務を国会(国会議員)が負っていることは明白である。 立法不作為1は、上記イのとおり、憲法上の権利である親と子の面会 20 交流権を制限するものであり、憲法13条、14条1項及び24条2項 に違反することから、立法不作為1を補う立法を行う義務が国会に認め られることは明らかである。 憲法98条2項から、我が国が締約国となっている条約や、その条約 機関から日本政府に対して出された法改正を求める勧告は、日本国憲法 25 の解釈に影響を与える立法事実として存在している。 - 9 - したがって、B規約23条4項、児童の権利に関する条約3条2項、 9条1項、3項、18条1項、平成31年2月1日付け児童の権利に関 する委員会からの勧告(前提事実⑵エ)、ハーグ条約5条から、立法不 作為1を補う立法を行う義務が国会に認められることは明らかである。 また、法務省の調査において調査対象となったほとんどの国に離婚後 5 の子と親の面会交流の実施状況を公的機関が監視するなどの支援制度が あること(甲40の1から3まで)、法務省も参加する家族法研究会に おいて、法的性質や取決めの実効性を高める方策などの面会交流の立法 の在り方が議論されていること(甲48の1、2)、自由民主党政務調 査会の司法制度調査会が、令和2年6月、離婚後の親権制度の在り方、 10 養育費の確保、面会交 実効性を高める方策などの面会交流の立法 の在り方が議論されていること(甲48の1、2)、自由民主党政務調 査会の司法制度調査会が、令和2年6月、離婚後の親権制度の在り方、 10 養育費の確保、面会交流の改善などの課題について、諸外国の取組に学 びつつ党内の関係組織とも連携して、引き続き検討を進めていく旨提言 したこと(甲49)からも、立法不作為1を補う立法を行う義務が国会 に認められる。 最高裁平成25年 第1079号同27年12月16日大法廷判決・ 15 民集69巻8号2427頁は、諸外国の立法の動向が、日本国憲法の解 釈に影響を与える立法事実であることを示している。そして、我が国の 面会交流権が制限された法律制度やそれを変えようとしない国会の立法 不作為を強く非難するEUの請願委員会及び本会議の各非難決議(甲5 0、51)が採択され、我が国に対して法改正を求めていることからす 20 ると、立法不作為1を補う立法を行う義務が国会に認められることは明 らかである。 最高裁昭和43年 第932号同48年12月12日大法廷判決・民 集27巻11号1536頁からすれば、私人による人権侵害の態様、程 度が社会的に許容し得る限界を超えるときは、立法措置によって是正を 25 図る立法義務があるところ、立法不作為1が是正されない下では、同居 - 10 - 親の意思によって、基本的人権である別居親と子の面会交流権が制限さ れているのであるから、立法不作為1を補う立法を行う義務が国会に認 められることは明らかである。 最高裁平成24年 第984号、同第985号同25年9月4日大法 廷決定・民集67巻6号1320頁が子が自ら選び、正せない事柄を理 5 由に不利益を及ぼすことは許されない旨の判示をしていること、前掲最 高裁平成25年 第1079号同27年12月16日大法廷 日大法 廷決定・民集67巻6号1320頁が子が自ら選び、正せない事柄を理 5 由に不利益を及ぼすことは許されない旨の判示をしていること、前掲最 高裁平成25年 第1079号同27年12月16日大法廷判決が親子 法は子の福祉や子の保護を実現するためにあり、親の不都合を防止する ための制度ではないことを確認したと解釈できることからすると、子が 親と面会交流を行うことを制限した立法不作為1について、これを補う 10 立法を行う義務が国会に認められることは明らかである。 エ 上記イ、ウのような状況であるにもかかわらず、前記アのとおり、国会 は正当な理由なく長期にわたって立法不作為1を補う立法措置を採ること を怠っている。 (被告の主張) 15 ア 立法不作為1は、以下のとおり、憲法13条、14条1項及び24条2 項に違反しない。 憲法13条違反の主張について 親と子の面会交流権は、その法的性質や権利性のみならず、その具体 的な権利内容、法的効果も一義的なものでなく、これを特定することは 20 困難であって、このように曖昧な権利が憲法13条によって保障されて いるとはいえない。 憲法14条1項違反の主張について 同居親と別居親とでは、その置かれている状況や立場が異なり、同居 親については、面会交流というものを観念できないのであるから、別居 25 親の面会交流権について同居親と別居親との間の差異が憲法14条1項 - 11 - に違反しているということはできない。 仮に、同居親と別居親との対比が可能であるとしても、その差異は、 社会的事実としての別居の有無により生ずるものであって、面会交流に 関する立法不作為によって親と子の交流の機会に不平等が生じたもので はないから、その差異を法的差別とみることはできない。 5 憲法24条2項違反の主張 居の有無により生ずるものであって、面会交流に 関する立法不作為によって親と子の交流の機会に不平等が生じたもので はないから、その差異を法的差別とみることはできない。 5 憲法24条2項違反の主張について 原告らの主張は、立法不作為1が憲法14条1項に違反するゆえに憲 法24条2項に違反するという点に尽きるのであるから、 と同様に、 同項に違反するとはいえない。 この点をおくとしても、原告らは、立法不作為1が個人の尊厳と両性 10 の本質的平等の要請に照らして合理性を欠くかについて、何ら主張して いない。 イ 以下のとおり、立法不作為1を補う立法措置を採ることが必要不可欠で あり、その立法義務を国会が負っていることが明白であるとはいえない。 親と子の面会交流権が憲法上保障されているとは認められないため、 15 立法不作為1を補う立法措置の必要不可欠性や立法義務の明白性につい て検討する前提を欠いている。 この点をおくとしても、面会交流が自由に、円滑かつ滞りなく行われ るための実体的権利義務規定、手続規定、強制執行規定及び制裁規定の 内容は極めて曖昧かつ不明確であるから、その立法措置の必要不可欠性 20 や立法義務の明白性は認められない。 民法766条1項の適用又は類推適用により、子の監護に関する事項 として、「子の利益を最も優先して考慮し」て父母の協議で定めるもの とされ、協議により定めることができないときは、家庭裁判所がこれを 定めることとされており、別居親が子と面会交流することが子の利益に 25 かなうと考えるのであれば、家庭裁判所に、「子の監護に関する処分」 - 12 - (家事事件手続法別表第2の3項)の一内容として、監護親に対して別 居親と子の面会交流をさせるよう命じる審判の申立てをすることができ、 当該審判において面会交流の日 の監護に関する処分」 - 12 - (家事事件手続法別表第2の3項)の一内容として、監護親に対して別 居親と子の面会交流をさせるよう命じる審判の申立てをすることができ、 当該審判において面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流の長さ、子 の引渡しの方法等が具体的に定められ、監護親がすべき給付の特定に欠 けることがないといえる場合には、当該審判に基づき間接強制をするこ 5 とができる(最高裁平成24年 第48号同25年3月28日第一小法 廷決定・民集67巻3号864頁)のであるから、新たな立法措置を採 ることが必要不可欠であるとはいえない。 ウ 以上のとおり、国会は正当な理由なく長期にわたって立法不作為1を補 う立法措置を採ることを怠っているとはいえない。 10 ⑷ 祖父母と孫の面会交流権についての立法不作為の違法性 (原告らの主張) ア 立法不作為2 祖父母と孫の面会交流権について、面会交流が自由に、円滑かつ滞りな く行われるための実体的権利義務規定、手続規定、強制執行規定及び制裁 15 規定といった具体的な権利義務規定を設ける立法措置がされていない(以 下、この立法措置がされていない状態を「立法不作為2」という。)。 イ 立法不作為2は、以下のとおり、憲法13条、14条1項及び24条2 項に違反するというべきである。 憲法13条 20 種々の裁判例、外国の法制度及び祖父母と孫の面会交流権が前国家 的・始原的な自然権に由来すること等に照らすと、祖父母と孫の面会交 流権は、憲法13条が保障する祖父母と孫のそれぞれの人格権や幸福追 求権として保障されている。 立法不作為2は、憲法13条により保障された祖父母と孫の面会交流 25 権を合理的な理由なく制限するものであり、同条に違反しているという - 13 - べきである。 仮に、祖父 されている。 立法不作為2は、憲法13条により保障された祖父母と孫の面会交流 25 権を合理的な理由なく制限するものであり、同条に違反しているという - 13 - べきである。 仮に、祖父母と孫の面会交流権が、憲法13条が保障する人格権や幸 福追求権に含まれる基本的人権として保障されていないとしても、祖父 母と孫との触れ合いの時間とその思い出は、祖父母にとっても孫にとっ ても互いの人格に影響を与え、人格の成長を促す存在であって、当該人 5 格的な利益は、祖父母にとっても、孫にとっても、当然に失われるもの ではなく、また、失われるべきものでもないから、祖父母と孫との面会 交流権は、祖父母にとっても、孫にとっても、人格的な利益である。 したがって、祖父母と孫の面会交流権は、人格的な利益として、憲法 14条1項や同法24条2項の適用において考慮されるべきである。 10 憲法14条1項 立法不作為2によって、同居親は子と共に生活をして、子と触れ合い ながら、子の養育や教育等を行っているのに対して、祖父母は孫と触れ 合うことが制限され、孫は祖父母と触れ合うことが制限されており、立 法不作為2は、祖父母と孫の面会交流権が親と子の面会交流権と対とな 15 り、互いに補完して子(孫)の福祉を保護し、実現する役割を生むにも かかわらず、合理的な理由なく、同居親と子の関係と祖父母と孫の関係 を差別するものである。 また、立法不作為2によって、同居親は、祖父母と孫が面会交流を行 うことを許可する特権を有しているのに対して、祖父母はそのような権 20 利を有していないのであって、立法不作為2は合理的な理由なく、同居 親と祖父母を差別するものである。 したがって、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反していると いうべきである。 憲法24条2項 25 ないのであって、立法不作為2は合理的な理由なく、同居 親と祖父母を差別するものである。 したがって、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反していると いうべきである。 憲法24条2項 25 上記 の主張に照らせば、立法不作為2は憲法24条2項にも違反し - 14 - ているというべきである。 仮に、祖父母と孫の面会交流権が憲法上の権利でないと解釈されたと しても、憲法24条2項は、憲法上直接保障された権利とまではいえな い人格的な利益をも尊重すべきこと、両性の実質的な平等が保たれるよ うに図ること等について、十分に配慮した法律の制定を求めている(前 5 掲最高裁平成26年 第1023号同27年12月16日大法廷判決参 照)。 両親の離婚や別居という、祖父母や子からすると自ら選び、正せない、 やむを得ない事柄であるにもかかわらず、夫婦関係の清算等とは関係が ない憲法上の権利や人格的な利益である祖父母と孫の面会交流権が同居 10 親の同意なくして行えないという不利益が及ぼされることは、個人の尊 厳と両性の本質的平等の要請に照らしても合理性を欠くため、憲法24 条2項に違反しているというべきである。 ウ 以下のとおり、立法不作為2を補う立法措置を採ることが必要不可欠で あり、その立法義務を国会が負っていることは明白である。 15 立法不作為2は、上記イのとおり、憲法上の権利である祖父母と孫の 面会交流権を制限するものであり、憲法13条、14条1項及び24条 2項に違反することから、立法不作為2を補う立法を行う義務が国会に 認められることは明らかである。 また、祖父母の面会交流権は親の面会交流権と対となり、互いに補完 20 して子(孫)の福祉を保護し、実現する役割を果たしていることからす ると、上記⑶の原告らの主張ウ から までは、祖父母 ある。 また、祖父母の面会交流権は親の面会交流権と対となり、互いに補完 20 して子(孫)の福祉を保護し、実現する役割を果たしていることからす ると、上記⑶の原告らの主張ウ から までは、祖父母と孫の面会交流 権についても妥当するのであり、立法不作為2を補う立法を行う義務が 国会に認められることは明らかである。 エ 上記イ、ウのような状況であるにもかかわらず、前記アのとおり、国会 25 は正当な理由なく長期にわたって立法不作為2を補う立法措置を採ること - 15 - を怠っている。 (被告の主張) 上記⑶の被告の主張は、祖父母と孫の面会交流権についての立法不作為 の違法性についても同様に妥当するから、立法不作為2は、憲法13条、 14条1項及び24条2項に違反せず、立法不作為2を補う立法措置を採 5 ることが必要不可欠であり、その立法義務を国会が負っていることが明白 であり、国会が正当な理由なく長期にわたって立法不作為2を補う立法措 置を採ることを怠っているとはいえない。 ⑸ 原告らの損害の発生及びその数額 (原告らの主張) 10 原告らは、立法不作為1又は立法不作為2によって、親と子又は祖父母と 孫の面会交流権を侵害され、多大な精神的苦痛を被った。その慰謝料の額は それぞれ10万円を下らない。 (被告の主張) 争う。 15 第3 当裁判所の判断 1 争点⑴(本件訴えの提起が信義則に反するか)について ⑴ 原告13について 一件記録によれば、原告13は、本件において、子との面会交流が令和2 年2月23日までは実施できていたが、その後は実施がままならなくなり、 20 同年3月の履行勧告も功を奏さないなどしていたところ、同年9月の家庭裁 判所における調停期日において、相手方による面会交流の機会の確保を裁判 所に求 きていたが、その後は実施がままならなくなり、 20 同年3月の履行勧告も功を奏さないなどしていたところ、同年9月の家庭裁 判所における調停期日において、相手方による面会交流の機会の確保を裁判 所に求める原告13に対し、調停委員等からその困難を言われたことなどの 事実を、原告13の権利又は法律上保護すべき利益の侵害に係る事実として 主張していることが認められる。こうした事情は、本件前訴の事実審の口頭 25 弁論終結後に生じたものといえる。 - 16 - こうした事情は、本件前訴において審理の対象とならなかったことが明ら かであって、被告において紛争が解決されたとの合理的期待が生じるとは直 ちにいえない。したがって、原告13による本件訴えの提起が信義則に反す るということはできない。 この点に関し、被告は、原告13による本件訴えの提起は、金銭債権の数 5 量的一部請求を前訴とする場合の残部請求と同視すべきである旨主張するが、 上記に説示のとおり、被侵害利益を異にするものであるから、上記のように 同視することはできず、被告の主張は採用することができない。 ⑵ 原告15について ア 一件記録によれば、原告15は、本件において、前訴の事実審の口頭弁 10 論終結までに生じた事情のみを被侵害利益に係る事情として主張し、平成 26年4月には精神疾患の診断を受けるなどした旨も主張しているところ、 本件前訴において主張していない点は、令和2年9月26日に原告15が PTSDの後遺障害があると診断された旨の損害を受けた事実であること を明らかにしていることが認められる。そうすると、本件前訴と本件とは、 15 いずれも訴訟物である権利関係を同じくし、また、権利等の侵害及び損害 の発生の基礎となる事情をもほぼ同じくしているといえるから、本件前訴 の審理判断によって、紛争が解 ると、本件前訴と本件とは、 15 いずれも訴訟物である権利関係を同じくし、また、権利等の侵害及び損害 の発生の基礎となる事情をもほぼ同じくしているといえるから、本件前訴 の審理判断によって、紛争が解決したとの合理的期待を被告に生じさせる ものとみるべきである。 したがって、原告15の本件訴えは、上記認定に係る後遺障害の診断を 20 考慮したとしても、実質的に前訴で認められなかった請求及び主張を蒸し 返すものであり、前訴の確定判決によって当該請求権の全部について紛争 が解決されたとの被告の合理的期待に反し、被告に二重の応訴の負担を強 いるものというべきであるから、特段の事情がない限り、信義則に反して 許されないというべきである(前掲最高裁平成10年6月12日第二小法 25 廷判決参照)。 - 17 - イ 原告15は、親と子の面会交流権が人格的な利益に含まれることは、本 件前訴の事実審の口頭弁論終結後に言い渡された判決(東京高等裁判所令 和3年 第1297号同年10月28日判決。甲53、乙4)によって初 めて明らかになったものであり、これを前提とした立法不作為の違法性に ついて法的判断を求める法的利益を有する旨主張する。しかしながら、 5 個々の裁判例の判断は他の裁判所の判断を拘束するものではないし、この 点をおくとしても、原告15の引用する裁判例は、親による子の養育関係 が親にとっても子にとっても人格的な利益である旨を判示したにすぎず、 親と子の面会交流権が人格的な利益である旨を判示したものではないこと からすると、本件前訴の事実審の口頭弁論終結後に上記判決がされたこと 10 は、上記の特段の事情に当たらない。 ウ 以上のとおりであり、その他の本件全証拠によっても、上記特段の事情 があるとは認められないから、本件訴えのうち原告15の請求に係る部分 は信義 れたこと 10 は、上記の特段の事情に当たらない。 ウ 以上のとおりであり、その他の本件全証拠によっても、上記特段の事情 があるとは認められないから、本件訴えのうち原告15の請求に係る部分 は信義則に反し、不適法である。 2 争点⑵(原告13及び原告15の請求が既判力に抵触するか)について 15 被告は、原告13及び原告15につき、本件前訴の既判力に抵触する旨を主 張する。 前記1説示のとおり、本件訴えのうち原告15の請求に係る部分は不適法で あるから、原告13について判断すると、前記1に説示のとおり、原告13は、 本件前訴の事実審の口頭弁論終結後の事情を、その被侵害利益の基礎となる事 20 情として主張しているといえる。そうすると、本件における原告13の請求に ついて、本件前訴の既判力が及ぶ余地はないといわざるを得ない。この点に係 る被告の主張は理由がない。 3 争点⑶(親と子の面会交流権についての立法不作為の違法性)及び争点⑷ (祖父母と孫の面会交流権についての立法不作為の違法性)について 25 ⑴ 国家賠償法1条1項の違法性について - 18 - 原告らは、立法不作為1及び立法不作為2がいずれも国家賠償法1条1項 の適用上違法になる旨主張するところ、国会議員の立法行為又は立法不作為 が同項の適用上違法となるかどうかは、国会議員の立法過程における行動が 個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違反したかどうかの問題であっ て、立法の内容又は立法不作為の違憲性の問題とは区別されるべきであり、 5 仮に当該立法の内容又は立法不作為が憲法の規定に違反するものであるとし ても、そのゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに違法の評価を 受けるものではない。しかしながら、①立法の内容又は立法不作為が国民に 憲法上保障されている権利を違法に侵害す 反するものであるとし ても、そのゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに違法の評価を 受けるものではない。しかしながら、①立法の内容又は立法不作為が国民に 憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、 ②国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法 10 措置を採ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国 会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国 会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上、 違法の評価を受けるものというべきである(最高裁昭和53年 第1240 号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁、最高 15 裁平成13年(行ツ)第82号、第83号、同年(行ヒ)第76号、第77 号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁、前掲最高裁 平成25年 第1079号同27年12月16日大法廷判決参照)。 ⑵ 争点⑶(親と子の面会交流権についての立法不作為の違法性)について ア 立法不作為1の憲法13条違反をいう点について 20 原告らは、別居親につき親子間の面会交流権に関する権利義務規定を 設ける立法措置を講じていない立法不作為1が、憲法13条により保障 される親子間の面会交流権を侵害するとし、この権利は、親と子の立場 にあることから前国家的、始原的な自然権であること、外国の法制度等 から、同条により保障される憲法上の権利であると主張する。 25 しかし、原告らが主張する前国家的、始原的な自然権という概念は必 - 19 - ずしも明確ではなく、これに当たるからといって直ちにこれが憲法上保 障される権利であると解することはできない。また、外国の法制度にお いて権利として確立しているからといって、直ちに は必 - 19 - ずしも明確ではなく、これに当たるからといって直ちにこれが憲法上保 障される権利であると解することはできない。また、外国の法制度にお いて権利として確立しているからといって、直ちにこれが我が国の憲法 上保障される権利であると解することもできない。その上、面会及び交 流の具体的な内容が明らかでないのみならず、その実現に相手方の対応 5 が必要と解されることからすれば(なお、原告14は、自分との面会交 流に拒否的態度を示す別居親との面会交流ができないことを問題視して いる(甲98、弁論の全趣旨)。)、これを別居親又は子の個人の人格権 や幸福追求権として保障されると解することには疑問がある。 原告らは、旭川学テ判決が、自然権としての親の子に対する教育権を 10 認めたと解釈できることから、親と子の面会交流権も、前国家的・始原 的な自然権に由来している旨主張する。しかしながら、旭川学テ判決は、 子の教育の最も始源的かつ基本的な形態は、親が子との自然的関係に基 づいて子に対して行う養育、監護の作用の一環として現れるという社会 的事実を指摘するにとどまっており、自然権としての親の子に対する教 15 育権が認められることを判示する趣旨と解することはできない。 この点をおき、仮に原告らが主張する親と子の面会交流権が憲法13 条により保障される権利であると解したとしても、こうした自由権は、 国又は公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障す る目的に出たもので、専ら国又は公共団体と個人との関係を規律するも 20 のであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない と解される(前掲最高裁昭和48年12月12日大法廷判決参照)こと に照らすと、面会交流権を具体的に私人間において保障する法律を国が 立法する義務を負うとは、直ちに解す 律することを予定するものではない と解される(前掲最高裁昭和48年12月12日大法廷判決参照)こと に照らすと、面会交流権を具体的に私人間において保障する法律を国が 立法する義務を負うとは、直ちに解することができない。 この点に関し、原告らは、①最高裁判決(前掲最高裁平成25年 第 25 1079号同27年12月16日大法廷判決)に、親子法が子の福祉の - 20 - 保護のために運用されることが求められる旨の判示があり、こうした判 示に照らすと立法義務があると解すべきである、②前掲最高裁昭和48 年12月12日大法廷判決からすれば、私人による人権侵害の態様、程 度が社会的に許容し得る限界を超えるときは、立法措置によって是正を 図る立法義務がある、③現行法は、同居親の同意がなければ別居親と子 5 との自由な面会交流権が実現しないことに照らして立法義務がある旨を 主張する。 しかし、上記①については、そうした判示を見出すことはできない。 上記②の判示は、立法による是正の余地があることをいうにすぎず、直 ちに国会に立法義務を課するものとは解し得ないし、仮に何らかの立法 10 義務を課し得るとしても、原告らが前記第2の3⑶の原告らの主張ウ で指摘する諸外国の状況や我が国における近時の検討状況(甲40の1 から3まで、甲48の1、2、甲49、57)を踏まえても、制度の在 り方については様々なものが想定されるため、立法義務の存在が明白で あるとは認められない。上記③については、民法その他の現行法を通覧 15 しても、監護権者その他の同居親に、他人と子の面会に同意の権利、権 限が付与されているとは解されないから、その前提を欠く。 したがって、立法不作為1が憲法13条に違反するとはいえない。 イ 立法不作為1の憲法14条1項違反をいう点について 原告らは、現 、権 限が付与されているとは解されないから、その前提を欠く。 したがって、立法不作為1が憲法13条に違反するとはいえない。 イ 立法不作為1の憲法14条1項違反をいう点について 原告らは、現行法が、別居親と子の面会交流を同居親が許可する特権 20 を認めているのに対して別居親がこうした特権を有しないこと、この許 可の有無によって、子の養育という権利としての人格的利益の享受の点 で別居親と同居親とに差異が生じていると主張する。 しかし、上記ア に説示したとおり、現行法が同居親に子の面会交流 の許可権を付与したと解される規定は見当たらないから、上記の「特権」 25 の有無の点で同居親と別居親とに法的な差異はないし、上記の利益の享 - 21 - 受の点でも法的な差異はないといわざるを得ない。むしろ、同居親と別 居親との間において、子との人的な交流について、時間や方法等の面に 差異が生じるのは、子との同居の有無という社会的事実に起因するので あって、憲法14条1項が絶対的な平等を保障したものではなく、事柄 の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取 5 扱いを禁止する趣旨であると解すべきであるとする判例(最高裁昭和3 7年 第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号6 76頁、最高裁昭和45年 第1310号同48年4月4日大法廷判 決・刑集27巻3号265頁参照)の趣旨に照らすと、これをもって同 居親と別居親との間で法的な差別的取扱いがされていると評価すること 10 はできない。 したがって、立法不作為1が憲法14条1項に違反しているとはいえ ない。 ウ 立法不作為1の憲法24条2項違反をいう点について 原告らは、別居親と子の面会交流を同居親が許可する特権を認めてい 15 るのに対して別居親がこうした特権を有し 違反しているとはいえ ない。 ウ 立法不作為1の憲法24条2項違反をいう点について 原告らは、別居親と子の面会交流を同居親が許可する特権を認めてい 15 るのに対して別居親がこうした特権を有しないことなどの上記イ の事 由により、別居親と子が相互に触れ合うことが制限されており、同居親 と子の関係と別居親と子の関係の区別に合理的な理由がないから、立法 不作為1が憲法24条2項に違反すると主張する。 しかし、この主張は、結局、上記の事情が憲法14条1項に違反する 20 ことから24条2項にも違反することをいうものと解されるところ、上 記イ説示のとおり、上記の事情は憲法14条1項に違反するとはいえな いから、原告らの上記主張は前提を欠くものというほかない。 この点をおくとしても、原告の主張する別居親と子との面会交流権は、 単に人と人との間の面会交流をいうのでなく、別居親と子という関係に 25 ある者の面会交流をいうものであるから、憲法24条2項にいう「婚姻 - 22 - 及び家族に関するその他の事項」に該当するものと解される。 こうした事項は、国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々 の要因を踏まえつつ、それぞれの時代における夫婦や親子関係について の全体の規律を見据えた総合的な判断を行うことによって定められるべ きものである。したがって、その内容の詳細については、憲法が一義的 5 に定めるのではなく、法律によってこれを具体化することがふさわしい ものと考えられる。憲法24条2項は、このような観点から、婚姻及び 家族に関する事項について、具体的な制度の構築を第一次的には国会の 合理的な立法裁量に委ねるとともに、その立法に当たっては、個人の尊 厳と両性の本質的平等に立脚すべきであるとする要請、指針を示すこと 10 によって、その裁量の限界を画 制度の構築を第一次的には国会の 合理的な立法裁量に委ねるとともに、その立法に当たっては、個人の尊 厳と両性の本質的平等に立脚すべきであるとする要請、指針を示すこと 10 によって、その裁量の限界を画したものといえる。(前掲最高裁平成2 5年 第1079号同27年12月16日大法廷判決参照) ところで、現行の法制度の下では、別居親と子の面会交流については、 民法766条1項により、子の監護に関する事項として、子の利益を最 も優先して考慮して父母の協議で定めるものとされ、上記の協議により 15 定めることができないときは、同条2項により、家庭裁判所がこれを定 めることとされている。 親と子の面会交流は、仮にこれを親の人格的な権利や利益であるとみ るとしても、それが他方で養育を受ける子の利益となることも必要とな ると考えられる一方、子は発達の途上にあり、単独で面会交流の当否を 20 適切に判断することには困難があると考えられる。こうしたことに照ら すと、面会交流を私法上の権利として構成せず、子の扶養、監護に第一 次的な義務を負う(民法818条、820条)父母の協議により定める こととしたことが、直ちに個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照ら して合理性を欠く制度であるということはできない。そうすると、国会 25 による現行法の制定が裁量を逸脱しているとはいえない。 - 23 - 原告らは、現行の法制度では全ての事案で別居親と子との面会交流が 即時かつ現実に実現できるわけではない旨主張し、「親子審判制度」な るものを導入すべきである旨主張する。しかしながら、現行の法制度に 不十分な点があり、より適切な法制度が存在し得るとしても、上記 説 示のとおり、現行の法制度自体が個人の尊厳と両性の本質的平等の要請 5 に照らして合理性を欠くものとはいえない以上、立法不 の法制度に 不十分な点があり、より適切な法制度が存在し得るとしても、上記 説 示のとおり、現行の法制度自体が個人の尊厳と両性の本質的平等の要請 5 に照らして合理性を欠くものとはいえない以上、立法不作為1を補う立 法をすべきかどうか、言い換えれば「親子審判制度」なるものを導入す べきかどうかは、国会の立法裁量の範囲内に属するのであって、原告ら の主張は上記の判断を左右しない。 したがって、立法不作為1が憲法24条2項に違反するとはいえない。 10 エ 立法不作為1の条約違反をいう点について B規約23条4項(前提事実⑵ア) 原告らは、立法不作為1はB規約23条4項前段が規定している「婚 姻に係る配偶者の権利及び責任の平等」に反しており、同項後段が「そ の解消の場合には、児童に対する必要な保護のため、措置がとられる。」 15 と規定していることから、国会が立法不作為1を補う立法を行う義務を 負う旨主張する。 しかしながら、同項前段の内容は、結局のところ、個人の尊厳と両性 の本質的平等に立脚した法律の制定を求める憲法24条2項と同様の趣 旨をいうものとみられるところ、立法不作為1が同項に違反しないこと 20 は上記ウ説示のとおりである。同項後段も同様にみることはできるが、 仮にそうでないとしても、現行の民法766条は、上記ウ 説示のとお り、子の利益を最も重視して面会交流について定めるべきことを規定し ているから、同項後段の要請を満たしているということができる。 したがって、B規約が立法不作為1を補う立法を行うことを義務付け 25 ているにもかかわらず、我が国がこれを怠り、B規約に違反していると - 24 - はいえない。 児童の権利に関する条約(前提事実⑵イ) a 原告らは、児童の権利に関する条約3条2項から、児童の父母が児 童の福 わらず、我が国がこれを怠り、B規約に違反していると - 24 - はいえない。 児童の権利に関する条約(前提事実⑵イ) a 原告らは、児童の権利に関する条約3条2項から、児童の父母が児 童の福祉に必要な保護及び養護を確保できる立法義務が国会にあるた め、国会が立法不作為1を補う立法義務を負う旨主張する。 5 しかしながら、上記ウ 説示のとおり、現行の法制度は、児童の福 祉に必要な保護及び擁護を確保できないものとはいえないのであって、 同項の要請を満たしているということができる。 b 原告らは、児童の権利に関する条約9条1項から、両親の別居や離 婚により、児童がその父母から分離されないように、国会が立法不作 10 為1を補う立法義務を負う旨主張する。 しかしながら、同項は、子が親から引き離されることのできる場合 を限定した規定であって、面会交流について定めたものとみることは できないのであるから、同項により、国会が立法不作為1を補う立法 義務を負うとはいえない。 15 c 原告らは、児童の権利に関する条約9条3項から、両親の別居や離 婚により父母の一方から分離されている児童が、別居親との人的な関 係及び直接の接触を維持するための児童の権利を定期的に行使できる ように、国会が立法不作為1を補う立法義務を負う旨主張する。 しかしながら、同項は、その文理上、あくまで子の面会交流権を尊 20 重する旨の規定にすぎず、面会交流権に関して具体的な立法を義務付 けているものとはいえない。 d 原告らは、児童の権利に関する条約18条1項は、両親の別居や離 婚をした場合であっても、児童がその父母から「児童の養育及び発達 について父母が共同の責任を有する」状態が解消されないように、国 25 会が立法不作為1を補う立法義務を負う旨主張する。 - 25 - た場合であっても、児童がその父母から「児童の養育及び発達 について父母が共同の責任を有する」状態が解消されないように、国 25 会が立法不作為1を補う立法義務を負う旨主張する。 - 25 - しかしながら、同項の内容は具体的なものではなく、児童の養育及 び発達について父母が共同の責任を有する状態を維持するために、別 居親と子の面会交流権についての定めを設ける必要があるか、また、 どのような内容の定めを設ける必要があるかは必ずしも明らかである ということはできず、同項の規定により国会が立法不作為1を補う立 5 法義務を負うとはいえない。 e 原告らは、児童の権利に関する委員会が採択した総括所見における 勧告(前提事実⑵エ)により、国会が「児童の最善の利益である場合 に、外国籍の親も含めて児童の共同養育を認めるため、離婚後の親子 関係について定めた法令を改正」する立法義務を負い、「非同居親と 10 の人的な関係及び直接の接触を維持するための児童の権利が定期的に 行使できることを確保する」ことを内容とする立法措置を行う立法義 務を負うことに照らせば、国会が立法不作為1を補う立法義務を負う 旨主張する。 しかしながら、我が国が締約国となっている条約上の条約機関から 15 我が国に対して法改正を求める勧告がされたからといって、当該条約 の枠内でいかなる立法措置を採るかは各締約国の裁量に委ねられるべ きものであるから、これによって直接何らかの具体的な立法義務が生 じるということはできない。 f したがって、児童の権利に関する条約が立法不作為1を補う立法を 20 行うことを義務付けているにもかかわらず、我が国がこれを怠り同条 約に違反しているとはいえない。 ハーグ条約5条(前提事実⑵ウ ) 原告らは、ハーグ条約5条の「接触の権利」には面会交流権が含まれ ことを義務付けているにもかかわらず、我が国がこれを怠り同条 約に違反しているとはいえない。 ハーグ条約5条(前提事実⑵ウ ) 原告らは、ハーグ条約5条の「接触の権利」には面会交流権が含まれ ると解されるところ、我が国の国内法では面会交流権についての具体的 25 な権利義務規定が設けられておらず、同居親の同意がなければ面会交流 - 26 - 権が実現できないのであるから、国会が立法不作為1を補う立法義務を 負う旨主張する。 確かに、ハーグ条約5条の「接触の権利」には、面会交流権が含まれ ると解されるが、ハーグ条約は、「接触の権利」の実現に関して、中央 当局の役割や関与について定めているものの(21条(前提事実⑵ウ 5 ))、裁判手続については何ら具体的な規定を置いておらず、現行の法 制度とは別の新たな具体的な立法を義務付けるものとはいえない。 したがって、ハーグ条約が立法不作為1を補う立法を行うことを義務 付けているにもかかわらず、我が国がこれを怠りハーグ条約に違反して いるとはいえない。 10 オ 小括 このほか、原告らは、諸外国の立法の動向や各判例の趣旨に照らし、立 法不作為1を補う立法を行う義務が国会に認められることは明らかである と主張するが、上記に説示するところによれば、原告らの上記主張は採用 することができない。 15 以上のとおりであるから、別居親と子の面会交流権がそれぞれ憲法上保 障されており、その権利行使のために所要の立法措置を採ることが必要不 可欠であって、それが明白であるということはできない。したがって、別 居親と子の面会交流権についての立法不作為1は、国家賠償法1条1項の 適用上、違法の評価を受けるものではない。 20 ⑶ 争点⑷(祖父母と孫の面会交流権についての立法不作為の違法性)につい て ア 立法不作 会交流権についての立法不作為1は、国家賠償法1条1項の 適用上、違法の評価を受けるものではない。 20 ⑶ 争点⑷(祖父母と孫の面会交流権についての立法不作為の違法性)につい て ア 立法不作為2の憲法13条違反をいう点について 原告らは、別居親と子との面会交流権と同様の根拠により、祖父母と孫 の面会交流権が憲法13条によって保障される権利であると主張する。し 25 かし、この点についても、前記⑵ア 及び 説示のとおり、そもそも個人 - 27 - の人格権や幸福追求権として保障されると解することに疑問がある上、仮 にこうした権利として保障されるとしても、国会に立法義務があると直ち に解することはできない。 イ 立法不作為2の憲法14条1項違反をいう点について 原告らは、この点についても、別居親についてと同様に、現行法が同居 5 親に子とその祖父母との面会交流を許可する特権を認めているのに対して 祖父母はこうした特権を有しないこと、この許可の有無によって子(孫) の養育という人格的利益の享受の点で祖父母と同居親との差異が生じてい ると主張する。しかし、前記⑵イ 及び 説示と同様のことが当てはまる というべきである。 10 したがって、立法不作為2が憲法14条1項に違反しているとはいえな い。 ウ 立法不作為2の憲法24条2項違反をいう点について 原告らは、この点についても、別居親についてと同様の理由から、立法 不作為2が憲法24条2項に違反すると主張する。 15 しかし、前記⑵ウ 説示のとおり、この主張はその前提を欠く。 この点をおくとしても、前記⑵ウ 説示のとおり、祖父母と子との面会 交流は、憲法24条2項の「婚姻及び家族に関するその他の事情」に該当 するものと解される。現行の法制度は、父母にのみ親権を付与し、子の監 護に をおくとしても、前記⑵ウ 説示のとおり、祖父母と子との面会 交流は、憲法24条2項の「婚姻及び家族に関するその他の事情」に該当 するものと解される。現行の法制度は、父母にのみ親権を付与し、子の監 護に関する権利及び義務を有するものとしていて、この点は、子との近接 20 性に照らし、直ちに不合理なものということはできない。そして、これを 前提とした場合において、前記説示のとおり、面会交流を私法上の権利と して構成せず、父母の協議により定めるという規定を置くにとどめたこと が、直ちに祖父母と子の個人の尊厳等の要請に照らして合理性を欠く制度 であるということはできない。 25 したがって、立法不作為2が憲法24条2項に違反するとはいえない。 - 28 - エ 立法不作為2の条約違反等をいう点について 原告らは、立法不作為1におけるのと同様、B規約、児童の権利に関 する条約及びハーグ条約が立法不作為2を補う立法を行うことを義務付 けているにもかかわらず、我が国がこれを怠っている旨主張するが、上 記各条約(前提事実⑵アからエまで)の文理上、祖父母と孫との面会交 5 流については言及されていないから、原告らの上記主張はその前提を欠 く。この点はおくとしても、我が国が上記各条約に違反しているとはい えないことは、前記⑵エ説示のとおりである。 また、原告らは、立法不作為1におけるのと同様、諸外国の立法の動 向や各判例の趣旨に照らし、立法不作為2を補う立法を行う義務が国会 10 に認められることは明らかであると主張するが、これまで説示してきた ところによれば、原告らの上記主張は採用することができない。 4 結論 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告らの訴えのう ち原告15の請求に係る部分は不適法であるから却下することとし、そ ば、原告らの上記主張は採用することができない。 4 結論 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告らの訴えのう ち原告15の請求に係る部分は不適法であるから却下することとし、その余の 15 原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のと おり判決する。 東京地方裁判所民事第12部 裁判長裁判官 成 田 晋 司 裁判官 萩 原 孝 基 裁判官 池 口 弘 樹 - 29 - (別紙)当事者目録については、記載を省略。

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