平成15(わ)1462 覚せい剤取締法違反,大麻取締法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成17年1月27日 神戸地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-6815.txt

判決文本文5,272 文字)

主文 被告人を懲役4年に処する。 未決勾留日数中330日をその刑に算入する。 押収してある覚せい剤3包み,同1袋及び大麻草1包みを没収する。 理由 (犯罪事実)被告人は,第1 みだりに,平成13年4月22日午前9時5分ころ,神戸市a区b町c番d号所在のA堂B支店前路上に停車中のタクシー内において,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパンの塩類を含有する結晶粉末合計約5.21グラム及びテトラヒドロカンナビノールを含有する大麻草約0.287グラムを所持し,第2 法定の除外事由がないのに,平成15年9月18日ころ,京都市e区fg町h番地i所在のマンションCのD方において,フエニルメチルアミノプロパンの塩類を含有する覚せい剤約0.03グラムを缶コーヒーに入れて飲用し,もって,覚せい剤を使用し,第3 みだりに,同月19日午前10時30分ころ,京都市j区k町l番地所在のE市営住宅m棟n号の被告人方において,覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパンの塩酸塩結晶塊及び粉末約0.561グラムを所持した。 (証拠の標目)省略(弁護人の主張に対する判断)1.判示第1の事実について,弁護人は,本件覚せい剤及び大麻草を,被告人のポーチに在中した状態で,公訴事実記載の日時ころに被告人が所持していた事実は認めるが,これは警察に届ける目的で所持していたものであるから,正当業務行為として違法性が阻却され,被告人は無罪であると主張し,被告人も,これに沿う供述をするので,以下,検討する。 2.関係各証拠によれば,平成13年4月22日午前9時過ぎころ,被告人は,氏名不詳の女性とF郵便局西側歩道上で,G運転のタクシーに乗車し,同9時5分ころ,a区b町c番d号所在のA堂B支店 検討する。 2.関係各証拠によれば,平成13年4月22日午前9時過ぎころ,被告人は,氏名不詳の女性とF郵便局西側歩道上で,G運転のタクシーに乗車し,同9時5分ころ,a区b町c番d号所在のA堂B支店前路上で降車したこと,同車内に,被告人が遺留した黒色ポーチ内から,被告人名義の郵便貯金キャッシュカード等とともに,チャック付きポリ袋入り覚せい剤1袋,青色紙包み入り覚せい剤1包み,白色紙包み入り覚せい剤1包み,白色紙包み入り大麻草1包み,ストロー片1片及び赤色キャップ付きプラスティック製注射器1組が入った黄色ペンケース,赤色キャップ付きプラスティック製注射器1組並びにマイジェクターと記載のあるポリ袋に包装された赤色キャップ付きプラスティック製注射器13組が発見,領置されたこと,上記青色紙包みから被告人の左手母指指紋が,白色紙包みからHの左手示指及び中指の指紋が,それぞれ検出されたことが認められ,これについては,被告人も争わない。 3.被告人は,本件覚せい剤等をタクシー内で所持していた経過等につき,公判廷において,おおむね以下のとおり供述する。 すなわち,平成13年4月21日から,o近辺のホテルに偶然知り合った女性と一緒に宿泊していたところ,その翌朝,ホテルの居室内で,封筒に入った本件覚せい剤等を発見し,警察に届けることにした。その際,ぼろぼろの紙に包まれていた覚せい剤2包みを,自分が持っていたルーズリーフの用紙(白色)と補聴器の広告紙(青色)に包み直すなどし,その覚せい剤や大麻を,袋に包装されていない注射器等とともに,黄色ペンケースに入れ,包装されていた注射器はビニール袋に入れた上,これらを一緒に黒色ポーチに入れた。そして,女性と一緒に警察に行くために,ポーチを持ってホテルを出た。郵便局に行って10万円おろし,ホテルの最寄りの警察署に行く ていた注射器はビニール袋に入れた上,これらを一緒に黒色ポーチに入れた。そして,女性と一緒に警察に行くために,ポーチを持ってホテルを出た。郵便局に行って10万円おろし,ホテルの最寄りの警察署に行くためにタクシーでいったん元の場所に戻り,oの入口付近でタクシーを降りたところ,女性が逃げ出したので,タクシー料金を支払って追いかけ,そのときにポーチをタクシー内に置き忘れた,というのである。 4.しかし,被告人の上記供述は,そもそも,重要な証拠品となる覚せい剤等を警察に届けるのに,もともと封筒に入っていた覚せい剤の包み等を取り出した上,それを自らが所持していた紙に包み替え,ペンケースに入れ直し,元の封筒や包み紙を破って捨てるということ自体,極めて不自然であり,この点について,被告人は,暇があったからおもしろがってやったというだけで,全く合理的な説明をしていない。また,被告人は,覚せい剤を自分が所持していた紙で包み替えたり,証拠品である封筒を破り捨てても,当時の自分の体調等を説明すれば,本件覚せい剤が自分のものでないことは,警察官に信用してもらえる自信があったから,このような行為をしたと供述する一方,被告人名義のキャッシュカード等とともに本件覚せい剤等の入ったポーチをタクシー内に遺留しながら,警察に届け出なかったことについては,ホテルに同宿した女性に逃げられてしまえば警察官に信用してもらえないと思ったと述べ,さらには,そのまま京都に帰っても,いずれ近いうちに警察官が訪ねてくると思ったが,そのときには説明すれば信用してもらえると思ったから何も怖いことはなかったと述べるなど,その供述には全く一貫性がない。このような被告人の供述態度に照らすと,被告人の上記供述は,到底,信用することができない。 5.さらに,上記白色紙包みからHの指紋が検出されたことにつ ったと述べるなど,その供述には全く一貫性がない。このような被告人の供述態度に照らすと,被告人の上記供述は,到底,信用することができない。 5.さらに,上記白色紙包みからHの指紋が検出されたことについて,被告人は,本件の1週間ほど前,Hに会って保険の勧誘を受け,その連絡先を手持ちの用紙に書かせたことがあり,覚せい剤を包み直した際,そのときの用紙を破って使用してしまったため,Hの指紋が検出されたのではないかという趣旨の供述をしている。 しかしながら,覚せい剤取引と全く関係のない者に連絡先を書かせた用紙が,たまたま本件覚せい剤の包装に使用されたなどということは,それ自体,蓋然性が高いとは考えられない。のみならず,被告人は,警察官の取調べに対し,当初は,本件覚せい剤は,oの路地のゴミ箱の上で拾ったと述べ(平成15年11月12日付け供述調書),その後,ホテルのいすのすき間で見つけたと供述を変えてから(同月18日付け供述調書)も,封筒からは出したがそのままの状態でバッグに入れたと供述していたのに(同年12月13日付け,同月14日付け),同月15日になって初めて,持っていた紙で包み直したと供述を変更しているのであって,このような供述経過に照らしても,被告人の上記供述は容易に了解することができない。 6.他方,Hの検察官に対する供述調書によれば,同人は,被告人から,何回か覚せい剤を譲り受けたことがあり,同人が,被告人から覚せい剤を譲り受けるときは,紙包みなどに入ったまとまった量の覚せい剤を差し出され,同人が,欲しいだけの量を自分で計り取り,残った覚せい剤を被告人に返すという方法をとっていたというのである。もっとも,Hは,公判廷において,弁護人の「実際にあったことじゃないんでしょう」などという質問に対しては,「はい,はい」と答える一方,検察官調書に 被告人に返すという方法をとっていたというのである。もっとも,Hは,公判廷において,弁護人の「実際にあったことじゃないんでしょう」などという質問に対しては,「はい,はい」と答える一方,検察官調書について,検察官の,「そのときは間違いないということで押印されたわけですか」という問いに対しても,肯定的に答え,裁判官の問いに対しては,被告人から覚せい剤をもらったことがあるかどうか分からないなどという極めて曖昧な供述をするなど,その供述内容は相互に矛盾しているだけでなく,被告人に対して不利なことは言いたくないという供述態度が顕著である。加えて,Iの公判供述によれば,Hは,Iに対して,公判廷での供述について,「(被告人の)目の前では言えへんやろ。」などと言っていたというのであって,Hの公判供述のうち,被告人との覚せい剤との関わりを否定する部分は,信用性に乏しい。他方,Hの検察官に対する供述調書は,その内容に格別不自然,不合理な点はなく,細かい時期的な部分等はともかく,Iの公判供述と,おおむね合致している。さらに,Hの取調べ時における供述経過も自然なものであり,上記Iの公判供述によれば,Hは,取調べ後,Iに対し,「全部しゃべってしもてん。」と言って,Iの名前を出したことを謝罪したというのであり,このことからも供述の信ぴょう性がうかがわれ,これらの事情に照らすと,Hの検察官に対する供述調書は,十分信用に値する。そして,同供述によれば,上記白色紙包みからHの指紋が検出されたことを合理的に説明することができる。 そうすると,本件覚せい剤等は,もともと被告人が所持していたものであることに疑問の余地はなく,被告人がたまたまホテル内で拾得して警察に届け出ようとしたものとは考えられないから,被告人に,覚せい剤及び大麻の所持罪が成立することは明らかである。 所持していたものであることに疑問の余地はなく,被告人がたまたまホテル内で拾得して警察に届け出ようとしたものとは考えられないから,被告人に,覚せい剤及び大麻の所持罪が成立することは明らかである。 (法令の適用)被告人の判示第1の行為のうち覚せい剤を所持した点は覚せい剤取締法41条の2第1項に,大麻を所持した点は大麻取締法24条の2第1項に,判示第2の行為は覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条に,判示第3の行為は同法41条の2第1項にそれぞれ該当するところ,判示第1の覚せい剤所持と大麻所持とは1個の行為が2個の罪名に触れる行為であるから,刑法54条1項前段,10条により1罪として重い覚せい剤取締法違反の罪の刑で処断することとし,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により,犯情の最も重い判示第1の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役4年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中330日をその刑に算入することとし,押収してある覚せい剤1袋及び2包み(平成16年押第13号の2ないし4)は判示第1の罪に係る覚せい剤,同覚せい剤1包み(同号の1)は判示第3の罪に係る覚せい剤で,いずれも犯人の所有するものであるから,覚せい剤取締法41条の8第1項本文により,同大麻草1包み(同号の5)は判示第1の罪に係る大麻で犯人の所有するものであるから,大麻取締法24条の5第1項本文によりこれらを没収し,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,覚せい剤約5.21グラム及び大麻草約0.287グラムをタクシー内に遺留して所持した事実並びに覚せい剤約0.561グラムの所持及び自己使用の各事実からなる事案である。 とりわけ,タクシー内で覚せい剤 せい剤約5.21グラム及び大麻草約0.287グラムをタクシー内に遺留して所持した事実並びに覚せい剤約0.561グラムの所持及び自己使用の各事実からなる事案である。 とりわけ,タクシー内で覚せい剤等を所持していた件について,その覚せい剤は相当多量であるだけでなく,被告人が犯行を否認しているため,動機や目的等の詳細は不明であるものの,これだけの量の覚せい剤や大麻草,注射器を所持してタクシーに乗車した犯行態様は悪質であり,自宅で所持していた覚せい剤も少量とはいえない。また,被告人は,これまで覚せい剤取締法違反を含む前科4犯を有しながら,またもや本件各犯行に及んだものであること,特に,タクシー内での所持事犯で,警察の追求が予想されていたにもかかわらず,その後,さらに,覚せい剤の使用及び所持の犯行を重ねていることからすると,薬物事犯に対する親和性は顕著である。加えて,上記のとおり,被告人は,タクシー内での所持事案について,不合理な弁解に終始していることからすると,真しな反省の姿勢は見られず,これらの事情に照らすと,被告人の刑事責任は重いといわざるを得ない。 そうすると,被告人は,今後2度と覚せい剤には関わらないと述べていること,被告人の更生について親族の援助が見込まれることに加え,被告人の年齢や健康状態等を考慮しても,主文の刑は免れない。 (求刑懲役5年,押収してある覚せい剤3包み及び1袋並びに大麻草1包の没収)平成17年1月27日神戸地方裁判所第4刑事部裁判官笹野明義

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る