主文 被告人は無罪。 理由 【公訴事実の要旨】被告人は,名古屋市a区bc丁目d番地所在のAにおいて,産婦人科医師として医療業務に従事していた者であるが,平成12年8月31日午前10時ころから同日午後3時26分ころまでの間,前期破水を起こしたため入院した妊娠37週のB(当時31歳。)に対する分娩介助を行うにあたり,陣痛の発来が認められないため,陣痛を誘発して早期に分娩させるべく,Bに対し,いずれも陣痛誘発剤であるプロスタルモン・E錠及びプロスタルモン・F注射液を投与したところ,同日午後2時30分ころ以降,胎児に徐脈傾向が見られ,胎児仮死が懸念されたことから,同日午後3時過ぎころ,Bの分娩を早めるため,急速遂娩法であるクリステレル法及び吸引分娩法を施し,同日午後3時26分ころ,Bが男児を分娩し,その際子宮頚管裂傷を負ったものであるが,かかる場合,産婦人科医師としては,上記プロスタルモン・E錠及びプロスタルモン・F注射液には,副作用として,分娩時に子宮頚管裂傷を生じさせるおそれがある上,急速遂娩法であるクリステレル法及び吸引分娩法には,自然分娩に比して,子宮頚管裂傷を生じさせるおそれが高く,かつ,子宮頚管裂傷は,早期に適切な処置を施さなければ,出血性ショックにより死に至るおそれがあることを十分予見できたのであるから,分娩後のBの内診及び視診を十分に行って,子宮頚管裂傷の有無を精査し,早期に裂傷を発見して止血等の措置を講じ,その間,Bが多量の出血により出血性ショック状態に陥っているのを認めた場合には,直ちに,出血量に応じた輸液措置を講じて血圧の回復を図るとともに,以後も出血が継続する事態に備えて,予め輸血用血液を手配し,なお,Bに対し,膣鏡を用いた内診や視診を行っても出血部位が発見できず,その出血状態を速やかに回復するための措置をと の回復を図るとともに,以後も出血が継続する事態に備えて,予め輸血用血液を手配し,なお,Bに対し,膣鏡を用いた内診や視診を行っても出血部位が発見できず,その出血状態を速やかに回復するための措置をとることができないのであれば,より高度の医療処置を受けさせるべく,人員,設備等が備わった高次の病院に直ちにBを転院させるなどし て,Bの死亡を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのに,これを怠り,Bの分娩直後の時点において,内診や視診を十分に行わなかったため,分娩時にBが負った子宮頚管裂傷を見落とし,その後,助産師のCから同日午後5時20分ころに約200グラム,同日午後5時45分ころに約300グラムの新たな出血がBに認められた旨の連絡を受け,同日午後6時8分ころ,Bに対する診察,治療を再開し,同日午後6時16分ころ,膣鏡を用いた内診や視診を行った際も,十分な視診を行わなかったため,再びBの子宮頚管裂傷を見落とした上,そのころ新たに認められた約710グラムの出血を含めた多量の出血により,Bが,同日午後5時45分ころ以降血圧が著しく低下し,貧血によるめまいも認められ,出血性ショック状態に陥っているのが明らかな状態であったから,直ちに,出血量に応じた輸液措置を講じて血圧の回復を図るとともに,以後も出血が継続する事態に備えて,予め輸血用血液を手配するべきであったにもかかわらず,Bの出血原因は弛緩出血であり,昇圧剤と子宮収縮剤の投与等の処置により止血できるものと軽信し,同日午後7時15分ころに至るまで,Bに対する輸血用血液の手配も行わないまま,Bに対して十分な輸液措置を講じず,さらに,その後もBの出血部位が発見できず,Bの出血状態を回復するための措置を講ずることができなかったのであるから,直ちにBを高次の病院に転院させるべきであったのに,転院等の措置 な輸液措置を講じず,さらに,その後もBの出血部位が発見できず,Bの出血状態を回復するための措置を講ずることができなかったのであるから,直ちにBを高次の病院に転院させるべきであったのに,転院等の措置を講じなかった過失により,同日午後10時10分ころ,同所において,Bを子宮頚管裂傷による出血性ショックにより死亡させた。 【Bの出産から死亡するに至るまでの経過等】関係証拠によれば,次の事実が認められる。 Bは,美容師として働く健康な女性であったところ,平成12年1月17日,Aで初めて診察を受け,妊娠と診断され,以後,初めての出産に備えて,Aで定期的に診察を受けていた。 Bは,同年8月30日夜に自宅で破水したことから,翌日である同月31日午前10時ころAに赴いて被告人の診察を受けた。その結果,被告人から前期破水 を起こしているので,羊水中に細菌が混入して胎児が感染症に罹患するのを防ぐ必要があることなどを理由に,陣痛誘発剤を使用して同日中に出産した方が良いとの説明を受け,これを了承して入院した。 被告人は,陣痛を誘発して分娩を早めるための陣痛誘発剤及び胎児の通過する子宮頚管に裂傷を生じさせないように開大させるための熟化剤を投与するなどし,分娩の促進を図って自然分娩によろうとしたものの,胎児の心拍数に異常が認められ仮死状態にあることが危惧されたことから,急速遂娩法である子宮底を圧迫して分娩を早めるクリステレル法及び胎児の頭部に吸引キャップを装着して吸引する吸引分娩法により,同日午後3時26分ころ,男児を娩出させた。 分娩後のBの身体状況の変化及び死亡に至る経緯は,次のとおりである(以下,時刻だけを表示したものは,平成12年8月31日の時刻の意味である。)。 (1)分娩直後,胎盤受けには約300ミリリットルの血液が溜まっており,被告 化及び死亡に至る経緯は,次のとおりである(以下,時刻だけを表示したものは,平成12年8月31日の時刻の意味である。)。 (1)分娩直後,胎盤受けには約300ミリリットルの血液が溜まっており,被告人はそれを視認したがその分量は確認していない。また,ホスピタルマットには羊水と混じった血液が染みこんでおり,羊水と血液の合計の重量は780グラムであったが,被告人はそのグラム数は確認していない。分娩直後の時点でBの身体状況には特に異常は認められなかった。午後4時ころからは輸液(ラクテック)と子宮収縮剤(パルタン)を混合した毎分30滴の点滴に交換された。出産から約1時間経過後の午後4時30分ころ,Bは病室に戻った。 同時刻のナプキン交換時に40グラムの新たな出血が確認されたが,その血液の色は黒っぽい色であった。 (2)午後5時20分ころ,ナプキンが交換された際,Bには200グラムの新たな出血が認められ,めまいの訴えもあった上,脈拍が1分間に92回を記録した。この結果は,その後,被告人に報告された。 (3)午後5時45分ころ,ナプキンが交換された際,Bに新たな出血300グラムが認められるとともに,収縮期血圧60㎜Hg,拡張期血圧は不明で,脈拍が1分間当たり98回の数値を示した。Bのこの計測結果は,午後6時ころ 被告人に報告された。被告人は,これを受けて,助産師に対し,子宮収縮剤(パルタン)の筋肉注射を指示するとともに,診察するためBを分娩室に移動させるように指示し,被告人も自宅から分娩室に赴いた。 (4)午後6時8分ころ,Bは分娩室に到着し,そのころから被告人による診察が開始された。午後6時9分の時点で,Bの収縮期血圧は65㎜Hg,拡張期血圧は58㎜Hg,脈拍は1分間当たり61回であることが計測され,被告人にその場で報告された。被告人の指示で ら被告人による診察が開始された。午後6時9分の時点で,Bの収縮期血圧は65㎜Hg,拡張期血圧は58㎜Hg,脈拍は1分間当たり61回であることが計測され,被告人にその場で報告された。被告人の指示で,子宮収縮剤(パルタン)が点滴の側管から注入された。 (5)被告人が診察中の午後6時15分に計測されたBの収縮期血圧は65㎜Hg,拡張期血圧は53㎜Hgで,脈拍は1分間当たり35回であり,これも被告人にその場で報告された。午後6時16分ころに,被告人の指示で,点滴が二股にされ,一方から輸液(ラクテック)が全開の毎分110滴で,もう一方から輸液(ラクテック)と子宮収縮剤(パルタン)の混合液が毎分30滴で実施された。被告人は,この時点においても出血部位や出血原因を特定することはできていなかった。被告人は,午後6時16分ころから子宮内容清掃術で子宮の内容物を排出させるとともに,膣鏡を用いてBの子宮部等の内診を行った。 このとき710ミリリットルの出血が確認された。 (6)午後6時20分ころ,被告人の指示で昇圧剤のエフェドリンが側管から注入された結果,Bの収縮期血圧は89㎜Hg,拡張期血圧は81㎜Hg,脈拍が1分間当たり160回となったが,午後6時26分の計測時には,収縮期血圧は66㎜Hg,拡張期血圧は不明となった。被告人は,午後6時40分ころ,子宮頚部に子宮収縮剤(プロスタ)を注射した。その後,午後6時43分の計測時には,Bの収縮期血圧は163㎜Hg,拡張期血圧は125㎜Hg,脈拍は1分間当たり37回となったが,午後6時47分の計測では,再び収縮期血圧68㎜Hg,拡張期血圧は不明となったため,被告人は輸液やエフェドリンの注入などの措置をとった。 (7)午後7時5分ころ,酸素投与が開始され,午後7時15分ころには輸血用血液の手配がなされた。午 8㎜Hg,拡張期血圧は不明となったため,被告人は輸液やエフェドリンの注入などの措置をとった。 (7)午後7時5分ころ,酸素投与が開始され,午後7時15分ころには輸血用血液の手配がなされた。午後7時25分にナプキンが交換された際,170ミリリットルの出血が確認された。 (8)午後7時35分ころ,Bは意識不明に陥った。午後7時53分ころにはショックによる心停止が発生し,気管内に挿管がされ,心臓マッサージが開始された。被告人は,D附属病院への応援要請を指示した。 (9)午後8時10分ころに手配中の輸血用血液が到着し,午後8時15分ころから輸血が開始された。 (10)午後8時17分ころ,応援の麻酔科医師2名(O医師,P医師)が到着してBに対する蘇生措置に当たることになった。このころBには著明なチアノーゼが認められた。 (11)午後8時42分ころ,Bの腹部に膨満がみられるようになり,午後9時には肺水腫が生じた。また,このころ輸血が追加された。 (12)午後9時18分ころ,更に応援の麻酔科医師1名(G医師)が到着し,蘇生措置が続けられたものの,午後10時10分にBの死亡が確認された。 【検察官及び弁護人の主張】 検察官の主張する被告人の過失は,次のとおりであり,これら(1)から(3)の過失が併存したとしている。 (1)分娩後のBの内診及び視診を十分に行って,子宮頚管裂傷の有無を精査し,早期に裂傷を発見して止血等の措置を講ずべき注意義務があるのに,子宮頚管裂傷を見落とした過失。 (2)Bが多量の出血により出血性ショック状態に陥っているのを認めた場合には,直ちに出血量に応じた輸液措置を講じて,血圧の回復を図るとともに,午後6時9分の時点で,以後も出血が継続する事態に備えて,予め輸血用血液を手配すべき注意義務があるのに,出血性ショック状 た場合には,直ちに出血量に応じた輸液措置を講じて,血圧の回復を図るとともに,午後6時9分の時点で,以後も出血が継続する事態に備えて,予め輸血用血液を手配すべき注意義務があるのに,出血性ショック状態に陥ったBに対し十分な輸液の実行及び輸血用血液の手配を怠った過失。 (3)Bに対し,膣鏡を用いた内診や視診を行っても出血部位が発見できず,その出血状態を速やかに回復するための措置をとることができないのであれば,より高度の医療措置を受けさせるべく,人員・設備等が備わった高次の病院に直ちに転院させる注意義務があるところ,出血性ショック状態に陥ったBを高次病院に転院させなかった過失(以下「転送義務違反」という。)。 弁護人は,被告人の過失の存在を争い,被告人も公判廷においてこれに沿う供述をしているが,その主張の要点は次のとおりである。 (1)Bには,出血性ショックの原因となるような子宮頚管裂傷は生じておらず,被告人がこれを見落とした過失はない。 (2)被告人は,出血量に応じた適切な輸液を実施しており,適切な輸液の実施を怠った過失はない。 また,医師が診察を開始できていない段階で輸血用血液を手配すべき義務が生じるとはおよそ考えられない。被告人は,輸液をして全身状態の回復に努めつつ,適切な治療を行った上で,輸血用血液の取り寄せを指示しており,午後6時9分の時点で輸血用血液の手配をすべき義務はなく,これを怠ったという過失はない。 仮に,午後6時9分の時点で輸血用血液の手配をしたとしても,輸血だけではBを救命することはできなかったから,輸血用血液の手配とBの死亡の結果との間には因果関係がない。 (3)検察官は「膣鏡を用いた内診や視診を行っても出血部位が発見できず,その出血状態を速やかに回復するための措置をとることができないのであれば」高次医療 Bの死亡の結果との間には因果関係がない。 (3)検察官は「膣鏡を用いた内診や視診を行っても出血部位が発見できず,その出血状態を速やかに回復するための措置をとることができないのであれば」高次医療機関へ転送すべき義務があったと主張しているから,転送すべき義務が生じるのは早くても午後6時16分ころとなる。被告人は,輸液措置を講じており,その効果を確認するための一定の時間が必要であり,午後6時16分の時点で直ちに高次医療機関へ転送する必要はないとも評価できるが,被告人は,転送の必要も考えて連絡先を確認していた。その際,Bの状態が急激に悪 化し,そのまま転送することを断念し,全身状態の回復を待って転送することを考え,全身状態の管理・回復に努め,その一環として,D附属病院麻酔科への応援要請を行っている。よって,被告人に検察官主張の転送義務違反はない。 また,Bを午後6時16分の時点で高次医療機関に転送していたとしても,救命が高度の蓋然性をもって可能とはいえなかったものであり,転送しなかったこととBの死亡との間には因果関係がない。 【当裁判所の判断】 子宮頚管裂傷を見落とした過失本件では,検察官の主張する子宮頚管裂傷を見落とした過失の前提として,そもそも,Bに出血性ショックの原因となる子宮頚管裂傷があるかが争われているので,この点についてまず検討する。 (1)医師H作成の鑑定書(以下「H鑑定」という。)及び同医師の証人としての公判供述によれば,Bの死因は,子宮頚管裂傷による出血性ショックとされ,Bの子宮には3時から9時の方向に裂傷が認められたとされている。H鑑定は,法医学の専門医である同医師が,鑑定依頼に基づいて,担当医であった被告人による死亡診断書の記載も参考として,解剖等の客観的手法を用いて,意識的に死亡の原因解明を目的として行ったも ている。H鑑定は,法医学の専門医である同医師が,鑑定依頼に基づいて,担当医であった被告人による死亡診断書の記載も参考として,解剖等の客観的手法を用いて,意識的に死亡の原因解明を目的として行ったものであり,同医師が自ら行った鑑定の結果に基づいて作成したものと認められる。 また,被告人は,Bに対して,併用により子宮頚管裂傷を誘発しやすい陣痛促進剤を投与するとともに,子宮頚管に人為的に拡張作用をもたらす,クリステレル法や吸引分娩法を用いたことが認められる。 こうした事実に基づいて検討すると,Bの子宮頚管に裂傷が存在したとするH鑑定には一応の信用性が認められる。 (2)一方,証人Oは,被告人の要請に応じてAに赴き,Bの救命措置を行った医師の1人であるところ,同人は,上記H医師による司法解剖にも呼ばれて立ち会い,H医師から子宮頚管裂傷についてここがそうですというように見せて もらった記憶があるがはっきり分からなかった旨供述している。 また,証人Iは,D産婦人科教授で医師であるところ,助教授であった平成17年10月ころ,H医師からBのカルテや司法解剖時に撮影した写真を見せられて子宮頚管裂傷の有無を尋ねられた際,写真からははっきりしないと答えた旨,そして,H医師からホルマリン固定して保存されていたBの子宮標本を見せられて,子宮頚管裂傷の存在について意見を求められた際,Bの子宮頚管に裂傷はありませんと答えた旨供述している。そして,証人Iは,子宮をホルマリン固定することによって,出血性ショックを起こすような頚管裂傷が分からなくなることはないとも供述している。 さらに,証人Jは,産婦人科医師であるところ,Bの子宮の解剖写真を見て子宮頚管裂傷の有無を検討した限りでは,一目見てどこが子宮頚管裂傷かは判別できなかったが,あるとすれば零時から1時の部位に当たる さらに,証人Jは,産婦人科医師であるところ,Bの子宮の解剖写真を見て子宮頚管裂傷の有無を検討した限りでは,一目見てどこが子宮頚管裂傷かは判別できなかったが,あるとすれば零時から1時の部位に当たる位置にあるかと思った旨供述している。また,同じく産婦人科医師の証人Kも,解剖写真によっては子宮頚管裂傷は分からない,1時から2時くらいのところかなというのが率直な印象である旨供述している。 そして,被告人は,公判廷においては,被告人がBに午後5時45分ころに異常出血があった事実を助産師等から報告を受けた後,午後6時8分ころから診察を行い,視診,触診等の方法で子宮頚部も診察を行ったが裂傷は見つからなかったと供述している。 (3)出産後の子宮からの出血は,胎盤がはがれた結果露出した血管から通常見られるものであるが,頚管裂傷は,胎児の娩出時の細くなっている子宮頚管を拡張する力の作用により,これが裂ける現象で,動脈も損傷するため出血は鮮紅色を呈することが多い上,出血は裂傷発生直後から持続的に生じることが多いとされている。しかし,本件の場合,証人Cの供述やカルテ等の証拠によれば,Bの出血は,分娩から1時間経過後の午後4時30分ころには,40グラムの新たな出血,それもやや黒っぽい色の出血が認められたにとどまっていて, 出産直後からの持続的な鮮紅色の出血はなかったと認められる。 (4)前項の事実に,前記(2)の各証人の供述を総合して判断すると,Bの子宮頚管にBにおいてみられるような多量の出血を伴う裂傷が生じていたと認めるには合理的な疑いがあるといわざるを得ない。 したがって,検察官の子宮頚管裂傷の存在を前提とする過失の主張は理由がない。 輸液措置を怠った過失及び輸血の手配を怠った過失関係証拠によれば,被告人は,午後4時ころから,継続的に輸液を行って 。 したがって,検察官の子宮頚管裂傷の存在を前提とする過失の主張は理由がない。 輸液措置を怠った過失及び輸血の手配を怠った過失関係証拠によれば,被告人は,午後4時ころから,継続的に輸液を行っており,Bの出血に対応して,午後6時16分ころからは輸液の速度を上げている。この被告人の輸液措置が不適切であったと認定するに足る証拠はない。そして,仮に被告人が実際に行われた以上の輸液措置を実施し,午後6時9分に輸血の手配を行っていたとしても,結局,出血原因が不明であったことやAの人的・物的能力等に照らして,そのような輸液や輸血によって,確実にBの死亡の結果を回避することができたとは認められない。 したがって,輸液措置を怠った過失及び輸血の手配を怠った過失があるとの検察官の主張は理由がない。 高次医療機関への転送義務違反(1)出血性ショック状態の発生時期検察官の主張は,Bが,午後5時45分ころには出血性ショックに陥っていたことを前提とするものであるが,弁護人は,その時点でBに意識があり,その後,被告人が午後6時過ぎから行った診察の際に会話もできていたこと等を根拠にこれを争っている。そこで,この点について検討する。 ア出血性ショックは,出血が原因となって体内から血液が失われることによって引き起こされる全身状態の悪化を指す概念であり,血圧低下,脈拍増加等のショック症状を呈するものをいう。出血量が800ミリリットル以上になると出現することが多いとされている。ショック症状にあるか否かについ ては,以下のような項目の確認によって客観的に診断することが可能とされる。 (ア)血圧収縮期血圧が70㎜Hg以下となり,または平常より25パーセント以上血圧が下降する。収縮期血圧と拡張期血圧との差が減少する。 (イ)脈拍1分間の脈拍が100回以上と 可能とされる。 (ア)血圧収縮期血圧が70㎜Hg以下となり,または平常より25パーセント以上血圧が下降する。収縮期血圧と拡張期血圧との差が減少する。 (イ)脈拍1分間の脈拍が100回以上となる。 (ウ)呼吸呼吸数が増加する。呼吸は浅くなり呼吸困難を訴える。ときにはチアノーゼが見られる。 (エ)そのほかでは,尿量の低下,尿検査,血液検査等がある。 イBについてのカルテ(弁13)及び産科記録(弁14)によると,午後5時45分にはBは,上記のとおり,収縮期血圧60㎜Hg,拡張期血圧は不明であり,脈拍が1分間当たり98回の数値を示していたことが認められる。 収縮期血圧60㎜Hgは,一般的に重篤なショック状態を示すと理解されており,拡張期血圧が不明というのは計測が不能な状態に至っていたとも考えられる。また,1分間当たりの脈拍が98回という数値は,上記のショック状態を示す脈拍に近い数値である。そして,上記カルテによれば,Bの血圧あるいは脈拍の異常は,午後6時43分に一時的に改善されたのを除けば午後5時20分ころから継続していたと認められる。 ウまた,分娩時以後,客観的に確認されているBの出血量としては,分娩時の300ミリリットル,午後4時30分ころの40グラム,午後5時20分ころの200グラム,午後5時45分ころの300グラムであり,合計すると約840ミリリットルに及んでいるから,これだけでも,一般にショック症状が現れることが多いとされている上記出血量800ミリリットルを超えている。そして,量の確定はできないものの,分娩時にホスピタルマットに 吸収されていた血液もこれに加えられることになる。 エ出血性ショックは,継続的な全身症状であり,時間の経過とともにその影響により全身症状が悪化していくものであって,その初期の段階では直ちに 吸収されていた血液もこれに加えられることになる。 エ出血性ショックは,継続的な全身症状であり,時間の経過とともにその影響により全身症状が悪化していくものであって,その初期の段階では直ちに患者の意識が失われたり,会話が不可能となるわけではない。カルテによると,Bの場合も上記のとおり午後5時20分ころから血圧あるいは脈拍の異常が見られるようになり,その症状は次第に増悪して午後7時35分には意識不明となり,午後7時53分ころからは心臓マッサージを要する状態になったことが認められる。したがって,被告人が午後6時8分ころからBを診察した際に,同人に意識があり被告人との会話が可能であったとしても,この事実をもって,Bがショック状態になかった根拠とすることは相当ではない。 オ証人O,証人H,医師Kの鑑定書(弁22)及び医師Lの鑑定意見書(弁25)は,カルテ等の資料に基づいて,いずれもBが午後5時45分ころにはショック状態にあったとしている。 カ以上を総合すれば,Bは午後5時45分ころには出血性ショック状態に陥っていたと認めるのが相当である。 (2)被告人がBを高次医療機関に転送する必要性を判断し得る状況の存在についてア出血性ショックに対する処置(ア)出血性ショックは,出血に起因して臓器あるいは組織に対して十分な酸素が供給されないことから細胞が代謝障害を来した状態をいい,代謝障害はさらに循環障害を引き起こし,症状が進行し不可逆期を超えると有効な症状の改善療法がなく死の転帰に至る。 (イ)したがって,上記のような出血性ショックに対する治療としては,症状が進行して不可逆な状態になる前の早期の段階で,原因となっている出血を止めるとともに,臓器あるいは組織に対して十分な酸素を供給する措 置を講じて,生じている障害を改善する必要があ としては,症状が進行して不可逆な状態になる前の早期の段階で,原因となっている出血を止めるとともに,臓器あるいは組織に対して十分な酸素を供給する措 置を講じて,生じている障害を改善する必要があるとされる。 イBが出血性ショック状態に陥っていた事実についての被告人の認識(ア)被告人は,分娩直後に胎盤受けに溜まった300ミリリットルの出血量を見ていたこと,ホスピタルマットに染みこんだ出血量や午後4時30分ころの40グラムの出血についての報告は受けていなかったが,午後5時20分過ぎころに200グラムの出血の報告を受け,その後,午後6時ころ,更に300グラムの出血と収縮期血圧60㎜Hg,拡張期血圧は不明,脈拍1分間当たり98回の数値の報告を受けて,直ぐに診察のためにBを分娩室に入れるように指示し,診察に赴いている。被告人は診察に取りかかる段階でカルテにも目を通したものと推認できる。 (イ)そして,被告人が診察を開始し,午後6時9分にBの収縮期血圧65㎜Hg,拡張期血圧58㎜Hg,脈拍1分間当たり61回の数値が,午後6時15分に収縮期血圧65mmHg,拡張期血圧53mmHg,脈拍1分間当たり35回の数値が,それぞれその場で被告人に報告され,被告人はこれを認識し,午後6時16分ころには輸液の速度を速め,子宮内容清掃術を開始した。 (ウ)被告人の検察官調書によれば,被告人はBがショック状態にあることを認識して,Bを再度分娩室に移して診察を始めたとする旨の記載があり,被告人は,公判においても,午後6時9分の時点で出血が1000ミリリットルを超える可能性があると考えて診察を行った旨供述している。 (エ)これらの事実に照らすと,被告人は,Bが午後5時45分ころから出血性のショック状態に陥っていることを,午後6時16分には認識したと認められる 可能性があると考えて診察を行った旨供述している。 (エ)これらの事実に照らすと,被告人は,Bが午後5時45分ころから出血性のショック状態に陥っていることを,午後6時16分には認識したと認められる。 ウ当時のAにおけるショック状態に対応した救命のための処置を講じる能力についてみると,被告人の公判供述及び検察官調書によれば,Bの出産当時,Aには輸血用血液の備蓄はなく,産婦人科の医師は被告人及び被告人の父親 の2人であったが,父親は当時80歳の高齢であったこと,麻酔科の専門医はいなかったことが認められる。こうした事実からすれば,ショック状態に陥ったBを救命するための処置を講じる人的・物的能力はいずれも整っていなかったと認められ,このことは被告人自身認識していたことが認められる。 エそして,被告人は,午後6時8分ころから6時16分にかけて行った診察によっても,出血原因を解明することはできない状態であった。 オ以上からすると,午後6時16分の時点において,被告人は,Bが出血性ショック状態に陥っていることを認識していたところ,午後6時8分ころからの診察によっても出血原因は分からない状態であり,Aには,このようなBのショック状態に対応して,その全身状態を管理しつつ出血原因を特定して止血するための十分な人的・物的能力が整っていないことを被告人は認識していたのであるから,被告人としては,午後6時16分の時点で,Bの救命のために,速やかにショック状態への対応が可能な高次医療機関へBを転送する決断をすることができる状況にあったと認められる。 カこの点,検察官は,午後6時9分の時点で転送すべき義務があった旨も主張している。 しかし,午後6時9分の時点は,検察官が主張する「内診や視診を行っても出血部位が発見できない場合に転院させるべき義務」の前提とな 察官は,午後6時9分の時点で転送すべき義務があった旨も主張している。 しかし,午後6時9分の時点は,検察官が主張する「内診や視診を行っても出血部位が発見できない場合に転院させるべき義務」の前提となる診察を開始した直後の段階である。また,被告人におよそ産婦人科医師としての能力が欠けていて,被告人が診察しても出血箇所を特定し,止血することが期待できないというのであればともかく,被告人には産婦人科医師として多数の臨床経験があること等からすると,被告人が午後6時ころの報告を受けて,直ちにBを分娩室に入れるように指示し,分娩室において診察を行ったことは,医師のその時点での判断として必ずしも不適切であったとはいえない。 したがって,午後6時9分の時点で転送義務があったということはできない。 (3)被告人に転送義務を怠った過失があるか否かについてア被告人に午後6時16分の時点でBを高次医療機関に転送すべき刑法上の義務があり,その義務を怠ったことからBに死亡という結果が発生したといえるかについて検討する。 被告人が,Bの転送義務を怠り,Bを死に致らしめたと認められるためには,被告人がその時点で転送していれば,Bの死亡という結果を確実に回避できたことが合理的な疑いを入れる余地のない程度に証明される必要がある。 イAから高次医療機関への転送の手続Aは,名古屋市a区内に所在しており,救命救急医療が可能な近距離にある高次医療機関としては,同市e区内所在のM病院等が挙げられる。証人Oの供述によれば,救急搬送には救急車が用いられるが,名古屋市内において出動の依頼があった場合の到着までに要する時間は通常五,六分とされ,それから搬送先が決まるまで5分程度,搬送に要する時間は10分程度と見込まれる。証人Oの上記各所要時間の根拠は,同人が日常的に救急活動に携 依頼があった場合の到着までに要する時間は通常五,六分とされ,それから搬送先が決まるまで5分程度,搬送に要する時間は10分程度と見込まれる。証人Oの上記各所要時間の根拠は,同人が日常的に救急活動に携わっているNに問い合わせた結果であって,その信用性は高い。 ウ転送による救命可能性(ア)証人Oは,「一般にショック状態にあっても心臓が動いている段階で処置をすれば救命の可能性は高い。Bの場合は,実際に心停止になったのは午後6時15分からほぼ1時間30分後であるが,午後6時16分の時点で酸素投与と輸液等を開始しながら転送の手続をすれば,30分から45分以内に輸血をすることができ,そうすれば,その心停止の時間ももっと後になる。午後6時16分の時点で転送の手続を開始すれば,90パーセントの確率でBを救命できた。」旨供述している。この供述によれば,転送に必要な時間及び到着後輸血が開始されるまでの時間を多少見込んだとしても,被告人がBのショック症状を認識し転送の判断ができた午後6時16分に転送の手続をとっていれば,Bを確実に救命することができた ことになる。証人Oは,実際に午後8時すぎからBの蘇生措置を行った者であり,麻酔科医として救命救急の分野も専門にしている医師として,自らの多数の救命救急の臨床経験に基いて供述していることから,その供述には相当の信用性が認められる。 (イ)これに対し,午後6時16分に転送の手続をした場合の救命可能性について,証人Jは,十中八九という高い確率で救命できたとはいえないとし,証人L及び同人の鑑定意見書は,救命の高度の蓋然性があったとは言えず,せいぜい五分五分であったとし,証人K及び同人の鑑定書は,救命が合理的な疑いを入れない程度に可能であったと評価するのは困難であるとしている。 a証人Jは,産婦人科を専門 蓋然性があったとは言えず,せいぜい五分五分であったとし,証人K及び同人の鑑定書は,救命が合理的な疑いを入れない程度に可能であったと評価するのは困難であるとしている。 a証人Jは,産婦人科を専門とする医師として,本件の捜査段階で,検察官から依頼を受け,Bに子宮頚管裂傷が生じていたことを前提として,その救命のために何をすべきであったかを鑑定人的な立場で検察官に対して説明をし,検察官調書(甲10)が作成されたところ,その調書の内容について確認するため尋問が行われた。証人Jは,午後6時16分に高次医療機関への転送の措置をとっていた場合の救命可能性について,要旨次のような供述をしている。すなわち,検察官調書の中に,高次医療機関に転送していたら救命可能であったとの供述の記載があるが,それは十中八九の高い確率をもって救命できたという趣旨を述べたものではない。午後6時16分ころに子宮頚管裂傷を発見したと仮定し,そのころに高次医療機関に転送していたとしても,Bはいわゆる重症ショックの状態になって30分以上経過しており,その段階では汎発性血管内血液凝固症候群(DIC)を併発していた可能性も否定できず,多臓器不全の状況になれば不可逆的なダメージが生じ,単純に出血点を止めて輸血だけすれば救命できるという状況でなくなっている可能性もあるので,救命の確率については何とも言えない。 b証人Kは,産婦人科を専門とする医師として,被告人の依頼を受けて,本件の診療録,H鑑定,J医師やH医師の供述調書等を資料として,Bの出血原因や救命可能性について鑑定し,鑑定書(弁22)を作成した。 証人Kは,その鑑定書において,午後6時16分に開始した子宮内容清掃術において多量の出血が認められた時点で高次医療機関へ転送すべきであったとした上で,その時点での救命可能性につい 22)を作成した。 証人Kは,その鑑定書において,午後6時16分に開始した子宮内容清掃術において多量の出血が認められた時点で高次医療機関へ転送すべきであったとした上で,その時点での救命可能性については,不確定な要素が多く厳密に救命可能性を論じるのは困難であり,救命が合理的な疑いを入れない程度に可能であったと評価するのは困難と考えるとし,公判廷においても同旨の供述をしている。そして,その理由として,典型的な頚管裂傷があったとは認め難く,弛緩性出血の可能性もあり,その場合でもショックに陥った後の症状の推移は急激である上,弛緩性出血以外の別の要因,特に羊水塞栓症によるDICショックを併発していた可能性も否定できないこと,頚管裂傷による出血性ショックである場合でも,その診断は容易ではなく,転送先の高次医療機関の医師が裂傷部位を的確に診断し止血が奏功しなければ救命可能性は低くなること,出血原因や出血部位が確定できない場合には,最後の手段として,開腹して子宮全部を摘出する手術を行うが,手術そのものが侵襲であり手術による出血や血圧低下の可能性もあること,搬送中や輸血の開始までの間に状態が更に悪化することもあることなどを挙げている。 c証人Lは,救命救急を専門とする医師として,弁護人の依頼に基づいて,H鑑定,カルテの記載及び公判廷における証人Oの供述,K医師作成の鑑定書等を資料として,Bの転送による救命可能性を鑑定し,鑑定意見書(弁25)を作成した。証人Lは,その鑑定意見書において,「妊婦は妊娠末期になると血液凝固機能が亢進する一方で,凝固を防ぐための線維素溶解系酵素も上昇するなど,凝固系と線溶系が非常に微妙なバランスで維持されている。このため,大量出血により,ひとたびこ のバランスが崩れると,更なる大量出血をきたしたり,DICをきたしや 線維素溶解系酵素も上昇するなど,凝固系と線溶系が非常に微妙なバランスで維持されている。このため,大量出血により,ひとたびこ のバランスが崩れると,更なる大量出血をきたしたり,DICをきたしやすい。分娩後出血は,通常の外傷等による大量出血とは病態が異なっており,救命可能性を検討する上では,他の出血性ショックと同列に論じることはできない。」「Bのショックの持続状況から見て,多臓器不全や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を起こす可能性は決して低くなく,午後6時16分以降に高次医療機関に転送しても,心不全徴候,それに続発する肺機能不全が起こる可能性は高く,さらに,腎臓や肝臓も含めた多臓器不全やARDSに移行する可能性を考えた場合に,救命できた高度の蓋然性があるとはいえず,せいぜい五分五分程度である。」旨述べ,公判においても同旨の供述をしている。 (ウ)証人J,証人K及び証人Lは,それぞれ産婦人科あるいは救命救急にかかわる専門医の立場から,午後6時16分の時点で高次医療機関へ転送の手続をしてもBを確実に救命できたとはいえないとしているのであるが,これらの見解もまた,各証人の臨床経験や専門知識に基づくものであって,その内容からしても一概に否定することはできない。そして,前述のとおり,Bの全身状態は,午後5時20分ころから午後5時45分ころの間の出血により急激に悪化し,午後5時45分ころにはショック状態に陥っており,午後6時16分の段階ではそのショック状態になってから既に30分が経過していて,午後6時15分に計測された血圧や脈拍からすればそのショック状態は重篤になっていたこと,証人Jの供述,証人Kの供述及び鑑定書,証人Lの供述及び鑑定意見書等の関係証拠によれば,周産期の妊婦の身体は特殊な状態にあり,分娩後出血による出血性ショックは,DICを 状態は重篤になっていたこと,証人Jの供述,証人Kの供述及び鑑定書,証人Lの供述及び鑑定意見書等の関係証拠によれば,周産期の妊婦の身体は特殊な状態にあり,分娩後出血による出血性ショックは,DICを発症しやすい等の特殊性があるため,救命可能性を検討する上では,他の出血性ショックと必ずしも同列に論じることはできないと考えられること,前述の証人Oの供述は,妊婦が分娩後出血によって出血性ショック状態にある場合の救命可能性に関する実証データに基いているものではな いこと,Bの出血部位や出血原因は現段階でも特定できていないことなども併せ考えると,証人Oの見解を全面的に採用し、午後6時16分の時点で転送の手続をすれば90パーセントの確率でBを救命できたと認めることはできない。 なお,証人Hは,午後6時16分に多量の輸液など適切な処置をしつつ転送すれば救命の可能性はある旨述べているが,同証人は子宮頚管裂傷が出血原因であることを前提として救命可能性について述べており,出血原因が特定できない状況である本件の場合とは前提が異なっている上,救命可能性の程度についてははっきり言えないと述べており,この証人Hの供述は,上記の検討結果を左右しない。 エ以上のことからすれば,仮に被告人が午後6時16分の時点でBを高次医療機関に転送する手続をしていたとしても,Bを確実に救命できたと認めるには合理的な疑いが残る。したがって,被告人に午後6時16分の時点でBを高次医療機関へ転送すべき刑法上の注意義務があったとは認められない。 以上の検討結果によれば,本件全証拠によっても検察官の主張する過失によってBを死亡させるに至ったとする公訴事実はその証明がないことに帰する。 よって,刑事訴訟法336条により,被告人に対し無罪の言渡しをする。 (求刑罰金50万円)平成19年3 察官の主張する過失によってBを死亡させるに至ったとする公訴事実はその証明がないことに帰する。 よって,刑事訴訟法336条により,被告人に対し無罪の言渡しをする。 (求刑罰金50万円)平成19年3月19日名古屋地方裁判所刑事第5部裁判長裁判官伊藤新一郎 裁判官波多江真史裁判官溝田泰之
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