平成29年11月2日判決言渡平成28年(行ウ)第282号重加算税賦課決定処分取消等請求事件主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 処分行政庁が,平成27年3月17日付けでした原告の平成19年2月1日から平成20年1月31日まで,同年2月1日から平成21年1月31日まで,同年2月1日から平成22年1月31日まで,同年2月1日から平成23年1 月31日まで,同年2月1日から平成24年1月31日まで及び同年2月1日から平成25年1月31日までの各事業年度の法人税に係る重加算税の各賦課決定処分をいずれも取り消す。 2 処分行政庁が,平成27年3月17日付けでした原告の平成25年2月1日から平成26年1月31日までの事業年度の法人税に係る過少申告加算税及び 重加算税の各賦課決定処分をいずれも取り消す。 3 処分行政庁が,平成27年3月17日付けでした原告の平成19年2月1日から平成20年1月31日まで,平成22年2月1日から平成23年1月31日まで,同年2月1日から平成24年1月31日まで,同年2月1日から平成25年1月31日まで及び同年2月1日から平成26年1月31日までの各課 税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分をいずれも取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,処分行政庁から,法人税の過少申告加算税及び重加算税各賦課決定処分並びに消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の重加 算税各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)を受けたのに対し, 処分行政庁の調査担当職員が原告について実地の調査を行うに先立ち,国税通則法74条の9第1項に基づく税務署長による調査の事前通知( 定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)を受けたのに対し, 処分行政庁の調査担当職員が原告について実地の調査を行うに先立ち,国税通則法74条の9第1項に基づく税務署長による調査の事前通知(以下「事前通知」という。)を欠くこと等により本件各賦課決定処分は違法であるとして,その取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定め 関係法令等の定めは,別紙2「関係法令等の定め」に記載のとおりである(なお,同別紙中で定義した略称等は,以下の本文においても同様に用いるものとする。ただし,「当該職員」については,税務署の当該職員を指すこともある。)。 2 前提事実(証拠等を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者等 ア原告は,米,雑穀と農産物の集荷及び販売等を営む特例有限会社である。 イ補佐人税理士A(以下「A税理士」という。)は,原告の顧問税理士である。 なお,A税理士は,平成26年8月1日付けで,処分行政庁に対し,原告の平成25年2月1日から平成26年1月31日までの年分及びそれ 以前の年分に係る法人税,消費税等及び所得税(復興特別所得税を含む。)(源泉徴収に係るもの)に係る事前通知が代理人に対して行われることの同意を表した税務代理権限証書を提出した(乙27)。 (2) 本件各賦課決定処分に至る経緯ア原告は,処分行政庁に対し,原告の平成19年2月1日から平成20年 1月31日までの事業年度(以下「平成20年1月期」といい,他の事業年度についても同様に表記する。)ないし平成26年1月期(以下,併せて「本件各事業年度」という。)の法人税及び平成19年2月1日から平成20年1月31日までの課税期間(以下「平成20年1月期課税期間」といい,他の課税期間についても同様に表記する。)ない 以下,併せて「本件各事業年度」という。)の法人税及び平成19年2月1日から平成20年1月31日までの課税期間(以下「平成20年1月期課税期間」といい,他の課税期間についても同様に表記する。)ないし平成26年1月期課 税期間(以下,併せて「本件各課税期間」という。)の消費税等の各確定申 告書(以下「本件各確定申告書」という。)を,それぞれ法定申告期限内に提出した。 イ松本税務署所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)は,平成26年7月25日,A税理士から,同年10月2日に,原告の事務所兼代表者居宅を調査場所として調査を受けることを原告と約した旨の電話 連絡を受け,その際,A税理士は,本件調査担当職員に対し,事前通知に関する同意を表わした税務代理権限証書を提出するため,納税義務者には連絡しないでよい旨を述べた。 本件調査担当職員は,A税理士の上記回答を受けて,A税理士に対し,引き続き,国税通則法74条の9第1項各号に規定する事項について通知 を行いたい旨を述べたところ,A税理士は,事前通知は税務署長がすることが規定されており,担当職員から説明されても事前通知を受けたことにならず法令の規定に反するから,受けることはできない旨の申出をした。 ウ本件調査担当職員は,平成26年10月2日,原告の事務所兼代表居宅へ臨場し,同日以降,原告から提示のあった帳簿書類等の検査,原告の代 表者に対する質問調査等を行った(以下「本件調査」という。)。 エ本件調査担当職員は,平成27年2月9日に,A税理士に対し,本件調査の結果の内容を説明するなどしたところ,原告は,同月23日,処分行政庁に対し,本件各事業年度の法人税及び本件各課税期間の消費税等の各修正申告書(以下「本件各修正申告書」といい,これに係る修正申告 査の結果の内容を説明するなどしたところ,原告は,同月23日,処分行政庁に対し,本件各事業年度の法人税及び本件各課税期間の消費税等の各修正申告書(以下「本件各修正申告書」といい,これに係る修正申告を「本 件各修正申告」という。)を提出した。 オ処分行政庁は,平成27年3月17日付けで,原告に対し,本件各賦課決定処分をした。 カ上記アないしオの課税処分等の経緯は,別表1「法人税の課税処分等の経緯」及び別表2「消費税及び地方消費税の課税処分等の経緯」記載のと おりである。 (3) 不服申立てア原告は,平成27年4月3日,処分行政庁に対し,本件各賦課決定処分を不服として,その取消しを求める異議申立てをしたところ,処分行政庁は,同年6月26日付けで,上記異議申立てを棄却する旨の決定をした。 イ原告は,平成27年7月14日,国税不服審判所長に対し,本件各賦課 決定処分の取消しを求める審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,平成28年2月9日付けで,上記審査請求を棄却する旨の裁決をした。 (4) 本訴提起原告は,平成28年6月25日,本件訴えの提起をした(顕著な事実)。 3 課税処分の根拠 本件において被告が主張する本件各賦課決定処分の根拠は,別紙3「課税処分の根拠」記載のとおりである。 なお,後記4の争点に関する部分を除き,その計算の基礎となる金額及び計算方法については,当事者間に争いがない。 4 争点及びこれに対する当事者の主張 本件の主要な争点は,事前通知を税務署の当該職員がすることができるか,処分行政庁が自らしなければならないかであり,これに対する当事者の主張は,次のとおりである。 (被告の主張)(1) 調査に際しては,かねて,実務上,原則として納税者に対して調査日時を できるか,処分行政庁が自らしなければならないかであり,これに対する当事者の主張は,次のとおりである。 (被告の主張)(1) 調査に際しては,かねて,実務上,原則として納税者に対して調査日時を 事前通知することとしており,例外的に事前通知をすることが適当でないと認められる場合には,事前通知を行わないこととしていたところ,平成23年法律第114号により国税通則法が改正され(以下「本件改正」という。),同法74条の9に,納税義務者に対する事前通知等が新たに規定された。これは,調査手続の透明性・納税者の予見可能性を高める観点から,調査に先 立ち,課税庁が原則として事前通知をすることとして,従前の運用上の取扱 いを法律上明確化したものである。 (2)アこのような事前通知については,かねて調査担当職員がしていたところ,調査担当職員は,行政庁としての税務署長の補助機関であり,また,税務署長は,当然,事前通知に係る事務を所属の当該職員に行わせることができるのであるから,調査担当職員は,飽くまでも行政庁としての税務 署長の補助機関として事前通知をしてきたものである。このような従前の運用上の取扱いにおけるのと同様に,調査担当職員が税務署長等の補助機関として事前通知を行ったとしても,事前通知が行われている以上,調査手続の透明性・納税者の予見可能性を高めるという事前通知の趣旨を没却するものではない。上記(1)のとおり,事前通知の規定の新設は,従前の運 用上の取扱いとして行われていたものを法律上明確化したものにすぎず,通知の主体を行政庁としての税務署長に限定し,補助機関がすることを禁じる趣旨のものとはいえない。 したがって,国税通則法74条の9に,事前通知を補助機関である調査担当職員に行わせることができる旨が規定されてい 行政庁としての税務署長に限定し,補助機関がすることを禁じる趣旨のものとはいえない。 したがって,国税通則法74条の9に,事前通知を補助機関である調査担当職員に行わせることができる旨が規定されていないことをもって,行 政庁たる税務署長等の補助機関である調査担当職員が事前通知をすることが違法となるものではない。 イまた,法律が税務署長の権限とする事務は広範に及んでいることからすれば,税務署長がこれら全てを自ら処理することができないことは明らかであって,法律は,一定の範囲の事務について,行政組織内部の規則等に より,補助機関がすることを当然に予定していると解される。 この点,税務署で所掌する事務は,財務省設置法及び組織規則に規定されているところ,事前通知は,「内国税の課税標準の調査に関する事務」であって,組織規則553条柱書き,同条2号,556条2項によれば,事前通知をする事務は,命を受けた統括国税調査官が分掌し,命を受けた国 税調査官は,事前通知という事務を処理することができるものと解される から,国税調査官は,法令の定めに基づき,税務署長の補助機関として,事前通知をすることができるものと解される。 ウこれに対し,原告は,事前通知を行政行為と解した上で,補助機関である税務職員が,税務署長等に代わり事前通知をするには,委任,専決,授権代理等の法的根拠が必要であるところ,本件では,このような法的根拠 はない旨等を主張する。 しかし,行政行為とは,行政庁により,具体的事実を規律するために,公権力の行使として,外部に対してされる直接の法的効果(国民の権利義務を形成し,またはその範囲を確定する効果)を生ずる行為であり,法的効果を生じない単なる報告・通知・公示,行政指導などの事実行為は,行政 行為ではない 対してされる直接の法的効果(国民の権利義務を形成し,またはその範囲を確定する効果)を生ずる行為であり,法的効果を生じない単なる報告・通知・公示,行政指導などの事実行為は,行政 行為ではないところ,事前通知は,課税庁が,税務調査に先立ち,納税者に対して国税通則法74条の9第1項各号に定める事項を通知する事実行為であり,事前通知によって国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定する効果を生じるものではない。 したがって,事前通知は,行政行為には該当しないから,原告の主張は, 前提において理由がない。 (3) また,税理士法34条1項の規定によれば,事前通知を,税務署長自らではなく,補助機関である調査担当職員がすることは,当然予定されているといえる。 これに対し,原告は,同条と国税通則法74条の9は,一般法と特別法の 関係にあるといえるから,同条が定められていることにより,国税に関する税務手続においては,税理士法34条の適用が排除される旨を主張するが,同法及び国税通則法の趣旨並びに税理士法34条の調査の通知に関する規定に別段の定めのない限りとの文言がないことに鑑みると,同法と国税通則法が,原告の主張するような一般法と特別法の関係にないことは明らかであり, 原告の上記主張は理由がない。 (4) 以上のとおり,事前通知は,税務署長が自らしなければならないものではなく,行政庁としての税務署長の補助機関である当該職員がすることができると解すべきである。 そして,本件調査担当職員は,前提事実(2)イのとおり平成26年7月25日にA税理士と電話連絡したところ,その際に,本件調査について事前通知 をしたものである。 したがって,本件各賦課決定処分は,適法である。 なお,税務調査はそれ自体が客観的な課税要件 日にA税理士と電話連絡したところ,その際に,本件調査について事前通知 をしたものである。 したがって,本件各賦課決定処分は,適法である。 なお,税務調査はそれ自体が客観的な課税要件ではない以上,調査の手続が刑罰法規に触れ,公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたる等重大な違法を帯び,何らの調査なしに更正処分をしたに等しいも のとの評価を受ける場合に限り,その処分が取り消されると解すべきである。 事前通知は,補助機関たる調査担当職員がすることができるものであるが,仮に,事前通知を税務署長等以外の者がすることができないものであると解したとしても,本件において,本件調査担当職員は,A税理士に対して,国税通則法74条の9第1項各号に規定する事項について事前通知を行ってい るのであって,本件調査の手続は,調査手続の透明性及び納税者の予見可能性を高める等の事前通知の趣旨が没却されるようなものではなかったのであるから,上記のような重大な違法を帯びたものとはいえず,何らの調査なしに更正処分をしたに等しいものとの評価を受ける場合に該当しないことは明らかである。この点に照らしても,本件調査担当職員がした事前通知は,本 件各賦課決定処分の取消理由とはならない。 (原告の主張)(1) 国税通則法74条の9第1項には,事前通知をすべき主体は「税務署長等」と明記されていること,同項は,「当該職員に〔中略〕質問,検査又は提示若しくは提出の要求を行わせる場合」と定めており,「当該職員」と「税務署長 等」の文言は明確に使い分けられていることから,文理上,「税務署長等」に 当該職員が含まれないことが明らかであって,「税務署長等」には,国税庁等又は税関の当該職員は含まれず,また,税務署長等がすべき事前通知を当 に使い分けられていることから,文理上,「税務署長等」に 当該職員が含まれないことが明らかであって,「税務署長等」には,国税庁等又は税関の当該職員は含まれず,また,税務署長等がすべき事前通知を当該職員が代行することができる旨も規定されていない。 さらに,国税の調査について規定した同法74条の2ないし同法74条の8は,「当該職員」への委任事務を明確に規定し,当該職員がすることができ る行為を明示しているのに対し,同法74条の9第1項は,「当該職員」が事前通知をすることができる旨の規定を置いていない。 したがって,事前通知を「税務署長等」以外の者がすることはできず,同項は,税務署長等が自ら事前通知をすべきことを規定するものと解すべきである。 なお,同法の文言上明記されたのは,事前通知は「税務署長等」がするという点のみであり,従前の運用上の取扱いを法律上明記したということはうかがわれず,むしろ,法律上,「税務署長等」が事前通知の主体と明記されたことにより,事前通知は税務署長等がすべきものと変更されたものとみるべきである。 (2)アこれに対し,被告は,当該職員が税務署長等の補助機関として,事前通知をすることができる旨を主張する。 しかし,そもそも法令によって行政機関に与えられた権限は,本来その行政機関が自ら責任を持ってこれを行使しなければならないのであって,法令の根拠なく勝手に放棄したり,他の行政機関にこれを割譲(移譲)し たりすることは許されない。これは,このようなことを許すとすると,結局行政機関が,法令が定めた行政機関相互間の権限の配分を任意に変動させることを認めることとなるからである。 そして,このことは,そもそもその権限の範囲及び内容が必ず法律又はそれに基づく命令によって定められなければならない た行政機関相互間の権限の配分を任意に変動させることを認めることとなるからである。 そして,このことは,そもそもその権限の範囲及び内容が必ず法律又はそれに基づく命令によって定められなければならない行政庁のみならず, いわゆる補助機関であっても,その権限及び責務が法令の規定によって定 められている限りは,同様である。そして,上記(1)のとおり,国税通則法74条の9は,事前通知の主体を「税務署長等」と明示しており,法律の明文により事前通知をすべき主体が定められているのであるから,これに反して当該職員が事前通知をすることは許されない。 また,補助機関である税務職員が,「税務署長等」に代わり事前通知をす るには,委任,専決,授権代理等の法的根拠が必要であるが,事前通知を補助機関に行わせることを可能にする根拠規定は存在せず,本件では,事前通知がされた際,税務職員から授権代理である旨の顕名がされたこともない。 イこの点,被告は,財務省設置法及び組織規則を引用するところ,これら の法令は,行政組織法であり,他方,国税通則法は,国家が市民に義務を課す法律であるから,行政作用法に該当する。 行政を規律する法には,組織規範,規制規範及び根拠規範があるところ,法律の留保論により,市民に義務を課すには,組織規範のほかに根拠規範を要するのであって,法律の留保原則における法律の授権にいう法律とは, 行政作用法(根拠規範)であり,行政組織法が行政機関に権限を配分し,あたかもそれが授権であるように見えることがあっても,それを以って法律の留保原則における授権があるとは解されず,行政組織法である財務省設置法及び組織規則を拡大解釈し,行政作用法として適用することは,行政法学の基本原則である法律留保の原則に反する。 したがって, 保原則における授権があるとは解されず,行政組織法である財務省設置法及び組織規則を拡大解釈し,行政作用法として適用することは,行政法学の基本原則である法律留保の原則に反する。 したがって,組織規則553条及び556条等の内部規範を国民の財産権を侵害する国税通則法に適用することは失当である。 (3) また,被告は,税理士法34条1項によっても,事前通知を補助機関である調査担当職員がすることは,当然予定されているといえる旨を主張する。 確かに,同条及び国税通則法74条の9は,調査に先立つ事前通知につい て規定しているが,税理士法34条は,国税のみならず地方税その他の租税 にも適用される通則的規定であるのに対し,国税通則法74条の9は,国税の調査における質問検査等を行う場合にのみに適用される。 これを前提とすると,同条第1項は税理士法34条1項の規定に,国税通則法74条の9第5項は税理士法34条2項の規定に,国税通則法74条の9第6項は税理士法34条3項の規定にそれぞれ対応しており,国税通則法 74条の9は,税理士法34条の規定を国税手続に合致させるための特則として規定されているから,同条と国税通則法74条の9は,一般法と特別法の関係にあるといえる。 したがって,同条が定められていることにより,国税に関する税務手続においては,税理士法34条の適用が排除されるから,一般法である同条を基 礎として,国税通則法74条の9の文理に反する解釈を導こうとする被告の主張は,失当であり,むしろ,このような税理士法34条と国税通則法74条の9の規定ぶりの差異によれば,同法は,事前通知の主体を「税務署長等」に限定していると解すべきである。 (4) 以上より,本件では,処分行政庁は,自ら本件調査について事前通知をし てい 条の9の規定ぶりの差異によれば,同法は,事前通知の主体を「税務署長等」に限定していると解すべきである。 (4) 以上より,本件では,処分行政庁は,自ら本件調査について事前通知をし ていないことから,本件調査は事前通知がされずにされたものであり,また,本件は,国税通則法74条の10に規定された事前通知を要しない場合にも当たらない。 したがって,本件各賦課決定処分は,その基礎となる調査手続に重大な瑕疵が存するから,違法である。 また,被告が調査と主張するものは,行政指導にすぎず,本件は,国税通則法65条5項の修正申告書の提出がその申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときに当たるから,過少申告加算税が課せられる場合に当たらず,本件各賦課決定処分は,違法である。 第3 当裁判所の判断 1 争点について(1)ア国税通則法は,税務署長等は,当該職員に納税義務者に対し調査において質問検査等を行わせる場合には,あらかじめ,当該納税義務者(当該納税義務者について税務代理人がある場合には,当該税務代理人を含む。)に対し,その旨並びに調査を開始する日時,調査を行う場所,調査の目的, 調査の対象となる税目・期間・帳簿書類その他の物件及びその他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項を通知するものと規定している(74条の9第1項)。 このように調査に際して事前通知をすべきものとされる趣旨は,調査手続の透明性,納税者の予見可能性の確保にあり,平成13年3月27日付 け国税庁長官通達「税務調査の際の事前通知について(事務運営指針)」に基づき,調査の実務上,かねて行われていたものであるところ,本件改正により,同法に事前通 保にあり,平成13年3月27日付 け国税庁長官通達「税務調査の際の事前通知について(事務運営指針)」に基づき,調査の実務上,かねて行われていたものであるところ,本件改正により,同法に事前通知に係る規定を設け,事前通知を法制化し,明確化することとされたものである。このような本件改正により法制化された事前通知は,当初,原則として書面によりすべきものとする改正案が国会に 提出されたところ,本件改正においては,事前通知を原則として書面によりすべきものとする上記改正案は修正されて可決された。(甲10,乙13,38)そして,当該職員は,税務署長等の補助機関であるから,税務署長等の補助機関として税務署長等の職務を遂行することができるところ,調査手 続の透明性,納税者の予見可能性の確保という上記の事前通知の立法趣旨は,当該職員が税務署長等の補助機関として事前通知をすることによっても,全うされるものということができ,また,本件改正前の取扱いと同様に事前通知を当該職員に行わせ得るとすることにより,これを適時的確にすることができ,国民の納税義務の適正かつ円滑な履行に資する(同法1 条)ということができる。 以上にみた同法74条の9第1項の制定経緯,事前通知の趣旨,当該職員の地位等に照らすと,税務署長等は,所属の当該職員に事前通知に係る事務を行わせることができるものと解すべきことは明らかというべきである。このことは,税理士法34条1項が「税務署官署の当該職員」は,税理士に対し,事前通知をすべき旨を規定していること,実務上,税務署 長等が個別の調査の全てについて事前通知を自らすることは,事実上不可能と考えられ,国税通則法が事前通知を当該職員がすることを禁じているとは到底解されないことからもいうことができるというべき 署 長等が個別の調査の全てについて事前通知を自らすることは,事実上不可能と考えられ,国税通則法が事前通知を当該職員がすることを禁じているとは到底解されないことからもいうことができるというべきである。 この点,原告は,同法74条の9は,税理士法34条の特別法であって,同条が事前通知の主体として「当該職員」と規定しているのに対し,国税 通則法74条の9はこれを「税務署長等」と規定しており,規定ぶりが区別されている旨を主張するが,上記説示に照らせば,このことをもって,国税通則法上,事前通知を税務署長等が自らしなければならず,また,税理士法34条と国税通則法74条の9が一般法と特別法の関係にあるなどということはできない。 したがって,当該職員が税務署長等の補助機関として事前通知を行うことは,適法というべきである。 イこれに対し,原告は,国税通則法74条の9第1項の定める事前通知は行政行為であるとした上,同項に,事前通知の主体について「税務署長等」と明記されている旨,同法上,「税務署長等」と「当該職員」の各文言が区 別して用いられている旨,本件改正により,法律上,「税務署長等」が事前通知の主体と明記されたことにより,事前通知は税務署長等がすべきものと変更されたものとみるべきである旨等を主張し,同項は,事前通知は「税務署長等」が自らこれをすべきことを規定したもので,当該職員がこれを行ったとしても,事前通知に当たらないと主張し,同旨の意見書等(甲8, 9,12,14ないし16)を提出する。 しかし,上記アで検討した事前通知ないし同条の趣旨及び同条の制定経緯等に照らし,事前通知をもって国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定する効果を有する行政行為と解することはできず,また,事前通知は税務署長等が自 討した事前通知ないし同条の趣旨及び同条の制定経緯等に照らし,事前通知をもって国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定する効果を有する行政行為と解することはできず,また,事前通知は税務署長等が自ら行わなければならないものではないと解すべきであることも上記検討のとおりであるから,同条に事前通知の主体として「税 務署長等」と規定され,他方,国税の調査に関する他の規定において,「当該職員」を主体とする旨の規定があることをもって,当該職員が税務署長等の補助機関として事前通知を行い得ないと解すべきものとはいえないというべきである。 また,上記アに判示したとおり,同項の制定経緯は,従前の実務上の取 扱いを法律上明確化したものであって,事前通知をすることができる者を税務署長等に限定したものではない。 したがって,原告の上記主張及び意見書等は独自の見解であって,採用することができない。 (2) 前提事実(2)イ,証拠(乙28,29,45)及び弁論の全趣旨によれば, 本件調査担当職員は,平成26年7月25日,原告の税務代理人であったA税理士に対し,電話で本件調査について国税通則法74条の9第1項各号の事項を事前に通知したことが優に認められるというべきであり,本件調査について,事前通知がされておらず本件各賦課決定処分は違法である旨の原告の主張は理由がない。 これに対し,原告は,A税理士が上記電話を途中で切ったなどとして,本件調査担当職員により事前通知がされたとはいえない旨を主張するが,上記認定に反し,およそ採用することができない。 2 本件各賦課決定処分の適法性について原告は,本件調査が行政指導にすぎないとして,本件各修正申告書の提出が, 国税通則法65条5項のその申告に係る国税についての調査があったことによ い。 2 本件各賦課決定処分の適法性について原告は,本件調査が行政指導にすぎないとして,本件各修正申告書の提出が, 国税通則法65条5項のその申告に係る国税についての調査があったことによ り当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときに当たる旨を主張するが,前提事実(2)ウのとおり本件調査は調査の実態を有するものと認められ,原告の主張は採用することができない。そして,前提事実(2)ウ,上記1に加え,証拠(乙1ないし12,15ないし26)及び弁論の全趣旨によれば,原告に課される過少申告加算税及び重加算税は,別紙3「課税処 分の根拠」第3に記載のとおりと認められ,本件各賦課決定処分における過少申告加算税及び重加算税と同額であることが認められる。したがって,本件各賦課決定処分は,適法である。 第4 結論よって,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文の とおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官林俊之 裁判官梶浦義嗣 裁判官高橋心平(別紙1省略)(別紙3省略) (別表1省略) (別表2省略)
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