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口頭弁論終結日平成13年7月19日 主文 1 原告の請求を棄却する。2 訴訟費用は原告の負担とする。事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,5000万円及びこれに対する平成9年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。第2 事案の概要 1 本件は,原告が,被告の履行補助者であるC医師の診療上の過失により両側大腿骨頭壊死になったとして,被告に対し,診療契約上の債務不履行に基づく損害賠償として,1億3854万8872円の内金5000万円の支払を請求する事案である。2 前提事実(争いのない事実及び掲記の証拠と弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者被告は,東邦大学医学部付属D病院(以下「被告D病院」という。)及び同E病院(以下「被告E病院」という。)を開設する学校法人であり,C医師は被告D病院第F内科に所属する医師である(乙12)。(2) 原告に対する診療の経過ア原告は,平成3年11月頃から,食欲不振,全身倦怠感,関節炎及びレイノー現象の症状が出始めた。イそこで,原告は,平成5年1月28日,被告C病院第G内科で受診し,同年2月10日及び同月16日も受診した(乙10,12)。原告は,同月18日,被告D病院第F内科に転院し,同月22日から同年3月2日まで精査目的で同病院に,同日から同月8日まで肝生検目的で被告E病院に,同日から同年5月26日まで被告D病院にそれぞれ入院した(乙7の1,8,9,11,12)。被告D病院入院中は,第F内科所属のH医師が,C医師に連絡,相談しつつ,原告の診療を担当した(乙8,9)。原告は,同年6月1日以降平成8年11月5日まで被告D病院に通院し,C医師の診療を受けた(乙7の1,12)。ウ原告は,平成5年1月28日から平成8年10月31日まで別表記載の年月日 8,9)。原告は,同年6月1日以降平成8年11月5日まで被告D病院に通院し,C医師の診療を受けた(乙7の1,12)。 被告D病院入院中は,第F内科所属のH医師が,C医師に連絡,相談しつつ,原告の診療を担当した(乙8,9)。原告は,同年6月1日以降平成8年11月5日まで被告D病院に通院し,C医師の診療を受けた(乙7の1,12)。ウ原告は,平成5年1月28日から平成8年10月31日まで別表記載の年月日 8,9)。原告は,同年6月1日以降平成8年11月5日まで被告D病院に通院し,C医師の診療を受けた(乙7の1,12)。ウ原告は,平成5年1月28日から平成8年10月31日まで別表記載の年月日に血液生化学検査を受け,原告のGOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ),GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ),ALP(アルカリフォスファターゼ),LDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)及びγ-GTP(γ-グルタミルトランスペプチダーゼ)の各検査値は別表のとおり推移した(乙7の2,8ないし12)。エ C医師は,平成5年3月18日から平成8年10月24日まで,別表のとおり,原告に対し,ステロイド剤(以下,単に「ステロイド」という。)であるプレドニソロン又はリンデロンを処方した(乙7の1,9,12)。オ C医師は,平成8年6月11日から同年10月24日まで,別表のとおり,原告に対し,前記エのステロイドの処方と併用して,ウルソデオキシコール酸(以下「ウルソ」という。)を処方した(乙7の1,12)。(3) 本件における結果の発生原告は,平成8年11月頃,大腿骨頭壊死を発症した(甲1,5,16,乙7の1。以下,この発症の結果を「本件結果」という。)。3 争点(1) C医師の過失(診療上の注意義務違反)の有無(原告の主張)C医師は,原告を原発性胆汁性肝硬変(欧文では「primarybiliarycirrihosis」。以下「PBC」という。)と診断し,基本的にウルソを第一選択とする治療を行うべき注意義務があったにもかかわらず,平成5年2月末頃,これを自己免疫性肝炎(欧文では「autoimmunehepatitis」。以下「AIH」という。)と誤診し,大腿骨頭壊死等種々の副作用が知られているステロイドを平成5年3月18日か 年2月末頃,これを自己免疫性肝炎(欧文では「autoimmunehepatitis」。以下「AIH」という。)と誤診し,大腿骨頭壊死等種々の副作用が知られているステロイドを平成5年3月18日から平成8年10月24日までの長期にわたり漫然と継続投与した過失がある。 munehepatitis」。以下「AIH」という。)と誤診し,大腿骨頭壊死等種々の副作用が知られているステロイドを平成5年3月18日か 年2月末頃,これを自己免疫性肝炎(欧文では「autoimmunehepatitis」。以下「AIH」という。)と誤診し,大腿骨頭壊死等種々の副作用が知られているステロイドを平成5年3月18日から平成8年10月24日までの長期にわたり漫然と継続投与した過失がある。仮にC医師が,平成5年当時,原告の症例(以下,原告が当時り患していた症例を「本件症例」という。)についてAIHとPBCの混合型であると診断し,ステロイドによる治療を開始したとしても,ステロイドには強力な抗炎症作用があり上記のような種々の副作用が知られているから,C医師は,その毒性の発現を最小限にする効果的な最少量でステロイドによる治療を行うとともに,常にウルソの使用を考慮する義務があった。本件症例においては,トランスアミナーゼの値が落ち着いた平成5年8月,遅くとも平成6年中には,ステロイドの効果がないことが明らかとなっているのであるから,C医師は,その時点で,ステロイドによる治療を中止し,ウルソによる治療に変更すべきであった。少なくとも,C医師は,ステロイドが緩解しないと認識した時点でAIHでないのではないかと疑い,診断を再検討し,PBCの診断に重要なAMAなどの再検査をするべき義務があった。(被告の主張)C医師は,原告の臨床症状及び各検査結果から,本件症例について,PBCの病態も併せ持っているが,臨床的にAIHが前面に出ており,AIHとPBCの混合型であると診断したものであり,かつ,これは適切な診断であった。上記症例にはステロイドの適応がある上,実際に原告の肝機能検査値はステロイドの投与により改善していることから,本件症例にステロイドが効果を示したことは明らかである。そして,C医師は,ただ漫然とステロイドの投与を続けていたわけではなく,ステロイドの減量を常に ステロイドの投与により改善していることから,本件症例にステロイドが効果を示したことは明らかである。そして,C医師は,ただ漫然とステロイドの投与を続けていたわけではなく,ステロイドの減量を常に心掛けていたことはその投薬状況から明らかである。C医師は平成5年8月,遅くとも平成6年中にはステロイドを中止すべきであったという原告の主張は,医学的な根拠を欠く誤った主張である。 はなく,ステロイドの減量を常に ステロイドの投与により改善していることから,本件症例にステロイドが効果を示したことは明らかである。そして,C医師は,ただ漫然とステロイドの投与を続けていたわけではなく,ステロイドの減量を常に心掛けていたことはその投薬状況から明らかである。C医師は平成5年8月,遅くとも平成6年中にはステロイドを中止すべきであったという原告の主張は,医学的な根拠を欠く誤った主張である。(2) 損害額(原告の主張)原告は,本件結果の発生により,以下の損害(合計1億3854万8872円)を被った。ア休業損害 1399万7664円原告は家事従事者であるが,平成6年10月から本件結果のため歩行困難となり,平成8年11月頃までに症状固定となった。これを両下肢の用を全廃したものとみて,後遺障害1級での症状固定として100パーセントの労働能力喪失が認められる。原告は大学卒であるから,平成7年賃金センサス女子労働者大卒46歳(45歳ないし49歳)の平均年収648万0400円を基準として計算すると,上記26か月(2.16年を乗ずる。)間の休業損害は上記のとおりとなる。イ後遺症による逸失利益 8308万5856円原告は,前記アのとおり後遺障害1級に該当し,100パーセントの労働能力喪失が認められるから,46歳から67歳までの21年間の逸失利益は,年収を648万0400円とみてライプニッツ方式(ライプニッツ係数12.8211を乗ずる。)で計算すると,上記のとおりとなる。ウ入通院慰謝料 287万円原告は既に入院3か月,通院4年にわたっており,今後も通院が終わることはないが,これまでの入通院分だけでも,それに対する慰謝料は287万円を下らない。エ後遺症慰謝料 2600万円原告が両下肢の用を全廃させられたこ わたっており,今後も通院が終わることはないが,これまでの入通院分だけでも,それに対する慰謝料は287万円を下らない。エ後遺症慰謝料 2600万円原告が両下肢の用を全廃させられたことに対し,その慰謝料は2600万円を下らない。オ弁護士費用 1259万5352円原告は,原告訴訟代理人に対し,弁護士費用として,前記アないしエの合計1億2595万3520円の10パーセントに当たる上記金額を支払う旨約した。(被告の主張)原告の主張を争う。第3 争点に対する判断 1 前記前提事実,証拠(甲1の1ないし1の3,2ないし5,6の1ないし6の4,7,9ないし12,14ないし16,乙1,2,5,6,7の1,7の2,9,10,12,14ないし16,18ないし26,証人C,証人I)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 いしエの合計1億2595万3520円の10パーセントに当たる上記金額を支払う旨約した。(被告の主張)原告の主張を争う。第3 争点に対する判断 1 前記前提事実,証拠(甲1の1ないし1の3,2ないし5,6の1ないし6の4,7,9ないし12,14ないし16,乙1,2,5,6,7の1,7の2,9,10,12,14ないし16,18ないし26,証人C,証人I)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。(1) AIH,PBC及びその混合型についてア AIHについて(ア) AIH(前述のとおり,欧文では「autoimmunehepatitis」)は,中年以降の女性に好発し,慢性に経過する肝炎であり,本来病原微生物を標的とするリンパ球が何らかの原因によって機能異常を来してビリルビンを産生する肝細胞を標的として破壊することによって生じる自己免疫性肝疾患であり,ときに肝硬変に至る疾患である。全身倦怠感,食欲不振を初発症状とし,ときには発熱,関節痛を伴うことがある。AIHは,ルポイド肝炎の延長上にある概念である。B型,C型肝炎ウイルスが発見され,それまで慢性肝炎として同じ疾患の範疇にくくられていた一部AIHが分離し,ルポイド肝炎と合して,今日的なAIHの概念が1990年代に入って確立された。AIHにおいては,無治療群の予後は極めて不良で,海外のある病院での研究によれば,4年追跡で死亡率56 IHが分離し,ルポイド肝炎と合して,今日的なAIHの概念が1990年代に入って確立された。AIHにおいては,無治療群の予後は極めて不良で,海外のある病院での研究によれば,4年追跡で死亡率56パーセント,5年生存率40パーセントという結果が得られたこともあり,我が国の厚生省の難治性肝炎調査研究班のAIH症例314例の追跡調査においても10年間に30例の死亡が確認されている。AIHは,ウイルス性の慢性活動性肝炎に比して肝硬変への進展も早く,予後が不良であるとされる。(イ) AIHの主要所見としては,血中自己抗体特に抗核抗体(欧文では「antinuclearantibody」。以下「ANA」という。)が陽性であること,血清中のγ-グロブリン値又はIgG値の上昇,持続性又は反復性の血清トランスアミナーゼ値の異常等が挙げられる。なお,AIHにおいても,まま胆管病変が合併することがある。(ウ) トランスアミナーゼとは,肝臓に含まれる酵素であり,その主なものとしてGOT(別名アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ。 に抗核抗体(欧文では「antinuclearantibody」。以下「ANA」という。)が陽性であること,血清中のγ-グロブリン値又はIgG値の上昇,持続性又は反復性の血清トランスアミナーゼ値の異常等が挙げられる。なお,AIHにおいても,まま胆管病変が合併することがある。(ウ) トランスアミナーゼとは,肝臓に含まれる酵素であり,その主なものとしてGOT(別名アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ。この別名は欧文では「AST」と略記される。)とGPT(別名アラニンアミノトランスフェラーゼ。この別名は欧文では「ALT」と略記される。)が挙げられる。GOTの正常値は12ないし35IU/L,GPTの正常値は6ないし31IU/Lであり,これらが正常値を超えて上昇することは,肝機能の異常を示すものである。トランスアミナーゼ値が上昇した状態を放置しておくと,肝機能の異常が進み,肝硬変から更に肝不全等致命的な病状に至るリスクがある。(エ) AIHの治療法としては,原則としてプレドニソロン等のステロイドを投与する。その際,プレドニソロンの初期投与量は,充分量(1日30ないし40ミリグラム以上)とし,トランスアミナーゼ値の改善を効果の指 AIHの治療法としては,原則としてプレドニソロン等のステロイドを投与する。その際,プレドニソロンの初期投与量は,充分量(1日30ないし40ミリグラム以上)とし,トランスアミナーゼ値の改善を効果の指標として,減量,維持量を決定する。最初のステロイド投与量が多い場合には,1か月ごとに投与量を減少し,維持量である1日10ミリグラムまで減量するが,これに6ないし8か月は必要である。また,症状の出現がなくても,ときどきトランスアミナーゼ値が上昇する場合には,正常値が得られていたときの投与量に戻す必要もある。一般に,AIHにはステロイドが著効するといわれているが,一方で,短期間の治療では肝組織像の改善が芳しくなく,ステロイド離脱後に再燃して肝硬変に移行しやすいことから,少なくとも数年間は維持量を投与することが望ましいという文献もある。AIHの治療は,年齢の問題,免疫抑制剤による副反応の問題と,期待される治療効果とのバランスで考慮すべきであるとされ,免疫抑制療法により疾患活動性は低下し,生存を延長でき,治療による5年生存率はおおむね85パーセント前後とされる。海外のある病院においてAIHの10年間の長期にわたるプレドニソロンによる治療成績において,治療開始から5年間の生存率に飛躍的向上をもたらしたとの報告がされた例がある。 ある。AIHの治療は,年齢の問題,免疫抑制剤による副反応の問題と,期待される治療効果とのバランスで考慮すべきであるとされ,免疫抑制療法により疾患活動性は低下し,生存を延長でき,治療による5年生存率はおおむね85パーセント前後とされる。海外のある病院においてAIHの10年間の長期にわたるプレドニソロンによる治療成績において,治療開始から5年間の生存率に飛躍的向上をもたらしたとの報告がされた例がある。ところで,近年,AIHの治療法としてウルソも有効であるとの報告がされている。すなわち,平成5年の美馬聰昭ら北海道勤医協中央病院肝臓内科による研究では,AIHの治療において,プレドニソロンの投与に併行してウルソの投与を開始したところトランスアミナーゼ値が正常化した症例が報告され,AIHにおいてウルソがプレドニソロンを補強するものと考えられたと報告された。また,平成7年の中村公英ら旭川医科大学による研究では,AIHの治療において ランスアミナーゼ値が正常化した症例が報告され,AIHにおいてウルソがプレドニソロンを補強するものと考えられたと報告された。また,平成7年の中村公英ら旭川医科大学による研究では,AIHの治療においてウルソの投与によりトランスアミナーゼ値が著明に低下し正常化した症例が報告され,ウルソはAIHの有用な治療薬となり得ることが示唆されたと報告された。もっとも,ウルソによるAIHの治療は副作用の少ない治療法として軽症例を中心に適用を広げているが,肝細胞壊死を反映する指標の完全な正常化が得られない場合にはプレドニソロンを中心とした免疫抑制療法を行うべきだといわれている。イ PBCについて(ア) PBC(前述のとおり,欧文では「primarybiliarycirrhosis」)は,中年以降の女性に好発し,皮膚掻痒感で初発することが多い肝疾患であり,リンパ球がビリルビンの排泄管である胆管の上皮細胞を標的として破壊することによって生じる自己免疫性肝疾患である。臨床的に症状が全く見られない後記の無症候性と,掻痒感,黄疸等を伴う症候性とに分けられる。(イ) PBCの主要所見としては,抗ミトコンドリア抗体(欧文では,「antimitochondrialantibody」。以下「AMA」という。)が高頻度に陽性で高力価を示すこと,血清中のIgMの上昇,血清中のALP等胆道系酵素の異常,肝組織において中等大小葉間胆管ないし隔壁胆管に慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC)又は胆管消失が見られることなどが挙げられる。 ,黄疸等を伴う症候性とに分けられる。(イ) PBCの主要所見としては,抗ミトコンドリア抗体(欧文では,「antimitochondrialantibody」。以下「AMA」という。)が高頻度に陽性で高力価を示すこと,血清中のIgMの上昇,血清中のALP等胆道系酵素の異常,肝組織において中等大小葉間胆管ないし隔壁胆管に慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC)又は胆管消失が見られることなどが挙げられる。PBCにおいては,血清中のトランスアミナーゼ値は,GOTもGPTも初期ではほとんど上昇しない。(ウ) PBCの治療法としては,原則としてウルソを投与する。PBCに対するウルソの有効性については昭和62年に初めて報告されたが,現在では,ウルソがP GOTもGPTも初期ではほとんど上昇しない。(ウ) PBCの治療法としては,原則としてウルソを投与する。PBCに対するウルソの有効性については昭和62年に初めて報告されたが,現在では,ウルソがPBCに対して最も広く用いられている治療薬であり,第1選択薬として確立されている。ところで,従来,PBCに対してはステロイドは禁忌だとされていたが,近年,PBCに対してもプレドニソロンなどのステロイドを投与することで,疲労感,皮膚掻痒感の改善,ALP値等の低下が見られることがわかった。ただし,PBCに対するステロイド療法は,CNSDCが顕著な段階に行い,胆管破壊の抑制を図るべきであるとされている。もっとも,平成12年に発行された「自己免疫性肝疾患」(沖田極外編集)においても,上記の第1選択薬であるウルソも含めて原因療法とは考え難く,内科的治療で生命予後を確実に改善することが確認されている薬剤はないとされている。(エ) PBCには,皮膚掻痒感,黄疸等の肝障害に基づく自覚症状を欠く場合があり,それは無症候性PBCと呼ばれるが,無症候性のまま数年以上経過することがある。無症候性PBCの予後は,症候性PBCに比べ,明らかに良好であるとされており,無症候性PBCは症候性PBCと病態の本質が異なる可能性が強調されている。ウ AIHとPBCの混合型について(ア) AIHとPBCの混合型(欧文では「PBCmixedtype」又は「PBC-AIHoverlapsyndrome」)は,AIHとPBCのそれぞれに特徴的な所見を併せ持つ自己免疫性肝疾患をいう。ただし,AIHとPBCの混合型は,稀な症例であり,その外延については,専門家の間でも意見の一致をみていない。 Cは症候性PBCと病態の本質が異なる可能性が強調されている。ウ AIHとPBCの混合型について(ア) AIHとPBCの混合型(欧文では「PBCmixedtype」又は「PBC-AIHoverlapsyndrome」)は,AIHとPBCのそれぞれに特徴的な所見を併せ持つ自己免疫性肝疾患をいう。ただし,AIHとPBCの混合型は,稀な症例であり,その外延については,専門家の間でも意見の一致をみていない。(イ) 混合型の所見については,①臨床所見としては,掻痒感,黄色腫及び黄疸がいず 。ただし,AIHとPBCの混合型は,稀な症例であり,その外延については,専門家の間でも意見の一致をみていない。(イ) 混合型の所見については,①臨床所見としては,掻痒感,黄色腫及び黄疸がいずれも見られない,②生化学所見としては,ALP及びγ-GTPが中等度から高度上昇,トランスアミナーゼ値が上昇,TC(総コレステロール)及びTB(総ビリルビン)が正常あるいは軽度上昇,γ-グロブリン,IgG及びIgMがともに上昇,③血液学的所見としては,ANA,AMA,M2抗体及びM4抗体がいずれも陽性,④組織学的所見としては,門脈域リンパ球の浸潤,CNSDC,胆管増生,肉芽腫,ピースミール壊死( piecemealnecrosis )等が見られるとされている。(ウ) 混合型の治療法としては,ステロイド,免疫抑制剤,ウルソ等を単独又は併行で投与する。ステロイド療法の有効性については,とりわけ混合型の初期に対してプレドニソロン療法の適応があり,トランスアミナーゼ値等の肝機能検査所見及び自覚症状に著明な改善作用が見られるとされ,ステロイドが混合型の治療に有効であることが承認されている。混合型の治療においてウルソがコルチコステロイドと併用するなどして使用された症例については,外国では平成8年以前に報告があったが,国内では,平成11年の文献があるほか,それ以前にウルソの混合型に対する有効性を述べた文献があったかは定かでない。(2) ステロイド及びウルソについてアステロイドについて(ア) ステロイドは,炎症反応,免疫異常を抑制することにより病態や症状を改善するために使用される,強力な抗炎症作用及び免疫抑制作用を持つ薬である。ステロイドには,プレドニソロン,リンデロン等があるが,リンデロン1ミリグラムは,プレドニソロン約8ミリグラムに相当す ほか,それ以前にウルソの混合型に対する有効性を述べた文献があったかは定かでない。(2) ステロイド及びウルソについてアステロイドについて(ア) ステロイドは,炎症反応,免疫異常を抑制することにより病態や症状を改善するために使用される,強力な抗炎症作用及び免疫抑制作用を持つ薬である。ステロイドには,プレドニソロン,リンデロン等があるが,リンデロン1ミリグラムは,プレドニソロン約8ミリグラムに相当す を改善するために使用される,強力な抗炎症作用及び免疫抑制作用を持つ薬である。ステロイドには,プレドニソロン,リンデロン等があるが,リンデロン1ミリグラムは,プレドニソロン約8ミリグラムに相当するとされる。(イ) 一般的に,AIHのような自己免疫性肝疾患においてトランスアミナーゼ値の上昇に対応するには,ステロイドが効果的であるとされており,ステロイドは,AIHの治療において第1選択薬として用いられるほか,AIHとPBCの混合型の治療においても用いられる(前記(1)ア(エ),ウ(ウ)参照)。さらに,ステロイドは,PBCの治療においても用いられることがある(前記(1)イ(ウ)参照)。(ウ) ステロイドの投与期間は,AIHの治療においては,2年から数年となることがある。混合型におけるステロイド投与期間については,混合型が稀な症例であるため,それほど明確にされてはいないが,症例によっては2,3年を超える長期にわたりステロイドを使わざるを得ない場合もあり得る。いずれにせよ,ステロイドの投与期間が長期になっても,トランスアミナーゼ値の上昇があれば,ステロイド投与をせざるを得ないとされる。(エ) ステロイドには非常に多くの副作用がある。ステロイドは免疫反応を抑制するため,非常に感染に弱くなるということが大きな副作用として挙げられるし,白内障,緑内障,精神障害といった副作用があるほか,非常に重大な副作用として大腿骨頭壊死がある。そして,長期にわたるステロイド治療の最も悲惨な副作用として骨粗鬆症がある。ステロイドの毒性には容量依存性があり,ステロイドの投与量と大腿骨頭壊死の発症可能性との間には相関関係が認められる。ただし,平成8年9月に発行された「自己免疫性肝疾患」(大久保昭行外編)においても,現在のところこれらの副作用がどの患者に起こる の投与量と大腿骨頭壊死の発症可能性との間には相関関係が認められる。 腿骨頭壊死がある。そして,長期にわたるステロイド治療の最も悲惨な副作用として骨粗鬆症がある。ステロイドの毒性には容量依存性があり,ステロイドの投与量と大腿骨頭壊死の発症可能性との間には相関関係が認められる。ただし,平成8年9月に発行された「自己免疫性肝疾患」(大久保昭行外編)においても,現在のところこれらの副作用がどの患者に起こる の投与量と大腿骨頭壊死の発症可能性との間には相関関係が認められる。ただし,平成8年9月に発行された「自己免疫性肝疾患」(大久保昭行外編)においても,現在のところこれらの副作用がどの患者に起こるかを予測することはできないとされている。ステロイドによる大腿骨頭壊死の発生機序は不明であり,投与開始後数週間で発生した事例も報告されており,投与量を減らす以外の対処方法は見当たらないとされる。(オ) C医師も,本件症例の治療当時,ステロイドが大腿骨頭壊死等の副作用を持つことを認識し,原告のトランスアミナーゼ値が減少した際には,ステロイドの投与量を減少させていた。イウルソについて(ア) ウルソは,クマの胆汁中に多量に含まれている胆汁酸であり,かつては胆石の治療として用いられてきた。(イ) ウルソは,昭和62年にPBCに有効であることが報告され,現在では,PBCに対する第1選択薬として確立されている(前記(1)イ(ウ)参照)。また,ウルソは,AIHとPBCの混合型の治療において,コルチコステロイドと併用されるなどして使用されることがあるほか,近年,AIHの治療法としても有効であるとの報告がされている(前記(1)ア(エ),ウ(ウ)参照)。なお,C医師は,平成7年頃に文献として出たウルソのAIHに対する有効性を示すいくつかの研究報告を平成8年3月頃に読み,ウルソがAIHに有効であることを知った。(ウ) ウルソは,副作用の少ない安全な薬である。(3) 大腿骨頭壊死について大腿骨頭壊死は,大腿骨近位骨端部の虚血性壊死である。その病因は単一でなく様々であり,大腿骨頸部骨折,外傷性股関節脱臼,アルコール多飲者,ステロイド長期服用者,腎移植,SLE(全身性エリセマトーデス),潜函病その他の疾病に付随して大腿骨頭壊死が見られる。ステロ でなく様々であり,大腿骨頸部骨折,外傷性股関節脱臼,アルコール多飲者,ステロイド長期服用者,腎移植,SLE(全身性エリセマトーデス),潜函病その他の疾病に付随して大腿骨頭壊死が見られる。 ある。その病因は単一でなく様々であり,大腿骨頸部骨折,外傷性股関節脱臼,アルコール多飲者,ステロイド長期服用者,腎移植,SLE(全身性エリセマトーデス),潜函病その他の疾病に付随して大腿骨頭壊死が見られる。ステロ でなく様々であり,大腿骨頸部骨折,外傷性股関節脱臼,アルコール多飲者,ステロイド長期服用者,腎移植,SLE(全身性エリセマトーデス),潜函病その他の疾病に付随して大腿骨頭壊死が見られる。ステロイドによる大腿骨頭壊死は,急激に発症増悪する場合がある。(4) 本件症例の検査及び所見ア本件症例の所見本件症例の臨床所見としては,倦怠感,レイノー現象等があったが,掻痒感,黄疸はいずれも認められなかった。なお,原告に黄色腫があったことを示唆する証拠は全くなく,黄色腫もなかったと推認される。生化学所見としては,平成5年1月28日の検査において,GOT(正常値12ないし35IU/L)が96IU/L,GPT(正常値6ないし31IU/L)が145IU/L,ALP(正常値65ないし216IU/L)が543IU/L,LDH(正常値216ないし383IU/L)が368IU/L,γ-GTP(正常値5ないし33IU/L)が184IU/L,TC(総コレステロール。正常値120ないし230mg/dl)が192mg/dl,TB(総ビリルビン。正常値0.1ないし1.0mg/dl)が0.4mg/dl,γ-グロブリン(正常値10.7ないし21.2%)が30.2%,IgG(正常値703ないし1540mg/dl)が2758mg/dl,IgM(正常値60ないし219mg/dl)が208mg/dlであった。血液学的所見としては,同年1月28日の検査において,ANA(正常値40倍未満)が1280倍で陽性,同年3月18日の検査において,AMA(正常値20倍未満)が80倍で陽性であった。組織学的所見としては,同年3月の肝生検を伴う病理検査において,門脈域のリンパ球主体の炎症細胞浸潤とピースミール壊死,グリソン鞘のプラズマ細胞の目立つ炎症細胞浸潤とピースミール壊死,胆管上皮 た。組織学的所見としては,同年3月の肝生検を伴う病理検査において,門脈域のリンパ球主体の炎症細胞浸潤とピースミール壊死,グリソン鞘のプラズマ細胞の目立つ炎症細胞浸潤とピースミール壊死,胆管上皮の変性,小葉間胆管の破壊等が見られた。イ AMAの検査被告は,本件症例について,AMAの検査を平成5年3月2日と平成8年4月2日の2回しか行わなかった。 マ細胞の目立つ炎症細胞浸潤とピースミール壊死,胆管上皮 た。組織学的所見としては,同年3月の肝生検を伴う病理検査において,門脈域のリンパ球主体の炎症細胞浸潤とピースミール壊死,グリソン鞘のプラズマ細胞の目立つ炎症細胞浸潤とピースミール壊死,胆管上皮の変性,小葉間胆管の破壊等が見られた。イ AMAの検査被告は,本件症例について,AMAの検査を平成5年3月2日と平成8年4月2日の2回しか行わなかった。原告のAMAは,平成5年3月2日の検査においては,80倍で陽性,平成8年4月2日の検査においては,320倍で陽性であった。(5) C医師らによる診断ア J医師は,平成5年5月26日,原告が被告D病院を退院する際の最終診断名として,診療録に「自己免疫性肝炎」と記載し,同年6月29日,原告の「入院証明書(診断書)」において,「入院の原因となった傷病名」の爛に「自己免疫性肝炎」と記載した。イ C医師は,平成5年10月21日,眼科宛の「依頼表」に「Autoimmunehepatitis(AIH)の Pt(患者)です。」と記載した。ウ C医師は,平成6年2月22日及び平成7年2月21日,東京都衛生局宛の「難病治療患者診断書」(64個又は65個列挙された診断名の中から,該当する診断名の番号に印を付けた上,それが確診である場合には当該診断名の「確実」の欄に印を付け,疑診である場合には当該診断名の「疑い」の爛に印を付ける形になっている。)において,それぞれ,「慢性肝炎」の欄の番号にマル印を付けた上,その「確実」の欄にマル印を付けたが,「原発性胆汁性肝硬変」の欄の番号やその「確実」欄及び「疑い」欄には何も印を付けなかった。エ C医師は,平成7年8月29日,慶応病院宛の「紹介状・診療情報提供書」に,「肝生検等にて,autoimunohepatitis(AIH)と診断」と記載した。オ C医師は,平 印を付けなかった。エ C医師は,平成7年8月29日,慶応病院宛の「紹介状・診療情報提供書」に,「肝生検等にて,autoimunohepatitis(AIH)と診断」と記載した。オ C医師は,平成8年1月23日,「難病治療患者診断書」に,前記ウと同様の記入をした。カ C医師は,平成8年11月,整形外科宛の「依頼表」に前記イと同様の記載をした。(6) C医師による治療アステロイドの単独投与(ア) C医師は,平成5年3月18日,原告に対し,プレドニソロン1日30ミリグラムの投与を開始し,同月31日から投与量を1日40ミリグラムに増量した。 itis(AIH)と診断」と記載した。オ C医師は,平成8年1月23日,「難病治療患者診断書」に,前記ウと同様の記入をした。カ C医師は,平成8年11月,整形外科宛の「依頼表」に前記イと同様の記載をした。(6) C医師による治療アステロイドの単独投与(ア) C医師は,平成5年3月18日,原告に対し,プレドニソロン1日30ミリグラムの投与を開始し,同月31日から投与量を1日40ミリグラムに増量した。この投与により,原告のALP値は急速に改善し,同年4月30日には211IU/Lとなり,正常化した。なお,原告のALP値は,この時期から平成6年9月頃まで,ほぼ正常値を維持して推移している。一方で,原告のトランスアミナーゼ値は,平成5年1月28日にはGOTが96IU/L,GPTが145IU/L,同年3月18日にはGOTが64IU/L,GPTが96IU/Lであったところ,ステロイド投与開始約1か月後の同年4月19日にはGOTが54IU/Lとなったが,GPTは223IU/Lとなり,なおも高値が遍延した。そこで,C医師は,同年4月20日,ステロイドをリンデロン1日5ミリグラムに変更し,リンデロンの投与を減量を図りつつ続けたところ,トランスアミナーゼ値も徐々に改善し,同年8月31日にはGOTが26IU/L,GPTが42IU/Lとなった。(イ) その後,C医師は,リンデロンを減量して経過を見ていたが,平成6年2月22日,トランスアミナーゼ値がGOT(直前の同年2月8日の30IU/Lから)60IU/L,GPT(同年2月8日の57IU/Lから)142IU/Lと上昇した。この頃,リンデロンが1日交替で1 年2月22日,トランスアミナーゼ値がGOT(直前の同年2月8日の30IU/Lから)60IU/L,GPT(同年2月8日の57IU/Lから)142IU/Lと上昇した。この頃,リンデロンが1日交替で1.5ミリグラムと1.25ミリグラムずつ投与されていた。そこで,C医師は,同年3月8日,ステロイドをプレドニソロン1日11ミリグラムに変更したところ,同月22日にはGOTが27IU/L,GPTが40IU/Lとなった。(ウ) その後,C医師は,プレドニソロンを減量して経過を見ていたが,平成6年9月27日,トランスアミナーゼ値がGOT(直前の同年9月13日の48IU/Lから)110IU/L,GPT(同年9月13日の56IU/Lから)129IU/Lと上昇した。 こで,C医師は,同年3月8日,ステロイドをプレドニソロン1日11ミリグラムに変更したところ,同月22日にはGOTが27IU/L,GPTが40IU/Lとなった。(ウ) その後,C医師は,プレドニソロンを減量して経過を見ていたが,平成6年9月27日,トランスアミナーゼ値がGOT(直前の同年9月13日の48IU/Lから)110IU/L,GPT(同年9月13日の56IU/Lから)129IU/Lと上昇した。そこで,C医師は,同年10月11日,当時1日5ミリグラムとしていたプレドニソロンを1日10ミリグラムに増量するとともに,強力ミノファーゲンCの静注も開始したところ,約1か月後の同年11月8日にはGOTが35IU/L,GPTが70IU/Lとなった。(エ) その後,C医師は,平成6年12月13日,プレドニソロンを1日9ミリグラムに減量したが,同月20日,GPTが(直前の同月13日の78IU/Lから)105IU/Lと上昇したので,同月27日,プレドニソロンを1日10ミリグラムに増量したところ,約1か月後の平成7年1月24日にはGOTが26IU/L,GPTが38IU/Lとなった。(オ) その後,C医師は,プレドニソロンを減量して経過を見ていたが,平成7年11月28日,トランスアミナーゼ値がASTすなわちGOT(直前の同月14日の57IU/Lから)79IU/L,ALTすなわちGPT(同月14日の90IU/Lから)137IU/Lと上昇したので,当時1日6ミリグラムとしていたプレドニソロンを1日8 ちGOT(直前の同月14日の57IU/Lから)79IU/L,ALTすなわちGPT(同月14日の90IU/Lから)137IU/Lと上昇したので,当時1日6ミリグラムとしていたプレドニソロンを1日8ミリグラムに増量したところ,同年12月12日にはGOTが42IU/L,GPTが77IU/Lとなった。イステロイドとウルソの併行投与C医師は,平成8年3月頃,ウルソのAIHに対する有効性を示す研究報告を読んだこと(前記(2)イ(イ)参照),同年4月2日,原告のAMAが検査の結果320倍であったことから,ウルソによりAIHの病態を改善するとともにPBCの病態も改善しようと考え,同年6月11日,原告に対し,ウルソの投与をステロイドの投与と併行して開始した。このウルソの併行投与により,原告のトランスアミナーゼ値及びALP値が改善し,同年9月3日にはGOTが22IU/L,GPTが25IU/L,ALPが229IU/Lとなった。 イ(イ)参照),同年4月2日,原告のAMAが検査の結果320倍であったことから,ウルソによりAIHの病態を改善するとともにPBCの病態も改善しようと考え,同年6月11日,原告に対し,ウルソの投与をステロイドの投与と併行して開始した。このウルソの併行投与により,原告のトランスアミナーゼ値及びALP値が改善し,同年9月3日にはGOTが22IU/L,GPTが25IU/L,ALPが229IU/Lとなった。(7) 慈恵医大病院における診療原告は,平成8年6月頃から,C医師に誤診されたとの疑いを持つようになり,同年10月22日,倦怠感を訴えて,東京慈恵会医科大学付属病院(以下「慈恵医大病院」という。)第一内科で受診し,被告E病院においてAIHとPBCであると診断されていると告げた。同内科担当医師のKは,原告に対し,PBCに対してウルソを,AIHに対してステロイドをそれぞれ投与して治療を開始した。そして,K医師は,原告に対するステロイドの投与量を徐々に減量していき,平成9年4月8日からは,ステロイドの投与を完全に打ち切り,以後,ウルソを単独で投与するようになった。K医師の治療により,原告のトランスアミナーゼ値は全般には改善,正常化し,同年5月にはGOTが37IU/L,GPTが40IU/L,同年9月にはGOTが24IU/ ルソを単独で投与するようになった。K医師の治療により,原告のトランスアミナーゼ値は全般には改善,正常化し,同年5月にはGOTが37IU/L,GPTが40IU/L,同年9月にはGOTが24IU/L,GPTが23IU/L,平成10年1月にはGOTが25IU/L,GPTが20IU/L,同年6月にはGOTが23IU/L,GPTが19IU/Lとなった。ただし,本件症例に係る原告の疾患は未だ完治はしておらず,原告は,現在においても1か月に一度程度の割合で慈恵医大病院に通院し,K医師のウルソによる治療を受けている。(8) 本件結果の発生ア原告は,平成8年10月9日,大腿部にねじれるような痛みを感じた。イ原告は,平成8年10月24日の受診時,C医師に対し,前記アの右股関節部の疼痛出現を訴え,C医師は,それを受けて股関節部MRI検査を施行したところ,無菌性骨壊死症の像が認められたため,同年11月5日,整形外科に診察依頼をした。被告D病院整形外科の医師は,同月7日,原告を右大腿骨頭壊死と診断した。 療を受けている。(8) 本件結果の発生ア原告は,平成8年10月9日,大腿部にねじれるような痛みを感じた。イ原告は,平成8年10月24日の受診時,C医師に対し,前記アの右股関節部の疼痛出現を訴え,C医師は,それを受けて股関節部MRI検査を施行したところ,無菌性骨壊死症の像が認められたため,同年11月5日,整形外科に診察依頼をした。被告D病院整形外科の医師は,同月7日,原告を右大腿骨頭壊死と診断した。ウ慈恵医大病院整形外科の医師作成の平成9年3月28日付診断書には,原告の病名について「右大腿骨頭無腐性壊死」と記載された上,「ステロイド剤投与歴があり,その経過から,本症の発症にはステロイド剤の投与が原因となったことが疑われる。」との記載がある。2 C医師の過失(診療上の注意義務違反)の有無(争点(1))について(1) 前記前提事実(2)エ,前記1(2)ア(エ),(3),(8)に認定の事実を総合すれば,本件結果は,C医師による平成5年3月18日から平成8年10月24日までの期間にわたるステロイドの継続投与が原因となって発生したことが明らかである。そこで,本件結果を発生させたステロイドの継続投与が診療上の注意義務違反に当たるかが問題となる。言 8年10月24日までの期間にわたるステロイドの継続投与が原因となって発生したことが明らかである。そこで,本件結果を発生させたステロイドの継続投与が診療上の注意義務違反に当たるかが問題となる。言い換えれば,平成8年10月24日より前の特定の時期(原告の主張によれば,平成5年8月,遅くとも平成6年中)にステロイドの投与を打ち切るべき注意義務(以下「ステロイド打切義務」という。)がC医師に生じたか否かが,本件においてC医師の過失を決定する上で第一義的に重要な問題である。そして,上記のステロイド打切義務を肯定するには,そこに本件結果を回避し得る可能性が認められることを要するのはもちろんのことであるが,本件においては,ステロイドには治療上の効果が認められたのであるから,その効果とその副作用のおそれとを総合的に考慮して,医師がステロイド投与を継続したことが医療水準からみて相当性を欠いたかどうかという点を吟味し,これが肯定されることを要すると解すべきである。以下,これらの点に留意して,C医師のステロイド打切義務の肯否につき検討する。(2) 前記前提事実(2)ウ,前記1の(1)アの(イ)ないし(エ),(2)アの(ア)ないし(オ),(4)ア,(7)に認定の事実によれば,本件症例においては,正常値が40倍未満であるべきANAが1280倍という高値であったこと,γ-グロブリン,IgG及びトランスアミナーゼについても正常値より相当高い検査値が得られたこと,それらの所見から本件症例にはAIHの病態が存するといえること,トランスアミナーゼの高値は,平成5年3月以前から平成8年10月頃まで頻繁に見られたこと,一般に,トランスアミナーゼ値が高い状態を放置しておけば,肝機能の異常が進み,肝硬変等の重篤な病状に至る具体的かつ重大なリスクがあること,現に,本 ったこと,γ-グロブリン,IgG及びトランスアミナーゼについても正常値より相当高い検査値が得られたこと,それらの所見から本件症例にはAIHの病態が存するといえること,トランスアミナーゼの高値は,平成5年3月以前から平成8年10月頃まで頻繁に見られたこと,一般に,トランスアミナーゼ値が高い状態を放置しておけば,肝機能の異常が進み,肝硬変等の重篤な病状に至る具体的かつ重大なリスクがあること,現に,本 月以前から平成8年10月頃まで頻繁に見られたこと,一般に,トランスアミナーゼ値が高い状態を放置しておけば,肝機能の異常が進み,肝硬変等の重篤な病状に至る具体的かつ重大なリスクがあること,現に,本件症例については,平成8年10月頃はもちろん現在に至っても,原告は完治しておらず,なお治療の必要性が失われていないこと,一般的に,AIHのような自己免疫性肝疾患においてトランスアミナーゼの高値に対応するには,ステロイドが効果的であり,ステロイドの対症療法としての薬効は,相当顕著であるとされていること,ステロイドには,多くの副作用があることが知られているが他方で,どのような場合に副作用が生じるかは予測不能であり,AIHの治療においては,短期間の治療ではステロイド離脱後に再燃して肝硬変に移行しやすいことから,少なくとも数年間は維持量を投与することが望ましいとする見解もあることが明らかである。また,前記1(6)アに認定の事実に着目しつつ,トランスアミナーゼ値とステロイド処方量の推移(前記前提事実(2)ウ,エ,別表)を観察すると,C医師のステロイド投与により原告のトランスアミナーゼ値が低下したこと,C医師がトランスアミナーゼ値の上昇に対応してステロイドを増量すると,トランスアミナーゼ値が下がるという関係があったことが認められ,これらの点からすれば,本件症例にステロイドが効いていたことが認められる。そうすると,確かにステロイドの投与には大腿骨頭壊死等の副作用が生じるリスクがあるものの,一方で,本件症例においてトランスアミナーゼの高値を放置しておけば肝硬変等の重症に移行する具体的で重大なリスクがある以上,対症療法として薬効が期待されるステロイドの投与によりトランスアミナーゼ値の改善を図る必要性が継続する限り,ステロイドの投与がある程度長期にわたったとし 重症に移行する具体的で重大なリスクがある以上,対症療法として薬効が期待されるステロイドの投与によりトランスアミナーゼ値の改善を図る必要性が継続する限り,ステロイドの投与がある程度長期にわたったとしても,それ自体直ちに不相当とすることはできないというべきであり,かつ,本件では平成8年10月頃までステロイドの投与によりトランスアミナーゼ値の改善を図る必要性が継続していたと認めるべきであるから,C医師のステロイド継続投与は不相当ではなかったというべきである。 して薬効が期待されるステロイドの投与によりトランスアミナーゼ値の改善を図る必要性が継続する限り,ステロイドの投与がある程度長期にわたったとしても,それ自体直ちに不相当とすることはできないというべきであり,かつ,本件では平成8年10月頃までステロイドの投与によりトランスアミナーゼ値の改善を図る必要性が継続していたと認めるべきであるから,C医師のステロイド継続投与は不相当ではなかったというべきである。(3)アこれに対し,原告は,C医師としては,トランスアミナーゼ値が落ち着いた時期である平成5年8月,遅くとも平成6年中にステロイドの投与を打ち切るべきであった旨主張し,証人Iも同旨の意見を述べる(甲13,証人I)。しかしながら,トランスアミナーゼ値が落ち着いた(一定値以下になった)からといって,直ちにステロイドを打ち切るべきであったとまではいえない。なぜならば,そこで直ちにステロイドを打ち切ると,トランスアミナーゼ値の上昇が再燃する具体的なおそれが否定できず,現にたびたびステロイドを減量するとトランスアミナーゼ値の上昇が再燃した経過があったことに照らせば,すぐにはステロイドを打ち切らず徐々に減量するという対処の仕方を維持することにも一定の合理性が認められるからである。イまた,証人Iは,ウルソはPBCの治療薬として確立されているばかりでなく,トランスアミナーゼ値の上昇に対しても効果があるので,治療薬としてウルソをまず選択し,それで効果が十分でなければステロイドを一時的に使用するという選択も考えられた旨,あるいは,ステロイドで治療を開始しても,常にウルソの使用を考え,途中でウルソに切り替える試みがされてもよかった旨の意見を述べる(甲12)。確かに,副作用の少ないウルソがトランス も考えられた旨,あるいは,ステロイドで治療を開始しても,常にウルソの使用を考え,途中でウルソに切り替える試みがされてもよかった旨の意見を述べる(甲12)。確かに,副作用の少ないウルソがトランスアミナーゼ値を正常化させる効果を持つことが判明したのであるから(前記1(1)ア(エ)等参照),C医師としては,その時点でステロイドの投与を打ち切り,ウルソの投与に切り替える選択肢があったのではないかという疑問もあり得る。しかしながら,前記認定事実,殊に前記1の(1)のア及びウ,(2)のア及びイ,(3),(6)のイ,(7),(8)のア及びイの各事実によれば,AIH又はAIHとPBCの混合型の治療にウルソが投与される場面では,何らかの形でステロイドと併用することが予定されており,ステロイドとの併用を排除してウルソを単独で投与することがトランスアミナーゼ値の上昇というAIHの病態に対する対症療法として確立されていたとまではいえないこと,本件症例には現にステロイドが効いていたとみられること,後記認定説示のとおり,本件症例はAIHとPBCの混合型であると判断されること,C医師がウルソのAIH(トランスアミナーゼ値の上昇)に対する有効性を知ったのは平成8年3月頃のことであること,原告は平成8年10月頃大腿骨頭壊死の自覚症状を呈したのであるが,C医師はそれよりかなり前の同年6月11日からウルソの併行投与を行ったこと,K医師の治療においても,ステロイド投与の有効性が認められ,減量されつつも,平成9年4月に至るまではステロイドが投与され続けていたことが明らかであり,これらの諸点に照らせば,C医師がステロイドの投与を打ち切りウルソのみの投与に切り替えなかったことをとらえて,不相当であるとまでいうことはできない。 死の自覚症状を呈したのであるが,C医師はそれよりかなり前の同年6月11日からウルソの併行投与を行ったこと,K医師の治療においても,ステロイド投与の有効性が認められ,減量されつつも,平成9年4月に至るまではステロイドが投与され続けていたことが明らかであり,これらの諸点に照らせば,C医師がステロイドの投与を打ち切りウルソのみの投与に切り替えなかったことをとらえて,不相当であるとまでいうことはできない。ウさらに,証人Iは,本件の3年数か月というステ これらの諸点に照らせば,C医師がステロイドの投与を打ち切りウルソのみの投与に切り替えなかったことをとらえて,不相当であるとまでいうことはできない。ウさらに,証人Iは,本件の3年数か月というステロイドの単独投与期間はあまりにも長すぎた旨の意見を述べる(甲12)。しかしながら,前記1の(1)ア(ア)及び(エ),(2)ア(ウ)に認定の事実によれば,AIHを放置することは極めて危険であり,AIHの治療においてステロイドの投与期間が2年から数年となることがあり得ること,混合型の治療においてもステロイドの投与期間が2,3年を超える長期となることがあり得ること,ステロイドの投与期間が長期になっても,トランスアミナーゼ値の上昇があればステロイド投与をせざるを得ないことが明らかにされている(なお,これらの事実は,証人I自身が,その証人尋問において証言している。)。したがって,ステロイドの投与期間が3年数か月にわたったこと自体を直ちに不相当とすることはできないし,本件症例において頻繁にトランスアミナーゼ値の上昇が認められる以上は,ステロイドの投与期間が長くなっても,ステロイドを打ち切るべきであったということはできない。(4) 以上,(2),(3)に検討したところによれば,C医師がステロイド投与を打ち切らなかったことが不相当であったということはできず,同医師にステロイド打切義務があったことを肯定することはできない。したがって,平成5年3月18日から平成8年10月24日までの期間にわたるC医師のステロイド継続投与は,診療上の注意義務違反に当たらない。なお,原告は,ステロイドには強力な抗炎症作用があり種々の副作用が知られているのであるから,C医師は,その毒性の発現を最小限にする効果的な最少量でステロイドによる治療を行うべき義務があったとも主張する お,原告は,ステロイドには強力な抗炎症作用があり種々の副作用が知られているのであるから,C医師は,その毒性の発現を最小限にする効果的な最少量でステロイドによる治療を行うべき義務があったとも主張するが,この点については,前記前提事実(2)エ,前記1(6)アに認定の事実及び証拠(証人C)によれば,C医師は,ステロイドの処方量をその必要性に応じて適宜減量していることが認められるから,上記の点での注意義務違反は認められない。 ドには強力な抗炎症作用があり種々の副作用が知られているのであるから,C医師は,その毒性の発現を最小限にする効果的な最少量でステロイドによる治療を行うべき義務があったとも主張するが,この点については,前記前提事実(2)エ,前記1(6)アに認定の事実及び証拠(証人C)によれば,C医師は,ステロイドの処方量をその必要性に応じて適宜減量していることが認められるから,上記の点での注意義務違反は認められない。(5) ところで,原告は,本件症例はPBCであったのであり,その第一選択はウルソであるから,C医師は原告をPBCと診断した上,基本的にウルソによる治療を行うべき注意義務があった旨主張し,K医師及び証人Iも同旨の意見を述べる(甲8,12,13,証人I)。しかしながら,前記1(1)ア(イ),(4)アに認定の事実と乙第26号証によれば,本件症例において,原告には,皮膚の掻痒感,黄色腫,黄疸なく,ANA陽性かつ高値,IgG高値,トランスアミナーゼ高値等の所見がそろっており,単純なPBCというだけで原告の症例を説明することは難しく,AIHの病態を持つことは明らかであり,むしろ前記1(1)ウ,(3)に認定の事実と甲第9号証,乙第26号証に照らせば,本件症例は,その臨床所見,生化学所見,血液学的所見,組織学的所見から,客観的にはほぼAIHとPBCの混合型であると判断されるべきものといい得る。したがって,原告の上記主張は,その前提において失当である。また,本件症例に「AIHとPBCの混合型」という診断名を付するのが適当かはしばらく措くとしても,結局のところ,前述のとおり,本件においては,トランスアミナーゼの上昇を初めとするAIHの病態があり,それに対しステロイドにより対処したことに必要性及び相当性が認められることは否めないのであるか も,結局のところ,前述のとおり,本件においては,トランスアミナーゼの上昇を初めとするAIHの病態があり,それに対しステロイドにより対処したことに必要性及び相当性が認められることは否めないのであるから,いずれにしても,C医師がウルソでなくステロイドを用いたことに過失があるということはできない。(6) また,原告は,C医師が本件症例をAIHと誤診した旨主張する。確かに,前記1(7)の事実を除けば,前記1(5)イないしカの事実が認められる一方,C医師が本件症例について混合型と診断した旨記載された診療録等の客観的証拠が全くないことからすれば,C医師は原告の診療中に本件症例をAIHとPBCの混合型(同医師は,乙第12,第13号証及び証人尋問においてそのように診断したと供述する。 ことはできない。(6) また,原告は,C医師が本件症例をAIHと誤診した旨主張する。確かに,前記1(7)の事実を除けば,前記1(5)イないしカの事実が認められる一方,C医師が本件症例について混合型と診断した旨記載された診療録等の客観的証拠が全くないことからすれば,C医師は原告の診療中に本件症例をAIHとPBCの混合型(同医師は,乙第12,第13号証及び証人尋問においてそのように診断したと供述する。)と診断していたのではなく,単なるAIHと誤診していた時期がある疑いが持たれる。しかしながら,その誤診という過誤がない場合を想定してみても,それだけでは,ステロイドの打切を伴わない限り,本件結果は回避できないといわざるを得ない(つまり,正しい診断をしても,ステロイドを打ち切らなければ本件結果は発生するし,誤った診断をしても,ステロイドを打ち切れば本件結果は発生しない。)。この点で,原告主張の誤診の事実それ自体は,本件結果発生との因果関係を欠き,原告主張の損害との関係では独立の過失として評価することができない。さらに,原告は,C医師が仮にAIHと当初診断したとしても,ステロイドが緩解しないと認識した時点で,PBCの診断に重要なAMAなどの再検査を行う義務があった旨主張し,前記認定のとおり,C医師は,平成5年3月2日にAMAの検査を行って以降,平成8年4月2日に至るまで同検査を一切行わなかったことが明らかにされている(前記1(4)イ参照)。しかしながら,上記のA 前記認定のとおり,C医師は,平成5年3月2日にAMAの検査を行って以降,平成8年4月2日に至るまで同検査を一切行わなかったことが明らかにされている(前記1(4)イ参照)。しかしながら,上記のAMAの検査不足という点も,誤診の過誤の問題と同様に,本件結果の回避義務には直接結び付かず,本件における独立の過失を構成しないと解するほかない。そして,前述のとおり,トランスアミナーゼ値の上昇が見られ,肝硬変等の具体的リスクがある以上は,誤診,AMAの検査不足の有無にかかわらず,ステロイド打切義務は否定されるのであるから,本件損害との関係でC医師の過失を根拠付けることができない。(7) 以上によれば,本件において,C医師に診療上の注意義務違反を認めることはできない。3 結論よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 られ,肝硬変等の具体的リスクがある以上は,誤診,AMAの検査不足の有無にかかわらず,ステロイド打切義務は否定されるのであるから,本件損害との関係でC医師の過失を根拠付けることができない。(7) 以上によれば,本件において,C医師に診療上の注意義務違反を認めることはできない。3 結論よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第16部裁判長裁判官成田喜達裁判官髙宮健二裁判官笹本哲朗
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