平成23年6月17日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年(ワ)第15903号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成23年3月24日判決 主文 東京都西東京市<以下略>原告シチズン・システムズ株式会社 訴訟代理人弁護士上谷清 同永井紀昭 同仁田陸郎 同萩尾保繁 同山口健司 同薄葉健司 同石神恒太郎 同瀧村美和子 訴訟代理人弁理士宮島明 補佐人弁理士水野みな子 同川崎典子 東京都台東区<以下略>被告株式会社ジョイナス 訴訟代理人弁護士 東京都台東区<以下略>被告株式会社ジョイナス 訴訟代理人弁護士岡田泰亮 補佐人弁理士藤沢則昭 主文 1 被告は,原告に対し,90万6025円及びこれに対する平成22年5月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その1を原告の負担とし,その余は- 2 -被告の負担とする。 4 この判決の第1項は,仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,100万円及びこれに対する平成22年5月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,別紙被告商品目録記載のデジタル歩数計(以下「被告商品」という。)は,原告の販売する別紙原告商品目録記載のデジタル歩数計(以下「原告商品」という。)の形態を模倣したものであり,被告による被告商品の輸入,販売が,不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当する旨主張し,被告に対し,同法4条に基づく損害賠償及び遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 争いのない事実等(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実である。)(1) 当事者ア原告は,各種医療用機器及びその部分品,付属品の製造,販売,賃貸及び輸出入,各種健康用機械器具及びその部分品,付属品の製造,販売等目的とする株式会社 認められる事実である。)(1) 当事者ア原告は,各種医療用機器及びその部分品,付属品の製造,販売,賃貸及び輸出入,各種健康用機械器具及びその部分品,付属品の製造,販売等目的とする株式会社である。 イ被告は,玩具,スポーツ用品及び日用品雑貨の販売,医療器具の輸入販売等を目的とする株式会社である。 (2) 原告商品ア原告は,平成20年3月6日から,商品名を「peb(ペブ)TW600」とする,ポケットに入れて使用することを主目的としたデジタル歩数計を販売している。 「peb(ペブ)TW600」には,外装の色の違いによって6種類(レ- 3 -ッド,ピンク,ブルー,シルバー,ブラック,ホワイト)あり,原告商品は,色がブラックのものである。 イ原告商品(検甲1)の形態は,別紙原告商品目録記載の写真のとおりであり,次のような構成を有する(以下,各構成を「Aの形態」,「Bの形態」などと表記する場合がある。)A 全体を四隅が丸い薄厚長方板状ケースにしたデザインで,サイズは約73㎜(幅)×約31㎜(高さ)×約10㎜(厚さ)である。 B ケースの周全体にR(丸み)を持たせている。 C 外装の上側(上ケース)は,製品内側面を黒色印刷した透明のプラスチック素材を用い,外装の下側(下ケース)は,黒色のプラスチック素材を用いている。 D 厚みとなる四周側面全周をシルバーのベルトが回り,四隅の一つにストラップ挿入孔が形成されている。 E 正面左方に,約32㎜(幅)×約18㎜(高さ)の液晶表示部が設けられ,該液晶表示部は3画面に分割表示している。 F 正面右方には,中央大きめのシルバーのボタンと,同中央ボタンから三方に放射状に並べた三つの楕円形のシルバーのボタンが配され,該三つの楕円形ボタンの周囲には,隅丸矩形の稜線が表れる凹陥 ている。 F 正面右方には,中央大きめのシルバーのボタンと,同中央ボタンから三方に放射状に並べた三つの楕円形のシルバーのボタンが配され,該三つの楕円形ボタンの周囲には,隅丸矩形の稜線が表れる凹陥部が設けられている。 (3) 被告商品ア被告は,平成22年1月14日当時から,自ら輸入した被告商品(商品名「3Dセンサーなん歩計5F-3261」)を販売している。 被告商品は,ポケットに入れて使用することを主目的としたデジタル歩数計である。 イ被告商品(検甲2)の形態は,別紙被告商品目録記載の写真のとおりであり,次のような構成を有する(以下,各構成を「A’の形態」,「B’- 4 -の形態」などと表記する場合がある。)A’ 全体を四隅が丸い薄厚長方板状ケースにしたデザインで,サイズは約75㎜(幅)×約32㎜(高さ)×約12㎜(厚さ)である。 B’ ケースの周全体にR(丸み)を持たせている。 C’ 外装の上側(上ケース)は,製品内側面を黒色印刷した透明のプラスチック素材を用い,外装の下側(下ケース)は,黒色のプラスチック素材を用いている。 D’ 厚みとなる四周側面全周をシルバーのベルトが回り,四隅の一つにストラップ挿入孔が形成されている。 E’ 正面左方に約32㎜(幅)×約19㎜(高さ)の液晶表示部が設けられ,該液晶表示部は3画面に分割表示している。 F’ 正面右方には,中央大きめのシルバーのボタンと,同中央ボタンから三方に放射状に並べた三つの楕円形のシルバーのボタンが配され,該三つの楕円形ボタンの周囲には,隅丸矩形の稜線が表れる凹陥部が設けられている。 2 争点本件の争点は,①被告による被告商品の輸入,販売が不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当するか(争点1),②被告が賠償すべき原告の損害額(争点2 る凹陥部が設けられている。 2 争点本件の争点は,①被告による被告商品の輸入,販売が不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当するか(争点1),②被告が賠償すべき原告の損害額(争点2)である。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為の成否)(1) 原告の主張ア原告商品と被告商品の形態の実質的同一性(ア) 原告商品の形態の特徴a 原告商品のAないしFの形態は,従前のポケットイン型歩数計に見られなかった特徴的な形態である。 - 5 -すなわち,外装の上側(上ケース)に,製品内側面を黒色印刷した透明のプラスチック素材を用い(C),正面左に3画面に分割された液晶表示部(E),正面右にスイッチ操作部が配置され,周全体にR(丸み)を持たせて表情を柔らかくした(B),横長かつ薄型(A)の歩数計の形態は,従来の歩数計には全く見られなかった斬新なデザインであり,また,四周側面全周を回るストラップ挿入孔付きシルバーベルトの存在(D)及び従前の歩数計には全く見られなかった操作ボタンの個数・形状・配置(F)も,原告商品のイメージに,大きく貢献している斬新なデザインである。 原告商品は,AないしFの形態を同時に有することで,「思わず誰かにみせたくなるスタイリッシュなデザイン」(甲5の14の1)となっている。 b この点に関し,被告は,後記のとおり,原告商品のAないしDの形態は,原告商品以外の歩数計においても多数使用されている,どこにでもある公知の形態であるから(甲3,4,9等),不正競争防止法2条1項3号により保護される商品の形態とはいえない旨主張する。 しかし,被告が公知の形態であることの根拠として挙げる他社の歩数計は,そのほとんどが原告製品の販売開始日(平成20年 不正競争防止法2条1項3号により保護される商品の形態とはいえない旨主張する。 しかし,被告が公知の形態であることの根拠として挙げる他社の歩数計は,そのほとんどが原告製品の販売開始日(平成20年3月6日)よりも後に販売されたものであり,原告商品との関係において公知の形態とはいえず,しかも,原告製品の販売開始日より前に販売された商品は,AないしDのいずれの形態も有していない。 また,そもそも,商品の形態は,商品を全体として観察して判断すべきであり,原告商品の個々の部分的形状を取り出し,個別にそれが公知か否かを判断する手法は妥当でない。 したがって,被告の上記主張は失当である。 (イ) 原告商品と被告商品の形態の対比- 6 -原告商品の形態(AないしFの形態)と被告商品の形態(A’ないしF’の形態)とを対比すると,全体サイズ(A,A’)及び液晶表示部のサイズ(E,E’)の差異(以下「差異点1」という。)並びに操作ボタンの形態及び配置(F,F’)の差異(以下「差異点2」という。)を除いて,被告商品は,原告製品の特徴的な形態のすべてをそのまま有している。 しかも,差異点1及び2は,以下のとおり,僅かな差異であって,商品の全体的形態に与える変化が乏しく,商品全体から見て些細な相違にとどまるから,原告商品と被告商品の形態は,実質的に同一である。 a 差異点1について被告商品の全体サイズは,原告商品に比べ,幅が約2㎜,高さが約1㎜,厚さが約2㎜大きくなっており,また,被告商品の液晶表示部のサイズも,原告商品に比べ,高さが約1㎜大きくなっているが,いずれも0~2㎜の範囲内の差異であって,僅かな差異にすぎない。 b 差異点2について原告製品と被告商品とは,操作ボタンの形状及び配置について,「正面右方には,中央大きめ 大きくなっているが,いずれも0~2㎜の範囲内の差異であって,僅かな差異にすぎない。 b 差異点2について原告製品と被告商品とは,操作ボタンの形状及び配置について,「正面右方には,中央大きめのシルバーのボタンと,同中央ボタンから三方に放射状に並べた三つの楕円形のシルバーのボタンが配され,該三つの楕円形ボタンの周囲には,隅丸矩形の稜線が表れる凹陥部が設けられている。」という基本的な形態(F,F’)において共通しているが,ボタンの具体的形態,楕円形ボタンの具体的配置及び中央ボタンの表示等において差異がある。 (a) ボタンの具体的形態の差異原告商品の中央ボタンは隅丸矩形であるが,被告商品の中央ボタンは円形である点で差異がある。 しかし,いずれも丸みを有する形状であり,商品全体に占めるボ- 7 -タンの大きさから考えても,中央ボタンを,実質的な大きさを変更することなく隅丸矩形から円形に変える改変が,商品の全体的形態に与える影響が大きいとはいえず,しかも,矩形と円形は,幾何形状として一般的によく知られた形状であるから,隅丸矩形を円形に改変することに困難はない。 次に,原告商品の三つの楕円形ボタンは長楕円であるが,被告商品の三つの楕円形ボタンは,端部が尖った楕円であるとの相違がある。 しかし,長楕円と端部が尖った楕円は,いずれも楕円として認識されるものであり,また,商品全体に占めるボタンの大きさから考えても,実質的な大きさを変更することなく長楕円から端部が尖った楕円に変える改変が,商品の全体的形態に与える影響が大きいとはいえず,しかも,長楕円から端部が尖った楕円への改変に,着想の困難性や追加費用の必要性があるとは認められない。 これらのボタンの具体的形態の差異は,全体形状と比較して極めて小さな部分の差異である いえず,しかも,長楕円から端部が尖った楕円への改変に,着想の困難性や追加費用の必要性があるとは認められない。 これらのボタンの具体的形態の差異は,全体形状と比較して極めて小さな部分の差異であるから,商品の全体的形態に与える変化が乏しく,商品全体から見て些細な相違にとどまると評価される場合に当たることは明らかである。 (b) 楕円形ボタンの具体的配置の差異原告商品では,三つの楕円形ボタンの一つが左斜め下に配されている(左斜め上にボタンが配されてない。)のに対し,被告商品では,左斜め上に配されている(左斜め下にボタンが配されていない。)点で差異がある。 しかし,左斜め下を左斜め上に改変しても,中央ボタンから放射三方向に伸びるという基本的な形態(F,F’)に与える影響はほとんどなく,また,ボタンの形状が3個すべて同じ楕円という点で- 8 -も,全体の外観に与える影響は弱く,上記改変により相応の形態的特徴がもたらされたとは評価し得ない。 また,中央ボタンから放射三方向に伸びるという基本的な形態(F,F’)が所与のものであれば,そのうち一つの位置を左斜め下から左斜め上に改変することを着想するのに困難がないことは明白であり,このような改変に追加費用はかかりようもない。 したがって,三つの楕円形ボタンの具体的配置の差異は,原告商品と被告商品との形態が実質的に同一であるとの判断に消長をきたすものではない。 (c) 中央ボタンの表示等の差異原告商品の中央ボタン表面には,「設定」との文字が配されているのに対して,被告商品の中央ボタン表面には,「MODE」との文字が配されている点で差異がある。さらに,原告商品は,自社グループ名(CITIZEN,登録商標)と原告商品の愛称(peb,登録商標)を英文字で,各ボタンの機能を漢字 タン表面には,「MODE」との文字が配されている点で差異がある。さらに,原告商品は,自社グループ名(CITIZEN,登録商標)と原告商品の愛称(peb,登録商標)を英文字で,各ボタンの機能を漢字と符号「△」,「▽」で示している。一方,被告商品は,英文字(AUSSIE)を表すとともに,各ボタンの機能を英文字と符号「△」,「▽」で示している。 しかし,操作ボタンの機能を表示するに当たって,漢字を英文字に置き換え,又はその反対に英文字を漢字に置き換えることは,着想としては全く容易の範囲であり,歩数計の分野ではいずれの表記も一般的に行われてきたことである。「設定」ボタンを「MODE」ボタンと表現することも,その逆も,電子機器の分野では通常のことである。 したがって,これらの改変が費用もかからず,相応の形態的特徴をもたらすものではないことは,明白であるから,中央ボタンその- 9 -他の表示の差異は,原告商品と被告商品の形態とが実質的に同一であるとの判断に消長をきたすものではない。 イ模倣①原告商品は,歩数計分野において2008年,2009年のヒット商品であり,現在もなお好調な売上げを持続している商品であること(甲5の16の3,5の18の1,6),②被告商品の形態が原告商品の形態と実質的に同一であること,③被告商品が市場に登場したのは2010年(平成22年)1月ころであり,原告商品の販売開始日である平成20年3月6日から十分な期間が経過していることを考慮すれば,被告商品が原告商品に依拠して作り出されたことは,明らかである。 ウ不正競争防止法2条1項3号の適用を除外すべき事由の不存在被告は,後記のとおり,平成21年12月18日に被告商品を輸入した当時,被告商品が原告商品の形態を模倣したものであることを知らず,かつ 不正競争防止法2条1項3号の適用を除外すべき事由の不存在被告は,後記のとおり,平成21年12月18日に被告商品を輸入した当時,被告商品が原告商品の形態を模倣したものであることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がなかったから,被告による被告商品の輸入,販売については,不正競争防止法19条1項5号ロにより,同法2条1項3号の規定が適用されず,同号の不正競争行為に該当しない旨主張する。 しかし,前記イ①ないし③の事情を考慮すれば,被告が被告商品を輸入,販売するに当たり,被告において少なくとも被告商品が原告商品の形態を模倣したものであることを知らないことにつき重大な過失があったことは明らかであるから,被告の上記主張は,失当である。 エ小括以上のとおり,被告商品は原告商品の形態を模倣した商品であるから,被告による被告商品の輸入,販売は,不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当する。 (2) 被告の主張- 10 -ア商品の形態の実質的同一性について(ア) 原告商品のAないしDの形態は,原告商品以外の歩数計においても多数使用されている,どこにでもある公知の形態であるから(甲3,4,9等),不正競争防止法2条1項3号により保護される商品の形態とはいえない。 したがって,被告商品においてAないしDの形態が使用されていても,被告商品は,不正競争防止法第2条1項3号の「他人の商品の形態を模倣した商品」に該当しない。 (イ) 原告商品と被告商品の形態を対比すると,要部である表面の操作ボタンの形状及び配置構成(F,F’)が,原告商品は,四角い「設定」ボタンを中心として,右上から左への対角線上に二つの細長い棒状のボタン,また,これらの細長い棒状のボタンと直角な方向で,「設定」ボタンの右下に同形の細長い棒状 ,F’)が,原告商品は,四角い「設定」ボタンを中心として,右上から左への対角線上に二つの細長い棒状のボタン,また,これらの細長い棒状のボタンと直角な方向で,「設定」ボタンの右下に同形の細長い棒状のボタンを有するのに対し,被告商品は,「MODE」と書かれた中央部の丸ボタンとこの丸ボタンを中心に左上から右下への対角線上に二つの楕円形のボタン,また,これらのボタンと直角な方向で前記丸ボタンの右上に楕円形のボタンを有するものであり,両者は,操作部のボタンの形状や配置構成が相違している。 このように原告商品と被告商品とは,要部である表面の操作ボタンの形状や配置構成が相違し,被告商品の形態は原告商品の形態と実質的に同一であるとはいえない。 イ模倣について被告商品は,被告が台湾の取引業者を通じて,中国の製造元から輸入したものであり,被告が製造したものではない。被告は,台湾の取次業者を通じて,製造元に問い合わせたところ,製造元から,原告商品を模倣して被告商品を製造したものではないとの回答を得ている。 したがって,被告商品は,原告商品の形態に依拠して作り出された商品- 11 -であるとはいえず,原告商品の形態を模倣した商品に該当しない。 ウ不正競争防止法2条1項3号の適用除外仮に被告商品が原告商品の形態を模倣した商品に該当するとしても,被告は,平成21年12月18日,被告商品を台湾の取引業者を通じて,中国の製造元から輸入したものであり,その輸入当時,被告商品が原告商品の形態を模倣したものであることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がなかったから,被告による被告商品の輸入,販売については,不正競争防止法19条1項5号ロにより,同法2条1項3号の規定が適用されず,同号の不正競争行為に該当しない。 エ小括以上 大な過失がなかったから,被告による被告商品の輸入,販売については,不正競争防止法19条1項5号ロにより,同法2条1項3号の規定が適用されず,同号の不正競争行為に該当しない。 エ小括以上のとおり,被告商品は,原告商品の形態を模倣した商品に該当せず,また,仮にこれに該当するとしても,被告による被告商品の輸入,販売については,不正競争防止法19条1項5号ロにより,同法2条1項3号の規定が適用されない。 したがって,被告による被告商品の輸入,販売は,不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当しない。 2 争点2(原告の損害額)(1) 原告の主張ア不正競争防止法5条2項の損害額(ア) 被告は,平成22年1月以降,株式会社ケーヨー(以下「ケーヨー」という。)等に対し,被告商品を4277個販売した。 被告商品1個当たりの販売価格は1250円,原価は1050円である。 したがって,被告が被告商品の上記販売により得た利益は85万5400円である。 (計算式・4277個×(1250円-1050円))- 12 -(イ) 被告による被告商品の販売は,前記1(1)のとおり,不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当するから,同法5条2項により,被告が得た前記(ア)の利益の額は,原告が受けた損害額と推定される。 (ウ) この点に関し,被告は,後記のとおり,本件訴訟が提起された後,ケーヨー等に対し,被告商品の返品の要請をし,ケーヨー等との間で,被告商品925個分についての売買契約を合意解除し,ケーヨー等から,その返品を受けて廃棄したから,上記返品分については,被告は販売による利益を得ていない旨主張する。 しかし,被告の不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為は,被告がケーヨー等に被告商品を販売(譲渡)したこと けて廃棄したから,上記返品分については,被告は販売による利益を得ていない旨主張する。 しかし,被告の不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為は,被告がケーヨー等に被告商品を販売(譲渡)したことによって直ちに成立し,その時点で,原告の被告に対する損害賠償請求権は,確定的に発生している。 不正競争行為の成立後に,違法な販売品を回収する行為は,それがいかなる法律構成に基づくものであろうと,不正競争行為と別個独立して評価されるべき,侵害者(不正競争行為者)の自由意思に基づく行為にすぎないのであって,これによって,既に確定的に発生した原告の被告に対する損害賠償請求権が消滅すると解することは,法律構成としても,また,価値判断としても,許されない。 まず,法律構成の観点からみると,民法541条に基づく債務不履行による法定解除の場合でさえ,その遡及効は,同条1項ただし書により,第三者に対して制限されており,ましてや,当事者間の合意のみで成立する合意解除の遡及効により,当該合意とは全く無関係の第三者の権利を害することが許されないことは,同条1項ただし書の趣旨に照らして,明らかである。 次に,たとえ返品がされたとしても,侵害品は,一旦は実際に譲渡され,実際に市場に置かれて消費者の目に晒されたのであるから,それに- 13 -よって権利者には,有形無形の損害が実際に発生している。すなわち,当該侵害品が譲渡されたことによって,当該譲渡先に権利者の正規品を販売する機会が失われ,また,譲渡先が侵害品を市場に置いたことにより,当該市場において侵害品を目にした消費者に対しての正規品の販売機会も失われている。このような正規品の販売機会の喪失という損害は,模倣品の返品によって解消されるというものではないから,価値判断としても,返品分の利益は,不正競 にした消費者に対しての正規品の販売機会も失われている。このような正規品の販売機会の喪失という損害は,模倣品の返品によって解消されるというものではないから,価値判断としても,返品分の利益は,不正競争防止法5条2項の侵害者(不正競争行為者)の「利益」の額から控除すべきではない。 したがって,被告の上記主張は,失当である。 イ不正競争防止法5条3項2号の損害額(予備的主張)(ア) 仮に被告主張の返品分について被告が不正競争防止法5条2項の「利益」を得たものと認められない場合には,予備的に,上記返品分について,同法5条3項2号の「商品の形態の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額」(使用許諾料相当額)を原告の損害として主張する。 そして,原告商品がその斬新なデザインから歩数計分野のヒット商品になったことに鑑みれば,上記返品分の使用許諾料相当額は,被告商品の売上額(販売価格)の10%を下らないというべきである。 (イ) この点に関し,被告は,後記のとおり,使用者が許諾者に対し使用許諾料を支払う場合においては,通常,返品分の使用許諾料は支払われないのであるから,不正競争防止法5条3項2号に基づく損害額の算定においても,返品分は控除すべきである旨主張する。 しかし,被告が主張する「通常」の場合とは,許諾者(権利者)から正式に使用許諾を得ている者(すなわち適法な者)についての使用許諾料の場合である。権利者からの許諾を得ていない,違法な侵害者(不正- 14 -競争行為者)に対する損害賠償額の場合とは,その前提において異なるものであり,被告の主張は,失当である。 ウ弁護士費用被告の不正競争行為と相当因果関係のある原告の弁護士費用相当額の損害は,100万円を下らない。 エ小括以上によれば,原告が被告に対し不正競争 被告の主張は,失当である。 ウ弁護士費用被告の不正競争行為と相当因果関係のある原告の弁護士費用相当額の損害は,100万円を下らない。 エ小括以上によれば,原告が被告に対し不正競争防止法4条に基づく損害賠償として請求し得る損害額は,前記ア及びウの合計額である185万5400円を下らない。 したがって,原告は,被告に対し,不正競争防止法4条に基づく損害賠償として,185万5400円の一部である100万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(平成22年5月18日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 (2) 被告の主張ア不正競争防止法5条2項の損害額について原告の主張のうち,被告が平成22年1月以降ケーヨー等に対し被告商品を販売したこと(ただし,原告主張の販売数量を除く。),被告商品1個当たりの販売価格が1250円,原価が1050円であることは認めるが,その余は争う。 その理由は,以下のとおりである。 (ア) 被告は,平成21年12月18日,台湾の取次業者を通じて,中国の製造元から,被告商品を1個当たり9.6ドルで4500個を輸入した後,上記輸入に係る被告商品のうち,4211個をケーヨーに,66個を他の業者にそれぞれ売り渡した。 しかし,被告は,本件訴訟が提起された後,ケーヨー等に対し,被告商品の返品の要請をし,ケーヨー等との間で,被告商品925個分につ- 15 -いての売買契約を合意解除し,ケーヨー等から,その返品を受けた。 その後,被告は,上記輸入に係る被告商品のうち,ケーヨー等からの上記返品分925個と被告の在庫分223個の合計1148個を廃棄した。 このように被告は,ケーヨー等との間で,被告商品925個分についての売買契約を合意解除し, 被告商品のうち,ケーヨー等からの上記返品分925個と被告の在庫分223個の合計1148個を廃棄した。 このように被告は,ケーヨー等との間で,被告商品925個分についての売買契約を合意解除し,ケーヨー等から,被告商品の返品を受けて廃棄したから,上記返品分については,被告は販売による利益を得ていない。 以上によれば,被告のケーヨー等に対する被告商品の販売数量は,3352個(4211個+66個-925個)である。 (イ) 被告のケーヨー等に対する被告商品の販売価格は,1個当たり1250円で,1個当たりの原価は,取り次ぎ料等の経費を含め,1050円である。 したがって,被告がケーヨー等に対する被告商品の販売により受けた利益の額は,67万0400円である。 (計算式・3352個×(1250円-1050円))(ウ) 他方で,原告が原告商品の形態を意匠登録していた場合の意匠使用料としては販売価格の6%相当額を上回るものでない。 この点を踏まえると,被告がケーヨー等に対する被告商品の販売により得た利益の額全額が,原告主張の被告の不正競争行為により原告が受けた損害額ということはできず,原告の上記損害額は,25万1400円を上回るものではないというべきである。 (計算式・3352個×1250円×0.06)イ不正競争防止法5条3項2号の損害額(予備的主張)について通常,使用者(商品の販売者)が許諾者に対し,使用許諾料を支払う場合においても,使用者は,使用者の販売数量に応じて,使用許諾料を支払- 16 -うものとされており,使用者は,使用許諾料を上乗せして決定された販売代金を販売先から受領している。そのため,使用者の都合により使用者の側から売買契約の合意解除の申入れがされ,合意解除されたことに基づき返品がされた場合には, は,使用許諾料を上乗せして決定された販売代金を販売先から受領している。そのため,使用者の都合により使用者の側から売買契約の合意解除の申入れがされ,合意解除されたことに基づき返品がされた場合には,使用者は,販売先に販売代金全額を返金していることから,使用者が許諾者に支払うべき使用許諾料の算定の基礎となる使用者の販売数量から,返品された数量が控除されている。 このように売買契約が合意解除されたことに基づき商品が返品された場合には,返品された販売数量分の使用許諾料の支払は要しないことからすれば,本件の場合においても,被告商品の返品分についての使用許諾料請求権は発生することにはならないから,原告の不正競争防止法5条3項2号の損害額の主張は理由がない。 仮に被告の主張が認められないとしても,不正競争防止法5条3項2号の「受けるべき金銭の額に相当する額」の算定においては,「利益額」に使用許諾料率を乗じるものであり,「売上額」に使用許諾料率を乗じるものではない。百歩譲って,「売上額」に使用許諾料率を乗じるものとされるとしても,返品分の使用許諾料率としては,4%を上回るものではない。 ウ弁護士費用について原告主張の損害額は争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為の成否)について(1) 原告商品と被告商品の形態の実質的同一性の有無ア(ア) 原告商品及び被告商品は,いずれもポケットに入れて使用することを主目的としたデジタル歩数計であること,原告商品の形態は,別紙原告商品目録記載の写真のとおりであって,AないしFの形態の構成を有し,被告商品の形態は,別紙被告商品目録記載の写真のとおりであって,A’ないしF’の形態の構成を有することは,前記争いのない事実等の- 17 -とおりである。 て,AないしFの形態の構成を有し,被告商品の形態は,別紙被告商品目録記載の写真のとおりであって,A’ないしF’の形態の構成を有することは,前記争いのない事実等の- 17 -とおりである。 原告商品(検甲1)の形態と被告商品(検甲2)の形態とを対比すると,両者は,「全体を四隅が丸い薄厚長方板状ケースにしたデザインである」点(A,A’),「ケースの周全体にR(丸み)を持たせている」点(B,B’),「外装の上側(上ケース)は,製品内側面を黒色印刷した透明のプラスチック素材を用い,外装の下側(下ケース)は,黒色のプラスチック素材を用いている」点(C,C’),「厚みとなる四周側面全周をシルバーのベルトが回り,四隅の一つにストラップ挿入孔が形成されている」点(D,D’),「正面左方に液晶表示部が設けられ,該液晶表示部は3画面に分割表示している」点(E,E’),「正面右方には,中央大きめのシルバーのボタンと,同中央ボタンから三方に放射状に並べた三つの楕円形のシルバーのボタンが配され,該三つの楕円形ボタンの周囲には,隅丸矩形の稜線が表れる凹陥部が設けられている」点(F,F’)といった基本的な構成において共通し,全体サイズ(幅×高さ×厚さ)及び液晶表示部のサイズ(幅×高さ)も,被告商品が「0~2㎜の範囲内」で大きいだけで(A,A’,E,E’),ほとんど同一であることによれば,被告商品と原告商品は,商品全体の形態が酷似し,その形態が実質的に同一であるものと認められる。 (イ) もっとも,原告製品と被告製品は,操作ボタンの形状及び配置構成(F,F’)に関し,①三つの楕円形ボタンが,原告製品は,中央ボタンの右斜め上,右斜め下及び「左斜め下」に配置されているのに対し,被告製品は,中央ボタンの右斜め上,右斜め下及び「左斜め上」に配置されている点, に関し,①三つの楕円形ボタンが,原告製品は,中央ボタンの右斜め上,右斜め下及び「左斜め下」に配置されているのに対し,被告製品は,中央ボタンの右斜め上,右斜め下及び「左斜め上」に配置されている点,②中央ボタンの形状が,原告製品は隅丸四辺形であるが,被告商品は円形である点,③楕円形ボタンの形状が,原告製品は長楕円であるが,被告商品は端部が尖った楕円である点,④中央ボタンの表面文字が,原告製品は,「設定」の漢字2文字であるのに対し,被告製品- 18 -は,「MODE」の英字4文字である点で相違する。 しかし,①の点は,三つの楕円形ボタンのうち,二つの配置は共通し,一つの配置が「左斜め下」か,「左斜め上」かの相違であり,三つの楕円形ボタンを中央ボタンから三方に放射状に配置するという基本的な構成が共通し,楕円形ボタン自体の形状もほとんど変わらないことに照らすならば,商品の全体的形態に与える変化に乏しく,商品全体からみるとささいな相違にとどまるものと認められるから,原告商品及び被告商品の形態の実質的同一性の判断に影響を及ぼすものではない。 また,②ないし④の点も,商品全体からみるといずれもささいな相違であって,両商品の形態の実質的同一性の判断に影響を及ぼすものではない。 イなお,被告は,原告商品のAないしDの形態は,原告商品以外の歩数計においても多数使用されている,どこにでもある公知の形態であるから(甲3,4,9等),原告商品の形態は,不正競争防止法2条1項3号により保護される商品の形態とはいえない旨主張する。 しかし,被告が指摘する甲3,4,9を含む本件証拠によっても,原告商品のAないしDの形態が歩数計において多数使用されている公知の形態であることを認めるに足りない。 また,不正競争防止法2条1項3号は,商品の形態につい 甲3,4,9を含む本件証拠によっても,原告商品のAないしDの形態が歩数計において多数使用されている公知の形態であることを認めるに足りない。 また,不正競争防止法2条1項3号は,商品の形態についての先行者の開発利益を模倣者から保護することを目的とする規定であり,同号により保護される商品の形態は,商品の一部分の形態ではなく,商品全体の形態であるというべきであるから,仮に原告商品の形態の一部分が公知であるとしても,そのことによって原告商品の形態が同号の保護の対象とならないということはできない。 したがって,被告の上記主張は,理由がない。 (2) 模倣の有無等- 19 -ア前記争いのない事実等と証拠(甲5の16の3,5の18の1,6)及び弁論の全趣旨によれば,①原告は,平成20年3月6日から,デジタル歩数計「peb(ペブ)TW600」として原告商品の販売を開始したこと,②「peb(ペブ)TW600」(外装の色6種類,原告商品はそのうちの色がブラックのもの。以下同じ。)は,価格比較ウェブサイトの「価格.com」の健康器具・医療機器部門プロダクトアワード2008で金賞を受賞していること,③平成21年11月27日発行の日経流通新聞(日経MJ)において,調査会社GfKジャパンが全国の家電量販店4500店の同年10月の店頭販売データを基にした集計結果によれば,「peb(ペブ)TW600」が,「高機能歩数計」の売れ筋ベスト10の第1位にランクされた旨の記事が掲載されたこと,③平成21年9月26日発行の朝日新聞朝刊において,歩数計の「売れ筋」として,他社の5商品と共に,「peb(ペブ)TW600」が写真付きで紹介されていることが認められる。 これらの事実によれば,原告商品(「peb(ペブ)TW600」)は,平成20年3月6日の販売 して,他社の5商品と共に,「peb(ペブ)TW600」が写真付きで紹介されていることが認められる。 これらの事実によれば,原告商品(「peb(ペブ)TW600」)は,平成20年3月6日の販売開始から平成21年10月までの間に,デジタル歩数計分野のヒット商品となっており,平成21年10月当時には,取扱業者,歩数計に関心のある消費者等の需要者の間において広く知られていたものと認められる。 上記認定事実に加えて,被告は,平成21年12月18日,中国から,被告製品を輸入し,平成22年1月から被告商品の販売を開始したが(乙1の1,1の2,弁論の全趣旨),被告の上記輸入時には,原告商品の販売開始日(平成20年3月6日)から既に1年9か月が経過していること,被告商品の形態が原告商品の形態と実質的に同一であること(前記(1)ア)を総合すれば,被告商品が原告商品の形態に依拠して作り出されたものと認められ,これに反する証拠はない。 - 20 -以上によれば,被告商品は原告商品に依拠して作り出された実質的に同一の形態の商品であると認められるから,被告商品は,原告商品の形態を模倣した商品に該当するというべきである。 そうすると,被告が被告製品を輸入,販売する行為は,不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当するものと認められる。 イこれに対し被告は,被告商品が原告商品の形態を模倣した商品に該当するとしても,被告は,平成21年12月18日,被告商品を台湾の取引業者を通じて,中国の製造元から輸入したものであり,その輸入当時,被告商品が原告商品の形態を模倣したものであることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がなかったから,被告による被告商品の輸入,販売については,不正競争防止法19条1項5号ロにより,同法2条1項3号の規定が の形態を模倣したものであることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がなかったから,被告による被告商品の輸入,販売については,不正競争防止法19条1項5号ロにより,同法2条1項3号の規定が適用されず,同号の不正競争行為に該当しない旨主張する。 しかしながら,前記ア認定のとおり,原告商品(「peb(ペブ)TW600」)は,被告が被告商品を輸入する前の平成21年10月当時には,デジタル歩数計分野のヒット商品として,取扱業者,歩数計に関心のある消費者等の需要者の間において広く知られていたものであることに照らすならば,被告が被告商品を輸入した時点において,仮に被告が被告商品が原告商品の形態を模倣したものであることを知らなかったとしても,知らないことにつき重大な過失がなかったものと認めることはできない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (3) まとめ以上によれば,被告による被告商品の輸入,販売は,不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当し,被告には少なくとも過失があるものと認められるから,被告は,不正競争防止法4条により,上記不正競争行為によって原告に生じた損害を賠償する責任がある。 2 争点2(原告の損害額)について- 21 -(1) 不正競争防止法5条2項の損害額ア(ア) 証拠(乙1の1,1の2,3)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,平成21年12月18日,中国から,被告商品4500個を輸入したこと,被告は,平成22年1月以降,ケーヨー等に対し,被告商品を合計4277個売り渡したこと,被告は,原告が本件訴訟を提起した後,ケーヨー等との間で,上記被告商品のうち,925個分について売買契約を合意解除し,ケーヨー等から,925個分の返品を受けたこと,被告は,平成22年11月8日,エスシー ,原告が本件訴訟を提起した後,ケーヨー等との間で,上記被告商品のうち,925個分について売買契約を合意解除し,ケーヨー等から,925個分の返品を受けたこと,被告は,平成22年11月8日,エスシーエス株式会社に対し,上記返品分925個及び原告在庫分223個の合計1148個の被告商品の廃棄処理を依頼し,上記1148個が同年12月2日までに廃棄されたことが認められる。 被告商品1個当たりの販売価格が1250円,原価が1050円であること(争いがない。)によれば,被告商品1個当たりの販売利益は,上記販売価格から上記原価を差し引いた200円と認めるのが相当である。 以上の認定事実を総合すると,被告はケーヨー等に対し被告商品3352個を販売したことにより67万0400円の利益を得たことが認められる。 (計算式・(4277個-合意解除による返品分925個)×200円)(イ) そして,被告のケーヨー等に対する被告商品の販売は,不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当するから,被告が得た上記利益67万0400円は,同法5条2項により,原告が受けた損害額と推定される。 イ(ア) この点に関し,原告は,被告の不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為は,被告がケーヨー等に被告商品を販売(譲渡)したことによって直ちに成立し,その時点で,原告の被告に対する損害賠償請求権は,- 22 -確定的に発生し,上記返品分925個の利益についても,同法5条2項の侵害者(不正競争行為者)の「利益」の額から控除すべきではない旨主張する。 そこで検討するに,不正競争防止法5条2項は,不正競争によって営業上の利益を侵害された者が,侵害者に損害賠償の請求を行う場合,「その者がその侵害の行為により利益を受けているときは,その利益の額は,その営業上の利益 ,不正競争防止法5条2項は,不正競争によって営業上の利益を侵害された者が,侵害者に損害賠償の請求を行う場合,「その者がその侵害の行為により利益を受けているときは,その利益の額は,その営業上の利益を侵害された者が受けた損害の額と推定する。」と規定している。 同条項の「その者がその侵害の行為により利益を受けているとき」との文言によれば,同条項は,侵害者が現に得た利益の額をもって,不正競争によって営業上の利益を侵害された者の損害額と推定することを規定したものと解される。 しかるところ,原告主張の被告商品の返品分925個について,被告とケーヨー等との間で売買契約を合意解除し,被告がその返品を受けて,廃棄処分をしたことに照らすならば,被告は,上記返品分の売買代金の支払を受けていないか,あるいは受領後返金したものと推認されるから,被告は,被告商品の販売による不正競争行為によって現に利益を得たものと認めることはできない。 確かに,原告が主張するように,上記返品分に係る被告商品について被告がケーヨー等に売り渡した時点で不正競争行為が成立し,これによって原告商品の得べかりし利益相当の損害が発生したものと解されるが,このことと被告が上記返品分の販売によって利益(販売利益)を得たかどうかとは,別個の問題であるというべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (イ) 他方で,被告は,原告が原告商品の形態を意匠登録していた場合の意匠使用料としては販売価格の6%相当額を上回るものでないことを- 23 -を踏まえると,被告がケーヨー等に対する被告商品の販売により得た利益の額全額が,原告主張の被告の不正競争行為により原告が受けた損害額ということはできず,原告の上記損害額は,25万1400円を上回るものではない旨主張する ーヨー等に対する被告商品の販売により得た利益の額全額が,原告主張の被告の不正競争行為により原告が受けた損害額ということはできず,原告の上記損害額は,25万1400円を上回るものではない旨主張する。 しかし,被告の主張する事情は,原告の損害額についての前記ア(イ)の不正競争防止法5条2項の推定を覆滅する事由に当たるものと認めることはできない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (2) 不正競争防止法5条3項2号の損害額ア原告は,仮に被告主張の返品分について被告が不正競争防止法5条2項の「利益」を得たものと認められない場合には,同条3項2号により,上記返品分の使用許諾料相当額が原告の損害額である,その使用許諾料相当額は,被告商品の売上額(販売価格)の10%を下らない旨主張する。 そこで検討するに,ケーヨー等からの返品分に係る被告商品925個(前記(1)ア(ア))については,被告がケーヨー等に売り渡した時点で不正競争行為が成立し,これによって原告商品の得べかりし利益相当の損害が発生したものと解されるから,原告は,上記損害の賠償として,不正競争防止法5条3項2号により,原告商品の形態の「使用に対して受けるべき金銭の額に相当する額の金銭」(使用許諾料相当額)を請求することができるというべきである。 そして,原告商品(「peb(ペブ)TW600」)は,被告が被告商品を輸入する前の平成21年10月当時には,デジタル歩数計分野のヒット商品として,取扱業者,歩数計に関心のある消費者等の需要者の間において広く知られていたものであること(前記1(2)ア),被告は,原告が原告商品の形態を意匠登録していた場合の意匠使用料は販売価格の6%相当額である旨主張していること,被告による不正競争行為の態様及びそ- 24 - ものであること(前記1(2)ア),被告は,原告が原告商品の形態を意匠登録していた場合の意匠使用料は販売価格の6%相当額である旨主張していること,被告による不正競争行為の態様及びそ- 24 -の市場への影響等諸般の事情を総合考慮すると,原告の上記使用許諾料相当額の損害額は,原告の主張するとおり,被告商品の販売価格の10%と認めるのが相当である。 そうすると,上記返品分についての原告の不正競争防止法5条3項2号の損害額は,11万5625円となる。 (計算式・925個×1250円×0.1)イ(ア) これに対し被告は,通常,使用者(商品の販売者)は,許諾者に対し,使用者の販売数量に応じて使用許諾料を支払うものとされており,合意解除されたことに基づき返品がされた場合には,返品された販売数量分の使用許諾料の支払は要しないことからすれば,本件の場合においても,被告商品の返品分についての使用許諾料請求権は発生することにはならないから,原告の不正競争防止法5条3項2号の損害額の主張は理由がない旨主張する。 しかし,不正競争防止法5条3項2号の「商品の形態の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭」(使用許諾料相当額)は,不正競争行為による損害額であって,商品の形態の使用について使用許諾契約の契約関係が存在する場合の通常の使用許諾料とは異なるものであるから,被告の上記主張は,その前提において失当であり,採用することができない。 (イ) また,被告は,不正競争防止法5条3項2号の「受けるべき金銭の額に相当する額」の算定においては,「利益額」に使用許諾料率を乗じるものであり,「売上額」に使用許諾料率を乗じるものではなく,百歩譲って,「売上額」に使用許諾料率を乗じるものとされるとしても,返品分の使用許諾料率としては,4%を上回るもの 」に使用許諾料率を乗じるものであり,「売上額」に使用許諾料率を乗じるものではなく,百歩譲って,「売上額」に使用許諾料率を乗じるものとされるとしても,返品分の使用許諾料率としては,4%を上回るものではない旨主張する。 しかし,被告の上記主張は,独自の見解であって,採用することができない。 - 25 -(3) 弁護士費用被告の不正競争行為と相当因果関係のある原告の弁護士費用相当額の損害は,本件事案の内容,審理の経過等諸般の事情を考慮し,12万円と認めるのが相当である。 (4) まとめ以上によれば,原告が被告に対し不正競争防止法4条に基づく損害賠償として請求し得る損害額は,前記(1)ないし(3)の合計額である90万6025円となる。 したがって,原告は,被告に対し,不正競争防止法4条に基づく損害賠償として90万6025円及びこれに対する訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな平成22年5月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 3 結論以上によれば,原告の請求は,90万6025円及びこれに対する平成22年5月18日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容することとし,その余は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官大西勝滋 - 26 -裁判官石神有吾 裁判官 石神有吾
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