平成30(ワ)28300 債務不存在確認等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年12月27日 東京地方裁判所
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判決文本文9,901 文字)

令和3年12月27日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成30年第28300号債務不存在確認等請求事件口頭弁論終結日令和3年10月11日判決主文 1 本件訴えのうち,原告と被告との間の別紙物件目録記載の建物部分の令和2年2月28日付け賃貸借契約の賃料が月額137万8800円を超えないことの確認を求める部分を却下する。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 原告と被告との間の別紙物件目録記載の建物部分の令和2年2月28日付け賃貸借契約の賃料が月額137万8800円を超えないことを確認する。 2 被告は,原告に対し,1000万円及びこれに対する平成30年10月4日 から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要原告は,被告の経営するホテルオークラ東京本館(以下「旧本館」という。)の一区画を賃借していたが,旧本館の建て替えに伴う取壊しのため別館に移転するに当たり,自ら申し立てた仮処分命令申立事件において,被告との間で,被告 が新たに建設するホテル本館(以下「新本館」という。)の一部について賃貸借予約契約を締結する旨の和解をし,その後,更に別館から新本館に移転するに当たり,再度申し立てた仮処分命令申立事件において,被告との間で,新本館の一区画について賃貸借契約を締結する旨の和解をした。 本件は,原告が,被告に対し,上記賃貸借契約に基づく賃料が月額137万8 800円を超えないことの確認を求めるとともに,被告が原告と協議することな く一方的に新本館の特定の区画を原告に割り当てたことが上記賃貸借予約契約の条項等に基づく協議義務に違反し,そのために信用毀損等の損害を被っ の確認を求めるとともに,被告が原告と協議することな く一方的に新本館の特定の区画を原告に割り当てたことが上記賃貸借予約契約の条項等に基づく協議義務に違反し,そのために信用毀損等の損害を被ったと主張して,債務不履行による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金1000万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である平成30年10月4日から支払済みまで平成29年法律第45号による改正前の商事法定利率年6分の割合による遅 延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠(枝番号は適宜省略する。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者等原告は,飲食店の経営等を目的とする株式会社である。 被告は,平成13年10月1日,株式会社ホテルオークラ(旧商号大成観光株式会社)から新設分割により設立されたホテル営業等を目的とする株式会社であり,「ホテルオークラ東京」又は「オークラ東京」という名称でホテルを営んでいる。 原告は,昭和39年8月25日,大成観光株式会社との間で賃貸借契約を 締結し,旧本館の一区画の引渡しを受け,同区画において「久兵衛」という名称で寿司店を営んでいた。 (甲1,5)⑵ 原告の別館への移転に伴う和解ア被告は,老朽化した旧本館を取り壊して新本館を建設することを決定し, 平成26年10月頃から,原告に対し,新本館が完成するまでの間,別館において営業施設を提供し,新本館完成後は新本館において営業を継続させると説明した上で,旧本館から退去するように求めた。 原告は,この求めに応じず,平成27年9月1日付けで,東京地方裁判所に対し,被告及びその親会社である株式会社ホテルオークラ(以下「被 告ら」と総称することがある。) ら退去するように求めた。 原告は,この求めに応じず,平成27年9月1日付けで,東京地方裁判所に対し,被告及びその親会社である株式会社ホテルオークラ(以下「被 告ら」と総称することがある。)を債務者として,原告の旧本館における 店舗の占有使用の妨害禁止の仮処分を求める申立てをした(同裁判所同年第2650号事件)。 イ原告と被告らとの間で,平成27年11月13日,上記の仮処分命令申立事件の審尋期日において,以下の内容を含む和解(以下「平成27年和解」という。)が成立した。 被告は,原告に,別館の特定の区画において営業を行わせる。 被告は,新本館の完成後,下記に定める賃貸借契約に基づき,原告を入居させて営業を行わせる。 原告と被告は,完成後の新本館の一部分(73㎡程度を目処として賃貸借面積を確保する。)について,本日,以下の内容の賃貸借予約契約 (以下「本件予約契約」という。)を締結する。 a 新本館における賃貸借予定部分の具体的位置,客席数,厨房の配置等,店舗居内の具体的内容等については,双方協議の上,別途検討する(以下,この条項を「本件協議条項1」という。)。 b 賃料は,1か月の総売上額(新本館の賃貸借部分において提供され た料理及び本件賃借部分において提供された原告保管に係る飲料の売上げの総額。ただし,サービス料は除く。)の20%とする。 原告と被告らは,新本館の賃貸借本契約の締結に至るまで,相互に名誉・信用を尊重し,信頼関係を毀損することなく協力するとともに,調和を心掛けるものとし,本和解条項に定めがない事項及び本和解条項の 解釈について疑義が生じた場合は,民法その他の法令及び慣行に従い,誠意をもって協議し,解決するものとする(以下,この条項を「本件協 心掛けるものとし,本和解条項に定めがない事項及び本和解条項の 解釈について疑義が生じた場合は,民法その他の法令及び慣行に従い,誠意をもって協議し,解決するものとする(以下,この条項を「本件協議条項2」という。)。 ウ原告は,平成27年和解の成立後,旧本館から退去し,別館において寿司店の営業を開始した。 (甲8,62) ⑶ 原告の新本館への移転拒否及び本件訴えの提起等ア被告は,平成28年12月6日頃,原告に対し,新本館の高層棟4階に配置されたアーケード(以下「本件アーケード」という。)内の一区画(72.88㎡。以下「本件区画」という。)を本件予約契約における賃借部分として提示した。 原告は,被告に対し,遅くとも平成30年1月10日頃,平成27年和解において賃貸借予定部分の具体的な位置は協議事項となっているにもかかわらず,被告から一方的に本件区画が提示されたのみで,原告としては具体的な協議がされたとは認識していない,被告自らが経営する和食堂と近接する場所を希望するなどと異議を述べた。原告と被告は,同年3月末 頃まで,新本館の一部分の賃貸借契約の内容について交渉を続けていたが,賃貸借予定部分の位置について,被告は原告に対し,本件区画以外には73㎡程度の面積を確保することは困難であるとの回答に終始する一方,原告は被告に対し,上記の異議を述べ続けた。 (甲35,38,74ないし76,乙13ないし15,18ないし20) イ原告は,平成30年9月3日,当裁判所に対し,①本件予約契約に基づく本件区画の賃料が月額137万8800円を超えないことの確認(変更前の請求1項)並びに②1000万円の損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払(請求2項)を求める本件訴えを提起した。 ウ づく本件区画の賃料が月額137万8800円を超えないことの確認(変更前の請求1項)並びに②1000万円の損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払(請求2項)を求める本件訴えを提起した。 ウ被告は,令和元年9月,新本館での営業を開始したが,原告は,本件予 約契約に基づく賃貸借本契約の締結をせずに,本件区画において営業を開始することもなく,別館での営業を継続した。 ⑷ 原告の新本館への移転に伴う和解ア原告は,令和元年,東京地方裁判所に対し,被告を債務者として,再び仮処分を求める申立てをした(同裁判所令和元年第3147号及び第3 213号事件)。 原告と被告との間で,令和2年2月28日,上記の仮処分命令申立事件の審尋期日において,以下の内容を含む和解(以下「令和2年和解」という。)が成立した。 原告と被告は,本日付けで本件区画についての賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。なお,令和2年和解においては,その契約内容 が本件訴訟の判断に従い,又はこれを踏まえて修正される可能性があることから「仮契約」と呼称されていた。)を締結し,被告は,原告に対し,同年4月28日限り,スケルトン状態で,本件区画を引き渡す。 原告は,被告に対し,本件区画につき,本件訴訟の判決が確定するまでの間,本件賃貸借契約に基づき暫定賃料を支払うことを約束する。 原告と被告は,本件賃貸借契約及び上記の暫定賃料の合意があくまで仮の合意であり,本件訴訟に一切の影響を与えないものであること,本件訴訟において本件賃貸借契約及び暫定賃料に基づく主張立証活動を行わないことを相互に確認し,合意する。 a 原告と被告は,原告が本件訴訟の判決の確定後も本件区画の使用を 継続することを希望する場合は,本件訴訟の判決が確定 び暫定賃料に基づく主張立証活動を行わないことを相互に確認し,合意する。 a 原告と被告は,原告が本件訴訟の判決の確定後も本件区画の使用を 継続することを希望する場合は,本件訴訟の判決が確定した日の翌日から起算して2か月以内に,賃貸借契約を締結する。 b 当該賃貸借契約の内容は,本件賃貸借契約の内容に基づき,本件賃貸借契約の内容と本件訴訟の判決の内容とが相違するときは後者を優先するものとし,当事者双方は当該賃貸借契約を締結する義務を負う ものとする。 c 本件訴訟において訴え却下の判決がされた場合,判決確定の日の翌日から起算して60日以内に原告が本件区画の賃料に関する他の裁判所の法的手続を採らない場合,原告は賃貸借契約が締結されるまで又は当該法的手続が確定するまでのうちいずれか早く到来するまでの間, 本件区画を使用することができない。この使用できない期間中,原告 は本件区画の賃料支払義務を負わない。 イ原告は,令和2年8月31日,別館での営業を終了し,同年11月,新本館の本件区画において寿司店の営業を開始した。 (甲86)⑸ 本件訴訟における訴えの変更等 原告は,本件訴訟において,令和3年1月15日付けで,令和2年和解の和解調書の写しを書証の写しとして提出するとともに,前記⑶イ①の請求を前記第1の1記載のとおりに変更する旨の訴え変更申立書を提出し,同年8月30日の本件弁論準備手続期日で同申立書を陳述して,その旨の訴えの交換的変更をした。 (甲86,当裁判所に顕著な事実) 2 争点(請求1項関係)⑴ 本件訴えのうち賃料確認請求に係る部分の適法性(争点1)⑵ 本件区画の適正賃料額(争点2) (請求2項関係)⑶ 被告による協議義務違反の有無(争点3) (請求1項関係)⑴ 本件訴えのうち賃料確認請求に係る部分の適法性(争点1)⑵ 本件区画の適正賃料額(争点2) (請求2項関係)⑶ 被告による協議義務違反の有無(争点3)⑷ 損害の有無及び額(争点4) 3 争点に関する当事者の主張⑴ 本件訴えのうち賃料確認請求に係る部分の適法性(争点1) (被告の主張)本件賃貸借契約は,原告が,本件訴訟が確定するまでの間に,本件区画で営業を継続することの法的根拠を付与するための暫定的な措置として締結したものであって,仮の合意にすぎないから,本件賃貸借契約の賃料の額について何らかの確認をする法的な意味はなく,確認の利益を欠く。 また,原告と被告は,令和2年和解において,本件賃貸借契約に基づく主 張立証活動を行わないことを合意しており(前提事実⑷ア),賃料確認請求に係る訴えは,本件賃貸借契約における賃料の確認を求める点で訴訟契約に反する。 したがって,賃料確認請求に係る訴えは,訴えの対象とならず,却下されるべきである。 (原告の主張)本件賃貸借契約は,原告と被告との間で現在存在する契約関係であるから,その賃料を確認の対象とすることは適切である。 また,原告と被告が,令和2年和解において,本件賃貸借契約に基づく主張立証活動を行わないことを合意したのは,本件賃貸借契約の賃料額が暫定 的であることを踏まえ,これにより合意した暫定賃料に基づく主張立証活動を行わないという趣旨であるから,本件賃貸借契約を審理対象とすることに何ら問題はない。 ⑵ 本件区画の適正賃料額(争点2)(原告の主張) 本件賃貸借契約の賃料は,本件アーケードの他のテナントと同様に,坪売上40万円に対して15%とする方法で 何ら問題はない。 ⑵ 本件区画の適正賃料額(争点2)(原告の主張) 本件賃貸借契約の賃料は,本件アーケードの他のテナントと同様に,坪売上40万円に対して15%とする方法で算出すべきである。そうすると,本件賃貸借契約の賃料は,月額137万8800円(月40万円/坪×15%×22.98坪)とするのが相当である。 (被告の主張) 原告と被告は,平成27年和解において,原告が新本館の一部を賃借する際には,原告の総売上額の20%を賃料とする旨明確に合意したのだから,原告の主張に理由はない。 ⑶ 被告による協議義務違反の有無(争点3)(原告の主張) 被告は,本件協議条項1及び本件協議条項2に基づき,新本館における原 告店舗の具体的な立地を双方協議の上で決定すべき義務を負っていたにもかかわらず,原告との協議をあえて怠り,前提事実⑶アのとおり,一方的に本件区画を指定したため,故意により上記義務に違反したというべきである。 (被告の主張)協議とは任意の話合いを意味するものであって,法的な強制力をもって義 務付けられるものではない。特に,本件協議条項2は,いわゆる紳士条項である。また,被告は新本館の運営に広範な裁量を有しており,原告が自由に店舗の位置を決められるわけではない。前提事実⑶アのとおり,被告は,原告に対し,適切な位置にある本件区画を提案するとともに,原告との協議の機会を多数設けてきたのであるから,被告に本件協議条項1や本件協議条項 2の違反はない。 ⑷ 損害の有無及び額(争点4)(原告の主張)原告は,被告の協議義務違反によって,本件アーケードの片隅に追いやられた上,新本館の営業開始より2か月も遅れて営業を開始することとなった。 の有無及び額(争点4)(原告の主張)原告は,被告の協議義務違反によって,本件アーケードの片隅に追いやられた上,新本館の営業開始より2か月も遅れて営業を開始することとなった。 そのため,原告が何らかの重大な問題を起こして被告から排除されたのではないかという多大な悪印象を社会的に与えることとなり,原告の信用及び名誉は大きく毀損された。これによる無形的な損害は少なくとも1000万円である。 (被告の主張) 否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件訴えのうち賃料確認請求に係る部分の適法性)について⑴ 原告は,令和2年和解において締結された本件賃貸借契約における賃料額が月額137万8800円を超えないことの確認を求めている。本件賃貸借 契約は,前提事実⑷アのとおり,本件訴訟の判決が確定するまで本件区画 につき暫定賃料を支払うというものであるものの,暫定賃料については令和2年和解において原告と被告との間で具体的な金額の合意をしているから,本件訴訟において原告が確認を求める本件賃貸借契約の賃料額は,この暫定賃料の金額ではなく,同bにおいて「本件訴訟の判決の内容」とされるものとしての賃料額であると解される。 しかしながら,本件賃貸借契約は令和2年和解において締結されたものであるところ,本件記録上,この和解において,本件賃貸借契約の(暫定賃料ではない)賃料に関し,その具体的な金額やこれを客観的に確定し得べき基準について原告と被告との間で合意がされたと認めるに足りる的確な資料は見当たらない(例えば,本件アーケードの出店募集要項(甲34,乙16) は,借地借家法38条に定める定期建物賃貸借契約を締結することを前提とするものであって,契約の更新が予定されて 確な資料は見当たらない(例えば,本件アーケードの出店募集要項(甲34,乙16) は,借地借家法38条に定める定期建物賃貸借契約を締結することを前提とするものであって,契約の更新が予定されている本件賃貸借契約(甲86の別紙2の2条)とは前提を異にしているから,同要項に基づき本件アーケード内の他のテナントの賃料額と同等の水準とする旨の合意がされたと認めることは困難である。)。原告が,賃料確認請求について,賃料に関する確定合 意がない中で本件区画の使用収益の対価が月額137万8800円を超えないことの確認を求めるものである旨の主張をしていることに照らしても,当該請求は,本件賃貸借契約を締結する際に賃料の具体的な金額やこれを客観的に確定し得べき基準について原告と被告との間で合意が成立していないことを前提に,裁判所に対し,本件区画のあるべき賃料額を司法判断によって 決定するように求めるものであるといわざるを得ない。 このような請求に対して,裁判所が原告と被告との間の合意に基づくものとして客観的に存在する具体的な賃料額を認定することは不可能であるから,本件賃貸借契約の賃料額に関する紛争は,法令の適用により終局的に解決し得べきものに当たらず,裁判所法3条1項により裁判所が裁判をする権限を 有する「法律上の争訟」に当たらないというべきである。裁判所が,既に客 観的に存在している法律関係を確認するのではなく,裁量により新たに法律関係を形成することは,そのような権限を裁判所に付与する実定法上の根拠があれば,同項の「法律において特に定める権限」として許されるものの,賃貸借契約における新規賃料の額については,契約当事者の合意又は一方当事者の形成権に基づかずに訴訟事件又は非訟事件としてこれを決定する権限 を裁判所 おいて特に定める権限」として許されるものの,賃貸借契約における新規賃料の額については,契約当事者の合意又は一方当事者の形成権に基づかずに訴訟事件又は非訟事件としてこれを決定する権限 を裁判所に付与するという実定法上の根拠規定は存在しない。 この点につき,原告は借地借家法32条を類推適用すべきであるとも主張する。しかしながら,同条は,既に成立して相当期間を経過した賃貸借について,賃料額が客観的に不相当となっても,当事者の合意がない限りその額の増減がされないのであれば,増減によって不利益を被る当事者が拒否すれ ば不相当な額のまま据え置かれることとなってしまうので,一方当事者に増減請求の形成権を付与し,形成権行使の結果としての賃料額を裁判所が契約当事者間の訴訟において認定し,確認又は給付の判決をすることとした規定であり,その対象が継続賃料のみであることはその文言からも明らかである。 本件においては,原告と被告との間で旧本館についての賃貸借契約並びに平 成27年和解における別館の賃貸借契約及び新本館の賃貸借予約契約が存在するものの,上記の各賃貸借契約と本件賃貸借契約とでは賃貸目的物が異なっており,また,新本館の賃貸借予約契約はあくまで賃貸目的物確定前の予約にすぎないから,本件賃貸借契約は,本件区画の賃貸借契約としては,新規のものをいわざるを得ない。そうすると,本件賃貸借契約の賃料額の確定 はあくまで新規賃料としての賃料額を確定するものにほかならないのであって,同条を類推適用することは,法の予定しないところというべきである。 以上によれば,本件訴えのうち賃料確認請求に係る部分については,裁判所は実体判断をする権限を有しないというほかなく,裁判所の権限に属しない事項について裁判を求めるものとして不適法であり,却下を免れ 以上によれば,本件訴えのうち賃料確認請求に係る部分については,裁判所は実体判断をする権限を有しないというほかなく,裁判所の権限に属しない事項について裁判を求めるものとして不適法であり,却下を免れないとい うべきである(東京高裁平成13年10月29日判決・判例時報1765号 49頁参照)。 ⑵ また,この点をおくとしても,原告と被告は,令和2年和解において,本件賃貸借契約及び暫定賃料に基づく主張活動を行わないことを相互に確認する旨の合意(以下「本件合意」という。)をしていた(前提事実⑷ア)ところ,本件賃貸借契約の賃料を確認請求の対象とすることは,本件合意によ り当然に許されないものというべきであって,原告の請求の趣旨第1項に係る訴えは不適法であるから,却下すべきである。 これに対し,原告は,本件合意について,本件賃貸借契約の賃料額が暫定的であることを踏まえ,これにより合意した暫定賃料に基づく主張立証活動を行わないという趣旨であると主張するが,前提事実⑷アのとおり,令和 2年和解では,暫定賃料のみならず,本件賃貸借契約に基づく主張活動をも行わない旨を明文で定めていることからすれば,上記の認定判断を左右するものではない。 2 争点3(協議義務違反の有無)及び同4(損害の有無及び額)について原告は,本件協議条項1及び本件協議条項2に基づく被告の義務について, 原告の事業に配慮した店舗の場所の検討,原告の意見の反映を検討するプロセスの確保,原告の営業が断絶しないための余裕をもったスケジュールの設定等が不可欠の要素であり,被告がこの義務に違反して,一方的に本件区画を原告の店舗の位置として指定し,その後の原告の要望にも全く応じなかったため,本件アーケードの片隅に追いやられるなどして,その信用及び名誉を 欠の要素であり,被告がこの義務に違反して,一方的に本件区画を原告の店舗の位置として指定し,その後の原告の要望にも全く応じなかったため,本件アーケードの片隅に追いやられるなどして,その信用及び名誉を大きく毀 損される損害を被ったと主張する。そして,前提事実⑶アのとおり,被告は原告に対し,原告の要望を聞く前に本件区画を提示し,原告の異議ないし要望には,本件区画以外の提供は困難である旨の回答に終始していたものである。 しかしながら,本件協議条項2は,平成27年和解の条項に定めがない事項等について誠意をもって協議し解決する趣旨のものであり,本件協議条項1も, 新本館における原告の賃貸借部分の具体的位置等について,双方協議の上,別 途検討するというものにすぎないのであって,いずれも,被告が上記位置等についてどのような配慮や提案をすべきか,どのようにしてその位置を決定するかなどについて具体的な定めをしたものではないから,これらの条項によって被告が原告の主張するような義務を負うと解することはできない。 これに加えて,協議とは一般的に相談することを意味するものであって合意 まで含むとは限らず,ましてその結果が必ずしも一方当事者の意見どおりになるとも限らないことからすれば,被告が原告の主張するような義務を尽くしたとしても,原告の店舗の位置が原告の希望どおりになったかは判然とせず,原告の主張するような損害が発生しなかったと認めることはできない。そうすると,原告の主張する損害が被告による上記義務の違反によって生ずるものと認 めることもできない。 したがって,請求2項に係る請求は,その余の点を判断するまでもなく,理由がない。 第4 結論以上のとおり,本件訴えのうち本件賃貸借契約の賃料が月額137万8800 第4 結論 以上のとおり,本件訴えのうち本件賃貸借契約の賃料が月額137万8800円を超えないことの確認を求める部分は不適法であるから却下し,その余の部分の請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第12部 裁判長裁判官成田晋司 裁判官作田寛之 裁判官吉田怜未

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