主文 本件控訴を棄却する。 当審における未決勾留日数中一九〇日を原判決の刑に算入する。 理由 一本件控訴の趣意は、弁護人内山成樹作成名義の控訴趣意書に記載されたとおりであるから、これを引用する。 二論旨は、要するに、原判決は被告人の尿に係る鑑定書等を有罪認定の根拠として証拠の標目に掲げているところ、被告人の尿の採取手続には次のような違法があり、その尿に係る証拠は全て違法収集証拠として排除されなければならないのに、右鑑定書等を証拠として採用して取り調べた原審の訴訟手続には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、ひいては、違法に収集された証拠を除けば、被告人を有罪とする証拠は一切存在しないのであるから、本件覚せい剤の使用につき被告人を有罪と認めた原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるというのである。すなわち、警察官らは、自動車を運転していた被告人に対し職務質問を実施した際、被告人の承諾を得ないで、勝手に被告人の乗る自動車内を捜索した上、車内から覚せい剤を発見したとして押収し、被告人を覚せい剤所持の現行犯人として逮捕し、さらに、こうして逮捕された被告人に対し、提出しないときは強制採尿を仄めかして実質的には尿の提出を強制したものであるから、本件採尿手続によって得られた尿は、違法な捜索差押手続及び逮捕手続の瑕疵を引き継いだ「毒樹の果実」であり、これに係わる証拠は全て違法収集証拠であるというのである。 三そこで、原審記録を調査して検討すると、関係各証拠を総合すれば、被告人が覚せい剤所持の現行犯人として逮捕されるに至った状況、被告人が尿を提出するに至るまでの経過等は、次のようなものであったと認めることができる。 1 まず、関係各証拠によれば、被告人が逮捕 ば、被告人が覚せい剤所持の現行犯人として逮捕されるに至った状況、被告人が尿を提出するに至るまでの経過等は、次のようなものであったと認めることができる。 1 まず、関係各証拠によれば、被告人が逮捕されるまでの経過等につき、次のような事実が明らかである。すなわち、(1) 警視庁三田警察署所属のA巡査は、平成五年三月一一日午前三時一〇分ころ、B巡査とともに、無線警ら自動車(いわゆるパトカー)に乗務し、国道一五号線(通称第一京浜)の上り線を進行しながら警ら中、東京都港区ab丁目付近に差し掛かった際、下り線上に交差点の手前で一番先頭に停止していながら信号が青色に変わったのに発進しない車両のあるのを発見した。 (2) A巡査らは、右車両につき、運転者が寝ているか、酒を飲んでいるのではないかという疑いを持ち、職務質問をしようと考えて、パトカーに赤色灯を点灯し、Uターンして右車両の後方に回って、マイクを使って右車両の停止を呼びかけた。その際、被告人は、右車両すなわち普通乗用自動車(静岡○○わ○△×□号。 以下「本件自動車」という。)に一人で乗り、運転していたが、右のように停止を呼びかけられたにもかかわらず、マイクでの呼びかけがあった直後に本件自動車を発進させた。 (3) そのため、A巡査らは、サイレンを鳴らしながら追跡し、マイクで停止を呼びかけ続けたが、被告人は、約二・七キロメートルばかり本件自動車の走行を続け、品川駅近くの八ッ山橋交差点付近に至ったころ、ようやく停止した。その間に、第一自動車警ら隊本部のパトカーも応援に駆けつけ、A巡査らのパトカーと二台で追跡する形となっていた。 (4) A巡査は、被告人が本件自動車を停止した直後、その傍らに近づき、窓を開けさせて運転席に座る被告人に「なぜ止まらなかったのか」と聞いたりし、ラジオの音量を大きく 台で追跡する形となっていた。 (4) A巡査は、被告人が本件自動車を停止した直後、その傍らに近づき、窓を開けさせて運転席に座る被告人に「なぜ止まらなかったのか」と聞いたりし、ラジオの音量を大きくしていたので分からなかったなどと弁明する被告人に、運転免許証の提示を求めた。ところが、被告人が免許証を忘れて来たなどと言い出したことから、さらに、A巡査は、被告人に名前などを尋ね、被告人の述べる住所氏名に基づき、B巡査が免許照会を行ったところ、被告人においては普通免許は有しているものの、免許証不携帯であることが判明した。 (5) A巡査は、さらに総合照会の結果、被告人に覚せい剤の前歴五回を含む九回の前歴があるとの回答があった上、被告人の頬がこけているように見え、喋り方も普通と違っていたことから、右のように停止を求められながら、本件自動車を停めないで逃げたりしたことと合わせて、被告人が覚せい剤を所持しているのではないかという疑いを抱き、そうした観点から職務質問を続けることにし、免許証不携帯であることが判明した時点で被告人に本件自動車から降りることを求め、これに従って車の外に出た被告人に対し、腕を見せるよう求めたり、所持品の検査や本件自動車の車内の検索を行うことに応じるよう求め、さらには一緒に警察署まで同行することを求めたりした。 (6) しかし、被告人は、免許証を忘れたのは自分が悪いと言いながら、「昔はシャブをやっていたが、今は卒業したよ」などと言うとともに、車の中を調べるのなら、令状を持って来いなどとも言って、A巡査の説得に対し承諾を一切を拒否し、ときには同巡査らに罵声を浴びせたりした。 (7) A巡査らは、二〇分位、被告人を説得しようと努力したが、被告人がこれに全く応じようとしないため、覚せい剤等の事犯の捜査を担当する係員の応援を求める ときには同巡査らに罵声を浴びせたりした。 (7) A巡査らは、二〇分位、被告人を説得しようと努力したが、被告人がこれに全く応じようとしないため、覚せい剤等の事犯の捜査を担当する係員の応援を求めることにし、三田警察署と連絡を取ったところ、その五分ないし一〇分後に、同警察署刑事防犯課保安係の主任であるC巡査部長が、鑑識係のD巡査とともに、捜査用の自動車に乗って、本件自動車が止められている場所に駆けつけて来た。 (8) C巡査部長は、到着後、A巡査から簡単にそれまでの状況を聞き、折から本件自動車の運転席のドアを背にして同巡査と向かい合っていた被告人の様子を見て、皮膚が荒れ、目も充血して寝不足といった感じなどから、いわゆる覚せい剤に「よれている」状態にあると判断し、早速、被告人に対し「何そんな手こずらせているんだ」などと話しかけ、被告人が「私、何も持っていないんだから帰してくれないですか」などと答えたのに、「じゃあ、君、やばいものを持っていなかったりするならば、警官の指示に従ってちゃんと立証すればいいじゃないか」などと言って、被告人を納得させようとした。しかし、被告人が所持品検査や本件自動車内の検索などを承諾する様子を見せなかったため、C巡査部長は、なおも説得には時間を要すると見込まれたことから、道路上では他の車の交通があるので事故防止ということも考えて、自分たちの乗って来た捜査用の自動車に乗るよう被告人に求め、これに応じて右自動車の後部座席に座った被告人に対し、しばらく、A巡査の行ったのと同じような説得を繰り返した。 (9) そのころ、その場に来ていた警察官の一人が、本件自動車の中を窓の外から覗くなどして調査しているうち、車内に白い粉状のものがあることを発見し、その旨C巡査部長に報告したことから、同巡査部長は、被告人に対し、右見つかった ていた警察官の一人が、本件自動車の中を窓の外から覗くなどして調査しているうち、車内に白い粉状のものがあることを発見し、その旨C巡査部長に報告したことから、同巡査部長は、被告人に対し、右見つかった白い粉状の物を検査してみたいので、被告人に立ち会って欲しいという趣旨のことを言い、被告人も「あれは砂糖ですよ。私は、変なものは持っていません。見て下さいよ」などと答えたので、被告人とともに捜査用の自動車から降りて、本件自動車の方に行った。そして、C巡査部長は、自ら本件自動車の運転席に乗り込み、被告人を助手席側のドアの側に立たせて、中の様子が覗ける状態にした後、右警察官が発見したという、運転席と助手席との間にあるコンソールボックスの下方の床のマット部分に白い結晶状のものがスプーン一杯分くらい散らばっているのを確認した上、被告人に対し「とりあえず検査してみる」などと告げて、右白い結晶状のものの一部を取り、その際持って来ていた試薬を用い、いわゆる予試験をしたところ、覚せい剤の反応は検出されなかった。 (10) C巡査部長は、その直後、本件自動車を降り、傍らにいたA巡査に、これから被告人の承諾を取って、もう一回車の中を念入りに検索して貰うぞという趣旨の耳打ちをし、次いで、助手席側のドアの側にいる被告人に近寄り、「おい、君、車をとりあえず調べるぞ。これじゃあ、もうどうしても納得がいかんし」などと告げ、他の警察官らに対しては「相手は承諾しているから、車をもう一回よく見ろ。絶対これは何かあるはずだ」などと言って、本件自動車の中の検索を指示した。 (11) A巡査ら警察官四名が、C巡査部長の右指示に従い、懐中電灯や集光ライトを用い、座席の背もたれを前に倒したりシートを前後に動かすなどして、車内を丹念に調べたところ、運転席の真下の、やや後方寄りの床に白い結晶 ら警察官四名が、C巡査部長の右指示に従い、懐中電灯や集光ライトを用い、座席の背もたれを前に倒したりシートを前後に動かすなどして、車内を丹念に調べたところ、運転席の真下の、やや後方寄りの床に白い結晶状の粉末の入ったビニール袋一袋(三センチ×二センチくらいの大きさのもの)が裸のままで落ちているのを発見するに至った。被告人は、A巡査らが右のような検索をする間、本件自動車の傍らにC巡査部長と並ぶ形で立ち、右検索の様子を眺めていたが、警察官らのすることに異議を述べたり口出しをするようなことは一切しなかった。 (12) C巡査部長は、右ビニール袋を発見した旨の報告を受けた後、自分ともども被告人にも右ビニール袋が落ちている様子を確認させた上、覚せい剤予試験用の試薬を先のコンソールボックスの下方の床に散らばっていた白い結晶状のものを検査したときに使用し、その際手持ちが無くなってしまっていたこともあって、被告人に対し、「物も出たことだから本署へ行って貰うよ。向こうで改めてきちっと検査するよ」などと言って、任意同行を求め、被告人も「あったらしようがないですよ」などと言って、素直に応じる態度を示したので、被告人を前記捜査用の自動車に乗せて三田警察署まで同行した。なお、A巡査は、被告人に自分が運転していく旨告げて、本件自動車を運転して三田警察署まで運んだ。 (13) C巡査部長、A巡査らは、三田警察署に到着後、試薬を用いて、右ビニール袋入りの白い結晶状の粉末について予試験を行い、覚せい剤の反応を確認した後、同日午前四時前ころ、被告人を覚せい剤所持の現行犯人として逮捕する手続を取った。 なお、右(9)認定のように、C巡査部長が運転席と助手席との間にあるコンソールボックスの下方の床に散らばっていた白い結晶状のものにつき、予試験を行って、覚せい剤でないことが 捕する手続を取った。 なお、右(9)認定のように、C巡査部長が運転席と助手席との間にあるコンソールボックスの下方の床に散らばっていた白い結晶状のものにつき、予試験を行って、覚せい剤でないことが判明した後、右(11)認定のように、A巡査ら警察官四名が、C巡査部長の指示に従って、本件自動車に乗り込むなどして車内の丹念な検索を開始するまでの間に、被告人が右検索を承諾する趣旨の言葉を述べたかどうかについては、関係各証拠の間で食い違いがあり、必ずしも明確でない。すなわち、被告人は、原審公判廷における供述中で、車内にこぼれていた砂糖に試薬を使って覚せい剤かどうか検査した後、自分は捜査車両の方に連れて行かれ、C巡査部長から腕を見せてくれなどと言われたが、これに応じられないなどと話しているうち、警察官がやって来てC巡査部長に耳打ちし、同巡査部長が「物が出たぞ」と言うまでの間に、自分が本件自動車の中の検索を承諾するような趣旨のことを言ったことは全くない旨述べている。また、A巡査が、原審公判廷で証人として述べたことには、前後若干の変遷があり、検察官の主尋問の際には、被告人が本件検索をすることに同意したことは間違いないが、被告人が何と言ったかは聞いていないという趣旨のことを述べながら、弁護人の反対尋問の際には、C巡査部長が被告人を連れて捜査車両から出てきた際に、C巡査部長が、「悪いことをしていなけりゃ、とにかく車から全部検索させろ」などと大きな声でいうと、被告人が「しようがねえな」ということを言っていたという趣旨のことを述べている。一方、C巡査部長は、原審公判廷で証人として尋問を受けた際、車内にあった被告人が砂糖だというものについて予試験をやった後、自分は自動車から降りて助手席側のドアの側にいる被告人に近寄り、「おい、君、車をとりあえず調べるぞ。これじ 廷で証人として尋問を受けた際、車内にあった被告人が砂糖だというものについて予試験をやった後、自分は自動車から降りて助手席側のドアの側にいる被告人に近寄り、「おい、君、車をとりあえず調べるぞ。これじゃあ、もうどうしても納得がいかんし」などと言った際、被告人は「もうしようがないですよ、やって下さい」と返事をしていた旨供述している。 したがって、被告人の右供述はさておき、Aの右証言やCの右証言が一応信用できるとしても、右各証言によれば、被告人が本件検索を承諾したかどうかに関し、被告人においては、C巡査部長から本件自動車の中の検索を行うことを告げられた際に、「しようがない」という趣旨のことを述べたことがあったと窺われるにとどまるのである。 2 次に、関係各証拠によれば、被告人が尿を提出するに至った経緯や状況等に関しては、次のような事実が認められる。すなわち、(1) C巡査部長は、前記のように被告人を覚せい剤所持の現行犯人として逮捕し、関連する手続を終了後、被告人に対し、このような事件では、腕を見せて貰わなければならないし、尿も提出して貰うという趣旨のことを言ったが、被告人の答えが今は尿が出ないというものであったので、寝不足だし疲れているだろうから、とにかく寝るようにという趣旨のことを言って、その際はそれ以上に被告人から尿の提出を求めるようなことは行わなかった。 (2) 被告人は、右三月一一日、午前五時ころから留置場で就寝して休息を取った後、午前九時三〇分ころから、本件捜査を担当する三田警察署刑事防犯課保安係のE係長から取調べを受けたが、しばらくして尿の提出を求められ、最初は拒絶する態度を示していたものの、午前一一時ころには、任意提出に応じる態度を示すようになっていた。 (3) 被告人は、午前一一時一〇分ころ、同保安係のF巡査部長とG巡 して尿の提出を求められ、最初は拒絶する態度を示していたものの、午前一一時ころには、任意提出に応じる態度を示すようになっていた。 (3) 被告人は、午前一一時一〇分ころ、同保安係のF巡査部長とG巡査に連れられて、三田警察署の三階の男子便所に入り、まず、同便所の入口で、F巡査部長らから採尿用のポリ容器を手渡され、その指示に従って、同便所の手洗い所で右ポリ容器を洗った後、同便所内で、F巡査部長らの立会いの下に右ポリ容器に自分の尿を排出した。そして、被告人は、いったん右ポリ容器をF巡査部長に渡して尿が入っていることを確認して貰い、さらに同巡査部長から戻された右ポリ容器を自分で持って、三階の保安係の調べ室に行き、同室で封印用紙に署名をするなどして、右ポリ容器に封印し、これを同巡査部長に引き渡した。次いで、被告人は、F巡査部長らの指示に従い、尿の任意提出書、所有権放棄書、鑑定承諾書などを作成した。なお、その間、被告人は、同巡査部長らの指示に素直に協力する態度を取り、尿の任意提出を拒否したり、抵抗するようなことは一切しておらず、F巡査部長などが強制採尿を仄めかすようなことを話したりしたこともなかった。 (4) 右尿について、警視庁科学捜査研究所の技官によって鑑定が行われた結果、覚せい剤が検出された。 <要旨第一>四 1 右三認定のような事実関係に基づき、本件各手続の適法性について考えてみるに、まず、本件自動車の</要旨第一>中の検索(以下「本件検索」という。)は、未だ具体的な被疑事件の捜査が開始された状況にないのであるから、刑訴法上の捜索でないことはいうまでもない。すなわち、本件検索は、職務質問に付随して行う所持品検査の一種であると考えられるところ、所持品検査は、任意手段として許容されるものであるから、所持人の承諾を得てその限度でこれを行うの うまでもない。すなわち、本件検索は、職務質問に付随して行う所持品検査の一種であると考えられるところ、所持品検査は、任意手段として許容されるものであるから、所持人の承諾を得てその限度でこれを行うのが原則であり、ただ所持人の承諾がない場合でも、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、所持品検査の必要性、緊急性、これによって侵害される個人の法益と公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度で許容されると解されるのである(最高裁判所昭和五三年九月七日判決、刑集三二巻六号一六七二頁参照)。 そして、本件についてみると、前記三の1(4)ないし(9)認定のような状況に照らし、被告人に覚せい剤の使用又は所持の容疑がかなり顕著に認められ、また、その際自動車を運転中であって、被告人が免許証不携帯ではあったものの、自動車に乗っていずれかに立ち去ってしまうおそれも大きかったのであるから、前記三の1(9)認定のように本件自動車の中を窓の外から覗いた際、運転席と助手席との間にあるコンソールボックスの下方の床のマット部分に白い結晶状のものが散らばっているのが見えるという状況のもとでは、十分に必要性、緊急性などもあり、C巡査部長が自ら本件自動車の運転席に乗り込み、被告人を助手席側のドアの側に立たせて、中の様子が覗ける状態にした上で、右白い結晶状のものの一部を取り、その際持って来ていた試薬を用い、いわゆる予試験をするなどしたことは、被告人の承諾の有無にかかわらず、右に許容される範囲に入るものと解される。 しかし、本件検索についてみると、前記三の1(10)認定のように、C巡査部長の「車をもう一回よく見ろ。 絶対これは何かあるはずだ」などという指示に基づき、A巡査ら警察官四名が、本件自動車内に乗り込むなどした上、懐中電灯や集光ライト 記三の1(10)認定のように、C巡査部長の「車をもう一回よく見ろ。 絶対これは何かあるはずだ」などという指示に基づき、A巡査ら警察官四名が、本件自動車内に乗り込むなどした上、懐中電灯や集光ライトを用い、座席の背もたれを前に倒したりシートを前後に動かすなどして車内を丹念に調べたというものであるから、本件検索は、その態様、実質等においてまさに捜索に等しいものである(なお、C巡査部長も、原審公判廷における証言中で、「それで、じゃあ、被告人に、おい車をとりあえず調べるぞということで、現場の警察官らに、相手は承諾しているから、車をもう一回よく見ろと、絶対これは何かあるはずだというふうに指示しまして、捜索をお願いしました。」と供述している部分があり、その際の警察官らの意識も捜索をするというものであったことを窺わせる。)。したがって、被告人の承諾がない限り、本件検索は、所持品検査としての限界を越えたものであって、許されないものであったというべきである。そして、本件検索について、被告人が承諾していたかどうかについては、前記三の1認定のとおり、被告人は、本件検索の直前まで、本件自動車内の検索を拒絶し続けていたものであり、また直前においても、前記三の1で検討したように、Cらの証言を前提としても、C巡査部長から本件自動車の中の検索を行うことを告げられたのに対し、被告人が「しようがない」という趣旨のことを述べたことが窺われるに過ぎないから、その際被告人の任意の承諾があったとは到底認められない。すなわち、本件検索は、所持品検査としては、その許容される範囲を逸脱した違法なものであり、本件検索によって覚せい剤を発見したことに基づき、被告人を覚せい剤所持の現行犯人として逮捕したことも違法ということに帰するのである。 <要旨第二>2 そして、本件採尿手続は、本件検 法なものであり、本件検索によって覚せい剤を発見したことに基づき、被告人を覚せい剤所持の現行犯人として逮捕したことも違法ということに帰するのである。 <要旨第二>2 そして、本件採尿手続は、本件検索や被告人を逮捕した手続とともに、被告人に対する覚せい剤事犯の捜</要旨第二>査という同一目的に向けられたものであり、しかも、右のような本件検索及び現行犯人逮捕手続によりもたらされた状態を直接利用してなされているものであるから、右1においてみたとおり、本件検索が職務質問に伴う所持品検査の限界を越えたものとして違法であり、ひいては被告人の現行犯人逮捕も、また違法といわなければならないことを考慮すると、その逮捕された状態を利用して行われた本件採尿手続も違法であるといわざるを得ない。 しかしながら、本件検索も、前記のように被告人に覚せい剤の使用又は所持の容疑がかなり顕著に認められ、本件自動車内を調べる必要性や緊急性も十分にあったと認められる状況のもとで行われ、被告人の身体等に直接に有形力などを加えたりしたものではないこと等に照らし、その態様、実質等において捜索に等しいものであることで所持品検査の限界を越えたとはいえ、その違法性の程度は、令状主義を没却するほど重大のものというには至っていない。そして、本件採尿手続自体としても、前記三の2認定のとおり、現行犯人逮捕に引き続いて直ちに行われたものではなく、逮捕した被告人にいったん睡眠や休息の時間を与えた上で行われたものであること、しかも本件採尿手続に関与した捜査官は、本件検索及び被告人の現行犯人逮捕に従事した警察官とは異なる者であって、尿の提出を強制などした状況はなく、被告人が自分の尿を任意に提出したものであることなどが認められ、こうした状況に照らし、結局のところ、被告人の全く自由な意思に基づく応諾によ 察官とは異なる者であって、尿の提出を強制などした状況はなく、被告人が自分の尿を任意に提出したものであることなどが認められ、こうした状況に照らし、結局のところ、被告人の全く自由な意思に基づく応諾により行われたものということができる。すなわち、以上のような諸事情に照らすと、本件採尿手続は、本件検索ひいては被告人に対する逮捕手続の違法を引き継いでいるとはいえ、その違法の度合は、さほど大きいものということはできない。したがって、本件採尿手続によって収集された各証拠(被告人の尿に係る鑑定書、鑑定嘱託書謄本及び本件採尿状況を撮影した各写真(原審甲2号証の採尿状況報告書の同意部分)などがこれに当たる。)を被告人の本件覚せい剤使用の罪証に供することが、違法捜査抑制の見地から相当ではないとはいえないから、これらの証拠を違法に収集されたものとして排除すべきではない。なお、右各証拠は、原審において、被告人が証拠とすることに同意し、適式な証拠調べを終えている。 3 以上から結局、被告人の尿に係る鑑定書等を証拠として採用して取り調べた原審の訴訟手続には、所論指摘のような判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反はない。また、原判決の挙示する関係各証拠によれば、原判示の罪となるべき事実は、合理的な疑いを越えてこれを認定することができるから、原判決には所論のような事実認定の誤りもない。論旨は、理由がない。 五よって、刑訴法三九六条により本件控訴を棄却し、刑法二一条を適用して、当審における未決勾留日数中一九〇日を原判決の刑に算入し、当審における訴訟費用は、刑訴法一八一条一項ただし書を適用して、被告人に負担させないこととし、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官松本時夫裁判官円井義弘裁判官河合健司) 一項ただし書を適用して、被告人に負担させないこととし、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官松本時夫裁判官円井義弘裁判官河合健司)
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