宣告日令和6年7月17日事件番号令和6年(わ)第95号事件名重過失傷害 主文 被告人を禁錮6 月に処する。 この裁判確定の日から4 年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)当裁判所の認定した罪となるべき事実は、第1 起訴状記載の公訴事実第1第2 起訴状記載の公訴事実第2と同一であるから、これらを引用する。 (証拠の標目)省略(法令の適用)省略(量刑の事情)本件は、「A」と名付けた闘犬種であるアメリカン・ピット・ブル・テリア1 頭を飼育していた被告人が、①令和4 年11 月27 日午後1 時頃、被告人の力では十分に制御するのが困難なAを一人で散歩に連れ出した上、周囲の状況を注視せず、リードを適切に握持・操作しなかったなどの重過失により、前方の交差点を左側から自転車で右折してきた被害者(当時83 歳)にAをかみ付かせて、回復不能の左耳介欠損と全治約1 か月の右前腕犬咬創の傷害を負わせ(第1)、②その後の令和5 年8 月 31 日午前7 時頃、同居していた祖父(当時80 歳)に適切な散歩の仕方を伝えて実行させることもないままAの散歩に行かせたなどの重過失により、道路を前方から自転車で進行してきた被害者(当時15 歳)にAをかみ付かせて、全治約1 か月半の膝窩部等犬咬傷の傷害を負わせた(第2)、重過失傷害2 件の事案である。 アメリカン・ピット・ブル・テリアは、咬傷事故を起こしやすい犬種として知られ、被告人が住んでいた各務原市においても、咬傷事故が命に係わる重大事故につながるおそれがあるとして、犬の飼主に事故防止対策をとるよう呼びかけるパンフレットが配布されるなどしていた。Aはこのような犬種に属する上、しつけもできていなかったというの 故が命に係わる重大事故につながるおそれがあるとして、犬の飼主に事故防止対策をとるよう呼びかけるパンフレットが配布されるなどしていた。Aはこのような犬種に属する上、しつけもできていなかったというのであるし、被告人は、このパンフレットは読んでいなかったものの、同犬種の犬が凶暴だとか、人を襲って死なせたなどとの記事がネット上に多数あるのは知っていたのであるから、不適切な仕方で散歩をさせれば重大な咬傷事故が生じる危険は十分予見できたといえる。そのような中で、被告人は、Aを自ら手に入れて被告人とともに飼育していた夫が自宅におり、夫に散歩をさせるなどの回避措置をとるのも容易だったのに、安易に自ら散歩に出た上、腰に巻いたリードを手に持つことなくAに引っ張られるまま歩いていて、第1 の事故を起こした。 こうして上記の危険を自ら現実のものとし、それが容易に予見されるようになった後も、十分な事故防止対策をとらず、夫が不在となって祖父方に身を寄せた後は、高齢の祖父に懐いていないAの散歩を漫然と任せるようになって、第2 の事故を起こしている。このように、いずれの事故についても過失は重大であり、被告人には強い非難が向けられる。その結果、被害者2 名は突然犬にかみつかれて激しい肉体的苦痛を受け、上記のとおりそれぞれ相応に重い傷害を負い、生活や活動にも支障が生じるなどしている。以上によると、被告人の刑事責任には軽視できないものがあり、罰金刑ではなく禁錮刑を選択するのが相当である。 その余の事情をみると、被告人は、自らの重過失によって生じさせた各被害に、適切に向き合ってきたとは必ずしもいい難い。各被害者側への対応の仕方は稚拙で、平穏だった生活が受傷後に一変した第1 の被害者を支えて心を痛め、苦しむ家族や、青春の1 ページを損なわれた第2 の被害者とその家族を、さら たとは必ずしもいい難い。各被害者側への対応の仕方は稚拙で、平穏だった生活が受傷後に一変した第1 の被害者を支えて心を痛め、苦しむ家族や、青春の1 ページを損なわれた第2 の被害者とその家族を、さらに傷付けたといわれてもやむを得ないものであり、彼らに真摯さ・誠実さを疑わせ、厳しい処罰感情を抱かせるに至っている。もっとも、被告人は、これまでAを殺処分すべく保健所に引き渡して再発防止措置をとり、捜査・公判を通じて事実を認め、治療費等の費用 として請求された金額を支払うなど、自己の責任を認める姿勢は示してきた。そして、資力の問題もあって曲折を経たものの、各被害者側に対し、それぞれ相応の額の損害賠償金(省略)の分割払を約する示談を申し入れた上、その最初の支払(省略)もした。この申入れは現時点では受け入れられていないものの、被告人がこれらの行動によって改めて上記の姿勢を示し、申入れに係る支払を続けると約していることは、相応の評価に値する。なお、被告人にこれまで前科はない。 先に説示した被告人の刑事責任の程度に加え、これらの事情も併せ考慮すると、被告人を直ちに実刑に処するには躊躇するところがある。そこで、被告人を求刑どおりの禁錮刑に処した上、長期間の執行猶予を付して、損害賠償金の支払を含む慰謝の措置に尽くすよう促すこととする。 (求刑禁錮6 月)令和6 年7 月17 日岐阜地方裁判所刑事部裁判官平手一男 公訴事実被告人は第1 令和4年11月27日頃には、岐阜県各務原市(住所省略)所在の当時の被告人方において、夫であるBとともに「A」と名付けた闘犬種であるアメリカン・ピット・ブル・テリア1頭(体重約22.6kg。以下「A」という。)を飼育して 、岐阜県各務原市(住所省略)所在の当時の被告人方において、夫であるBとともに「A」と名付けた闘犬種であるアメリカン・ピット・ブル・テリア1頭(体重約22.6kg。以下「A」という。)を飼育していたものであるが、Aはその犬種から人に害を加えるおそれがあった上、重量があって被告人の力では十分に制御することが困難であったのであるから、被告人単独でAの散歩をすることを差し控えることはもとより、あえて被告人単独でAの散歩をするのであれば、人の交通の少ない時間帯及び場所を選んだ上、Aが往来する人に接近しないよう周囲の状況を注視しながらリードを適切に握持、操作するなどして、Aの行動を確実に制御し、Aが人に危害を加えることを防止すべき注意義務があるのにこれを怠り、短時間の散歩であれば咬傷事故が起きることはないと軽信し、同日午後1時頃、被告人単独で、前記の当時の被告人方からAを散歩に連れ出した上、周囲の状況を注視せず、リードを適切に握持、操作しなかった重大な過失により、同市(住所省略)先交差点において、折から同交差点左方道路から自転車で右折してきたC(当時83歳)にAを接近させた上、Aに同人の右前腕をかみ付かせ、さらに、直ちにAを制御することができないまま、Aに転倒した同人の左耳をかみ付かせ、よって、同人に左耳介欠損及び全治約1か月を要する右前腕犬咬創を負わせた第2 令和5年8月31日頃には、同市(住所省略)所在の被告人方において、被告人の祖父であるD(以下「D」という。当時80歳)と同居し、Aを飼育していたものであるが、前記第1のとおり、Aはその犬種から人の身体に害を加えるおそれがあった上、散歩中に自転車に乗った通行人に対する咬傷事故を起こしたのであるから、適切なリードの操作方法等を認識していなかったDに散歩させるのを差し控えることはもとより ら人の身体に害を加えるおそれがあった上、散歩中に自転車に乗った通行人に対する咬傷事故を起こしたのであるから、適切なリードの操作方法等を認識していなかったDに散歩させるのを差し控えることはもとより、あえてDにAの散歩をさせるのであれば、人の交通の少ない時間帯及び場所を選んだ上、Dに対して、Aが往来す る自転車や人に接近しないよう周囲の状況を注視しながらリードを適切に握持、操作するなどしてAの行動を確実に制御すべきことを伝達するとともにこれを実行させ、Aが人に危害を加えることを防止すべき注意義務があるのにこれを怠り、漫然とDにAの散歩を任せ、DがAの散歩をする時間帯及び場所並びにそのリードの操作方法を把握することもなく、Dに対して、周囲の状況を注視しながらリードを適切に握持、操作するなどしてAの行動を確実に制御するべきことを伝達して実行させることもないまま、同日午前7時頃、DをしてAの散歩に行かせた重大な過失により、同市(住所省略)a川左岸堤防道路上において、Dが前記道路上を進行してきた自転車にAが接近したのに気を取られ、同自転車の後方から自転車で進行してきたE(当時15歳)に気づかず、リードを適切に操作してAを前記Eに接近させないようにすることのないまま、Aに同人の膝窩部付近をかみ付かせ、よって、同人に全治約1か月半を要する膝窩部等犬咬傷を負わせたものである。
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