令和7(わ)234 虚偽有印公文書作成被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年12月19日 静岡地方裁判所
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判決文本文2,257 文字)

令和7年12月19日宣告令和7年(わ)第234号 主文 被告人を懲役1年6月に処する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 押収してある電話用紙1通(令和7年押第9号の1)の虚偽記載部分を没収する。 理由 【罪となるべき事実】被告人は、静岡県警察浜松中央警察署交通第一課運転免許係に所属する警察官と して、交通事件の捜査等の職務に従事していたものであるが、物損事故を起こした車両の運転者を道路交通法違反(酒気帯び運転)被疑事件の現行犯人として逮捕した手続に関する内容虚偽の捜査書類を作成しようと考え、令和7年5月12日、浜松市中央区住吉5丁目28番1号所在の静岡県警察浜松中央警察署において、行使の目的で、真実は、通報者が、同事故を直接目撃しておらず、他の警察官に対し、 中央分離帯に衝突して停止している車両を発見した旨を電話で説明し、自らもこの事情を認識したにもかかわらず、同署に備え置かれたパーソナルコンピュータ等を使用して、「事故の目撃状況について」と題する電話用紙の電子データの聴取内容記載欄に、通報者からの聴取内容として、「事故を起こした車両の後方を走っていて、中央分離帯にぶつかる交通事故を目撃した。」「事故の発生は、通報の2分前 くらいになる。」などと虚偽の内容を入力して印字した上、その発信取扱者官職氏名印欄に「A」と署名するとともに、その末尾にAと刻した印鑑を押印し、もって公務員が、その職務に関し、内容虚偽の公文書である電話用紙1通(令和7年押第9号の1)を作成した。 【量刑の理由】 1 本件は、警察官として交通事件の捜査等に従事していた被告人が、物損事故 を起こした車両の運転者を現行犯人逮捕した手続に関する捜査書類を作 9号の1)を作成した。 【量刑の理由】 1 本件は、警察官として交通事件の捜査等に従事していた被告人が、物損事故 を起こした車両の運転者を現行犯人逮捕した手続に関する捜査書類を作成するに当たり、通報者が同事故を直接目撃していないことを自ら認識したにもかかわらず、通報者から電話聴取した内容を偽り、虚偽公文書である電話用紙1通を作成したという事案である。 2 通報内容を記録する電話用紙は、捜査手続を適正に進め、かつ、事案の真相 を明らかにするために警察官が作成する捜査書類であるから、本件物損事故を発見した状況等に関して通報者から電話聴取した内容が正確に記録されるべきものである。それにもかかわらず、被告人は、判示のとおり、内容虚偽の電話用紙1通を作成した。本件は、警察官による適正な事件捜査に対する重大な疑念を生じさせるとともに、警察官が作成する捜査書類全般、ひいては公文書に対する社会的信用を著 しく損なうおそれの高い悪質な犯行であり、これにより生じた結果は重大である。 3 被告人は、通報者が、本件物損事故を起こした車両から運転者が降車する場面を目撃していた旨を述べていると認識した。そこで、被告人は、通報者が、事故を直接目撃していないとしても、事故直後から運転者の動静等を観察しており、これに、その後臨場した警察官による飲酒検知の結果等を併せ考慮すれば、運転者を 道路交通法違反(酒気帯び運転)被疑事件の被疑者として現行犯人逮捕することができると理解したものである。すなわち、このような認識、理解の下において、被告人は、本件のような内容虚偽の捜査書類を作成しなくとも現行犯人逮捕手続の適法性を維持できると考えていたといえる。被告人以外の他の警察官が通報者からの電話聴取を行ったのに、被告人がその聴取内容を記載した本件 本件のような内容虚偽の捜査書類を作成しなくとも現行犯人逮捕手続の適法性を維持できると考えていたといえる。被告人以外の他の警察官が通報者からの電話聴取を行ったのに、被告人がその聴取内容を記載した本件電話用紙を作成する ことになった経緯をも踏まえると、被告人が本件犯行に及んだのは、一面において、警察組織内における自らの立場を考えたり上司に対して忖度をしたりしたことによるものとみることができる。そうすると、被告人が、違法捜査を殊更隠ぺいしようとする積極的な意図の下で本件犯行に及んだとまではいい難い。 もっとも、被告人が、長年、交通事件の捜査等に携わっており、本件物損事故を 端緒とする前記被疑事件の捜査における通報者からの情報の重要性を十分に理解し ていたことを考えると、被告人が負うべき刑事責任を決して軽くみることはできない。 4 他方、被告人が、本件事実を認めて捜査に協力するなどして反省の態度を示していること、被告人の妻が、公判において、今後の被告人の更生に向けて協力し、被告人を支えていく旨を述べていること、被告人は、本件発覚後に懲戒処分を受け、 その後、依願退職しており、既に十分な社会的制裁を受けていることなど、被告人のために酌むべき事情が認められる。 5 そこで、これらの事情を総合考慮して、被告人に対しては、主文の刑を科した上で、その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑懲役1年6月、電話用紙1通の虚偽記載部分の没収)令和7年12月19日静岡地方裁判所刑事第1部 裁判長裁判官丹羽芳徳 裁判官一社紀行 裁判官河口嵩朋 事第1部 裁判長 裁判官 丹羽芳徳 裁判官 一社紀行 裁判官 河口嵩朋

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