平成16(行ウ)26 調整手当支給差止請求事件

裁判年月日・裁判所
平成17年1月27日 名古屋地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文27,573 文字)

主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,名古屋市及び岡崎市を除く愛知県内に在勤する愛知県職員に対して調整手当を支給してはならない。 第2 事案の概要本件は,愛知県の住民である原告が,愛知県職員に対して給料の月額等に100分の10を乗じた額の調整手当を一律に支給することは,地方公務員法24条第3項又は地方自治法204条2項に反して違法であると主張して,地方自治法242条の2第1項1号に基づき,被告に対し,同手当を名古屋市及び岡崎市を除く愛知県内に在勤する愛知県職員に支給することの差止めを求めた住民訴訟である。 1 前提事実(争いのない事実及び証拠によって容易に認定できる事実等)(1) 当事者原告は,愛知県(以下,単に「県」ともいう。)の住民である。 被告は,愛知県知事として,県を統轄し,その事務を管理・執行している(地方自治法147条,148条)。 (2) 愛知県における「職員の給与に関する条例(昭和42年3月24日愛知県条例第3号。以下「本件条例」という。乙4)」の抜粋(趣旨)1条この条例は,地方公務員法(略)第24条第6項及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律(略)第42条の規定に基づき,県の職員並びに市町村立学校職員給与負担法(略)第1条及び第2条に規定する職員(以下「職員」という。)の給与に関する事項を定めるものとする。 (給与の種類)2条職員に支給する給与の種類は,給料,扶養手当,調整手当,住居手当,初任給調整手当,通勤手当,単身赴任手当,特殊勤務手当,特地勤務手当(略),へき地手当(略),時間外勤務手当,宿日直手当,管理職員特別勤務手当,夜間勤務手当,休日勤務手当,管理職手当,期末手当,勤勉手当,期末特別手当,寒冷地手当, 当,特殊勤務手当,特地勤務手当(略),へき地手当(略),時間外勤務手当,宿日直手当,管理職員特別勤務手当,夜間勤務手当,休日勤務手当,管理職手当,期末手当,勤勉手当,期末特別手当,寒冷地手当,特定任期付職員業績手当,任期付研究員業績手当,義務教育等教員特別手当,定時制通信教育手当,産業教育手当,農林漁業改良普及手当,災害派遣手当及び退職手当とする。 (調整手当)9条の2 調整手当は,民間における賃金,物価及び生計費が特に高い地域で人事委員会規則で定めるものに在勤する職員に支給する。その地域に近接し,かつ,民間における賃金,物価及び生計費に関する事情がその地域に準ずる地域に所在する公署で人事委員会規則で定めるものに在勤する職員についても,同様とする。 2 調整手当の月額は,職員の給料の月額,扶養手当の月額及び管理職手当の月額の合計額に,次の各号に掲げる区分に応じて,当該各号に掲げる割合を乗じて得た額とする。 一甲地百分の六(人事委員会規則で定める地域及び公署にあっては, 百分の十)二乙地百分の三 3 前項の甲地及び乙地は,人事委員会規則で定める。 9条の3 前条第2項第1号の人事委員会規則で定める地域及び公署以外の地域及び公署に在勤する医療職給料表(一)の適用を受ける職員には,当分の間,同条の規定にかかわらず,当該職員の給料の月額,扶養手当の月額及び管理職手当の月額の合計額に百分の十を乗じて得た月額の調整手当を支給する。 9条の4 第9条の2第1項の人事委員会規則で定める地域若しくは公署に在勤する職員がその在勤する地域若しくは公署を異にして異動した場合又はこれらの職員の在勤する公署が移転した場合において,当該異動若しくは移転(略)の直後に在勤する地域若しくは公署に係る調整手当の支給割合(略)が当該異動等の日の しくは公署を異にして異動した場合又はこれらの職員の在勤する公署が移転した場合において,当該異動若しくは移転(略)の直後に在勤する地域若しくは公署に係る調整手当の支給割合(略)が当該異動等の日の前日に在勤していた地域若しくは公署に係る調整手当の支給割合に達しないこととなるとき,又は当該異動等の直後に在勤する地域若しくは公署が同条第1項の人事委員会規則で定める地域若しくは公署に該当しないこととなるときは,当該職員には,前条の規定により調整手当を支給される期間を除き,第9条の2の規定にかかわらず,当該異動等の日から3年を経過するまでの間,当該異動等の日の前日に在勤していた地域又は公署に在勤するものとした場合に同条の規定により支給されることとなる調整手当(略)を支給する。ただし,当該職員が当該異動等の日から3年を経過するまでの間にさらに在勤する地域又は公署を異にして異動した場合その他人事委員会の定める場合における当該職員に対する調整手当の支給については,人事委員会の定めるところによる。 (調整手当の特例)附則7項(以下「本件附則」という。) 職員には,当分の間,第9条の2から第9条の4までの規定にかかわらず,職員の給料の月額,扶養手当の月額及び管理職手当の月額の合計額に100分の10を乗じて得た額を月額とする調整手当を支給するものとし,その支給方法は,人事委員会規則で定める。 (3) 被告による調整手当の支給ア被告は,本件附則に基づき,毎月,愛知県職員に対して給料の月額等に100分の10を乗じた額の調整手当を一律に支給している(以下,そのうち,名古屋市及び岡崎市以外の愛知県内に勤務する職員に対する調整手当の支給を「本件支給」という。)。 イ愛知県の平成14年度決算における人件費(特別職に支給される給料,報酬等を含む。)の総 そのうち,名古屋市及び岡崎市以外の愛知県内に勤務する職員に対する調整手当の支給を「本件支給」という。)。 イ愛知県の平成14年度決算における人件費(特別職に支給される給料,報酬等を含む。)の総額は約7641億円(1億円以下四捨五入。以下同じ。)であり,歳出に占める割合は35.5パーセントである。また,平成15年度普通会計予算における職員給与費総額は約5987億円であり,そのうち,給料総額は約3442億円,職員手当総額は約959億円,期末・勤勉手当総額は約1587億円である(甲11)。そして,調整手当の支給総額は,平成15年度最終予算額では,一般会計ベースで約357億円となる見込みである。また,調整手当は,期末・勤勉・期末特別手当,超過勤務手当の算定の基礎に算入されており,その影響額は約150億円となる見込みである(甲1)。 (4) 国家公務員の調整手当国家公務員に関する「一般職の職員の給与に関する法律」(以下「給与法」という。)11条の3第1項前段は,「調整手当は,民間における賃金,物価及び生計費が特に高い地域で人事院規則で定めるものに在勤する職員に支給する。」と定めているところ,人事院規則9-49の別表第1は,名古屋市を俸給等の100分の10の割合による調整手当を支給する地域とし,平成12年11月22日改正後の人事院規則9-49-16附則2項では,岡崎市を100分の3の割合による調整手当を支給する地域としている。 (5) 住民監査請求と本訴の提起ア原告は,平成16年2月23日付けで,愛知県監査委員に対し,本件支給は地方公務員法24条3項に違反すると主張して,住民監査を請求したところ,同委員は,同年3月30日,これを棄却した。 上記監査の結果には,調整手当制度の創設時とは社会情勢が大きく変化していること,県政への 務員法24条3項に違反すると主張して,住民監査を請求したところ,同委員は,同年3月30日,これを棄却した。 上記監査の結果には,調整手当制度の創設時とは社会情勢が大きく変化していること,県政への県民の関心が高まっていること,更には,調整手当に関する国の新たな動きがあることなどを考慮すると,調整手当の在り方について,検討を行う時期に来ていると思われることから,より一層県民の理解と納得が得られる制度となるよう,調整手当の支給目的,支給地域,支給割合などについて様々な角度から検討するよう要望する旨付記されている(甲1)。 イ原告は,同年4月19日,本訴を提起した。 2 本件の争点本件支出は違法か。具体的には,(1) 本件附則は,地方公務員法24条3項又は地方自治法204条2項に反するか。 (2) 本件附則が違法であるとして,本件支出は正当化されるか。 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(本件附則は,地方公務員法24条3項又は地方自治法204条2項に反するか)について(原告)ア調整手当の趣旨,目的地方自治法204条2項が定める調整手当とは,都市手当を意味し,その支給目的は,本件条例9条の2で規定するように,「民間における賃金,物価及び生計費が特に高い地域」に勤務する職員の給与の不均衡を是正することにある。したがって,それ以外の地域に勤務する職員に対しても一律に調整手当を支給することは,その支給根拠となる条例が正当な選挙で選ばれた議員で構成される県議会によって議決されたとしても,地方自治法204条2項,地方公務員法24条3項などの法律に反するものであり,違法である。 イ本件附則の違法性本件附則は,給料等に100分の10を乗じた調整手当を愛知県内に在勤する県職員に対して一律に支給することを内容としている。 条3項などの法律に反するものであり,違法である。 イ本件附則の違法性本件附則は,給料等に100分の10を乗じた調整手当を愛知県内に在勤する県職員に対して一律に支給することを内容としている。 しかしながら,愛知県と県内80市町村職員の平均給与月額(給料及び諸手当を含む)を比較すると,名古屋市職員のそれが45万9000円(年額746万8000円),豊根村のそれが32万7000円(年額535万円)であるなど,年額700万円台の市町村が17,同600万円台の市町村が40,同500万円台の市町村が23であるのに対し,愛知県職員の平均給与月額は51万5000円(年額839万2000円)と高額である(甲3の1ないし81)。 これらの市町村は,名古屋市の民間企業の賃金とそれ以外の各市町村の民間企業の賃金に較差があることを認めて,職員の給与を決定しているはずであるから,県職員の給与は,県内市町村の職員の給与や同地域における民間企業の給与を大幅に上回っている。 したがって,県職員6万8389人全員を支給対象とする調整手当は,その趣旨,目的に反することが明らかであって,違法である。 ウ被告の主張に対する反論(ア) 賃金,物価及び生計費の調査についてa 被告は,消費者物価地域差指数(平成9年全国物価統計調査。乙9の1)や勤労者世帯の世帯主の勤め先収入・消費支出(平成11年全国消費実態調査。乙8),平成15年職種別民間給与実態調査(以下「民調」という。乙11)を基に,名古屋市と愛知県全域とで地域格差がないと主張するが,以下のとおり,その調査は不十分であり,名古屋市と他の県内の市町村(特に郡部)とでは,民間企業の賃金,物価及び生計費に格段の差があることは明らかである。 平成11年全国消費実態調査は,愛知県内では,県内87市町村のうち,47 であり,名古屋市と他の県内の市町村(特に郡部)とでは,民間企業の賃金,物価及び生計費に格段の差があることは明らかである。 平成11年全国消費実態調査は,愛知県内では,県内87市町村のうち,47市町(31市16町)のみを対象としており,しかも,その中で集計世帯数が南知多町のわずか6世帯をはじめ10数世帯である市町村が半数以上の28市町(13市15町)もあり,民間企業の賃金,生計費が特に低い地域の集計はほとんど実施していない。 次に,平成9年全国物価統計調査は,愛知県内では,県内87市町村のうちわずか29市町(24市5町)のみを調査対象としており,特に物価が低い町村の調査をほとんど実施していない。 また,平成15年民調で,被告は,県内325の事業所に対し,民間給与の実態調査を行ったと主張するが,そのうち名古屋地区が200,他の86市町村が125であって,海部・津島地区ではわずか3,新城・南北設楽地区ではわずか1の事業所しか対象としていない。これでは県内全域で調査したとはいえない。 なお,被告は,平成15年民調の結果から,名古屋市外の事業所の単純平均給与の方が名古屋市内のそれより高いと主張するが,県内各市町村の職員給与を比較したラスパイレス指数(乙27)から見ても,そのような結果になるはずがない。大企業の多い名古屋市以外の民間企業の平均給与月額でも35万9891円にすぎない。 b 被告は,県職員の人員構成を基に,愛知県内の民間給与の平均月額が44万7478円であると主張するが,民間企業の人員構成を基に算出すべきである。また,人事院が算出した東京都内の民間給与の平均月額ですら40万7325円であり,愛知県のそれを10パーセントも下回るはずはなく,上記の民間給与月額は県職員の給与月額の実態に合わせて出されたものとしか思えな が算出した東京都内の民間給与の平均月額ですら40万7325円であり,愛知県のそれを10パーセントも下回るはずはなく,上記の民間給与月額は県職員の給与月額の実態に合わせて出されたものとしか思えない。 県内13地域の民間給与の平均月額(13地域の平均給与の合計502万3478円÷13。乙38)からすれば,ラスパイレス比較後の平均給与月額は38万6421円となるはずであり,これは,人事院が算出した愛知県内の民間の平均給与月額38万0815円(甲10参照)とほとんど同額である。 c 国家公務員全職員の平均給与月額は41万4022円(平成15年),うち行政職俸給表(一)が適用される職員の中部地区在勤者のそれは37万8319円(平成16年),同じく県内在勤者のそれは38万0815円(平成15年)であるところ,被告は,国家公務員より県職員が,行政職では7万1621円(平成15年),全職員では約10万9000円も多く支給を受けていることについて,ラスパイレス比較法によって比較したと主張するが,県職員が国家公務員よりも学歴,役職段階が特に高いはずがない。 この点につき,被告は,警察官等の給与が平均を上昇させている旨主張するが,県警警察官のうち警視以上の役職者の給与は県からではなく,国から支給されている。 d 被告は,県職員のラスパイレス指数は103.8(50万6600円),豊根村のそれは82.8(33万4800円)である旨主張するが,県職員と豊根村職員(豊根村にも,調整手当を受けている県職員が勤務している。)との間に,学歴,年齢,役職段階によって約2割もの差が生ずるはずがない。 (イ) その余の被告の主張についてa 被告は,他の地方公共団体の例を援用するが,都道府県で調整手当を支給しているのは21団体であり,うち当該都道府県全 よって約2割もの差が生ずるはずがない。 (イ) その余の被告の主張についてa 被告は,他の地方公共団体の例を援用するが,都道府県で調整手当を支給しているのは21団体であり,うち当該都道府県全域を支給対象としているのは13団体にすぎず,さらに,当該都道府県内一律支給をしているのはわずか6団体であって,他の半数以上の団体は一切支給していない。そのため,総務省給与能率推進室課長補佐は,愛知県に対して調整手当の支給を是正すべきである旨の助言をしている。 b 被告は,国と同じ地域にのみ調整手当を支給すれば優秀な職員の採用に支障が生ずるおそれがあると主張するが,県内一律100分の10の割合による支給は,調整手当の目的に反し,しかも,「民間企業における賃金,物価及び生計費が特に高い地域」に勤務する職員が不利になるという逆不均衡をもたらしており,かえって,優秀な職員の採用に支障が生ずるおそれがある。 また,被告は,人事異動に支障を生ずるおそれがある旨主張するが,国家公務員は全国に転勤しており,調整手当の支給対象地域と支給していない地域にも転勤するが,優秀な職員の採用に何らの支障も生じていない。 c 国家公務員の調整手当は,名古屋市が俸給等の100分の10の割合,岡崎市が100分の3の割合にとどまっており,少なくともこれに準ずるべきである。 被告の主張するように,公民給与較差を是正するのであれば,愛知県も国の俸給表に準ずるべきであり,調整手当の支給を県内全域で廃止すべきである。 (被告)原告の主張は争う。 ア調整手当の趣旨,目的地方公務員法24条3項は,「職員の給与は,生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定めなければならない。」と規定しているが,同項は訓示規定であって,強 務員法24条3項は,「職員の給与は,生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定めなければならない。」と規定しているが,同項は訓示規定であって,強行規定ではないから,そのすべてが考慮されているといえなければ,給与に関する条例を無効とするような効力は有していない。 しかして,同項が定める「生計費」,「国及び他の地方公共団体の職員……の給与」,「民間事業の従事者の給与」は,調整手当も含む給与を定める際に考慮すべき一事情にすぎず,さらに,「その他の事情」には,優秀な職員を容易に採用することや,本庁及び出先事務所との間の人事異動の円滑化,職員組合の要求などの諸事情を考慮することも許されるものであり,結局,同項は,給与の一部を構成する調整手当も含めて,職員の給与は,一切の事情を考慮して定めるべきことを規定しているにすぎない。 また,地方自治法204条2項が定める調整手当についても,同法はその意義を定義しておらず,その手当によって,何との間を調整するのかを明らかにしていない。この点について,給与法も調整手当の定義規定を置いていないが,同法11条の3第1項前段は,「調整手当は,民間における賃金,物価及び生計費が特に高い地域で人事院規則で定めるものに在勤する職員に支給する。」と定めているので,「民間における賃金,物価及び生計費が特に高い地域」に在勤する職員の給料の実質的不均衡を是正するためのものであると考えられ,地方自治法上の調整手当の目的の一つも,これと同じと解される。 他方,①国家公務員の在勤地は全国にわたるが,普通地方公共団体の職員の在勤地はそうではなく,特に市町村の場合には,通常「民間における賃金,物価及び生計費」に差がなく,地域手当の性格は薄く,むしろ,民間における賃金と職員の給与の 国にわたるが,普通地方公共団体の職員の在勤地はそうではなく,特に市町村の場合には,通常「民間における賃金,物価及び生計費」に差がなく,地域手当の性格は薄く,むしろ,民間における賃金と職員の給与の実質的不均衡を是正するためのものという性格が認められること,②給与法11条の7第1項が異動に伴う保障措置を設けており(平成15年法律第141号による改正後は,異動後1年間は異動前の支給割合により,2年目はその80パーセントの割合による調整手当が支給される。),人事異動の円滑化を図る趣旨を含むものと解されること,さらに,③給与法11条の4によれば,医師については,当分の間,勤務する地域に関係なく,一律に100分の10の割合による調整手当を支給するとしていることを総合すれば,調整手当には,民間における賃金と比較して,給与の上積みをする趣旨も含まれているものと解される。 したがって,地方自治法上の調整手当の支給目的に,上記のほか,「人事異動の円滑化」や「給与水準の確保」が含まれていることは自明である。 イ本件附則の適法性以下のとおり,民間事業における給与の状況,国の職員の調整手当の状況,他の地方公共団体における調整手当の状況,生活費の状況,その他の状況を総合すれば,本件附則は,地方公務員法24条3項,地方自治法204条2項の定める調整手当の趣旨,目的に合致しているから,勤務地を問うことなく県職員に対する一律支給を内容としていても違法とはいえず,したがって,本件支給も適法である。 (ア) 民間事業における賃金全国消費実態調査(乙8)によれば,名古屋市の勤労者世帯の世帯主勤め先月額収入の平均が42万4926円であるのに対し,愛知県全体では42万7906円であり(名古屋市を100とした場合,100.7となる。),市部平均が42万8759 古屋市の勤労者世帯の世帯主勤め先月額収入の平均が42万4926円であるのに対し,愛知県全体では42万7906円であり(名古屋市を100とした場合,100.7となる。),市部平均が42万8759円,郡部平均が42万2829円であるなど,民間における賃金は,愛知県内のどの地域においても,さほど差がなく,名古屋市及び岡崎市だけでなく愛知県内全域が「民間における賃金,物価及び生計費が特に高い地域」に該当する。 平成15年民調によれば,愛知県全体の民間事業所の単純平均給与月額は34万6932円,名古屋市以外の愛知県のそれは35万9891円,名古屋市内のそれは32万9774円であり,名古屋市外の方が名古屋市内より高い状況にある。その主な要因は,愛知県は製造業を中心に名古屋市外に大企業が多いことにある。そして,上記34万6932円を,愛知県職員の学歴別,職務別,年齢別の人員構成を基にラスパイレス比較法(人事院は,官民給与の比較方法として,職種,役職段階等を考慮したラスパイレス比較法が妥当であるとしている。)により加重平均すると44万7478円となった(名古屋市内は43万3283円,名古屋市外は45万4951円となる。)。一方,愛知県職員の平均給与月額は,調整手当を含めて45万2436円であったため,愛知県人事委員会は,平成15年10月2日,愛知県議会及び被告に対し,本件職員の給与月額を4958円引き下げるよう給与勧告(職員の給与等に関する報告及び勧告)を行っている。 ところで,愛知県人事委員会は,毎年給与勧告を行う前提として,行政職給料表(一)適用職員と民間従業員でこれに相当する者の4月分の給与を比較調査するに当たり,役職段階,年齢などを同じくする者を比較の対象としているが,対象となる愛知県職員の給与の平均支給額には調整手当を含 一)適用職員と民間従業員でこれに相当する者の4月分の給与を比較調査するに当たり,役職段階,年齢などを同じくする者を比較の対象としているが,対象となる愛知県職員の給与の平均支給額には調整手当を含めており,それを踏まえて必要な給与改訂が行われているのであるから,仮に,調整手当の支給額が減額されれば,その減額された給与額を基に民間給与額との比較をすることになって,人事委員会はその較差を是正するよう給与勧告することになる。例えば,県職員に調整手当を支給しないのであれば,平均給与月額は41万2667円となるが,これでは民間給与を1割弱下回ることになる。その結果,基本給を一律増額させる旨の給与勧告がなされ,それが実施されれば,退職手当や年金の水準に影響し,共済掛金も上昇することになる。 (イ) 愛知県内の生計費等の状況①物価(消費者物価地域格差指数),②生計費(勤労者世帯-消費支出)についての指数を総合的にみれば,名古屋市と愛知県全県との地域格差はほとんどない(名古屋市での指数をいずれも100とした場合,全県での指数は,①が95.9,②が104.9となっている。)。 (ウ) 国家公務員の調整手当国家公務員の調整手当については,人事院規則9-49の別表第1によって,愛知県内では名古屋市を100分の10の割合の額を支給する甲地とし,同規則9-49-16の附則2項によって,当分の間,岡崎市を100分の3の割合の額を支給する乙地としている。 ちなみに,人事院が平成14年9月に設置した「地域に勤務する公務員の給与に関する研究会」の基本報告(平成15年7月)によれば,支給地域の単位は,転勤の実態等を踏まえ,現行の市町村単位からより広域化を図ることが望ましく,具体的には,東京都,愛知県等の都道府県単位を中心に設定すべきことを提言しており 成15年7月)によれば,支給地域の単位は,転勤の実態等を踏まえ,現行の市町村単位からより広域化を図ることが望ましく,具体的には,東京都,愛知県等の都道府県単位を中心に設定すべきことを提言しており,国においては,平成17年ころ,人事院から検討の結果を反映させた勧告が出されると予想されているが,これに応じて,愛知県でも調整手当の見直しが行われる予定である。 (エ) 他の地方公共団体の取扱い愛知県内においては,平成15年4月1日現在,別紙1のとおり,豊根村を除く全市町村が調整手当を支給しており,名古屋市及び岡崎市に限られていない。 また,岐阜県は,岐阜県職員の給与,勤務時間その他の勤務条件に関する条例12条の2並びに同条例施行規則別表第3及び第3の2において,愛知県内では,名古屋市及び西春日井郡豊山町の名古屋事務所農産物情報センターに在勤する職員に対して100分の10の割合による調整手当を支給し,三重県も,同県の職員の給与に関する条例12条の2及び調整手当に関する規則の別表において,三重県人事委員会が別に定める地域(人事院規則別表に掲げる支給地域)である名古屋市(支給率100分の10)及び岡崎市(同100分の3)を支給対象地域としている。 全国的にみると,当該都道府県内の地域で調整手当を支給している地方公共団体は21あり,うち当該都道府県内全域を対象としているのは13団体,都道府県内全域に一律支給しているのは6団体(愛知県のほか,神奈川県,大阪府,埼玉県,静岡県,福岡県)であるが,いずれも,国で定めた支給地域以外にも調整手当を支給している。 (オ) その他の事情愛知県人事委員会は,昭和42年11月,「都市手当制度については,国の行う措置および本県の特殊事情を勘案のうえ適当な措置をとること」を勧告したところ,当時,調整 ている。 (オ) その他の事情愛知県人事委員会は,昭和42年11月,「都市手当制度については,国の行う措置および本県の特殊事情を勘案のうえ適当な措置をとること」を勧告したところ,当時,調整手当の前身である暫定手当は全職員一律に支給されていたこと,職員団体から,地域格差を解消し全県一律に支給することを強く求められていたことなどから,昭和43年2月の県議会において,県職員に対して一律に100分の6の割合の調整手当を支給する旨の条例改正案が全会一致で成立したものである。 また,調整手当を含めて県職員の給与と民間給与とを比較し,均衡を保っていること,県という限られた地域の中で支給率に差を設けることは,職員の居住地に変更がないにもかかわらず,勤務地が異動する都度給与が増減することになり,職員の生活に不安を与え,本庁舎と地方機関との円滑な人事異動に支障を生ずるおそれがあること,国と同じ地域にのみ調整手当を支給すれば,勤務公署によって支給額に差が生ずる愛知県職員の勤務条件が不利となり,優秀な職員の採用に支障が生ずるおそれがあること,名古屋市(支給率100分の10)と岡崎市(同100分の3)のみを支給地域とするのは,県職員の実態感覚と著しく乖離しており,現在も,職員団体からの強い要望があること,これらの事情を考慮して,在勤する地域を問わず,県職員に対して一律に100分の10の割合による調整手当を支給している。 ウ原告の主張に対する反論(ア) 原告は,県内市町村が名古屋市内の民間企業とそれ以外の市町村の民間企業との間に賃金格差があることを認めて職員の給与を決定しているはずであると主張するが,名古屋市以外の市町村には人事委員会がなく,また愛知県人事委員会のような民間賃金の実態調査を実施する機関もないため,市町村が上記の賃金格差を調 めて職員の給与を決定しているはずであると主張するが,名古屋市以外の市町村には人事委員会がなく,また愛知県人事委員会のような民間賃金の実態調査を実施する機関もないため,市町村が上記の賃金格差を調査しているはずがない。 また,原告は,被告が提出した各統計調査について,物価や民間の賃金等が特に安い地域の集計がほとんどないと主張するが,調査対象となっていない市町村が特に安い(低い)と判断する根拠が不明である。 (イ) 原告は,愛知県職員と県内市町村職員との平均の給料,給与を比較し,較差が大きいと指摘するが,これは,愛知県職員や県内市町村職員の学歴,年齢及び役職段階を考慮しておらず,さらには,県職員の平均給与額の算定の基礎に,「学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法」などの特別法により一般行政職よりも高い給与水準が保障されている教育関係職員(4万3356人),あるいは市町村職員にはない警察職員(1万3093人)を多数含んでいることなどを全く考慮しておらず,不当である(ちなみに,大卒の一般行政職員の初任給が17万1500円であるのに対し,教員のそれは19万2000円,警察官のそれは18万9300円である。)。また,豊根村には,愛知県が給料を負担している豊根村職員である教職員及び駐在所に勤務する警察官は存在しているが,愛知県の一般行政職員は豊根村に在勤しておらず,比較対象として不適当である。 (ウ) 原告は,名古屋市以外の民間企業の平均給与月額が35万9891円であると主張するが,これは従業員の単純平均給与月額であり,県職員と比較するのであれば,県職員の人員構成を基にラスパイレス比較法により加重平均した45万4951円にする必要がある。また,原告は,県内在勤の国家公務員の平均給与月額が38 均給与月額であり,県職員と比較するのであれば,県職員の人員構成を基にラスパイレス比較法により加重平均した45万4951円にする必要がある。また,原告は,県内在勤の国家公務員の平均給与月額が38万0815円である旨主張するが,これは国家公務員行政職俸給表(一)適用職員の平成15年の平均給与であり,愛知県内の国家公務員の平均給与ではない(甲10)。さらに,原告は,東京都の平均給与月額は40万7325円である旨主張するが,同額は,平成16年の国家公務員行政職俸給表(一)適用職員の東京地域の平均給与月額である。 (2) 争点(2)(本件附則が違法であるとして,本件支出は違法か。)について(被告)県知事である被告は,地方公共団体の執行機関として,県議会が議決した条例を誠実に執行しなければならない義務を負い(地方自治法138条の2),毎会計年度予算を調製し,年度開始前に議会の議決を経て,これを執行しなければならない義務を負っている(同法149条2号,211条)。したがって,仮に,本件附則が違法であるとしても,それが著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から見過ごし得ない瑕疵が存するものと認められる場合を除き,被告は,条例が法令に違反すると認める場合でも,独自に当該条例を無効と判断し,当該条例を無視した行為をすることは許されないから,本件附則に基づき,予算に裏付けられた調整手当を支給することは,同法242条1項にいう違法な公金の支出には該当しない。 (原告)被告の主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 地方公務員法24条3項及び地方自治法204条2項について(1) 給与条例主義について地方自治法は,204条1項で,「普通地方公共団体は,……普通地方公共団体の……補助機関たる常勤の職員……その他普通公共団体 3項及び地方自治法204条2項について(1) 給与条例主義について地方自治法は,204条1項で,「普通地方公共団体は,……普通地方公共団体の……補助機関たる常勤の職員……その他普通公共団体の常勤の職員……に対し,給料……を支給しなければならない。」と,同条2項で,「普通地方公共団体は,条例で,前項の職員に対し,……調整手当……を支給することができる。」と,同条3項で,「給料,手当及び旅費の額並びにその支給方法は,条例でこれを定めなければならない。」とそれぞれ定め,さらに,204条の2で,「普通地方公共団体は,いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基く条例に基かずには,これを……前条第1項の職員に支給することができない。」と定めている。さらに,地方公務員法は,24条3項で,「職員の給与は,生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。」と,同条6項で,「職員の給与,勤務時間その他の勤務条件は,条例で定める。」と,25条1項で,「職員の給与は,前条第6項の規定による給与に関する条例に基づいて支給されなければならず,又,これに基かずには,いかなる金銭又は有価物も職員に支給してはならない。」とそれぞれ定めている。 このように,地方自治法及び地方公務員法が,地方公共団体の職員等の給与や手当金の額及び支給方法を条例で定めることとし,条例に基づかなければいかなる給付もなし得ないものとしている(給与条例主義)のは,第一義的には,職員の給与等は最終的にこれを負担する住民の総意に基づくことが憲法92条の定める住民自治の趣旨に合致するところ,民意に基づいて選出された議員によって構成される議会が形成する団体意思のうち,最も基本的な法規範形式である条例を支給の根拠とするこ 意に基づくことが憲法92条の定める住民自治の趣旨に合致するところ,民意に基づいて選出された議員によって構成される議会が形成する団体意思のうち,最も基本的な法規範形式である条例を支給の根拠とすることによって,住民の総意に基づくとみなすことができると考えられたことによるものである(第二義的には,給与等の支給について条例で定めることによって,職務の公共性や中立性を確保すべき地方公共団体の職員等に対し,そこで定められた内容の給与等の支給を受ける地位を保障することにあると考えられる。)。 (2) 調整手当の趣旨,目的についてア地方自治法は,上記のとおり,204条2項,3項において,普通地方公共団体が,条例に基づいて,調整手当を支給することができると定めているが,調整手当の趣旨,内容を明らかにした規定は存在しない。 もっとも,国家公務員の一般職の給与に関する給与法には,調整手当について定めたものがあり,そのうち,11条の3第1項前段は,「調整手当は,民間における賃金,物価及び生計費が特に高い地域で人事院規則で定めるものに在勤する職員に支給する。」とし,同条2項は,「調整手当の月額は,俸給,俸給の特別調整額及び扶養手当の合計額に,次の各号に掲げる区分に応じて,当該各号に掲げる割合を乗じて得た額とする。」とした上,1号は甲地について100分の6(人事院規則で定める地域及び官署にあっては,人事院規則で定める区分に応じ,100分の10又は100分の12),2号は乙地について100分の3の各支給割合を示し,さらに同条3項は,「前項の甲地及び乙地は,人事院規則で定める。」とそれぞれ規定している。 また,上記調整手当は,物価及び生計費等の顕著な地域格差がみられるようになった戦後間もない時期に発出された臨時手当給与令(昭和21年勅令第234号) 人事院規則で定める。」とそれぞれ規定している。 また,上記調整手当は,物価及び生計費等の顕著な地域格差がみられるようになった戦後間もない時期に発出された臨時手当給与令(昭和21年勅令第234号)に基づく臨時手当に源を持っており,政府職員の俸給等に関する法律(昭和23年法律第12号)によって暫定勤務地手当と名称変更され,さらに給与実施法の施行に伴い,昭和23年5月から勤務地手当に改められ(当時の支給割合は,地域格差が大きかったことを反映して,特地が3割,甲地が2割,乙地が1割とされていた。),これが現行の給与法(昭和25年法律第95号)に引き継がれたものである。その後,支給区分や支給割合に変更が加えられたが,給与法の改正(昭和32年法律第154号)によって,勤務地手当が廃止されて暫定手当制度が新設され,支給額が4区分に応じて定額化されたが,改正附則23項によって,逐次整理して本俸に繰り入れる方針が採られた。もっとも,この間,地域格差が縮小したわけではなく,むしろ拡大する傾向を示したため,昭和42年の人事院による給与勧告は,新しい都市手当の創設を提言するに至り,これを受けた同年の給与法の改正(昭和42年法律第141号)によって,現行の調整手当として制度化されることとなったものである(以上については乙5を参照)。 上記に示した条文上の文言や立法の経緯を総合すれば,少なくとも,国家公務員の一般職に適用される給与法上の調整手当は,「民間の賃金,物価及び生計費」との比較において,俸給額だけでは顕著な較差が存在すると認められる「地域」に在勤する職員に対し,その較差を埋めることを主目的としていることが明らかであり,その意味で,調整手当は,地域手当の性格が強いものと解される。そして,地方自治法上の調整手当についても,給与法上のそれと別異に 職員に対し,その較差を埋めることを主目的としていることが明らかであり,その意味で,調整手当は,地域手当の性格が強いものと解される。そして,地方自治法上の調整手当についても,給与法上のそれと別異に解すべき根拠はなく,現に地方自治法204条3項を受けた本件条例9条の2は,給与法11条の3とほぼ同一の文言が用いられていることを考慮すると,基本的にはこのような趣旨,性格を有するものと解するのが相当である。 イこの点について,被告は,調整手当の地域手当としての性格は薄れていると主張し,その根拠として,①地方公共団体,特に市町村については地域格差が存在しないこと,②給与法上,異動に伴う保障措置が定められていること,③医師等については,勤務地を問わず,一律支給されていることなどを指摘する。 なるほど,給与法11条の4は,医療業務に従事する医師等の職員については当分の間,一律に100分の10の割合の調整手当を支給する旨定め,同11条の7は,職員の異動等に伴って職員が在勤地を異にすることにより,調整手当の支給割合が減少等する場合に,異動等の日から2年間に限り,異動等の直前に支給されていた支給割合と同じ支給割合(1年目)又はこれに100分の80を乗じた金額(2年目)の調整手当を保障する旨定めている(平成15年法律第141号による改正前は3年間にわたって同じ支給割合の調整手当が支給されていた。)。しかしながら,前者については,民間における医師等の賃金が地方ほど高い実態があり,一般職の公務員と同じように取り扱うならば,地方で勤務する医療職公務員の確保が著しく困難となることが予想されること,後者については,このような制度を設けないと,調整手当の存在ゆえにかえって円滑な人事異動の実施が妨げられると予想されること,以上のような人事政策上の観点から調 しく困難となることが予想されること,後者については,このような制度を設けないと,調整手当の存在ゆえにかえって円滑な人事異動の実施が妨げられると予想されること,以上のような人事政策上の観点から調整手当制度を例外的に修正するものにすぎないと解するのが相当である。また,確かに,全国を勤務地とする国家公務員と異なり,地方公務員のそれは,その区域内に限定されるのが通常であり,特に市町村については,その区域内における地域格差は考え難い(給与法11条の3第3項を受けた人事院規則9-49第1条の別表1における支給地域も,市又は特別区を最小単位としている。)。しかしながら,当該地方公共団体の区域外に勤務場所を設置することはあり得るし,都道府県のように,ある程度の広がりを有する区域を有する地方公共団体においては,その内部における地域格差の存在は十分に考えられるというべきである。 そうすると,上記のような事情があるからといって,調整手当の上記基本的趣旨,性格が変更されたとみるべきものではない。 ウ調整手当の上記趣旨,性格に照らして考えれば,勤務地のいかんを問わず,愛知県職員に対して給料等に100分の10を乗じた額の調整手当を一律に支給する内容の本件附則は,調整手当支給の本来の根拠条文である本件条例9条の2の趣旨をかなり変容するものといわざるを得ず,同様の調整手当の一律支給が愛知県以外の5県において実施されている事実も,この判断を覆すものではない。 (3) 給与に関する条例の法律適合性判断についてア一般に,給料とは,常勤の職員等の正規の勤務時間による勤務に対する報酬を指し,給与とは,給料の外,地方自治法204条2項所定の諸手当を含むものを意味するから,給与等の勤務条件の根本基準を定める地方公務員法24条は,調整手当をも適用対象としていると 勤務に対する報酬を指し,給与とは,給料の外,地方自治法204条2項所定の諸手当を含むものを意味するから,給与等の勤務条件の根本基準を定める地方公務員法24条は,調整手当をも適用対象としていると解されるところ,同条3項は,職員の給与が,①生計費,②国家公務員の給与,③他の地方公共団体の職員の給与,④民間事業の従事者の給与,⑤その他の事情を考慮して定められるべきことを規定している。 もっとも,①生計費とは,職員の生活を維持するための費用ではあるが,個々の職員の具体的な生計費ではなく,国民の標準的な生計費をいうもので,抽象的な概念であると解されるし,②国家公務員と③他の地方公共団体の職員の給与についても,その職種や人員構成は様々であるし,④民間企業も,数万人の従業員を抱える大企業から従業員数人の零細企業までその規模が幅広く分布しているため,従事者の賃金の間にかなりの較差が存在し,職種も多種多様であることから,どのように比較するかについても様々な手法があり得るところである。しかも,同項は,給与法と異なり,上記の各事情だけでなく,「その他の事情」をも「考慮して定め」ると規定しているから,その文言上,どのような事情を考慮事由とするか,また考慮された事由をどのように反映させるかを判断するについては,その地域の実情に応じた専門的,政策的な配慮が必要と考えられる。 イさらに,近時,国家公務員の給与水準自体についても論議が重ねられているところであり,人事院事務総長が「地域に勤務する国家公務員にふさわしい給与の在り方」について学識経験者らから成る研究会に検討を依頼した結果を平成15年7月に取りまとめた基本報告(乙10の1・2)によれば,①公務員の給与水準を民間準拠方式により決定することは妥当であるが,民間企業における人事・組織形態の変化に応じ に検討を依頼した結果を平成15年7月に取りまとめた基本報告(乙10の1・2)によれば,①公務員の給与水準を民間準拠方式により決定することは妥当であるが,民間企業における人事・組織形態の変化に応じた調査・比較方法の見直しは必要であること,具体的には,現行のラスパイレス比較法を用いた民間準拠方式による全体の給与水準決定は,客観的な指標として納得性が高く,昨今のマイナス方向での改定にあっても適切に機能しており,今後とも維持するのが妥当であるが,民間給与実態調査について,民間企業における組織・役職段階のフラット化や組織・人員のスリム化等を踏まえ,役職者の定義や調査対象企業の見直し等を検討する必要があること,②地域における官民の給与の状況を見ると,現在の公務員給与の地域格差は不十分であり,今まで以上に地域の民間給与等を反映させることが必要であること,③地域の民間給与をより反映させるため,俸給等を引き下げることも念頭に置いて,支給地域,支給割合等を基本的に見直した地域手当を導入すること,具体的には,支給地域の単位は,転勤の実態等を踏まえ,現行の市町村単位からより広域化を図ることが望ましいが,具体的には専門的・多面的に検討を行うべきであり,また,全体の給与原資の中で俸給と手当の配分を見直し,俸給等を引き下げることも念頭に置いた上で,地域格差をできるだけ反映できるよう措置すること,④給与の地域格差を拡大する場合には,必要な転勤を円滑に行えるようにするため,転勤の在り方を見直し,総数を縮減していくことを前提に,転勤により給与額が下がる場合には,一定期間,逓減型の転勤手当(仮称)を支給すること,⑤地域に勤務する公務員の給与の問題に基本的に対応するためには,年功的な運用となりがちな給与制度全体の見直しが必要であり,給与カーブのフラット化や昇給 期間,逓減型の転勤手当(仮称)を支給すること,⑤地域に勤務する公務員の給与の問題に基本的に対応するためには,年功的な運用となりがちな給与制度全体の見直しが必要であり,給与カーブのフラット化や昇給制度の在り方の見直し,職務に応じた処遇の徹底,ボーナスの成績査定分の拡大等が必要であることなどが提言され,併せて,地域の公務員給与問題としては,地方公務員給与の在り方についても議論があり,地方公共団体関係者がこの問題に適切に対処することを期待する旨付言されている。 この基本報告によれば,民間準拠方式によって公務員の給与水準が決定されるべきことを大前提に,地域格差をより反映させるため,手当の支給地域の単位を広域化すること,給与の中に占める俸給と手当の割合を変更し,後者に比重をかけることなどの方針が打ち出されていることが明らかであって,国家公務員の調整手当の内容が,その時々の情勢の変化に応じて変わり得ることを示しているというべきである(ちなみに,上記の基本報告は,地域に勤務する国家公務員を対象としたものであるが,平成14年6月25日閣議決定に係る「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」及び同年9月27日閣議決定に係る「公務員の給与改定に関する取扱いについて」において,地方公務員の給与についても,給与制度の見直しと給与水準の適正化が要請されている。)。 ウそうすると,地方公共団体の職員の給与をどのように定めるかについては,それぞれの地方公共団体が,その専門的,政策的知見に基づいて,地域におけるその時々の実情を調査し,これを反映させることが許されるというべきであるから,給与に関する条例を制定するに際し,それらの実情を反映させることが相応の合理性を有し,かつ,かかる実情の反映によっても,当該地方公共団体の総体としての給与体系を実質 が許されるというべきであるから,給与に関する条例を制定するに際し,それらの実情を反映させることが相応の合理性を有し,かつ,かかる実情の反映によっても,当該地方公共団体の総体としての給与体系を実質的に損なうことがない場合には,その支給形式が必ずしも本来の趣旨,目的に沿うものでないとしても,これを直ちに違法無効とすることはできないと解すべきであり(最高裁判所昭和50年10月2日第一小法廷判決・集民116号163頁参照),その意味で,地方公共団体は,給与に関する条例を制定するにつき,専門的,政策的見地からする相応の裁量権を有するといわざるを得ない。 2 原告の主張する違法事由に対する判断(1) そこで,愛知県における実情等について検討するに,後掲各証拠によれば,以下の事実が認められる。 ア愛知県の職員愛知県の平成15年4月現在における職員総数は6万8389人(平成16年4月現在においては6万6721人),その平均年齢は43.4歳(同43.6歳),平均勤務年数は21. 6年(同21.8年),性別構成は男性64.8パーセント,女性35.2パーセント,学歴別構成は大学卒72.1パーセント(同73.8パーセント),短大卒9.8パーセント(同8.6パーセント),高校卒17.7パーセント(同17.3パーセント),中学卒0.3パーセント(同0.3パーセント)となっている。 これらの職員には,従事する職務の種類に応じ,行政職,公安職,教育職,研究職,医療職,福祉職及び指定職の7種類13給料表並びに特定任期付職員給料表及び任期付研究員給料表が適用されており,平成15年4月現在における平均給与月額(給料及び扶養手当,調整手当その他の手当の合計額)は,行政職給料表(一)の適用者にあっては45万2436円,警察官,教員,研究員,医師等を含めた全職 ており,平成15年4月現在における平均給与月額(給料及び扶養手当,調整手当その他の手当の合計額)は,行政職給料表(一)の適用者にあっては45万2436円,警察官,教員,研究員,医師等を含めた全職員では48万5379円となっている(乙13,42の2)。 イ国家公務員他方,国家公務員全体の総数は,平成14年4月現在で約46万人であり,そのうち,一般行政事務を担当する行政職俸給表(一)は約21万人である。その学歴別構成は,大学卒が34. 4パーセント,短大卒が9.7パーセント,高校卒が55.1パーセント,中学卒が0.8パーセントである(乙10の2)。 そして,平成16年国家公務員給与等実態調査によれば,行政職俸給表(一)の適用のある職員の平均給与月額は,東京都に在勤する者が40万7325円(平均年齢39歳),中部地域に在勤する者が37万8319円(平均年齢40.8歳)であり,全職員のそれは40万0402円である(甲10)。 ウ名古屋市職員また,名古屋市において,職員の給与に関する名古屋市条例に定める給料表の適用を受ける職員総数は,平成15年4月現在で2万1794人,その平均年齢は42歳4月,平均勤務年数は18年1月,性別構成は男61.5パーセント,女38.5パーセント,学歴別構成は大学卒36.0パーセント,短大卒15.1パーセント,高校卒32.2パーセント,中学卒16.8パーセントである。そして,このうち,民間給与との比較がなされている行政職給料表の適用を受ける職員は1万0424人であるところ,その平均給与月額は42万4638円である(乙15)。 エ全国消費実態調査総務省は5年ごとに全国のすべての世帯のうち,総務庁長官の定める方法により選定された世帯を対象として,家計の収入及び支出等を調査しているが,平成11年全国消費実態 (乙15)。 エ全国消費実態調査総務省は5年ごとに全国のすべての世帯のうち,総務庁長官の定める方法により選定された世帯を対象として,家計の収入及び支出等を調査しているが,平成11年全国消費実態調査(平成14年刊行)によれば,名古屋市の勤労者世帯の世帯主の勤め先月額収入が平均42万4926円であるのに対し,名古屋市を含む愛知県全域のそれは平均42万7906円である。なお,市部においては,最高が安城市の約52万円,最低が江南市の約27万円,岡崎市が46万0361円であり,これら市部の平均が42万8759円であるのに対し,郡部においては,最高が東郷町の約53万円,最低が南知多町の約24万円であり,これら郡部の平均が42万2829円であって,市部の98.6パーセントに相当する(乙8)。 オ全国物価統計調査総務庁が平成9年11月に実施した全国物価統計調査結果(平成11年3月刊行)によれば,全国の平均物価指数を100とした場合,愛知県全体は100.0,名古屋市は104.3,岡崎市は101.9,人口10万以上の市は101.9,人口5万以上10万未満の市は96.8,人口5万未満の市は100.2,町村は98.2であり(乙9の1),同様に,同庁が平成14年11月に実施した調査結果(平成16年4月刊行)によれば,愛知県全体は99.0,名古屋市は102.7,岡崎市は98.9,人口10万以上の市は99.9,人口5万以上10万未満の市は96.8,人口5万未満の市は97.0,町村は97.4であった(乙9の2)。 カ平成15年及び平成16年民調とこれに基づく給与勧告(ア) 愛知県人事委員会は,地方公務員法8条,26条に基づいて,毎年少なくとも1回,県議会及び知事に対し,給与勧告を行っているが,これを行うに当たって,県職員の給与額と県内民間事業所の 給与勧告(ア) 愛知県人事委員会は,地方公務員法8条,26条に基づいて,毎年少なくとも1回,県議会及び知事に対し,給与勧告を行っているが,これを行うに当たって,県職員の給与額と県内民間事業所の従業員の給与額との較差(公民較差)を算出するために,職員給与実態調査を行い,さらに,人事院及び名古屋市人事委員会と共同して職種別民間給与実態調査を実施している(乙13,42の2)。 (イ) 愛知県人事委員会は,平成15年10月2日及び平成16年10月4日,それぞれ給与勧告を行っているところ,その概要は次のとおりである。 a 平成15年10月2日給与勧告平成15年民調は,別紙2のとおり,企業規模100人以上で,かつ事業所規模50人以上の県内の民間事業所のうち,一定の事業目的に分類された約2800の事業所から統計上の理論に従って無作為に抽出された325の事業所(名古屋市内は200の事業所,名古屋市外の県全域が125の事業所)を対象として実施された(ただし,その後に対象外であることが判明したり,調査不能となった事業所が29あった。)。この結果に基づき,職員のうち行政職給料表(一)適用者と,民間従業員のうちこれに相当する職種の者のうち役職段階,年齢などを同じくする者の平成15年4月分の給与額を比較(ラスパイレス比較法)すると,県職員の平均給与月額が45万2436円であるのに対し,民間のそれが44万7478円となり,県職員の給与が金額で4958円,率で1.1パーセント上回っていた。そのため,県人事委員会は,これらに,各種手当についての民間給与との比較,賃金・雇用情勢,国家公務員の給与等の状況を踏まえて,すべての級のすべての給与月額を平均1.1パーセント引き下げることを内容とする勧告を行った(乙11ないし13)。 b 平成16年10 与との比較,賃金・雇用情勢,国家公務員の給与等の状況を踏まえて,すべての級のすべての給与月額を平均1.1パーセント引き下げることを内容とする勧告を行った(乙11ないし13)。 b 平成16年10月4日の給与勧告平成16年民調は,平成15年民調と同様に無作為で抽出された340の事業所を対象として実施された。この結果に基づき,上記と同様にラスパイレス比較法で比較したところ,県職員の平均給与月額が45万1672円であるのに対し,民間のそれが45万1590円となり,県職員の給与が民間給与を82円,率で0.02パーセント上回っていた。しかし,県人事委員会は,同較差は給与月額の最低単位である100円よりも小さいことから,均衡は図られているとして,月例給の改定を見送ることが適切である旨の勧告を行った(乙42の1・2)。 (ウ) そして,平成15年民調の資料を基に,名古屋市と名古屋市を除く愛知県内の民間従業員の平均給与を算出すると,名古屋市を除く愛知県内の民間従業員の平均給与月額は,部長(支店長,工場長,事務部長,技術部長,事務部次長及び技術部次長。1510人)が83万0961円,課長(4979人)が64万1343円,課長代理(1965人)が48万7336円,係長(1万9340人)が49万9582円,主任(8966人)が38万2196円,係員(6万4680人)が27万8494円であり,それぞれに,その母集団に属する人数を乗じて合計した給与総額を総人数で除した平均給与月額が35万9891円であるのに対し,名古屋市内については,部長(2521人)が65万9686円,課長(4040人)が53万6537円,課長代理(3393人)が51万2162円,係長(5349人)が40万4433円,主任(8094人)が36万8440円,係員(5万322 )が65万9686円,課長(4040人)が53万6537円,課長代理(3393人)が51万2162円,係長(5349人)が40万4433円,主任(8094人)が36万8440円,係員(5万3223人)が27万3442円であって,同様に計算した平均給与月額が32万9774円となる。これによれば,名古屋市を除く県内の方が,名古屋市内と比べて部・課長の人数割合は少ないがその平均給与が高く,係長の人数割合も顕著に高いことや,名古屋市内の方が,係員の人数割合が高いことが明らかである(乙11ないし14)。 また,同様に,平成15年民調の資料を基に,地区別のラスパイレス比較によって算出した平均給与月額によると,海部津島地区は25万円未満であって,顕著に低いが,名古屋市の平均給与月額43万3283円よりも高い地区が尾張地方や西三河地方を中心に5か所(尾張中部,尾張北部,知多,豊田・加茂,衣浦東部)ある(乙38)。 キ愛知県における調整手当の沿革調整手当に類するものとして,昭和21年に臨時勤務地手当が創設され,昭和23年に勤務地手当に改められたが,昭和32年に同手当を廃止して,給料表の等級ごとに定められる一定額を支給する暫定手当の制度が創設され,昭和42年3月24日の本件条例制定後(施行は同年4月1日)も,同手当は存続していたが,昭和43年3月18日愛知県条例3号によって本件条例が改正され,その附則7項において,昭和42年8月1日にさかのぼって全県一律に給料等に100分の6を乗じた額の調整手当を支給することが定められた。その際,暫定手当が,愛知県内の全職員に一律支給されていたことや,職員団体から全県一律支給への強い要求があったことから,議会においては,調整手当を職員一律に支給するという条例改正案が全会一致で可決されている。(乙4,1 知県内の全職員に一律支給されていたことや,職員団体から全県一律支給への強い要求があったことから,議会においては,調整手当を職員一律に支給するという条例改正案が全会一致で可決されている。(乙4,19の1・2,20の1・2)。 その後,調整手当の支給割合は,昭和46年愛知県条例2号により100分の8に(適用は昭和45年5月1日にさかのぼる。),昭和58年愛知県条例3号により100分の9に(適用は昭和57年4月1日にさかのぼる。),昭和61年愛知県条例42号により100分の10(適用は昭和62年1月1日から)にそれぞれ改正されたが,全県一律支給については変更されず,今日に至っている。これについては,賃金,物価,生計費の指数を総合的に見れば,名古屋市と全県で地域格差がほとんどないことや,愛知県という限られた地域においては,職員の生活基盤である居住地に変更がないと考えられたこと,愛知県職員組合の強い要求があることなどが影響している(乙4,22)。 ク愛知県内の各地方公共団体に勤める職員の給与地方公共団体の職員の平均給与月額は,愛知県が51万5000円(年額830万2000円),名古屋市が45万9000円(年額746万8000円),豊根村が32万7000円(535万円)であり,平均年間給与額が700万円台の愛知県内の市町村が15市2町,600万円台が16市21町3村,500万円台が18町5村である。 なお,県職員の給与額の基礎には,行政職よりも高い給与水準が保障されている教職員や警察官が含まれている(一般行政職(大卒)の初任給が17万1500円であるところ,教員のそれは19万2000円,警察官(大卒)のそれは18万9300円である。)のに対し,市町村にはこれらの職種が存在しない(甲3の1ないし81)。 (2) 以上の認定事実によれば 円であるところ,教員のそれは19万2000円,警察官(大卒)のそれは18万9300円である。)のに対し,市町村にはこれらの職種が存在しない(甲3の1ないし81)。 (2) 以上の認定事実によれば,名古屋市内は,物価水準については愛知県内の平均と比べて4,5パーセント高いが,民間の給与水準については県内全域でほとんど較差がなく,かえって尾張地方や西三河地方を中心として,名古屋市内よりも高水準の地区が相当数存在すること,さらに,民間の給与水準と調整手当を含む給与全体についての調査が実施され,その結果に基づいて給与勧告が行われ,給与の改定がなされていること,愛知県はそれほど広くなく,公共交通機関の整備状況から,異動の際に転居を伴うとは限らないことから,在勤の地域によって手当の額に差を設けることは,必ずしも生活実態に沿うとはいえないこと,調整手当について一律支給を求める職員団体の強い要望があることなどの実情が明らかであり,これに照らせば,県内に在勤する県職員について勤務地を問うことなく調整手当の一律支給を定めた本件附則は,相応の合理性があることを否定できない。また,100分の10の割合による調整手当を廃止した場合,民間給与との間に相当額の乖離が生じ,民間準拠の原則に拠れば,給料本体の引き上げを余儀なくされ,その結果,退職金等の支給額が増加し,県の負担はかえって重くなりかねないことなどを考慮すると,本件支給によって愛知県に対し実質的に不当な人件費負担をもたらすものとはいえないから,前記のとおり,調整手当の本来の性格に沿うかについて疑問がないではないものの,本件附則は,地方公共団体の前記裁量権を乱用・逸脱するものとまではいい難く,違法無効なものではないと判断するのが相当である。 (3) この点について,原告は,①民調,全国消費実態調査及び ないものの,本件附則は,地方公共団体の前記裁量権を乱用・逸脱するものとまではいい難く,違法無効なものではないと判断するのが相当である。 (3) この点について,原告は,①民調,全国消費実態調査及び愛知県内の全国物価調査の対象範囲が狭く不十分であること,②県内市町村職員の平均給与からも,そのラスパイレス指数からも,名古屋市内の民間事業者の平均給与が名古屋市を除く愛知県内の民間事業所の給与を下回るはずがないこと,③愛知県内の国家公務員の平均給与月額が38万0815円であり,東京都のそれが40万7325円であるのに,愛知県内の民間のそれが44万7478円であるはずがないこと,愛知県職員の構成を基にラスパイレス比較法で比較するのは不当であること,④県内一律支給は,調整手当の目的に反し,かえって逆不均衡をもたらし,公民較差を是正するのであれば,調整手当を全県で廃止すべきであることを主張する。 しかしながら,①については,一般的には,調査対象を広げれば,その精度は上がるが,これらの調査は,愛知県職員の給与を決定するために実施し,又は資料とされるものであるところ,地方公務員の給与は職務とその責任に応じて決定される(地方公務員法24条1項)のであるから,その対象はある程度部課組織があって公務に類似した職務が多い企業である必要があると解されることや,愛知県内における交通事情に照らせば異動に伴って生活基盤が変動することはそれほど多くないと解されることなどからすれば,その調査地域を県内すみずみまで実施する必要性があるとは認め難い上,上記認定のとおり,物価水準や民間給与も規模の小さい町村であればそれらが低い(安い)という傾向は必ずしも認められないのであるから,同主張は採用できない。 次に②については,確かに,名古屋市を除く県内各市町村の公報(甲3 水準や民間給与も規模の小さい町村であればそれらが低い(安い)という傾向は必ずしも認められないのであるから,同主張は採用できない。 次に②については,確かに,名古屋市を除く県内各市町村の公報(甲3の3ないし81)には,職員の給与が民間との比較等を考慮して条例によって決められている旨の記載があるが,名古屋市のそれが,人事委員会の勧告に基づいていることが明言されていること(甲3の2),他方で,都道府県及び政令指定都市は人事委員会の設置を義務付けられるが,それ以外の人口15万人以上の市及び特別区は人事委員会を設置するか公平委員会を設置するかの選択が認められ,また人口15万人未満の市町村は,人事委員会を設置することはできず,公平委員会を設置することとされているところ,名古屋市以外の愛知県内の市町村は,人事委員会を設置しておらず,独自に,当該市町村における民間事業所の給与を調査することはないこと(地方公務員法7条1項,2項)に照らすと,名古屋市を除く県内各市町村が人事委員会を設置し独自に民間給与等の実態調査を行っているとは認められず,その給与がその地域の民間給与を十分に反映したものであるとは必ずしもいえないから,同主張も採用できない。 さらに③については,職員の給与水準を対比するには,その仕事の種類,役職段階,年齢,学歴などが相応する者の給与を対比する方法(ラスパイレス比較法)によることが最も適正であると解され,東京都職員給与や愛知県に在勤する国家公務員の給与を単純に比較して当否を論ずることはできないところ,少なくとも,愛知県職員は,国家公務員や名古屋市職員と比較して,高学歴の者の占める割合が顕著に高く,また,比較的給与水準の高い教育関係者や警察職員を多く含んでいることを考慮すると,同主張も採用できない。 最後に,④については,前記認 や名古屋市職員と比較して,高学歴の者の占める割合が顕著に高く,また,比較的給与水準の高い教育関係者や警察職員を多く含んでいることを考慮すると,同主張も採用できない。 最後に,④については,前記認定のとおり,ラスパイレス比較法によれば,県内における民間給与水準は,それほどの較差がないことが認められるのであるから,名古屋市等に勤務する職員にかえって不利益が生ずる等の逆不均衡が生ずることはなく,また,調整手当を廃止して,給料として支給する制度を採用するか否かは,職員給与制度をどのように構成するかに関する議会の裁量に委ねられていると解すべきであるから,同主張も採用できない。 (4) 以上のとおり,本件附則は,愛知県における民間事業所の給与水準の状況等の実態に照らせば,違法無効とはいえず,したがって,被告が同附則に基づいて本件支給を行うことも,地方公務員法24条3項,地方自治法204条2項に反する違法な公金の支出とはいえない。 3 結論よって,原告の本訴請求は,その余について判断するまでもなく理由がないから,棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行訴法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部裁判長裁判官加藤幸雄裁判官舟橋恭子裁判官尾河吉久(別紙省略)

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