平成12(ネ)4078等 東日本旅客鉄道損害賠償

裁判年月日・裁判所
平成13年9月11日 東京高等裁判所
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判決文本文47,345 文字)

(原審・千葉地方裁判所平成3年(ワ)第169号損害賠償請求事件(原審言渡日平成12年7月14日)) 主文 1 控訴人の控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。 (1) 控訴人は,被控訴人に対し,1210万9405円及びこれに対する平成2年9月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(2) 被控訴人のその余の請求を棄却する。 2 被控訴人の附帯控訴を棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じこれを3分し,その2を控訴人の,その余を被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 (2) 被控訴人の請求を棄却する。 (3) 被控訴人の附帯控訴を棄却する。 (4) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 2 被控訴人(1) 控訴人の控訴を棄却する。 (2) 原判決中被控訴人敗訴部分を取り消す。 (3) 控訴人は,被控訴人に対し,610万8824円及びこれに対する平成2年9月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 訴訟費用は,第1,2審とも控訴人の負担とする。 (5) 仮執行の宣言。 第2 事案の概要控訴人は,平成2年3月19日午前0時から最大72時間のストライキの実施を被控訴人に予告していたが,その予告時刻より半日早い同月18日の正午からストライキを実施した。本件は,被控訴人が,このストライキの前倒し実施は違法であると主張して,控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償を請求した事案である。 原審は,上記前倒し実施されたストライキは違法であると判断し,被控訴人主張の損害額すべてについて,この違法ストライキとの相当因果関係の存在を認めた一方,その3割を過失相殺して被控訴人の請求を認めたところ,控訴人がこ し実施されたストライキは違法であると判断し,被控訴人主張の損害額すべてについて,この違法ストライキとの相当因果関係の存在を認めた一方,その3割を過失相殺して被控訴人の請求を認めたところ,控訴人がこれを不服として控訴をし,被控訴人が附帯控訴をしたものである。 1 争いのない事実等(以下の事実は,当事者間に争いがないか,証拠〔甲8,9,14,18,23,33ないし42,47,49ないし51,57ないし61,76,193,乙11ないし13,16,17,19,24ないし27,31,32,35,36,38,39,49ないし53,63,原審証人A,同B,同C,同D,同E,同F,同G,原審控訴人代表者〕及び弁論の全趣旨により認められる事実である〔なお,書証の枝番号は,特に必要な場合を除き,省略した。以下同じ。〕。)(1) 当事者被控訴人は,日本国有鉄道改革法(昭和61年法律第87号),及び,旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(同第88号)に基づき昭和62年4月1日に設立された,旅客鉄道事業等を営む株式会社であり,日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)が経営していた旅客鉄道事業のうち,主として東北及び関東地方の営業を引き継いだものである。 また,控訴人は,被控訴人の千葉支社管内における動力車に関係する業務に従事する従業員などで構成される労働組合である。 (2) 労働関係調整法37条に基づく通知控訴人の上部団体である国鉄動力車労働組合総連合(以下「動労総連合」という。)は,平成2年1月5日(以下,月日のみで示すものは,平成2年のものをいう。),労働関係調整法(以下「労調法」という。)37条に基づいて,労働大臣及び中央労働委員会に対し,概要次のとおりの内容で争議行為に関する通知を行うとともに,その通知書の写しを被控訴人に交付した。 う。),労働関係調整法(以下「労調法」という。)37条に基づいて,労働大臣及び中央労働委員会に対し,概要次のとおりの内容で争議行為に関する通知を行うとともに,その通知書の写しを被控訴人に交付した。 ア事件定年延長,日本国有鉄道清算事業団配属者の雇用確保及び3月10日実施のダイヤ改正に伴う労働条件確立に関する争議イ争議の日時1月16日午前0時以降,本件の完全解決に至るまでの期間ウ争議行為の場所被控訴人が,東京都内,千葉県内,茨城県内等で経営する旅客鉄道輸送事業及び貨物鉄道輸送事業に関する全職場エ争議の概要上記ウの場所における同盟罷業を含む各種の争議行為及び使用者のロックアウトなどの妨害排除のための対抗行為を,その条件に応じて単独又は併用して実施する。 (3) 3月19日以降のストライキに関する具体的通知控訴人は,かねてからの諸懸案要求事項に対する被控訴人の対応が不誠実であるとして,被控訴人から誠意ある対応がない限り,3月19日からストライキ(以下「本件スト」という。)を実施することを決定し,同月16日,被控訴人千葉支社長宛に,概要次のとおりの争議行為に関する具体的通知を行った。なお,控訴人と被控訴人との間には,ストライキに先立ちその具体的内容を通知する旨の労働協約は存在しない。 アストライキの日時3月19日午前0時以降48時間ないし72時間。ただし,本線乗務員については始発時,地上勤務者については始業時より。 イ対象者(ア) 津田沼運転区,千葉運転区,館山運転区,勝浦運転区,銚子運転区及び京葉運輸区の全本線乗務員(イ) 幕張電車区及び習志野電車区の検修業務の日勤勤務者を対象とする時限ストライキ(ウ) 指名ストライキ(対象者略)ウなお,この通知には,「会社および警察権力からの不当な介入、不当労働行為 員(イ) 幕張電車区及び習志野電車区の検修業務の日勤勤務者を対象とする時限ストライキ(ウ) 指名ストライキ(対象者略)ウなお,この通知には,「会社および警察権力からの不当な介入、不当労働行為およびスト破り行為があった場合は、戦術を拡大する。」との記載がある。また,諸懸案要求事項の具体的内容は,概要次のとおりである。 (ア) 千葉県地方労働委員会による救済命令の完全履行(イ) 強制配転者の元職復帰の道筋明確化(ウ) 予科採用者の運転士登用(エ) ダイヤ改正に関する労働条件改善(オ) 研修等を実施する場合の要員配置実施(カ) 控訴人津田沼支部・浜野善弘支部長の強制配転撤回(キ) 転勤を希望しない者の強制配転中止(ク) 定年延長に関する労働条件改善(4) 本件ストの前倒し実施に至る経緯の概要ア被控訴人は,控訴人の主要拠点である千葉運転区において,3月18日,勤務開始時刻(午前11時16分)より2時間30分以上早く出勤してきた控訴人の千葉運転区支部H副支部長に対し,その時点における入構を認めなかった。また,被控訴人は,同日午前8時50分ころ,控訴人のF副委員長と千葉運転区支部I書記長の入構要求を拒否した。 イ被控訴人は,控訴人の主要拠点である津田沼運転区において,3月18日午前10時過ぎころ,控訴人のG書記長,津田沼支部J書記長の庁舎内立入り要求を拒否した。また,被控訴人は,同日午前11時前ころから約1時間で,控訴人が使用する津田沼運転区内の被控訴人所有事務所(以下「本件事務所」という。)の壁面から約2.8メートル離れた通路上に人の背の高さほどのトタンフェンスを設置する工事を完了した。 ウ被控訴人による上記の入構拒否等の対応を受け,控訴人のE交渉部長は,3月18日午前10時30分ころまでの間に,被控訴人千葉支社に2度電話をす の高さほどのトタンフェンスを設置する工事を完了した。 ウ被控訴人による上記の入構拒否等の対応を受け,控訴人のE交渉部長は,3月18日午前10時30分ころまでの間に,被控訴人千葉支社に2度電話をするとともに,同日午前10時45分ころには,同支社を訪れた。そして,同じく同支社に到着していたF副委員長とともに,被控訴人側に対し,控訴人組合員を被控訴人施設内に入構させること,本件事務所前のフェンス設置工事を中止することなどを申し入れたが,被控訴人側はこれを拒否した。 このような交渉の中,控訴人側からは,被控訴人が態度を変えないのであれば戦術拡大を行わざるを得ず,同日正午からストライキの前倒しを行う旨述べたが,被控訴人側が態度を変えることはなかった。そして,同日午前11時55分ころ,控訴人F副委員長は,被控訴人側に対し,戦術を拡大し正午以降全乗務員を対象としたストライキを実施することを口頭で正式に通告した。また,控訴人は,同日午後2時35分ころ,被控訴人千葉支社のB課長に同旨のストライキ通告書を交付した。 (5) 本件ストの前倒し実施控訴人は,3月18日正午以降,傘下の全乗務員を対象とするストライキを本件ストを前倒しする形で実施し(以下「本件前倒し実施」という。),控訴人組合員のうち,運転中の列車乗務員は,終着駅又は乗り継ぎ駅まで運転した後,運転室から離れてストライキに参加し,乗務予定の乗務員は,始発駅又は乗り継ぎ駅において乗務に就かずにストライキに参加した。なお,ストライキ突入時に運転中の控訴人組合員のうち8人は,運転室を離れる際,ブレーキ弁ハンドルの抜き取り,手ブレーキ緊締,手歯止めなどの転動防止措置を懈怠した。 (6) 本件前倒し実施による混乱状況本件前倒し実施により,千葉県のほぼ全域及び東京都の東部にわたる広範な地域で,原判決 ンドルの抜き取り,手ブレーキ緊締,手歯止めなどの転動防止措置を懈怠した。 (6) 本件前倒し実施による混乱状況本件前倒し実施により,千葉県のほぼ全域及び東京都の東部にわたる広範な地域で,原判決別紙一のとおり,運休列車249本,遅延列車等215本に及ぶ列車運行の混乱が生じた。 2 争点(1) 本件前倒し実施は,違法であるか。 (2) 本件前倒し実施による損害額は,いくらか。 (3) 被控訴人の損害額について,過失相殺をすることができるか。 3 争点についての当事者の主張(1) 本件前倒し実施は,違法であるか。 ア被控訴人の主張(ア) 本件前倒し実施の手続の違法性について被控訴人と,控訴人又はその上部団体である動労総連合との間には,争議行為に関する労働協約は締結されておらず,控訴人には,協約上,ストライキの通告義務はない。しかし,控訴人は,本件前倒し実施以前に行われた平成元年12月5日及び平成2年1月18日の2回のストライキ(以下,前者を「本件12月スト」,後者を「本件1月スト」という。)において,いずれも事前にその通告を行っている(甲10,11)。これは,控訴人が,予告なしに乗務員を対象とするストライキを行うことの影響の大きさ等から,公共輸送を担う者として,協約上の通告義務の有無にかかわらず,事前にストライキの通告を行うべきであるという認識を有しているからである。それ故,控訴人は,本件スト以降行われたストライキにおいても,すべて事前にその通告を行っている(甲67)。 そして,控訴人は,本件ストについて,3月16日に,3月19日午前0時以降ストライキを行う旨の通告を行っているにもかかわらず,自らこれに反し,本件前倒し実施を行った。しかも,控訴人は,本件前倒し実施の対象者,本件前倒し実施に入る時点についての被控訴人に対する通告を何度 ストライキを行う旨の通告を行っているにもかかわらず,自らこれに反し,本件前倒し実施を行った。しかも,控訴人は,本件前倒し実施の対象者,本件前倒し実施に入る時点についての被控訴人に対する通告を何度も変更し,混乱に拍車を掛けた。 また,被控訴人は,本件前倒し実施を予測することはできなかった。すなわち,控訴人が自ら正式文書により3月19日からストライキを実施すると通告している以上,それが破棄されるということは到底予測できないものである。国鉄時代にいわゆる第1波ストライキが繰上実施されたことがあるといっても,このときには,組合によるストライキの正式な通告が国鉄にされてはいなかったのであるから,控訴人から正式な通告がされている本件において,本件前倒し実施が行われるということを予測することができるものではない。控訴人の本件スト通告文書には,一定の場合には戦術を拡大する旨が記載されていたが,本件においては,これに記載された場合に該当する事実はなく,この記載があるからといって,本件前倒し実施を予測することはできなかった。 ところで,予告を経ないストライキの正当性については,それが予告なしに行われたことにより,使用者の事業運営に混乱や麻痺をもたらしたか,そして,そのような混乱が意図されたかなどを個別具体的に判断して決めるべきである。 本件においては,本件前倒し実施により,被控訴人千葉支社管内を中心とする鉄道輸送に大混乱が生じ,被控訴人の輸送等の業務は麻痺状態に陥ったが,このような状況が生ずることを控訴人は十分予測し,かつ,それを意図して本件前倒し実施を行ったものである。 以上のとおり,事前の通告に反して半日前倒しで行われた本件前倒し実施が正当性を有しないことは明らかである。 (イ) 本件前倒し実施の目的の違法性について本件前倒し実施は,控訴人 ったものである。 以上のとおり,事前の通告に反して半日前倒しで行われた本件前倒し実施が正当性を有しないことは明らかである。 (イ) 本件前倒し実施の目的の違法性について本件前倒し実施は,控訴人が,被控訴人による控訴人組合役員に対する入構拒否の措置に対し,抗議又は報復することを目的として行われたものである。 しかし,上記入構拒否の措置は,正当なものであり,本件ストに対する不当な妨害となるものでもなく,また,同措置により,控訴人が本件前倒し実施を行わなければならない緊急性が生じたということもできない。 a 入構拒否の正当性について一般論として,企業が自ら所有し管理する構内に業務に関係のない者の入構を認めるかどうかは,企業が自由に決めることのできる事柄であり,この理は,ストライキの前日であろうと当日であろうと,また,入構拒否の対象者如何にかかわらず,何ら変わりはない。 また,被控訴人の就業規則には,社員が業務を妨害し,若しくは秩序を乱し,又はそのおそれのある場合には,出社を禁じ,又は退社を命ずることがある旨の規定がある。 本件において千葉運転区で入構を拒否した2名の組合役員のうち,F副委員長は被控訴人と雇用関係のない者であり,そもそも入構する地位になく,I千葉運転区支部書記長は,被控訴人の従業員であるが,上記就業規則の規定に従い,業務を妨害し若しくは秩序を乱すおそれがあるものとして,その入構を拒否したのである。 ところで,判例は,施設管理権と組合活動との関係について,労働組合が当然に当該企業の物的施設を利用する権利を保障されていると解すべき理由はないとし,労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで企業施設を利用して組合活動を行うことは,これらの者に対しその利用を許さないことが当該施設につき使用者が有する権利の濫用であると認めら 理由はないとし,労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで企業施設を利用して組合活動を行うことは,これらの者に対しその利用を許さないことが当該施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては,職場環境を適正良好に保持し規律ある業務の運営態勢を確保し得るように当該施設を管理利用する使用者の権限を侵し,企業秩序を乱すものであって,正当な組合活動として許容されるものということはできないとしている(最判昭和54年10月30日。国労札幌地本戒告事件)。 本件においては,本件前倒し実施に先立って控訴人が行った2回のストライキにおいて,控訴人の組合員らが,管理者の退去通告を無視して長時間会社施設内に滞留したり,会社施設内で無許可の集会を開いたり,代替乗務員に対し不当な威圧を加えたりした行為が多発したため,被控訴人千葉支社が,かかる事態を事前に防止するため,本件ストの前日から入構規制を行い,業務にかかわりのない者の入構を拒否することとしたのである。すなわち,過去2回の控訴人によるストライキの前日及び当日における控訴人組合役員及び組合員の言動状況に鑑み,本件ストにおいても,会社施設内における無許可集会(就業規則22条違反),会社施設内滞留(同9条違反),退去通告拒否(同3条,業務命令違反)などの就業規則違反行為及び代替乗務員に対する写真撮影,ビデオ撮影,暴言等の威迫行為が行われることが容易に予測されたため,これを事前に防止するため,入構拒否を行ったのである。 このように,被控訴人千葉支社によるF副委員長らの入構拒否には正当な理由があるのみならず,被控訴人は,控訴人に対し,本件ストの際の控訴人との紛争を回避するため,一定の条件の下に,連絡員の入構を認めることを提案したところ,控訴人は,不当にこれを拒否した 否には正当な理由があるのみならず,被控訴人は,控訴人に対し,本件ストの際の控訴人との紛争を回避するため,一定の条件の下に,連絡員の入構を認めることを提案したところ,控訴人は,不当にこれを拒否したこと,千葉運転区内で控訴人が組合事務所として使用している建物については,控訴人に何らの占有権原もないから,同建物への通行が阻害されたからといって,控訴人の正当な権利を侵害したことにはならないことからすれば,被控訴人千葉支社による入構拒否の措置について,上記判例にいう「権利の濫用であると認められるような特段の事情」は全くなかった。 b 本件スト実施に対する妨害となるか控訴人は,千葉支社による入構拒否の措置が,本件スト実施に対する妨害行為であると主張する。 しかし,本件スト前日に組合役員から個々の組合員に対しストライキに関する確定的な指示をする必要があるとしても,それは,控訴人が自らの都合で行うことであり,これを理由に,被控訴人が控訴人組合役員を会社施設内に入れるなどの便宜を図らなければならないものではないし,そもそも,本件ストの方針は,事前に控訴人組合員に伝達されていたから,改めて指示する必要性も認められない。 また,ストライキが中止される場合であっても,運転現場において打合せをする必要性はない上,本件ストについては,ストライキ突入前に中止される可能性は全くなかった。 さらに,控訴人は,被控訴人千葉支社による入構拒否の措置を予測しており,この措置がとられた場合でも,本件スト実施に影響が出ることはない態勢を整えていた。本件スト以降に行われた控訴人によるストライキにおいても,被控訴人千葉支社は,控訴人組合役員や組合員の入構を認めていないが,控訴人は,ストライキに関する組合員への指示・伝達を支障なく行っている。 以上によれば,組合役員に対する入 るストライキにおいても,被控訴人千葉支社は,控訴人組合役員や組合員の入構を認めていないが,控訴人は,ストライキに関する組合員への指示・伝達を支障なく行っている。 以上によれば,組合役員に対する入構拒否の措置が本件ストに対する妨害行為であるとはいえない。 c 入構拒否に対して本件前倒し実施を行わなければならない緊急性があったか被控訴人千葉支社による入構拒否の措置が本件ストに対する妨害行為となるものではない上,本件前倒し実施による影響の大きさ,これを予測することが容易であったことなどを考慮すれば,本件前倒し実施に緊急性があったとは到底いえない。 (ウ) 本件前倒し実施の態様の違法性について本件前倒し実施は,日中,突如として実施されたことから,関係線区全体の列車に影響を及ぼし,ストライキに参加していない乗務員が運行する列車も停車せざるを得ない事態を惹起させた。すなわち,本件前倒し実施により,関係線区全体の乗務員が一斉にストライキに突入したのとほぼ同様の効果をもたらすこととなった。 このようなストライキは,控訴人組合員の労務不提供にとどまらず,ストライキに参加していない他の社員の業務を積極的に妨害する効果を生ずるものであるから,争議における労使間の負担の均衡を著しく破るものであり,許されないというべきである。 また,本件前倒し実施により,乗務中の列車の運転室を離れてストライキに参加した運転士がいたが,この中には,所定の引継を行わない者がおり,このうち8名は,手ブレーキ緊締,手歯止めなどの列車留置時に行うべき作業の一部を行わなかった。これは,現に列車運行業務に就いている組合員にストライキを指示したという控訴人の戦術そのものに起因するものであるところ,かかるストライキの態様は,鉄道業務において最も重要な輸送の安全を脅かすものであり,その態様 列車運行業務に就いている組合員にストライキを指示したという控訴人の戦術そのものに起因するものであるところ,かかるストライキの態様は,鉄道業務において最も重要な輸送の安全を脅かすものであり,その態様において違法というべきである。 (エ) 争議権の濫用について本件前倒し実施は,控訴人が被控訴人千葉支社に対し,3月19日午前0時からストライキを行う旨の通知を同月16日に行ったにもかかわらず,自らした通知に反して,同月18日正午からストライキに突入したものである。 かかる形態のストライキが正当であるというためには,前倒しでストライキを行ったことについての正当な理由及び緊急性が必要とされるところ,上述のとおり,正当性も緊急性も認められない。 したがって,本件前倒し実施は,争議権を濫用したものであり,保障されるべき争議権の行使に当たらない。 イ控訴人の主張(ア) 本件前倒し実施が不法行為に当たるとする主張について被控訴人は,本件損害賠償請求権は,不法行為に基づくものであるとしている。 しかし,労働協約の絶対的平和条項に違反する行為は,組合の債務不履行責任を生じさせるに止まるから,労働協約に平和条項として争議通告が規定されていたとしても,これに違反する争議行為については,組合に債務不履行責任が生ずることはあっても,争議行為の正当性は失われず,組合が不法行為責任を負うことはない。 労働協約に規定のある場合ですら不法行為責任が成立しないのに,無協約の場合には,債務不履行が論じられないとして,逆に争議行為の正当性が失われ不法行為が成立するとするのは,不合理である。 したがって,本件前倒し実施が不法行為であるとする主張は,それ自体失当である。 (イ) 本件前倒し実施の手続についてa 信頼関係と信義則上の予告義務もともと労働争議は,使用者に 不合理である。 したがって,本件前倒し実施が不法行為であるとする主張は,それ自体失当である。 (イ) 本件前倒し実施の手続についてa 信頼関係と信義則上の予告義務もともと労働争議は,使用者に損害を加える恐れをもって,その譲歩を引き出し,要求の実現を図るためのものである。したがって,争議予告も,交渉のぎりぎりの段階で,使用者に争議突入を避けさせるための決断・譲歩を迫るためにされるのであって,使用者に争議対策を講じさせるためにされるものではない。一定の争議予告期間を設けるが,使用者はスト破りをしないとの相互の信頼関係を確保する争議協定もなしに,労働組合の側にだけ,信義則上予告義務が課されているとするのは,公平の原則・労使対等の原則を破り,実質的に争議権を否定することであって,許されない。 しかも,本件の場合には,被控訴人は,労働委員会の救済命令(採用差別事件,千葉県地方労働委員会平成2年2月27日命令=乙44)の不履行という違法行為に加えて,数々の不当労働行為を行ってきた。加えて,本件においては,ストライキ突入前の勤務予定の控訴人組合員への宿泊施設提供拒否,運転区構内への立入り拒否,フェンス設置等,組合員に対する指導・スト破りに対する説得の機会さえ奪う不当な争議妨害行為,挑発行為があり,また,3月14日には,控訴人のG書記長が,被控訴人がスト回避の努力をせず妨害を行っており繰上げも含めて戦術拡大があり得ることを警告し,同月17日には,E交渉部長が,休養室の使用問題について被控訴人が譲らない場合には同月18日正午からストライキを行うこともあり得る旨を述べていたにもかかわらず,同月18日午前の交渉過程で,被控訴人の対応が変わらなければストの前倒し実施に突入することになるがそれで良いのかとの控訴人組合役員の発言に対し,被控訴人側は,「や 得る旨を述べていたにもかかわらず,同月18日午前の交渉過程で,被控訴人の対応が変わらなければストの前倒し実施に突入することになるがそれで良いのかとの控訴人組合役員の発言に対し,被控訴人側は,「やむを得ません。」と答えて,これを挑発したのである。 信頼「関係」は労使相互の関係であり,使用者の不誠実な対応を抜きにして,一方的に労働者のみを無条件に義務付けるべきものではない。しかも,争議権は労働者の基本的人権である。基本的人権の制約は,法律上明白であり,かつ合理的な根拠がなければならない。争議協定もなしに,信義則という一般的,抽象的概念の恣意的解釈でその制約を認めるのは,憲法上の争議権の保障に反するものである。 b 事業の性質と争議予告義務事業の公共性と争議行為との関係については,労調法が定めている。すなわち,公益事業に関する10日前までの予告(37条)及び緊急調整(35条の2以下)である。これらの規定自体,合憲性についての批判もされているが,法により公衆の日常生活の利益と争議権との比較考慮における調和点とされるのが,これらの規定である。 この争議予告規定の趣旨は,必要に応じ労働委員会に職権調停の機会を与えるとともに,争議行為の影響について公衆の予測を可能とし,争議当事者のいずれに責任があるかにつき世論の批判を通して公正な解決を図ることにある。この労調法による予告で公衆の利益が守られるのであって,その規定は,使用者の利益(ストライキ対策)を図るためのものではない。まして,事業の公共性ということから,労働組合のみにこれ以上の負担を負わせるのは,法の定めた権利相互間の調和を破ることになる。「信義則」に恣意的な内容を盛り込み,法律によらず,憲法上保障された争議権を制約することは,許されない。 c 事業の非代替性,業務内容の技術性・専門性及び 法の定めた権利相互間の調和を破ることになる。「信義則」に恣意的な内容を盛り込み,法律によらず,憲法上保障された争議権を制約することは,許されない。 c 事業の非代替性,業務内容の技術性・専門性及び非代替性と争議予告義務使用者側として,「列車運行の遅延を回避」するためには,スト破りを用意するのではなく,交渉によってスト回避の条件を探り,それを実現するのが本筋である。被控訴人の,労働委員会命令の不履行という違法行為に加え,争議行為を妨害する挑発的行為たる入構禁止措置等に固執し,ストの前倒し実施をしても「やむを得ません。」という態度は,公益事業の経営者としての責任を自覚するものとは到底言えない。また,労調法における公益事業争議の予告義務も,公衆に対する関係ではじめて認められるものであって,使用者の損害回避・回復のためのものではない。こうしたところからも,ストの前倒し実施を損害賠償請求の原因と認める解釈は誤りである。 d 事前通告における十分な猶予期間について千葉支社の主軸である総武緩行線の乗車受持は津田沼運転区及び中野電車区(比率は1対2),総武快速線のそれは千葉運転区及び東京電車区(比率は3対7)であるため,控訴人組合員がストライキに入ったからといって全列車が運行不可となるわけではなく,車両処理さえ適確に行えば,他労組の乗務員もおり,代替乗務員がいなくても,少なくとも総武緩行線で66.4パーセント,総武快速線で71. 1パーセントのいわゆる間引運転は十分可能であったのであり,3月18日は日曜日で通勤・通学はないのであるから,利用客にそれ程の不便を与えることはなかったはずである。 これに加えて,総武緩行線で見ると,津田沼支部のスト参加者は合計12名であったところ,代替乗務員は合計13名が確保されていた。しかも,ほぼ控訴人の所定交番に従 を与えることはなかったはずである。 これに加えて,総武緩行線で見ると,津田沼支部のスト参加者は合計12名であったところ,代替乗務員は合計13名が確保されていた。しかも,ほぼ控訴人の所定交番に従ったストライキ進行に合わせて代替乗務員が確保されていた。因みに,被控訴人は,総武緩行線については混乱があったことを主張していないが,総武緩行線が運行確保されていれば,千葉以西については特急列車の利用客を除いて殆ど不便は生じない。また,総武緩行線と並行して走る東京-蘇我間の京葉線は,本件前倒し実施の影響が全くなく,平常どおり運行されていた。 これを総武快速線で見ても,控訴人の千葉運転区支部のストライキ参加者(ただし,全部が総武快速線の担務という訳ではない。)は合計36名であったが,うち6名は予備勤務であったから,交番数では30であったところ,代替乗務員は,全部が総武快速線の担務を命じられたものではないと思われるが,合計52名が確保されており,その態様は,総武緩行線の場合とは異なって,控訴人のストライキ進行に見合うかたちで予備勤務を含む所定勤務の残業(延長)か前倒しで賄われている。 加えて,本件前倒し実施は,ストライキの進行に伴って順次代替乗務員が必要となるにすぎない態様のものであることをも考慮すれば,主要路線である総武緩行線と総武快速線については,本件前倒し実施に対して,十分な代替乗務員を確保し,列車運行の遅延を回避することができたといえる。 他方,千葉以東の関係では,そもそも「要員的に絶対数が足りない」(訴状12~13頁)ことに加えて,館山運転区・勝浦運転区では乗務員(運転士)について控訴人の組織率が高いことに対応して,組合対策(労務対策)を軸とした人員配置となっているため,運転資格のない者が多数配置され,その分運転資格のある者の要員数が 勝浦運転区では乗務員(運転士)について控訴人の組織率が高いことに対応して,組合対策(労務対策)を軸とした人員配置となっているため,運転資格のない者が多数配置され,その分運転資格のある者の要員数が絶対的に小さくなっている。したがって,千葉以東については,被控訴人にそもそも代替乗務員を確保し列車の遅延を回避する意思もその態勢もなかったのであるから,控訴人に対して十分な乗務員を確保し,列車運行の遅延を回避できるような「十分な猶予期間をおいた事前通告義務」を課することはできないのが道理である。 これを他の面から検討してみると,被控訴人の主張によれば,3月18日正午からの勤務が付いている者が50名いるが,この正午からの勤務のカウントは,控訴人が正午からストに突入(本件前倒し実施)したことに平仄を合わせたと考えるのが合理的であり,残業超過と思われる1人を除いては,正午より前に所定箇所の配置についていたと考えるのが自然である。これが本件スト前倒し実施のための緊急配置だとすれば,これがスムーズにできたということは,当該対策員らに予め(早期に)自宅待機ないし出勤を要請(依頼)していた可能性を窺わせ,正午に近い時刻に配置についた者の多くにもそのようにした可能性がある。そして,その可能性は,津田沼運転区及び中野電車区の代替乗務員にも該当する。これに加え,被控訴人は,3月17日分から既に鉄道輸送に支障が生じた場合の代替輸送手段としての貸切バスを確保しているのである。そうすると,被控訴人は,本件前倒し実施をストライキ対策に織り込み済みであったといえるし,事前に「十分な猶予期間」を自ら準備していたというべきである。 さらに,控訴人は,3月16日に被控訴人千葉支社に渡した事前通知書に「会社および警察権力からの不当な介入、不当労働行為およびスト破り行為があった場 な猶予期間」を自ら準備していたというべきである。 さらに,控訴人は,3月16日に被控訴人千葉支社に渡した事前通知書に「会社および警察権力からの不当な介入、不当労働行為およびスト破り行為があった場合は、戦術を拡大する」と記載したが,本件の場合,この「戦術拡大」とは,人員的な拡充が困難であった等の事情から,前倒し実施しか選択肢はなかった。そして,被控訴人は,前記のとおり,前倒し実施を見込んで要員配置した上で,ストライキ妨害措置を強行実施したのである。 以上によれば,本件前倒し実施の事前通告について,十分な猶予期間がなかったということはできない。 (ウ) 本件前倒し実施の目的の正当性についてストライキの目的は,本来,労働者の要求を実現し,不当な扱いに対して抗議して,これを是正させることにある。労使の主張の対立において,労働者の要求貫徹を目的とする業務阻害行為が争議行為なのである。 本件ストの目的は,当初から,被控訴人に労働委員会命令の履行を求めることにあった。被控訴人は,これを拒否して命令不履行という違法行為に固執するだけでなく,その是正を求める組合のストライキを妨害する措置に出たのである。こうした被控訴人の理不尽な態度に対し,ストライキの実効性確保としての戦術拡大の正当性は,公平の原則からも明らかである。 a 被控訴人の対応・態度の違法性について被控訴人は,突然,千葉運転区構内への控訴人組合役員らの立入拒否(この措置は,同庁舎内にある組合事務所の使用禁止ともなる。)や,津田沼運転区(習志野電車区)における一般人も通行している構内への入構禁止,同運転区庁舎内への立入禁止,控訴人津田沼支部の本件事務所前のフェンス設置(対策員配置と合わせて事実上の封鎖)を行った。これらはいずれも,控訴人に20年以上にわたって暴力的に敵対する旧動労を主 止,同運転区庁舎内への立入禁止,控訴人津田沼支部の本件事務所前のフェンス設置(対策員配置と合わせて事実上の封鎖)を行った。これらはいずれも,控訴人に20年以上にわたって暴力的に敵対する旧動労を主軸とする多数派労組たるJR東労組(JR総連)の,控訴人が行うストライキを破壊することのみを目的とした強硬な申入れ(甲26)を,被控訴人において,「一企業一組合(=他組合の排除)」という立場から積極的に受け入れた結果である。被控訴人は,控訴人の行う本件ストを攻撃的に妨害する意図で,すなわち,明確な不当労働行為意思をもって,しかも,本件ストの戦術拡大としての前倒し実施があることを十分に認識した上で,平常の列車運行の確保よりも控訴人組合対策=労務対策を優先させて,国鉄時代から続いてきた,そして,本件スト前の本件12月スト及び本件1月ストの各ストライキに際しても維持されていた争議時における労使慣行を急遽破棄したものである。上記各措置の解除・緩解を求める控訴人組合役員ら(F副委員長・E交渉部長)の要求と,それに対する被控訴人千葉支社の対応(判断権を有する責任者たる千葉支社長・総務部長の同時不在)の経過から,被控訴人が上記各措置をとることによって控訴人の本件ストの前倒し実施を積極的に誘発しようとした意思を読み取ることができる。しかも,控訴人と同様に争議行為若しくはその準備行為の段階に入っていた国労の役員・組合員については,入構禁止の措置が取られていなかった。 被控訴人は,過去に行われた「非違行為」が本件ストの際にも行われることを防止するために,上記入構拒否の措置等をとったと主張するが,被控訴人が「非違行為」と称するものは,ストライキに随伴し,その一部をなす争議行為ないし組合活動(準備行為)である。また,被控訴人が「威迫行為」と称するものも,ストライキの 等をとったと主張するが,被控訴人が「非違行為」と称するものは,ストライキに随伴し,その一部をなす争議行為ないし組合活動(準備行為)である。また,被控訴人が「威迫行為」と称するものも,ストライキの実効性確保,労使対等の実現のための争議行為として,常軌を逸したものではない。他労組の者であっても,その者の通常の勤務ではなく,ストライキ時の「代替乗務」をする限りは,スト破りの役割を演ずるものであるから,これを止めさせるための説得活動の一環として,それに対する労働者同士間での社会的非難が加えられるのは当然である。労働争議は,交渉・話し合いで解決ができない局面での社会的紛争ないし闘争であり,その労働者同士の言論が平常時より多少あらっぽくなったとしても,「威迫行為」との評価を受ける筋合いではない。そもそも,使用者自身がビデオ設置や「現認」によりスト労働者を懲戒処分で脅しながら,労働者の写真撮影,ビデオ撮影を非難するのは,労使対等原則が念頭にないことを示すものである。 b 施設利用をめぐる従前の利用関係について控訴人は,派遣役員の運転区入構の承認を求め,これは,国鉄時代から本件1月ストに至るまで一貫して認められてきた。控訴人が役員入構の承認を求めてきたのは,組合員がスト突入に備えた始発直前の交渉妥結による「暁の脱走」(スト不突入=スト突入体制の解除)に備えたり,運転業務を使命とする運転士の職能集団としての宿命的な特性として,スト突入・スト中止に係わる平時(きちんと仕事をする=列車を動かす)と争議時(きちんとストライキをする=列車を止める)とを,メリハリをつけて明確に区分けするためであった。控訴人は,組合員がスト中止を知らずにバラバラにストライキに入ったり,逆に,スト突入を知らずにストライキに入らなかったりすること,あるいはスト中止後の立ち上がりに つけて明確に区分けするためであった。控訴人は,組合員がスト中止を知らずにバラバラにストライキに入ったり,逆に,スト突入を知らずにストライキに入らなかったりすること,あるいはスト中止後の立ち上がりにおいて無意味にストライキ状態を継続させたり,ストライキを部分的に残存させるような事態を避けようとしてきたし,実際にそのようにしてきたが,これがまた使用者側にとってみれば,ストライキ対策の見通しの容易化,及び組合の協力(スト中止前から実施される保安列車の確保,乗務員の乗り出し地点への送り込み等)による立ち上がり後の列車運行の迅速な確保という利便になっていた。この関係が,列車運行を実際に担当する現業区,それを統括する管理局(国鉄当時),支社(被控訴人)との間の争議行為時における労使慣行となり,それが労使間の信頼関係の基礎となっていた。 前記aで指摘したとおり,被控訴人は控訴人に敵対するJR東労組(JR総連)の申入れを受け,前記措置をとることによって,急遽この信頼関係の基礎を破壊するに至ったのである。 そして,本件スト以降,控訴人によるストライキ中止は絶対的にあり得ないという被控訴人の思い込み(決めつけ)と相俟って,控訴人の組合役員が入構禁止によって運転区などの現業機関の幹部(区長・助役)と現場で協議ができなくなった結果として,ストライキ中止後の立ち上がりにおいてこれまで生じたこともなかったような,例えば,ストライキ立ち上がり後の変仕業をくるくる変更させる(担務する乗務員はいつ,どこから,どの列車に乗務して乗り出せばよいかわからず,組合としては当該乗務員をどこへ搬送すればよいかわからなくなる),あるいは現業区がストライキ中止を把握していないために立ち上がり後の乗務に就くべく出勤した組合員を入構させないなどの大混乱が生じた。 被控訴人は,国労札 員をどこへ搬送すればよいかわからなくなる),あるいは現業区がストライキ中止を把握していないために立ち上がり後の乗務に就くべく出勤した組合員を入構させないなどの大混乱が生じた。 被控訴人は,国労札幌駅ビラ貼り事件の最高裁判決を援用して,上記入構拒否の措置等を正当化する。しかし,これは,全く類型を異にする事件の判決の「趣旨」を,恣意的に自己の結論に合わせて曲解するものである。 施設管理権といっても,就業規則や労働指揮権などの職場秩序(企業内秩序)に拘束される場面における日常的な組合活動との関係と,職場秩序から離脱することを前提とする争議時の場面における争議行為ないしはその準備行為との関係では,同一に論ずることはできないはずである。上記最高裁判決は,(旧)公共企業体等労働関係法(公労法)によって争議行為を禁止されていた労働組合が,春闘の一環として行った組合活動(ビラ貼り)に関するものである。少なくとも「事業の正常な運営を阻害するもの」(労調法8条の争議行為の定義)が労働者の権利行使とされる争議行為に妥当するいわれはない。本件に上記最高裁判決を援用することは,労働義務違反(ストライキ,サボタージュ),誠実義務違反(ボイコット),施設管理権の行使を含む使用者の業務運営の故意の阻害(排他的に亘らない職場占拠,非暴力的ピケ,スキャップ要員に対する対抗的言動,業務命令の無視等)等,通常時(平時)の企業内秩序からは許容され得ない特別の行動が保障される争議権独自の意図が否定され,(争議時の)争議行為を(平時の)組合活動一般の中に完全に埋没させるものである。 さらに,不当労働行為は,法律関係の存否とは異なった次元で成立し,形式的・外形的には使用者の権利行使と見られる行為であっても,その意図によっては,不当労働行為が成立する(いわゆる日産自動車事件の最高 さらに,不当労働行為は,法律関係の存否とは異なった次元で成立し,形式的・外形的には使用者の権利行使と見られる行為であっても,その意図によっては,不当労働行為が成立する(いわゆる日産自動車事件の最高裁昭和62年5月8日第二小法廷判決参照。)。したがって,本件事務所等の占有権原を控訴人が有しないとしても,その使用を妨害した被控訴人の行為は,不当労働行為となるものであり,現に,地労委において,救済命令が出されている(乙11)。 (エ) 本件前倒し実施の態様について争議行為は,団結の実力行使により,労働者の労働が使用者にとりどれほど貴重であるかを知らせ,正常な業務の運営を確保するための譲歩を迫るものである。それは,目的実現のための圧力であり,争議行為による「使用者の負担」が大きいことは,それだけ解決に近づくことであり,それ自体が非難されるべきことではない。 また,争議権行使は,労務不提供に限られず,使用者の労働契約上の権利や操業権,所有権と衝突する手段・方法で行われても,正当性が認められ得る。しかも,本件では,「他の社員の業務を積極的に妨害」したことの具体的な主張がないばかりか,そのような効果は,ストライキの結果として往々に生ずることである。 さらに,引継不良や転動防止措置の懈怠は,控訴人が争議戦術として指示したことはなく,仮にそのような事実があったとしても,それは,個別的労働関係の問題にすぎない。 (オ) 争議権の濫用の主張について本件前倒し実施は,手続,目的,態様において,正当性に欠けるところはなく,使用者の不当労働行為,スト妨害・挑発に対抗して戦術を拡大したことに,何ら非難されるべき点はない。 (2) 本件前倒し実施による損害額は,いくらか。 ア被控訴人の主張被控訴人は,本件前倒し実施への対応として,原判決別表(一)のとおり1 抗して戦術を拡大したことに,何ら非難されるべき点はない。 (2) 本件前倒し実施による損害額は,いくらか。 ア被控訴人の主張被控訴人は,本件前倒し実施への対応として,原判決別表(一)のとおり1099名の人員配置を行い(業務内容の説明は,原判決別紙二のとおり。),本件前倒し実施に関して要した費用として,合計2036万2747円(人件費924万9416円〔同別表(二)〕,代替輸送費774万8411円〔同別表(三)〕,払戻費336万4920円〔同別表(四)〕)を支払ったが,この合計額全額が,本件前倒し実施と相当因果関係にある損害である。これを敷衍すると,次のとおりである。 (ア) 人件費相当損害額について「警護」・「支援」・「添乗」関係費用は,控訴人組合員が,本件12月スト及び本件1月ストの各ストライキに際し,ストライキ前日,運転区構内へ立ち入り滞留するなどして被控訴人の退去通告に応じなかったり,ストライキ当日,代替乗務員らに対し罵声を浴びせ,追いかけ,写真撮影を行うなどの威迫行為を数多く行ったため,本件ストにおける同様の反復行為を排除し代替乗務員を守るために必要な支出である。「現認」関係費用は,ストライキ中の非違行為は懲戒処分の対象となることから,その適正な運用をするために必要な支出である。「警備」関係費用は,控訴人を支援する集団が,国鉄清算事業団職員の解雇問題について控訴人と共に戦い抜く戦線を作り上げると宣言していたことから,その対策のために必要な支出である。 また,千葉運転区及び津田沼運転区については,控訴人の重要拠点であり,控訴人傘下の多数の組合員が代替乗務員に威迫行為を行うことが予想されたことから,これに備えて相応の人員を配置したものである。無人駅などの小さな駅でも,ストライキの前倒し実施により乗客に混乱が生じることは当然 下の多数の組合員が代替乗務員に威迫行為を行うことが予想されたことから,これに備えて相応の人員を配置したものである。無人駅などの小さな駅でも,ストライキの前倒し実施により乗客に混乱が生じることは当然であるから,これらの駅に人員の配置を行うことには合理的な根拠がある。 なお,被控訴人が請求している人件費は,本件前倒し実施が行われた3月18日に所定勤務のなかった社員で,本件前倒し実施の諸対策に従事させるため急遽出勤を命ぜられ,同諸対策に従事した者に支給された人件費,及び3月18日に所定勤務があった社員で,本件前倒し実施の諸対策に従事させるため,所定勤務の始まる前に,又は所定勤務時間終了後に,急遽勤務を命ぜられ,同諸対策に従事した者に支給された人件費であり,いずれも,本件前倒し実施がなければ支出を免れたものである。 (イ) 代替輸送費相当損害額についていすみ鉄道・小湊鉄道は,本件ストの対象路線の運転が停止した場合,外房方面から千葉方面に向かう旅客の振替が可能な鉄道である。また,終着・始発駅で接続している両鉄道で代替輸送対象者の人数が異なっている点については,被控訴人が関知するところではなく,被控訴人は,あくまで両鉄道からの請求に基づいて代替輸送費を支払ったにすぎないものである。したがって,被控訴人の代替輸送費相当損害額に過剰見積はない。 また,被控訴人が手配したバスの中には,実際には使用されなかったバスもあったが,手配当時,代替輸送の人数を正確に把握することは不可能であったから,不足するよりは多めに手配するのは当然であり,結果的に使用されなかったバスがあっても,それを損害から除くべき理由はない。 なお,小湊鉄道からの請求書(甲186の7の1)に「3月17日」の記載があるのは単なる誤記にすぎない。 (ウ) 払戻費について本件前倒し実施 バスがあっても,それを損害から除くべき理由はない。 なお,小湊鉄道からの請求書(甲186の7の1)に「3月17日」の記載があるのは単なる誤記にすぎない。 (ウ) 払戻費について本件前倒し実施が違法である以上,控訴人は民事免責を受けることができず,相当因果関係のある損害すべてを賠償する責任があるところ,払戻費が本件前倒し実施と相当因果関係のある損害であることは明らかである。 また,被控訴人は,本件前倒し実施により運休した列車に係る得べかりし利益の請求をしておらず,払戻費から運休により支出を免れた諸経費を差し引くべき根拠はない。 イ控訴人の主張(ア) 通常の損害と特別の実損害について仮に本件前倒し実施が違法であるとされるとしても,その違法は,本件ストを前倒ししたことについての違法であって,前倒し実施されたストライキ自体が全体として違法となるものではない。したがって,損害賠償責任は,ストライキそのものに起因するものではなく,前倒し実施そのものと相当因果関係にあるものに限定されるべきである。 ところが,被控訴人が主張する損害は,いずれも,ストライキから通常生ずる損害にすぎず,ストライキが前倒しされたことによる特別の損害及びその予見可能性についての主張立証はない。 (イ) 人件費相当損害額についてa 「現認」,「警護」,「支援」,「添乗」要員の人件費について被控訴人は,運転区構内への立入り拒否,フェンス設置など争議行為を妨害する手段を講じており,その上こうした要員による対抗策は不要なはずである。また,使用者のビデオカメラ設置や「現認」(それは,「懲戒」をもってする「脅迫」である。)の要員配置を「合理的」としながら,スト破りに対する労働者の「罵声やヤジ」,「写真撮影」を「不当な阻止行動」とするのは,偏跛的であり,労働組合法の目的 それは,「懲戒」をもってする「脅迫」である。)の要員配置を「合理的」としながら,スト破りに対する労働者の「罵声やヤジ」,「写真撮影」を「不当な阻止行動」とするのは,偏跛的であり,労働組合法の目的である労使対等の促進に背くものであって,許されない。 b 「警備」要員の人件費について仮に「警備」要員の配備に合理的根拠があったとしても(控訴人はそのような状況はなかったと考えるが),それは「控訴人を支援する集団」に対する警備であり,控訴人のストライキに対する警備ではない。これをストの前倒し実施による損害とするならば,「控訴人を支援する集団」に請求すべきものであって,控訴人に対する請求は筋違いである。 また,原判決別表(一)によれば,警備人員は94名計上されているが,警備要員は既に3月17日から交替で配置に就いていた者であるから,この94名(ただし,津田沼・千葉・銚子運転区の人員数と重複する。)の要員数については,前倒し実施とは因果関係がないことになる。 c 対策要員配置の予定との関係被控訴人は,本件ストのため,警備人員を除き980名の対策要員を配置する予定を立て,この予定どおり配置したのであるが,この980名という員数は,3月19日からの本件ストに向けて,前日の18日に配置することになっていた対策要員数であって,これは,本件ストの前倒し実施がなくても予定どおりに配置されたものであり,当初配置の要員に対応する後続勤務の交替要員を含めて因果関係はないことになる。 d 国労のストライキに対する対策上記980名の要員数の対策員の配置は,国労のストライキに対する対策も含めたものであり,控訴人のストライキに対する対策を含めた「一つの対策」としてあったものであって,控訴人組合対策と国労対策で振り分けることは無理である。 「一つの対策」として要員操 キに対する対策も含めたものであり,控訴人のストライキに対する対策を含めた「一つの対策」としてあったものであって,控訴人組合対策と国労対策で振り分けることは無理である。 「一つの対策」として要員操配したということは,何時以降は国労対策の意義が生じたとも区分できないということである。このことは,実際動員数1099名のうち,980名の範囲内においては,その経費責任をすべて控訴人に転化することができないことを意味している。ただし,丸の内車掌区3名,津田沼車掌区30名は,国労の車掌ストライキに対する対策として明確に区分できるものである。 e ストライキ参加組合員に対する賃金カット分等の損益相殺被控訴人は,ストライキに入った組合員に対して賃金カットを行い,また,懲戒処分による昇給の延伸等により定年時までの賃金支払額を大幅に縮減しており,これらは本件前倒し実施による支出減として,損害額より差し引かれるべきである。 f 検修区における配置控訴人が本件ストを前倒し実施したのは,本線乗務員のストライキの部分のみであって,検修業務に就く電車区の地上勤務者や,個別的な指名ストライキの対象となった駅売店勤務者については前倒し実施していない。ところが,原判決別表(一)によれば,被控訴人は,検修部門である電車区についても対策要員を配置している。このうち,中野,東京の電車区は千葉支社外であって,ここには配属された控訴人の組合員はいない。これらには,当然前倒し実施とは関係のない人件費出損が含まれている。 g 車掌の配置丸の内車掌区の3名(乗務),津田沼電車区の26名(乗務)及び4名(運用)の合計33名は,いずれも車掌であって,この配置は,国労が3月19日から実施する車掌のストライキに対応するものであり,車掌(乗務員)のいない控訴人のストライキに対する対策でない 務)及び4名(運用)の合計33名は,いずれも車掌であって,この配置は,国労が3月19日から実施する車掌のストライキに対応するものであり,車掌(乗務員)のいない控訴人のストライキに対する対策でないことは明らかである。 h 被控訴人提出証拠の信用性について被控訴人は,人件費計上の根拠となる勤務整理簿(甲77から185までのうち枝番が4のもの)の多くを,保管するよう指示していたにもかかわらず,紛失したとしており,紛失経過について合理的な説明をしていないほか,書証中に同一対策要員の業務内容の記載が一致しないものもあるなど,被控訴人提出の書証の正確性,信用性は,極めて低い。 (ウ) 代替輸送費相当額についていすみ鉄道・小湊鉄道の振替輸送は本件ストの対象路線とは関係のないものである。仮に関係があるとしても,大原駅から五井駅の間を両鉄道を乗り継いで行くとした場合,いすみ鉄道に関する大原駅から上総中野駅までの代替輸送対象者が91名,小湊鉄道に関する上総中野駅から五井駅までの代替輸送対象者が82名と人数に相違があることには合理的な根拠がない。 また,代替輸送費は,列車ストライキによる通常損害である上,被控訴人の請求は,実際に代替輸送に使用されなかったバスの待機料や使用されたかどうか不明なバスの貸切料をも算入している。これらの手配は,使用者の判断の不手際(利用者数の見込み違い)によって自ら招いた損失(自損)であり,本件ストの前倒し実施による損害ではない。 さらに,被控訴人提出の小湊鉄道からの請求書(甲186の7の1)によれば,請求内訳として「3月17日,18日列車代行貸し切りバス運賃として」と記載されているが,3月17日は,本件前倒し実施とはいかなる意味でも関係がない。これを,単純な誤記とする被控訴人の主張は,信用できない。 (エ) 払戻費につい 18日列車代行貸し切りバス運賃として」と記載されているが,3月17日は,本件前倒し実施とはいかなる意味でも関係がない。これを,単純な誤記とする被控訴人の主張は,信用できない。 (エ) 払戻費について払戻費は,「本件ストライキにより特急の運転を打ち切らざるを得なくなったため」(訴状30頁)というものであるが,この払戻費は,ストライキの通常損害であって,前倒しによる特別の実損害に該当しない。仮にそれに該当するとしても,運休している以上,払戻費すべてが実損害になるはずはない。実損害と言えるのは,特急列車を運行していれば得られたであろう利益(得べかりし利益)と払戻業務に要した経費(払戻費を含まない)に過ぎない。得べかりし利益の算定では,払戻額ないしは売上額から特急列車を運行するのに必要な諸経費(人件費,電力費,車両損耗費等)が差し引かれなければならないが,赤字線であればそもそも得べかりし利益はなく,損害の発生も考え難い。払戻の実態からすれば,むしろ被控訴人は赤字運行を免れたと言うべきである。 (3) 被控訴人の損害額について,過失相殺をすることができるか。 ア控訴人の主張本件前倒し実施は,正当な争議権の行使であり,違法性を認めることはできない。したがって,過失相殺の主張は,必要性がなく,積極的にはしない。 イ被控訴人の主張本件前倒し実施に先立って行われた,被控訴人による,控訴人組合役員らの入構拒否,本件事務所前でのフェンス設置等は,いずれもこれを行う必要性があった。 また,ストライキ時における組合役員の入構が労使慣行になっていたとは認められず,被控訴人が本件前倒し実施を予測することもできなかった。 したがって,本件において,被控訴人の損害額を過失相殺によって減額することは許されないというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1 ,被控訴人が本件前倒し実施を予測することもできなかった。 したがって,本件において,被控訴人の損害額を過失相殺によって減額することは許されないというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件前倒し実施の違法性)について(1) 上記第2の1の事実に加え,証拠(甲5,6,10から14まで,16,17,18,23,25から32まで,42,43,49から51まで,55から59まで,62から67まで,73から195まで,乙6,11,19,31,35,36,44,49から53まで,65,原審証人A,同B,同C,同D,同E,同F,同G,原審控訴人代表者)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実を認めることができる。 ア 当事者等控訴人は,国鉄の主要労働組合の一つであった国鉄動力車労働組合から昭和54年3月に独立して結成された労働組合であり,組合員は,電車又は気動車の運転士及び車両の検査,修理等を行う地上勤務者に大別されるが,前者が大きな比率を占めており,平成2年3月当時の組合員数は,約740ないし750名であった。 被控訴人には,控訴人のほか,東日本旅客鉄道労働組合(以下「東鉄労」という。),国鉄労働組合(以下「国労」という。),東日本鉄道産業労働組合(以下「鉄産労」という。)等の労働組合がある。 イ 国鉄時代のストライキ等(ア) 国鉄時代は,公共企業体等労働関係法により争議行為が禁止されていたことから,国鉄時代に控訴人等の労働組合がストライキを行う場合には,事前に報道機関にその内容等を公表することによって,事実上,国鉄当局にも通知が行われる結果となっていた。 (イ) 控訴人は,昭和60年11月29日午前0時から,国鉄のいわゆる分割・民営化に反対して,総武線の千葉以西の乗務員に係る指名ストライキ(通称「第1波スト」)を予定していた る結果となっていた。 (イ) 控訴人は,昭和60年11月29日午前0時から,国鉄のいわゆる分割・民営化に反対して,総武線の千葉以西の乗務員に係る指名ストライキ(通称「第1波スト」)を予定していたところ,国鉄によるストライキ妨害が行われているとして,これを半日繰り上げて同月28日正午から実施することとした。そして,同月27日夕方,その旨を報道機関に発表したことから,そのころ,国鉄当局もこれを知った。 (ウ) 第1波スト実施中の昭和60年11月29日未明,過激派と見られる集団により,国鉄の信号・通信ケーブルが切断されたり,変電所や総武線浅草橋駅が放火されるなどの事件が発生し,首都圏,大阪地区で国電を中心に始発から全面的に列車が運休するなどの混乱が生じた。 ウ 被控訴人の発足前後の状況(ア) 国鉄時代,控訴人は,国鉄当局から,本件事務所,千葉運転区内にある組合事務所等の国鉄所有建物について,組合事務所として使用することの承認を得ていたが,この使用承認期限は,昭和62年3月31日までとされていた。 同年1月21日付けで,国鉄は,控訴人に対し,日本国有鉄道改革法等が成立し,同年4月1日以降,被控訴人等の新会社が発足することとなっていることなどを指摘した上,現在使用を承認している上記建物等を同年3月31日をもって返還するよう求める千葉鉄道管理局長名義の文書を交付した。 しかし,控訴人は,同年4月1日以降も上記建物の使用を継続した。 (イ) 被控訴人発足後,被控訴人は,各労働組合との間で,労働協約締結のための交渉を開始した。 被控訴人と,控訴人の上部団体である動労総連合との間では,被控訴人発足直後の昭和62年4月3日ころ,団体交渉のルールを定めた暫定協約が締結されたものの,その他の内容の労働協約ないし労使間の取扱いに関する協約については,本件ス である動労総連合との間では,被控訴人発足直後の昭和62年4月3日ころ,団体交渉のルールを定めた暫定協約が締結されたものの,その他の内容の労働協約ないし労使間の取扱いに関する協約については,本件スト時点において,締結に至っていなかった。他方,被控訴人と国労を含む他の被控訴人の主要な労働組合ないしその上部団体との間では,昭和63年11月までに,有効期限を昭和65(平成2)年9月30日までとする「労使間の取扱いに関する協約」と題する基本的に同一内容の労働協約(以下「本件労働協約」という。)が締結されていた。 控訴人が被控訴人との間で本件労働協約を締結しなかったのは,控訴人において,被控訴人が提案する本件労働協約の内容が,控訴人の争議権を不当に制限する条項等を含んでいると判断したためであった。 (ウ) 被控訴人は,控訴人ないしその上部団体との間で本件労働協約が締結されないことから,本件労働協約に根拠規定がある便宜供与について,控訴人に与える根拠がないとして,昭和62年10月1日付けで,控訴人に対し,被控訴人所有の組合事務所の明渡し等を求める文書を交付した。この明渡しを求める旨の文書の交付は,その後,昭和62年12月25日付け,昭和63年12月3日付けでも行われた。さらに,本件12月スト後である1月12日付けで控訴人に交付された文書(甲32の5)には,「平成元年12月5日に貴組合が実施した争議行為時に、便宜供与として使用を認めていない組合事務所を無断使用し、それに対し会社側から退去通告を再三再四受けたにもかかわらず占拠するという事態が発生していることは、極めて遺憾である。なお、1月18日に貴組合は、始発時から24時間の争議行為を予定しているようであるが、許可なく当社の建物等を占拠し、職場秩序を乱すことのないよう併せて申し入れる。」との記載が付 は、極めて遺憾である。なお、1月18日に貴組合は、始発時から24時間の争議行為を予定しているようであるが、許可なく当社の建物等を占拠し、職場秩序を乱すことのないよう併せて申し入れる。」との記載が付加されている。 エ 本件12月ストの状況(ア) 昭和63年12月5日,中央緩行線東中野駅構内において,停車中の電車に後続の電車が追突するという事故が発生し,後続電車の運転士及び乗客1名が死亡したほか,100名を超える負傷者が出た。 (イ) 控訴人は,上記事故からちょうど1年となる平成元年12月5日,運転保安確立等を求めてストライキ(本件12月スト)を行うこととした。 そして,同月3日午後8時ころ,控訴人は,被控訴人に対し,「争議行為に関する通知」と題する書面(甲10)を交付したが,これには,同月5日午前0時から24時間にわたり,津田沼運転区,千葉運転区,幕張電車区木更津支区,館山運転区,勝浦運転区及び銚子運転区の全本線乗務員等を対象とするストライキを実施する旨のほか,「なお、会社および警察権力からの不当な介入、不当労働行為およびスト破り行為があった場合は、戦術を拡大する。」との記載があった。 (ウ) 被控訴人は,本件12月ストのため,千葉支社等に対策本部を設けるなどしてその対応に当たるとともに,平成元年12月4日午後4時ころから,ストライキ対策に係る対策員を配置するようになった。本件12月ストのために被控訴人が配置した対策員の総数は,約790名であった。 (エ) 本件12月スト実施予定日前日である平成元年12月4日午後3時過ぎころ,千葉運転区及び津田沼運転区の各乗務員詰所に控訴人組合員らが集まり,被控訴人による退去通告にも従わない状況が続いた。同様の状況は,規模や時間に違いはあったが,幕張電車区木更津支区,館山運転区,勝浦運転区及び銚子運転区にお 転区の各乗務員詰所に控訴人組合員らが集まり,被控訴人による退去通告にも従わない状況が続いた。同様の状況は,規模や時間に違いはあったが,幕張電車区木更津支区,館山運転区,勝浦運転区及び銚子運転区においてもみられた。 また,控訴人組合員らは,同日午後6時過ぎころから,各地で集会を開いたが,津田沼運転区等で,これを被控訴人の許可なく運転区構内で行ったこともあった。 (オ) 平成元年12月5日,控訴人は,予定どおり本件12月ストを実施した。しかし,被控訴人が代替乗務員を配置したため,千葉以西の路線においては100パーセント,千葉以東の路線においては70パーセント強の運行が確保された。 控訴人組合員らは,同日朝から,運転区構内で被控訴人の許可なく集会を開いたほか,対策員に警護されていた代替乗務員に対し,「スト破り。」等の罵声を浴びせたり,その写真を撮影し,また,対策員に対し,暴言を吐くなどした。 オ 本件1月ストの状況(ア) 控訴人は,1月5日,上記第2,1(2)のとおり,労調法37条に基づく通知をするとともに,同通知書の写しを被控訴人に交付した。さらに,控訴人は,同月16日午前10時ころ,被控訴人に対し,「争議行為に関する通知」と題する書面(甲11)を交付したが,これには,同月18日午前0時から24時間にわたり,津田沼運転区,千葉運転区,幕張電車区木更津支区,館山運転区,勝浦運転区,銚子運転区及び京葉運輸区の全本線乗務員等を対象とするストライキ(本件1月スト)を実施する旨のほか,「なお、会社および警察権力からの不当な介入、不当労働行為およびスト破り行為があった場合は、戦術を拡大する。」との記載があった。 (イ) 控訴人の上記通知書(甲11)交付に先立つ1月11日,鉄産労千葉地方本部執行委員長名義で,被控訴人千葉支社長宛に,申入書(甲25)が交 為があった場合は、戦術を拡大する。」との記載があった。 (イ) 控訴人の上記通知書(甲11)交付に先立つ1月11日,鉄産労千葉地方本部執行委員長名義で,被控訴人千葉支社長宛に,申入書(甲25)が交付された。 これには,本件1月ストが実施されることになっていることに関連して,本件12月ストにおいて,勤務のため出勤した鉄産労組合員が控訴人組合員に拉致されて結果的に乗務することができず,「組合脱退を強要」されたことに対する当日の千葉運転区の対応,平成元年12月4日午後5時以降,勤務者以外の滞区を認めないという千葉運転区の方針に従い,鉄産労組合員は庁舎外に出たものの,控訴人組合員,国労組合員は排除されていなかった理由等について文書で回答を求める旨の記載があるほか,「ストライキの際、列車運行に協力したり、正常業務に就いている鉄産労組合員に対する、スト決行組合員による暴力行為等に対する対応方を明らかにされたい。」との記載があった。 また,1月16日には,東鉄労千葉地方本部執行委員長名義で,被控訴人千葉支社長宛に,「1月18日予定の争議行為に対する緊急申し入れ」と題する書面(甲26)が交付された。これには,「12月5日の「千葉労」争議行為にたいする対応の反省も踏まえ、下記の事項について緊急に申し入れ致します。」と記載された上,「記」として,「12月5日「千葉労」の争議行為当日、銚子駅構内において業務就業者に対する業務妨害行為が行われた。これら行為に対する会社側の対応について明らかにされたい。」「争議行為が実施をされた場合においては、当日勤務者以外の者の各庁舎内・敷地内への立ち入り禁止について万全を期されたい。なお、就業者に対する妨害行為等が発生をした場合においては、早急な処置方を要請する。」との記載がある。 (ウ) 被控訴人は,控訴人に対し,1月1 舎内・敷地内への立ち入り禁止について万全を期されたい。なお、就業者に対する妨害行為等が発生をした場合においては、早急な処置方を要請する。」との記載がある。 (ウ) 被控訴人は,控訴人に対し,1月16日付け申入書(甲12)を交付した。 これには,本件12月ストにおいて,乗務員詰所における滞留,代替乗務員の写真撮影,被控訴人用地内での無許可集会実施,使用許可のない組合事務所の使用等について,「状況によっては会社の業務遂行を支障する可能性があり、極めて遺憾である。」とし,「上記のような諸行動がいたずらに繰り返されることになれば、会社としても状況により、厳格に対応せざるを得なくなることが生じる」「今後、かかる行為は行わないよう厳重に申し入れるとともに、特に当社の施設内への立入りは、当日の勤務者及び会社の責任者から許可を受けた者以外は従来から認めていないところであり、これを逸脱した軽挙に出ることのないよう重ねて申し入れる。」と記載されている。 (エ) 被控訴人は,本件1月ストのためにも,本件12月ストと同様の対策本部を設置し,対策員として約840名を配置した。この対策員は,1月17日午後3時30分ころから,順次配置された。 (オ) 本件1月スト実施予定日前日の1月17日朝から,控訴人のF副委員長らが千葉運転区構内に入り,勤務予定のない控訴人組合員とともに乗務員詰所等に留まっていたことから,被控訴人は,同日午後1時過ぎ以降,同組合員らに対し退去通告を行ったが,同組合員らは,これに従わなかった。その後も,被控訴人は,繰り返し退去通告をしたが,控訴人組合員らは,同日午後10時過ぎころまで,乗務員詰所から退去しなかった。 また,津田沼運転区においては,同日午後2時過ぎころから,乗務員詰所や運転区内にいる勤務の予定のない控訴人組合員に対し,被控訴人が繰り返 同日午後10時過ぎころまで,乗務員詰所から退去しなかった。 また,津田沼運転区においては,同日午後2時過ぎころから,乗務員詰所や運転区内にいる勤務の予定のない控訴人組合員に対し,被控訴人が繰り返し退去通告を行ったが,控訴人組合員らは,同日午後6時前ころまで,乗務員詰所に留まった。 その他の運転区等においても,規模や時間に違いはあったが,被控訴人の退去通告にかかわらず乗務員詰所等被控訴人施設に控訴人組合員らが留まるということがあった。 さらに,津田沼運転区では,控訴人により,同日午後6時過ぎころから約30分間,本件事務所脇の被控訴人用地内において40名弱が参加する集会が行われた。 これに対し,被控訴人は,直ちに中止して退去するよう通告したが,控訴人組合員は,この通告に従わず集会を続けた。その他の運転区等でも,同様に,被控訴人用地内で控訴人による集会が行われ,控訴人の中止要請にかかわらず,続行されたところがあった。 (カ) 1月18日,控訴人は,予定どおり本件1月ストを実施した。 同日午前8時過ぎころから5分余りの間,津田沼運転区の本件事務所前の被控訴人用地内においては,40名弱が参加する控訴人による集会が行われた。 また,同日夕方から夜にかけて,津田沼運転区,銚子運転区,館山運転区及び幕張電車区木更津支区において,いずれも40名前後が参加する控訴人による集会が行われた。このうち,津田沼運転区における集会は本件事務所内で行われたが,その余は,被控訴人ないし清算事業団用地内で行われた。 (キ) 本件1月ストの際,控訴人組合員は,駅ホーム等に集まり,対策員に警護された代替乗務員に対し,「スト破り。」「裏切り者。」「一人で生きていけると思うなよ。」「恥ずかしくないのか。」「てめえみてえに業務命令に従うのがいるから,いつまでたっても労働条件がよ 対策員に警護された代替乗務員に対し,「スト破り。」「裏切り者。」「一人で生きていけると思うなよ。」「恥ずかしくないのか。」「てめえみてえに業務命令に従うのがいるから,いつまでたっても労働条件がよくなんねえんだよ。」「仲間を裏切るつもりかよ。」「てめえさえ良ければいいのかよ。」「スト破りを何回やる気だ。」「同窓生としておれは恥ずかしいよ。元分会長,何か言ってみろよ。」「二度と館山に来るな。」「仲間が清算事業団に行っているのに少しは考えろ。」「今にお前もどこかに飛ばされるぞ。」「いい気持ちか,聞かせてくれ。」などの暴言を吐くとともに,その写真を撮影するなどの行為を行った。 カ 本件前倒し実施に至る経緯(ア) 1月31日,被控訴人は,控訴人及び控訴人の各運転区等の支部に対し,本件事務所を含む被控訴人所有建物等の控訴人組合事務所の明渡し等を求める訴訟を千葉地方裁判所に提起した(同裁判所平成2年(ワ)第118号。以下「本件明渡し訴訟」という。)。 (イ) 本件1月スト後,控訴人は,国労とともに,2月26日から28日にかけて,重ねてストライキを実施する予定としていた。 このため,同月16日付けで,鉄産労千葉地方本部執行委員長名義で,被控訴人千葉支社長宛に,再度,申入書(甲27)が交付された。これには,上記ストライキが予定されていることに関連して,「他組合のストライキ中における通常業務等に従事する鉄産労組合員に対する嫌がらせや暴力行為等に対しての対応方」等について文書で回答を求める旨の記載がある。 また,同月21日には,東鉄労千葉地方本部執行委員長名義で,被控訴人千葉支社長宛に,「2月26~28日予定の争議行為に対する申し入れ」と題する書面(甲28)が交付された。これには,本件12月スト及び本件1月ストの2回のスト対策の結果を踏まえ,以下のとお ,被控訴人千葉支社長宛に,「2月26~28日予定の争議行為に対する申し入れ」と題する書面(甲28)が交付された。これには,本件12月スト及び本件1月ストの2回のスト対策の結果を踏まえ,以下のとおり申し入れるので,回答されたい旨記載された上,「記」として,「業務就業者にたいするスト参加者からの業務妨害が2度にわたり行われているが、見解と対策を明らかにされたい。」「スト参加者の庁舎内立ち入り、会社施設内立ち入りについては、就労する組合員の立場からして絶対に許すことはできない。見解を明らかにされたい。」「使用禁止となっている組合事務所内・外にスト参加者がたむろする状況は、到底容認できない。見解を明らかにされたい。」等の記載がある。 (ウ) 2月26日から実施予定であったストライキは,国労が実施を中止したことから,控訴人もこれを中止した。 他方,被控訴人は,東鉄労,鉄産労と上記(ア)の各申入れについてそれぞれ団体交渉を行い,代替乗務員の安全確保に万全を期す旨約した。 (エ) 控訴人は,昭和63年3月,千葉県地方労働委員会に対し,控訴人組合員の国鉄職員で被控訴人への就職を希望しながら採用されなかった者11名について,上記不採用が被控訴人の不当労働行為であるとして,救済命令の申立てをしていたが,2月27日,同委員会は,上記不採用について被控訴人に不当労働行為があったとして,11名の控訴人組合員を昭和62年4月1日付けで被控訴人社員に採用したものとして取り扱わなければならないことなどを内容とする救済命令(以下「本件不採用救済命令」という。)を発した。 (オ) 控訴人は,本件不採用救済命令の完全履行等,上記第2の1(3)ウ掲記の諸懸案要求事項について,被控訴人との間で団体交渉を行っていたが,控訴人が納得するような回答を得ることはできなかった。そのため ) 控訴人は,本件不採用救済命令の完全履行等,上記第2の1(3)ウ掲記の諸懸案要求事項について,被控訴人との間で団体交渉を行っていたが,控訴人が納得するような回答を得ることはできなかった。そのため,控訴人は,3月19日午前0時からストライキを行う旨の通知を,上記第2の1(3)のとおり,同月16日午後3時50分ころに被控訴人千葉支社長宛に行った。なお,この後,本件前倒し実施に至るまでの間,控訴人と被控訴人との間で団体交渉が行われたことはなく,控訴人から被控訴人に対し,明確な団体交渉の申入れもされなかった。 (カ) 被控訴人は,東鉄労等の労働組合との団体交渉において,上記(ウ)のとおり,代替乗務員の安全確保に万全を期す旨約したこともあり,本件1月スト後,控訴人の今後のストライキに対する対策を,千葉支社のみならず本社も含めて検討した。 その結果,被控訴人は,千葉運転区及び津田沼運転区の各庁舎入口付近等にテレビカメラ及び照明を設置した。さらに,津田沼運転区の本件事務所前付近が代替乗務員が勤務に就く際の通路になるところ,過去2回のストライキにおいては,この場所で控訴人組合員から罵声を浴びせられることなどがあったことから,これを防ぐため,本件事務所前にフェンスを設置することを決定した。 また,被控訴人は,ストライキの際に控訴人組合員を運転区等の構内に入構させる必要性はないと考えていたが,これを求める控訴人の意向との折衷策として,3月上旬ころ,1,2名の連絡員に限り入構を認める方針を定め,E交渉部長に対し,同月17日にこれを伝えた。 しかし,被控訴人は,上記フェンス設置工事については,工事着手前に控訴人にその内容,計画を伝えたことはなく,また,連絡員制度についても,これを受け入れなければ,ストライキの前日を含め全面的に入構を制限する旨の明確な態度 上記フェンス設置工事については,工事着手前に控訴人にその内容,計画を伝えたことはなく,また,連絡員制度についても,これを受け入れなければ,ストライキの前日を含め全面的に入構を制限する旨の明確な態度は示さなかった。他方,控訴人も,入構が制限された場合には戦術を拡大することがある旨は伝えたが,戦術拡大の確定的意思,拡大の具体的内容を明確にしたことはなかった。 (キ) 被控訴人は,最終的に,3月18日早朝から控訴人組合員の入構ないし庁舎立入りを制限することとし,対策員を配置した。 同日午前8時30分ころ,控訴人のF副委員長は,電話で,千葉運転区において入構制限がされている旨の連絡を受けたことから,I控訴人千葉運転区書記長とともに,直ちに千葉運転区に赴いた。 同日午前8時50分ころ,F副委員長らは千葉運転区に到着したが,被控訴人の対策員等から入構を拒絶されたため,しばらくその場でやり取りをした後,被控訴人千葉支社に赴いた。なお,F副委員長は,被控訴人との雇用関係はなかった。 また,控訴人のG書記長は,同日午前10時ころに津田沼運転区に到着したが,その直後ころから,同運転区の庁舎内への立入りが被控訴人の対策員により制限され,同日午前11時前ころからは,本件事務所前にフェンスを設置する工事が開始された。もっとも,本件事務所の使用ないし出入りが制限されることはなかった。 控訴人のE交渉部長は,千葉運転区での入構制限措置,津田沼運転区での庁舎内立入り制限措置等を知り,被控訴人千葉支社に電話で抗議をしたが,受け入れられる様子がなかったことから,自ら同支社に赴くこととし,F副委員長が同支社に到着した直後の同日午前10時45分ころ,同支社に到着した。 (ク) その後,被控訴人千葉支社において,控訴人のF副委員長及びE交渉部長と,被控訴人千葉支社のA総務部 くこととし,F副委員長が同支社に到着した直後の同日午前10時45分ころ,同支社に到着した。 (ク) その後,被控訴人千葉支社において,控訴人のF副委員長及びE交渉部長と,被控訴人千葉支社のA総務部総務課長,B総務部総務課担当課長(通称「勤労課長」),C運輸部輸送課長(肩書は,いずれも当時。)等との間で話し合いが行われた。 しかし,上記(キ)の入構拒否措置の解除や本件事務所前でのフェンス設置工事中止を求める控訴人側に対し,被控訴人側は,千葉支社長や千葉支社総務部長との連絡がとれず,既定方針を変更する時間的余裕がないなどとして,これを拒絶した。 控訴人側は,繰り返し,要求が受け入れられなければ戦術を拡大すると告げていたが,本件ストを前倒しして実施する旨を確定的に告げてはいなかった。これに対し,被控訴人側は,乗客に対する影響が大であるとして,繰り返し,前倒し実施をしないよう求めた。しかし,控訴人千葉運転区支部のH副支部長の勤務開始時刻が3月18日午前11時16分であったことから,F副委員長は,その直前に,まず,H副支部長について指名ストの対象として戦術を拡大する旨を口頭で通告し,さらに,午前11時30分前後ころには,控訴人は,本件ストを12時間前倒しして実施することを決断し,午前11時55分ころ,その旨を被控訴人側に口頭で正式に通告した。 (ケ) 控訴人による本件ストの前倒し実施の通告が,混乱した状況下で口頭で行われたこともあり,被控訴人は,ストライキ前倒しの具体的内容を十分把握することができなかった。そこで,3月18日午後0時35分ころまでにかけて,電話でその内容の確認が行われ,最終的には,乗務開始前の乗務員は乗務させずにストライキに入れる,現在乗務中の乗務員は行き先地に到着した時点でストライキに入れるという戦術が明確となった。そして,同 ,電話でその内容の確認が行われ,最終的には,乗務開始前の乗務員は乗務させずにストライキに入れる,現在乗務中の乗務員は行き先地に到着した時点でストライキに入れるという戦術が明確となった。そして,同日午後2時ころ,B勤労課長は,控訴人本部事務所において,E交渉部長にストライキ中止の申入書(甲17)を手交し,その際,控訴人執行委員長名義の「争議行為に関する通告書」(甲18)を受領したが,同通告書には,スト対象者は,同月16日付け通告書(甲11)と同様である旨の記載があった。 キ 本件前倒し実施の実施状況等(ア) 被控訴人は,控訴人から,本件ストを前倒しして実施する旨の通告を正式に受けたことから,直ちに,対策員及び代替乗務員の手配等を開始した。 (イ) 他方,控訴人は,上記ク(ケ)の戦術内容に従い,3月18日午後0時以降,順次,乗務員の組合員をストライキに加わらせた。 その結果,各地で列車の運行ができなくなり,結局,原判決別紙一記載のとおり,運休列車が249本,遅延列車等が215本に及ぶ大きな混乱が生じた。この混乱の最も大きな原因となったのは,内房線,外房線,総武本線,成田線等が乗り入れている千葉駅において,到着列車又は発車予定の列車の控訴人組合員の乗務員がストライキに入ったところ,代替乗務員の手配が直ちにはできず,その列車の運行ができなくなったため,千葉駅の各ホームに長時間列車が滞留せざるを得なくなったことから,千葉駅に乗り入れる予定の列車が次々と運行できなくなったことにあった。このような状況は,滞留列車本数に差違はあったが,勝浦駅,安房鴨川駅でも生じた。 (ウ) 3月18日は日曜日であり,事前の報道では,控訴人のストライキは3月19日から行われ,前倒しで実施される可能性については全く報道されていなかったことなどから,利用客は,本件ストは も生じた。 (ウ) 3月18日は日曜日であり,事前の報道では,控訴人のストライキは3月19日から行われ,前倒しで実施される可能性については全く報道されていなかったことなどから,利用客は,本件ストは3月19日の始発列車から行われると認識して行動していた。 このため,3月18日の午後以降に帰宅する前提で内房線,外房線等を利用して房総半島に旅行に出かけていた行楽客も多く,これら利用客は,各地の駅で,本件前倒し実施により突然列車の運行が混乱したことについて,駅員等被控訴人職員に対し,胸ぐらをつかむ,罵声を浴びせるなどの強い抗議を行った。 (エ) 他方,控訴人組合員は,本件前倒し実施中,本件12月スト及び本件1月ストの際と同様,代替乗務員,対策員等に対して罵声や暴言を浴びせ,本件事務所等被控訴人施設からの退去通告に従わなかった。 ク 本件スト後の控訴人によるストライキの状況その他本件スト後の状況(ア) 控訴人は,本件スト後,少なくとも7回のストライキを行った。これに対する被控訴人の対応は,被控訴人施設内への立入りを制限するなど,本件ストの際の対応と同様であった。これにより,ストライキ終了後の列車運行再開について,控訴人と被控訴人との間の意思疎通が円滑に行われないこともあったが,列車の運行再開自体に影響が生じたことはない。 また,これら7回のストライキについては,控訴人は,いずれも,遅くとも前々日までに具体的内容を通告しており,スト当日に戦術が拡大され,ストライキの時間が延長されたことはあるが,ストライキが前倒しで実施されたことはない。なお,平成3年2月のストライキの通告に係る通知書には,「組合員の組合事務所への通行妨害、職場からの排除、警察権力の導入、組織破壊行為等、不当労働行為およびスト妨害行為があった場合は、戦術を拡大する。なお、戦術拡大に のストライキの通告に係る通知書には,「組合員の組合事務所への通行妨害、職場からの排除、警察権力の導入、組織破壊行為等、不当労働行為およびスト妨害行為があった場合は、戦術を拡大する。なお、戦術拡大については、対象者拡大、時間拡大(スト時間の繰上げ繰下げ)も含む。」との記載がされている。 (イ) 本件明渡し訴訟について,千葉地方裁判所は,平成10年2月13日,被控訴人の請求を認める旨の判決を言い渡した。控訴人等は,この判決に対して控訴したが,東京高等裁判所は,平成12年5月19日,控訴人等の控訴を基本的に棄却する旨の判決を言い渡し,これに対する上告及び上告受理の申立てについて,最高裁判所が,同年11月28日付けで,上告棄却決定及び上告不受理決定をしたことにより,同判決は確定した。 (ウ) 他方,千葉県地方労働委員会は,平成8年4月16日,被控訴人による3月18日の入構制限等が不当労働行為に当たり,本件前倒し実施は正当な争議行為であるとして,この判断を前提として,控訴人の申立てに基づき救済命令を発した。 (2) 使用者は,正当な争議行為によって損害を受けても,労働組合に対し損害賠償の請求をすることができないが(労働組合法8条),この争議行為の正当性は,その目的,手続,手段,態様等に照らし,現行法秩序全体との関連において決すべきものと解される。以下,上記認定の事実を前提として,上記観点から,本件前倒し実施の正当性について検討する。 ア 本件前倒し実施の目的について(ア) 上記(1)認定の事実によれば,本件前倒し実施は,被控訴人が,3月18日朝から千葉運転区及び津田沼運転区において,控訴人組合役員の入構ないし庁舎立入りを制限し,また,本件事務所前にフェンスを設置したことから,控訴人においてこれに抗議するために行われたということができる。そこで,ま 転区及び津田沼運転区において,控訴人組合役員の入構ないし庁舎立入りを制限し,また,本件事務所前にフェンスを設置したことから,控訴人においてこれに抗議するために行われたということができる。そこで,まず,被控訴人による上記入構制限等の措置(以下「本件被控訴人措置」という。)の適否について検討する。 (イ) ストライキは必然的に企業の業務の正常な運営を阻害するものではあるが,その本質は労働者が労働契約上負担する労務供給義務の不履行にあり,その手段方法は労働者が団結してその持つ労働力を使用者に利用させないことにあるのであって,不法に使用者側の自由意思を抑圧しあるいはその財産に対する支配を阻止するような行為をすることは許されず,これをもって正当な争議行為と解することはできない。また,使用者は,ストライキの期間中であっても,業務の遂行を停止しなければならないものではなく,操業を継続するために必要な対抗措置を採ることができると解するのが相当である(以上につき,最高裁平成4年10月2日第二小法廷判決・判例時報1453号167頁等参照。)。さらに,労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで使用者の所有し管理する物的施設を利用して組合活動を行うことは,これらの者に対しその利用を許さないことが当該物的施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては,当該物的施設を管理利用する使用者の権限を侵し,企業秩序を乱すものであつて,正当な組合活動に当たらないと解される(最高裁昭和54年10月30日第三小法廷判決・民集33巻6号647頁)。 後者の判例について,控訴人は,これは争議行為ないしその準備行為が行われている際には妥当しないものである旨主張するが,争議行為時ないしその準備行為時であることから,当然に,使用者の所有し 7頁)。 後者の判例について,控訴人は,これは争議行為ないしその準備行為が行われている際には妥当しないものである旨主張するが,争議行為時ないしその準備行為時であることから,当然に,使用者の所有し管理する物的施設に対する権限が制限されると解すべき根拠はなく,同行為時であることが上記特段の事情の存否を判断するに当たり一事情として考慮されることがあるとしても,上記一般論自体が修正されるべきものということはできない。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。 (ウ) ところで,本件ストに先立つ本件12月スト及び本件1月ストの状況は,上記(1)エ及びオ認定のとおりであり,この際の控訴人組合員の言動について,東鉄労及び鉄産労から被控訴人に対し善処方の申入れがあったことは,同オ(イ)及びカ(イ)認定のとおりである。 このような経緯の下で行われた本件被控訴人措置は,被控訴人が,本件スト時における操業継続を図るために必要かつ相当な対抗措置であったということができ,施設管理権を濫用したというような特段の事情があるということもできないというべきである。 (エ) 控訴人は,本件12月スト及び本件1月スト時における控訴人組合員の言動について,争議行為ないしその準備行為として行われたものであり,常軌を逸したものではない旨主張する。しかし,同言動の当否にかかわらず,現実に同様の言動が行われる場合には,代替乗務員が不安感,時に恐怖感を抱き,就労に動揺をきたすこともあり得ることは容易に推認することができるところであるから,代替乗務員を確保して操業継続を図ろうとする被控訴人について,本件被控訴人措置程度の対抗措置を採ることが争議行為に対する不当な介入と目されるべきものではない。 また,控訴人は,本件被控訴人措置は,国鉄時代も含めた労使慣行を一方的に破棄 する被控訴人について,本件被控訴人措置程度の対抗措置を採ることが争議行為に対する不当な介入と目されるべきものではない。 また,控訴人は,本件被控訴人措置は,国鉄時代も含めた労使慣行を一方的に破棄するものである旨主張する。 しかし,被控訴人は,国鉄との法律上の一体性を否定している上,国鉄時代はストライキが違法とされていたのであり,また,本件12月スト及び本件1月ストにおいて,被控訴人は,控訴人組合員に対し,乗務員詰所等被控訴人施設からの退去通告を行っていたのであるから,本件前倒し実施時点において,労使間に控訴人が主張するような労使慣行が成立していたとみることはできない。むしろ,被控訴人としては,本件12月スト及び本件1月ストを経て,控訴人によるストライキ時の問題点を認識し,これに対する対策を検討していたものということができ,同時点においては,ストライキに関する確たる労使慣行は未だ成立していなかったというべきである。 さらに,控訴人は,本件被控訴人措置は,本件ストに対する不当な妨害である旨主張する。 しかし,ストライキの突入ないし中止等の指示を控訴人が各組合員に伝達することについては,控訴人がその責任において行うべきものである。被控訴人施設使用の便宜供与等に係る本件労働協約を他の主要労働組合が締結する中,控訴人においては,自らの判断でこれを締結していない以上,被控訴人施設の使用を禁じられたことをもって,ストライキに対する不当な妨害ということはできない。また,上記(1)カ(オ)認定の事実によれば,本件ストの具体的内容が通告された3月16日以降,控訴人と被控訴人との間で団体交渉が行われる可能性はなかったのであり,国鉄との法律上の一体性を否定する被控訴人が,本件不採用救済命令を一部でも受け入れる可能性も全くなかったといえることなどを考慮す ,控訴人と被控訴人との間で団体交渉が行われる可能性はなかったのであり,国鉄との法律上の一体性を否定する被控訴人が,本件不採用救済命令を一部でも受け入れる可能性も全くなかったといえることなどを考慮すれば,本件ストが直前で中止される余地はなかったというべきであるから,本件ストが直前で中止される場合に被控訴人施設使用が必要となる旨の控訴人の主張は,前提を欠くものといえる。 さらに,いったん実行されたストライキが途中で中止される場合等の立ち上がりの際に,被控訴人施設を使用する必要がある旨を控訴人は主張するが,これは,ストライキを中止することが決定した場合の問題であり,仮にこの場合には被控訴人施設を使用する必要が生ずるとしても,そのことから当然に,ストライキ実施中ないし実施前から被控訴人施設を控訴人が使用することが許されるものではない上,上記(1)ク(ア)認定のとおり,本件スト後に行われた控訴人のストライキにおいては,被控訴人施設の使用が本件スト時と同様に制限されたものの,これにより,ストライキ終了後の列車運行再開自体が影響を受けたことはないのであるから,控訴人の同主張も,採用することはできない。 したがって,本件被控訴人措置が本件ストに対する不当な妨害であるとする控訴人の主張は,採用することができない。 以上のほか,控訴人は,本件被控訴人措置が不当労働行為に当たるとも主張し,その理由の一つとして,本件ストと同時期にストライキを行った国労については,その役員・組合員が入構禁止とされていなかった旨を主張する。しかし,控訴人代表者本人の陳述書(甲70)には,津田沼車掌区で国労の組合役員が入構を認められた旨の記載があるものの,確実な裏付けがない上,組合役員の被控訴人施設への立入りに関する被控訴人の方針に照らすと,上記証拠のみで,一般的に,控訴人組合 ,津田沼車掌区で国労の組合役員が入構を認められた旨の記載があるものの,確実な裏付けがない上,組合役員の被控訴人施設への立入りに関する被控訴人の方針に照らすと,上記証拠のみで,一般的に,控訴人組合役員・組合員の入構が禁止された構内について,国労の組合役員・組合員が入構を承認されたことを認めるに足りず,他にこれを認めるに足りる的確な証拠はないから,控訴人と国労との間で不当に差別的取扱いがされたということはできない。 (オ) 以上によれば,本件前倒し実施は,被控訴人の正当な施設管理権の行使に抗議し,これに対抗するために行われたとみるべきである。したがって,本件前倒し実施の目的には,自らの事前の争議通告に反してストライキを行うことを正当化するに十分な緊急性・重要性が存しないというべきである。 イ 本件前倒し実施の手続・手段・態様について(ア) 上記(1)認定のとおり,控訴人は,被控訴人に対し,本件ストを3月19日午前0時から行うと自ら文書で通告しており,同文書には,これを前倒しで実施することがある旨の明確な記載はなく,また,一般の報道においても,ストライキは3月19日からであるとされ,3月18日にはストライキはないものとして利用客が同日の行動をしていたところ,同日午前11時55分ころに正式に本件前倒し実施の通告が口頭で行われ,その後,被控訴人が本件前倒し実施の具体的内容を把握するまでに約40分が経過し,結果として,上記(1)キ(イ)(ウ)認定の大きな混乱が生じたものである。 (イ) 控訴人は,本件ストを前倒しで実施する可能性については,本件ストの具体的内容を通告した文書に明記されている上,口頭でも繰り返し伝えており,また,本件前倒し実施後の被控訴人の対策員配置状況等を考慮すれば,被控訴人は,本件前倒し実施があることを予測していたといえるから,本 内容を通告した文書に明記されている上,口頭でも繰り返し伝えており,また,本件前倒し実施後の被控訴人の対策員配置状況等を考慮すれば,被控訴人は,本件前倒し実施があることを予測していたといえるから,本件前倒し実施の正式な通告が3月18日午前11時55分ころであったことに何ら問題はない旨主張する。 しかし,被控訴人において,控訴人が,利用客が既にストライキがないものとして当日の行動を開始している時点で,あえて影響の大きいことが容易に予想されるストライキの前倒しを行うことがあると予測していたと断ずることまではできない。控訴人は,予定していたストライキが繰り上げられたことは,国鉄時代にも,第1波ストライキの際に行われたことがあるとするが,上記(1)イ認定のとおり,このときの繰上げは,昭和60年11月29日午前0時からの予定を,同月28日正午からにするというものであったところ,その決定は,同月27日夕方には公表されていたのであり,本件における前倒しとは,その性格を大きく異にするものというべきである。また,控訴人は,被控訴人が提出した書証(甲186の7の1)の記載から,被控訴人が本件前倒し実施を予定していた旨主張するが,この主張も採用することができないことは,後記2(3)ウのとおりである。 (ウ) 被控訴人は,公衆の日常生活に欠くことのできない旅客鉄道運輸事業という公益事業を業務としており,控訴人は,その乗務員を中心とする従業員等により構成される労働組合であるから,本件前倒し実施のように,当初通告したストライキ開始時刻を突如繰り上げて,一定の期間を置くことなく直ちにストライキを行えば,被控訴人が代替乗務員を確保することができず,被控訴人の業務の遂行に重大な混乱をもたらし,ストライキを予測し得なかった乗客にも多大な不利益を被らせることとなることを十分 く直ちにストライキを行えば,被控訴人が代替乗務員を確保することができず,被控訴人の業務の遂行に重大な混乱をもたらし,ストライキを予測し得なかった乗客にも多大な不利益を被らせることとなることを十分認識していたものとみるべきである。このことは,控訴人が,本件前倒し実施以前の本件12月スト,本件1月スト及び本件スト後の7回のストライキの際,遅くとも前々日に文書による争議通告をし,その通告のとおりにストライキを開始していることからも明らかである。 また,同様の理由により,鉄道輸送の特殊性から,特定の駅において乗務員のいない列車が滞留すれば,後続の列車の運行が不可能となり,ストライキに参加していない被控訴人の従業員も業務を遂行することができなくなることは,控訴人において十分予測し得たとみるべきである。 以上によれば,本件前倒し実施により運休列車が249本,遅延列車215本にも及ぶ重大な混乱が生じた原因は,控訴人が事前の通告に反して,僅か5分前にストライキを前倒しする旨を通告した後,本件前倒し実施を行ったことにあり,控訴人は,このような重大な結果が生ずることを予測していたというべきであり,したがって,本件前倒し実施は,その手続,手段,態様において,正当性を欠くものというべきである。 ウ 上記ア及びイに述べたところを総合すれば,本件前倒し実施は,本件ストを前倒ししたことのみならず,前倒しに係るストライキ全体について,正当性を有するとはいえず,違法な争議行為と認めるのが相当といえる。 (3) なお,控訴人は,本件前倒し実施が不法行為に該当する旨の被控訴人の主張は,主張自体失当であるとするが,争議行為自体が違法と評価される以上,本件前倒し実施が控訴人の不法行為に該当することは明らかである。 したがって,控訴人は,本件前倒し実施による損害について,被控 張は,主張自体失当であるとするが,争議行為自体が違法と評価される以上,本件前倒し実施が控訴人の不法行為に該当することは明らかである。 したがって,控訴人は,本件前倒し実施による損害について,被控訴人に対し賠償する義務があるというべきである。 2 争点2(本件前倒し実施による損害額)について(1) 上記1(1)認定の事実に加え,証拠(甲77から190まで,196,197,原審証人K)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実を認めることができる。 ア 被控訴人は,控訴人のストライキ対策として,従来から,概要原判決別紙二記載の業務を担当する対策員を配置することとしていた。本件スト前日である3月18日についても,もともと,一部の対策員を既に配置し,又は配置する予定となっていた。 イ ところが,控訴人が,3月18日の午前11時55分ころに,本件ストを12時間前倒しする旨を正式に通告したことから,被控訴人は,急遽,これに対応して,当初の予定にはなかった対策員の配置を行うこととなった。 その結果,少なくとも,別表記載のとおり,合計715名が,本件前倒し実施により当初予定になかった勤務に就いた。この715名に係る本件前倒し実施による超過勤務手当等支給総額は,別表記載のとおり,合計618万5820円である。 ウ また,被控訴人は,本件前倒し実施により影響を受けた利用客のために,代行輸送及び振替輸送の手配を原判決別表(三)記載のとおり行い,これに伴い,同別表「代替輸送経費支払額」欄記載の金額(合計774万8411円)を各会社に支払った。 エさらに,被控訴人は,本件前倒し実施による列車の運行停止,遅延のため,原判決別表(四)記載のとおり,合計336万4920円を払い戻した。 (2) 被控訴人は,本件前倒し実施により,合計1099名の職員について,当初予定し 件前倒し実施による列車の運行停止,遅延のため,原判決別表(四)記載のとおり,合計336万4920円を払い戻した。 (2) 被控訴人は,本件前倒し実施により,合計1099名の職員について,当初予定していなかった超過勤務等に就いたとし,その内訳として,原判決別表(一)及び(二)記載のとおりであると主張する。 しかし,証拠(甲188,190,200,原審証人K)によれば,上記職員及びその超過勤務等の内容を確認するための最も重要な基本資料は,「超過勤務等整理簿」(甲77から185までにおいて枝番が4であるもの)であり,これについては,絶対に破棄しない旨の指示が保存を担当する各部署に出され,保存期間も,千葉支社においては5年間とされていたことが認められるところ,被控訴人によれば,上記保存期間経過前に既に所在を確認することのできない超過勤務等整理簿があるというのであり,しかも,所在不明となった理由については,何ら具体的ないし合理的な主張立証はされていない。 これに加え,証拠(甲190,原審証人K)によれば,被控訴人が損害と主張する人件費の額については,各部署が作成した表(甲77から185までにおいて枝番の1から3までのもの)の記載を,超過勤務等整理簿の記載内容と対照して訂正しているものが少なからずあり,しかも,その大半が減額訂正となっていることが認められる。 以上によれば,超過勤務等整理簿が提出されていない対策員384名に係る人件費については,被控訴人主張の勤務の存在及びその勤務と本件前倒し実施との相当因果関係の存在を認めるに足りる証拠がないといわざるを得ない。 (3) 控訴人の主張についてア 控訴人は,本件ストが前倒しされたこと自体による損害を超えて,前倒し部分のストライキによる損害を賠償する義務はない旨主張するが,本件前倒し実施が違法であ を得ない。 (3) 控訴人の主張についてア 控訴人は,本件ストが前倒しされたこと自体による損害を超えて,前倒し部分のストライキによる損害を賠償する義務はない旨主張するが,本件前倒し実施が違法であるという趣旨は,前倒しされたストライキ全体が違法であるということであり(上記1(2)ウ参照),控訴人の上記主張は採用することができない。 イ 人件費について控訴人は,被控訴人は本件被控訴人措置等のストライキ対策をとっているのであるから,これに加えて,「現認」,「警護」,「支援」,「添乗」といった対策員を配置することは不要である旨主張するが,上記1(1)キ(エ)認定の本件前倒し実施における控訴人組合員の言動等を考慮すれば,本件前倒し実施においても上記対策員が必要であったということができる。 また,控訴人は,「警備」対策員の人件費については,控訴人が賠償義務を負うことはない旨主張するが,上記1(1)イ(ウ)認定の第1波ストライキ中に発生した事件の内容,同事件から本件前倒し実施までの経過年数のほか,3月12日付けで発行された中核派機関紙「前進」(甲24)の内容等によれば,上記認定程度の人数による警備は,ストライキ対策上必要かつ相当ということができ,また,この警備は,本件前倒し実施がなければ実施されなかったものであることをも考慮すれば,これに係る人件費について,本件前倒し実施との相当因果関係を認めることができる。 さらに,控訴人は,ストライキ参加組合員に対する賃金カット分等を損益相殺すべきである旨主張するが,これら組合員は,現実に就労していないのであるから,賃金請求権がそもそもないのであり,本件前倒し実施により被控訴人が支出を免れたというべきものではない。また,将来にわたる賃金支払額の縮減分についても,損益相殺の対象とすべき理由はない。 その他 ,賃金請求権がそもそもないのであり,本件前倒し実施により被控訴人が支出を免れたというべきものではない。また,将来にわたる賃金支払額の縮減分についても,損益相殺の対象とすべき理由はない。 その他,控訴人は,上記認定の人件費に係る損害について,本件前倒し実施との相当因果関係がないものがある旨の主張を縷々行うが,上記認定のとおり,上記人件費は,すべて,本件前倒し実施によって初めて被控訴人が負担することになったものであり,本件前倒し実施との相当因果関係があるといえる。控訴人は,控訴人組合員のいない電車区や,控訴人組合員が存在しない車掌についての配置を問題とするが,上記1(1)キ(イ)(ウ)認定の本件前倒し実施の影響に照らせば,こうした配置が本件前倒し実施により必要となったことは,優に認定することができるというべきである。 ウ 代替輸送費相当額について控訴人は,いすみ鉄道・小湊鉄道の代替性等を問題とするが,弁論の全趣旨によれば,上記1(1)キ(イ)(ウ)認定の列車運行の乱れが生じた場合において,外房方面から千葉方面へ向かうには,いすみ鉄道と小湊鉄道を乗り継ぐことが鉄道による唯一の交通手段であると認められ,これら鉄道が振替輸送の手段となることに何ら問題はない。また,証拠(甲186)によれば,いすみ鉄道の大原駅から上総中野駅までの代替輸送対象者が87名(他に大原駅から大多喜駅までの代替輸送対象者が4名),小湊鉄道の上総中野駅から五井駅までの代替輸送対象者が82名と人数に相違があることが認められるが,上記のように実際に大多喜駅で途中下車した代替輸送対象者がいることから窺われるように,代替輸送対象者のすべてがいすみ鉄道と小湊鉄道の双方を利用するとは限らないことは明らかであって,両鉄道の代替輸送対象者数に違いがあるからといって,直ちに被控訴人が代替 者がいることから窺われるように,代替輸送対象者のすべてがいすみ鉄道と小湊鉄道の双方を利用するとは限らないことは明らかであって,両鉄道の代替輸送対象者数に違いがあるからといって,直ちに被控訴人が代替輸送費を過剰に見積もっているということはできない。 また,被控訴人が手配した代行バスの中には,実際に利用されなかったものがあることは被控訴人も自認するところであるが,上記1(1)キ(イ)(ウ)認定の本件前倒し実施による混乱状況においては,ある程度多めに代行バスを手配することもやむを得ないというべきであり,その台数が著しく不相当であるなど特段の事情のない限り,手配したすべての代行バスに係る費用について本件前倒し実施と相当因果関係があるというべきである。そして,上記特段の事情を窺わせる証拠はないから,結局,被控訴人が主張する代行バス手配に係る費用すべてについて,本件前倒し実施との相当因果関係を認めることができる。 なお,控訴人は,被控訴人が提出した書証(甲186の7の1)に3月17日から代行バスを手配していた旨の記載があるとして縷々主張する。しかし,証拠(甲196,197)及び弁論の全趣旨によれば,上記記載は単純な誤記であると認められ,控訴人の上記主張は,採用の限りではない。 エ 払戻費について払戻費が本件ストの前倒しと相当因果関係のある損害に当たらない旨の控訴人の主張を採用することができないことは,上記アのとおりである。 また,控訴人は,被控訴人は本件前倒し実施により赤字運行を免れたのであり,払戻しに係る損害はない旨主張する。 確かに,本件前倒し実施により,被控訴人は,本件前倒し実施がなければ支出したであろう諸経費の負担を免れたということができ,本来であれば,この分は被控訴人の損害額から控除するのが相当といえる。しかし,被控訴人が支出を免 実施により,被控訴人は,本件前倒し実施がなければ支出したであろう諸経費の負担を免れたということができ,本来であれば,この分は被控訴人の損害額から控除するのが相当といえる。しかし,被控訴人が支出を免れた諸経費を具体的に認めるべき証拠はないから,この点は,後述する過失相殺における斟酌事由に止めることとする(なお,上記諸経費の立証責任は,本来,控訴人にあるものである。)。 (4) 以上によれば,本件前倒し実施による被控訴人の損害額は,合計1729万9151円となる。 3 争点(3)(過失相殺)について本件前倒し実施を被控訴人が事前に予測していたと断ずることができないことは,上記1(2)イ(イ)のとおりであるが,本件12月スト及び本件1月スト時には本件被控訴人措置と同様の入構制限等の措置がとられたことはない上,本件ストの具体的内容を通知した文書には,不当労働行為等があった場合には戦術を拡大する旨の記載があり,同旨の意思表示は,口頭でも伝えられていたのであって,かつ,本件被控訴人措置をとった場合,控訴人がそれを不当労働行為と捉えるであろうことは十分予測し得たといえるところであるから,被控訴人において,本件ストに際し,本件被控訴人措置をとった場合には,対抗策として,控訴人が,本件ストを前倒しする可能性があることを全く予測し得なかったとは言い難い。 このような事情の下において,本件ストが3月18日になって前倒し実施された場合の利用客に対する影響の大きさを考慮すれば,被控訴人としては,控訴人による本件ストの前倒しを誘発する要素を持つ本件被控訴人措置をとるに当たっては,その影響を最小限に止めるべく,事前に対応策を十分検討しておく必要があったというべきである。そして,仮に,事前に対応策が検討されていれば,本件前倒し実施による混乱の主原因が千葉駅の各ホ 当たっては,その影響を最小限に止めるべく,事前に対応策を十分検討しておく必要があったというべきである。そして,仮に,事前に対応策が検討されていれば,本件前倒し実施による混乱の主原因が千葉駅の各ホームに列車が長時間滞留せざるを得なかったためという上記1(1)キ(イ)の事実に照らせば,一定程度,混乱を抑えることができたと認められる。 それにもかかわらず,被控訴人は,本件前倒し実施のための対策員の手配を,控訴人側から本件前倒し実施について口頭で正式な通告があるまで行わなかったというのであるから,本件前倒し実施によって上記1(1)キ(イ)(ウ)認定の大きな混乱が生じたことについては,被控訴人にも少なからず責任があるというべきである。 こうした点に加え,上記2(3)エで述べた本件前倒し実施により被控訴人が諸経費の負担を免れた分があることのほか,本件被控訴人措置が不当労働行為であるという判断は千葉県地方労働委員会でもされており,必ずしも控訴人の独善的見解ではないこと,本件前倒し実施は,控訴人と被控訴人との間でストライキに関する労使慣行が未だ確立されず,また,ストライキに関する労働協約が締結されていない状況で発生した突発的事態であることなど本件の諸事情を総合考慮すれば,上記2認定の本件前倒し実施による被控訴人の損害については,民法722条2項の法意に基づき,その3割を相殺するのが相当と認められる。 したがって,控訴人が支払うべき損害額の元本は,1210万9405円となる。 4 結論以上の次第で,被控訴人の請求は,1210万9405円及びこれに対する不法行為日の後である平成2年9月20日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 よって,控訴人の控訴に基づき,これと異なる原判決を主文第1項のとおり変更 法行為日の後である平成2年9月20日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 よって,控訴人の控訴に基づき,これと異なる原判決を主文第1項のとおり変更し,被控訴人の附帯控訴は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法67条2項,61条,64条を適用して,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第14民事部裁判長裁判官細川清裁判官大段亨裁判官伊藤正晴(別表)業務内容別人員数及び手当等の額人員超勤手当夜勤手当特勤手当旅費合計対策 157,700 158,366現認 587,794 587,794警護 760,096 760,096警備 689,2952,941 3,800696,036客体 2,500,35733,503 2,1002,535,960支援 744,343 744,343添乗 233,536 233,536乗務 370,64120,01513,40010,710414,766指令 46,9996,344 53,343信号 1,317 1,580合計 6,092,07863,73213,40016,6106,185,820単位円(人員は「人」) 6,092,07863,73213,40016,6106,185,820単位円(人員は「人」)

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