平成14年7月9日宣告平成14年(わ)第182号虚偽有印公文書作成,同行使被告事件判決 主文 被告人を懲役1年6月に処する。 この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 (犯罪事実)被告人は,群馬県巡査として,同県a市b町c番地d所在の同県a警察署に勤務し,同警察署長命による犯罪者の早期検挙及び犯罪の未然防止等の特別警戒勤務等の職務に従事していたものであるが,平成13年11月8日午後9時ころ,同市e町内において,同警察署警察官であるA及びB両巡査とともに,自転車により無灯火で走行するなどしていたC(当時19歳)及びD(当時18歳)に対して職務質問をしようとした際,同人らがその場から逃走したため,被告人において上記Cを追尾していたところ,同日午後9時5分ころ,同人が,同市f町g丁目h番地先の交差点内に進入し,折から進行してきた普通乗用自動車と衝突する交通人身事故に遭遇したのを目撃したにもかかわらず,上記の勤務を終えて帰署し,その後,上司から上記交通事故状況の報告を求められた際,被告人が,上記Cを追尾中に,同人が上記交通事故に遭遇したことを目撃した事実を隠すため内容虚偽の報告をしようと企て,行使の目的をもって,同月9日,同警察署内において,「人身交通事故の認知について」と題する群馬県a警察署長宛ての報告書に,「そのため本職は徒歩にて南方に数メートル男を追跡したが,さらに男が南進し失尾したことから追跡を中止し,先捜査車両に乗車すべく北方に向け進行し,さらに相勤者であるA査長らを徒歩にて探したが,見あたらないため,車両に乗り込み乗り出そうとした」,「すると,前方(南方)のa 失尾したことから追跡を中止し,先捜査車両に乗車すべく北方に向け進行し,さらに相勤者であるA査長らを徒歩にて探したが,見あたらないため,車両に乗り込み乗り出そうとした」,「すると,前方(南方)のa市環状線でRVタイプの車両が走行車線上で停車しているのを認めたことから,同所付近にまで行ったところ,車両前方で人が倒れており,交通人身事故であることが判明した」などと内容虚偽の記載をした上,同報告書の上記表題右上部に「群馬県a警察署司法警察員巡査」と記し「E」と署名してその右に「E」と刻した丸印を押印し,もって公務員として自己の職務に関し,虚偽有印公文書である報告書1通を作成した上,同日,同所において,同署警務課長Fに対し,上記虚偽作成にかかる報告書を真正なもののように装い提出して行使した。 (法令の適用)該当罰条虚偽有印公文書作成の点刑法156条虚偽有印公文書行使の点刑法158条1項,156条科刑上一罪の処理刑法54条1項後段,10条(犯情の重い虚偽有印公文書行使の罪の刑)刑の執行猶予刑法25条1項(量刑の理由)本件は,現職の警察官であった被告人が,報告書に虚偽の事実を記載して虚偽有印公文書を作成し,これを上司に提出して行使したという事案である。 被告人は,職務質問をしようとした相手を追尾中,同人が交通事故に遭遇したことを目撃したにも関わらず,これらの事実を隠そうと考え,本件各犯行を行ったものであり,これが厳正な職務執行が特に求められる警察官にあるまじき行為であることは言うまでもない。また,警察官が作成する捜査報告書等の捜査書類は,刑事訴訟等にお を隠そうと考え,本件各犯行を行ったものであり,これが厳正な職務執行が特に求められる警察官にあるまじき行為であることは言うまでもない。また,警察官が作成する捜査報告書等の捜査書類は,刑事訴訟等において証拠書類として用いられ,公文書として一定の証拠価値を認められているが,本件各犯行は,そのような警察官作成の捜査書類の信用性を大きく損なうものであり,ひいては,警察全体に対する国民の信頼にも影響を及ぼしかねないものであって,本件の結果は重大であると言わざるを得ない。さらに,被告人には犯行を思いとどまる機会が何度もあったにもかかわらず,本件各犯行を敢行したもので,その犯情は悪い。 以上のとおりの本件各犯行の罪質,態様,結果等を併せ考えれば被告人の刑事責任には重いものがある。 しかしながら,被告人は素直に事実関係を認め反省悔悟の情が顕著であること,本件各犯行は計画的な犯行ではないこと,被告人は平成13年度の巡査部長昇任試験に合格し周囲から警察官としての将来を嘱望されていたものであるが,本件により6か月の停職処分を受けその後自ら辞職しており,これにより一定の社会的制裁を受けていること,被告人に前科,前歴はなく,本件まで警察官として真面目に勤務していたことなど被告人にとって酌むべき事情もある。 そこで,これらの事情一切を総合考慮し,被告人の刑の執行を猶予するのが相当と判断した。 (求刑懲役1年6月)(公判出席検察官加藤直人私選弁護人山岡正明〔主任〕,同中川顯一郎)平成14年7月9日前橋地方裁判所刑事部裁判長裁判官長谷川憲一裁判官吉井隆平裁判官丹下将克 長谷川憲一 吉井隆平 丹下将克
▼ クリックして全文を表示