平成11(ワ)9166 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年1月25日 東京地方裁判所
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判決文本文28,290 文字)

主文 1 原告の請求をいずれも棄却する 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して金3億4804万3827円及びこれに対する平成10年12月9日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告株式会社Y1及び同株式会社Y2の代表者ないし担当者である被告Y3,同Y4,同Y5らの勧誘を受けて,被告Y1との間で,ベーカリーカフェ・パブレストランの経営に関して,いわゆるフランチャイズ契約を締結したが,その勧誘に際して示された収支予測が根拠を欠いており,しかも,被告Y1はフランチャイズシステム自体を確立できておらず,経営ノウハウ等必要な情報を原告に対して提供できなかったために,店舗の経営が破綻したとして,被告Y2,同Y1,同Y3,同Y4,同Y5に対して民法709条,715条及び719条に基づき,被告Y1の取締役たるその余の被告に対して商法266条の3に基づき,それぞれ損害賠償及び遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 争いのない事実(1) 当事者原告は,平成8年9月5日に設立された,スポーツ用品の輸入・販売及び卸売,衣料品の輸入及び販売,化粧品・健康器具の卸売及び小売,日用品雑貨・食料品の販売及び輸出入業,飲食店の経営業等を営む有限会社である。 被告Y1は,被告Y2(旧商号y2株式会社)を中心として,同社(出資比率19%),A1株式会社(出資比率15%),株式会社A2(15%),A3株式会社(出資比率15%),A4株式会社(出資比率15%),A5株式会社(出資比率15%),株式会社A6(出資比率6%,上記7社を合わせて,以下「出資各社」という。)の共同出資により,「B」という名称でパブレストラン・ベーカリーカフェのフランチャイズチェーンシステム (出資比率15%),株式会社A6(出資比率6%,上記7社を合わせて,以下「出資各社」という。)の共同出資により,「B」という名称でパブレストラン・ベーカリーカフェのフランチャイズチェーンシステムを組織することを目的として設立された株式会社である。 被告Y3は,被告Y1の代表取締役であり,被告Y4を除くその余の個人被告は,出資各社から派遣されて,被告Y1の取締役となった者である。 被告Y2は,B株式会社を筆頭株主とし,国内及び海外のホテル経営とホテルの運営受託を主たる目的とする株式会社であり,国内及び海外で幅広くホテルチェーンを展開している。 被告Y4は,被告Y2の代表取締役である。 (2) フランチャイズ契約の締結被告Y2と株式会社D1は,平成9年3月12日付けで,原告と被告Y1とのフランチャイズ本契約に先立ち,被告Y2が,D1に対し,「B」フランチャイズチェーンシステムの第1号店を,東京都港区a町b丁目c番所在のdビル1階(131.5坪)において開業経営する権利を与え,システムを構成する経営ノウハウや情報を提供するとともに,サービスマーク等の標章の使用を許諾し,他方,D1は,被告Y2に対し,一定の対価を支払うことを約する旨の覚書(以下「本件覚書」という。)を締結した。 その後,本件覚書によるフランチャイザーの契約上の地位は,被告Y2から被告Y1へ,フランチャイジーの契約上の地位は,D1から原告へ,それぞれ承継された(争いがない)。 (3) Ba町店の開店と閉店原告は,平成9年10月1日,前記dビル1階において,ベーカリーカフェとパブレストランを同一店舗内で併設する形式で,Ba町店(以下「本件店舗」という。)の営業を開始したが,経営に行き詰まり,同年12月1日からは被告Y1に本件店舗の運営管理を委託するも,業績は好転せず, ブレストランを同一店舗内で併設する形式で,Ba町店(以下「本件店舗」という。)の営業を開始したが,経営に行き詰まり,同年12月1日からは被告Y1に本件店舗の運営管理を委託するも,業績は好転せず,平成10年11月10日をもって本件店舗を閉店した。 2 争点(1) 被告Y2,同Y1,同Y3,同Y4,同Y5に対する不法行為に基づく損害賠償請求ア収支予測義務違反の有無イ情報等提供義務違反の有無ウ免責特約の存否エ免責特約の信義則ないし公序良俗違反の有無オ損害(2) その余の被告に対する商法266条の3に基づく損害賠償請求ア任務懈怠の有無イ悪意又は重過失の有無ウ損害 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)ア収支予測義務違反の有無について(原告の主張)(ア) 被告Y3,同Y4,同Y5(以下「被告Y3ら」という。)は,被告Y2及び被告Y1が原告との間でフランチャイズ契約を締結するに当たり,フランチャイザーの代表者ないし担当者として,客観的な判断材料になる正確な売上げ予測と総事業費予測を提供する義務を負っていた。 ところが,被告Y2,同Y1及び同Y3らは,事前の綿密な調査を怠り,また,調査結果について不合理な評価をしたために,原告に対して不正確な売上げ予測と総事業費予測しか提供できなかった。 (イ) まず,売上げ予測については,被告Y3らは,原告に対し,本件店舗の開店直前である平成9年9月5日の段階で,年間約5億円の売上げが見込める旨説明していたが,一般大衆をターゲットとするフランチャイズ店で年間5億円の売上げを設定すること自体が全く不合理である。本件店舗は,a町の駅近くのビルに所在するとはいえ,奥まった視認性に劣る立地条件であって,a町駅の乗降客を誘引するには難しい立地であり,1日あたりの売上高は,6 設定すること自体が全く不合理である。本件店舗は,a町の駅近くのビルに所在するとはいえ,奥まった視認性に劣る立地条件であって,a町駅の乗降客を誘引するには難しい立地であり,1日あたりの売上高は,60万円から70万円程度を想定するのが常識的で,年間売上高も2億円程度と予測するのが適当である。本件店舗の建物賃借料は,月額金645万円と高額であり,被告Y3らは,売上げ予測を行わずに,賃料から逆算して賃料負担に耐えられるような賃料設定を行っていたにすぎない。 (ウ) また,総事業費については,当初,被告Y2及び同Y1から原告に対し,2億3331万円と予測される旨説明があったが,原告の交渉の結果,最終的に,総事業費は2億円程度と説明されるに至っていた。ところが,被告らが見積りを大幅に上回る出費を原告に強いたため,原告は,結局,2億2812万円の支出を余儀なくされた。例えば,①食器・備品の予算は455万円であったが,実際には920万円の支出をさせられ,②ユニフォームの予算は180万円であったところ,実際には700万円の支出をさせられ,③家具の予算は450万円であったが,実際には720万円の支出をさせられ,④レジスターはリースのはずだったが,実際には,ソフトとともに420万円での買取りを余儀なくされた。 (被告らの主張)(ア) 被告Y2及び同Y1は,平成9年9月5日の段階で,原告に対して売上げ予測を示した事実はなく,同年2月3日に,年間4億2812万円の売上げが予測される旨説明したのである。そして,この売上げ予測は,事前に綿密な調査を行い,ベーカリーカフェについてもパブレストランについても十分な検討を経た上で算出したものであり,決して不合理な予測ではない。 (イ) 被告Y2及び同Y1は,原告に対し,総事業費が2億円程度になると説明したことはなく,最 についてもパブレストランについても十分な検討を経た上で算出したものであり,決して不合理な予測ではない。 (イ) 被告Y2及び同Y1は,原告に対し,総事業費が2億円程度になると説明したことはなく,最終的には2億6734万7000円であると説明していた。それゆえ,事業費予測は,一部のものについては予想を上回ったものもあるが,総事業費としては,予測を下回っていたのであり,この点について被告らの予測に誤ったところはない。 イ情報提供義務違反の有無について(原告の主張)フランチャイズ契約を締結した以上,被告Y3らは,フランチャイザーである被告Y2ないし被告Y1の代表者ないし担当者として,フランチャイジーである原告に対し,統一的な経営ノウハウを提供する義務を負う。しかし,被告Y2,同Y1及び同Y3らは,以下の点で情報等提供義務に違反した。 (ア) 上記被告らは,原告に対し,店長を派遣して店の運営とスタッフの教育を行うことを約しておきながら,スタッフ教育を行わず,派遣された店長も,開店当日になって辞表を提出してしまい,経営に大きな混乱をひきおこすなど,スタッフ体制の整備を全くしてなかった。 (イ) 被告Y1は,商品供給システムも有していなかった。Ba町店で使用する食器・什器の調達・請求は,本来被告Y1がベンダーとの間で行い,それらを原告に対して引き渡すことが予定されているにもかかわらず,そのようなシステムが確立されていなかったために,原告が直接ベンダーとの間で取引しなければならなかった。 (ウ) 被告Y1には,通常フランチャイザーが有すべき運営マニュアルもなく,原告に対する経営指導もしなかった。 (エ) そもそも,フランチャイズシステムとは,フランチャイザーとフランチャイジーとの間で,定型的な約款に基づき締結される継続的な取引契約関係であって, もなく,原告に対する経営指導もしなかった。 (エ) そもそも,フランチャイズシステムとは,フランチャイザーとフランチャイジーとの間で,定型的な約款に基づき締結される継続的な取引契約関係であって,①フランチャイジーは,フランチャイザーから提供される特定のサービスマーク,商標その他の標識を使用して,同一のイメージのもとに,商品の販売,サービスの提供等の事業を行う権利を与えられ,②その事業を行うに当たっては,フランチャイザーから提供される統一的な経営ノウハウを用い,③それらの見返りとして,直接又は間接に,対価の支払が義務づけられているものをいうところ,被告らは,フランチャイズ事業の展開を約束しておきながら,フランチャイズシステムを確立することができなかった。 (被告Y1らの主張)被告Y1は,フランチャイズ事業の1号店ゆえに流動的な部分はあったものの,原告に対し,情報等提供義務を本旨に従って履行した。 (ア) 被告Y1は,本件店舗に対し,常時,十分な能力を有する支配人,ベーカリーカフェの店長,パブレストランの店長をそれぞれ派遣し,その人件費の大部分を負担していたのであり,人的体制の整備を行った。店員の教育についても,平成9年8月末ころから,支配人や店長が適切かつ十分な指導を行った。 (イ) 被告Y1は,本件店舗の開店までには商品供給システムを備えていた。 (ウ) 被告Y1は,平成9年9月までに,フランチャイズ事業の概念やサービスマニュアル等を詳細に記載したマニュアルを作成していた。なお,このマニュアルは,1号店開店用に作成したものであり,実地の経験を積み重ねながら適宜加筆修正していくことになっていた。 (エ)a フランチャイズシステムにおけるフランチャイジーのメリットは,おおむね次のように考えることができる。 (a) 独立性フランチャイジー み重ねながら適宜加筆修正していくことになっていた。 (エ)a フランチャイズシステムにおけるフランチャイジーのメリットは,おおむね次のように考えることができる。 (a) 独立性フランチャイジーは,独立の法人格を有しており,その収益は自己に帰属する。 (b) 名声の付与フランチャイジーは,フランチャイザーが獲得したグッドウィルを利用することができ,その手段として,商標,ロゴマーク等の営業の象徴となるものの付与を受け,内装デザインなどの店舗のイメージ等も同一の構成を用いる権利を獲得する。 この結果として,フランチャイザーの持つ信用や顧客吸引力を利用することができる。 (c) 経営ノウハウの付与フランチャイザーから,経営の方法そのものについて指導,援助を受け,技術上及び経営上の各種のノウハウを伝授され,さらに日常的・継続的に経営指導を受けることができる。この技術上及び経営上のノウハウの具体的内容としては,①従業員の教育,②メニューの構成・価格,③仕入先,仕入価格の調整(仕入れルートの確立),④その時々に応じた経営指導・アドバイス等が挙げられる。 b しかしながら,上述の原則は,既にノウハウが確立されているフランチャイズ・チェーンを前提としているものであり,本件のように,店舗が当該チェーンの1号店となる場合には,特殊性が存在する。この場合においては,フランチャイザーとしては当該店舗によって初めて経営ノウハウを実地に検証できるのであり,他方,フランチャイジーとしても,これまでにない全く未知の事業に参加することになり,事業の失敗のリスクを負うが,逆に前例もないほどの大幅な成功も期待できるのである。 c 以上を前提とすれば,本件における被告Y1の構築したシステムは,以下の理由で,フランチャイズシステムとして十分な内容を有するものであった。 (a 前例もないほどの大幅な成功も期待できるのである。 c 以上を前提とすれば,本件における被告Y1の構築したシステムは,以下の理由で,フランチャイズシステムとして十分な内容を有するものであった。 (a) 名声の付与被告Y1は,十分な検討の結果,「B」との店舗名を考案し,ロゴを作成し,店内のデザインについても,コンペを行って決定した。 これらの店舗名,ロゴ,内装デザイン等は,1号店である以上,本件店舗の開店時において,その信用や顧客吸引力が確立されていたとはいえないが,1号店として有すべきシステムとしては相当のものであった。 (b) 経営ノウハウの付与従業員教育については,前述のとおり,有能な支配人,店長等のスタッフが,適切に行っていた。 メニューの構成・価格についても,無国籍料理の提供を中核とするクロス・カルチャー・ミクスト・メニューのコンセプトのもと,合理的なメニュー及びレシピを完成させた。 仕入先については,出資7社の関連会社等からの仕入れを行っていた。将来的に,フランチャイズ店舗が多数になっていけば,大量仕入れによる原価の大幅な削減も可能であったが,本件店舗が開店した時点においても,一定の仕入価格の低廉化は実現されていた。 経営指導についても,被告Y1は,様々な販売促進活動等,売上げ増加のための諸策を考案して実施した。 ウ免責特約の存否について(被告Y2及び同Y1の主張)D1は,被告Y2に対し,本件覚書において,「本覚書の条項に関連して,解約金,損害賠償その他名目の如何を問わず,被告Y2及び同Y1に対し,一切金銭の請求をしない。」旨約した。 そして,原告は,D1から本件覚書による契約上の地位を引き受けたのであるから,被告Y2及び被告Y1に対する損害賠償請求はできない。 (原告の主張)D1が,本件覚書において,被告 い。」旨約した。 そして,原告は,D1から本件覚書による契約上の地位を引き受けたのであるから,被告Y2及び被告Y1に対する損害賠償請求はできない。 (原告の主張)D1が,本件覚書において,被告Y2及び同Y1に対して免責条項を設けたこと自体は認める。 しかし,この免責特約は,改めて原告と被告Y1との間でフランチャイズ本契約が締結されるまでの間においてのみ効力が認められる条項であり,原告は免責特約については承継しなかったものである。 エ免責特約の信義則違反ないし公序良俗違反の有無について(原告の主張)フランチャイズ事業自体は原告のリスクにおいて行われる事業であるが,本件店舗は,被告らの展開しようとするフランチャイズ事業の第1号店であるから,本件店舗の開設は原告の事業であるとともに被告らの事業でもある。したがって,フランチャイズ事業の展開という被告らの事業のリスクを原告に一方的に負担させる本件免責条項は,極めて不合理であり,公序良俗に反する。 また,本件覚書においては,本件店舗の開業のときまでにフランチャイズ本契約を書面で締結することが予定され,本契約の内容は再度協議することとされていたにもかかわらず,被告らは本契約の書面を作成することを拒んだのであり,自らに有利な覚書の条項を主張することは,著しく信義に反する。 (被告Y2及び同Y1の主張)被告らは,原告に対し,本件覚書ないしフランチャイズ本契約において,原告のリスクをできるだけ軽減できるよう様々な特約条項を設けており,それと引き替えに原告から免責特約を得ていたのであるから,被告らが免責を主張することは,何ら公序良俗や信義則に反するものではない。 オ損害について(原告の主張)原告は,被告らの行為により,以下のとおりの損害を被った。 (ア) 店舗設計施工費 責を主張することは,何ら公序良俗や信義則に反するものではない。 オ損害について(原告の主張)原告は,被告らの行為により,以下のとおりの損害を被った。 (ア) 店舗設計施工費 1億0532万9828円(イ) 設備費 1897万0583円(ウ) 9月から11月の営業損失 3968万0854円(エ) 保証金償却分 2025万4500円(オ) 店舗解体工事費(原状回復費用) 1501万5000円(カ) 未払家賃(H10.11の10日分) 248万1515円(キ) H9.12家賃 744万4547円(ク) 店舗運営仮払い 60万円(ケ) 逸失利益(4608万9000円×3年)1億3826万7000円総額 3億4804万3827円(被告らの主張)損害については争う。 (2) 争点(2)ア任務懈怠の有無について(原告の主張)被告Y6,同Y7,同Y8,同Y9,同Y10,同Y11,同Y12,同Y13ら被告Y1の取締役(以下「被告Y1取締役ら」という。)は,被告Y3らをして,原告に対し,①現実と大幅に異なるバラ色の売上げ予測と総事業費予測を説明させ,②「直営店を加え,5年間の目標として全国で40店舗・年商100億円,将来的には300店のフランチャイズ店舗を展開する計画である。」などとフランチャイズシステムが構築できているかのような説明による勧誘をさせたが,予想された売上げをあげることも,説明どおりの範囲内に事業費を抑えることもできず,また,スタッフ体制の整備・商品供給システムの供給・経営指導等のフランチャイズシステ ような説明による勧誘をさせたが,予想された売上げをあげることも,説明どおりの範囲内に事業費を抑えることもできず,また,スタッフ体制の整備・商品供給システムの供給・経営指導等のフランチャイズシステムの提供もできずに,原告に損害を与えたのであるから,商法266条の3の責任を負う。 (被告らの主張)争点(1)で主張しているとおり,被告Y1は,合理的な売上げ予測・総事業費予測を行い,また,適切な内容のフランチャイズシステムも構築していたのであり,被告Y3らの原告に対する勧誘も合理的であったから,被告Y1取締役らについても,何ら任務懈怠の違法行為はない。 イ悪意又は重過失の有無について(原告の主張)被告Y1取締役らは,本件店舗による収益がそれほど見込めないことや,被告Y1がフランチャイズシステムを構築できないことを知っていたか,仮にこれを知らなかったとしても,事前の調査や合弁各社との事前の打合せの結果,ごく容易に知ることができたはずであるから,少なくとも,被告Y1取締役らには重過失がある。 (被告らの主張)被告Y1は,売上げ予測・総事業費予測を合理的に行い,フランチャイズシステムについても適切に整備していたのであるから,被告Y1取締役らが,本件店舗における収益がそれほど見込めないことや,フランチャイズシステムが構築されていないことについて知っていたり,知らないことについて重過失があるということはあり得ない。 ウ損害について(原告の主張)原告が被告Y1取締役らの違法行為によって被った損害は,前記争点(1)オで主張したとおり,合計3億4804万3827円である。 (被告らの主張)損害については争う。 第3 当裁判所の判断 1 前提となる事実証拠(甲2ないし24,26ないし31,37〔枝番を含む〕,46の2・3,乙1ないし 804万3827円である。 (被告らの主張)損害については争う。 第3 当裁判所の判断 1 前提となる事実証拠(甲2ないし24,26ないし31,37〔枝番を含む〕,46の2・3,乙1ないし52,証人E2,原告代表者,被告Y3)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 出資各社の計画立案ア被告Y2は,平成5年10月からパブ・レストランのフランチャイズ事業の検討を開始し,平成7年10月から,A1,A2,A3,A6,A4及びA5と共同して,パブ機能を持ったレストランの展開を企画した。このプロジェクトは,それぞれの業界において十分な実績を有する上記7社が,そのノウハウを結集して,画期的な事業展開を図るものであった。 そして,被告Y2らは,共同出資して新たに株式会社を設立し,その新会社をフランチャイザーとして,フランチャイズシステムを構築することを決定した(乙48,被告Y3)。 イ出資各社は,平成7年10月ころ,このプロジェクトにおいて,事業形態のコンセプト,メニュー,店舗デザイン等の仕様,サービスないしオペレーションなど,広くフランチャイズ事業に必要な事項を検討するため,それぞれ2名ずつくらい,各分野の専門知識を有する従業員や新規事業開発に強い従業員を指名し,ワーキンググループ会議を結成した。 ワーキンググループは,事業のコンセプトについて協議し,平成7年12月12日ころ,「食文化の情報発信基地」という基本コンセプトのもとに,想定客層を25歳から45歳の女性をメインとすること,営業区分は,ランチ,喫茶,ディナーのいわゆる三毛作とすること,メニューは無国籍・多国籍料理とし,クロス・カルチャー・ミクスト・メニューと呼ぶこと,価格帯は想定客単価で2300円から2700円とすること,フランチャイズ・チェーンとして,10 る三毛作とすること,メニューは無国籍・多国籍料理とし,クロス・カルチャー・ミクスト・メニューと呼ぶこと,価格帯は想定客単価で2300円から2700円とすること,フランチャイズ・チェーンとして,100店舗を達成することを目標とすることなどについてのコンセプト・チャートを作成した。 次に,ワーキンググループは,雑誌に掲載された東京の人気飲食店のメニューを分析した上で,平成8年1月12日から29日にかけて,出資各社の従業員に対してアンケートを実施し,どのようなメニューが想定客層に好まれ,どれくらいの客単価が相当なのかを分析して,無国籍・多国籍料理が好まれていることや想定客単価は4200円くらいまでは上げられるであろうことを確認した(乙12ないし14,48)。 ウこのようにコンセプトや基本メニュー等について大筋が決まったので,被告Y2は,平成8年6月17日,フランチャイズシステムの構築をするために,F1,F2,F3等のフランチャイズシステムの構築に関わっていた有限会社E1との間で,フランチャイズチェーンパッケージに関するコンサルティング業務について,業務委託契約を締結し,同社代表者E2が,以後,ワーキンググループに出席した。 ワーキンググループは,その後,ネーミングの公募を行って,フランチャイズチェーンの名称を「B」とすることを決め,同年9月ころには,内装デザインについてコンペを行った上で,Gデザイン事務所に委託した。 E1は,ワーキンググループに対し,同年11月14日ころ,メニューの構成についての基本的な考え方を指導し,同月28日,メニュープランを提示して,メニューについての検討をさらに促進させた(乙3,15,16,18,48,52,証人E2,被告Y3)。 (2) 原告の建物賃貸借契約等原告代表者は,日本で出生した後,アメリカ人と結 ンを提示して,メニューについての検討をさらに促進させた(乙3,15,16,18,48,52,証人E2,被告Y3)。 (2) 原告の建物賃貸借契約等原告代表者は,日本で出生した後,アメリカ人と結婚して,平成5年当時にはアメリカ国籍を取得し,アメリカに在住していたが,2か月に1回程度日本を訪れ,2週間程度滞在するようにしていた。 原告代表者は,平成7年秋ごろ,D2株式会社及び株式会社D1などの代表取締役であったD3から,平成9年に東京都港区a町6丁目に新築される大型ビル「d」(当初の仮称は「a町6丁目共同ビル」)の話を聞き,同ビルを賃借して,同ビル内で飲食事業を行うことを決心した。しかし,原告代表者は,原告の設立手続が,dの建物賃貸借契約締結時までに間に合わなかったので,D3の経営するD1に賃貸借予約をしてもらうこととした。 D1は,Hほか2名から,平成8年4月23日,dの1階部分419.13平方メートルを坪当たり5万円(賃料月額633万9000円)で賃借することを予約(平成9年8月31日引渡し予定)し,平成8年11月28日,設立手続を終えた原告が,D1から,同予約契約上の地位を承継した。原告代表者とD3は,同予約契約直後から同賃借部分で新規に行うための事業を物色していた。 なお,原告代表者は,日本に常時滞在しているわけではなかったので,ビジネスパートナーとして,原告設立当初から本件店舗の開店直前である平成10年9月5日まで,D3に代表取締役を任せていた(甲22,30,乙47,原告代表者)。 (3) 契約の準備及び覚書の締結ア前記ワーキンググループは,平成8年6月ころ,D1の顧問と称するIが,A6の代表取締役Y10に対し,D3がdで飲食事業を行う計画を有していて,協力会社を求めている旨伝えてきたことを知り,d内でBの第1号店の開店 ググループは,平成8年6月ころ,D1の顧問と称するIが,A6の代表取締役Y10に対し,D3がdで飲食事業を行う計画を有していて,協力会社を求めている旨伝えてきたことを知り,d内でBの第1号店の開店ができないかを検討するようになった。 そこで,被告Y3は,同年9月26日,D3との連絡役であるIと会議を行い,dでの共同事業に関する協議を開始し,同日,D3に対し,パブレストラン「B」の概要を書面で説明した。その際,被告Y3は,D3に対し,dで行うレストラン事業の形態として,①フランチャイズ方式(当時設立予定であった被告Y1が進めるフランチャイズ店舗として,原告が店舗経営を行う),②直営店方式(被告Y1がスペースをリースし,Bの直営店とする),③運営受託方式(原告が内装を施し,被告Y1が運営を行う)の3方式を提案した(乙22,24,48,49,被告Y3)。 イこれに対し,D3は,直営店方式に難色を示したので,被告Y2は,D3に対し,同年10月9日,内外装費及び設計料は原告が負担し,被告Y1が店舗のサブリースを受けた上で店舗の運営を行い,被告Y1は原告に対して家賃,店舗リース料(売上げの一定割合),保証金を支払うという店舗リース方式を提案した。D3は,同月16日,被告Y5に対し,店舗内でパブレストランだけでなく,ベーカリーカフェを直営したい旨述べ,敷地のうち30~40坪はベーカリーカフェに,70~80坪はパブレストランにすることを提案した。 被告Y4,同Y3,同Y5は,同月22日,D3及びIと会談した。このとき,D3は,被告Y1との共同事業を行うことについて前向きの姿勢を示したが,店舗リース方式ではなく,フランチャイズ方式ではどうかとの意見を述べた。これに対し,被告Y4は,フランチャイズ方式でやるならば,店の管理運営上,ベーカリーカフェと とについて前向きの姿勢を示したが,店舗リース方式ではなく,フランチャイズ方式ではどうかとの意見を述べた。これに対し,被告Y4は,フランチャイズ方式でやるならば,店の管理運営上,ベーカリーカフェとパブレストランの両方をフランチャイズ方式でやりたい旨回答したところ,D3は,検討する旨答えた。また,D3は,被告Y4らに対し,Bに直営店がなく,フランチャイズ店舗としても本件店舗が1号店となることから,通常のフランチャイズ契約におけるよりも原告側に有利な特約条項を入れることを求め,1週間以内にフランチャイズ方式の具体案を示すように依頼した。 被告Y3は,同月24日,D3に対し,加盟料を免除したり,ロイヤリティを低くたり,店長を派遣するなどの有利な条件がついたフランチャイズ方式の案を文書で示した(乙23ないし25,48,49,被告Y3)。 ウ D3と被告Y3は,その後も,フランチャイズ方式の細部交渉を行い,被告Y3は,同年12月2日,D3に対し,「d」プロジェクトに関する提案と題する書面を交付した。同書面には,同年10月24日の提案事項に加え,以下のとおり,被告Y2による総事業費予測及び売上げ予測がその内訳とともに記載されていた(甲3)。 (ア) 総事業費予測ベーカリーカフェ計 8483万円パブレストラン計 1億4848万円 合計 2億3331万円(イ) 売上げ予測ベーカリーカフェ 1日55万円×年308日=年間1億6940万円パブレストラン  1日70万円×年308日=年間2億1560万円 合計年間3億8500万円エ D3は,従前,K株式会社が全面的に協力するカフェレストランの開設をも視野に入れて準備作業を進めていたため,上記提案を受けた後,しばらく被告Y2との交渉を断っていた 合計年間3億8500万円エ D3は,従前,K株式会社が全面的に協力するカフェレストランの開設をも視野に入れて準備作業を進めていたため,上記提案を受けた後,しばらく被告Y2との交渉を断っていた。しかし,D3及び原告代表者は,日本の一流企業であるLグループが展開する事業に参加する方が安全であり,利益も大きいと考え,結局,平成9年1月ころ,被告Y2に対し,フランチャイズ方式を大筋で合意する旨の返答をした。そこで,被告Y2は,D3に対し,同月30日,改めて合意内容の骨子を提案し,本件店舗を被告Y1が全国展開するパブレストランBの1号店舗として展開すること,加盟料免除,ロイヤリティの低減化,原告は被告Y1に対して償却前利益の5%を支払うが,原告に営業損失が生じた場合は,損失額の30%を被告Y1が負担することなどの特約条項を提示し,また,同年2月3日,売上げ予測及び総事業費予測を提示した。売上げ予測及び総事業費予測の内容は,以下のとおりである(甲4ないし6)。 (ア) 売上げ予測ベーカリーカフェ 1日66万円×年間308日=2億0328万円パブレストラン  1日73万円×年間308日=2億2484万円合計 4億2812万円(イ) 総事業費予測ベーカリーカフェ計 9246万4000円パブレストラン計 1億7488万3000円総事業費合計 2億6734万7000円オこれに対し,原告は,被告Y2に対し,同年2月17日,フランチャイズ契約の内容について,本件店舗の設計管理をD4が行い,施工元請もD4とすること,ロイヤリティを被告Y2の提案よりもさらに低くすること,本件店舗から利益が上がるであろうことを見込んで,原告の営業損失の保証はなしとする代わりに,償却前利益 をD4が行い,施工元請もD4とすること,ロイヤリティを被告Y2の提案よりもさらに低くすること,本件店舗から利益が上がるであろうことを見込んで,原告の営業損失の保証はなしとする代わりに,償却前利益リンク報酬についても被告Y1には払わないことなどの対案を示した(甲7,弁論の全趣旨)。 カ被告Y2は,D3の対案を考慮した上で契約内容の細部を詰め,同年3月12日,D1との間で,以下のとおり本件覚書を取り交わすとともに,同覚書において被告Y1が関連する条項については,被告Y1が設立されることを停止条件として効力を発生させること,及び,同覚書上の地位は,被告Y2については被告Y1が,D1については原告が将来承継することを合意した(甲9)。 (ア) フランチャイズの付与(1条)被告Y2は,D1に対し,本件店舗において,Bの商標,屋号,サービスマーク等の仕様及び経営ノウハウを用いて,同一と見られるイメージのもとに営業活動を行うことを承認し,D1は,被告Y2に対し,一定の対価を支払う。 (イ) 加盟料及び取引保証金(4条,5条)原告が被告Y1に対して支払うべき加盟料及び取引保証金については,これを免除する。 (ウ) 店舗設計,総合監理等(7条,13条)本件店舗の全設計は,被告Y1が行う。原告は,原告の負担で本件店舗運営上必要な内外装及び附帯設備,並びに厨房機器等一式を購入又はリースして,設置する。 本件プロジェクトの総合監理は被告Y1が行う。本件店舗の内装デザインについても,設計業務及び設計監理は被告Y1が行う。ただし,設計業務のうち,実施設計部分については,D1は自己の指定する業者に委託することができる。 施工元請はD4とし,施工業者については,被告Y1が推薦する2社及び原告が推薦する2社の計4社による合見積りによって決定する。 (エ) 開 ついては,D1は自己の指定する業者に委託することができる。 施工元請はD4とし,施工業者については,被告Y1が推薦する2社及び原告が推薦する2社の計4社による合見積りによって決定する。 (エ) 開店までの指導事項(8条)本件店舗の開店は,平成9年10月1日とする。被告Y1は,原告に対し,開店準備として,本件店舗における商品の仕入れ,保管,調達製造及び販売等について指導し,また,原告の従業員に対し,所定の研修訓練を行うが,開業1年目については,研修訓練費用を免除する。 (オ) 店長及び料理長の派遣(9条,12条)被告Y1は,原告に対し,被告Y1のスーパーバイザーを本件店舗の店長として派遣して,原告に必要な指示・指導を行うこととし,派遣期間は,開業前2か月及び開業後10か月の1年間として,その間の店長の給与は,被告Y1が負担する。 また,被告Y1は,原告に対し,本件店舗の料理長を派遣するが,その期間は店長と同様とし,人件費等の費用は原告が負担することとする。 (カ) ロイヤリティ(10条)原告は,被告Y1に対し,ロイヤリティとして,開業後1年目については月次総売上げの1%を,2年目については1.5%を,3年目については2%を支払う。 (キ) 販売促進(11条)原告は,被告Y1に対し,フランチャイズチェーン統一キャンペーン活動による販売促進に要する費用として,毎月の総売上げの1%に相当する金額を支払う。ただし,開業1年目については免除する。 また,原告は,本件店舗単体に関わる販売活動を行うときは,被告Y1の承諾を得た上で,原告の費用負担によりこれを行う。ただし,開業1年目については,原告及び被告Y1の協議により,販売促進費の総額を決定し,原告は最大2分の1を限度としてその費用を負担する。 (ク) 諸経費の支払(16条)原告は,本件 これを行う。ただし,開業1年目については,原告及び被告Y1の協議により,販売促進費の総額を決定し,原告は最大2分の1を限度としてその費用を負担する。 (ク) 諸経費の支払(16条)原告は,本件店舗の運営上必要となる人件費,募集採用費,食飲材,包材,備消耗品等一切の経費を負担するとともに,チェーンの統一イメージの維持に必要な食材,包材,備消耗品については,原則として被告Y1又は被告Y1の推薦する取引先と契約し,その代金は直接被告Y1又は被告Y1の推薦する取引先に支払うものとする。 (ケ) 請求権の放棄(22条)D1及び原告は,本覚書の条項に関連して,解約金,損害賠償その他名目の如何を問わず,被告Y2及び被告Y1に対し,一切金銭の請求をしない。 キ被告Y1は,同年3月18日に設立されたため,以後,原告と被告Y1との間で,本件覚書の効力が生じたことになる。 出資各社の代表取締役は,同年4月15日,共同記者会見を行い,B1号店として本件店舗が同年10月1日にオープンすることを宣伝するとともに,5年間の目標として全国で40店舗,年商100億円,将来的には300のフランチャイズ店舗を展開する計画を有している旨発表した(甲10,弁論の全趣旨)。 クなお,原告は,①D3はフランチャイズによる飲食店業に全く暗かった,②D3及びIは,平成8年10月22日,dではKカフェをすることを決定したので,被告Y4に対し,共同事業を行うことについては断った,③それにもかかわらず,被告Y2は,原告に対し,執拗に勧誘を繰り返し,破格の有利な条件と,高い売上げ予測及び低い事業費予測を提示してきたところ,平成9年2月19日には,1日平均売上高が129万9950円と予想され,5か年の収支計画は,キャッシュフローが平均して4000万円以上となるとまで利益予測をしてきた( 事業費予測を提示してきたところ,平成9年2月19日には,1日平均売上高が129万9950円と予想され,5か年の収支計画は,キャッシュフローが平均して4000万円以上となるとまで利益予測をしてきた(甲8)ので,フランチャイズ事業について無知な原告は,それを信じて被告Y2らとフランチャイズ契約を締結することにした旨主張し,これに沿う供述ないし供述記載部分も存在する(甲30,46の2・3,原告代表者)。 しかし,①については,D3はD2の代表取締役として,F1,F4,F5等のフランチャイズ店舗を営んでいること(乙1,38ないし41)や,原告側から平成9年2月17日にフランチャイズの条件について詳細な対案が示されていること,後にBの開店前の会議を行った際にも,サービスやレジ関係について詳細な意見を述べていることが認められることからすれば,D3がフランチャイズによる飲食店業について素人であったとは認め難く,かえって,D3はフランチャイズ飲食店業について十分な知識及び経験を有していたと認めるのが相当である。 また,②については,証拠(甲23,24)によれば,確かに,原告代表者が,平成8年12月ころ,ハーレーダビッドソンカフェの店舗デザインを業者に依頼していることが認められるが,他方,D3は,同年10月22日,被告Y2側と会談を行い,被告Y2は,D3に対し,その2日後である同月24日に,22日の会談の「内容を踏まえた上で」フランチャイズ方式案を提示したことが認められることからすると,同月22日の段階でD3が被告Y2に対して共同事業を断る態度を明確にしていたとは認め難い。 さらに,③については,平成8年12月及び平成9年1月に被告Y2から原告に対して示された条件や収支予測は,平成8年10月に示された条件を修正した程度にすぎず,大幅な変更はなかった たとは認め難い。 さらに,③については,平成8年12月及び平成9年1月に被告Y2から原告に対して示された条件や収支予測は,平成8年10月に示された条件を修正した程度にすぎず,大幅な変更はなかったこと,M株式会社がD4に対して平成9年1月21日に交付した,本件店舗に関する内装・設計業務の請書(甲24)においても,当初は業務名が「K東京新築工事」とされていたが,後に訂正されて「(仮称)d店舗内装工事」とされていることから見て,少なくともこの時点で原告はKとの提携をやめようとしていたことが推認されること,甲8の予測表は,夜の料理の平均客単価が4000円と設定されており,平成9年2月に被告Y2が原告に対して示した売上げ予測の客単価2500円との間に大きな開きがあるうえ,被告Y2側では使用しない独特な用語,表現が使われていること,D3が被告Y2側に開示していない情報が記載されていることなど(乙48)に照らすと,被告Y2側が原告に対して提示したものであるとは認められないことから,原告の主張する事実を認めることはできない。 以上によれば,前掲証拠のうち,前記原告の主張に沿う供述ないし供述記載部分は採用できない。 (4) 売上げ予測の算出被告Y3がD3及び原告に対して示した平成9年2月3日の売上げ予測(甲5)は,E2の助言を得て,ワーキンググループが算出したものであるが,その予測の算出方法は,以下のとおりである(甲48,乙4,6ないし9,20,48,52,証人E2,被告Y3)。 ア本件店舗が出店するdは,地下鉄a町駅の真上に位置する新築地下2階,地上10階の大型ビルであり,ビルの1階にプラザが設けられ,若者たちの新しい待ち合わせ場所となることが企図されているなど,斬新性・話題性に富んでいた。視認性については,本件店舗は道路からやや後退し,奥ま 0階の大型ビルであり,ビルの1階にプラザが設けられ,若者たちの新しい待ち合わせ場所となることが企図されているなど,斬新性・話題性に富んでいた。視認性については,本件店舗は道路からやや後退し,奥まったところに所在するが,道路から視認することは可能であった(甲48,乙20)。 a町所在の事業所数及び就業人口は,平成3年度で,事業所数3320か所,就業人口4万1353人であった(乙4)。 a町駅の乗降客数は,平成7年度で,1日あたり11万人を超えていたが(乙6),E2が資料を参照したり,実際にa町駅の駅員に問い合わせたりしたところ,うち約7万6000人が,本件店舗寄りのa町口を利用しているものと推計された。 また,都営地下鉄12号線の開業が計画され,a町6丁目再開発計画が進行していたため,a町駅は改装工事が行われており,港区の調査では,工事後の1日あたりの乗降客数は,28万人を超えると推計されていた(乙7)。 店前通行量については,ワーキンググループは,前記のとおり,a町口を約7万6000人が通行するものと推計されたことと,平成8年11月20日に,E1の取引先の飲食店が行った通行量調査によれば,本件店舗の隣に位置する店舗の前の通行量は,午前10時から午後6時までの8時間で約2万3600人,終日では約5万7000人であった(乙8)ことを参考に,本件店舗の店前通行量を約4万人と推計した。 来客者比率(吸引力)とは,店前通行量のうち,どの程度の割合の通行者が来店するかを示す比率であるが,上記平成8年11月20日の調査によれば,本件店舗に近いa町交差点の飲食店においては,午前11時から午後6時までの間で5.48%であったところ(乙9),本件店舗の視認性がやや悪いことにかんがみ,3%とやや低めに設定した。 イ(ア) ベーカリーカフェの売上げ予測 の飲食店においては,午前11時から午後6時までの間で5.48%であったところ(乙9),本件店舗の視認性がやや悪いことにかんがみ,3%とやや低めに設定した。 イ(ア) ベーカリーカフェの売上げ予測以上の調査結果を踏まえ,ワーキンググループは,次のようにベーカリーカフェの売上高を算出した(乙48,52,証人E2,被告Y3)。 a 前提条件ベーカリーカフェの座席数は88席,営業日数は年間308日,営業時間は午前7時30分から午後10時30分とする。 b 来店者数予測本件店舗の店前通行量約4万人に来店者比率3%を積算し,来店者数を1日あたり1200人と算出した。 c 客単価客単価は,一般に,商品平均単価×1人あたり買上げ点数で算出される。 ワーキンググループは,E1が関わっていたa町にあるコーヒーショップが,平均買上げ点数2.15点,商品平均単価239.11円,客単価514円となっていたことを参考に,店舗規模が大きいことや駅に近いといった利点を加味し,ドリンク1点,サンドウィッチその他1~1.5点として平均買上げ点数2~2.5点とし,商品平均単価を250円と設定し,客単価を555円と算出した。 d 売上げ予測以上に基づき,ワーキンググループは,1日あたりの売上げを,555円×1200人=66万6000円,年間売上げを,66万6000円×308日=2億0328万円と予測した。 (イ) パブレストランの売上げ予測ワーキンググループは,次のようにパブレストランの売上高を予測した(乙48,52,証人E2,被告Y3)。 a 前提条件パブレストランの座席数は116席,営業日数は年間308日,営業時間は午前11時から午後11時とする。 b 来店者数a町地区の立地条件,コンセプトの訴求力,出資各社による大規模な営業活動,店舗の話題性効果 ランの座席数は116席,営業日数は年間308日,営業時間は午前11時から午後11時とする。 b 来店者数a町地区の立地条件,コンセプトの訴求力,出資各社による大規模な営業活動,店舗の話題性効果等を勘案して,ランチタイム(午前11時~午後2時)を150人(1.3回転),アイドルタイム(午後2時~午後5時)を180人(1.5回転),ディナータイム(午後5時~午後11時)を180人(1.5回転)と予測した。 c 客単価メニューに基づき,ランチタイム1000円,アイドルタイム750円,ディナータイム2500円と設定した。 d 売上げ予測以上より,ワーキンググループは,1日あたりの売上げを,1000円×150人+750円×180人+2500円×180人=73万5000円くらいと見積もり,年間売上げを,73万円×308日=2億2484万円と予測した。 (5) 総事業費予測の算出前記のとおり,被告Y3は,D3に対し,総事業費予測として,平成8年12月2日,合計2億3331万円が必要となると説明し,その後,これを修正して,平成9年2月3日には,合計2億6734万7000円が必要となると説明した。 この総事業費予測の算出に当たっては,まずE1から投資計画,開発費,運転資金等の項目別に投資額のモデルケースが示され,これに従ってワーキンググループが積算するという方法がとられていた(乙48,52,証人E2,被告Y3)。 なお,原告は,①同年2月19日の段階で,被告Y2から甲8の予測表によって総事業費は2億1702万4000円となると説明され,②その後,総事業費は2億円程度になると説明された旨主張し,証拠(甲30,原告代表者)中にはこれに沿う原告代表者の供述及び供述記載部分が存在するが,①については,前述のとおり,甲8は被告Y2が原告に対して示した 業費は2億円程度になると説明された旨主張し,証拠(甲30,原告代表者)中にはこれに沿う原告代表者の供述及び供述記載部分が存在するが,①については,前述のとおり,甲8は被告Y2が原告に対して示した書面とは認められず,②についても,これを裏付ける客観的証拠が全くないから,これらの供述及び供述記載部分を直ちに採用することはできない。 (6) 本件店舗の開店の準備ア出資各社は,それぞれ以下のとおりフランチャイズシステムの構築に当たってのノウハウを有しており,これを被告Y1に提供した(乙48,50,52)。 (ア) 被告Y2被告Y2は,世界的にホテルチェーンを展開し,ホテルの統一的なコンセプト,標準化されたサービス方式,従業員管理,教育等のシステムを有し,また,ホテル内のレストラン運営についてのノウハウも有していた。 (イ) A1A1は,ビール等の飲料を事業の中核としながら,関係会社等を通じて飲食業を展開し,店舗運営の実地ノウハウを有していた。 (ウ) A2A2は,冷凍食品及び冷蔵庫事業を営み,食品,加工食品,低温流通などの領域で事業展開をしており,本件店舗に関して,食材の提供,メニューの開発において支援を行った。 (エ) A3A3は,酒類総合メーカーであり,本件店舗に関して,ワイン,飲料に関するノウハウを有していた。 (オ) A4A4は,F2チェーンを展開し,コーヒー事業に関するノウハウを有していた。 (カ) A5A5は,Lグループの総合商社であり,本件店舗に関して,Lグループから得られる様々なノウハウを有していた。 (キ) A6A6は,被告Y2の子会社であり,レストラン経営の専門会社として,実地のレストラン運営ノウハウを有していた。 イ原告,D3,被告Y3,被告Y5,E2らは,平成9年5月30日から同年8月26日まで A6は,被告Y2の子会社であり,レストラン経営の専門会社として,実地のレストラン運営ノウハウを有していた。 イ原告,D3,被告Y3,被告Y5,E2らは,平成9年5月30日から同年8月26日までの間,合計11回にわたって,本件店舗の開店についての会議を行い,内外装や商品,店舗のオペレーション等について詳細に議論した(乙27ないし37,48,証人E2,被告Y3)。 ウ被告Y1は,平成9年7月ころ,E2の紹介で,Nを本件店舗の支配人として採用し,また,Pを本件店舗の料理長として採用した。その後,被告Y1は,Nと親しいQ及びSを,それぞれ本件店舗のベーカリーカフェとパブレストランの店長として採用した。 Nは,長年F2の店長として勤務した後,平成7年にR1に入社し,飲食業のフランチャイズ店舗のシステム作り,マニュアル作り,従業員の教育等の経験を有していた。Pは,P1,P2,P3,P4等に勤務し,レストランでの長い料理経験を有していた。Qは,平成7年にR1に入社し,同社の経営するフランチャイズ店であるT池袋東口店副店長となり,翌平成8年には同店の店長となっていた者であり,Sは,平成3年にUに入社した後,平成5年にR1に入社し,T目白店の副店長となり,平成7年から同店の店長となっていた者であった。 また,A4は,平成9年7月11日から,コーヒーショップの運営に詳しいA5を本件店舗に応援の形で派遣した。NとA5は,本件店舗の運営について協議し,カフェ部門はA5が責任者兼アドバイザーで,Qが店長となり,パブ部門はNが責任者で,Sが店長となることを決め,協力して社員の教育を行った(乙42,48,50)。 エ Nは,出資各社が有する店舗運営のマニュアル,カタログやレシピ表等を参考に,B独自のマニュアル(乙42)を作成し,平成9年9月17日までに同マニ 力して社員の教育を行った(乙42,48,50)。 エ Nは,出資各社が有する店舗運営のマニュアル,カタログやレシピ表等を参考に,B独自のマニュアル(乙42)を作成し,平成9年9月17日までに同マニュアルを完成させた。このマニュアルには,①Bの概念,②ハウスルール,③アルバイト雇用条件,④サービスマニュアル,⑤サービスガイド(カフェ),⑥オペレーションマニュアル(カフェ),⑦パニーニ作成マニュアル,⑧オペレーションマニュアル(パブ)⑨ティータイム商品マニュアル,⑩おいしいビールの注ぎ方,⑪オーナーシップ店長の資質,⑫メニュー並びにレシピ,⑬オープニングマニュアル,⑭安全性の確立,⑮サービスの基礎知識,⑯参考資料(サービスのための用語集,料理の基礎知識)があった(乙42,46,48ないし51,証人E2,被告Y3)。 オ原告は,A5,被告Y5,D3らの面接により,本件店舗の従業員(正社員)として2名を採用したほか,平成9年8月中旬ころからアルバイト店員の採用を開始し,カフェ部門で20人前後,パブ部門で30人前後のアルバイト店員を採用した(乙50)。 被告Y1は,原告に対し,同年9月5日,本件店舗の年間売上高が5億0412万6000円となるとの記載がある収支試算表(甲14)を交付したが,この収支試算は,アルバイト人員の手当,従業員のシフトパターンを設定することを主たる目的として,Q及びSが作成したものであり,年間売上高の記載は売上げ予測として原告に示すためのものではなかった(乙48,被告Y3)。 この点,原告は,この収支試算は被告Y1から再び売上げ予測を示す趣旨で交付されたと主張するが,同試算には,平成8年12月と平成9年2月に示された収支予測と異なり,売上高の算出根拠が全く示されておらず,売上げ予測として作成されたものとは認められない げ予測を示す趣旨で交付されたと主張するが,同試算には,平成8年12月と平成9年2月に示された収支予測と異なり,売上高の算出根拠が全く示されておらず,売上げ予測として作成されたものとは認められない。 カ N,A5,Q及びSは,同年9月8日,全アルバイト店員を集めてオリエンテーリングを実施し,カフェ部門及びパブ部門における勤務について説明を行った。 その後,Nらは,正社員及びアルバイト店員に対し,連日店舗での実地訓練を行った。 被告Y1は,出資各社の広報宣伝部と協力して,本件店舗の開店告知のための広報活動を行い,新聞や雑誌に開店情報記事を掲載させるなどした(乙43,46,48,50,52,被告Y3,弁論の全趣旨)。 (7) 本件店舗の開店,運営管理受委託契約への移行原告は,平成9年10月1日,本件店舗を開店したが,同日,突然Nが被告Y1に対して辞表を提出した。 被告Y1はNを慰留したが,Nは,後任の支配人が決定した同年11月中旬ころに退職した。後任には,被告Y2の従業員であり,VからWが派遣された。 本件店舗の売上げは,当初から売上げ予測を下回り,同年10月の総売上高は1841万3620円(1日あたり59万3988円),同年11月の総売上高は1524万9567円(1日あたり54万5844円)であった。 原告は,被告Y1に対し,売上げ実績について不満を示し,本件プロジェクトから即時撤退するなどと申し出た。被告Y1は,本件店舗がフランチャイズチェーンの1号店として重要な役割を担っていることを重視し,原告と協議して,本件覚書を合意解約し,フランチャイズ契約方式をやめ,契約を平成9年12月1日から1年間の運営管理受委託契約(甲18)へと切り替え,被告Y1において本件店舗の家賃相当額を保証するなど原告に有利な条件で営業を継続することとなった。 イズ契約方式をやめ,契約を平成9年12月1日から1年間の運営管理受委託契約(甲18)へと切り替え,被告Y1において本件店舗の家賃相当額を保証するなど原告に有利な条件で営業を継続することとなった。 被告Y1は,雑誌等に広告を掲載するとともに,回数割引券の発行や各種イベントを行って販売促進活動を行った(甲15,18,28,30,37〔枝番を含む〕乙44,48,原告代表者,証人E2,被告Y3,弁論の全趣旨)。 (8) 閉店しかし,本件店舗の売上げは好転せず,ほぼ横ばいの状態が続いたため,被告Y1は,原告に対し,平成10年4月28日ころ,原告に対し,前記運営管理受委託契約を同年11月10日をもって終了させるが,家賃の大幅な減額ができれば運営について再度協議したい旨の通知を行ったところ,結局家賃の大幅な減額はできず,運営管理受委託契約は同年11月10日に終了した。 原告が本件店舗の開店及び運営のために支出した総事業費は,2億2812万円であった(甲17,20,30,弁論の全趣旨)。 2 争点に対する判断(1) 争点(1)についてア収支予測義務違反の有無についてフランチャイズ契約は,フランチャイジーが,フランチャイザーの商標,サービスマーク等の営業の象徴となる標識,信用,経営のノウハウ及び経営指導力を活用して,自己の利益を追求し,他方,フランチャイザーは,フランチャイジーの有する資金や人材を活用して,自己の事業を拡大することで共存しながら互いの利益を追求することを本質とするものであるが,フランチャイザーとフランチャイジーとの間では,その立場及び経験上,知識,情報量及び資金力において圧倒的な格差があることが多い。そして,フランチャイズに加盟しようとする者にとって,専門的知識を有し,豊富な情報量と資金力を有するフランチャイザーの売上げ予測及 経験上,知識,情報量及び資金力において圧倒的な格差があることが多い。そして,フランチャイズに加盟しようとする者にとって,専門的知識を有し,豊富な情報量と資金力を有するフランチャイザーの売上げ予測及び総事業費予測は,加盟するか否かを決定づける重要な要素となり得るものである。したがって,一般に,フランチャイザー及びその従業員は,フランチャイジーの勧誘に当たり,客観的かつ的確な売上げ予測及び総事業費予測を提供すべき注意義務を負うものというべきである。 もっとも,売上げ予測及び総事業費予測は,将来の事業活動の結果を事前に予想するものであるところ,事業活動の成果は,その時々の経済情勢やその他の諸要因により容易に変化する性質のものであるから,当然のことながら,これを正確かつ確実に予測することは極めて困難というべきであり,また,そのような性質を有するために,予測の手法も確立した一定の方式が存するものとは認められない。 したがって,フランチャイザーがフランチャイズ契約を締結するに際して提供した売上げ予測及び総事業費予測が,事業活動の結果として現れた実際の売上げ及び総事業費の実績と異なるものとなったとしても,このことから直ちに客観的かつ的確な売上げ予測及び総事業費予測を提供すべき注意義務に違反するものではなく,予測の手法自体が明白に相当性を欠いた不合理なものであったり,これに用いられた基礎数値が客観的根拠を欠いている場合など,売上げ予測及び総事業費予測が全く合理性を欠き,フランチャイジーに契約締結に関する判断を誤らせるおそれが著しく大きいものである場合に限って,前記注意義務の違反となり,フランチャイジーがこれによって被った損害を賠償する責任を負うものと解するのが相当である。 以下,本件における売上げ予測及び総事業費予測につき,個別に検討する。 (ア) て,前記注意義務の違反となり,フランチャイジーがこれによって被った損害を賠償する責任を負うものと解するのが相当である。 以下,本件における売上げ予測及び総事業費予測につき,個別に検討する。 (ア) 売上げ予測についてa 確かに,被告Y3がD3に対して平成9年2月3日に契約準備段階での最終的な予測として示した売上げ予測によれば,本件店舗の売上げは,カフェレストラン部分とパブレストラン部分を合わせて,1日あたり139万円と予測されていたにもかかわらず,実際には,開店直後の同年10月で1日あたり59万3988円,同年11月で1日あたり54万5844円というように,売上げ予測を大幅に下回る売上げしか得られなかったことは前記認定のとおりである。 b しかし,他方で,前記前提となる事実及び証拠(乙52,証人E2)によれば,ワーキンググループは,ベーカリーカフェについて,①本件店舗の所在ビルは,平成9年1月当時,地下鉄a町駅の真上に新築される予定の大型ビルであり,斬新性,話題性に富んでいたこと,②本件店舗の視認性は,道路から多少奥まってはいるが,道路から視認すること自体は可能であったこと,③a町の就業人口は4万人を超えていたこと,④a町駅の乗降客数は1日あたり11万人を超えており,そのうち約7万6000人が本件店舗側の出口を通行すると推計されること,⑤本件店舗の隣の店の店前通行量は,終日で約5万7000人であったこと,⑥来店者比率は本件店舗の近くの飲食店で5.48%であったこと,以上の事実を確認した上で,本件店舗の店前通行量を約4万人と推計し,来店者比率については,本件店舗の視認性の悪さにかんがみて,セルフサービス型のコーヒーショップを出店するに足る最低限度である3%に抑えて評価したことが認められる。また,パブレストランについて,ワーキンググループは ては,本件店舗の視認性の悪さにかんがみて,セルフサービス型のコーヒーショップを出店するに足る最低限度である3%に抑えて評価したことが認められる。また,パブレストランについて,ワーキンググループは,前記①ないし⑥の事実に加え,a町の立地条件や大規模な営業活動,出資各社のネームバリューによる店舗の話題性等を勘案して,売上げを予測したことが認められる。 そうとすれば,被告Y3がD3に対して示した売上げ予測は,客観的な根拠事実に基づき,本件店舗の有利な部分も不利な部分もともに評価して行われたと認められるから,予測の手法が明白に相当性を欠いたものであるとはいえず,かつこれに用いた基礎数値も,客観的根拠を有するものであったから,合理的な手法による予測であったと認めるのが相当である。 c これに対し,Zは,①a町はマーケット規模が小さい割に競合店が多く,出店する商圏として不適切であること,②本件店舗が道路から奥まっていること,③店前通行量も実際には本件店舗の隣の店の通行量の約1割である5700人程度しかないこと等からすれば,被告らの売上げ予測は,調査不足のために客観的根拠を欠く不当なものであった旨意見を述べる(甲48)が,①についてはa町は競合店も多いが通行量も多く,マーケット規模は東京の中でもかなり大きいことは公知の事実であり,②については被告らもマイナス要因として売上げ予測に反映させているし,③についてはそもそもその客観的根拠が不明であるから,同人の意見を採用することはできない。 d 以上によれば,被告Y3が原告に対して示した売上げ予測は,合理性を有するものであり,原告の判断を誤らせるおそれが著しく大きい不合理なものであったとはいえないから,被告Y3ら,同Y2,同Y1の売上げ予測についての説明義務違反に関する原告の主張には,理由がない。 (イ るものであり,原告の判断を誤らせるおそれが著しく大きい不合理なものであったとはいえないから,被告Y3ら,同Y2,同Y1の売上げ予測についての説明義務違反に関する原告の主張には,理由がない。 (イ) 総事業費予測について前記前提となる事実のとおり,被告Y3は,D3に対し,本件店舗の総事業費として,2億円で抑えられると説明したことはなく,平成9年2月3日,2億6734万7000円が必要となるとの予測を示したのが最終の予測であったと認められるところ,実際に原告が支出したのは,2億2812万円であった。 そうとすれば,実際の総事業費は,個々の事業費において若干の誤差があったとしても,予測の範囲内で収まっており,被告Y3が示した総事業費予測には何ら問題がなかったというべきである。 したがって,被告Y3ら,同Y2,同Y1の総事業費予測についての説明義務違反に関する原告の主張にも理由がない。 イ情報等提供義務違反の有無についてフランチャイズ契約においては,フランチャイザーが,あらかじめ特定の商標,サービスマークその他の標識を設定し,同一のイメージのもとに統一的な経営ノウハウを用いて事業を運営できる程度のシステムを構築した上で,このシステムを一定の対価のもとにフランチャイジーに利用させることとされている。したがって,フランチャイザーは,フランチャイジーを勧誘するに当たって,フランチャイズシステムを構築すべき義務と,フランチャイジーがフランチャイズ店舗を運営するために必要なノウハウを確立して,これをフランチャイジーに提供するべき義務を負うのは当然である。 しかしながら,フランチャイズ事業は,必ずしもある事業者が直営店によって複数の店舗を展開し,事業自体が一定の規模に至ってからでないと開始できないものではなく,場合によっては第1号店からフラン る。 しかしながら,フランチャイズ事業は,必ずしもある事業者が直営店によって複数の店舗を展開し,事業自体が一定の規模に至ってからでないと開始できないものではなく,場合によっては第1号店からフランチャイズ契約によって開店することもあり得る(乙52,証人E2参照)。かかる場合には,フランチャイザーが完成した形でのフランチャイズシステムを有することはなく,ノウハウについても修正の余地が多分に存在するのであって,確立したフランチャイズシステムやノウハウがなくとも,第1号店の開店までに,統一的なシステムのイメージが確定し,ある程度実践に耐えうるノウハウが提供されれば,フランチャイザーの義務は果たされたものと解するべきである。 本件でも,フランチャイズチェーン「B」は本件店舗が第1号店であったのだから,被告Y1が,上記の程度のフランチャイズシステム及びノウハウを確立し,これを提供できていたかどうかが問題となる。 (ア) フランチャイズシステムの構築について前記前提となる事実及び証拠(甲2,乙48)によれば,被告Y1は,本件店舗の開店までに,本件フランチャイズ事業についてBという名称を考案し,ロゴを作成し,事業コンセプト,メニュー,内装及び外装のデザインを確定した上で,出資各社の協力により,飲食材の仕入先を確立していたことが認められる。 かかる事実からすれば,被告Y1は,本件店舗の開店以前に,フランチャイズシステムの重要部分については確立しており,統一的なシステムのイメージは確定していたものと解される。 したがって,フランチャイズシステムの構築に関する被告Y1,同Y2,同Y3らの義務違反についての原告の主張には理由がない。 (イ) ノウハウの確立及び提供について確かに,前記前提となる事実のとおり,本件店舗の開店当日になって,Nが突然辞表を る被告Y1,同Y2,同Y3らの義務違反についての原告の主張には理由がない。 (イ) ノウハウの確立及び提供について確かに,前記前提となる事実のとおり,本件店舗の開店当日になって,Nが突然辞表を提出し,その時点で原告の本件店舗の経営に混乱が生じたことが認められる。 しかし,被告Y1は,本件店舗の開店までに,①メニューの構成・価格について綿密な検討を行い,人気の高いものを選択したこと,②出資各社からベーカリーカフェ及びパブレストランの運営についてのノウハウを得たこと,③支配人,店長ないし料理長として,フランチャイズ事業において十分な経験を有するN,Q,S及びPを本件店舗に派遣したこと,④②のノウハウをもとに,Nに詳細なマニュアルを作成させ,一応実践に耐えうる形にまで発展させたこと,⑤Nらの指導によって,店員の教育を行ったこと,以上の事実が認められる。 してみると,被告Y1は,ノウハウについても,本件店舗の開店の段階では,実践に耐えうるものを確立し,これを原告に提供していたものと認めるのが相当である。 したがって,ノウハウの確立及び提供に関する被告Y1,同Y2,同Y3らの義務違反についての原告の主張にも理由がない。 ウ以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,争点(1)に関する原告の主張には理由がない。 (2) 争点(2)についてア任務懈怠行為の有無原告は,被告Y1取締役らが被告Y3らをして原告に対する不当な勧誘を行わせたこと,並びに,被告Y1取締役らが,被告Y1をして原告に対してフランチャイズシステム及びノウハウを提供できるようにさせなかったことについて任務懈怠行為があると主張する。 しかし,前記(1)で認定説示のとおり,被告Y3らの勧誘は不当とは認められず,また,被告Y1は原告に対して一応のフランチャイズシステ るようにさせなかったことについて任務懈怠行為があると主張する。 しかし,前記(1)で認定説示のとおり,被告Y3らの勧誘は不当とは認められず,また,被告Y1は原告に対して一応のフランチャイズシステムを構築して,実践に耐えうるノウハウを提供したことが認められるから,原告の主張は失当であるといわざるを得ない。 イしたがって,その余の点について判断するまでもなく,争点(2)に関する原告の主張にも理由がない。 第4 結論以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないから,これを棄却すべきである。 なお,原告は,平成13年10月12日の本件第8回口頭弁論期日において,原告と被告Y1との間で平成10年11月の10日分の家賃248万0515円を清算する合意が成立したとして,この合意に基づく請求を追加的に併合する旨の訴えの変更を申し立てたが,同申立ては,本件口頭弁論を終結することが予定されていた同期日において突然にされたものであり,これにより著しく訴訟手続を遅滞させることとなることが明らかであるから,これを許さないこととするのが相当である。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第1部裁判長裁判官小磯武男 裁判官坂口公一裁判官大谷太

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