令和6年1月22日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和4年(ワ)第70139号特許を受ける権利の確認請求事件(第1事件)令和5年(ワ)第70009号特許を受ける権利の確認請求事件(第2事件)口頭弁論終結日令和5年10月27日判決原告株式会社BiomedicalSolutions同訴訟代理人弁護士土岐敦司清水亜希多田啓太郎田中宏樹野中啓孝花房裕志小幡久樹柳田駿第1事件被告 A(以下「被告A」という。)第1事件被告株式会社SG-1Medical(以下「被告会社」という。)第2事件被告 B(以下「被告B」という。)被告ら訴訟代理人弁護士畑中鐵丸伊藤敬洋千葉喬義 主文 1 原告と被告会社との間において、別紙発明目録記載1-2の発明について、原告が特許を受ける権利を有することを確認する。 2 原告のその余の訴えをいずれも却下する。 3 訴訟費用は、原告と 告と被告会社との間において、別紙発明目録記載1-2の発明について、原告が特許を受ける権利を有することを確認する。 2 原告のその余の訴えをいずれも却下する。 3 訴訟費用は、原告と被告会社との間に生じたものは、これを2分し、その1を被告会社の負担とし、その余を原告の負担とし、原告と被告Aとの間に生じたもの及び原告と被告Bとの間で生じたものは、全て原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 第1事件⑴ 原告と被告Aとの間において、別紙発明目録記載1-1の発明について、原告が特許を受ける権利を有することを確認する。(請求1-1)⑵ 原告と被告会社との間において、別紙発明目録記載1-2の発明について、原告が特許を受ける権利を有することを確認する。(請求1-2)⑶ 原告と被告会社との間において、別紙発明目録記載1-3の発明について、原告が特許を受ける権利を有することを確認する。(請求1-3) 2 第2事件原告と被告Bとの間において、別紙発明目録記載2の発明について、原告が特許を受ける権利を有することを確認する。(請求2)第2 事案の概要1⑴ 第1事件は、原告が、別紙発明目録記載1―1ないし1-3の各発明(以下、符号に従い、順に「本件発明1-1」、「本件発明1-2」などといい、併せて「本件各発明1」という。)は、被告Aが原告在職中にした職務発明であり、原告がその特許を受ける権利を有しているにもかかわらず、本件発明1-1については被告Aが、本件発明1-2及び1-3については、被告会社がそれぞれ原告に無断で出願をしたものであると主張して、本件発明1-1については被告Aとの間において、本件発明1-2及び1-3については被告会社との間において、それぞれ原告が特許を受ける権利を有すること れぞれ原告に無断で出願をしたものであると主張して、本件発明1-1については被告Aとの間において、本件発明1-2及び1-3については被告会社との間において、それぞれ原告が特許を受ける権利を有すること の確認を求める事案である。 ⑵ 第2事件は、原告が、別紙発明目録記載2の発明(以下、「本件発明2」という。)は、被告Bが原告在職中にした職務発明であり、原告がその特許を受ける権利を有しているにもかかわらず、被告Bが原告に無断で出願をしたものであると主張して、本件発明2につき、被告Bとの間において、原告が特許を受ける権利を有することの確認を求める事案である。 ⑶ 本件発明1-1、本件発明1-3及び本件発明2に係る各出願は、国際特許出願であるのに対し、本件発明1-2に係る出願は、国内特許出願である。 このうち、上記各国際特許出願については、指定国においても国内移行手続が行われずにいずれも取下擬制がされており(第1回弁論準備手続調書参照)、確認の利益についても争点とされている。他方、本件発明2については、被告は、その職務発明性を争っていない。したがって、職務発明性が争点とされるのは、本件各発明1に限られる。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実をいう。なお、証拠を摘示する場合には、特に記載のない限り、枝番を含むものとする。また、第1事件において提出された証拠は、単に「甲1」などと記載し、第2事件において提出された証拠は、「第2事件甲1」などと記載する。)⑴ 当事者ア原告は、低侵襲治療機器の開発、医療機器のデザイン設計及び設計評価並びにステントのデザイン設計及び設計評価等の事業を行う医療機器メーカーである。(甲8)イ被告A被告Aは ア原告は、低侵襲治療機器の開発、医療機器のデザイン設計及び設計評価並びにステントのデザイン設計及び設計評価等の事業を行う医療機器メーカーである。(甲8)イ被告A被告Aは、平成24年6月に原告を設立し、平成25年5月1日から令和3年9月15日までは原告の代表取締役の地位に、同月16日から令和4年3月3日までは原告の取締役の地位にあった者である。 ウ被告会社 被告会社は、医療機器の研究・開発、医療機器のデザイン設計及び設計評価の事業等を商業登記簿上の目的とする医療機器メーカーである。 (甲9) 被告会社は、令和2年12月25日に被告Aによって設立された会社であり、被告Aは、令和3年2月23日まで被告会社の代表取締役の地位にあった。(甲9、弁論の全趣旨)エ被告B被告Bは、平成28年7月から令和3年11月までの間は、原告の研究開発部長として、同年12月以降は、原告との間で業務委託契約を締結し、原告の医療機器開発業務に従事していた者である。(第2事件甲1、第2事件甲8)⑵ 本件各発明についての出願経過ア本件発明1-1に係る出願被告Aは、令和3年7月1日、次のないしの各出願を基礎出願として、本件発明1-1に係る国際特許出願(以下「本件PCT出願1」という。)をした。なお、本件PCT出願1においては、我が国も指定国に含まれている。(以上につき、甲2、3、弁論の全趣旨) 特願2020-115956(優先日:令和2年7月3日) 特願2020-123924(優先日:令和2年7月20日) 特願2020-176496(優先日:令和2年10月21日)イ本件発明1-2に係る出願 特願2020-123924(優先日:令和2年7月20日) 特願2020-176496(優先日:令和2年10月21日)イ本件発明1-2に係る出願 被告Aは、令和3年1月27日、本件発明1-2に係る国内特許出願をした。 被告Aは、遅くとも令和3年7月7日までに、本件発明1-2に係る特許を受ける権利を、被告会社に譲渡した。 (以上につき、甲4、5、弁論の全趣旨)ウ本件発明1-3に係る出願被告会社は、令和3年7月7日、本件発明1-2に係る上記イの国内特許出願を基礎出願として、本件発明1-2に係る国際特許出願(以下「本件PCT出願2」という。)をした。なお、本件PCT出願2においては、我が国は指定国には含まれていない。(甲6、7)エ本件発明1-2に係る補正被告会社は、令和5年2月6日付け手続補正書により、本件PCT出願2に係る特許請求の範囲を補正した(以下、当該補正を「本件補正」という。なお、本件発明1-2は、この補正後の発明である。)。(弁論の全趣旨)オ本件発明2に係る出願被告Bは、令和2年6月2日、本件発明2に係る国際特許出願(以下「本件PCT出願3」といい、本件PCT出願1及び2と併せて「本件各PCT出願」という。)をした。なお、本件PCT出願3においては、我が国は指定国には含まれていない。(第2事件甲4、第2事件甲5)⑶ 原告における職務発明等取扱規定について原告の職務発明等取扱規定3条1項においては、原告は、職務発明等を行った従業員等の特許等を受ける権利を承継する旨定められている。(甲1)⑷ PCT出願に係る国内移行手続ア被告Aは、 原告の職務発明等取扱規定3条1項においては、原告は、職務発明等を行った従業員等の特許等を受ける権利を承継する旨定められている。(甲1)⑷ PCT出願に係る国内移行手続ア被告Aは、本件PCT出願1につき、日本国を含め、いずれの国についても、国内移行の手続を取らなかった。そして、本件PCT出願1のうち、日本国を指定国とする出願については、令和5年6月5日付けで、指定した期間内に国内書面の提出がなかったとして、出願却下処分がされた。 (乙22、弁論の全趣旨)イ被告会社は、本件PCT出願2につき、いずれの国についても、国内移 行の手続を取らなかった。(弁論の全趣旨)ウ被告Bは、本件PCT出願3につき、いずれの国についても、国内移行の手続を取らなかった。(弁論の全趣旨)⑸ 本件における審理経過ア令和5年3月2日における第1回口頭弁論期日において、第1事件及び第2事件に共通する審理計画が定められ、①被告らは、本件発明1につき、同年4月17日までに、職務発明性に係る反論を出し尽くすこと、②被告らは、上記に対する原告の再反論を踏まえ、同年6月9日までに職務発明性に係る再々反論をすること、③技術説明会における口頭議論及び説明会資料のほかには、職務発明性に関し主張立証はないことが確認された。 イその後、上記審理計画に従い、被告らは、職務発明性に係る反論及び再々反論を行い、令和5年8月22日における第1回弁論準備手続において、技術説明会が実施された。また、同手続において、被告らは、そのほかに主張立証はないことを改めて確認した。 ウ当裁判所は、令和5年10月2日における第2回弁論準備手続において、第1事件及び第2事件に係る心証開示を行った。 エ令和5年10 そのほかに主張立証はないことを改めて確認した。 ウ当裁判所は、令和5年10月2日における第2回弁論準備手続において、第1事件及び第2事件に係る心証開示を行った。 エ令和5年10月27日における第1事件の第2回口頭弁論期日において、被告A及び被告会社は、同月25日付準備書面⑶及び⑷の陳述を希望し、その理由として、訴訟代理人の交代を受け、改めて検討したところ、追加の主張立証の必要があると考えたためである旨述べた。 これに対し、原告は、上記各準備書面に記載された主張を行うことは、訴訟法上の信義則に反し、また、時機に後れた攻撃防御方法の提出として却下されるべきである旨申し立てた。 (以上につき、各口頭弁論調書及び各弁論準備手続調書) 3 関連する条約の定め⑴ 欧州特許付与に関する条約(以下「EPC条約」という。) ア第60条(欧州特許を受ける権利)⑴ 欧州特許を受ける権利は、発明者又はその権利承継人に属する。発明者が従業者である場合は、欧州特許を受ける権利は、従業者が主に雇用されている国の法律に従って決定される。従業者が主に雇用されている国を決定することができない場合に、適用されるべき法律は、従業者が属している使用者の営業所のある国の法律とする。 ⑵ 2人以上の者が互いに独立して発明をした場合は、欧州特許を受ける権利は、最先の出願日を有する欧州特許出願をした者に属する。ただし、最先の出願が公開されている場合に限る。 ⑶ 欧州特許庁における手続において、出願人は、欧州特許を受ける権利を行使する権利を有するものとみなされる。 イ第61条(欧州特許を受ける権利を有していない者による欧州特許出願)⑴ 最終的な決定によって、出願人以外の者が欧州特許の付 特許を受ける権利を行使する権利を有するものとみなされる。 イ第61条(欧州特許を受ける権利を有していない者による欧州特許出願)⑴ 最終的な決定によって、出願人以外の者が欧州特許の付与を受ける権利を有すると判断された場合は、その者は、施行規則に従って次のことをすることができる。 ⒜ 出願人に代わり欧州特許出願を自己の出願として手続を進めること⒝ 同じ発明について新たな特許出願をすること、又は⒞ 欧州特許出願が拒絶されるべき旨の請求をすることウ第153条(指定官庁及び選択官庁としての欧州特許庁)⑴ 欧州特許庁は、⒜ PCTが効力を発生していて、国際出願において指定されており、かつ、出願人がその国際出願において欧州特許を受けることを希望する本条約の締約国に対して指定官庁となり、⒝ 出願人が⒜により指定された国を選択した場合は、選択官庁となる。 ⑵ 欧州特許庁が指定官庁又は選択官庁であり、かつ、国際出願日が与えられた国際出願は、正規の欧州出願とする(Euro-PCT出願)。 (以下略)⑵ 欧州特許付与に関する条約の施行規則(以下「EPC施行規則」という。)ア 14条(手続の中止)⑴ 第三者が、EPC条約第61条⑴の意味における決定を求めて、出願人を相手とする訴訟手続を開始した旨の証拠を提出したときは、その第三者が欧州特許庁に対し、書面をもって付与手続の続行についての同意を伝えない限り付与手続は停止する。(以下略)イ 16条(第61条⑴に基づく手続)⑴ 欧州特許を受ける権利を有する者は、次の条件が満たされる場合に限り、第61条⑴に基づく救済手段を利用することができる。 (以下略)イ 16条(第61条⑴に基づく手続)⑴ 欧州特許を受ける権利を有する者は、次の条件が満たされる場合に限り、第61条⑴に基づく救済手段を利用することができる。 ⒜ 同人が、自らの権利を承認する決定が確定してから3月以内に、それを行うこと、及び⒝ 欧州特許が未だ付与されていないこと⑵ 当該救済手段は、欧州特許出願において指定されている締約国であって、その国に関して決定が行われ若しくは承認されたもの又は「承認に関する議定書」に基づいて承認されなければならないものに限り適用する。 ⑶ 特許協力条約(以下「PCT条約」ともいう。)第11条(国際出願日及び国際出願の効果)⑴ 受理官庁は、次の要件が受理の時に満たされていることを確認することを条件として、国際出願の受理の日を国際出願日として認める。 (i) 出願人が、当該受理官庁に国際出願をする資格を住所又は国籍上の理由により明らかに欠いている者でないこと。 (ⅱ) 国際出願が所定の言語で作成されていること。 (ⅲ)国際出願に少なくとも次のものが含まれていること。 ⒜ 国際出願をする意思の表示 ⒝ 少なくとも一の締約国の指定⒞ 出願人の氏名又は名称の所定の表示⒟ 明細書であると外見上認められる部分⒠ 請求の範囲であると外見上認められる部分⑵⒜ 受理官庁は、国際出願が⑴に掲げる要件を受理の時に満たしていないと認める場合には、規則の定めるところにより、出願人に対し必要な補充をすることを求める。 ⒝ 受理官庁は、出願人が規則の定めるところにより⒜の求めに応ずる場合には、当該補充の受理の日を国際出願日として認める。 ⑶ 第64条⑷の規定に従うことを条件として、⑴(i)か することを求める。 ⒝ 受理官庁は、出願人が規則の定めるところにより⒜の求めに応ずる場合には、当該補充の受理の日を国際出願日として認める。 ⑶ 第64条⑷の規定に従うことを条件として、⑴(i)から(ⅲ)までに掲げる要件を満たし、かつ、国際出願日の認められる国際出願は、国際出願日から各指定国における正規の国内出願の効果を有するものとし、国際出願日は、各指定国における実際の出願日とみなす。 ⑷ ⑴(i)から(ⅲ)までに掲げる要件を満たす国際出願は、工業所有権の保護に関するパリ条約にいう正規の国内出願とする。 4 争点整理の経過等⑴ はじめに前記事案の概要1⑶のとおり、本件発明1-1、本件発明1-3及び本件発明2に係る各出願は、国際特許出願であるのに対し、本件発明1-2に係る出願は、国内特許出願である。このうち、上記各国際特許出願については、いずれも指定国においても国内移行手続が取られなかったため、確認の利益についても争点とされている。他方、本件発明2については、被告は、その職務発明性を争っていない。したがって、職務発明性が争点とされるのは、本件各発明1に限られるところ、第1事件及び第2事件の争点は、次のとおり特定されている。 ⑵ 争点の特定等 ア第1事件について本件発明1-3は、本件発明1-2に係る国内特許出願を基礎出願として、PCT出願が行われたものであるところ、本件発明1-2と本件発明1-3には、本件補正の限度で内容に差異が存在するものの、双方当事者は、本件発明1-2の職務発明性については、本件発明1-3の職務発明性に係る判断に従うことに同意した。そして、本件発明1-3は、複数の請求項から構成されるところ、双方当事者は、そのうち請求項1のみに基づき、本件発明1-3全体の については、本件発明1-3の職務発明性に係る判断に従うことに同意した。そして、本件発明1-3は、複数の請求項から構成されるところ、双方当事者は、そのうち請求項1のみに基づき、本件発明1-3全体の職務発明性を判断することに同意した。 そのため、本件発明1-2の職務発明性の争点の内容は、本件発明1-3の請求項1に関するものと同一である。 イ第2事件について第2事件における争点は、本件請求2に係る訴えの利益の有無のみであることが確認された(第2事件に係る第1回弁論準備手続調書参照)。 ⑶ 以上によれば、本件の争点は、次のとおりとなる。 ア訴えの利益の有無(請求1-1、同1-3、同2において共通するもの。 争点1)イ本件発明1-1の職務発明性(争点2)ウ本件発明1-3の職務発明性(同1-2にも共通するもの。争点3)⑷ 時機に後れて提出された攻撃防御方法についてア事実経過① 被告らは、当事者双方の主張立証が終了し心証開示が行われた後、訴訟代理人を代えて、第1事件に係る準備書面⑶及び準備書面⑷並びに第2事件に係る準備書面⑷を提出した。 ② これに対し、原告は、従前の審理計画に鑑み、被告らが上記各準備書面に記載された主張を行うことは、訴訟上の信義則に反し、また、時機に後れた攻撃防御方法の提出として却下されるべきである旨主張した。 ③ 上記の主張を踏まえ、被告らは、第2事件に係る準備書面⑷を陳述しないとする一方、第1事件に係る準備書面⑶及び準備書面⑷を陳述した。 イ時機後れの主張に対する判断前記前提事実及び弁論の全趣旨によれば、裁判所は、当事者双方と協議をし、その結果を踏まえて審理の計画を定めたところ、当該審理の計画によれば、被告らは、職務発明 イ時機後れの主張に対する判断前記前提事実及び弁論の全趣旨によれば、裁判所は、当事者双方と協議をし、その結果を踏まえて審理の計画を定めたところ、当該審理の計画によれば、被告らは、職務発明性につき、反論及び再々反論をした上、その後の技術説明会における口頭議論をもって主張立証を終了するものと定められ、その後、裁判所は、当該主張立証終了後心証開示をして和解協議をし、和解が困難な場合には、第2回口頭弁論期日において弁論を終結することとした。 上記審理の計画の定めにかかわらず、被告らは、第2回口頭弁論期日において、訴訟代理人を代えた上、第1事件に係る準備書面⑶及び⑷を陳述したところ、上記認定に係る審理計画によれば、被告らによる同各準備書面の陳述は、当事者双方と協議の上で定められた審理の計画に明らかに反するものであり、これに対する原告らによる反論の機会を要することからすると、終結予定とされた弁論を直ちに終結することができないことになり、本件訴訟の完結を遅延させることも明らかである。 これらの事情の下においては、上記各準備書面に記載された主張は、原告の申立てにより、いずれも時機に後れた攻撃防御方法として、これらを却下するのが相当である。 第3 争点に対する当事者の主張 1 争点1(訴えの利益の有無)について(被告らの主張)⑴ PCT出願は、PCT条約及び同条約に基づく国際出願等に関する法律に基づく制度であり、PCT条約の締結国における国内特許の取得を簡素化するため、その出願に係る願書手続を一本化するものである。 このように、PCT出願は、出願を簡素化する手続であるため、国際出願に係る発明が、その願書において出願人が特許の取得を希望するものとして指定した条約締結国のそれぞれにおい このように、PCT出願は、出願を簡素化する手続であるため、国際出願に係る発明が、その願書において出願人が特許の取得を希望するものとして指定した条約締結国のそれぞれにおいて特許として認められるか否かは、最終的には当該締結国の特許庁の実体的な審査に委ねられている。すなわち、出願人が真の権利者であるかという問題については、属地主義に照らし、各国の実体法に基づき定められるべき事柄である。 そして、仮に日本の裁判所が、日本法に基づき、本件発明1-1、1-3及び2の職務発明性を認め、原告にそれらの特許を受ける権利が帰属すると判断し、これを受けて出願受理官庁が出願人名を原告に改める手続補正を行ったとしても、指定国特許庁はそれに拘束されないため、指定国において、別途、特許を受ける権利の帰属主体について実体判断を行うことになる。そうすると、被告らとしても、当該指定国において、再度、職務発明性を争うことが可能となるため、日本以外に対する国際出願について、日本国内で特許を受ける権利の確認訴訟を行ったとしても、紛争の解決には何ら資するものではない。 さらに、被告Aは、本件PCT出願1につき、日本国を含め、期限内に指定国への国内移行手続を行っておらず、我が国においては、出願却下処分がされている。また、被告会社は本件PCT出願2につき、被告Bは本件PCT出願3につき、いずれも指定国への国内移行手続を行っていない。 そうすると、本件各PCT出願については、いずれの指定国においても、今後登録される見込みがないため、いずれも原告に確認の利益はない。 ⑵ 原告は、ドイツ人弁護士の意見書(甲35)を根拠として、日本の判決が少なくとも1か国のEPC締約国で承認されれば、原告は、EPC条約第61条1項⒝に基づく新た れも原告に確認の利益はない。 ⑵ 原告は、ドイツ人弁護士の意見書(甲35)を根拠として、日本の判決が少なくとも1か国のEPC締約国で承認されれば、原告は、EPC条約第61条1項⒝に基づく新たな欧州特許出願をすることが可能である旨主張する。 しかしながら、上記にいう「日本の判決」というのは、我が国における特許を受ける権利の確認判決をいうものと解されるところ、本件のように、既 に我が国における特許を受ける権利が消滅し、訴えの利益を欠くため確認判決を得ることができなくなった場合までを念頭に置いたものではない。 また、上記意見書が論ずるものは、欧州特許出願に関する権利であり、「PCT出願に係る特許を受ける権利」ではない。 (原告の主張)⑴ 本件各PCT出願は、いずれの指定国においても、国内移行手続期間内に国内移行がされていないため、通常の手続による限り、PCT出願に基づく各国出願は行われないことになる。しかし、そのような場合であっても、原告は、我が国における裁判手続を通じて、PCT出願に係る特許を受ける権利を有する旨の確認判決を得ることによって、新たな欧州特許出願を行うことができる。 ⑵ 条約の定め欧州特許制度によれば、発明者又はその権利継承者は欧州特許の付与を受ける権利を有する(EPC条約第60条1項)。しかしながら、欧州特許庁には、発明者又はその権利承継人に関する紛争を判断する権限はなく、出願人は欧州特許の付与を受ける権利を有するものとみなされる(EPC条約第60条3項)。そして、欧州特許出願の権利に関する紛争は、その一切を各国の裁判所で行うこととされ、特許を受ける権利に関する訴訟の係属中は、EPOは、当該欧州特許出願に係る付与手続を停止することとなる(EPC施行規則14条1項)。 各国の 関する紛争は、その一切を各国の裁判所で行うこととされ、特許を受ける権利に関する訴訟の係属中は、EPOは、当該欧州特許出願に係る付与手続を停止することとなる(EPC施行規則14条1項)。 各国の裁判所において確定判決が得られた場合、原告には3つの選択肢が与えられるところ、そのうちの1つに、「同じ発明について新たな特許出願をすること」がある(EPC条約第61条1項⒝)。 そして、EPC条約第61条1項所定の救済手段を受けるために必要な条件について定めたEPC施行規則第16条によれば、欧州特許出願において指定されたEPC締約国であって、①特許を受ける権利に関する判決が行わ れた国、②特許を受ける権利に関する判決が承認された国、又は③1973年の「承認に関する議定書」に基づき特許を受ける権利に関する判決を承認しなければならない国、以上のいずれかである場合には、上記救済手段を受けることができることになる。 ⑶ ドイツにおいて我が国の判決が承認されること⑵によれば、我が国の判決が少なくとも1か国のEPC締約国で承認されれば、原告は、EPC条約第61条1項⒝に基づき、基礎出願について優先権主張をして新たな欧州特許出願をすることが可能となるところ、ドイツの裁判所は、ドイツ民事訴訟法(ZPO)328条1項所定の例外規定に該当しない限り、外国の判決を自動的かつ法律上当然に承認することとなる。 すなわち、①外国の裁判所にドイツ法規に基づく管轄権があり、②訴状が適正に被告に送達されており、③相反する判決が存在せず、ドイツ国内で訴訟が提起されておらず、④その判決がドイツの公序に反するものでなく、⑤相手国による判決の相互承認、いわゆる相互主義が担保されていれば、ドイツの裁判所は外国判決を承認することとなる。 そして、ド 提起されておらず、④その判決がドイツの公序に反するものでなく、⑤相手国による判決の相互承認、いわゆる相互主義が担保されていれば、ドイツの裁判所は外国判決を承認することとなる。 そして、ドイツ法の裁判管轄権に関する一般規則を適用すれば、日本の裁判所に管轄権が認められるため、我が国の裁判所の判決は、ドイツの裁判所においても承認されることとなる。 2 争点2(本件発明1-1の職務発明性)について(原告の主張)被告Aが本件PCT出願1を行った令和3年7月1日当時、被告Aは原告の役員であったところ、次のとおり、本件発明1-1は職務発明に該当する。 ⑴ 使用者等の業務範囲に属することア原告は、「低侵襲治療機器の開発」、「医療機器のデザイン設計及び設計評価」、「ステントのデザイン設計及び設計評価」等を事業の目的とする株式会社であり、現に当該目的の事業を行っている(甲8、12)。 そして、本件発明の内容は、デリバリワイヤと係止ステント等から成る生体管腔中での治療デバイスのデリバリシステムに関するもの(別紙発明目録1参照)であり、「低侵襲医療機器の開発」に含まれるため、正に上記事業に含まれる。 また、原告が株式会社JIMRO(以下「JIMRO」という。)との間で締結した経営委任契約(乙2。以下「本件経営委任契約」という。)及び原告の第3次中期経営計画(甲22)等には、頭蓋内動脈狭窄症治療用ステントが含まれていることからしても、頭蓋内動脈狭窄症治療用ステントは、原告が現に行っている業務に含まれる。さらに、原告の事業計画等にも、頭蓋内動脈狭窄症治療用ステントは含まれている。 イまた、①本件経営委任契約(乙2)においては、頭蓋内動脈狭窄症治療用ステント開発事業 っている業務に含まれる。さらに、原告の事業計画等にも、頭蓋内動脈狭窄症治療用ステントは含まれている。 イまた、①本件経営委任契約(乙2)においては、頭蓋内動脈狭窄症治療用ステント開発事業を推進することが原告の企業価値の最大化に寄与することが記載されていること、②IGAHealthcare株式会社(以下「IGA」という。)に対し、「動脈狭窄症治療用ステント」の開発を業務委託していること、③有限会社ネイションワイド(以下「ネイションワイド」という。)に対し、「頭蓋内ステントの設計業務」及び「頭蓋内ステントの設計図作成業務」を業務委託していることからすれば、頭蓋内動脈狭窄症治療用ステントの開発が原告の業務内容とされ、当時の代表者である被告Aがその旨を認識していたことは明らかである。 ウ被告らの主張に対する反論 被告らは、「業務範囲」につき、原告の具体的な業務内容に基づき検討する必要がある旨主張するが、同主張は、業務の内容を細分化する独自の見解に依拠するものであり、相当ではない。 被告らの主張を前提としても、原告は、「ステント型血栓除去デバイス」の設計開発及び販売を現に業務として行っているところ、本件発明1は、「治療デバイス」(請求項1)として、ステントリトリーバ等の 「血栓除去デバイス」(請求項14)を含んでいる。このように、本件発明1は、「ステント型血栓除去デバイス」と一体となって生体管腔内における治療のために機能するものであり、両者は同一の業務分野に含まれるものである。 被告らは、令和元年12月9日に開催された原告の取締役会において、「「頭蓋内動脈狭窄症治療用ステント」開発事業を事業化しない旨の決議がなされた」という議事録の記載(乙3)を根拠に、頭蓋内動脈狭窄 被告らは、令和元年12月9日に開催された原告の取締役会において、「「頭蓋内動脈狭窄症治療用ステント」開発事業を事業化しない旨の決議がなされた」という議事録の記載(乙3)を根拠に、頭蓋内動脈狭窄症治療用ステントの開発が原告の業務内容であることを否定する。 しかしながら、上記記載は、議長である被告Aがその旨を発言して自ら議事録に記載したものにすぎず、原告の事業に関する決議ではないから、法的にみて、上記のような決議があったということはできない。 被告らは、令和4年7月6日付けの回答書(乙4)の記載を根拠として、頭蓋内動脈狭窄症治療用ステントの開発が原告の業務内容であることを否定する。 しかしながら、同回答書は、本件各PCT出願から1年又は1年半後に作成されたものであり、上記各出願に係る出願日当時の状況を示すものではない。また、上記回答書は、被告Aがその内容を予め指定した上で、当時の原告の代表者であるCに作成を依頼したものであり、その内容は信用性を欠くものである。 ⑵ 従業員等の現在又は過去の職務に属すること発明に至った行為が当該発明者の「職務」に属するとは、発明行為それ自体が職務であることを意味せず、職務の遂行として発明を成した場合を指す。 また、従業者等が使用者から当該発明を完成するよう具体的な命令ないし指示を受けていることまで必要とする趣旨ではなく、当該従業者等の職務内容から見て、当該発明を完成させることが一般に予定ないし期待されていれば足り(東京地判平成14年9月10日判決参照)、代表取締役や専務取締役 として技術部門の最高責任者の地位にあった者には、具体的指示を要さない(最高裁昭和42年第881号同43年12月13日第二小法廷判決・民集22巻13号2972頁参 締役や専務取締役 として技術部門の最高責任者の地位にあった者には、具体的指示を要さない(最高裁昭和42年第881号同43年12月13日第二小法廷判決・民集22巻13号2972頁参照)そして、原告は医療機器メーカーであるところ、被告Aは経営の最高責任者として本件発明1-1を原告のために開発することが当然に期待されていた以上、本件発明1-1は、原告の「現在の職務」に属する発明であったということができる。 (被告らの主張)本件発明1-1は、職務発明には該当しない。 ⑴ 使用者等の業務範囲に属さないことア原告の業務範囲特許法35条所定の「業務範囲」は、法人の定款記載の目的を基準に判断されるものではなく、原告の具体的な業務内容に基づいて検討する必要がある。 そして、以下のとおり、原告の業務範囲は、「ステント型血栓除去デバイス」の設計開発及び販売のほか、ステント型血栓除去デバイスを脳血管内の病変部に運ぶ「マイクロカテーテル」及び脳領域以外で使用する「ガイディングカテーテル」の設計開発にとどまるというべきである。 原告が現に行っている業務は、「急性期虚血性脳梗塞(原則として発症後8時間以内)において、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)の経静脈投与が適応外、又はt-PAの経静脈投与により血流再開が得られない患者を対象とし、血流の再開通を図るために使用する」ことを目的とした「ステント型血栓除去デバイス」の設計開発及び販売にとどまる(甲12)。 もともと、原告は、親会社であったJIMROの指示に基づき、「ステント型血栓除去デバイス」及び「頭蓋内動脈狭窄症治療用ステント」 の開発に特化してきた会社である(乙1、2)。 もともと、原告は、親会社であったJIMROの指示に基づき、「ステント型血栓除去デバイス」及び「頭蓋内動脈狭窄症治療用ステント」 の開発に特化してきた会社である(乙1、2)。 そして、原告は、被告Aがその代表取締役の地位にあった当時、Tron FX血栓除去デバイスの事業推進及び改良開発を提案したものの、JIMROが非協力的であったため、原告の事業範囲は実質的に狭められることとなり、令和元年12月9日に開催された原告の取締役会において、「頭蓋内動脈狭窄症治療用ステント」開発事業については、これを事業化しない旨の決議がされたという経緯も存在する(乙3)。 その後、令和2年1月1日には、大塚メディカルデバイス株式会社(以下「大塚メディカル」という。)がJIMROから原告の株式の譲渡を受けたものの、それ以降、原告の業務範囲は、①大塚メディカルの研究・開発支援のほか、②ステント型血栓除去デバイスであるTronFXの設計監理・改良開発となった。そして、本件発明1-1が完成した令和2年6月頃及び本件発明1-2が完成した同年11月頃には、原告は、①大塚メディカルの研究・開発支援の一環として、脳領域以外で使用する「ガイディングカテーテル」及び②ステント型血栓除去デバイスであるTronFXの設計監理・改良開発の一環として、「ステント型血栓除去デバイス」を中心とし、副次的なものとして、ステント型血栓除去デバイスを脳血管内の病変部に運ぶ「マイクロカテーテル」を取り扱っていたものである。 以上のとおり、原告は、本件発明1-1の内容である「遠位スタビライザ」を取り扱っておらず、その予定も全くなかった。 そして、原告は、令和4年7月6日の時点でも、被告Aに対し、「頭蓋内血栓除去デバイス以外の脳血管内治療用等医 発明1-1の内容である「遠位スタビライザ」を取り扱っておらず、その予定も全くなかった。 そして、原告は、令和4年7月6日の時点でも、被告Aに対し、「頭蓋内血栓除去デバイス以外の脳血管内治療用等医療機器の開発事業」が原告の業務に含まれず、今後も実施する予定がない旨の回答をしている(乙4)。 そもそも、原告のような医療機器ベンチャー企業は、1社1製品の開 発に専念し、数年から10年以上にわたって約十億円から数十億円の費用で1つの製品を開発するものである。このように、医療機器の設計開発は極めてハイリスクなものであり、ある特定の治療機器を取り扱うメーカーがこれと一体となって機能する他の製品の開発を行うことは、全く新たな領域の製品を開発するのに等しいほどの重大かつ慎重な判断を伴うものである。 原告がネイションワイドとの間で締結した業務委託契約(甲25。以下「本件業務委託契約」という。)については、当時、原告において、頭蓋内動脈狭窄症治療用ステントを事業化しないことが既定路線となっていたところ、業務委託の内容が一時的に流動的であったことから、従来、「頭蓋内動脈狭窄症治療に向けたステント」の設計業務・設計図作成業務という表現から、「頭蓋内ステント」の設計業務・設計図作成業務という抽象的な表現に差し当たり変更したものにすぎない。そして、実際には、ネイションワイドは、頭蓋内動脈狭窄症治療用ステントの設計を行ってはいない。 イ本件発明が原告の事業に含まれないこと 本件発明1-1は、血管中での「カテーテルデリバリに用いる遠位スタビライザ」(甲3の請求項3参照)であり、別紙図面一覧のとおり、その構成要素である係止ステント3を、小サイズのカテーテル5の遠位端51から解放して血管壁V1に停 「カテーテルデリバリに用いる遠位スタビライザ」(甲3の請求項3参照)であり、別紙図面一覧のとおり、その構成要素である係止ステント3を、小サイズのカテーテル5の遠位端51から解放して血管壁V1に停止させた状態で、大サイズのカテーテル6を遠位側へと前進させることを含むカテーテルデリバリ操作を行い、当該大サイズのカテーテル6に内挿した治療デバイス7を標的位置TP(治療すべき病変部位)へとデリバリするものである。 遠位スタビライザは、アンカーデバイスとも呼ばれ、血管内手技で幅広く使用されるデリバリワイヤと同様、補助デバイスに該当するものである。そして、補助デバイスは、「ステント型血栓除去デバイス」(甲 12)、すなわち治療機器とは使用目的が全く異なるものであり、さらに、一般的名称、特定保健医療材料のいずれにおいても、種類の異なる製品であるため、本件発明1-1は、治療機器である急性期虚血性脳梗塞患者の血流再開通を目的とする「ステント型血栓除去デバイス」への適用も認められておらず、その逆もまた同様である。 また、本件発明1-1は、従来のアンカーデバイスが抱えた課題を解決するための改良発明である。そして、この改良発明が解決する課題は、アンカーデバイスに特有の課題であり、原告が設計開発及び販売する「ステント型血栓除去デバイス」とは、何の技術的関連性も存在しない。 原告は、本件発明1-1が「ステント型血栓除去デバイス」と一体となって生体管腔内における治療のために機能することを根拠に、本件発明1-1が「ステント型血栓除去デバイス」の設計開発及び販売事業に含まれるなどと主張するが、一般に、生体管腔内における治療のために一体となって機能する製品は、治療機器に限らず、非常に様々な医療用品が含まれるのであって、原告 除去デバイス」の設計開発及び販売事業に含まれるなどと主張するが、一般に、生体管腔内における治療のために一体となって機能する製品は、治療機器に限らず、非常に様々な医療用品が含まれるのであって、原告の上記主張は、医療機器の開発の実態にそぐわないものである。 更にいえば、本件発明1-1がステント型血栓除去デバイスとの併用が想定されるという主張自体、誤りである。そもそも本件発明1-1は、サイズの大きなカテーテル交換に関する発明であり、従来ガイドワイヤによって行われていた大サイズのカテーテル交換につき、係止スタントを使用して安全に行うものであるのに対し、ステント型血栓除去デバイスは、血管閉塞部位に送達容易な小サイズのカテーテルに適合する小型治療デバイスであり、ステント型血栓除去デバイスを用いる際には大サイズのカテーテルへの交換を行う必要が存在しないどころか、かえって非常に危険な行為であり、両者を併用することなどあり得ない。 ⑵ 従業員等の現在又は過去の職務範囲に属さないこと 職務発明の要件としての「職務」とは、発明を完成させることが従業者等の職務として一般的に予定され期待されていたかどうかという観点から判断されるべきである。これは、取締役についても同様であり、企業の全業務が直ちに取締役の職務範囲になるものではなく、具体的な状況を考慮して決定される必要がある。 そして、被告Aは、原告在職中に、代表取締役として事業方針を決定する等の大局的な判断を行う立場にあり、個々の発明の完成に直接寄与したり、自発的に研究、発明を行ったりすることは予定されていなかった。 したがって、仮に本件発明が原告の業務範囲に含まれると評価されるような場合であっても、被告Aの職務範囲に属していたということはできない。 に研究、発明を行ったりすることは予定されていなかった。 したがって、仮に本件発明が原告の業務範囲に含まれると評価されるような場合であっても、被告Aの職務範囲に属していたということはできない。 3 争点3(本件発明1-3の職務発明性)(原告の主張)⑴ 使用者等の業務範囲に属することア前記争点2における「原告の主張」欄に記載のとおり、原告の業務範囲は、「低侵襲治療機器の開発」、「医療機器のデザイン設計及び設計評価」、「ステントのデザイン設計及び設計評価」等である。 イそして、本件発明1-3の請求項1は、血管プラグの発明であるところ(甲7)、これはステントそのものであり、原告の業務範囲に含まれる。 すなわち、本件発明1-3の請求項1は、血管に形成された瘤を塞栓する血管プラグ2であって、プッシュワイヤ5と、その遠位側に接続され、瘤に留置される拡張部とを備え、その拡張部は、カテーテルへの収納時には縮径して略筒形となり、非収納時には先端側から外向きにカールする血管プラグ2である。そして、上記にいう「拡張部」とは、ステント4を指し、また、本件発明1-3が解決しようとする課題は、「瘤に対するサイズの自由度が高く且つ拡張部の急激な拡張を抑制した血管プラグ」(段落【0006】)であるところ、本件発明3は、その拡張部であるステント 4の特徴によって上記課題を解決するものである(甲7の図2B、図3A~D)。 以上によれば、本件発明1-3の請求項1は、ステントの発明であることが明らかである。 ⑵ 使用者等の現在又は過去の職務範囲に属すること前記争点2の「原告の主張」欄⑵に記載のとおり、被告Aは経営の最高責任者として本件発明1-3を原告のために開発することが当然に期待されていた以 用者等の現在又は過去の職務範囲に属すること前記争点2の「原告の主張」欄⑵に記載のとおり、被告Aは経営の最高責任者として本件発明1-3を原告のために開発することが当然に期待されていた以上、本件発明1-3は、原告の「現在の職務」に属する発明であったということができる。 (被告らの主張)⑴ 使用者等の業務範囲に属さないことア前記争点2の「被告らの主張」欄に記載のとおり、本件発明1-3が完成した当時の原告の業務範囲は、「ステント型血栓除去デバイス」の設計開発及び販売のほか、ステント型血栓除去デバイスを脳血管内の病変部に運ぶ「マイクロカテーテル」及び脳領域以外で使用する「ガイディングカテーテル」の設計開発にとどまる。 イ本件発明1-3は、血管中での「血管に形成された瘤を塞栓する血栓プラグ」(請求項1)であって、その構成要素である拡張部(ステント)を瘤内で留置させる発明である。すなわち、ステント型血栓除去デバイスは、脳梗塞の治療デバイスであり、脳血管内の血栓にステントを食い込ませ、絡め取ることによって血栓を除去・回収し、血流を再開させることを目的としたものであるのに対し、本件発明1-3の請求項1は、「血管に形成された瘤を塞栓する」との記載からも明らかであるように、脳梗塞とは全く異なる脳動脈瘤という疾患に対し、動脈瘤内部への血液の流入を防ぐことにより、瘤が破裂しないように保護することを目的とするものであり、両者は全く異なるものである。そして、このような目的の相違に照らして、 製品として求められる性能・機能も当然に異なってくるほか、一般的名称、特定保健医療材料のいずれにおいても種類の異なる製品であるため、本件発明1-3は、治療機器である急性期虚血性脳梗塞患者の血流再開通を目的とす められる性能・機能も当然に異なってくるほか、一般的名称、特定保健医療材料のいずれにおいても種類の異なる製品であるため、本件発明1-3は、治療機器である急性期虚血性脳梗塞患者の血流再開通を目的とする「ステント型血栓除去デバイス」への適用も認められておらず、その逆もまた同様である。 また、本件発明1-3は、従来の血栓プラグが抱えた課題を解決するための改良発明である。すなわち、血栓プラグには、①瘤の大きさに適したサイズの製品を準備選択することが煩雑であるという課題や(段落【0004】)、②展開中にメッシュ部のうち既に押し出された部分の拡張力により、残りのメッシュ部が急激に飛び出してしまい、動脈瘤を脆弱にしたり、場合によっては突き破ってしまったりするというリスクがあるという課題(段落【0006】)があったところ、これらの課題は、血栓プラグに特有のものであり、ステント型血栓除去デバイスとは、何の技術的関連性もないものである。 ⑵ 使用者等の現在又は過去の職務範囲に属さないこと前記争点2の「被告らの主張」欄⑵に記載のとおり、被告Aは代表取締役の地位にあり、個々の発明に直接寄与する立場にはなかった以上、仮に本件発明2が原告の業務範囲に含まれると評価されたとしても、被告Aの職務範囲にまで属していたということはできない。 第4 当裁判所の判断 1 訴えの利益の有無(争点1)⑴ EPC条約等の規定等EPC条約61条1項⒝は、最終的な決定によって、出願人以外の者が欧州特許の付与を受ける権利を有すると判断された場合には、当該出願人以外の者は、同じ発明について新たな欧州特許出願をすることができる旨規定している。そして、EPC施行規則16条2項によれば、上記にいう救済手続 は、欧州特許出願において指定さ 該出願人以外の者は、同じ発明について新たな欧州特許出願をすることができる旨規定している。そして、EPC施行規則16条2項によれば、上記にいう救済手続 は、欧州特許出願において指定されている締約国であって、その国に関して決定が行われ若しくは承認されたもの又は「承認に関する議定書」に基づいて承認されなければならないものに限り適用される旨規定している。 上記の各規定を前提として、本件発明1-1、1-3及び2に係る各国際特許出願については、指定国においても国内移行手続が行われずにいずれも取下擬制がされているものの(第1回弁論準備手続調書参照)、原告は、日本の判決において日本法の職務発明の規定に基づく特許を受ける権利が原告に帰属することが確認された場合(本件において被告らは、外国法の職務発明の規定に基づき、特許を受ける権利を具体的に主張するものではない。)には、欧州特許出願において指定されている締約国であるドイツにおいて上記判決が承認されることになるため、当該ドイツの承認判決に基づき、原告は新たな欧州特許出願をすることができるとして、本件請求1-1、1-3及び2には、いずれも訴えの利益がある旨主張する。 しかしながら、各国の特許権は、その成立、移転、効力等につき当該国の法律によって定められ、特許権の効力が当該国の領域内においてのみ認められるものである(最高裁平成7年(オ)第1988号同9年7月1日第三小法廷判決・民集51巻6号2299頁参照)。このような属地主義の原則によれば、我が国の職務発明の規定に基づく特許を受ける権利と、ドイツ法の職務発明の規定に基づく特許を受ける権利とは、それぞれ異なるものといえるから、仮に我が国の職務発明の規定に基づく特許を受ける権利が日本において認められたとしても、ドイツ法の職務発 権利と、ドイツ法の職務発明の規定に基づく特許を受ける権利とは、それぞれ異なるものといえるから、仮に我が国の職務発明の規定に基づく特許を受ける権利が日本において認められたとしても、ドイツ法の職務発明の規定に基づく特許を受ける権利が必ずしもドイツにおいて承認されるものとはいえない。 しかも、本件発明1-1、1-3及び2に係る各国際特許出願については、指定国においても国内移行手続が行われずにいずれも取下擬制がされていることからすると、少なくとも本件においては、そもそも確認の対象となるべき権利関係が存在するものとはいえない。のみならず、原告は、ドイツ法の 職務発明の規定に基づき特許を受ける権利の確認を求めて、ドイツの裁判所に対し訴えを提起することができるのであるから、日本の裁判所に対し日本法に基づく特許を受ける権利の帰属の確認を求めるよりも、端的に、ドイツの裁判所に対し直接ドイツ法に基づく特許を受ける権利の帰属の確認を求めるのが、本件における紛争の解決としては、より有効かつ適切であるといえる。 これらの事情を総合すれば、本件請求1-1、1-3及び2は、その確認の利益を欠くものと認めるのが相当である。 したがって、本件請求1-1、1-3及び2は、その確認の利益を欠くものとして、いずれも却下するのが相当である。 ⑵ 以上によれば、以下においては、請求1-2に限り、本案の判断に必要な検討をすべきところ、争点整理の結果によれば、本件発明1-2の職務発明性は、本件発明1-3(ただし、請求項1に係る発明をいう。以下同じ。)の職務発明性に従うこととされたため、以下、本件発明1-3の職務発明性(争点3)を検討する。 2 本件発明1-3の内容⑴ 本件発明1-3に係る特許の願書に添付された明細書及び図面(甲7。以下「 発明性に従うこととされたため、以下、本件発明1-3の職務発明性(争点3)を検討する。 2 本件発明1-3の内容⑴ 本件発明1-3に係る特許の願書に添付された明細書及び図面(甲7。以下「本件明細書等」という。)には、次のとおりの記載があることが認められる。 ア技術分野「本発明は、血管プラグ及びこれを備えた治療デバイスに関する。」(段落【0001】)イ背景技術「従来、患者の血管内に形成された瘤の破裂を予防するため、瘤の内部にコイルを留置する治療が行われている。近年では、コイルの代わりに血管プラグで瘤を塞栓する治療も行われている。この種の血管プラグとして、 プッシャワイヤと、メッシュ部とを備えた血管プラグが提案されている。 この血管プラグのメッシュ部は、カテーテル内に縮径した状態で収納され、カテーテルから押し出されたときに拡張するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。」(段落【0002】)ウ特許文献「特許文献1:特許第6750045号公報」(段落【0003】)エ発明が解決しようとする課題「血管プラグは、拡張したときのメッシュ部のサイズと瘤の大きさとが適合していないと、瘤を適切に塞栓することが難しくなるだけでなく、それ以外にも不具合を生じやすい。例えば、瘤の大きさに比べてメッシュ部のサイズが小さいと、瘤の内部に血液が入りやすくなるため、瘤の更なる拡張につながるおそれがある。また、瘤の大きさに比べてメッシュ部のサイズが大きいと、メッシュ部の一部が血管側に突出して、血流を阻害するおそれがある。そのため、従来の血管プラグを用いた治療では、サイズの異なる複数の血管プラグを準備したり、その中から最適なサイズの血管プラグを選択し メッシュ部の一部が血管側に突出して、血流を阻害するおそれがある。そのため、従来の血管プラグを用いた治療では、サイズの異なる複数の血管プラグを準備したり、その中から最適なサイズの血管プラグを選択したりする必要があり、施術前の作業が煩雑になるという課題があった。」(段落【0004】)「また、特許文献1に記載の血管プラグ(以下、「従来例の血管プラグ」ともいう)では、以下のような不具合を生じることがある。図6A及び図6Bは、従来例の血管プラグ102を備えた治療デバイス101を用いて分岐部動脈瘤ANにメッシュ部104を留置する様子を説明する図である。 図6Aに示すように、従来例の治療デバイス101において、カテーテル103の先端が分岐部動脈瘤ANの内部に送り込まれ、その状態でプッシャワイヤ105が操作されると、カテーテル3に収納されていたメッシュ部104は、先端側から押し出される。このとき、メッシュ部104がカテーテル103の先端から不用意に飛び出さないように、プッシャワイヤ 105は、少しずつ押し出される。しかし、メッシュ部104の半分以上が押し出されたときに、先に押し出されたメッシュ部104の拡張力により、残りのメッシュ部104がカテーテル103から引き出されることがある。このような引き出し力が作用すると、図6Bに示すように、メッシュ部104が急激に飛び出してしまい、分岐部動脈瘤ANを脆弱にし、場合によっては突き破ってしまうことがある。このようなメッシュ部104の急激な展開による不具合を回避するには、プッシャワイヤ105を遠位側に押し込みながら、カテーテル103の先端を分岐部動脈瘤ANから引き出すように慎重に操作しなければならず、施術の難易度がより一層高くなる。したがって、従来、瘤に対するサイズの自由度が高く且 を遠位側に押し込みながら、カテーテル103の先端を分岐部動脈瘤ANから引き出すように慎重に操作しなければならず、施術の難易度がより一層高くなる。したがって、従来、瘤に対するサイズの自由度が高く且つメッシュ部104のような拡張部の急激な拡張を抑制することが要望されている。」(段落【0005】)「本発明は、瘤に対するサイズの自由度が高く且つ拡張部の急激な拡張を抑制した血管プラグ及び治療デバイスを提供することを目的とする。」(段落【0006】)「本発明の一形態は、血管に形成された瘤を塞栓する血管プラグであって、プッシャワイヤと、前記プッシャワイヤの遠位側に接続され、瘤に留置される拡張部と、を備え、前記拡張部は、カテーテルへの収納時には縮径して略筒形となり、非収納時には先端側から外向きにカールする血管プラグである。」(段落【0007】)オ発明の効果「本発明によれば、瘤に対するサイズの自由度が高く且つ拡張部の急激な拡張を抑制した血管プラグ及び治療デバイスを提供することができる。」(段落【0017】)カ発明を実施するための形態「以下、本発明に係る血管プラグ及び治療デバイスの実施形態について 説明する。なお、本明細書に添付した図面は、いずれも模式図であり、理解しやすさ等を考慮して、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更又は誇張している。また、図面においては、部材の断面を示すハッチングを適宜に省略する。」(段落【0019】)「本明細書等において、形状、幾何学的条件、これらの程度を特定する用語、例えば「直交」、「方向」等の用語については、その用語の厳密な意味に加えて、ほぼ直交とみなせる程度の範囲、概ねその方向とみなせる範囲を含む。本明細書では、プ 何学的条件、これらの程度を特定する用語、例えば「直交」、「方向」等の用語については、その用語の厳密な意味に加えて、ほぼ直交とみなせる程度の範囲、概ねその方向とみなせる範囲を含む。本明細書では、プッシャワイヤ5(後述)を直線状に延ばした状態での軸線方向(中心軸方向)をX方向とする。X方向において、施術者に近い近位側(後端側)をX1側、施術者から離れた遠位側(先端側)をX2側とし、X方向と直交する方向を径方向(Y方向)として説明する。」(段落【0020】)「(第1実施形態)図1は、第1実施形態の血管プラグ2を備える治療デバイス1の斜視図である。図2Aは、カテーテル3へ収納されていない状態(非収納時)の血管プラグ2を軸線中心に沿って切断した場合の断面図である。図2Bは、カテーテル3へ収納された状態(収納時)の血管プラグ2を軸線中心に沿って切断した場合の断面図である。 図1に示すように、治療デバイス1は、血管プラグ2と、カテーテル3とを備えている。治療デバイス1は、血管プラグ2がカテーテル3に収納され、瘤の内部でステント4(後述)がカテーテル3から押し出されて拡張することにより、瘤を塞栓する用途において使用される。」(段落【0021】)【図1】 【図2A】「血管プラグ2は、図2Aに示すように、ステント(拡張部)4、プッシャワイヤ5及び接続部6を備えている。 ステント4は、瘤の内部に留置される構造体である。本実施形態のステント4は、拡張により血管内腔を確保する一般的なステントとは異なり、拡張により瘤の内部への血液の流入を抑制するために用いられる。図1及び図2Aに示すように、ステント4は、非収納時(以下、「拡張時」ともいう)において、軸線方向(X方向)X及び径方方向(Y方向)に向けて より瘤の内部への血液の流入を抑制するために用いられる。図1及び図2Aに示すように、ステント4は、非収納時(以下、「拡張時」ともいう)において、軸線方向(X方向)X及び径方方向(Y方向)に向けて3次元的に自己拡張し、略球形となる。」(段落【0022】)「ここで、略球状とは、一般的な意味での球状に限らず、両端が球状となる円筒形、厚さ方向に膨らんだ円盤状、楕円体等であってもよい。すなわち、本明細書において略球状とは、一般的な球状に限らず、概ね球状とみなせる形状又は球状と近似した立体形状(三次元形状)であり、瘤の内 部への血液の流入を抑制することができれば、どのような形状であってもよい。また、拡張時のステント4において、表面の一部又は全体に凹凸が形成されていてもよい。 一方、図2Bに示すように、ステント4は、カテーテル3への収納時には、縮径されて細長い筒形(略筒形)となる。ステント4は、図2Bに示す縮径した状態からカテーテル3の外に押し出されることにより、図2Aに示すような略球状に自己拡張する。」(段落【0023】) 【図2B】「なお、図2Aは、自然拡張状態におけるステント4の形状を示している。自然拡張状態とは、ステント4を開放された空間で拡張させた状態をいう。自然拡張状態において、ステント4は、最も拡張した状態となる。 図2Aでは、先端部41が一重にカールした自然拡張状態のステント4を実線で示しているが、ステント4が留置される瘤の大きさによっては、想像線(二点鎖線)で示すように、先端部41が二重にカールした状態となる。具体的には、瘤が大きい場合、先端部41がカールする量が少なくなるため(例えば、一重)、ステント4の全体の形状は大きくなる。一方、瘤が小さい場合、想像線で示すよう 41が二重にカールした状態となる。具体的には、瘤が大きい場合、先端部41がカールする量が少なくなるため(例えば、一重)、ステント4の全体の形状は大きくなる。一方、瘤が小さい場合、想像線で示すように、先端部41がカールする量が多く なるため(例えば、二重又はそれ以上)、ステント4の全体の形状は小さくなる。このように、ステント4は、瘤の大きさに応じてカール形状が変化するため、留置される瘤の大きさに合わせて形状を変化させることができる。」(段落【0025】)「ステント4において、瘤の大きさに応じて先端部41のカール形状が変化する特性は、後述するように、例えば略球状に形成されたステント4に形状記憶処理を施すことにより付与することができる。図2Aに示す自然拡張状態のステント4において、接続部6とステント4の遠位側(X2側)との間の長さ(以下、「突き出し長さ」ともいう)Lは、適宜に設定することができる。例えば、自然拡張状態において、ステント4の突き出し長さLを短くすることにより、瘤の内部にステント4を留置する際に、カテーテル3の先端部を瘤のより奥側まで送り込むことができる。そのため、カテーテル3の先端部の位置をより安定させた状態でステント4を拡張させることができる。」(段落【0026】)「第1実施形態のステント4は、金属又は樹脂材料によりメッシュ状に形成されている。ステント4において、メッシュ部分の開口の大きさ、密度等は、適宜に設定することができる。ステント4は、例えば生体適合性材料、特に好ましくは超弾性合金から形成されたチューブを、メッシュ状にレーザ加工することにより作製することができる。超弾性合金チューブから作製する場合、コストを低減させるため、数mm程度のチューブをレーザ加工後、所望する形状(例えば、図1に示す略球 を、メッシュ状にレーザ加工することにより作製することができる。超弾性合金チューブから作製する場合、コストを低減させるため、数mm程度のチューブをレーザ加工後、所望する形状(例えば、図1に示す略球状)に拡張させ、その形状のチューブ材に形状記憶処理を施すことにより作製することが好ましい。なお、ステント4は、レーザ加工に限らず、例えば切削加工等の他の方法によって作製することも可能であるし、ワイヤ状に成形した金属線を編み込むことによっても作製することができる。」(段落【0027】)「ステント4を形成するための材料としては、材料自体の剛性が高く且 つ生体適合性が高い材料が好ましい。このような材料としては、例えばチタン、ニッケル、ステンレス鋼、白金、金、銀、銅、鉄、クロム、コバルト、アルミニウム、モリブデン、マンガン、タンタル、タングステン、ニオブ、マグネシウム、カルシウム、これらを含む合金等が挙げられる。また、このような材料として、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネイト、ポリエーテル、ポリメチルメタクリレート等の合成樹脂材料を用いることもできる。更に、このような材料として、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリεカプロラクトン等の生分解性樹脂(生分解性ポリマー)等を用いることもできる。」(段落【0028】)「これらの中でも、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、白金、金、銀、銅、マグネシウム又はこれらを含む合金が望ましい。合金としては、例えばNi-Ti合金、Cu-Mn合金、Cu-Cd合金、Co-Cr合金、Cu-Al-Mn合金、Au-Cd-Ag合金、Ti-Al-V合金等が 、マグネシウム又はこれらを含む合金が望ましい。合金としては、例えばNi-Ti合金、Cu-Mn合金、Cu-Cd合金、Co-Cr合金、Cu-Al-Mn合金、Au-Cd-Ag合金、Ti-Al-V合金等が挙げられる。また、合金としては、マグネシウムと、Zr、Y、Ti、Ta、Nd、Nb、Zn、Ca、Al、Li、Mn等との合金が挙げられる。 これらの合金の中では、Ni-Ti合金が望ましい。」(段落【0029】)「プッシャワイヤ5は、ステント4を、カテーテル3内又は血管内で移動させる際に、施術者により操作される線状の部材である。施術者は、プッシャワイヤ5の近位側(X1側)に連結された操作部(不図示)を介してプッシャワイヤ5を押し込んだり、引き込んだりすることにより、カテーテル3、血管、瘤等の内部において、ステント4を前進させたり、後退させたりすることができる。」(段落【0030】) 「接続部6は、プッシャワイヤ5とステント4(血管プラグ2)とを分離可能に接続する部材である。接続部6は、図2Bに示すように、プッシャワイヤ5の遠位側(X2側)と、ステント4の近位側(X1側)との間に設けられている。接続部6は、例えばヒータコイル、フィラメント等(不図示)により構成される。プッシャワイヤ5を介してヒータコイルに通電すると、ヒータコイルが加熱し、この加熱によりフィラメントが溶けて切断される。フィラメントが切断されることにより、プッシャワイヤ5とステント4が分離される。施術者は、瘤の内部でステント4を拡張させた後、プッシャワイヤ5を介してヒータコイルに通電することにより、瘤にステント4を残したまま、プッシャワイヤ5のみを回収することができる。なお、接続部6を切断した後のステント4とプッシャワイヤ5を示す図3D(後述)では、切断された接続 イルに通電することにより、瘤にステント4を残したまま、プッシャワイヤ5のみを回収することができる。なお、接続部6を切断した後のステント4とプッシャワイヤ5を示す図3D(後述)では、切断された接続部6の図示を省略している。また、接続部6は、プッシャワイヤ5の周方向に回転力が加えられたときに、機械的に切断されるように構成してもよい。接続部6は、施術者の操作によりプッシャワイヤ5とステント4とを分離可能であれば、上記例に限らず、どのような構成であってもよい。」(段落【0031】)「カテーテル3は、血管プラグ2が収納される細長い筒状のチューブである。カテーテル3は、血管プラグ2が収納された状態で、例えば脳動脈の中に挿入される。カテーテル3の遠位側(X2側)の端部には、造影用のマーカー(不図示)が設けられている。マーカーは、血管内において、カテーテル3の遠位側の位置を確認するための目印となる部材であり、放射線不透過の材料により形成される。以下の説明では、カテーテル3の遠位側の端部を、「カテーテル3の先端部31」又は「先端部31」ともいう。」(段落【0032】)「次に、第1実施形態の治療デバイス1を用いた施術により、生体内に形成された分岐部動脈瘤ANにステント4を留置する場合の手順について 説明する。 図3A~図3Dは、第1実施形態の治療デバイス1を用いて分岐部動脈瘤ANにステント4を留置する手順を説明する模式図である。治療デバイス1は、カテーテル3に血管プラグ2を収納した状態(図2B参照)で生体内に挿入される。なお、治療デバイス1を分岐部動脈瘤ANに誘導する際には、ガイドワイヤ、ガイディングカテーテル(不図示)等が用いられるが、ここでは、これらデバイスを用いた作業の説明を省略する。」(段落【0033】)「まず、図 ス1を分岐部動脈瘤ANに誘導する際には、ガイドワイヤ、ガイディングカテーテル(不図示)等が用いられるが、ここでは、これらデバイスを用いた作業の説明を省略する。」(段落【0033】)「まず、図3Aに示すように、カテーテル3(治療デバイス1)の先端部31を血管分岐部Bの近傍まで誘導し、更に先端部31を分岐部動脈瘤ANの内部に送り込む(配置する)。カテーテル3の先端部31は、分岐部動脈瘤ANの奥行き方向において、中間から奥側の位置に送り込むことが望ましい。」(段落【0034】)「次に、カテーテル3の近位側(X1側)を把持した状態で、プッシャワイヤ5を操作して、ステント4を遠位側(X2側)に押し込む。これにより、図3Bに示すように、カテーテル3に収納されていたステント4の先端部41がカテーテル3の先端部31から押し出され、外向きにカールしながら拡張する。ステント4は、カテーテル3の先端部31から押し出された直後から外向きにカールしながら拡張する。そして、プッシャワイヤ5を操作して、ステント4を更に遠位側に押し込むと、図3Cに示すように、ステント4の先端部41は、更に外向きカールしながら拡張する。 これにより、ステント4は、分岐部動脈瘤ANの大きさに合わせて形状を変化させながら拡張して、最終的に分岐部動脈瘤ANの大きさに合った略球状となる。なお、ステント4がカテーテル3の先端部31から突出する長さは、ステント4を遠位側に押し込む量に係わらず、ほぼ同じとなる。 すなわち、ステント4を遠位側に押し込み続けても、ステント4は、カテ ーテル3の先端部31から一定の長さ以上は突出することがない。」(段落【0035】)「次に、接続部6(図2A参照)に通電して、図3Dに示すように、プッシャワイヤ5とステント4を分離させる。そして、血 ル3の先端部31から一定の長さ以上は突出することがない。」(段落【0035】)「次に、接続部6(図2A参照)に通電して、図3Dに示すように、プッシャワイヤ5とステント4を分離させる。そして、血管分岐部Bからカテーテル3と共にプッシャワイヤ5を近位側(X1側)へ引き込む。これにより、カテーテル3とプッシャワイヤ5を生体内から回収することができる。なお、拡張したステント4からカテーテルとプッシャワイヤ5を引き抜くと、ステント4の先端部41が中心側に膨らみ、カテーテルやプッシャワイヤ5の挿通していた穴が塞がれる。そのため、後述するように、分岐部動脈瘤ANの開口(血管側の部分)からの血液の流入を抑制し、また内部に残存する血液の流出を抑制して血液塊をステント内に形成することができる。」(段落【0036】)「以上の手順により、分岐部動脈瘤ANの内部に略球状のステント4を留置することができる。なお、図3A~図3Dは、分岐部動脈瘤ANにステント4を留置する手順の概略を示したものである。実際に分岐部動脈瘤ANにステント4を留置する作業には、瘤が形成されている部位に応じて様々な施術が行われる。」(段落【0037】) 【図3A】 【図3B】【図3C】 【図3D】「上述した第1実施形態の血管プラグ2及びこれを備えた治療デバイス1によれば、例えば以下のような効果を奏する。 第1実施形態の血管プラグ2において、ステント4は、拡張時に先端部41から外向きにカールする。そのため、例えば図3A~図3Dに示すように、分岐部動脈瘤ANの内部でステント4を拡張させることにより、ステント4の形状を、分岐部動脈瘤ANの大きさに合わせて変化させることができる。このように、第1実施形態の血管プラ A~図3Dに示すように、分岐部動脈瘤ANの内部でステント4を拡張させることにより、ステント4の形状を、分岐部動脈瘤ANの大きさに合わせて変化させることができる。このように、第1実施形態の血管プラグ2は、瘤に対するサイズの自由度が高いため、分岐部動脈瘤ANの大きさに合わせて拡張時のサ イズが異なる複数のステントを用意したり、その中から最適なサイズのステントを選択したりする必要がないので、施術前の作業をより簡素化することができる。」(段落【0038】)「ここで、血管プラグ2を分岐部動脈瘤ANの内部で拡張させることによる有利な点について説明する。 先に説明した特許文献1に記載された従来例の血管プラグは、カテーテルから押し出されたメッシュ部が、押出し方向の前方に向けて拡張するように構成されている。そのため、血管が複雑に屈曲しているために、カテーテル内でプッシャワイヤの動きが鈍くなっている場合、プッシャワイヤを遠位側に強く押し込んだ際に、メッシュ部が急激に飛び出して分岐部動脈瘤を脆弱にし、場合によっては突き破ってしまうおそれがある。また、プッシャワイヤを遠位側に押し込む際に不具合が生じなかったとしても、先に図6Bを用いて説明したように、メッシュ部104が半分以上押し出されたときに、先に押し出されたメッシュ部104の拡張力により、メッシュ部104が急激に飛び出して、分岐部動脈瘤を脆弱にし、場合によっては突き破ってしまうおそれもある。」(段落【0041】)「従来例の血管プラグにおいて、上記のような不具合を回避するため、例えばプッシャワイヤを遠位側(X2側)に押し込むと同時に、プッシャワイヤとカテーテルを近位側(X1側)に引き込む操作を行うことが考えられる。しかし、複雑に屈曲した血管内において、上記のような操作を行うには シャワイヤを遠位側(X2側)に押し込むと同時に、プッシャワイヤとカテーテルを近位側(X1側)に引き込む操作を行うことが考えられる。しかし、複雑に屈曲した血管内において、上記のような操作を行うには高度な技術が必要となり、施術の難易度がより一層高くなる。また、他の方法として、カテーテルの先端部を分岐部動脈瘤の近傍まで送り込んだ状態でメッシュ部を拡張させることが考えられる。しかし、分岐部動脈瘤のある血管分岐部は、形状が複雑であり且つ血流もあるため、カテーテルの先端部の位置を安定させることは難しく、カテーテルの先端部が分岐部動脈瘤から外れた方向に向いてしまうこともある。そのため、カテーテ ルの先端部からメッシュ部を押し出したときに、メッシュ部が意図しない方向に飛び出すおそれがある。」(段落【0042】)「これに対して、第1実施形態のステント4は、図3Bに示すように、カテーテル3の先端部31から押し出された直後から外向きにカールしながら拡張する。これによれば、仮にカテーテル3からステント4の先端部41が急激に飛び出したとしても、先端部41は、図中の矢印で示すように、外向きにカールしながら拡張するため、拡張力が瘤の遠位側の内壁面から離れる方向に作用する。したがって、ステント4の先端部41が分岐部動脈瘤ANを突き破るリスクを大幅に低減することができる。」(段落【0043】)「また、第1実施形態のステント4によれば、ステント4を半分以上押し出した後、ステント4の急激な飛び出しを抑制するために、プッシャワイヤ5を近位側(X1側)へ引き込む操作を行う必要がない。そのため、プッシャワイヤ5を遠位側(X2側)へ押し込む途中において、一時的にプッシャワイヤ5を近位側に引き込むという操作を行う必要がなく、プッシャワイヤ5を遠位側へ押し込 む操作を行う必要がない。そのため、プッシャワイヤ5を遠位側(X2側)へ押し込む途中において、一時的にプッシャワイヤ5を近位側に引き込むという操作を行う必要がなく、プッシャワイヤ5を遠位側へ押し込み続け、ステント4の全体を拡張させてからプッシャワイヤ5を分離させるという使用方法が可能となる。」(段落【0044】)また、第1実施形態の血管プラグ2は、図3Aに示すように、カテーテル3の先端部31を分岐部動脈瘤ANの内部に送り込んだ状態でステント4を拡張させることができるため、カテーテル3の先端部31の位置をより安定させた状態でステント4を拡張させることができる。したがって、カテーテル3の先端部31が分岐部動脈瘤ANから外れた方向に向いてしまい、カテーテル3からステント4が意図しない方向に飛び出す不具合を抑制することができる。(段落【0045】)⑵ 本件発明1-3の技術的特徴 本件発明1-3に係る特許の特許請求の範囲の記載及び上記⑴の本件明細書等の記載内容によれば、本件発明1-3は、血管内に形成された瘤の破裂を予防するための治療デバイスに関するものであり、瘤の大きさに応じて最適なサイズの血管プラグを選択する手間を省略することにより、施術前の作業を簡略化することのほか、メッシュ部を瘤の内部で拡張する際に、メッシュ部が急激に展開して瘤を脆弱にしたり、場合によっては突き破ってしまったりすることを防止するための手段を提供することを課題とするものである。 そして、本件発明1-3は、このような課題を解決するために、請求項1記載の構成を備えることによって、①瘤の大きさに応じて先端部が二重にカールする方法により、拡張部の大きさを調整することができ、また、②先端部は外向きにカールするため、拡張させた場合も、カテーテルか 記載の構成を備えることによって、①瘤の大きさに応じて先端部が二重にカールする方法により、拡張部の大きさを調整することができ、また、②先端部は外向きにカールするため、拡張させた場合も、カテーテルから突出する部分の長さを一定に抑えることが可能となり、瘤からの飛び出しを防止することができるという効果を実現するものであると認められる。 3 認定事実前記争いのない事実等に加え、後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実を認めることができる。 ⑴ 被告Aは、平成27年5月25日当時、原告の代表取締役の地位にあったが、同日に開催された定時株主総会において、今後の資金調達の在り方に関し、「ステント事業に絞った事業運営を行い、今後の資金調達については適切な場での検討を実施していく」旨発言した。(乙18)⑵ア JIMROは、平成29年2月14日、原告の発行済株式の全てを取得し、原告は、JIMROの完全子会社となった。 イこれを受けて、被告A及びJIMROは、同日、原告の経営の委任に関し、経営委任契約(本件経営委任契約)を締結した。 本件経営委任契約においては、被告Aは、JIMROと協力の上、「頭蓋内血栓除去デバイス及び頭蓋内動脈狭窄症治療用ステント開発事業」を 推進し、原告の企業価値の最大化を実現するよう努めるものとされた(本件経営委任契約第4条1項)。 (以上につき、乙1、2)⑶ 原告は、令和元年5月、国立研究開発法人日本医療研究開発機構からの委託事業において、「頭蓋内動脈狭窄治療に向けたステントの開発・事業化」についての報告書を作成した。(甲27)⑷ 原告とIGAは、令和元年7月31日、原告が医療機器の開発を行うに当たって、IGAから開発アドバイザーとしての指導を受けることを内容とする ・事業化」についての報告書を作成した。(甲27)⑷ 原告とIGAは、令和元年7月31日、原告が医療機器の開発を行うに当たって、IGAから開発アドバイザーとしての指導を受けることを内容とする医療機器開発アドバイザー業務委嘱契約(以下「本件アドバイザー契約」という。)を締結した。 本件アドバイザー契約においては、原告がアドバイザー業務をIGAに委託する対象の開発医療機器として、「動脈狭窄治療用ステント」、「ステント型血栓除去デバイス」、「マイクロカテーテル」、「ガイディングカテーテル」及び「その他の医療機器」が明記されている。 なお、実施期間は、令和元年8月1日から令和2年1月31日までとし、対価は月額150万円(消費税別)とされた。 (以上につき、甲24)。 ⑸ 原告及びネイションワイドは、令和元年11月30日、原告が次の業務を被告に委託する内容の本件業務委託契約を締結した。(甲25)ア委託業務 ①頭蓋内ステントの設計業務②頭蓋内ステントの設計図作成業務③上記のほか、双方当事者が合意した業務イ期間契約締結日から1年間ウ報酬日額5万円(消費税別)⑹ 令和元年12月9日に開催された原告の取締役会においては、100%原告子会社であった株式会社Cereplus(以下「Cereplus」と いう。)の解散につき、同社の臨時株主総会における議決権行使が議案とされた。 そして、被告Aは、原告の代表取締役として、上記取締役会において、Cereplusはもともと「頭蓋内動脈狭窄治療に向けたステントの開発・事業化」の必要性から設立されたものであることを説明した上で、同社の清算に伴い、原告においては頭蓋内動脈狭窄症治療用ステント開 Cereplusはもともと「頭蓋内動脈狭窄治療に向けたステントの開発・事業化」の必要性から設立されたものであることを説明した上で、同社の清算に伴い、原告においては頭蓋内動脈狭窄症治療用ステント開発事業を事業化しない旨を述べた。 これを受けて、上記取締役会においては、Cereplusの解散に関し、同社の臨時株主総会において原告として賛成の議決権を行使することが可決された。 (以上につき、乙3)⑺ JIMROは、令和2年1月、原告の全発行済株式を大塚メディカルに譲渡し、原告は、大塚メディカルの完全子会社となった。 ⑻ 原告及び大塚メディカルは、令和2年12月21日、①頭蓋内血栓回収デバイス、②その他頭蓋内治療用機器、③周辺機器、④頭蓋内に限らず、今後可能性のある新規案件に関する開発につき、大塚メディカルが原告に業務委託する内容の覚書(以下「本件覚書」という。)を締結した。 なお、本件覚書は、令和2年1月に遡及して有効となることが確認された。 (以上につき、甲28、弁論の全趣旨)⑼ 被告Aは、令和2年12月25日、被告会社を設立し、その代表取締役に就任した。(甲9、弁論の全趣旨)⑽ア被告Aは、令和3年1月27日、本件発明1-2に係る出願を行った。 イ被告Aは、令和3年7月1日、本件PCT出願1を行った。 ウ被告会社は、令和3年7月7日、本件PCT出願2を行った。 ⑾ 被告Aは、令和3年9月15日、原告の代表取締役を退任し、Cが原告の 代表取締役に就任した。(甲8)⑿ 被告Aは、令和4年7月7日頃、被告Aの事業と原告の事業とは関係がないことを明らかにする目的で、「回答書」と題する書面(以下「本件回答書」という。)を作成し、Cに対し、同書面に原告の社印を押印するよう求 Aは、令和4年7月7日頃、被告Aの事業と原告の事業とは関係がないことを明らかにする目的で、「回答書」と題する書面(以下「本件回答書」という。)を作成し、Cに対し、同書面に原告の社印を押印するよう求めた。 本件回答書は、原告が被告Aに回答する形式で作成されており、原告の回答として「当社が実施している事業は頭蓋内血栓除去デバイスの製造販売事業及び脳血管以外の治療用医療機器研究開発事業であり、貴殿が実施している事業については、当社で実施しておらず、本回答時点において今後も実施する予定はない」旨の記載が存在する。 これを受けて、原告は、令和4年7月6日付けで、上記「回答書」に社印を押印し、被告Aに対して返送した。 (以上につき、甲29、30、乙4、弁論の全趣旨) 4 本件発明1-3に係る職務発明性⑴ 原告の業務範囲ア証拠(甲8)によれば、商業登記簿上、原告の目的には「低侵襲治療機器の開発」、「医療機器のデザイン設計及び設計評価」、「ステントのデザイン設計及び設計評価」が掲げられており、広く医療機器の設計や開発が原告の目的とされていることが認められる。 そして、前記認定事実によれば、原告は、①令和元年7月31日、「動脈狭窄治療用ステント、ステント型血栓除去デバイス、マイクロカテーテル、ガイディングカテーテル、その他の医療機器」の開発につき、IGAからアドバイスを受けることを目的として、同社との間で本件アドバイザー契約を締結したこと、②令和元年11月30日、ネイションワイドに対し、「頭蓋内ステントの設計業務」につき業務委託することを目的として、同社との間で、本件業務委託契約を締結したこと、③令和2年12月21日には、大塚メディカルから、頭蓋内血栓回収デバイス、その他頭蓋内治 療用機器、周辺 き業務委託することを目的として、同社との間で、本件業務委託契約を締結したこと、③令和2年12月21日には、大塚メディカルから、頭蓋内血栓回収デバイス、その他頭蓋内治 療用機器、周辺機器のほか、頭蓋内に限らず、今後可能性のある新規案件に関する開発につき、同年1月に遡及する形で業務委託を受けたこと、以上の事実を認めることができる。 上記認定事実によれば、原告は、前記商業登記簿上の目的に沿う形で、令和元年7月末以降、本件アドバイザー契約に係る月額150万円もの費用を支払った上、「ステント型血栓除去デバイス」以外の医療機器についても一貫して開発の対象としていることが認められ、令和2年1月以降にも、血栓回収デバイス以外の頭蓋内の治療用機器についても、その開発に係る業務を現に受託していたことが認められる。 これらの事情の下においては、原告は、少なくとも令和2年1月当時からは、血栓除去デバイスに限ることなく、広く頭蓋内の治療用機器の開発一般をその業務範囲にしていたものと認めるのが相当である。 そして、前記認定事実によれば、本件発明1-3は、血栓の回収それ自体を目的とするものではないものの、動脈瘤を治療するためのデバイスであること、ステントを拡張することにより動脈瘤の内部への血液の流入を抑制するために用いられるものであること、動脈瘤は頭蓋内にも生じる可能性があること、以上の事実が認められる。そうすると、本件発明1-3は、現に大塚メディカルから開発の受託を受けていた頭蓋内の治療用機器に当たるものといえる。 したがって、本件発明1-3の発明は、その当時、原告の業務範囲に含まれていたものと認めるのが相当である。 イ被告らの主張についてこれに対し、被告らは、原告のような医療機器ベンチャ したがって、本件発明1-3の発明は、その当時、原告の業務範囲に含まれていたものと認めるのが相当である。 イ被告らの主張についてこれに対し、被告らは、原告のような医療機器ベンチャー企業においては、1社1製品の原則により、複数の医療機器を同時並行で開発することは想定されない旨主張する。 しかしながら、一件記録を精査しても、被告の主張するような原則に より、原告会社が実際にその業務を「ステント型血栓除去デバイス」の開発に限定していたことを認めるに足りる的確な証拠がない。 かえって、本件アドバイザー契約(甲24)によれば、原告は、「ステント型血栓除去デバイス」以外の医療機器についても、IGAから開発に係る指導を受けることを求めていたことが認められる。さらに、本件覚書(甲28)によれば、原告は、頭蓋内血栓回収デバイスのほかにも、①頭蓋内血栓回収デバイス以外の頭蓋内治療用機器(周辺機器を含む。)、②頭蓋内に限らない今後可能性のある新規案件に関する開発につき、大塚メディカルから業務を受託していたことが認められる。 したがって、被告らの主張は、原告自身が締結していた業務委託契約の内容と明らかに整合しないものといえる。 したがって、被告らの主張は、採用することができない。 被告は、令和元年12月9日に開催された原告の取締役会において、「頭蓋内動脈狭窄症治療用ステント」を事業化しない旨の決議がされことを根拠に、原告の業務範囲がステント型血栓除去デバイスの設計開発・販売にとどまる旨主張する。 しかしながら、証拠(乙3)によれば、上記取締役会においては、議長である被告Aが「頭蓋内動脈狭窄症治療用ステント」を事業化しない旨の発言をしたことは一応認められるものの、それ以上に、これを事業化しない旨 ながら、証拠(乙3)によれば、上記取締役会においては、議長である被告Aが「頭蓋内動脈狭窄症治療用ステント」を事業化しない旨の発言をしたことは一応認められるものの、それ以上に、これを事業化しない旨の取締役会の決議が行われたことは認めるに足りない。 かえって、その後、原告は、令和2年12月21日付け本件覚書において、頭蓋内血栓回収デバイスのほかにも、①頭蓋内血栓回収デバイス以外の頭蓋内治療用機器(周辺機器を含む。)、②頭蓋内に限らない今後可能性のある新規案件に関する開発につき、大塚メディカルから業務を受託していたことは、前記において認定したとおりである。そうすると、上記発言の内容は、その後の経過に照らすと、原告の業務範囲に係 る上記認定を左右するものとはいえない。 したがって、被告らの主張は、採用することができない。 被告らは、原告が本件回答書(乙4)を作成し、被告Aに対し、「頭蓋内血栓除去デバイス以外の脳血管内治療用等医療機器の開発事業」が原告の業務に含まれず、今後も実施する予定がない旨回答したことを理由として、原告の業務範囲は、ステント型血栓除去デバイスの設計開発・販売にとどまる旨主張する。 しかしながら、本件回答書は、令和4年7月6日付けで作成されたものであり、本件発明1-3の出願時(令和3年7月7日)からみても約1年も既に経過していることからすれば、本件覚書は、本件発明1-3の発明当時における原告の業務範囲を正確に示すものとはいえない。 しかも、本件回答書は、そもそも被告Aが作成したものであり、同人の依頼によって、その後任の代表取締役であるCが原告の社印を押印したものにすぎず、上記認定に係る業務委託等の経過に照らしても、その内容は、信用性を欠くというほかない。 したがって、被告らの主張 の依頼によって、その後任の代表取締役であるCが原告の社印を押印したものにすぎず、上記認定に係る業務委託等の経過に照らしても、その内容は、信用性を欠くというほかない。 したがって、被告らの主張は、採用することができない。 その他に、被告ら提出に係る主張書面及び証拠を改めて精査しても、上記認定に係る業務委託等の経過に鑑みると、上記判断を左右するものとはいえない。したがって、被告らの主張は、いずれも採用することができない。 ⑵ 被告Aの職務範囲についてア前記認定事実によれば、被告Aは、本件発明1-3の出願(本件PCT出願2)当時、原告の代表取締役の地位にあったものであり、かつ、その地位に基づき、原告における医療機器の開発を行うために努力すべき具体的責務を負っていたことが認められる。そうすると、被告Aが本件発明1-3を発明した行為は、上記医療機器の開発を正に推進するものであると いえるから、同人の原告代表者としての職務に属するものであったというべきである。 したがって、被告Aが本件発明1-3を発明した行為は、被告Aの過去の職務に属する発明であったと認めるのが相当である。 イこれに対し、被告らは、被告Aは代表取締役として大局的な判断を行う立場にあり、個々の発明の完成に直接寄与したり、研究、発明を行ったりすることは予定されていなかった旨主張する。 しかしながら、本件発明1-3は、被告Aを発明者として現に出願されたものであり、これを被告A自身の発明ではないとの被告らの主張は、被告A自身の陳述(乙10)にも、同発明の種を与えたとされるDの陳述(乙19)にも、明らかに整合しないものである。したがって、被告らの主張は、採用することができない。 ⑶ その他に、被告ら提出に係る主張書面及び証拠 10)にも、同発明の種を与えたとされるDの陳述(乙19)にも、明らかに整合しないものである。したがって、被告らの主張は、採用することができない。 ⑶ その他に、被告ら提出に係る主張書面及び証拠を改めて精査しても、被告ら主張に係る事情は、上記において説示したところに照らし、前記判断を左右するに至らない。したがって、被告らの主張は、いずれも採用することができない。 そうすると、本件発明1-3は、原告の職務発明であると認められるところ、前記のとおり、争点整理の結果によれば、本件発明1-2の職務発明性は、本件発明1-3の職務発明性に従うこととされたため、本件発明1-2も同様に、原告の職務発明であると認められる。 以上によれば、原告の各請求は、本件発明1-2に係る請求(請求1-2)の限度で理由があり、その余はいずれも理由がない。 第5 結論よって、原告の請求は主文の限度で理由があるから、これを認容し、その余は理由がないからいずれも却下することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 中島基至 裁判官 小田誉太郎 裁判官 尾池悠子 (別紙) 図面一覧 (別紙)発明目録 1-1次の特許出願の特許請求の範囲に記載された発明(特許出願)発明者:A出願人:A発明の名称:生体管腔中でのカテーテルデリバリに用いる遠位 1-1次の特許出願の特許請求の範囲に記載された発明(特許出願)発明者:A出願人:A発明の名称:生体管腔中でのカテーテルデリバリに用いる遠位スタビライザ、治療デバイスのデリバリシステム及び治療デバイス国際出願日:令和3年7月1日(2021.7.1)出願番号:PCT/JP2021/024976国際公開番号:WO2022/004850A1最先の優先日:令和2年7月3日(2020.7.3) 1-2 次の特許出願の特許請求の範囲に記載された発明(ただし、請求項1は、下記のとおり。)(特許出願)発明者 :A出願人:株式会社SG-1Medical発明の名称:血管プラグ及び治療デバイス出願日:令和3年1月27日(2021.1.27)出願番号:特願2021-010922(請求項1)血管に形成された瘤を塞栓する血管プラグであって、プッシャワイヤと、前記プッシャワイヤの遠位側に接続され、瘤に留置されるメッシュ状の拡張部と、前記プッシャワイヤの遠位側と前記拡張部の近位側とを分離可能に接続する接続部と、を備え、前記拡張部は、カテーテルへの収納時には縮径して略筒形となり、非収納時には先端側から外向きにカールして略球状となり、前記プッシャワイヤが分離されることにより、カールした先端部が前記プッシャワイヤの挿通していた穴を塞ぐように密な状態となる血管プラグ。 1-3次の特許出願の特許請求の範囲に記載された発明(特許出願)発明者 :A出願人: な状態となる血管プラグ。 1-3次の特許出願の特許請求の範囲に記載された発明(特許出願)発明者 :A出願人:株式会社SG-1Medical発明の名称:血管プラグ及び治療デバイス国際出願日:令和3年7月7日(2021.7.7)出願番号:PCT/JP2021/025702国際公開番号:WO2022/162971A最先の優先日:令和3年1月27日(2021.1.27) 次の特許出願の特許請求の範囲に記載された発明(特許出願)発明者 :B出願人 :B発明の名称:カテーテル国際出願日:令和2年6月2日(2020.6.2)基礎出願番号 :特願2020-074008出願番号 :PCT/JP2020/021738国際公開番号 :WO2021/210188A1最先の優先日 :令和2年6月2日(2020.6.2)以上
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