令和6(わ)101 殺人被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年3月7日 和歌山地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-93928.txt

判決文本文1,939 文字)

- 1 - 主文 被告人を懲役11年に処する。 未決勾留日数中250日をその刑に算入する。 理由 【罪となるべき事実】被告人は、内妻であるAが仕事を辞めた後、自身も仕事を辞めたことで、世帯収入がAの年金だけとなり、自力で夫婦の生計を維持する目途が立たない状態になったことから、同人を殺して自分も死のうと考え、令和5年8月30日頃、和歌山市(住所省略)被告人方において、A(当時72歳)に対し、殺意をもって、床に座ってテレビを見ていた同人の背後からその頸部に電気コードを巻き付けて締め付け、よって、その頃、同所において、同人を頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害した。 【証拠の標目】(括弧内の証拠番号は検察官請求証拠番号)(省略)【法令の適用】(省略)【量刑の理由】被告人は、数日前から被害者との無理心中を考え、被害者を殺害する機会をうかがっていた中、強固な殺意に基づき、確実に殺害を遂げられる手段・態様でこれを完遂したもので、人1人の命を奪った結果は言うまでもなく重大である(なお、検察官は、死後も被害者の遺体を自宅に放置して辱めたことも相応に評価されるべき旨主張するが、殺人罪の犯情を評価する上でこの点を考慮すべきではない。)。 次に、犯行に至る経緯を見ると、被告人は、足の古傷が悪化し、型枠工としての就労継続が困難となったために離職したもので、それ自体は非難すべき事情ではない。 また、犯行時点で、被告人夫婦が経済的に破綻し、生計を維持できない状態に陥っていたことも事実である。しかし、被告人は、被害者の年金だけで夫婦の生計を維持できないことは明白だったのに、自分が仕事を辞めた後、最後の給与が支払われるまで- 2 - の間も、その後本件犯行に及ぶまでの間も、言うと怒られるという理由で、自分が仕事を辞めた の生計を維持できないことは明白だったのに、自分が仕事を辞めた後、最後の給与が支払われるまで- 2 - の間も、その後本件犯行に及ぶまでの間も、言うと怒られるという理由で、自分が仕事を辞めたことを被害者に隠し続け、現実を踏まえて家計の見直しや今後の生計維持の方法について被害者と話し合うことを試みることさえせず、生活保護といった公的支援についても、簡単には受けられない、受けても間に合わないなどと考えて、窓口に相談に行くことすら試していないなど、とり得る手段を何ら尽くしていない。また、被告人は、仕事を辞めた当初は、自分さえ家を出れば被害者自身は本人の年金で生活できると考えていたが、その後、被害者に顕著な認知症の兆候と思われる言動が表れ、自分が家を出てしまったら被害者が路頭に迷うと考え、殺害に至った旨述べる。しかし、被告人の供述を前提としても、被害者は、本件犯行前頃、食事を終えた直後に食事の準備をしようとする、風呂上がりにまた風呂に入ろうとするなどといった、認知症を疑わせる言動をすることがあった一方、日常生活において特に被告人の介助を要する場面はなく、被告人が家を出ても路頭に迷うような状態にはなかったと認められる。犯行直後に被告人が試みたという自殺の方法や、その後自首するまでの約1か月間の自宅での生活状況からすれば、犯行時点で、被告人が、追死を真剣に考え、その覚悟を固めた上で、専ら被害者自身のためを思って本件犯行に及んだなどとも考え難い。そうすると、被告人が、被害者を殺害するしかないと考え、その実行に至った経緯は、やはり短絡的というほかない。 以上の犯情評価を踏まえると、本件は、殺人の同種事案(配偶者に対する単独犯の殺人1件で、「心中」又は「その他の家族関係」を動機とし、ひも・ロープ類を凶器とする事案)の中でやや重い部類に属するとい 以上の犯情評価を踏まえると、本件は、殺人の同種事案(配偶者に対する単独犯の殺人1件で、「心中」又は「その他の家族関係」を動機とし、ひも・ロープ類を凶器とする事案)の中でやや重い部類に属するといえる。これを前提に、一般情状について見ると、自首した点は被告人のため酌むべき事情として考慮できる。もっとも、犯行の約1か月後、そのまま生活を続けることが困難な状況になった時点で自首したに過ぎないから、それほど重視はできない。他方で、20年以上前の懲役前科2件(強盗致傷及び強盗)があることは、その時期が相当古く、犯行の内容も異なることからすれば、特に考慮すべきとはいえない。そこで、これらの評価も踏まえ、主文の刑が相当であると判断した。 - 3 - (検察官の求刑:懲役12年、弁護人の科刑意見:懲役5年)令和7年3月7日和歌山地方裁判所刑事部裁判長裁判官福島恵子 裁判官佐藤智彦 裁判官森谷拓朗

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る