【DRY-RUN】主 文 本件各控訴を棄却する。 理 由 本件各控訴の趣意は、弁護人鈴村金一及び名古屋地方検察庁豊橋支部検察官検事 泉川賢冶作成名義、名古屋高等検察庁検察官検事
主文 本件各控訴を棄却する。 理由 本件各控訴の趣意は、弁護人鈴村金一及び名古屋地方検察庁豊橋支部検察官検事泉川賢冶作成名義、名古屋高等検察庁検察官検事金丸歓雄提出の各控訴趣意書に記載するとおりであり、右検察官の控訴趣意に対する答弁は、弁護人宮崎巌の答弁書に記載するとおりであるから、ここにこれを引用するが、当裁判所はこれに対し次ぎのように判断する。 被告人A建設に対する検察官の控訴趣意について所論は要するに、原判決は、被告人A建設を、原判示第一、第三、及び第八の(一)の罪について懲役八月、原判示第八の(二)の罪について懲役四月に処し、未決勾留日数中一二〇日を右原判示第一、第三、及び第八の(一)の罪の刑に算入しているけれども、右未決勾留は、原判示第八の(二)の窃盗の公訴事実について為されたものであるから、この日数中一二〇日を右勾留の理由となつていない原判示第一、第三、及び第八の(一)の罪の本刑に算入したことは、刑法第二一条の解釈適用を誤つている。何となれば、原判示第一、第三、及び第八の(一)の公訴事実については勾留状は発せられていないが、右公訴事実と勾留状の発せられている原判示第八の(二)の公訴事実とは昭和三六年九月九日の決定により併合審理せられているから、右決定の日から原判決言渡の前日までの未決勾留日数九〇日は前者の刑に算入できるけれども、これを超えて、併合決定前の未決勾留日数三〇日を加えた一二〇日を前者の刑に算入したことは違法である。というのである。 そこで記録を調べてみると、検察官は起訴前の昭和三六年六月一七日原判示第八の(二)の一個の窃盗の事実について名古屋地方裁判所豊橋支部裁判官の発した勾留状により同被告人を勾留し、同月二一日右事実について豊橋簡易裁判所に公訴を提起し、更に同月 昭和三六年六月一七日原判示第八の(二)の一個の窃盗の事実について名古屋地方裁判所豊橋支部裁判官の発した勾留状により同被告人を勾留し、同月二一日右事実について豊橋簡易裁判所に公訴を提起し、更に同月二八日原判示第一の(一)の一個の窃盗の事実について名古屋地方裁判所豊橋支部に、最後に同年八月二五日、原判示第一の(二)、第三、及び第八の(一)の三個の窃盗の事実について同裁判所に公訴を提起したところ、同裁判所は同年九月九日右五個の公訴事実を併合して審理する旨決定した上、同年一二月八日右公訴事実すべてを有罪と認定し、前記の通りの判決を言渡したこと、及び本件についての同被告人の未決勾留日数は、勾留状は前記の如く原判示第八の(二)の窃盗の事実についてのみ発せられ、同年六月一七日これを執行しているから、同日から原判決の言渡の前日までの一七四日であるが、原審が前記併合決定をした同年九月九日から原判決言渡の日の前日までの未決勾留日数は九〇日であることは、所論の通りである。 <要旨>ところで、同一被告人に対する数個の被疑事実について数個の公訴が提起され、その内の一つの公訴事実に</要旨>ついてのみ勾留されている場合に、右数個の公訴事実について併合審理するときは、一つの公訴事実による適法な勾留の効果が被告人の身柄について他の公訴事実についても及ぶことは当然であるから、右勾留日数は勾留状の発せられていない他の公訴事実の勾留日数として計算でき、右公訴事実に対する罪の刑に算入し得るものと解すべきである(所論引用の昭和三〇年一二月二六日最高裁判所第三小法廷判決)。そしてこれは、同一の被疑者もしくは被告人に対し、その身柄を拘束して数個の犯罪事実について同時に捜査もしくは公判審理を為すにあたり、手続の煩瑣と、却つて被疑者もしくは被告人の拘束を不当に長くする結果を招く恐 は、同一の被疑者もしくは被告人に対し、その身柄を拘束して数個の犯罪事実について同時に捜査もしくは公判審理を為すにあたり、手続の煩瑣と、却つて被疑者もしくは被告人の拘束を不当に長くする結果を招く恐れがあることを避けるために、単にその内の一部の犯罪について勾留を行うに止め、その余の犯罪事実については重ねて勾留しないのがむしろ実務上の慣例とたつており、この場合未決勾留日数の算入が、その勾留の行われた犯罪事実の本刑にのみ許されるとすると、数個の犯罪事実が併合審理された場合に、訴訟手続の簡便と被告人の拘束の長期化の防止を期するために勾留の重複を差し控えた結果が、かえつて被告人の不利益に帰する場合が生じ、その不公平、不合理を是正する趣旨に出でるものである。して見れば、この場合に算入し得る未決勾留日数は、併合審理の決定が為された後のそれに限るべき理由はなく、右決定前のそれを含めて、一つの公訴事実について為された未決勾留日数の全部に及ぶと解するのが、右に述べた公平の見地に合致する。所論は、このように解するならば、併合決定によつて、一つの公訴事実についての勾留状の効果が、遡及して他の公訴事実に及ぶことになり、併合決定前の法律関係まで変更されることになるというのであるが、他の公訴事実の罪の刑に未決勾留日数の算入が許されるのは、併合決定によつて一つの訴訟手続になつた為、一つの公訴事実についての適法な勾留の効果が、被告人の身柄について、事実上他の公訴事実にも及ぶに過ぎないからであつて、併合決定により法律的効果として一つの公訴事実についての勾留の効果が他の公訴事実にも生ずるからではなく、またもとより併合決定前の訴訟上の法律関係が遡及して変更されるということもあり得ないのである。従つて原判決には何ら違法の点はなく、論旨は採用できない。 被告人Bの弁護人の控訴 も生ずるからではなく、またもとより併合決定前の訴訟上の法律関係が遡及して変更されるということもあり得ないのである。従つて原判決には何ら違法の点はなく、論旨は採用できない。 被告人Bの弁護人の控訴趣意について所論は要するに、原審の量刑は重きに過ぎ不当であるというのである。 記録を精査し当裁判所における事実取調の結果を加味参酌するに、本件犯行の動機、態様、被告人の前科、経歴素行、特に被告人は、窃盗、私文書偽造行使、賍物運搬等による前科三犯を有すること、被告人は保護観察所から原審相被告人C、同D、同A建設等非行少年の補導を委託されたのを奇貨として、同人等を自己の経営する自動車修理販売業に使用して、ろくろく給料も与えずあまつさえ同人等をそそのかし、あるいは強要して本件犯行に及んだものであつて、その犯行の態様がきわめて悪質であること、本件犯行はその回数も二〇回に及び、被害総額も三〇万円の高額に達すること、その他諸般の情状に鑑みれば所論の被告人が被害の弁償を完遂したことなどの各事情を参酌しても、被告人に対する原審の量刑が不当であつて、これを重しとするに足る事由を認め得ないから論旨は採用しがたい。 よつて本件各控訴はその理由がないので刑事訴訟法第三九六条に則りこれを棄却すべく、なお被告人A建設についての当審における訴訟費用(国選弁護人支給分)は刑事訴訟法第一八一条第三項により、同被告人に之を負担させないこととし主文のとおり判決する。 (裁判長判事小林登一判事成田薫判事斎藤寿)
▼ クリックして全文を表示