令和元年12月25日判決言渡平成31年(行ケ)第10027号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和元年10月21日判決 原告ファミリーイナダ株式会社 同訴訟代理人弁護士三山峻司矢倉雄太塩田陽一朗同訴訟代理人弁理士北村修一郎森俊也本田恵 被告株式会社フジ医療器 同訴訟代理人弁護士辻本希世士辻本良知松田さとみ重冨貴光古庄俊哉石津真二手代木啓富田詩織杉野文香同訴訟代理人弁理士丸山英之 主文 1 特許庁が無効2018-800007号事件について 杉野文香同訴訟代理人弁理士丸山英之 主文 1 特許庁が無効2018-800007号事件について平成31年1月29日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要(後掲証拠及び弁論の全趣旨から認められる事実) 1 特許庁における手続の経緯等(1) 被告は,名称を「椅子式マッサージ機」とする発明に係る特許権(特許第5162718号。平成24年7月23日出願(以下「本件出願日」という。),平成24年12月21日設定登録。請求項の数2。以下,同特許権に係る特許を「本件特許」という。)の特許権者である。本件特許に係る出願は,特願2006-220454号(平成18年8月11日出願。以下「本件遡及出願日」という。)の分割出願である特願2011-185543号(平成23年8月29日出願。以下「原出願」という。)について,更に分割出願されたものであり,平成24年7月23日付けで特許請求の範囲及び明細書について手続補正がされた(以下「本件補正」という。)。(甲7,8,16,17)(2) 原告は,平成30年1月29日に特許庁に無効審判請求をし,特許庁は上記請求を無効2018-800007号事件として審理した。 (3) 特許庁は,平成31年1月29日,無効審判請求は成り立たない旨の審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は,同年2月7日,原告に送達された。 (4) 原告は,平成31年3月6日,審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載 (1) 本件特許の特許請求の範囲の記載は,次のとおり構成要件に分説することができる。以下 原告は,平成31年3月6日,審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載 (1) 本件特許の特許請求の範囲の記載は,次のとおり構成要件に分説することができる。以下,各請求項に記載の発明を「本件発明1」などといい,本件発明1,2を「本件発明」と総称し,各構成要件を「構成要件A」などという。 本件特許の明細書を,図面を含めて「本件明細書」といい,本件特許の願書に最初に添付した特許請求の範囲,明細書及び図面(甲7)を「本件当初明細書等」という。また,本件明細書の図面の一部は,別紙本件明細書図面目録記載のとおりである。 【請求項1】A 座部と前記座部の後側でリクライニング可能に連結された背凭れ部を有する椅子本体と,前記背凭れ部の左右の側壁部と,該椅子本体の両側部に設けた肘掛部と,を有する椅子式マッサージ機において,B 前記左右の側壁部は,前記座部に着座した施療者の肩または上腕側方となる位置に配設しており,前記左右の側壁部の内側面には夫々左右方向に重合した膨縮袋を備えて,これら重合した膨縮袋の基端部を前記側壁部に取り付けるように構成しており,C 前記肘掛部は,施療者の前腕部を載置しうるための底面部,及び外側立上り壁により形成され,前腕部の長手方向において前記外側立上り壁に複数個配設された膨縮袋で前記底面部に載置した施療者の前腕部にマッサージを施すための前腕部施療機構を備えており,D 前記肘掛部の後部と前記背凭れ部の側部とを連結する連結部と,前記肘掛部の下部に設けられ,前記背凭れ部のリクライニング動作の際に前記連結部を介して前記肘掛部全体を前記座部に対して回動させる回動部とを設け, E 前記肘掛部全体が,前記背凭れ部のリクライニング動作に連動して,リクライニングする方向に傾 ング動作の際に前記連結部を介して前記肘掛部全体を前記座部に対して回動させる回動部とを設け, E 前記肘掛部全体が,前記背凭れ部のリクライニング動作に連動して,リクライニングする方向に傾くように構成されて,F 前記背凭れ部のリクライニング角度に関わらず施療者の上半身における着座姿勢を保ちながら,肩または上腕から前腕に亘って側壁部及び外側立上り壁側から空圧施療を行う事を特徴とする椅子式マッサージ機。 【請求項2】G 前記肘掛部が前記背凭れ部の側部付近まで延設されており,かつ前記外側立上り壁が施療者の前腕部から肘部に位置するように構成されている事を特徴とする請求項1記載の椅子式マッサージ機。 (2) 本件補正(甲7,8,17)ア特許請求の範囲特許請求の範囲が次のとおりであるのを,上記(1)のとおり(ただし,分説のための符号A~Gは含まない。)補正する。 「【請求項1】座部及び背凭れ部を有する椅子本体と,該椅子本体の両側部に肘掛部を有する椅子式マッサージ機において,前記肘掛部には,該肘掛部の内側後方から施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部を開設すると共に,該前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の前腕部を挿入保持し得る空洞部を設けており,且つ,該空洞部の内部壁面各所に施療者の前腕部にマッサージを施し得る前腕部施療機構を設けた事を特徴とする椅子式マッサージ機。 【請求項2】前記空洞部の底面部は,施療者の前腕部を載置し得る載置面とする事ができる底面部に形成してある事を特徴とする請求項1記載の椅子式マッサージ機。 【請求項3】 前記肘掛部の上面部には,前記空洞部を隔てて施療者の前腕部を載置し得る載置面が形成されている事を特徴とする請求項1又は請求項2記載の椅子式マッサージ機 式マッサージ機。 【請求項3】 前記肘掛部の上面部には,前記空洞部を隔てて施療者の前腕部を載置し得る載置面が形成されている事を特徴とする請求項1又は請求項2記載の椅子式マッサージ機。 【請求項4】前記肘掛部は,椅子本体に対して前後方向に移動可能に設けられており,前記背凭れ部のリクライニング角度に応じた所定の移動量を保持しながら該背凭れ部のリクライニング動作に連動して前記肘掛部が椅子本体に対して前後方向に移動するようにした事を特徴とする請求項1記載の椅子式マッサージ機。 【請求項5】前記空洞部の先端部には,前腕部施療機構の動作を停止するための安全停止スイッチを備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の椅子式マッサージ機。」イ明細書明細書の段落【0010】について,「【0010】 すなわち,本発明の椅子式マッサージ機は,座部及び背凭れ部を有する椅子本体と,該椅子本体の両側部に肘掛部を有する椅子式マッサージ機において,前記肘掛部には,該肘掛部の内側後方から施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部を開設すると共に,該前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の前腕部を挿入保持し得る空洞部を設けており,且つ,該空洞部の内部壁面各所に施療者の前腕部にマッサージを施し得る前腕部施療機構を設けた構成ものである。」とあるのを,「【0010】 すなわち,本発明の椅子式マッサージ機は,座部と前記座部の後側でリクライニング可能に連結された背凭れ部を有する椅子本体と,前記背凭れ部の左右の側壁部と,該椅子本体の両側部に設けた肘掛部と,を有する椅子式マッサージ機において,前記左右の側壁部は,前記座 部に着座した施療者の肩または上腕側方となる位置に配設しており,前記左右の側壁部の内側面には夫々 本体の両側部に設けた肘掛部と,を有する椅子式マッサージ機において,前記左右の側壁部は,前記座 部に着座した施療者の肩または上腕側方となる位置に配設しており,前記左右の側壁部の内側面には夫々左右方向に重合した膨縮袋を備えて,これら重合した膨縮袋の基端部を前記側壁部に取り付けるように構成しており,前記肘掛部は,施療者の前腕部を載置しうるための底面部,及び外側立上り壁により形成され,前腕部の長手方向において前記外側立上り壁に複数個配設された膨縮袋で前記底面部に載置した施療者の前腕部にマッサージを施すための前腕部施療機構を備えており,前記肘掛部の後部と前記背凭れ部の側部とを連結する連結部と,前記肘掛部の下部に設けられ,前記背凭れ部のリクライニング動作の際に前記連結部を介して前記肘掛部全体を前記座部に対して回動させる回動部とを設け,前記肘掛部全体が,前記背凭れ部のリクライニング動作に連動して,リクライニングする方向に傾くように構成されて,前記背凭れ部のリクライニング角度に関わらず施療者の上半身における着座姿勢を保ちながら,肩または上腕から前腕に亘って側壁部及び外側立上り壁側から空圧施療を行う構成ものである。 また,本発明の椅子式マッサージ機は,前記肘掛部が前記背凭れ部の側部付近まで延設されており,かつ前記外側立上り壁が施療者の前腕部から肘部に位置するように構成する。」と補正する。 3 審決の理由の要旨(1) 原告は,本件発明について,①本件補正についての補正要件違反(無効理由1),②実施可能要件違反(無効理由2),③サポート要件違反(無効理由3),④明確性要件違反(無効理由4),⑤本件補正が,原出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲,明細書及び図面(以下「原出願当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内のものでないから 効理由3),④明確性要件違反(無効理由4),⑤本件補正が,原出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲,明細書及び図面(以下「原出願当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内のものでないから不適法な分割出願であることを前提とする,本件出願日前に刊行された下記甲6(以下,下記文献については,その番号に応じ,「甲6文献」などという。)に記載の発明に基づく進歩性欠如(無効理由5),⑥甲1文献に記載の発明(以下「甲 1発明」という。)と甲2~5文献に記載の発明に基づく進歩性欠如(無効理由6)を主張した。 審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりであり,要するに,①本件発明は本件当初明細書等に記載した事項の範囲内でした補正であり補正要件に適合する,②本件発明は実施可能要件に適合する,③本件発明は発明の詳細な説明に記載された発明でありサポート要件に適合する,④本件発明の「背凭れ部のリクライニング角度に関わらず施療者の上半身における着座姿勢を保ちながら」との記載は明確である,⑤本件出願は適法な分割出願であり,甲6文献は本件遡及出願日より後に公開された文献であるから,本件発明につき甲6文献記載の発明に基づき進歩性を欠如するとはいえない,⑥本件発明と甲1発明との下記(2)イの相違点3に係る構成について容易に想到し得たとはいえないから,進歩性を欠如するとはいえないというものである。 甲1:特開2003-310683号公報甲2:特開2005-192603号公報甲3:特開平10-179675号公報甲4:特開2005-177279号公報甲5:特開2005-28045号公報甲6:特開2011-235180号公報(平成23年11月24日公開)(2) 審決が認定した甲1発明及び本件発明1との一致点及び相違点は次のとおりである。 甲5:特開2005-28045号公報甲6:特開2011-235180号公報(平成23年11月24日公開)(2) 審決が認定した甲1発明及び本件発明1との一致点及び相違点は次のとおりである。 ア甲1発明「座部17と,該座部17に対して傾倒することが可能な背凭れ部18とを備える椅子型のマッサージ機22において,前記背凭れ部18の傾倒方向と略同一の方向へ移動することが可能であり,被施療者の前腕を保持する保持部24と,前記保持部24に設けられ,被施療者の前腕を施療する施療部とを備え, 前記施療部は,膨張・収縮することが可能な空気袋26b・26cを有し,前記保持部24は,前記背凭れ部18の傾倒に応じて移動することが可能な構成としてあり,前記保持部24と前記背凭れ部18とを連結する連結部材27を更に備え,前記連結部材27の一端は,保持部24の後端部分に接続され,他端は,背凭れ部18のカバー部18aの外面であって,被施療者の肩に相当する箇所に取り付けられており,前記保持部24は,被施療者の前腕を覆うことが可能な形状として断面視において略C字状の半円筒形状をなしており,前記座部17の両側部に,肘掛け部23が夫々設けられ,この肘掛け部23は,その上面を被施療者の腕置きとして利用することが可能となっており,また,肘掛け部23の下部には,該肘掛け部23の長手方向へ沿って,ガイドレール25が設けられており,前記保持部24は,前記ガイドレール25に沿って移動することが可能であるように,前記ガイドレール25に係合されており,前記背凭れ部18は前方に延設された部分を有し,この部分の内側には,クッション部18dが設けられ,前記クッション部18dは,被施療者が着座したときに,被施療者の上腕部及び肩の側部を覆うような位 ,前記背凭れ部18は前方に延設された部分を有し,この部分の内側には,クッション部18dが設けられ,前記クッション部18dは,被施療者が着座したときに,被施療者の上腕部及び肩の側部を覆うような位置に設けられ,前記クッション部18dには,複数の空気袋が設けられ,前記背凭れ部18が傾倒した場合に,保持部24を傾倒前の姿勢を概ね保ったまま移動させることが可能となり,傾倒後の被施療者の姿勢を自然なものとすることができ,施療部によって傾倒前の部位と殆ど同一の部位を施療する,椅子型のマッサージ機22。」イ本件発明1と甲1発明の対比 本件発明1と甲1発明は以下の[一致点]で一致し,[相違点1]~[相違点4]について相違する。 [一致点]座部と前記座部の後側でリクライニング可能に連結された背凭れ部を有する椅子本体と,前記背凭れ部の左右の側壁部と,該椅子本体の両側部に設けた肘掛部と,を有する椅子式マッサージ機において,前記左右の側壁部は,前記座部に着座した施療者の肩または上腕側方となる位置に配設しており,前記左右の側壁部の内側面には夫々複数の膨縮袋を備えるように構成しており,前記肘掛部は,施療者の前腕部を載置しうるための底面部,及び外側立上り壁により形成され,前記外側立上り壁に複数個配設された膨縮袋で前記底面部に載置した施療者の前腕部にマッサージを施すための前腕部施療機構を備えており,前記肘掛部の一部分と前記背凭れ部の側部とを連結する連結部を設け,前記背凭れ部のリクライニング動作の際に前記連結部を介して前記肘掛部の少なくとも一部分を前記座部に対して移動させる移動部とを設け,前記肘掛部の少なくとも一部分が,前記背凭れ部のリクライニング動作に連動して,リクライニングする方向に移動するように構成されて,前記背 なくとも一部分を前記座部に対して移動させる移動部とを設け,前記肘掛部の少なくとも一部分が,前記背凭れ部のリクライニング動作に連動して,リクライニングする方向に移動するように構成されて,前記背凭れ部のリクライニング角度に関わらず施療者の肩または上腕から前腕に亘って側壁部及び外側立上り壁側から空圧施療を行う事を特徴とする椅子式マッサージ機。 [相違点1]左右の側壁部の内側面に備える複数の膨縮袋に関し,本件発明1では,「左右方向に重合した膨縮袋を備えて,これら重合した膨縮袋の基端部を前記側壁部に取り付ける」のに対し,甲1発明では,膨出袋が重合さ れているのか否か,重合されているとすればその重合方向はどのような方向か,また,膨出袋のどの部分が側壁部に取り付けられているのかについて,いずれも不明な点。 [相違点2]前腕部施療機構の膨出袋に関し,本件発明1では,膨出袋が,「前腕部の長手方向において前記外側立上り壁に複数個配設された膨出袋」であるのに対し,甲1発明では,どのような方向で複数配設された膨出袋であるのか不明な点。 [相違点3]本件発明1では,「肘掛部の後部と前記背凭れ部の側部とを連結する連結部と,前記肘掛部の下部に設けられ,前記背凭れ部のリクライニング動作の際に前記連結部を介して前記肘掛部全体を前記座部に対して回動させる回動部とを設け,前記肘掛部全体が,前記背凭れ部のリクライニング動作に連動して,リクライニングする方向に傾くように構成されて」いるのに対し,甲1発明では,i)連結部が肘掛部の後部ではなく,肘掛部の一部分である保持部に設けられている,ii)背凭れ部のリクライニング動作の際に連結部を介して移動させるのは「肘掛部全体」ではなく,肘掛部の一部分である保持部であり,また,その移動も く,肘掛部の一部分である保持部に設けられている,ii)背凭れ部のリクライニング動作の際に連結部を介して移動させるのは「肘掛部全体」ではなく,肘掛部の一部分である保持部であり,また,その移動も「回動」ではなく,そのため,「肘掛部の下部に設けられ」た「回動部」も設けられていない,iii)背凭れ部のリクライニング動作に連動して移動するのは,「肘掛部全体」ではなく,肘掛部の一部分である保持部であり,また,その移動も,保持部の姿勢を概ね保ったままの移動である,点。 [相違点4] 本件発明1では,「背凭れ部のリクライニング角度に関わらず施療者の上半身における着座姿勢を保ちながら,肩または上腕から前腕に亘って側壁部及び外側立上り壁側から空圧施療を行う」のに対し,甲1発明では,背凭れ部のリクライニング角度に関わらず施療者の肩または上腕から前腕に亘って側壁部及び外側立上り壁側から空圧施療を行うものの,その施療が,「施療者の上半身における着座姿勢を保ちながら」行われる施療か否か不明な点。 4 取消事由取消事由1:補正要件についての判断の誤り(構成要件D)(無効理由1)取消事由2:補正要件についての判断の誤り(構成要件F)(無効理由1)取消事由3:実施可能要件についての判断の誤り(無効理由2)取消事由4:サポート要件についての判断の誤り(無効理由3)取消事由5:明確性要件についての判断の誤り(無効理由4)取消事由6:進歩性欠如に関する判断の誤り①(無効理由5)取消事由7:進歩性欠如に関する判断の誤り②(無効理由6)第3 原告主張の取消事由 1 取消事由1(補正要件についての判断の誤り(構成要件D))について(1) 構成要件Dに係る本件補正についてア本件補正後の構成要件Dでは「前記肘掛部の後部と前記背凭れ部 原告主張の取消事由 1 取消事由1(補正要件についての判断の誤り(構成要件D))について(1) 構成要件Dに係る本件補正についてア本件補正後の構成要件Dでは「前記肘掛部の後部と前記背凭れ部の側部とを連結する連結部」と特定されている。この構成要件Dにおける「連結部142a」は,「連結部142aを中心に「肘掛部14a」と「背凭れ部12a」が相対回動可能な関係で連結されている」(段落【0054】,【0055】及び図4を含めた本件当初明細書等の記載を総合考慮することにより導かれる技術的事項)のみならず,「連結部がリンクを構成する長尺のものであり,一端が肘掛部14aの後部と連結され,他端が背凭れ部12aの側部と連結されている構成」(新たな技術的事項)も含むもの になっている。 イ一端が肘掛部14aの後部と連結され,他端が背凭れ部12aの側部と連結されている連結部がリンクである構成(肘掛部と背凭れ部の間に中間部材のある構成,黄色で囲んで示す部分)について,背凭れ部と肘掛部とがリンクを構成する長尺状の連結部を備えた構造の模式図を示すと別紙原告主張図面目録の図①及び図②(以下,同目録記載の図面については単に「原告図①」,「原告図②」などということがある。)のような構成となる。 背凭れ部と肘掛部の回動が可能で,連結部をリンクで構成して背凭れ部と肘掛部とを相対移動させる場合には,「4連リンク機構」となり,[1]肘掛部と背凭れ部との連結関係,[2]肘掛部と座部との連結関係,[3]背凭れ部と座部との連結関係で動く機構が必要である。 (2) 明細書の記載明細書には,上記(1)の4連リンク機構は一切開示されていない。 また,仮に,4連リンク機構が補正前の明細書に開示されているに等しいとしても,後記2のとおり,この構成においては,背 明細書の記載明細書には,上記(1)の4連リンク機構は一切開示されていない。 また,仮に,4連リンク機構が補正前の明細書に開示されているに等しいとしても,後記2のとおり,この構成においては,背凭れ部のリクライニングによって,背凭れ部の側部のリンク連結点に対してリンクが回動することにより,肘掛部の後部が背凭れ部に対して位置ずれを生ずることになり,構成要件F(「背凭れ部のリクライニング角度に関わらず施療者の上半身における着座姿勢を保ちながら」)との有機的な関連が損なわれてしまう。 (3) 構成要件Dに係る本件補正について,新規事項の追加の有無についての審決の判断には誤りがあり,この誤りは審決の結論に影響するものであるから,審決は取り消されるべきである。 2 取消事由2(補正要件についての判断の誤り(構成要件F))について(1) 構成要件Fについてア構成要件Fの「背凭れ部のリクライニング角度に関わらず施療者の上半 身における着座姿勢を保ちながら」に関し,明細書の段落【0054】,【0055】及び【図4】の記載から,肘掛部14aの下部に設けられた円形の回動部141aの中心は,肘掛部14aを前後方向に回動させるための回動軸心の位置を示しているとしか見て取れず,背凭れ部12aのリクライニング動作の具体的な技術的機構については何ら記載されていない。 イ背凭れ部12aのリクライニング動作の具体的な技術的構成の開示がないので,背凭れ部12aのリクライニング動作は,甲4文献や甲5文献に示された従来技術のような,椅子式マッサージ機に位置決めされた特定の軸心(以下「回動軸心X」という。)周りの回動であると理解される。そして,椅子式マッサージ機に位置決めされた特定の回動軸心X周りの回動であるとすると,本件発明1においても回動軸心Xは回 された特定の軸心(以下「回動軸心X」という。)周りの回動であると理解される。そして,椅子式マッサージ機に位置決めされた特定の回動軸心X周りの回動であるとすると,本件発明1においても回動軸心Xは回動部141aとは異なる点であることを前提としていると解さざるを得ない。すなわち,回動軸心Xを回動部141aと一致させると,背凭れ部12aと肘掛部14aが同じ軸心周りに回動するため,背凭れ部12aと肘掛部14aの相対移動はできず一体的にしか動かないので,構成要件Dの「前記肘掛部の後部と前記背凭れ部の側部とを連結する連結部と,前記肘掛部の下部に設けられ,前記背凭れ部のリクライニング動作の際に前記連結部を介して前記肘掛部全体を前記座部に対して回動させる回動部とを設け」の「連結部」の意義が無くなり,また,「肘掛部14aの後部で回動可能に前記背凭れ部12aの側部と連結する連結部142aを設けて構成している。」との記載(段落【0055】)にも反する結果となるからである。 ウそして,肘掛部と背凭れ部とを構成要件D(前記肘掛部の後部と前記背凭れ部の側部とを連結する連結部と,前記肘掛部の下部に設けられ,前記背凭れ部のリクライニング動作の際に前記連結部を介して前記肘掛部全体を前記座部に対して回動させる回動部とを設け)のように動作させて,その動きを特定するためには,[1]肘掛部と背凭れ部との連結関係,[2] 肘掛部と座部との連結関係,[3]背凭れ部と座部との連結関係の3つの連結関係が必要である。しかし,本件当初明細書等には,次のとおり,[1]~[3]について構成要件Dのように動作し得る機構の開示がない。 (ア) 肘掛部と背凭れ部との連結関係([1])について明細書の「肘掛部14aの後部で回動可能に前記背凭れ部12aの側部と連結する連結部142a 構成要件Dのように動作し得る機構の開示がない。 (ア) 肘掛部と背凭れ部との連結関係([1])について明細書の「肘掛部14aの後部で回動可能に前記背凭れ部12aの側部と連結する連結部142aを設けて構成」との記載(段落【0055】)と【図4】とから,当業者は,肘掛部と背凭れ部との連結関係([1])を具体的構造として一義的に認識する。【図4】には,肘掛部14aの後部が背凭れ部12aの側部と,連結部142aの中心で連結され,肘掛部14aと背凭れ部12aとが相対回転可能に連結される連結関係の構造が明確に示されている。 (イ) 肘掛部と座部との連結関係([2])について構成要件Dは,「回動部」が「前記肘掛部の下部に設けられ」ていること,そして「回動部」が「前記背凭れ部のリクライニング動作の際に前記連結部を介して前記肘掛部全体を前記座部に対して回動させる」ことを特定している。 「回動」とは,正逆両方向に動く円運動であり,明細書の「前記肘掛部14aの下部に前後方向に回動するための回動部141aを設ける」との記載(段落【0055】)と【図4】との記載に基づいて解釈しても構成要件D中の「回動」とは,回動部141aの中心を回動軸心とする円運動である。 (ウ) 背凭れ部と座部との連結関係([3])について本件当初明細書等には「背凭れ部が座部に対してリクライニングする具体的機構」は具体的に開示されていない。上記イのとおり,背凭れ部12aのリクライニング動作は,椅子式マッサージ機に位置決めされた特定の回動軸心X周りの回動であると考えることが通常であり自然であ る。 しかし,本件当初明細書等にはそのような記載はない。上記[1]と[2]の連結関係を前提とし,背凭れ部12aのリクライニング動作が,椅子式マッサージ機に位置決めされた であり自然であ る。 しかし,本件当初明細書等にはそのような記載はない。上記[1]と[2]の連結関係を前提とし,背凭れ部12aのリクライニング動作が,椅子式マッサージ機に位置決めされた特定の回動軸心X周りの回動であるとすれば,背凭れ部12aの回動,肘掛部14aの回動が不可能となり,動く構造としては理解できなくなる。 エ審決は,「本件当初明細書等には,肘掛部14aと背凭れ部12aとの連結関係について,その詳細な構造が明示されているわけではない」としているが,誤りである。上記ウ(ア)のとおり,本件当初明細書等の段落【0054】,【0055】及び【図4】からは,肘掛部14aの後部が,背凭れ部12aの側部と,連結部142aの中心で,肘掛部14aと背凭れ部12aとが相対回転可能に連結される連結関係の構造が明確に示されている。それにもかかわらず,本件補正により,本件当初明細書等の記載の表現を変えて「前記肘掛部の後部と前記背凭れ部の側部とを連結する連結部」との事項を構成要件Dに追加したために,「前記肘掛部の後部と前記背凭れ部の側部とを連結する連結部」の技術的範囲に,新たな技術的事項である,「連結部がリンクを構成する長尺のものであり,一端が肘掛部14aの後部と連結され,他端が背凭れ部12aの側部と連結されている構成」の態様のものも含む結果となったものである。 審決は,「本件補正後の「連結部」の連結態様として,請求人のいう「連結部142aを中心に「肘掛部14a」と「背凭れ部12a」が相対回動可能な関係で連結されている」こと以外の態様が含まれていたとしても」とする。原告の主張する「連結部がリンクを構成する長尺のものであり,一端が肘掛部14aの後部と連結され,他端が背凭れ部12aの側部と連結されている構成」(新たな技術的事項)において ていたとしても」とする。原告の主張する「連結部がリンクを構成する長尺のものであり,一端が肘掛部14aの後部と連結され,他端が背凭れ部12aの側部と連結されている構成」(新たな技術的事項)において,肘掛部と背凭れ部との連結関係により,構成要件Fの「前記背凭れ部のリクライニング角度に 関わらず施療者の上半身における着座姿勢を保ちながら」を充足されたか否かを全く見落として判断している。 したがって,審決には上記の新規事項が含まれるのに補正要件を満たすと誤って判断をした違法があるから取り消されるべきである。 (2) 構成要件D及びEの補正と構成要件Fの補正との相互の関係についてア連結部にリンクが含まれる場合の構成要件Fとの関係(ア) 審決の判断によれば,本件補正後の連結部の連結態様として,「連結部がリンクを構成する長尺のものであり,一端が肘掛部14aの後部と連結され,他端が背凭れ部12aの側部と連結されている構成」が本件発明の技術的範囲に含まれ得ることとなる。 (イ) 4連リンク機構のリクライニング時における背凭れ部,肘掛部の挙動a 「連結部がリンクを構成する長尺のものであり,一端が肘掛部14aの後部と連結され,他端が背凭れ部12aの側部と連結されている構成」という本件明細書に開示されていない「4連リンク機構」の[1]肘掛部と背凭れ部との連結関係,[2]肘掛部と座部との連結関係,[3]背凭れ部と座部との連結関係では,背凭れ部のリクライニングによって,背凭れ部の側部のリンク連結点に対してリンクが回動することにより,肘掛部の後部が背凭れ部に対して位置ずれを生ずることになる。 b 背凭れ部と肘掛部とがリンクを構成する長尺状の連結部を備えた具体的な構造は原告図⑤及び原告図⑥のとおりである。 (a) 原告図⑤,⑥の(a)は, 背凭れ部に対して位置ずれを生ずることになる。 b 背凭れ部と肘掛部とがリンクを構成する長尺状の連結部を備えた具体的な構造は原告図⑤及び原告図⑥のとおりである。 (a) 原告図⑤,⑥の(a)は,「椅子式マッサージ機」における,背凭れ部のリクライニングの前後を側面視により表す模式図である。 原告図⑤,⑥において,青色の線(実線と破線とを含む。以下同様。)は「肘掛部(肘掛部全体)」を表し,赤色の線は「背凭れ部」を表し,背凭れ部の中ほどと肘掛部とを繋ぐ黒色の線は「連結部」を表 している。肘掛部の下方端部は「回動部」であり,背凭れ部の下方端部は背凭れ部がリクライニングする時の回動軸心(以下,「回動軸心」という。)である。回動部と回動軸心とは椅子式マッサージ機に固定されている。便宜的に,回動部と回動軸心とを結ぶ辺を「固定辺」と称する。肘掛部の水平な部分は施療者の手や前腕を載置する「手掛け部」を表している。 原告図⑤,⑥に示す「連結部」は,長尺状のリンク(肘掛部と背凭れ部の間に中間部材のある構成,既述図の黄色で囲んで示す部分)であり,本件特許の【図4】に示すような肘掛部と背凭れ部とを相対回動可能に直接接続(所謂,ピン連結による接続)する連結部142aのような構成ではなく,肘掛部と背凭れ部とが離間した状態で,肘掛部と背凭れ部のそれぞれを「連結部」に対して相対回動可能になるように接続している。原告図⑤,⑥において,実線で表されているのが,背凭れ部が起立状態にあるリクライニング前の状態,破線で表されているのが,背凭れ部が傾倒状態にあるリクライニング後の状態である。 原告図⑤,⑥とも,背凭れ部のリクライニング角度Aは35度で,肘掛部の回動角度Bは,原告図⑤は30度,図⑥は13度である。 つまり,背凭れ部が35度リクライニングすることにより グ後の状態である。 原告図⑤,⑥とも,背凭れ部のリクライニング角度Aは35度で,肘掛部の回動角度Bは,原告図⑤は30度,図⑥は13度である。 つまり,背凭れ部が35度リクライニングすることにより,原告図⑤の構成においては肘掛部(手掛け部)は背凭れ部に対して5度(=35度-30度)下方に回動する一方,図⑥の構成においては,肘掛部(手掛け部)は背凭れ部に対して22度(=35度-13度)下方に回動する。つまり,原告図⑤は,図⑥と比較して,背凭れ部をリクライニングしても肘掛部との間のなす角度の変化量が小さいので,背凭れ部のリクライニングに対して肘掛部全体が図⑥の構成より背凭れ部に対して連動して回動していると言える。回動部と回 動軸心が椅子式マッサージ機に固定されていることから,その間にある固定辺は背凭れ部のリクライニングの前後で位置が変わることはない。また,リクライニングにより「肘掛部全体」が回動することから,肘掛部を構成する二辺のなす角θも変化していない。 (b) 原告図⑤の(b)と図⑥の(b)は,(a)で実線で表された肘掛部の手掛け部,連結部,背凭れ部と,破線で表された肘掛部の手掛け部,連結部,背凭れ部とを,背凭れ部が一致するように重ねたものである。 原告図⑤においては,背凭れ部が35度リクライニングすることにより,背凭れ部に対する肘掛部の手掛け部の傾きは,水平状態から5度下方に回動するだけであるが,手掛け部(肘掛部)の位置は背凭れ部から離れて,背凭れ部に対して前方且つ下方に大きく移動しており,前後方向及び上下方向に大きく変化している。また,図⑥においては,背凭れ部が35度リクライニングすることにより,背凭れ部に対する肘掛部の手掛け部の傾きは,水平状態から22度下方に回動し,さらに,手掛け部の位置(肘掛部の後部)も背凭 ている。また,図⑥においては,背凭れ部が35度リクライニングすることにより,背凭れ部に対する肘掛部の手掛け部の傾きは,水平状態から22度下方に回動し,さらに,手掛け部の位置(肘掛部の後部)も背凭れ部から離れて大きく,背凭れ部に対して前方且つ下方に移動しており,回動角度,前後方向及び上下方向とも大きく変化している。 c このように,「連結部」を長尺で構成した場合には,リクライニング前後で.肘掛部の後部が背凭れ部に対して,高さ方向に位置がずれたり,近接離隔方向に位置ずれが生じたりすることが明らかである。 肘掛部の後部が背凭れ部に対して高さ方向,近接離隔方向に位置ずれが生じる場合,背凭れ部に対する肩の位置はリクライニング前後で変化せず,肩から延びる上腕はその長さが決まっている以上,肘掛部の後部に載置される肘の位置は肘掛部の前後方向及び上下方向で位置ずれすることになる。その結果,肘から先の前腕と手の位置も同様に 位置ずれすることになる。 イ審決の構成要件Fと構成要件Dとの相互関係における矛盾審決は,構成要件Fに係る補正について,「本件当初明細書等には,「施療者の上半身における着座姿勢を保ちながら」との直接的な記載こそないものの,背凭れ部のリクライニング角度に関わらず,施療者の上半身において,胴体,頭部,上腕,前腕等の各部の相対的な位置関係が概ね保たれる事項が実質的に記載されているものと理解できるのであるから…」と判断する。また,審決は,動き得る構造として開示されていない【図4】に依拠して,背凭れ部12aの側部と,連結部142aの中心で,肘掛部14aと背凭れ部12aとが相対回転可能に連結される連結関係の構造を前提にして,「本件当初明細書等には,リクライニングの前後において,肘掛部が椅子本体に対して前後方向に移動するので,前 心で,肘掛部14aと背凭れ部12aとが相対回転可能に連結される連結関係の構造を前提にして,「本件当初明細書等には,リクライニングの前後において,肘掛部が椅子本体に対して前後方向に移動するので,前腕部施療機構における前腕部の位置が変わらない事項が記載されているところ,この「前腕部の位置が変わらない」とは,より正確には,胴体に対して上腕ないし肘の位置が変わらない結果,前腕部施療機構における前腕部の位置も変わらない,ということを意味することは,人体の構造からみて明らかである。」と判断する。 しかし,この部分の判断は,構成要件Dに係る補正について,「仮に,本件補正後の「連結部」の連結態様として,請求人のいう「連結部142aを中心に「肘掛部14a」と「背凭れ部12a」が相対回動可能な関係で連結されている」こと以外の態様が含まれていたとしても,「前記肘掛部の後部と前記背凭れ部の側部とを連結する連結部」を追加する補正が,本件当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものとはいえない。」という判断と明らかに矛盾する。 (3) 審決は本件発明の理解を誤り,事実の認定を誤ったものであって,この誤 りは審決の結論に影響するものであるから,審決は取り消されるべきである。 3 取消事由3(実施可能要件についての判断の誤り)について(1) 本件明細書の記載について前記1及び2のとおり,本件明細書には,[1]肘掛部と背凭れ部との連結関係,[2]肘掛部と座部との連結関係,[3]背凭れ部と座部との連結関係の3つの連結関係により動く構造が一切明らかにされておらず,動き得る構造がただの一つも実施例として開示されていない。そのために,肘掛部が背凭れ部のリクライニングに連動して,どのように 部との連結関係の3つの連結関係により動く構造が一切明らかにされておらず,動き得る構造がただの一つも実施例として開示されていない。そのために,肘掛部が背凭れ部のリクライニングに連動して,どのように動くのかの技術的な構成が全く特定されておらず不明であるから,実施可能要件に適合しない。 (2) 審決の判断について審決の判断は次のとおり誤りである。 ア審決は,具体性の無い「適宜の回動手段」,「適宜の連結手段」という「適宜の」手段で当業者にとって本件発明1の実施が可能であると判断したが,何ら具体性の無い「適宜の」手段では,前記1及び2(原告の主張)のとおり,構成要件Fの「前記背凭れ部のリクライニング角度に関わらず施療者の上半身における着座姿勢を保ちながら」が担保されない構成の場合も技術的範囲に含まれる結果になる。「適宜の」手段を当業者が補わなければならないのでは,すべての記載を総合しても意味不明であるため,実施可能要件についても具備しているとは言えない。 イ審決は,前記1及び2のとおり,肘掛部と背凭れ部がリンクで連結されている「連結部」を有する態様も本件特許に含まれても良い構成であると判断しているから,このような構成を前提として,構成要件D及びEとに基づき,構成要件Fの「前記背凭れ部のリクライニング角度に関わらず施療者の上半身における着座姿勢を保」たれるとの構成要件とを,一体の構成の中で,相互の関係が技術的に矛盾なく理解できなければならないが,これらの関係を含めた本件発明1の技術的意味が全く明確ではない。審決 は,「連結部」にリンクを含むことを明確にせず,本件明細書等の開示に基づいて,当業者が原出願時点の技術常識に基づいて認識・理解し得るとするだけで,具体的に動き得る本件発明1の構造を何一つ開示しないまま実施可能と認定 ンクを含むことを明確にせず,本件明細書等の開示に基づいて,当業者が原出願時点の技術常識に基づいて認識・理解し得るとするだけで,具体的に動き得る本件発明1の構造を何一つ開示しないまま実施可能と認定判断している。 ウ審決は,本件明細書に開示された構造では,「背凭れ部12aの回動,肘掛部14aの回動が不可能」であると認定しているが,本件明細書には,具体的な,[1]肘掛部と背凭れ部との連結関係,[2]肘掛部と座部との連結関係,[3]背凭れ部と座部との連結関係の相互の関係により,肘掛部が背凭れ部のリクライニングに連動して動き得る構造を示していない。 エ審決は,補正要件適合性の判断においては,背凭れ部に対する肘掛部の前後移動や,背凭れ部のリクライニングに伴う肘掛部の傾倒について【図4】に頼った判断をしているが,【図4】は一見して「背凭れ部12aの回動,肘掛部14aの回動が不可能」であるとの審決の判断と整合しない。 (3) 被告の主張する具体的構成についてア構成要件Dは,「前記肘掛部の下部に設けられ」た「回動部」が「前記背凭れ部のリクライニング動作の際に前記連結部を介して前記肘掛部全体を前記座部に対して回動させる」ことを特定する。 そして,「回動」は,正逆両方向の円運動であり,本件明細書の「前記肘掛部14aの下部に前後方向に回動するための回動部141aを設けると共に,肘掛部14aの後部で回動可能に前記背凭れ部12aの側部と連結する連結部142aを設けて構成している。」との記載(段落【0055】)及び【図4】に基づいて解釈しても,構成要件Dにおける「回動」は,回動軸心を中心とした円運動であると解される。 そして,構成要件Dの「回動部」は肘掛部全体を「座部に対して回動させる」ものであるから,座部を基準に回動部の位置が決まり,その回動部 ける「回動」は,回動軸心を中心とした円運動であると解される。 そして,構成要件Dの「回動部」は肘掛部全体を「座部に対して回動させる」ものであるから,座部を基準に回動部の位置が決まり,その回動部を中心として肘掛部全体が円運動することを特定している。 イ被告の主張する別紙被告主張図面目録の具体的構成(以下,同目録記載の図面については「【被告参考図①-1】」などという。)は,(ⅰ)円柱状部材は座部の特定の位置にある回動中心を軸心とした円運動を行い,(ⅱ)肘掛部全体は円柱状部材の長手方向に沿って,円柱状部材に対する直線運動を行うもので,これにより,座部に対して肘掛部全体は,座部にある回動中心の軸心に対する円運動と円柱状部材に対する直線運動とを合成した複合的な運動を行う。 そして,被告が,「肘掛部全体が円柱状部材から上記空洞部に沿って遠ざかるように移動している。」と述べているように,肘掛部全体に対して相対移動可能な円柱状部材という別の部材に回動部を設けている。 このような構成は,構成要件Dにおける「回動」には当て嵌まらず,「前記肘掛部全体を前記座部に対して回動させる回動部」とは言えない。 したがって,被告の示す【被告参考図①-1】~【被告参考図③】の構造は,本件発明1の椅子式マッサージ機とは言えない。 ウ被告の主張する構成は,肘掛部14aに「空洞部」を設けると共に,肘掛部14aとは別体で,「空洞部」に嵌入することにより肘掛部14aと相対変位可能な「円柱状部材」を回動部141aから延びるように設けて,「連結部142a」と「回動部141a」との距離が変更可能な構造としたものであり,出願当時の当業者には想定できない特異な要素を付加している。このような構成は,本件明細書の記載に接した当業者が本件特許の出願当時の技術水準 回動部141a」との距離が変更可能な構造としたものであり,出願当時の当業者には想定できない特異な要素を付加している。このような構成は,本件明細書の記載に接した当業者が本件特許の出願当時の技術水準を背景として認識・理解し得るとは到底いえ言えない。 被告の主張する構成は,椅子式マッサージ機における肘掛部の可動構造として特異な構造であるだけでなく,マッサージ機構を備えない「背凭れ部がリクライニング可能な椅子」における肘掛部の可動構造としても特異な構造である。被告が主張する構成は,特許出願すれば出願前の公知技術として本件特許の公開公報の存在を前提にしても,進歩性が認められるレベ ルの発明である。 (4) 実施可能要件の適合性についての審決の判断には誤りがあり,この誤りは審決の結論に影響するものであるから,審決は取り消されるべきである。 4 取消事由4(サポート要件についての判断の誤り)について(1) 構成要件Fの「前記背凭れ部のリクライニング角度に関わらず施療者の上半身における着座姿勢を保ちながら,・・・空圧施療を行う」は,本件発明1の課題をそのまま構成として特許請求の範囲に追加したものである。 「連結部」が本件明細書の段落【0055】記載の「肘掛部14aの後部で回動可能に背凭れ部12aの側部と連結する連結部142aを設けて構成」されていると考えれば,背凭れ部12aの側部の「連結部142a」に対応する位置は,リクライニング動作において,「回動部141a」を軸心とする円弧軌跡上を移動しなければならない。しかし,背凭れ部12aのリクライニング機構の具体的構成は本件明細書に記載されていない。 本件明細書の【図4】でも,背凭れ部の回動角度約35度に対して肘掛部の回動角度約15度と,回動角度に倍以上の差があり,椅子式マッサージ機1aのリ グ機構の具体的構成は本件明細書に記載されていない。 本件明細書の【図4】でも,背凭れ部の回動角度約35度に対して肘掛部の回動角度約15度と,回動角度に倍以上の差があり,椅子式マッサージ機1aのリクライニング動作において,肘掛部14aが背凭れ部12aに固定されていて相対移動せず完全に一体として動くことは前提にしていない発明と当業者は考える。「連結部142a」により「背凭れ部12a」と「肘掛部14a」の相対回転を許容しているが,当該相対回転を実現するための背凭れ部12aのリクライニング機構が記載されていない。 背凭れ部12aのリクライニング機構が不明であるので,構成要件Dと構成要件Eを備えればそのまま「背凭れ部のリクライニング角度に関わらず施療者の上半身における着座姿勢を保」たれるという因果関係も当業者に理解し得ない。 つまり,本件発明1の課題でもある構成要件Fの「前記背凭れ部のリクライニング角度に関わらず施療者の上半身における着座姿勢を保ちながら,・・・ 空圧施療を行う」を解決するための手段が本件明細書に記載されておらず,本件発明1は,本件明細書等の記載に基づき当業者が課題を解決できると認識できる発明ではない。 審決は,[1]肘掛部と背凭れ部との連結関係,[2]肘掛部と座部との連結関係,[3]背凭れ部と座部との連結関係により,肘掛部が背凭れ部のリクライニングに連動して動く動き方(動作)が特定されるにも関わらず,構成要件Eに係る「肘掛部全体が,前記背凭れ部のリクライニング動作に連動して,リクライニングする方向に傾く」機構が,本件明細書に記載されているか否かについて,「[2]肘掛部と座部との連結関係」だけを切り出すことにより,発明の詳細な説明及び図面に全体として動き得る構造は一つも開示されていないにもかかわらず,「[2]肘掛 書に記載されているか否かについて,「[2]肘掛部と座部との連結関係」だけを切り出すことにより,発明の詳細な説明及び図面に全体として動き得る構造は一つも開示されていないにもかかわらず,「[2]肘掛部と座部との連結関係」の部分だけは記載されているという理由で,肘掛部を背凭れ部のリクライニングに連動させる全体としての機構を考慮することなくサポート要件の具備を判断しており,誤りである。 審決は,本件発明がサポート要件を備えることの具体的な理由として,構成要件D,Eを備えれば構成要件Fも満たされる具体的構造を示しておらず,「「適宜の回動手段」,「適宜の連結手段」を,既知の機械的手段から選択」すれば,なぜ,構成要件Fの「前記背凭れ部のリクライニング角度に関わらず施療者の上半身における着座姿勢が保たれる」ことになるのかが全く明らかではない。 (2) サポート要件の適合性についての審決の判断には誤りがあり,この誤りは審決の結論に影響するものであるから,審決は取り消されるべきである。 5 取消事由5(明確性要件についての判断の誤り)について(1) 実施可能要件の判断に基づいた不明確性審決は,実施可能要件については,「適宜の回動手段」,「適宜の連結手段」を既知の機械的手段から選択することで本件発明1が実現できると判断 しているが,本件発明1の実施に際して,具体的な構造を一つも示すことなく既知の機械的手段から「適宜の回動手段」,「適宜の連結手段」を選択すればよいというのでは,本件明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時における技術的常識を基礎にしたとしても,特許請求の範囲の記載は不明確である。 (2) 甲4文献及び甲5文献記載の発明の認定に基づいた不明確性審決は,甲4文献及び甲5文献に記載された発明における肘掛けの移 的常識を基礎にしたとしても,特許請求の範囲の記載は不明確である。 (2) 甲4文献及び甲5文献記載の発明の認定に基づいた不明確性審決は,甲4文献及び甲5文献に記載された発明における肘掛けの移動を単なる「前後移動」と認定しており,本件発明1の肘掛部の「回動」とは異なると判断している。 しかし,審決の判断からは,両発明における肘掛けの「前後移動」と,本件発明1の肘掛部の「回動」との機構の違いが理解できない。このように機構の違いがそもそも認識できないのであるから,どのような「適宜の回動手段」,「適宜の連結手段」を選択すればよいのか当業者には到底認識できず,本件発明1が明確であるとはいえない。 甲4文献に記載された発明の構造は,審決が認定する単なる「前後移動」というよりは,肘掛け部4を背もたれ2に対してより連動して大きく回動することを意図した構造であり,本件発明1の「回動」に類似する構造である。 また,甲5文献に記載された発明の背もたれ部3のリクライニング動作の際に肘掛け部7の後端部が前端部に対して下がっていくように傾倒する構成も同様である。このように,甲4文献及び甲5文献のいずれにも,単なる「前後移動」ではなく本件発明1と同様の回動の構成が開示されており,当業者が技術常識に基づいて,審決が認定する「前後移動」と「回動」との違いを認識できない。単なる「前後移動」と「回動」との違いを認識できないのであるから,審決が言う「適宜の回動手段」,「適宜の連結手段」がどのようなものであるのかを予測することはできず,本件明細書に接した当業者が,「適宜の回動手段」,「適宜の連結手段」で補わなければならない本件発明 1の技術的範囲を予測することができるとは言えない。 このように,本件発明1の特許請求の範囲の記載は,第三者に不測の不利益を及 回動手段」,「適宜の連結手段」で補わなければならない本件発明 1の技術的範囲を予測することができるとは言えない。 このように,本件発明1の特許請求の範囲の記載は,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (3) 明確性要件の適合性についての審決の判断には誤りがあり,この誤りは審決の結論に影響するものであるから,審決は取り消されるべきである。 6 取消事由6(進歩性欠如に関する判断の誤り①)について(1) 本件補正は,本件当初明細書等に記載された事項の範囲内の補正ではないことは,取消事由1及び2のとおりであり,本件補正が適法であることを前提に本件補正により追加された構成要件D、Fに係る事項が原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内のものであることも明らかであるとした審決の判断は誤りである。 (2) 審決には,無効理由5に係る進歩性欠如についての判断に誤りがあり,この誤りは審決の結論に影響するものであるから,取り消されるべきである。 7 取消事由7(進歩性欠如に関する判断の誤り②)について(1) 相違点3の容易想到性についてア機構学の基本書(甲31,32)にも載っているように,リンクの形状,待遇の形状を変えることは設計的事項である。 甲31の図3.18(a),(d)にはリンク機構の例が示されている。 図3.18(a),(d)において,リンク①が背凭れ部に対応し,リンク②が連結部に対応する。 甲3文献に記載の発明(以下「甲3発明」という。)の肘受け部材23は,(d)のすべり子(slidingblock)に相当する。一方,本件発明1の肘掛部全体は,(a)のリンク③を肘掛部全体という構造としたものに相当する。参考までに,(d)のすべり子を全周に拡大した図3.18(c)も示す。 る。一方,本件発明1の肘掛部全体は,(a)のリンク③を肘掛部全体という構造としたものに相当する。参考までに,(d)のすべり子を全周に拡大した図3.18(c)も示す。 図3.18(甲31) 甲32においては,図6.9にリンク機構の例が示されている。図6. 9(a),(b)において,リンクA(節A)が背凭れ部に対応し,リンクBが連結部に対応する。 甲3発明の肘受け部材23は,(b)のスライダCに相当する。一方,本件発明1の肘掛部全体は,(a)のてこCを肘掛部全体という構造としたものに相当する。 図6.9(甲32) さらに,甲3文献の図1に開示された甲3発明から本件発明1への単なる設計変更について説明する。 (甲3の【図1】)甲3文献の図1における,肘受け部材23が半円形状の肘掛け部2に沿 って前後方向に摺動する構成を模式的に表すと図⑨のとおりとなる。この構成において,前記機構学の基本書にも載っている回動させる設計的事項を適用すると,図⑩のとおりとなる。このように図⑨の構成に機構学上の設計的事項を適用すると,まさに本件発明1における,肘掛部14aの下方に備える回動軸心である回動部141a周りに肘掛部全体を回動する構成を模式的に表したものとなる。 イ以上のとおり肘掛部全体を座部に対して回動させるように変更することは,機構学上の単なる設計的事項に過ぎず,当業者が甲1発明に甲3発明を適用することにより,本件発明1を容易に想到することができる。 (2) 審決には,無効理由6に係る進歩性欠如についての判断に誤りがあり,この誤りは審決の結論に影響するものであるから,取り消されるべきである。 第4 被告の反論 1 取消事由1(補正要件についての判断の誤り(構成 無効理由6に係る進歩性欠如についての判断に誤りがあり,この誤りは審決の結論に影響するものであるから,取り消されるべきである。 第4 被告の反論 1 取消事由1(補正要件についての判断の誤り(構成要件D))について本件当初明細書等の段落【0055】及び【図4】に本件補正後の構成要件Dに関する説明がされていたことは明らかであるから,審決の認定判断は正当である。 原告が自ら設定する仮定の構成(連結部がリンクを構成する長尺のものであり,一端が肘掛部の後部と連結され,他端が背凭れ部の側部と連結されている構成)は,原告独自の仮定であるため内容が判然としないし,原告が仮定の構成に関連して主張を展開する4連リンク機構との整合性や関連性も不明である。補正要件違反(新規事項の追加)の検討においては,当初明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するか否かが問われるのであり,特許権侵害の属否を検討するかのように個々の具体的な構成が特許請求の範囲に含まれるか否かを検討する必要はない。原告は(本件補正後の構成要件Dでは)「構成要件Fとの有機的な関連が損なわれてしまう。」等と主張しており,本件補正後の構成要件Dが本件当初明細書等の範囲 に含まれるのか否かの論述になっていない。したがって,かかる意味においても,原告の主張は失当である。 2 取消事由2(補正要件についての判断の誤り(構成要件F))について新規事項の追加が許されるか否かは,当初明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するか否かで判断されるところ,本件補正後の構成要件Fは,本件当初明細書等の【0018】,【0054】,【0055】及び【図4】等の記載を総合することにより導かれる技術的事 て新たな技術的事項を導入するか否かで判断されるところ,本件補正後の構成要件Fは,本件当初明細書等の【0018】,【0054】,【0055】及び【図4】等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから,審決の認定判断は正当である。 原告は,原告独自の図や「3つの連結関係」等を用いつつ主張するものの,その主張の内容が判然としないばかりか,そもそも,本件補正後の構成要件Fが本件当初明細書等との関係において新たな技術的事項を導入するものであるか否かについての論述となっていない。 3 取消事由3(実施可能要件についての判断の誤り)について(1) 実施可能要件に適合すること原告は,本件明細書の【図4】の内容につき,「一見して「背凭れ部12aの回動,肘掛部14aの回動が不可能」」であると主張しているものと思われるが,審決も指摘しているとおり,【図4】は,背凭れ部が座部に対して回動し,背凭れ部に連結された肘掛部が回動するという事項(段落【0054】,【0055】)を概略的に図示したものであり,そのための「適宜の回動手段」「適宜の連結手段」については当業者が過度の試行錯誤なく適宜に行い得る程度のことでもあることから,そのための具体的構造までは特に示していない。つまり,【図4】においては,当業者において過度の試行錯誤なく適宜に行い得る「適宜の回動手段」「適宜の連結手段」を用いることが想定されており,それにより本件明細書の段落【0018】,【0054】,【0055】等に記載された事項が可能となることは明らかであるか ら,原告による「一見して『背凭れ部12aの回動,肘掛部14aの回動が不可能』」である旨の主張は失当である。 また,原告は,上記のように,「「適宜の回動手段」,「適宜の連 は明らかであるか ら,原告による「一見して『背凭れ部12aの回動,肘掛部14aの回動が不可能』」である旨の主張は失当である。 また,原告は,上記のように,「「適宜の回動手段」,「適宜の連結手段」を,既知の機械的手段から選択する具体的な内容も示されず,そのために,構成要件D,構成要件Eと構成要件Fとの因果関係も明確にされずに,・・・結論だけを示す審決は理由不備の違法な審決であり取り消されるべきである。」とも主張するが,審決が理由中において,当業者において過度の試行錯誤なく適宜に行い得る「適宜の回動手段」「適宜の連結手段」の具体例を示す必要性は認められないから,かかる意味においても原告の主張は失当である。 上記のように,背凭れ部がリクライニングする機構等の具体的な設計については,本件明細書の各記載に接した当業者が本件特許の出願当時の技術水準を背景として認識して理解し得る事項であり,審決の認定判断するとおり当業者において過度の試行錯誤なく適宜に行い得る程度の既知の機械的手段にすぎない。このような既知の手段についてまで特許出願にあたり具体的に記載や例示しなければならないとすれば,特許出願人に過度の負担を強いることになってしまう。 (2) 具体的構成の例【被告参考図①-1】及び【被告参考図①-2】は,座部,背凭れ部,側壁部及び肘掛部を有する椅子式マッサージ機の概略図(リクライニング前)である。 このような椅子式マッサージ機の背凭れ部がリクライニングする過程につき順を追って図示したものが【被告参考図②】及び【被告参考図③】である。 【被告参考図②】から【被告参考図③】にかけて椅子式マッサージ機の背凭れ部がリクライニングして後方に倒れていく様子が示されている。そして,その背凭れ部のリクライニング動作に連動して肘掛部全体がリクラ 【被告参考図②】から【被告参考図③】にかけて椅子式マッサージ機の背凭れ部がリクライニングして後方に倒れていく様子が示されている。そして,その背凭れ部のリクライニング動作に連動して肘掛部全体がリクライニ ングする方向に傾く様子も示されている。 【被告参考図①-1】及び【被告参考図①-2】においては,肘掛部の下部に設けられた回動部から延びる円柱状部材が肘掛部内に存在する空洞部の奥まで達している。これに対して,【被告参考図②】から【被告参考図③】にかけては,背凭れ部のリクライニング動作に連動して肘掛部全体がリクライニングする方向に傾くに従って,肘掛部全体が円柱状部材から上記空洞部に沿って遠ざかるように移動している。 このようにして肘掛部全体が回動することにより,背凭れ部のリクライニング角度にかかわらず,施療者の上半身における胴体,頭部,上腕,前腕等の各部の相対的な位置関係が概ね保たれることになり,着座した施療者の肩または上腕から前腕がすべて無理な姿勢とならずに施療位置から外れないことになる。 もっとも,背凭れ部がリクライニングする機構等の具体的な設計については,本件明細書の各記載に接した当業者が,本件明細書の各記載を前提に本件特許の出願当時の技術水準を背景として普通に認識・理解し得るものであり,必ずしも上記のような機構に限定されるものではない。 4 取消事由4(サポート要件についての判断の誤り)について上記3において述べたとおり,本件明細書の【図4】は,背凭れ部に連結された肘掛部が背凭れ部のリクライニング動作に連動して回動するという事項(段落【0018】,【0054】,【0055】)を概略的に図示したものであり,そのための「適宜の回動手段」「適宜の連結手段」については当業者が過度の試行錯誤なく適宜に行い得る程度のことである 事項(段落【0018】,【0054】,【0055】)を概略的に図示したものであり,そのための「適宜の回動手段」「適宜の連結手段」については当業者が過度の試行錯誤なく適宜に行い得る程度のことであるから,そのための具体的構造までは特に示されていない。そして,前記のように,当業者において過度の試行錯誤なく適宜に行い得る程度の既知の機械的手段についてまで明細書において具体的に特定する必要はない。 また,そのような機構を採用すると,背凭れ部のリクライニング角度に関わ らず,施療者の上半身における胴体,頭部,上腕,前腕等の各部の相対的な位置関係が概ね保たれることも,当業者であれば当然に認識できることであり,これらのことにつき,審決は理由を示しつつ明確かつ具体的に判断を示している。 したがって,原告の主張は失当である。 5 取消事由5(明確性要件についての判断の誤り)について背凭れ部がリクライニングする機構等の具体的な設計については,本件明細書の各記載に接した当業者が本件特許の出願当時の技術水準を背景として当然に認識し,理解し得る事項であり,審決も認定判断するとおり当業者において過度の試行錯誤なく適宜に行い得る程度の既知の機械的手段にすぎない。このような過度の試行錯誤なく適宜に行い得る程度の既知の手段については,明細書において具体的に特定するまでもなく当業者にとって明確であり,かかる事項についてまで特許出願にあたり具体的に記載や例示しなければならないとすれば,特許出願人に過度の負担を強いることになってしまう。 原告の主張は,当業者において過度の試行錯誤なく適宜に行い得る程度の既知の技術手段も具体的に記載しなければ,すべて明確性要件違反として無効にすべきというものであり,余りにも不合理かつ失当なものである。 さらに,原告は,甲4文 過度の試行錯誤なく適宜に行い得る程度の既知の技術手段も具体的に記載しなければ,すべて明確性要件違反として無効にすべきというものであり,余りにも不合理かつ失当なものである。 さらに,原告は,甲4文献及び甲5文献に関する審決の認定判断を用いつつ,審決の明確性要件に関する認定判断を批判するが,その論旨は判然とせず,明確性要件に関する審決の認定判断に対する取消事由との関連性等は認められない。いずれにしても,構成要件D~Fの因果関係が明確であり,構成要件Fの技術的意義も明確であることは前記のとおりであるから,審決の認定判断は正当である。 6 取消事由6(進歩性欠如に関する判断の誤り①)について原告の主張する本件特許の補正要件違反(新規事項の追加)に関する主張が失当であることは前記のとおりであるから,不適法な分割出願であることを前 提とする進歩性欠如の主張が失当であることも明らかである 7 取消事由7(進歩性欠如に関する判断の誤り②)について原告が指摘する各図面等(甲31,32)に示されている部材等と本件発明及び甲3発明の各構成との対応関係に関する説明は,本件発明を無効とするための後付け的かつ独善的なものであって不合理である。 また,そもそも,本件発明は,椅子式マッサージ機において,肘掛部の後部と背凭れ部の側部とを連結する連結部,及び,肘掛部の下部に肘掛部全体を回動させるための回動部という各部材を設けることにより,背凭れ部がリクライニングしても,肘掛部全体が背凭れ部のリクライニング動作に連動して傾くように構成され,背凭れ部のリクライニング角度に関わらず施療者の上半身における着座姿勢を保ちながら空圧施療を行い得るようにする技術であるところ,原告が指摘する書籍(甲31,32)の内容と本件発明の上記技術内容との関連性は認められず,仮 グ角度に関わらず施療者の上半身における着座姿勢を保ちながら空圧施療を行い得るようにする技術であるところ,原告が指摘する書籍(甲31,32)の内容と本件発明の上記技術内容との関連性は認められず,仮に,原告が指摘する書籍(甲31,32)の内容によったとしても,相違点3に係る具体的な構成(連結部を肘掛部の後部に設け,肘掛部の下部に回動部を設け,背凭れ部のリクライニング動作に連動して肘掛部全体が移動して施療者の上半身における着座姿勢が保たれるようにする構成)がリクライニングする椅子式マッサージ機における単なる設計的事項と認定されるものとはなり得ない。 原告は,相違点3につき,「当業者が甲1発明に甲3発明を適用することにより,本件発明1を容易に想到することができる。」と主張するが,甲3発明には,審決も認定するとおり,相違点3に係る構成が開示されたものが認められないことから,原告の主張は明らかに失当である。 第5 当裁判所の判断 1 本件発明について(1) 特許請求の範囲の記載本件補正前の特許請求の範囲の記載は上記第2の2(2)ア,本件補正後の特 許請求の範囲の記載は上記第2の2(1)に記載のとおりである。 (2) 本件明細書の記載本件明細書には以下の記載がある(甲17)。なお,本件明細書中,補正がされた部分は【0010】のみであり,補正前の記載は,前記第2の2(2)イのとおりである(甲7,8)。 ア技術分野【0001】 本発明は,肘掛部に施療者の前腕部をマッサージする前腕部施療機構を備えた椅子式マッサージ機に関するものである。 イ背景技術【0002】 従来の,座部と背凭れ部,そして該座部の左右両側に肘掛部を設けた椅子式マッサージ機において,肘掛部の上部に前腕部施療機構を備えて,着座した施療者の腕部をマッ ある。 イ背景技術【0002】 従来の,座部と背凭れ部,そして該座部の左右両側に肘掛部を設けた椅子式マッサージ機において,肘掛部の上部に前腕部施療機構を備えて,着座した施療者の腕部をマッサージする形態のものは既に存在し,市場では商品化されている。 【0003】 例えば,図19に示すような,前腕部施療機構を備えた椅子式マッサージ機が開示されている。すなわち,手揉機能付施療機1として,肘幅方向両側に各々立上り壁211・211を設けた肘掛部21を椅子本体2の両側に設けており,その肘掛部21の各立上り壁211・211間に人体手部を各々嵌脱自在で該人体手部に膨縮施療を付与し得るよう,圧縮空気給排気手段を配設して成り,施療者が着座状態で人体手部を両肘掛部21・21上面部に安定的に保持させて,人体手部及び腕部を効率良く空圧施療する事ができるよう構成したものである。尚,肘掛部21の前側上面部は,立上り壁211が形成されておらず,平坦になっている。 【0004】 さらに,前述したような左右一対の立上り壁を左右の肘掛部の長さ方向全域に夫々設けた形態のものを図20に示す。すなわち, 凹部の内壁に,人体の肢体を挿入するための空間を設けるように空気袋を夫々取着して施療部を形成し,空気袋に空気を給排気して空気袋を膨張及び収縮させる給排気装置を連通して設けてなるエアーマッサージ機3を,椅子20の肘掛けの上部全域に設けた構成である。 ウ発明が解決しようとする課題【0006】 ところで,従来の図20に示すような,肘掛部の長さ方向全域に前腕部施療機構として左右一対の立上り壁を設けた椅子式マッサージ機は,手部及び前腕部の広範を同時にマッサージする事ができて便利であるが,施療者の肘関節付近にまで該各立上り壁が形成されているため,図18に 施療機構として左右一対の立上り壁を設けた椅子式マッサージ機は,手部及び前腕部の広範を同時にマッサージする事ができて便利であるが,施療者の肘関節付近にまで該各立上り壁が形成されているため,図18に示すように,上腕部内側の肘関節付近を施療者側である内側立上り壁623が圧迫して,施療者に不快感を与えたり,また,前腕部施療機構における腕部の載脱行為を妨げたりするなどの欠点があった。特に,施療者の身長が低くて小柄である程,内側立上り壁623による圧迫が大きくなると考えられる。 【0007】 また,着座した施療者が立ち上がる際,或いは着座する際において,通常は肘掛部の前端部を手で掴んで体重を掛けるのであるが,図20に示す形態の椅子式マッサージ機は,肘掛部の前端部にまで左右の立上り壁が形成されているため,肘掛部の前端部の上面部が開口された形態となり,そのような部分に体重を掛ける事は困難であった。 【0008】 一方で,左右一対の立上り壁を設けた椅子式マッサージ機において,図19に示すような肘掛部の前側上面部に該立上り壁が形成されず,平坦になった部分を有する構成のものに関しては,該平坦になった部分を手掛け部として体重を掛ける事ができるのであるが,左右一対の立上り壁間に形成される凹部の底面部と,該手掛け部の平坦になった部分とが同じ高さの同面であるため,手掛け部を掴んで立ち上がろうとする際,前述した図18に示すのと同様,内側立上り壁623によっ て上腕部内側の肘関節付近が圧迫を受け,その付近と共に前腕部の内側が摺擦されながら,凹部から腕部が離脱する事になり,この場合も施療者に対して不快感を与えるものとなると考えられ,解決すべく問題となっていた。 【0009】 そこで,本発明は,上記問題点を解消する為に成されたものであり,施療者の腕 する事になり,この場合も施療者に対して不快感を与えるものとなると考えられ,解決すべく問題となっていた。 【0009】 そこで,本発明は,上記問題点を解消する為に成されたものであり,施療者の腕部に対し,前腕部施療機構の立上り壁が不必要に圧迫して不快感をもたらす要因を解消し,前腕部施療機構における腕部の載脱をスムーズに行うよう構成すると共に,前腕部施療機構を有していても施療者が起立及び着座を快適に行う事ができるよう構成した椅子式マッサージ機を提供する事を目的とするものである。 エ課題を解決するための手段【0010】 すなわち,本発明の椅子式マッサージ機は, 座部と前記座部の後側でリクライニング可能に連結された背凭れ部を有する椅子本体と,前記背凭れ部の左右の側壁部と,該椅子本体の両側部に設けた肘掛部と,を有する椅子式マッサージ機において,前記左右の側壁部は,前記座部に着座した施療者の肩または上腕側方となる位置に配設しており,前記左右の側壁部の内側面には夫々左右方向に重合した膨縮袋を備えて,これら重合した膨縮袋の基端部を前記側壁部に取り付けるように構成しており,前記肘掛部は,施療者の前腕部を載置しうるための底面部,及び外側立上り壁により形成され,前腕部の長手方向において前記外側立上り壁に複数個配設された膨縮袋で前記底面部に載置した施療者の前腕部にマッサージを施すための前腕部施療機構を備えており,前記肘掛部の後部と前記背凭れ部の側部とを連結する連結部と,前記肘掛部の下部に設けられ,前記背凭れ部のリクライニング動作の際に前記連結部を介して前記肘掛部全体を前記座部に対して回動させる回動部とを設け,前記肘掛部全体が,前記背凭れ部のリクライニング動作に連動して, リクライニングする方向に傾くように構成されて,前記背凭れ部のリ して前記肘掛部全体を前記座部に対して回動させる回動部とを設け,前記肘掛部全体が,前記背凭れ部のリクライニング動作に連動して, リクライニングする方向に傾くように構成されて,前記背凭れ部のリクライニング角度に関わらず施療者の上半身における着座姿勢を保ちながら,肩または上腕から前腕に亘って側壁部及び外側立上り壁側から空圧施療を行う構成ものである。 また,本発明の椅子式マッサージ機は,前記肘掛部が前記背凭れ部の側部付近まで延設されており,かつ前記外側立上り壁が施療者の前腕部から肘部に位置するように構成する。 【0013】 また,本発明の椅子式マッサージ機は,前記肘掛部を,椅子本体に対して前後方向に移動可能に設けられており,前記背凭れ部のリクライニング角度に応じた所定の移動量を保持しながら前記背凭れ部のリクライニング動作に連動して前記肘掛部が椅子本体に対して前後方向に移動するように構成している。 オ発明の効果【0015】 よって,本発明の椅子式マッサージ機は,肘掛部に,肘掛部の内側後方から施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部を有しており,該前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の前腕部を挿入保持するための空洞部を設け,該空洞部の内部壁面各所に施療者の前腕部にマッサージを施すための前腕部施療機構を設けた構成のものであるため,前腕部に対する不必要な圧迫や摺擦をもたらす要因がなくなる。よって,前腕部施療機構におけるスムーズな前腕部の載脱が可能となり,施療者が起立及び着座を快適に行う事ができる。 【0018】 また,前記肘掛部は,椅子本体に対して前後方向に移動可能に設けられており,前記背凭れ部のリクライニング角度に応じた所定の移動量を保持しながら前記背凭れ部のリクライニング動作に連動して前記肘掛部が椅子本体 前記肘掛部は,椅子本体に対して前後方向に移動可能に設けられており,前記背凭れ部のリクライニング角度に応じた所定の移動量を保持しながら前記背凭れ部のリクライニング動作に連動して前記肘掛部が椅子本体に対して前後方向に移動するように構成する事により,背凭れ部のリクライニング角度に関係なく,肘掛部に設けた前記 前腕部施療機構における前腕部の位置が可及的に変わらないようにする事ができ,安定した前腕部に対するマッサージを行う事ができる。 カ発明を実施するための形態【0021】 以下に,本発明の椅子式マッサージ機を,図面に示す一実施形態に基づきこれを詳細に説明する。図1は本発明の椅子式マッサージ機の一実施形態を示す斜視図であり,図2は本発明の椅子式マッサージ機の一実施形態を示す使用時の斜視図であり,図3及び図4は本発明の椅子式マッサージ機の一実施形態を示す使用時の右側面図であり,図5は本発明の椅子式マッサージ機における背凭れ部の一実施形態を示す横断面説明図であり,図6は本発明の椅子式マッサージ機における肘掛部の一実施形態を示す使用時の平面説明図であり,図7乃至図12は本発明の椅子式マッサージ機における肘掛部の一実施形態を示す縦断面説明図であり,図13乃至図16は本発明の椅子式マッサージ機における肘掛部の一実施形態を示す斜視説明図であり,図17は,本発明の椅子式マッサージ機の一実施形態を示す使用時の部分正面説明図であり,図18乃至図20は従来技術を示す参考図である。 【0022】 すなわち,本発明の椅子式マッサージ機は,図1乃至図3の実施形態で示したように,施療者の臀部または大腿部が当接する座部11a,及び施療者の背部が当接する背凭れ部12aを有する椅子本体10aと,該椅子本体10aの両側部に肘掛部14aを有する椅子式マッサ 実施形態で示したように,施療者の臀部または大腿部が当接する座部11a,及び施療者の背部が当接する背凭れ部12aを有する椅子本体10aと,該椅子本体10aの両側部に肘掛部14aを有する椅子式マッサージ機1aであり,前記背凭れ部12aは,座部11aの後側にリクライニング可能に連結されると共に,座部11aの前側に上下方向へ揺動可能に連結した足載せ部13aを設け,また,背凭れ部12aの左右両側に前方に向かって突出した側壁部2aを夫々配設している。 【0023】 図1に示すように,前記背凭れ部12aには,その中央部に左右一対の施療子31aを備えた昇降自在の施療子機構3aを設けて いる。該施療子機構3aは,背凭れ部12aの内部左右に設けた左右一対のガイドレール32aに沿って背凭れ部12aの上端から下端にかけて昇降するようにしている。 【0024】 前記施療子機構3aは,モータ等を駆動源として前記左右一対の施療子31aを作動させる機械式のマッサージ機構であり,前記背凭れ部12aに凭れた施療者の首部,背部,腰部,臀部等の背面全域を,たたき,揉み,ローリング,振動,指圧などの多様な形態で施療するようにしたものである。 【0025】 また,前記椅子式マッサージ機1aの各所定の位置には,空気の給排気により膨縮を繰り返す事が可能な膨縮袋4aを夫々埋設している。該膨縮袋4aは,エアーコンプレッサー及び各膨縮袋4aに空気を分配するための分配器等からなる空気給排装置42aによる給排気により膨縮動作を行うようにしており,該空気給排装置42aは前記座部11aの下部空間に配備している。 【0054】 また,図4に示すように,前記肘掛部14aは,椅子本体10aに対して前後方向に移動可能に設けられており,前記背凭れ部12aのリクライニング角度に応じ 1aの下部空間に配備している。 【0054】 また,図4に示すように,前記肘掛部14aは,椅子本体10aに対して前後方向に移動可能に設けられており,前記背凭れ部12aのリクライニング角度に応じた所定の移動量を保持しながら前記背凭れ部12aのリクライニング動作に連動して前記肘掛部14aが椅子本体10aに対して前後方向に移動するようにしている。 【0055】 すなわち,前記肘掛部14aの下部に前後方向に回動するための回動部141aを設けると共に,肘掛部14aの後部で回動可能に前記背凭れ部12aの側部と連結する連結部142aを設けて構成している。 【0056】 または,図示しないが,前記回動部141aの代わりに,ガイドレールなどを採用した水平スライド機構を設けて,前記肘掛部14a全体が前記背凭れ部12aのリクライニング動作と連動して,水平 にスライド移動するようにしてもよい。 (3) 本件発明の特徴上記(2)によれば,本件発明は,概要次のとおりのものであると認められる。 ア本件発明は,肘掛部に施療者の前腕部をマッサージする前腕部施療機構を備えた椅子式マッサージ機に関するものである(【0001】)。 イ本件発明は,施療者の腕部に対し,前腕部施療機構の立上り壁が不必要に圧迫して不快感をもたらす要因を解消し,前腕部施療機構における腕部の載脱をスムーズに行うよう構成すると共に,前腕部施療機構を有していても施療者が起立及び着座を快適に行う事ができるよう構成した椅子式マッサージ機を提供する事を目的とするものである(【0009】)。 ウ本件発明は,上記イの目的のため,特許請求の範囲に記載の構成を採用した(【0010】)。 エ本件発明の椅子式マッサージ機は,肘掛部に,肘掛部の内側後方から施療者の前腕部を挿入するための前 ウ本件発明は,上記イの目的のため,特許請求の範囲に記載の構成を採用した(【0010】)。 エ本件発明の椅子式マッサージ機は,肘掛部に,肘掛部の内側後方から施療者の前腕部を挿入するための前腕挿入開口部を有しており,前腕挿入開口部から延設して肘掛部の内部に施療者の前腕部を挿入保持するための空洞部を設け,空洞部の内部壁面各所に施療者の前腕部にマッサージを施すための前腕部施療機構を設けた構成のものであるため,前腕部に対する不必要な圧迫や摺擦をもたらす要因がなくなる。よって,前腕部施療機構におけるスムーズな前腕部の載脱が可能となり,施療者が起立及び着座を快適に行う事ができる。また,肘掛部は,椅子本体に対して前後方向に移動可能に設けられており,背凭れ部のリクライニング角度に応じた所定の移動量を保持しながら背凭れ部のリクライニング動作に連動して肘掛部が椅子本体に対して前後方向に移動するように構成する事により,背凭れ部のリクライニング角度に関係なく,肘掛部に設けた前腕部施療機構における前腕部の位置が可及的に変わらないようにする事ができ,安定した前腕部に対するマッサージを行う事ができる(【0015】,【0018】)。 2 取消事由3(実施可能要件についての判断の誤り)について事案に鑑み,取消事由3について判断する。 (1) 実施可能要件について特許法36条4項1号は,発明の詳細な説明の記載は,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなければならないことを規定するものであり,同号の要件を充足するためには,明細書の発明の詳細な説明に,当業者が,明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて,過度の試行錯誤を要することなく,その発 とを規定するものであり,同号の要件を充足するためには,明細書の発明の詳細な説明に,当業者が,明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて,過度の試行錯誤を要することなく,その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があることを要する。 (2) 本件明細書の記載ア本件明細書には,①本件発明のマッサージ機は,施療者の臀部または大腿部が当接する座部11a,及び施療者の背部が当接する背凭れ部12aを有する椅子本体10aと,該椅子本体10aの両側部に肘掛部14aを有する椅子式マッサージ機1aであり,前記背凭れ部12aは,座部11aの後側にリクライニング可能に連結されていること(段落【0022】),②肘掛部14aは,椅子本体10aに対して前後方向に移動可能に設けられ,背凭れ部12aのリクライニング角度に応じた所定の移動量を保持しながら背凭れ部12aのリクライニング動作に連動して前記肘掛部14aが椅子本体10aに対して前後方向に移動するようにされていること(段落【0054】),③肘掛部14aの下部に前後方向に回動するための回動部141aを設けること(段落【0055】),④肘掛部14aの後部で回動可能に背凭れ部12aの側部と連結する連結部142aを設けること(段落【0055】)が記載されている。 また,【図4】は,背凭れ部12aが座部に対してリクライニングすると,背凭れ部12aに連結された肘掛部14aが前後方向に回動すること を概略的に図示している(段落【0054】,【0055】)。 イ上記アによれば,本件明細書には,[1]肘掛部の後部と背凭れ部の側部とを,「肘掛部全体が,前記背凭れ部のリクライニング動作に連動して,リクライニングする方向に傾くように」(構成要件E)連結する連結手段については連結部1 細書には,[1]肘掛部の後部と背凭れ部の側部とを,「肘掛部全体が,前記背凭れ部のリクライニング動作に連動して,リクライニングする方向に傾くように」(構成要件E)連結する連結手段については連結部142aによる回動関係が,[2]肘掛部全体を座部に対して回動させる回動手段については回動部141aによる回動関係が開示されているが,[3]背凭れ部をリクライニングするように座部に対し連結する連結手段の具体的な構成は記載されていない。また,本件明細書には,「背凭れ部のリクライニング角度に関わらず施療者の上半身における着座姿勢を保」つように(構成要件F),[1]肘掛部の後部と背凭れ部の側部とを,「肘掛部全体が,前記背凭れ部のリクライニング動作に連動して,リクライニングする方向に傾くように」連結する連結手段(構成要件D,E),[2]背凭れ部のリクライニング動作の際に上記の連結手段を介して肘掛部全体を座部に対して回動させる回動手段(構成要件D)及び[3]背凭れ部をリクライニングするように座部に対し連結する連結手段(構成要件D)の具体的な組み合わせの記載はない。 ウ審決は,本件明細書の【図4】は,背凭れ部が座部に対して回動し,背凭れ部に連結された肘掛部が回動するという事項(段落【0054】,【0055】)を概略的に図示したものであり,そのための「適宜の回動手段」「適宜の連結手段」については当業者が過度の試行錯誤なく適宜に行い得る程度のことであると認定する。 しかし,上記イのとおり,本件においては,構成要件D~Fを充足するような,[1]肘掛部の後部と背凭れ部の側部を連結する連結手段,[2]肘掛部全体を座部に対して回動させる回動手段及び[3]背凭れ部を座部に対し連結する連結手段の具体的な組み合わせが問題になっており,したがって,これらの各手段は何の制 の側部を連結する連結手段,[2]肘掛部全体を座部に対して回動させる回動手段及び[3]背凭れ部を座部に対し連結する連結手段の具体的な組み合わせが問題になっており,したがって,これらの各手段は何の制約もなく部材を連結又は回動させれば足 りるのではなく,それぞれの手段が協調して構成要件D~Fに示された機能を実現する必要がある。そうすると,このような機能を実現するための手段の選択には,技術的創意が必要であり,単に適宜の手段を選択すれば足りるというわけにはいかないのであるから,明細書の記載が実施可能要件を満たしているといえるためには,必要な機能を実現するための具体的構成を示すか,少なくとも当業者が技術常識に基づき具体的構成に至ることができるような示唆を与える必要があると解されるところ,本件明細書には,このような具体的構成の記載も示唆もない。 エ被告は,本件明細書の記載から当業者が実施し得る本件発明1の具体的な構成として,別紙被告主張図面目録記載のとおり動作するマッサージ機の具体的構成(以下「被告主張構成」という。)を主張する。 被告主張構成は,[1]肘掛部の後部と背凭れ部の側部とを本件明細書の【図4】同様の回動手段により連結し,[2]肘掛部の下部の椅子本体に設けられた回動部から延びる円柱状部材が肘掛部内に存在する空洞部に挿入され,[3]座部の後端に軸心を設けて背凭れ部を回動させる回動手段を設けた構成であり,リクライニング前は,肘掛部の下部に設けられた回動部から延びる円柱状部材が肘掛部内に存在する空洞部の奥まで達しており(【被告参考図①-2】),これをリクライニングすると,背凭れ部のリクライニング動作に連動して肘掛部全体がリクライニングする方向に傾くに従って,肘掛部全体が円柱状部材から上記空洞部に沿って遠ざかるように移動する(【 2】),これをリクライニングすると,背凭れ部のリクライニング動作に連動して肘掛部全体がリクライニングする方向に傾くに従って,肘掛部全体が円柱状部材から上記空洞部に沿って遠ざかるように移動する(【被告参考図②】から【被告参考図③】)というものである。 しかし,本件明細書には被告主張構成の記載や示唆はないから,被告主張構成が直ちに実施可能要件適合性を裏付けるものではない上に,当業者が,上記ア及びイのとおりの本件明細書の記載及び出願当時の技術常識に基づいて,過度の試行錯誤を要することなく,被告主張構成を採用し得た というべき技術常識ないし周知技術に関する的確な証拠もない。 オ以上によれば,本件明細書には,当業者が,明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて,過度の試行錯誤を要することなく,本件発明1を実施することができる程度に発明の構成等の記載があるということはできず,この点は,本件発明1を引用する本件発明2についても同様である。 したがって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。 (3) 以上のとおりであるから,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件に適合するものとはいえず,審決の判断には誤りがあるところ,その誤りは審決の結論に影響を及ぼすものであるから,取消事由3は理由がある。 3 結論以上のとおり,取消事由3は理由があるから,その余の取消事由を考慮するまでもなく,審決にはその結論に影響を及ぼす違法がある。 よって,原告の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 決にはその結論に影響を及ぼす違法がある。よって,原告の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。 主文 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官鶴岡稔彦 裁判官山門優 裁判官高橋彩 別紙本件明細書図面目録【図1】 【図2】 【図3】 【図4】 【図5】 【図19】 【図20】 別紙原告主張図面目録 原告図① 原告図② (a)(b)原告図⑤背凭れ部固定辺肘掛部連結部回動部回動軸心手掛け部A-B=5度35度30度背凭れ部固定辺肘掛部連結部回動部回動軸心背凭れ部連結部肘掛部固定辺回動軸心回動部 (a)(b)原告図⑥ 図⑨ 背凭れ部固定辺肘掛部連結部回動部回動軸心手掛け部A-B=22度35度13度肘受け部材23 図⑩ 肘掛部14a回動部141a 別紙被告主張図面目録【被告参考図①-1】 主文 2度35度13度肘受け部材23 理由 図⑩ 事実 肘掛部14a回動部141a 争点 別紙被告主張図面目録 判断 【被告参考図①-1】 【被告参考図①-2】 【被告参考図②】 【被告参考図③】
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