平成17(わ)4843 殺人,死体遺棄,未成年者誘拐,脅迫事件

裁判年月日・裁判所
平成19年3月28日 大阪地方裁判所
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判決文本文23,253 文字)

主文 被告人を死刑に処する。 理由 【罪となるべき事実】被告人は,かねて人が窒息して苦もんする表情を見ることで性的快感を得ていたものであるが,インターネットのいわゆる自殺サイト(以下「自殺サイト」という。)に投稿している者を欺いて誘い出し,同人を緊縛するなどして抵抗を排除した上窒息死させることで更に強い性的快感を得ようと企て,第1自殺サイトに投稿していた被害者A(当時25歳)(以下「A」という。)に対し,一緒に練炭を使用した一酸化炭素中毒自殺をするかのごとく装って同女を誘い出し,平成17年2月19日午後8時30分ころ,大阪府河内長野市内駐車場まで同女を同行させ,同所に駐車中の普通貨物自動車内において,殺意をもって,同女に対し,その手足を緊縛するなどした上,多数回にわたって,その鼻孔等を手で塞ぐなどして同女を苦もんさせた挙げ句失神させることを繰り返し,さらに,上記車両を使用して失神中の同女を同市内路上に連行し,同日午後10時ころ,同所に駐車中の上記車両内において,その鼻孔及び口を手で塞ぐなどし,そのころ,同所において,同女を窒息死させて殺害した第2Aの身元の判明及び判示第1の犯行の発覚を免れるため,平成17年2月19日午後10時ころ,同所に駐車中の上記車両内において,同女の死体からその衣服をはぎ取り,そのころ,河内長野市内川岸において,あらかじめ掘っておいた深さ約20センチメートルの穴に上記Aの死体を入れた上,土砂をかぶせて埋没させ,もって,死体を遺棄した第3平成17年5月14日から同月20日までの間,数回にわたって,堺市内所在のインターネットカフェGほか1か所から,自殺サイトに投稿していた,神戸市内所在のB方に居住する同人の長男被害者C(当時14歳)(以下「C」という。)に対し,メールを送信するなどの方法で,真実は, のインターネットカフェGほか1か所から,自殺サイトに投稿していた,神戸市内所在のB方に居住する同人の長男被害者C(当時14歳)(以下「C」という。)に対し,メールを送信するなどの方法で,真実は,同人を緊縛するなどして抵抗を排除した上 窒息死させる意図であるのにこれを秘し,一緒に練炭を使用した一酸化炭素中毒自殺をするかのごとく申し向けて,同人をしてその旨誤信させ,よって,同月21日午後2時ころ,同人を上記B方から大阪市東住吉区山坂2丁目1番13号所在の西日本旅客鉄道株式会社南田辺駅前まで誘い出した上,同駅付近路上に駐車中の普通貨物自動車に乗車させて,同車を大阪府泉南郡方面に向けて発進させ,Cを自己の実力支配の下に置いて未成年者である同人を誘拐した第4平成17年5月21日午後3時ころ,上記車両を使用してCを大阪府泉南郡内路上に連行し,同所に駐車中の上記車両内において,殺意をもって,同人に対し,その手足を緊縛するなどした上,多数回にわたって,その鼻孔等を手で塞ぐなどして同人を苦もんさせた挙げ句失神させることを繰り返し,さらに,上記車両を使用して失神中の同人を大阪府和泉市内路上に連行し,同日午後5時ころ,同所に駐車中の上記車両内において,その鼻孔及び口を手で塞ぐなどし,そのころ,同所において,同人を窒息死させて殺害した第5Cの身元の判明及び判示第3及び第4の各犯行の発覚を免れるため,平成17年5月21日午後5時過ぎころ,同所に駐車中の上記車両内において,同人の死体からその衣服をはぎ取り,上記車両を使用して同人の死体を同市内路上に運んだ上,同日午後5時30分ころ,同所において,道路脇の山林内に投棄して同人の死体を遺棄した第6判示第3ないし第5のとおり,Cを欺いて誘い出して殺害等したものの,あたかも同人が生存していてその身代金を要求す 午後5時30分ころ,同所において,道路脇の山林内に投棄して同人の死体を遺棄した第6判示第3ないし第5のとおり,Cを欺いて誘い出して殺害等したものの,あたかも同人が生存していてその身代金を要求するように装って電話をかけ,同人の父B(当時38歳)に心痛を与えることで満足感を得ようと企て,平成17年5月29日午後0時48分ころ及び同日午後1時09分ころ,大阪府和泉市内所在ほか1か所の公衆電話から兵庫県内に所在する同人の所持するCの携帯電話に電話をかけ,あらかじめパーソナルコンピューターを用いて合成した「お前の息子を預かった。」,「返してほしければ300万円用意しろ。」,「大阪狭山市のミスタードーナツに,明日の午後8時に持ってこい。」,「警察に通報すれば,Cの命はない。」,「警察に知らせたら,本当に殺すぞ。」などとの内容の音声を再生して上記Bに聞かせ,もって,同 人の親族たる上記Cの生命に害を加うべきことを告知して上記Bを脅迫した第7自殺サイトに投稿していた被害者D(当時21歳)(以下「D」という。)に対し,一緒に練炭を使用した一酸化炭素中毒自殺をするかのごとく装って同人を誘い出し,大阪府河内長野市内空き地まで同人を同行させ,平成17年6月10日午後5時30分ころ,同所に駐車中の普通貨物自動車内において,殺意をもって,同人に対し,その手足を緊縛するなどした上,多数回にわたって,その鼻孔等をポリエチレン製袋片を貼り付けたタオルで塞ぐなどして同人を苦もんさせた挙げ句失神させることを繰り返し,さらに,同日午後7時ころ,上記車両内において,その鼻孔及び口を上記タオルで塞ぐなどし,そのころ,同所において,同人を窒息死させて殺害した第8Dの身元の判明及び判示第7の犯行の発覚を免れるため,平成17年6月10日午後7時過ぎころ,同所に駐車中の上記車 口を上記タオルで塞ぐなどし,そのころ,同所において,同人を窒息死させて殺害した第8Dの身元の判明及び判示第7の犯行の発覚を免れるため,平成17年6月10日午後7時過ぎころ,同所に駐車中の上記車両内において,同人の死体からその衣服をはぎ取り,同車両を使用して同人の死体を同市内路上に運んだ上,同日午後7時20分ころ,同所において,道路脇の崖下山林内に転落させて同人の死体を遺棄したものである。 【累犯前科】被告人は,(1)平成13年11月27日大阪地方裁判所堺支部で傷害,暴行の罪により懲役1年(3年間執行猶予,平成14年12月26日その猶予取消し)に処せられ,平成16年3月29日その刑の執行を受け終わり,(2)その執行猶予期間中に犯した傷害の罪により平成14年8月9日大阪地方裁判所堺支部で懲役10月に処せられ,平成15年5月28日その刑の執行を受け終わったものであって,これらの事実は検察事務官作成の前科調書(乙35)及び上記(2)の前科に係る判決書謄本(乙38)によって認める。 【法令の適用】被告人の判示第1,第4及び第7の各所為はいずれも刑法199条に,判示第2,第5及び第8の各所為はいずれも同法190条に,判示第3の所為は,平成17年法律第66号附則10条により同法による改正前の刑法224条に,判示第6の所為は 刑法222条2項に,それぞれ該当するところ,各所定刑中判示第1,第4,第7の各罪については,いずれも死刑を,判示第6の罪については懲役刑をそれぞれ選択し,被告人には前記の前科があるので,同法56条1項,57条により判示第2,第3,第5,第6及び第8の各罪の刑についてそれぞれ再犯の加重をし,以上は同法45条前段の併合罪であるところ,同法46条1項本文,10条により,刑及び犯情の最も重い判示第7の罪につき被告人を死刑に処して 第5,第6及び第8の各罪の刑についてそれぞれ再犯の加重をし,以上は同法45条前段の併合罪であるところ,同法46条1項本文,10条により,刑及び犯情の最も重い判示第7の罪につき被告人を死刑に処して他の刑を科さないことにし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 【弁護人の主張に対する判断】第1責任能力に関する判断弁護人は,被告人は,本件各犯行当時,精神の障害により,事理弁識に従って自己の行動を制御する能力が失われていたため刑事責任能力を欠いていたと主張するので,以下検討する。 本件各犯行に至る経緯(1)被告人の経歴等について被告人は,大阪府内の地元の小学校,中学校,高等学校を卒業して,昭和62年石川県内の工業大学情報工学科に入学したが,後記同級生に対する暴行事件を起こして中退した。その後,印刷インク会社のインク配達業務,印刷工などの職を転々とした後,公務員試験に合格して平成5年4月から郵便局で郵便物の配達等の仕事をしていたが,平成7年2月に後記同僚に対する暴行事件を起こしたため解雇された。平成7年5月からは,暴行,傷害事件を起こして逮捕勾留されたり服役した期間を除けば,運搬会社,タクシー運転手などの職を転々としながらも稼働し,平成16年5月から本件で逮捕される平成17年8月5日までは,人材派遣会社に登録して,印刷機械の製造工として働いていた。 また,被告人は,平成11年12月から平成17年2月までの間,結婚を前提として交際する女性がいた。 (2)被告人の性癖と過去に起こした事件について 被告人は,小学校4,5年生のころ,推理小説を読んでいた際,犯人が麻酔薬を染み込ませた布を少女の口に押し当てて失神させて誘拐するという場面に性的興奮を感じ,それ以来現在まで一貫して,男女を問わず 被告人は,小学校4,5年生のころ,推理小説を読んでいた際,犯人が麻酔薬を染み込ませた布を少女の口に押し当てて失神させて誘拐するという場面に性的興奮を感じ,それ以来現在まで一貫して,男女を問わず,小学生から成人まで様々な人の鼻と口を,手や薬品を染み込ませたガーゼで塞いで,人が苦もんする表情を見ることで性的興奮を感じ,その様子を思い出しては自慰行為を繰り返し,通常の男性のように女性の裸などを見て性的興奮を感じることも,女性と性交渉をもつことも一切なかった。また,被告人は,中学生ころから,白色スクールソックスを履いている人にも性的興奮を感じるようになった。被告人は,小学校5年生ころ,近所の子供を襲って口や鼻を塞ぐという事件を起こして以来,高校卒業までに,上記のような自己の性的欲求を満たすため,通行人の口や鼻を手や薬品を染み込ませた布で塞ぐという事件を50件余り繰り返し,大学生のときには,同級生の男性が白色スクールソックスを履いているのを見て性的に興奮し,同人の首を絞めるという事件を起こし,この事件をきっかけとして中退を余儀なくされた。平成7年2月には,郵便局員として働いていた当時の勤務先の同僚に手錠を掛けて,その口や鼻を手で塞いだり,スタンガンを押し当てる暴行事件を起こして逮捕されたが,起訴されることはなかった。被告人は,この事件をきっかけに精神科に通院するようになったが,平成13年3月,通行中の女性の背後からベンジンを染み込ませたタオルを口及び鼻に押し当てる暴行を加え,同年6月には,通行中の少女に同様の暴行を加えて加療約1週間を要する傷害を負わせたという傷害,暴行事件を犯し,平成13年11月,大阪地方裁判所堺支部において懲役1年,執行猶予3年に処せられた。しかるに,被告人は,平成14年1月ころ,人を襲って口や鼻を塞いで苦しませたい 負わせたという傷害,暴行事件を犯し,平成13年11月,大阪地方裁判所堺支部において懲役1年,執行猶予3年に処せられた。しかるに,被告人は,平成14年1月ころ,人を襲って口や鼻を塞いで苦しませたいという欲望をさらに発展させて最後は窒息死させるという内容の小説をホームページ上に掲載したことをきっかけに,窒息して死に至る人間の最も苦しむ姿を見たいとの性的欲求を抱くようになった。そして,その執行猶予期間中である平成14年4月に,再び通行中の男子中学生に対し,いきな りゴム手袋をした手で同人の口を押さえ込んで転倒させるなどの暴行を加えて,加療約4週間を要する傷害を負わせたという傷害事件を犯し,平成14年8月,大阪地方裁判所堺支部において懲役10月に処された結果,前刑と併せて服役することとなり,平成16年3月29日,上記各刑の執行を受け終えて出所した。 (3)被告人の通院歴について被告人は,上記平成7年2月の郵便局の同僚に対する事件を切っ掛けに精神科に通院するようになり,主治医であるE医師から解離性障害との診断を受け,その後定期的に通院していた。平成8年10月ころ,記憶の欠落という症状が出て,約2か月間入院することがあったが,それ以後記憶の欠落は無かった。 被告人は,前記傷害,暴行罪で服役中の平成14年5月ころ,E医師に,はじめて自分の性癖を告白する内容の手紙を書き,出所後の平成16年4月に同医師の診察を受けてからは,逮捕される前の平成17年7月26日までの間,おおよそ2週間に1回の割合で通院を続けて,同医師の診察や臨床心理士のカウンセリングを受けていた。この間,被告人は,E医師や臨床心理士に対し,不眠やうつ症状を訴えて,睡眠薬や抗うつ剤の処方を受けたことがあるものの,離人感や健忘などの症状を訴えることはなかった。平成16年10月に一度だ ていた。この間,被告人は,E医師や臨床心理士に対し,不眠やうつ症状を訴えて,睡眠薬や抗うつ剤の処方を受けたことがあるものの,離人感や健忘などの症状を訴えることはなかった。平成16年10月に一度だけ,E医師に対し,「人を襲って窒息させたい衝動が抑えきれず,ゴム手袋を買ってしまった。」と相談したことがあったが,それ以外は人を窒息させたいという性的衝動を感じていることをE医師に相談することはなかった。本件各犯行前後にも,おおよそ2週間に1回定期的に通院していたが,本件各犯行を打ち明けることや性的衝動を抑える手段等について相談することはなかった。 (4)本件各犯行を思いついた経緯について被告人は,出所後3か月が過ぎた平成16年7月ころになると,過去の事件を思い出して性欲を満たすだけでは我慢できなくなり,窒息プレイをしたいという欲求を抑えきれなくなった。そこで,たまたま見かけた白色スクールソッ クスを履いていたファーストフード店の店員の名前や勤務時間,通勤経路を調べ,尾行して自宅も突き止め,同店員に対して,帰宅途中に襲って窒息行為を繰り返した後最後には窒息死させることを考えたが,死体を処理する方法が思いつかなかったことから,これを実行に移すには至らなかった。平成16年10月ころには,インターネットのSMサイトで窒息行為をされたいという人を見つければ,人を窒息させたいとの性的欲求を合法的に満たすことができると考え,同サイトで窒息行為の相手方になってくれる人を募集する書き込みをしたが,適当な相手を見つけることができないでいたところ,平成16年12月ころ,インターネットの自殺サイトにおいて,「練炭自殺をしたときの睡眠薬の効きが悪く,無意識に車のドアを開けて警察に駆け込んで失敗した」「次回は失敗しないように手足を縛ることが重要だと思っています」と ろ,インターネットの自殺サイトにおいて,「練炭自殺をしたときの睡眠薬の効きが悪く,無意識に車のドアを開けて警察に駆け込んで失敗した」「次回は失敗しないように手足を縛ることが重要だと思っています」との書き込みを見て,練炭自殺を一緒にやると騙して相手を誘い出し,この失敗談を口実に手足を縛ることができれば,誘い出した相手に抵抗されないし逃げられずに,思う存分窒息プレイが楽しめ,最後は窒息させて殺すことができることに思い至った。そこで,自殺サイトに「練炭自殺の計画あります。もしよろしければご一緒しませんか。」などとメールで投稿し,あたかも一緒に練炭自殺することを考えているかのように装いながら,窒息プレイができて最後には窒息死させる相手方を探し求めた。 犯行態様等についてそして,被告人は,本件各犯行前に,その手足を縛る際に用いる結束バンド,窒息行為に使うゴム手袋,ポリ袋やタオル,シンナー,被告人の性的興奮を高めるための白色スクールソックスなど十数個の犯行用具を予め購入した上,判示各事実記載のとおり,平成17年2月から同年6月にかけて,自殺サイトで知り合った被害者3名を,いずれも練炭自殺をするかのように装って誘い出し,白色スクールソックスを履かせて手足を縛り,その口や鼻を手やポリ片を貼り付けたタオルで塞いで窒息させることを繰り返した後,シンナーなどの薬品を嗅がせて失 神させた後,窒息死させた。これら各犯行における窒息行為や死体遺棄行為の途中において,自動車が接近,通過するなどした際には,被告人が犯行が発覚するのではないかとおそれ,固唾を飲むという場面があった。 犯行後の罪証隠滅行為等について被告人は,事前に被害者らに対しては,被告人とのメールの送受信記録を消去するように依頼し,事後には被害者らの身元発覚を防ぐために,A,C及びDの各 場面があった。 犯行後の罪証隠滅行為等について被告人は,事前に被害者らに対しては,被告人とのメールの送受信記録を消去するように依頼し,事後には被害者らの身元発覚を防ぐために,A,C及びDの各死体をパンツ1枚の下着姿ないしは全裸にしてから,山中の砂防ダムに堆積した土砂中に埋めたり,人里離れた山中の崖下に投げ捨てたりし,使用した犯行用具は犯行が終わるたびごとに捨て,レンタカーのタイヤに犯行現場の土や葉が残らないように洗車機でタイヤ周りを入念に洗い,被害者らの指紋が残らないように車内の窓ガラス等をタオルで拭き取り,被害者らの髪の毛が残らないように粘着テープの付いた掃除道具で車内を掃除し,各被害者とのメールサーバー上の送受信データを削除し,平成17年2月23日に,Aの死体が発見された際は,捜査の進行に気を掛け,大阪府警のホームページ,新聞等のニュースを調べるとともに,約2か月間,自殺サイトにアクセスすることを控え,判示第6の脅迫電話を掛けた際は,声紋から犯行が発覚しないように音声合成ソフトで作成した合成音声を使用した上,逆探知を恐れて,自分の生活圏から離れた場所の公衆電話から電話をかけ,自慰行為の材料とするため死体の状況をデジタルカメラで記録したいという欲求をも併有していたとはいえ,C及びDの各死体が警察に発見されたか否かを確認するために,死体遺棄現場に複数回赴くなどしていた。 犯行時の記憶について被告人は,本件各犯行に至る経緯,被害者らとのメールのやりとり,犯行用具の準備,犯行態様,犯行後の行動等について,極めて詳細に供述しており,特に記憶が不鮮明な部分などは見あたらないことから,犯行当時,意識障害などは生じていなかったと認められる。 小括 以上認定した事実からすると,被告人は,本件各犯行に至る前は,死体処理の方法が見つか 憶が不鮮明な部分などは見あたらないことから,犯行当時,意識障害などは生じていなかったと認められる。 小括 以上認定した事実からすると,被告人は,本件各犯行に至る前は,死体処理の方法が見つからないとの理由で犯行に及ぶのを思い止まり,合法的な方法で性欲を解消しようとしたり,人を襲いたい衝動があることを医師に相談するなどしていたのであって,窒息行為を繰り返した挙げ句に窒息死させるという行為の違法性を十分認識した上で,性的欲求に基づく行動を抑えることができていたと認められる。 また,被告人は,本件各犯行時,社会生活を営む十分な能力を有しており,人を窒息死させたいという目的だけに集中して,他のことが全く考えられなくなるようなこともなく,並行して日常生活を送り,仕事も順調にこなし,通院も2週間に1回程度の割合で継続していたことに加え,本件各犯行を容易にするために用意周到に計画し,様々な犯行用具を購入の上,本件各犯行を敢行し,罪証隠滅行為に及んでいるのであって,これらは被告人が自らが計画した目的に沿った合目的的な行動をとる能力及び本件各犯行の違法性とその重大性を十分に認識して,処罰を免れるという意図に沿った行動をする能力を有していたことを示すものであって,被告人の事理弁識能力及び行動制御能力の存在を強く推認させるものといえる。 以上のとおり,被告人の客観的な行動状況等からは,本件各犯行当時における被告人の事理弁識能力及び行動制御能力の存在に疑問を抱かせる事情は特に見あたらず,かえって,これらによる限りは,被告人は十分な事理弁識能力及び行動制御能力を備えた上で本件各犯行に及んだものと強く推認される。 性的サディズム等と責任能力の関係について本件各犯行の中心的な動機が,他人が窒息させられて苦しむ顔や姿に性的興奮を感じ,ひいては窒息死させるこ 備えた上で本件各犯行に及んだものと強く推認される。 性的サディズム等と責任能力の関係について本件各犯行の中心的な動機が,他人が窒息させられて苦しむ顔や姿に性的興奮を感じ,ひいては窒息死させることに最も性的興奮を感じるという被告人の特異な性癖に基づく欲求を満たすことにあるのは明らかである。そして,かかる動機は,被告人の性癖を前提とすれば,十分了解可能なものではあるが,一般通常人の感覚からすれば,そのような性癖は異常なものとして理解困難なものである上, 被告人は,小学校4,5年生の頃から同種の事件を多数回繰り返し,精神科への通院,刑の執行猶予の下での社会内処遇,刑務所での施設処遇,精神科医による診察,治療,臨床心理士によるカウンセリングなどの経験を経てもなお,本件各犯行を思い止まることができなかったものである。 そこで,このような被告人の性癖が,被告人の責任能力に影響する可能性のある特殊な病的要因に基づくものであるのかについて検討する。 (1)F鑑定について被告人の精神鑑定を行った鑑定人F作成の鑑定書及び同人の公判供述(以下,これらによって認められる同鑑定人の意見を「F鑑定」という。)によると,F鑑定の概要は以下のとおりである。①被告人には,てんかん,統合失調症及び解離性同一性障害は認められない,②被告人は,内因性のうつ病ではなく,重度ストレス障害に基づくうつ状態を繰り返してきたと考えられるが,本件各犯行とうつ状態との間には明白な関係は認められない,③被告人は,本件犯行当時,DSM-Ⅳの反社会性パーソナリティー障害,性的サディズム,フェティシズムの診断基準のほぼすべてに該当する,④被告人は,犯行当時,上記反社会性パーソナリティー障害,性的サディズム,フェティシズムに該当していたものの,他に一時的な精神病状態にあったとは認められな ィシズムの診断基準のほぼすべてに該当する,④被告人は,犯行当時,上記反社会性パーソナリティー障害,性的サディズム,フェティシズムに該当していたものの,他に一時的な精神病状態にあったとは認められない,⑤被告人は,本件犯行に際し,被害者を探し,巧みに交渉し,周到に犯行用具を準備し,予定どおり殺害し,殺害後も死体を隠し,犯行用具を巧みに捨て,レンタカーを正確に戻し,1回だけではなく3回にわたって巧みにほぼ同様の犯行を実行し,合成脅迫音声を作成して巧みに電話に流すなどしている。これらの計画性,巧みな行動を3回にわたって日時をあけて成し遂げたことなどからすると,被告人は,犯行当時,事理弁識能力を有していたと認められる,⑥そして,性衝動に基づく行動については,行動制御能力が喪失ないし著しく減退するものではないと判断するのが,日本及び世界の司法精神医学の分野で一般的に承認されているコンセンサスであるところ,被告人の上記反社会性パーソナリティー障 害,性的サディズム,フェティシズムもその一般論で論じられる範囲内の症状であって,一般論を逸脱するような特別な精神状態ではなかったのであるから,被告人は,犯行当時,行動制御能力も有していたと認められる。 (2)F鑑定の信用性についてF鑑定人は,司法精神医学と発達精神医学を研究し,これまでに数十件の精神鑑定に関与した実績もあるところ,本件鑑定において,一件記録を精読するとともに,被告人の小中学校時代の学習記録,被告人が通院していた病院の診療録及びカウンセリング録を検討し,被告人の両親との面接を行い,被告人の生活史,性格,症状などについて聞き取り調査をした上,被告人との複数回にわたる面接を行い,脳波検査,睡眠脳波検査,頭部CTスキャン,心理検査の専門家による各種心理テスト結果等の多方面にわたる十分な鑑定 活史,性格,症状などについて聞き取り調査をした上,被告人との複数回にわたる面接を行い,脳波検査,睡眠脳波検査,頭部CTスキャン,心理検査の専門家による各種心理テスト結果等の多方面にわたる十分な鑑定資料に基づき,前記鑑定結果に至ったもので,その鑑定の手法に特段の不合理なところはなく,鑑定書と証言を子細に検討しても,その鑑定の信用性に疑いを差しはさむべき事情は全く認められない。F鑑定の信頼性は高いものといえる。 結論 これまで検討したとおり,犯行に至る経緯,犯行態様,犯行後の罪証隠滅行為,犯行時の記憶等は被告人が十分な事理弁識能力及び行動制御能力を備えていたことを示すものであり,さらにF鑑定によれば,性的サディズム等の障害も,一般的な症状の範囲内であり,被告人の責任能力に影響を与えるようなものではないと認められる。すなわち,本件犯行動機たる被告人の性癖は,自己の行動の制御に困難ないし不能を来すような病的要因に基づくものではなく,被告人が十分な事理弁識能力及び行動制御能力を備えた上で本件各犯行に及んだとの前記推認を何ら妨げるものではない。被告人が本件各犯行当時,完全責任能力を有していたことは明らかというべきである。 弁護人は,被告人は本件各犯行当時,「プチッ」と頭にスイッチが入った「実行モード」の中にあった,優れた知性も見識も有している被告人が,他人を窒息 させることによってのみ性的興奮を覚え,その欲求をコントロールできずに,殺人という犯罪を重ねてしまったことは不可思議というほかなく,被告人自身にとっても,自らの犯罪という現実が理解できないのであるなどとして,被告人の責任能力に疑問がある旨主張する。 確かに,他人が窒息してもがき苦しむという,通常人であればその状況に自らを置き,憐憫の情等を抱くことによって犯行を抑止することにつながる情 であるなどとして,被告人の責任能力に疑問がある旨主張する。 確かに,他人が窒息してもがき苦しむという,通常人であればその状況に自らを置き,憐憫の情等を抱くことによって犯行を抑止することにつながる情況が,被告人にとってはそうではなく,もっぱら性的興奮を高める要因として作用するのであって,この意味において,被告人には一定限度におけるいわゆる「共感性」の欠如が疑われることは否定できない。 しかしながら,翻って考えると,通常の連続強姦の事案においても,行為者は被害者が苦もんする姿に接すること等によって性的興奮を高め,その状況を追い求めて犯行を繰り返す例が多いことからすると,被告人の場合には直接の強姦行為につながらず,苦もんさせ,最終的には窒息死させること自体及びその後その情況を想起しながら自慰行為にふけることによって性的欲求を満足させるという点において差異はあるものの,いずれも強い性的衝動に突き動かされての行動という側面からすると共通するものであって,質的差異はないものと考えることが可能である。F鑑定が性衝動に基づく行動については行動制御能力が喪失ないし著しく減退するものではないと判断するのが,日本及び世界の司法精神分野で一般的に承認されているコンセンサスであるとされるのも,この趣旨であると解される。結局のところ,被告人が「プチッ」と頭にスイッチが入ったようになって,自分をコントロールできなくなったと述べるところは,強い性的衝動にかられて自分をコントロールできなかったという実感を述べたものと解され,この点に虚偽があるとは考え難いものの,以上において検討してきたことから明らかなとおり,これを法的,規範的観点から見れば,被告人に本件各犯行当時十分な事理弁識能力及び行動制御能力が備わっていたものというほかない。 第2死刑制度の合憲性 弁護人 討してきたことから明らかなとおり,これを法的,規範的観点から見れば,被告人に本件各犯行当時十分な事理弁識能力及び行動制御能力が備わっていたものというほかない。 第2死刑制度の合憲性 弁護人は,死刑は憲法36条の禁止する残虐な刑罰に該当し,かつ,憲法13条,31条にも違反する旨主張する。しかしながら,死刑及びその執行方法を含む死刑制度が,残虐な刑罰に当たらず,憲法36条,31条,13条に違反しないことは確立した判例(昭和23年3月12日大法廷判決・刑集2巻3号191頁,昭和26年4月18日大法廷判決・刑集5巻5号923頁,昭和36年7月19日大法廷判決・刑集15巻7号1106頁等)であって,近時の死刑制度をめぐる国際的な趨勢など弁護人が指摘する点を十分考慮しても,我国の現行の死刑制度が憲法に違反するものとは考えられない。弁護人の主張は採用できない。 【量刑の理由】 事案の概要本件は,かねて人が窒息して苦もんする表情を見ることで性的快感を得るという性嗜好障害を有する被告人が,人を窒息死させることで最高の性的興奮を得ようと企て,平成17年2月から同年6月までのわずか4か月足らずの間に,インターネットのいわゆる自殺サイトで知り合った自殺志願者3名(当時14歳,21歳,25歳)を次々に誘い出して(うち1名は未成年者誘拐),その手足を緊縛するなどした上,鼻や口を手で塞ぐなどして窒息死させてから,その死体を山中に遺棄し,その間,未成年被害者の父親に対して,脅迫電話を掛けたという快楽目的の連続殺人等(殺人3件〔判示第1,第4,第7〕,死体遺棄3件〔判示第2,第5,第8〕,未成年者誘拐1件〔判示第3〕,脅迫1件〔判示第6〕)の事案である。 犯行動機(被告人の性癖)被告人は,小学校4,5年生のころから人が口や鼻を塞がれて苦もんする姿に性的 判示第2,第5,第8〕,未成年者誘拐1件〔判示第3〕,脅迫1件〔判示第6〕)の事案である。 犯行動機(被告人の性癖)被告人は,小学校4,5年生のころから人が口や鼻を塞がれて苦もんする姿に性的興奮を覚え,中学生のころからは,白色スクールソックスを履いている人に性的興奮を感じるようになり,34歳ころからは,さらにその歪んだ性欲をエスカレートさせ,ついには窒息させて苦もんする姿を見るだけではなく最後は人を窒息死させたいとの性的欲求を抱いていたものであるが,誰にも邪魔されることなく,好きなだけ白色スクールソックスを履いた人の口と鼻を塞いだり,シンナーなどの薬品 を嗅がせるなどの窒息行為を繰り返して,もがき苦しむ人の姿を見ることで性的興奮を味わい,最後には窒息死させることで最高の性的興奮を得たいという強い性的欲望に基づき,殺人等の犯行に及び,犯行によりひとたび性的興奮が得られるや,新たな快感を求めて次々と犯行を繰り返したものであって,自己の性欲を満足させるためならば,他人の生命を奪うことも辞さない,余りに自己中心的で身勝手な動機に,もとより酌量の余地など皆無である。 本件各犯行に至る経緯及び犯行態様(1)判示第1,第2の事件(以下「A事件」という。)について被告人は,自殺サイトに投稿していたAとメールで連絡を取り合い,言葉巧みに一緒に練炭自殺するかのように信じ込ませた上,真実はAが抵抗できない状態にする意図であるのにこれを隠して,Aに手足を縛ることを了承させ,レンタカーの予約,窒息行為や罪証隠滅に使うために十数個の犯行道具をあらかじめ準備し,犯行現場を下見するなど,Aの心理を巧みに掴みながら,冷静沈着に手の込んだ犯行計画を着実に進めたもので,極めて用意周到な計画的犯行であるというほかない。 被告人は,Aの手足を結束バンドで縛り付 し,犯行現場を下見するなど,Aの心理を巧みに掴みながら,冷静沈着に手の込んだ犯行計画を着実に進めたもので,極めて用意周到な計画的犯行であるというほかない。 被告人は,Aの手足を結束バンドで縛り付けて,抵抗できない状態にしてから,いきなりその口にガムテープを貼り付け,その口を右掌で塞ぎ,その鼻をつまんで窒息行為を続け,Aが失神するや,再度悶絶する表情を見たいがためにAの頬を叩くなどして意識を覚醒させて,再び窒息行為を繰り返すということを約30分間続けた。これによりAの体力がなくなり,もがき苦しむ姿を見ることができなくなるや,最後の楽しみとして窒息死させようと考え,その口からガムテープをはぎ取ったところ,意識朦朧状態のAが,題目を唱え始めたのも意に介さず,20分余りシンナーを嗅がせて失神させた上,死体遺棄現場まで移動し,死体を埋める穴を掘ってから車内に戻り,Aの口と鼻を両手で約10分間塞ぎ続けて完全に息の根を止め,その死体を下着一枚にして山中の砂防ダムに堆積した土砂中に埋めた。このように犯行態様は,Aをできる限り苦しませることを目的に,窒 息行為による失神と覚醒を繰り返させ,最後には窒息死させるという冷酷かつ残虐無比のものというほかない。 (2)判示第3ないし第6の事件(以下「C事件」という。)について被告人は,A殺害の4日後に早くもAの死体が発見されたことから,捜査の手が自らに及ばないように,自殺サイトにアクセスすることを控えていたが,その後2か月余り経っても,Aの身元発覚を報じるニュースが無かったことから,A事件が迷宮入りするかもしれないなどと考えて安心すると同時に,もう一度人を窒息死させたいとの性的欲望を抱き,窒息死させる相手を探すために,自殺サイトにアクセスしたところ,同サイトに投稿していたCと知り合った。被告人は,Cが ないなどと考えて安心すると同時に,もう一度人を窒息死させたいとの性的欲望を抱き,窒息死させる相手を探すために,自殺サイトにアクセスしたところ,同サイトに投稿していたCと知り合った。被告人は,Cが情緒不安定な思春期の中学生であることを知りながら,大人として相談に乗って自殺を思い止まらせることなど微塵も考えずに,積極的にCを誘い出して,車に乗せて山中に向かい自己の支配下においたものであって,誘拐の態様は,自殺を考えるほど思い悩んだ情緒不安定な思春期にあるCの弱みにつけ込んで敢行された卑劣で悪質なものというほかない。そして,被告人は,A事件と同様に,一緒に練炭自殺するように装い,言葉巧みに手足を縛ることを了承させ,レンタカーの予約,犯行道具の準備を済ませ,Cと知り合ったわずか3日後には計画を実行に移すなど,手の込んだ犯行計画を難なく実行できるようになっている。 被告人は,Cの手足を結束バンドで縛りつけ,その口をガムテープで塞いでから仰向けに押し倒し,その鼻と口をゴム手袋をはめた手で塞いで失神させ,その間,Cが身体をよじったり,両足をばたつかせ,「お願いやからやめて。こんなことやめて。」「人殺しはあかん。」と言って必死に抵抗するのも意に介さず,かえって性的興奮を高めて窒息行為を繰り返し,Cが失神するや,もっと呻き声を聞きたいとの性的欲望から,Cの頬を手で叩いて意識を取り戻させ,「なんでこんなことするんですか。」と尋ねるCに対して,「俺の趣味や」「呻き声くらい出せるやろ。」などと言いながら,Cの顔や縛られた手足をデジタルカメラで撮影したり,呻き声を出させるために,Cのみぞおちを思い切り殴りつけるなど しながら,窒息行為による失神と覚醒を繰り返させた後,シンナーを嗅がせて失神させて,殺害場所まで移動し,Cの鼻口を両手で10分以上にわたって塞ぎ せるために,Cのみぞおちを思い切り殴りつけるなど しながら,窒息行為による失神と覚醒を繰り返させた後,シンナーを嗅がせて失神させて,殺害場所まで移動し,Cの鼻口を両手で10分以上にわたって塞ぎ続けて完全に息の根を止め,その死体を下着一枚にして山中の崖に投げ捨てた。このように犯行態様は,手足を拘束され全く抵抗できない14歳の中学生が必死に命乞いするのを一切無視して,自己の性欲の赴くまま窒息行為を繰り返し,苦しさの余りCが意識を失った際には,あえて頬を叩くなどして意識を取り戻させて,再び窒息の苦しみを与え,さらには,殴るなどの暴力を使ってまで,呻き声を出させようと試み,全く抵抗できなくなるまで苦しめ尽くした後に殺害するという執拗かつ残虐極まりないものである。そして,Cの父親に対する脅迫事件については,被告人が自己の両親に対する反感や腹立ちの気持ちを,何ら関わりのないCの父親に向け,その恐怖感を煽る嫌がらせをして,あたふたとうろたえる姿を見ることによって晴らそうと考えて実行したまことに自己中心的で身勝手この上ない犯行であり,Cの安否を気遣う父親の心情を利用して,既にCはこの世にいないにもかかわらず,身代金目的誘拐を装って脅迫し,Cの父親に多大な精神的苦痛を与えたものであって,その犯行態様も悪質極まりない。 (3)判示第7,第8の事件(以下「D事件」という。)について被告人は,A事件及びC事件を通して,自殺サイトを利用した犯行計画に自信を深め,両事件に対する良心の呵責や後悔の念を覚えることもなく,人を窒息死させたいとの性的欲望の赴くまま,その相手を探すために再び自殺サイトにアクセスし,同サイトに投稿していたDと知り合うや,待ち合わせの日時,場所などの打ち合わせ,レンタカーの予約,犯行用具の購入など,A,C両事件の経験を生かして,手際よ 手を探すために再び自殺サイトにアクセスし,同サイトに投稿していたDと知り合うや,待ち合わせの日時,場所などの打ち合わせ,レンタカーの予約,犯行用具の購入など,A,C両事件の経験を生かして,手際よく犯行計画を進行させ,効率よく窒息させる道具として新たにポリ袋片を貼り付けたタオルを作るなどして,Dと知り合った5日後には犯行計画を実行に移しており,犯行の計画及びその遂行はより悪質かつ手馴れたものとなっている。被告人は,Dの両手を後ろ手で縛り付けた後,1時間以上にわたってポリ袋片を貼り付けたタオルを使ってDの鼻と口を塞いで窒息させ,Dが失神 するたびに,その顔を叩いたり,アンモニアを嗅がせるなどして覚醒させ,Dが必死に抵抗して苦しむ姿を見たいがために,タバコを吸わせるなどの休憩を数回与えて体力を回復させ,「なんでこんなことをするんですか。」「ひとりで逝きたくない。」「このまま死ぬのはいいから,薬で眠っている間に楽に殺して下さい。」と懇願するDに対し,「俺の趣味や。」「もうちょっと声出せ。」「悪いけど,俺は死ぬ気さらさらないから。」などと言い放ち,最後には15分以上にわたってDの鼻口をポリ袋片を貼り付けたタオルで塞いで窒息死させたものである。このように犯行態様は,窒息方法,失神と覚醒の回数,窒息行為の時間など,いずれの点もA,C両事件のそれよりも,より一層執拗かつ冷酷非道で残虐なものになっている。 (4)そして,前記のとおり,各犯行後は犯行発覚を回避すべく,犯行の痕跡を丁寧に消し去り,平然と社会生活を送りながら,さらなる相手を見つけるべく自殺サイトでメール送信を行っているのであって,犯行後の情状も極めて悪い。 本件各犯行の結果(1)被害者についてAは,2人兄妹の長女として生まれ,元来明るい性分で元気に育ち,中学校卒業後は,アルバ イトでメール送信を行っているのであって,犯行後の情状も極めて悪い。 本件各犯行の結果(1)被害者についてAは,2人兄妹の長女として生まれ,元来明るい性分で元気に育ち,中学校卒業後は,アルバイトをしながら定時制高校に通い,同高校中退後はアルバイトをしながら実家で暮らしていたが,平成10年2月ころ,実家を離れて住み込みでパチンコ店でのアルバイトを始めた際,人間関係が上手くいかずにうつ病になり,それ以後自宅に引き籠もり,自殺を企てたりして入院することもあったが,母親の愛情に支えられながら日々精神を安定させるための努力を重ね懸命に生きようとしていた25歳の前途ある女性であった。 Cは,一人息子として,両親の愛情を一身に受けて大切に育てられ,毎年夏には,家族で旅行に行き,母親が病んだときには,子供なりに看病する優しい子供であり,将来は弁護士やプログラマーになりたいとの夢や希望を抱いていた。中学校3年生のころ,学校生活に関する悩み等からうつ病となり,精神科に通院す るようになったものの,いまだ14歳の思春期にあったことから,いずれはその病を克服し,上記の夢や希望の実現に向かって邁進することが期待された前途有為の少年であった。 Dは,4人兄弟の長男として生まれ,両親から跡取り息子として厳しくも愛情を一杯に注がれて大切に育てられ,兄弟の中では憧れの対象として親の手を煩わせることもなく順調に成長し,大学入学にあたり,一人暮らしを始めた際には,親に経済的負担を掛けないようにと,奨学金の給付を受けながら,アルバイトをして大学生活を送っていたものである。ところが,大学3回生のときに,取得単位数の不足から留年せざるを得なくなったことを切っ掛けに,抑うつ状態,対人恐怖症等の症状が発現し,平成17年1月ころから,精神内科に通院するようになったが,親子で ころが,大学3回生のときに,取得単位数の不足から留年せざるを得なくなったことを切っ掛けに,抑うつ状態,対人恐怖症等の症状が発現し,平成17年1月ころから,精神内科に通院するようになったが,親子で話し合い,「長い人生何回でもやり直しがきく。」「卒業したいと考えているなら頑張り,嫌なら中退してもいい。」との父親からの助言を受けて,Dは,「俺頑張る。絶対に親を泣かすようなことはしないから。心配しないで,頑張って病気も治すから。」と言い,親子で励まし合い,本件被害に遭う約1か月前に帰省した際も,元気で明るく振る舞い,家族と仲良く過ごすなどしていた,いまだ21歳の前途有為の大学生であった。 このように,被害者3名は,被害当時うつ状態の影響で自殺願望を抱き自殺サイトに投稿していたものの,いずれも可塑性に富む若者ないし少年であり,今後の治療や環境変化等の要因によって,うつ状態から回復する可能性は十二分にあったというべきところ,その心の弱みにつけ込まれる形で被告人に騙され,本件各凶行に巻き込まれた結果,被害者らが希望していた安らかな死とは対極といっても過言でない,繰り返し窒息行為に晒されるというまさに地獄の責め苦を味わわされた挙げ句,窒息死させられるという想像を絶する苦痛,恐怖,驚愕のなか孤独のうちにその生命を奪われたのであって,その無念の情には察するに余りあるものがあり,結果は余りに重大というほかない。 なお,被害者3名は,いずれも苦痛を伴わない死に方である練炭自殺を志向し ていたものの,本件のような凄まじい苦痛を伴う死に方を強いられるなどとは全く想定していなかったことは明白であって,被害者らが自殺志願者であったことは,上記結果の重大性を何ら左右するものではない。 また,各死体遺棄の犯行についても,Aの遺体は,数日間山中の砂防ダムの砂中に埋めら していなかったことは明白であって,被害者らが自殺志願者であったことは,上記結果の重大性を何ら左右するものではない。 また,各死体遺棄の犯行についても,Aの遺体は,数日間山中の砂防ダムの砂中に埋められ,その一部が動物によって掘り返されたため,見るも無惨な姿に変わり果て,C及びDの遺体は,人里離れた山中の崖に数か月間放置されたため,全身がほぼ白骨化するという変わり果てた姿になって発見されたものであって,遺族及び国民一般の死者に対する感情を著しく害する悪質なものであって,強い非難に値する。 (2)遺族の被害感情についてアAの母親は,捜査段階において,「自分の性的欲望のためにAをおもちゃのようにしていたぶり殺したのだと思うと,私は,犯人が憎くて憎くて仕方がありません。」「私にとって,Aは,かけがえのない一人娘でしたので,とにかく一日も早く病気を治して昔のように明るいAに戻ってもらい,一人の女性として幸せになってもらいたいと思っていました。」と被告人に対する憎しみや最愛の娘に対する思いを述べ,意見陳述においても,「人間のやることではない」と被告人に対する怒りを述べ,Aの兄も,意見陳述において,「今日は妹が生きていれば28歳の誕生日です。そういうことを考えて僕も日頃から眠れない日々が続いています。」と妹への思いや被告人に対する怒りを述べ,いずれも,被告人に対する極刑を求めている。 イCの父親は,被告人により最愛の一人息子を誘拐され殺害された上,電話越しにその呻き声を聞かされ,その心配が頂点に達したときに,被告人からの電話で「Cは二度と戻らない。警察に知らせたお前が悪い。」などと,一片の非もないのに,自分のせいでCが死に追いやられた旨内容虚偽の告知を受け,多大な精神的苦痛を受けた末に,全身白骨化した変わり果てた姿の息子との対面を余儀なくされ に知らせたお前が悪い。」などと,一片の非もないのに,自分のせいでCが死に追いやられた旨内容虚偽の告知を受け,多大な精神的苦痛を受けた末に,全身白骨化した変わり果てた姿の息子との対面を余儀なくされたのであって,その際の絶望感,怒りの感情には筆舌に尽くし がたいものがある。Cの父親は,意見陳述において,「今,あなたはどうしていますか?天国で心安らかに過ごしていますか?それとも被告人に苦しめられた時の様に辛い思いをしていますか?そんな事を考え思いながら毎日毎日この気持ちをどこにぶつけたらいいのか憤りを感じながら仏壇に手を合わせている日々です」と現在の心境を述べ,Cの母親も,「被告人は,私どもから大切な私の命よりも大切は息子を取り上げました。もう二度と息子の肌に触れることも,顔を見ることも,ケンカすることもできません。あれ以来,悲しいとか,辛いとか,そんな言葉では言いつくせないほどの思いをしています。何もかもが壊れてしまいました。」とその悲しみの一端を述べ,いずれも,被告人に対する極刑を求めている。 ウDの両親は,Dから留年や精神的不調を打ち明けられてから,親子で向き合って,愛情を持って優しくDを支えていたが,突如連絡が取れなくなったことから,必死でDを探していたところ,Dが殺害されていたという最悪の事態に直面させられた上,全身がほとんど白骨化するという変わり果てた姿になっていたことから,Dとの最後の別れすらかなわなかったものであって,最愛の長男を失った絶望,被告人に対する怒りには察して余りあるものがある。Dの両親が,意見陳述において,「息子のDを亡くしてから一年半経った今でも,私たち家族の中ではDはまだどこかで元気に生きている,死んでなんかいない,家族みんなが何か悪い夢を見ている,そんな気持ちで毎日を送っています。」「被告人だけが のDを亡くしてから一年半経った今でも,私たち家族の中ではDはまだどこかで元気に生きている,死んでなんかいない,家族みんなが何か悪い夢を見ている,そんな気持ちで毎日を送っています。」「被告人だけが息子の最後を知っているのかと思うと,その悔しさ,腹立たしさは言葉では言い表せません」と悲惨な現実を受け入れられない心境,被告人への憎しみを述べ,被告人に対する極刑を求めている。 エこのように被害者らの無念,遺族の処罰感情は峻烈であるが,被告人には見るべき資産がなく,現在両親との関係も断絶していることからすると,今後,被害者らの遺族の被害感情をわずかばかりでも緩和させるに足る被害弁償がなされる見込みは乏しい。 社会的影響本件は,インターネット上の自殺サイトに投稿していた自殺志願者を対象にした連続殺人,死体遺棄等の事案であるところ,被害者が3名にも上る快楽目的の殺人等事件であり,広く一般に普及しているインターネットのサイトを利用して巧妙に被害者を誘い出して殺害行為等に及んだ犯行として,新聞,テレビ等のマスコミを通じて大きく報道されるなどしたものであって,本件各犯行が社会に及ぼした衝撃いは多大なものがあり,その社会的影響も軽視できない。 被告人の更生可能性(1)被告人の性癖,前科及び通院歴について前記弁護人の主張に対する判断の項で認定したとおり,被告人は小学校4,5年生のころから現在に至るまで,一貫して人が窒息させられて苦しむ姿に性的興奮を感じるという性癖を持ち続けていたものであって,人を窒息させ,苦しめるという異常な行為によってしか性欲が満たされないという特異な性的嗜好を有してしまったこと自体については,被告人に非はなく,被告人自身そのことに悩み苦しみ,その性癖の矯正に向けた一定程度の努力をしていたことは事実であって,その意味 が満たされないという特異な性的嗜好を有してしまったこと自体については,被告人に非はなく,被告人自身そのことに悩み苦しみ,その性癖の矯正に向けた一定程度の努力をしていたことは事実であって,その意味でこのような性癖を身に付けてしまったことは,被告人自身にとっても不幸なことであったといえる。しかし,被告人は,大学時には白色スクールソックスを履いていた同級生の男性を見て性的に興奮し,同人の首を絞めるという事件を起こしたことがきっかけで中退を余儀なくされ,また郵便局員として働いていた当時の勤務先の同僚に対し,その口や鼻を手で塞ぐなどの暴行を加えて起訴猶予処分を受けている。さらには,平成13年には通行人の口を塞ぐなどの傷害,暴行事件を起こして,執行猶予付き懲役刑を受け,平成14年にはその執行猶予期間中に同種傷害事件を起こして実刑判決を受け,刑務所での相当期間の矯正教育を経て,平成16年3月29日に刑の執行を終了した。さらに加えて,前刑出所後まもなくの平成16年4月からは,おおよそ2週間に1回の割合で精神科に通院し,本件各犯行前後も定期的に通院していた。しかるに,医師の診察や臨床 心理士のカウンセリングを受けていながら,人を襲って窒息させたい性的衝動が生じていることは1度しか相談しておらず,通院と並行しながら,本件各犯行を用意周到に計画しつつ,前刑終了後わずか1年足らずでA事件を,以後,4か月足らずの間にC事件,D事件を平然と敢行したものである。このように,被告人の性癖は,小学校4,5年生のころから変わらず保持され続けてきたものであって,刑の執行猶予付き判決による社会内更生,刑務所での矯正教育,精神科でのカウンセリングなどを経験しても改善されずに本件各犯行を敢行したものであることからすると,その特異な性癖は非常に強固なものであって,その改善は 付き判決による社会内更生,刑務所での矯正教育,精神科でのカウンセリングなどを経験しても改善されずに本件各犯行を敢行したものであることからすると,その特異な性癖は非常に強固なものであって,その改善は極めて困難なものといわざるを得ない。 (2)犯行後の情状等について確かに,被告人は,逮捕後数時間で警察から追及されたA事件について自白すると同時に,いまだ捜査機関に発覚していなかったC事件及びD事件についても自供書を作成するなどして判示第3ないし第8の各犯行について自首し,それ以後一貫して本件各犯行を認めて事案の真相を明らかにしており,第1回公判においては,「今回の事件について,私は責任を取らなければなりません。死刑の覚悟はできています。」と述べて,極刑を受け入れる覚悟を示すとともに,刑務所での性犯罪者に対する矯正プログラムに役立てばとの思いから,公判廷においても,自己の性癖,犯行に至る経緯及び犯行態様等について,詳細に語り尽くすなど,被告人なりに反省の態度を示している。 しかしながら,その反面,被告人は,本件各犯行後,逮捕されるまでの間,被害者の生命を奪ってしまったことに対する自責の念をもつこともなく,かえって,後日窒息プレイのシーンを思い出して自慰行為にふけったり,あるいはICレコーダーで録音した被害者らの呻き声等やデジタルカメラで撮影した犯行時の被害者らの失神姿,後日死体遺棄現場に何度も赴くなどして撮影した死体の様子などを見て,本件各犯行を思い出しては自慰行為を繰り返すという異常な行動に出ていること,D事件の犯行後も白色スクールソックスを履いた人の写真を撮ったり (甲47),練炭自殺を装った勧誘メールのやりとりを多数人との間でしていること(甲51),公判廷において,現在も過去に自分が犯した犯罪を思い出して,性的興奮を感じて自慰行 た人の写真を撮ったり (甲47),練炭自殺を装った勧誘メールのやりとりを多数人との間でしていること(甲51),公判廷において,現在も過去に自分が犯した犯罪を思い出して,性的興奮を感じて自慰行為に及ぶことがあり,仮に社会に戻ったとしても,再び人を窒息させたいとの性的欲望を抑えきれずに,人を襲うのではないかとの不安を抱えている旨述べるなどしている。 (3)まとめこのように,被告人は,現在もなお上記のとおりの特異な性癖を保持し続けており,その性癖は非常に強固であって改善される見込みは乏しいことからすると,被告人が上記のとおり反省の態度を示していることを考慮しても,被告人が自己の性的欲求を抑えながら社会生活を送ることを期待するのは極めて困難であって,再犯のおそれも懸念される状況にあるといわざるを得ない。 結論 以上のとおり,本件は,被告人が,人を窒息させて殺害することによる性的興奮を得たいがために各犯行を実行に移す決意をし,その準備のために犯行道具等を周到に準備した上,4か月間に若年の被害者3名を次々殺害した連続殺人等事件であり,その証拠隠滅のために死体を山中に遺棄するなどしているのであって,3名の尊い人命を奪ったその結果が極めて重大であるのはいうまでもない。しかもその犯行は,残忍,冷酷かつ非道であって,各犯行の計画性,巧妙性のいずれにおいても悪質といわざるを得ず,遺族の被害感情も峻烈で,社会的影響も大きいこと,被告人の性癖が根深く,その改善が困難であることなどを総合的に考慮すると,被告人の刑事責任は余りにも重いといわなければならない。 そして,死刑が究極の峻厳な刑罰であり,その適用については,慎重な上にも慎重に判断すべきものであるにしても,犯行の罪質,動機,態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性,結果の重大性ことに殺害された被害 して,死刑が究極の峻厳な刑罰であり,その適用については,慎重な上にも慎重に判断すべきものであるにしても,犯行の罪質,動機,態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性,結果の重大性ことに殺害された被害者の数,遺族の被害感情,社会的影響,犯人の年齢,前科,犯行後の情状等諸般の情状を併せ考察したとき,その罪責が誠に重大であって,罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑 がやむをえないと認められる場合には,死刑の選択も許されるものと解されるところ,これまで検討した諸事情によれば,C事件及びD事件について自首が成立すること,被告人がかかる特異な性癖を有するに至った原因については生来的な要因に加え,その生育環境にも問題があったことが窺われるのであるが,いずれにしても,本件各犯行の原因となった特異な性癖を身に付けてしまったこと自体については被告人に非はなく,この意味で被告人自身にとっても不幸といわざるを得ない側面があること,また被告人自身このような性癖に悩み苦しみ,その性癖の矯正のため精神科への通院を継続するなど一定の努力をしていたこと,公判廷において被告人なりに反省の態度を示していること,その他量刑上被告人にとって有利な事情を最大限考慮しても,なお,罪刑均衡の見地からも,一般予防の見地からも,極刑をもって臨むほかないものと言わざるを得ない。 よって,主文のとおり判決する。(求刑:死刑)平成19年3月28日大阪地方裁判所第6刑事部裁判長裁判官水島和男裁判官堀田秀一裁判官中川綾子は転勤のため署名押印することができない。 裁判長裁判官水島和男 官水島和男

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