令和3(ネ)714 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和3年10月28日 大阪高等裁判所 棄却 大阪地方裁判所 平成29(ワ)8834
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判決文本文6,315 文字)

1 主 文1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由第1 控訴の趣旨51 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人は,控訴人に対し,226万4948円及びこれに対する平成29年10月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(以下,略語は特記しない限り原判決の例による。)1 事案の要旨10本件は,被控訴人が設置,運営する大阪府立A高等学校(本件高校)に在籍していた控訴人が,本件高校の教員らから,頭髪指導として,繰り返し頭髪を黒く染めるよう強要され,授業等への出席を禁じられるなどしたことから不登校となり,さらに不登校となった後も名列表(点呼等に用いられる生徒名簿)から控訴人の氏名を削除され,教室から控訴人の机と椅子(控訴人席)を撤去15されるなど不適切な措置を受けたために,著しい精神的苦痛を受けるなどの損害を受けた旨主張して,被控訴人に対し,国家賠償法1条1項又は債務不履行(在学関係上の安全配慮義務違反)に基づく損害賠償として,226万4948円及びこれに対する不法行為後又は履行期後の日である訴状送達の日の翌日である平成29年10月3日から支払済みまで民法(平成29年法律第4420号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は,控訴人に対する頭髪指導について国家賠償法1条1項にいう違法又は債務不履行があるとは認められないが,控訴人が不登校となった後の名列表からの氏名の削除及び教室からの控訴人席の撤去の措置について国家賠償法251条1項にいう違法があると認め,これにより控訴人に生じた精神的損害に対2 する慰謝料30万円及び弁護士費用3万円並びにこれらに対 除及び教室からの控訴人席の撤去の措置について国家賠償法251条1項にいう違法があると認め,これにより控訴人に生じた精神的損害に対2 する慰謝料30万円及び弁護士費用3万円並びにこれらに対する平成29年10月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の限度で控訴人の請求を認容し,その余の請求を棄却した。 控訴人は,原判決の敗訴部分を不服として控訴した。 2 前提事実5前提事実(争いのない事実並びに証拠(書証のうち枝番のあるものは,特に断らない限り,全枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)は,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要等」の「2 前提事実」(原判決2頁18行目~6頁14行目)に記載のとおり(ただし,同3頁1行目の「平成28年」を「平成29年」に改める。)であるから,これを引10用する。 3 争点及びこれに関する当事者の主張争点及びこれに関する当事者の主張は,次のとおり補正し,後記4のとおり当審における控訴人の補充主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要等」の「3 本件の争点」及び「4 争点に対する当事者の主張」15(原判決6頁15行目~18頁20行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決6頁18行目及び同頁20行目の各「学校契約上の債務不履行」をそれぞれ「在学関係上の安全配慮義務違反」に改める。 原判決7頁26行目から同8頁1行目にかけての「負い込まれる」を「追い20込まれる」に改める。 原判決9頁21行目の「頭髪」を「頭髪や頭皮」に改める。 原判決10頁1行目の「従わなくなる」を「従わなくなったりする」に,同頁2行目の「恐れ」を「おそれ」にそれぞれ改める。 原判決13頁13行目の「 頁21行目の「頭髪」を「頭髪や頭皮」に改める。 原判決10頁1行目の「従わなくなる」を「従わなくなったりする」に,同頁2行目の「恐れ」を「おそれ」にそれぞれ改める。 原判決13頁13行目の「不合理を」を「合理性を」に改める。 25原判決14頁3行目の「拒否する」を「拒否したりする」に,同頁5行目の3 「恐れ」を「おそれ」にそれぞれ改める。 原判決18頁4行目の「本件高校における」を「本件高校において,」に改める。 4 当審における控訴人の補充主張本件校則による頭髪や服装等に対する制限については,生徒を学習や運動等に5注力させ,非行行動を防止する目的という観点からみて不合理と思われるものが散見される。また,頭髪に関する制限については,卒業生からも,基準や目的が分からず,教員に説明を求めてもルールだからとしか言われない,光に当たって茶色っぽかったらだめだと言われ,基準が厳しすぎる,黒く髪を染めても更に黒く染めるように言われるなどといった声が上がっている。このような実態からす10れば,本件校則の目的は,教育目的によるものとはいえず,違法である。 第3 当裁判所の判断1 認定事実認定事実は,次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」の「第3当裁判所の判断」の「1 認定事実」(原判決18頁23行目~33頁12行目)15に記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決21頁24行目の「同年」を「平成27年」に改める。 原判決24頁15行目の「P証人」を「証人P」に改める。 原判決29頁15行目の「行のではなく」を「行うのではなく」に改める。 原判決29頁24行目,同頁26行目及び同30頁9行目の各「F’主任」20をいずれも「F主任」に改める。 原判決31頁22行目の「 15行目の「行のではなく」を「行うのではなく」に改める。 原判決29頁24行目,同頁26行目及び同30頁9行目の各「F’主任」20をいずれも「F主任」に改める。 原判決31頁22行目の「平成29年3月頃」を「平成28年12月頃」に改める。 2 争点1(本件校則及び本件指導方針の違法性の有無)について前記認定事実によれば,争点1(本件校則及び本件指導方針の違法性の有無)25については,のとおり補正し,のとおり当審における控訴人の補充主張に対4 する判断を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」の「2 争点1(本件校則及び本件指導方針の違法性の有無)について」(原判決33頁14行目~39頁16行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決の補正5ア 原判決34頁25行目の「染髪,脱色」から同頁26行目末尾までを「特異な髪型や染髪,脱色等を一律に規制するものではあるが,規制の内容はなお一定の範囲にとどまっていると言い得る。」に改め,原判決35頁1行目から同頁5行目までを削る。 イ 原判決35頁12行目冒頭から同頁20行目末尾までを次のとおり改め10る。 「 しかし,証拠(甲31,32)及び弁論の全趣旨によれば,本件高校の教員らは,平成28年9月30日及び平成29年6月15日の控訴人代理人及び控訴人の母との面談の際,本件校則の目的について説明する過程で,学校のイメージという言辞を用いるなどして,学校の評判を守ることに言及して15いることが認められるものの,この言辞は,控訴人の母と控訴人代理人が,本件高校の教員らに対し,長時間にわたり,控訴人に対する頭髪指導の違法等を認めて謝罪するよう強く追及する中で発言されたものであることに加え,平成28年9月30日の面 は,控訴人の母と控訴人代理人が,本件高校の教員らに対し,長時間にわたり,控訴人に対する頭髪指導の違法等を認めて謝罪するよう強く追及する中で発言されたものであることに加え,平成28年9月30日の面談において本件学校の教員らが本件高校の設立の経緯を踏まえた本件校則の目的について説明した内容などを併せ考え20ると,学校の評判を守るという趣旨は,本件高校が地域社会に溶け込み好ましい評価を受けることが,そこで学ぶ生徒らの意欲向上や成長といった生徒の利益につながるとの文脈で理解すべきであるから,控訴人の上記主張を採用することはできない。」ウ 原判決36頁17行目の「本件高校に入学した平成27年4月」を「本件25高校の卒業認定を受けた平成30年3月」に改める。 5 エ 原判決37頁9行目,同頁15行目,同頁21行目,同頁23行目の各「生来の」をいずれも「地毛の」に改める。 オ 原判決38頁8行目から9行目にかけて,同頁19行目,同頁24行目及び同頁25行目の各「黒色」をいずれも「地毛の色」に改める。 当審における控訴人の補充主張に対する判断5控訴人は,本件校則による頭髪や服装等に対する制限は,特に頭髪に関する制限の実態に照らすと,教育目的によるものとはいえず,違法であると主張する。 確かに,校則に基づく指導については,個々の生徒に応じて適切な指導を行うととともに,生徒の内面的な自覚を促し,校則を自分のものとしてとらえ,10自主的に守るように指導を行っていくことが重要であって,教員がいたずらに規則にとらわれて,規則を守らせることのみの指導になっていないか注意を払う必要がある,あるいは,校則の指導が真に効果を上げるためには,その内容や必要性について生徒・保護者との間に共通理解を持つようにすることが重要である を守らせることのみの指導になっていないか注意を払う必要がある,あるいは,校則の指導が真に効果を上げるためには,その内容や必要性について生徒・保護者との間に共通理解を持つようにすることが重要である,ということが指摘されている(文部科学省・生徒指導提要・甲30)。 15このような観点からみれば,控訴人が主張するような本件高校の卒業生の声があることは(甲34~42),本件校則による頭髪指導が,教育の目的に照らして必ずしも十分な効果を得られていない可能性があることを示しているといえる。しかしながら,各高校における学校教育においては,上記の指摘を目標にしながらも,資質・能力や成熟度等において多様な生徒に対しいかなる理20念や方針に従って教育指導を行っていくかについて,個別的,集団的な実情に応じて多様な教育指導が許容されるために広範な裁量が認められなければならず,この裁量を逸脱しない限り違法の問題は生じないというべきである。もっとも,上記のような広範な裁量を有している教育現場においては,規則を守らせること自体が目的化していないかなど,上記の指摘を踏まえた教育指導の25在り方について常に検証し,よりよい教育指導を目指す不断の努力が求められ6 ることはいうまでもない。 そして,本件校則及び本件指導方針について,平成30年3月までの時点で裁量の範囲を逸脱しないことについては,原判決を引用して説示したとおりであるから,控訴人の上記主張を採用することはできない。 3 争点2(本件高校における,本件校則に基づく控訴人に対する頭髪指導につき,5国家賠償法上の違法又は在学関係上の安全配慮義務違反の有無)についてこの点に対する判断は,次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」の「3 争点2(本件高校 国家賠償法上の違法又は在学関係上の安全配慮義務違反の有無)についてこの点に対する判断は,次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」の「3 争点2(本件高校における,本件校則に基づく原告に対する頭髪指導につき,国家賠償法上の違法又は学校契約上の債務不履行の有無)について」(原判決39頁19行目~49頁17行目)に記載のと10おりであるから,これを引用する。 原判決40頁9行目及び同頁17行目の各「生来の」をいずれも「地毛の」に改め,同頁26行目の末尾に,改行して次のとおり加える。 「 また,控訴人は,当審においても,控訴人の頭髪の地毛の色は黒色ではなく,本件高校の教員らが控訴人の地毛の色を黒色と認識していたことを否定15する(控訴理由書)。しかし,原審におけるO教諭の証言及びB市教育委員会の調査嘱託に対する回答(乙5)によれば,C中学校では,控訴人に対し,複数回にわたって,控訴人が染髪したことに対する指導が行われており,中学3年時の9月の体育大会の応援合戦に際しては,生徒の中から控訴人の髪の色を元の色に戻してほしいとの声が上がったなどの具体的なエピソード20も挙げられているところ,本件高校の教員らは,C中学校への問い合わせをし(前記1⑶イ),また,根元部分が黒色であったことを直接見て確認しているのであり(前記1⑶ア,イ,ウ,⑷ウ),少なくとも本件高校の教員らが合理的な根拠に基づいて控訴人の地毛の色を黒色と認識していたと認められる。」25原判決41頁22行目の「原告は,」から同頁23行目の「認められるし,」7 まで,及び同42頁8行目の「原告も頭髪指導に任意に従っていること,」までをそれぞれ削る。 原判決43頁22行目の「事後の対応も」から同頁23行 ,」から同頁23行目の「認められるし,」7 まで,及び同42頁8行目の「原告も頭髪指導に任意に従っていること,」までをそれぞれ削る。 原判決43頁22行目の「事後の対応も」から同頁23行目の「のであって,」までを削る。 原判決45頁12行目の「本件高校の」から同頁13行目の「考えて」まで5を削る。 原判決46頁13行目の「明らかでない」を「明らかでなく,画像加工が容易なアプリによって作成されたものである」に改める。 原判決47頁14行目の「供述」の次に「(なお,この供述は,染直しの状況について具体的な説明ができていないという点からも信用性に乏しい。)」10を加える。 原判決48頁8行目の「阪府教育庁」を「大阪府教育庁」に改める。 4 争点3(本件高校における,控訴人が登校をしなくなって以降の措置につき,国家賠償法上の違法又は在学関係上の安全配慮義務違反の有無)について及び争点4(控訴人に生じた損害の額)について15これらの点に対する判断は,原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」の「4 争点3(本件高校における,原告が登校をしなくなって以降の措置につき,国家賠償法上の違法又は学校契約上の債務不履行の有無)について」(原判決49頁20行目~54頁15行目)及び「5 争点4(原告に生じた損害の額)について」(同頁17行目~56頁3行目)に記載のとおりであるから,20これを引用する。 第4 結論以上によれば,控訴人の請求を33万円及びこれに対する平成29年10月3日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で認容し,その余の請求を棄却すべきところ,これと同旨の原判決は相当である。 25よって,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決す8 の割合による金員の支払を求める限度で認容し,その余の請求を棄却すべきところ,これと同旨の原判決は相当である。 25よって,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決す8 る。 大阪高等裁判所第14民事部 裁判長裁判官 本 多 久美子 5 裁判官 小堀 悟 裁判官浅見宣義は,退官のため署名押印することができない。 10裁判長裁判官 本 多 久美子

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