主文 原告の甲乙両事件請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は全部原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求の趣旨 甲事件別紙物件目録記載の各土地(以下「本件土地」という。)に対する平成17年度固定資産課税台帳登録価格について,鳥栖市固定資産評価審査委員会が平成17年10月7日付けで行った原告の審査申出を棄却する旨の決定は,これを取り消す。 乙事件本件土地に対する平成18年度固定資産課税台帳登録価格について,鳥栖市固定資産評価審査委員会が平成18年11月15日付けで行った原告の審査申出を棄却する旨の決定は,これを取り消す。 第2事案の概要 事案の要旨本件土地を所有している原告は,本件土地には多量のアスベストスラッジが埋設され,その処分に多額の費用を要することから,本件土地の価格は大幅に低下しているにもかかわらず,固定資産課税台帳に登録された本件土地の平成17年度及び平成18年度の各価格は,その点が考慮されていないなどと主張して,鳥栖市固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をしたところ,同委員会は,これをいずれも棄却する旨の決定をした。 本件は,原告が被告に対し,平成17年度(甲事件)及び平成18年度(乙事件)の本件土地の価格についての上記委員会の棄却決定は違法であるとして, その取消しを求めた事案である。 法令等の定め(1)課税標準等ア固定資産税の賦課期日は,当該年度の初日の属する年の1月1日であり,基準年度(昭和31年度及び昭和33年度並びに昭和33年度から起算して3年度又は3の倍数の年度を経過したごとの年度)に係る賦課期日に所在する土地に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は,当該土地の基準年度に係る賦課期日における価格で固定資産課税台帳(土地課税台帳等)に登録されたもの( 経過したごとの年度)に係る賦課期日に所在する土地に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は,当該土地の基準年度に係る賦課期日における価格で固定資産課税台帳(土地課税台帳等)に登録されたもの(登録価格)である。そして,この場合の価格とは「適正な時価」をいう(地方税法(以下単に「法」という。)341条5・6号,349条1項,359条)。 イ基準年度に係る賦課期日に所在する土地に対して課する基準年度の翌年度(第2年度)及び翌々年度(第3年度)の固定資産税の課税標準は,原則として,基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となった価格で固定資産課税台帳に登録されたものであるが,第2年度又は第3年度において,地目の変換等の特別の事情があるため,基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となった価格によることが不適当であるか又は当該市町村を通じて固定資産税の課税上著しく均衡を失すると市町村長が認める場合には,当該土地に類似する土地の基準年度の価格に比準する価格で固定資産課税台帳に登録されたものである(法349条2項,3項)。 ウ登録価格の決定に際する固定資産の評価については,総務大臣が評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続を定め,これを告示しなければならないとされ(法388条1項),同規定に基づいて固定資産評価基準が告示されているところ,市町村長は,固定資産評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならない(法403条1項)。 エ法附則17条の2第1項によれば,当該市町村の区域内の自然的及び社 会的条件からみて類似の利用価値を有すると認められる地域において地価が下落し,かつ,市町村長が同項の表の上欄に掲げる土地の区分に応じ,それぞれ,同表の中欄に掲げる年度において,同表の下欄に掲げる価格(以下「修正前の価格」という。)を当該年度分の固定資 において地価が下落し,かつ,市町村長が同項の表の上欄に掲げる土地の区分に応じ,それぞれ,同表の中欄に掲げる年度において,同表の下欄に掲げる価格(以下「修正前の価格」という。)を当該年度分の固定資産税の課税標準とすることが固定資産税の課税上著しく均衡を失すると認める場合における当該土地に対して課する当該年度分の固定資産税の課税標準は,法349条の規定にかかわらず,平成16年度分又は平成17年度分の固定資産税に限り,当該土地の修正前の価格を総務大臣が定める基準(以下「修正基準」という。)によって修正した価格で土地課税台帳等に登録されたものとするとされている。 オまた,法408条は,市町村長は,固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該市町村所在の固定資産の状況を毎年少なくとも1回実地に調査させなければならないと規定している。 カ本件において、平成15年度は前記アの基準年度に当たり、平成17年度は、前記イにいう基準年度の翌々年度(第3年度)であり、これに係る賦課期日は平成17年1月1日である。また、平成18年度は、前記アの基準年度に当たり、これに係る賦課期日は平成18年1月1日である。 (2)固定資産評価基準における土地の評価方法の概要ア宅地の評価(固定資産評価基準第1章第3節一)現況が宅地である土地の評価は,各筆の宅地について評点数を付設し,当該評点数を評点1点当たりの価額に乗じて各筆の宅地の価額を求める方法による。 イ評点数の付設(同第3節二)各筆の宅地の評点数は,市町村の宅地の状況に応じ,主として市街地的形態を形成する地域における宅地については「市街地宅地評価法」(路線価式評価法)によって付設する。市街地宅地評価法による評点数の付設方 法は次のとおりである。 (ア)地区区分と標準宅地の選定(同第3節二(一)1・2) る宅地については「市街地宅地評価法」(路線価式評価法)によって付設する。市街地宅地評価法による評点数の付設方 法は次のとおりである。 (ア)地区区分と標準宅地の選定(同第3節二(一)1・2)市町村の宅地を商業地区,住宅地区,工業地区,観光地区等(以下「用途地区」という。)に区分し(必要に応じ,商業地区にあっては繁華街,高度商業地区(Ⅰ,Ⅱ),普通商業地区等に,住宅地区にあっては高級住宅地区,普通住宅地区,併用住宅地区等に,工業地区にあっては大工場地区,中小工場地区,家内工業地区等に,それぞれ区分する。),各用途地区を,街路の状況,公共施設等の接近の状況,家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便等からみて相当に相違する地域(以下「状況類似地域」という。)ごとに,当該地域の主要な街路に沿接する宅地のうち,奥行,間口,形状等の状況が当該地域において標準的なものと認められるものを標準宅地として選定する。 (イ)路線価の付設(同第3節二(一)3)標準宅地について,売買実例価額から評定した当該標準宅地の単位地積当たりの適正な時価に基づき,当該標準宅地の沿接する主要な街路について路線価を付設し,主要な街路以外のその他の街路については,近傍の主要な街路の路線価を基礎とし,主要な街路に沿接する標準宅地とその他の街路に沿接する宅地との間における宅地利用上の便等の相違を総合的に考慮して,その単位地積当たりの路線価を付設する。 なお,標準宅地の適正な時価は,売買が行われた宅地の売買実例価額の内容を検討し,正常と認められない条件がある場合においてはこれを修正して当該宅地の正常売買価格を求め,当該宅地と標準宅地の位置,利用上の便等の相違を考慮し,上記正常売買価格から評定する。 (ウ)各筆の宅地の評点数の付設(同第3節二(一)4)各筆の宅地の評点数は,路線 当該宅地の正常売買価格を求め,当該宅地と標準宅地の位置,利用上の便等の相違を考慮し,上記正常売買価格から評定する。 (ウ)各筆の宅地の評点数の付設(同第3節二(一)4)各筆の宅地の評点数は,路線価を基礎とし,「画地計算法」(路線価を基礎として当該路線に沿接する各画地について,それぞれの画地の奥 行,間口,街路との状況等が宅地の価格に及ぼす影響を,標準画地のこれらの状況との比較において計量しようとするもの)を適用して付設する。 この場合において,市町村長は,宅地の状況に応じ,必要があるときは,画地計算法の付表等について,所要の補正をして,これを適用する。 (エ)鳥栖市固定資産土地評価事務取扱要領15条なお,上記固定資産評価基準第3節二(一)4に基づき,被告市長は,「鳥栖市固定資産土地評価事務取扱要領」(乙10)を定め,その15条(画地計算による本市の所要の補正)において,土地の評価は,固定資産評価基準に基づき評価するものであるが,路線価に反映し難い外的要因について,以下のとおりの補正項目を定めている。 a一画地の地積・形状が極端に狭小な場合の補正b横断歩道橋による影響補正c高地・低地の補正d高圧線直下の補正e水路に面した画地の補正f側方路線及び二方路線影響補正g無道路地の補正h供出道路に関する通路控除補正i農業用施設の用に供する土地に関する補正j都市計画施設予定地に定められた画地に係る補正k市街化調整区域内に存在する雑種地等に関する補正l間口が狭小な土地に関する補正m規模による格差に関する補正n市街化調整区域に存在する用途が限定された宅地に関する補正o日照が阻害される宅地に関する補正 ウ評点1点当たりの価額の決定及び提示平均価額の算定(同第3節三)評点1点当たりの価額は,総務大臣又 街化調整区域に存在する用途が限定された宅地に関する補正o日照が阻害される宅地に関する補正 ウ評点1点当たりの価額の決定及び提示平均価額の算定(同第3節三)評点1点当たりの価額は,総務大臣又は都道府県知事が指定する提示平均価額に宅地の総地積を乗じ,これをその付設総評点数で除した額に基づいて市町村長が決定する。 争いのない事実等以下の事実は,当事者間に争いがないか,括弧内掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。 (1)原告の本件土地所有原告は,平成4年1月31日,当時の所有者リゾートソリューション株式会社(以下「リゾートソリューション」という。)から本件土地を買い受け,同日その旨の所有権移転登記が経由された(甲1)。 (2)アスベストスラッジ埋設事実の判明ア遅くとも平成16年6月20日ころには,本件土地の地中にリゾートソリューションが廃棄したアスベストスラッジ(アスベストとコンクリートの混合した残渣である汚泥)(以下本件土地内に埋設されているアスベストスラッジを「本件アスベスト」という。)が埋設されているらしいことが判明した。 イその後の調査により,遅くとも平成16年10月ころまでには,上記残渣中にアスベストが存在し,本件アスベストの埋設量は6743立方メートルであることが判明した(甲3,4)。 ウ平成16年11月ころには,本件アスベストの除去費用は,搬出先の距離により,1億9470万円~2億3150万円であることが判明した(甲5)。 エアスベストは,不溶性の物質であり,土壌を汚染することはなく,そのため土壌汚染対策法の対象とはされておらず,これを除去することにより当該アスベストが埋設している土地を原状に復することができる。しかし, アスベストは,粉塵として飛散すれば,人の身体・健康に深刻な被 め土壌汚染対策法の対象とはされておらず,これを除去することにより当該アスベストが埋設している土地を原状に復することができる。しかし, アスベストは,粉塵として飛散すれば,人の身体・健康に深刻な被害をもたらす危険性があることから,大気汚染防止法において特定粉塵として規制対象とされている。 (3)被告市長による本件土地の平成17年度の評価及び価格の決定並びに原告への納税通知ア被告市長は,平成17年度の登録価格について,以下のとおり,本件土地を評価し,価格を決定した(甲10、乙1,2)。 (ア)法349条3項の適用について被告市長は,本件土地が,法349条3項但書・2項1号の地目の変換等の特別の事情に該当しないものとして,同条3項本文により,平成17年度における本件土地に対して課する固定資産税の課税標準については,新たな評価を行うことなく,基準年度である平成15年度の固定資産税の課税標準となった価格で固定資産課税台帳に登録されたものとした。 (イ)法附則17条の2第1項による地価下落による価格の修正について被告市長は,法附則17条の2第1項の規定により,本件土地に係る平成15年度分の固定資産税の課税標準の基礎となった価格を平成17年度分の固定資産税の課税標準とすることが固定資産税の課税上著しく均衡を失すると認め,平成17年度分の固定資産税の課税標準を本件土地の修正前の価格を修正基準によって修正した価格で土地課税台帳に登録した。 すなわち,本件土地の平成15年度1㎡当たり評点数24000点に平成15年1月1日から同年7月1日までの地価下落に伴う修正率0. 960及び平成16年1月1日から同年7月1日までの地価下落に伴う修正率0.960を乗じて,平成17年度1㎡当たり評点数を22100点とした。 そして,当該評点数に基づき,本 落に伴う修正率0. 960及び平成16年1月1日から同年7月1日までの地価下落に伴う修正率0.960を乗じて,平成17年度1㎡当たり評点数を22100点とした。 そして,当該評点数に基づき,本件土地に係る平成17年度評価額を次のとおり算出し,土地課税台帳に登録した。 鳥栖市a町bc番d評点数=22,100点(1㎡当たり評点数)×15,876.97㎡=350,881,037点評価額=350,881,037点(評点数)×1円(1点当たり価額)=350,881,037円鳥栖市a町ef番g評点数=22,100点(1㎡当たり評点数)×90.26㎡=1,994,746点評価額=1,994,746点(評点数)×1円(1点当たり価額)=1,994,746円イ被告市長は,本件土地の平成17年度評価額を前記アの合計額3億5287万5783円として固定資産課税台帳に登録するとともに,固定資産税課税標準額を2億0546万5666円とする旨の納税通知書を,同年4月2日,原告に交付した。 (4)被告市長による本件土地の平成18年度の評価及び価格の決定並びに原告への納税通知ア被告市長は,平成18年度の登録価格につき,以下のとおり本件土地を評価し,価格を決定した(甲18)。 (ア)周囲の宅地の利用状況を基準として,本件土地の所在する地区を,大工場地区として区分した。 (イ)この大工場地区を更に状況の類似した地域ごとに区分し,その区分 された地域ごとに主要な街路を一つ選定した。そして,本件土地の所在する地域では,この主要な街路に沿接する宅地のうちからa町eh番i外3筆の土地を標準宅地として選定した。 (ウ)この標準宅地の路線価を,21,400点として付設し,本件土地に沿接する街路の路線価は,標準宅地の路線価21,400点を基準とし,こ からa町eh番i外3筆の土地を標準宅地として選定した。 (ウ)この標準宅地の路線価を,21,400点として付設し,本件土地に沿接する街路の路線価は,標準宅地の路線価21,400点を基準とし,これに比準して求めた結果13,700点として付設した。 (エ)本件土地の評点数は,本件土地2筆を1画地と認定した上で,本件土地に接する街路の路線価を基礎に,次のとおり画地計算法を適用して求めた。そして,当該評点数に基づき本件土地に係る平成18年度価格を次のとおり算出し,土地課税台帳に登録した。 鳥栖市a町bc番地d評点数=13,700点(路線価)×1.0(奥行価格逓減率)×1.0(間口狭小補正率等)×15,876.97㎡(地積)=217,514,489点価格=217,514,489点(評点数)×1円(1点当たり価額)=217,514,489円鳥栖市a町ef番g評点数=13,700点(路線価)×1.0(奥行価格逓減率)×1.0(間口狭小補正率等)×90.26㎡(地積)=1,236,562点価格=1,236,562点×1円(1点当たり価額)=1,236,562円イ被告は,平成18年度評価額合計を2億1875万1051円として固定資産課税台帳に登録するとともに,固定資産税課税標準額合計を1億5312万5735円とする旨の納税通知書を原告に交付した。 (5)原告の審査申出と棄却決定ア原告は,平成17年5月25日,鳥栖市固定資産評価審査委員会に対し,本件土地の平成17年度の登録価格について審査の申出をしたところ(甲9),同委員会は,同年10月7日付決定書により上記審査申出を棄却する旨の決定をした(甲10)。 イ原告は,鳥栖市固定資産評価審査委員会に対し,本件土地の平成18年度の登録価格について審査の申出をしたところ,同委員会 年10月7日付決定書により上記審査申出を棄却する旨の決定をした(甲10)。 イ原告は,鳥栖市固定資産評価審査委員会に対し,本件土地の平成18年度の登録価格について審査の申出をしたところ,同委員会は,平成18年11月15日付決定書により上記審査申出を棄却する旨の決定をした。 (6)本件アスベストの撤去原告は,平成18年12月ころ,リゾートソリューションとの間で,同社が原告に対し本件アスベストの撤去費用2億円を支払う旨の裁判上の和解が成立し,平成19年3月中旬ころには本件アスベストは撤去された。 争点及びこれに関する当事者の主張(1)法349条2項1号・3項但書により課税標準を見直すべき「地目の変換その他特別の事情」を看過した違法〔原告〕ア客観的交換価値との比較について(ア)土地課税台帳等に登録された価格が賦課期日における当該土地の客観的な交換価値を上回れば,当該価格の決定は違法となる(最高裁判所平成15年6月26日第一小法廷判決・民集57巻6号723頁参照)。 本件において,平成16年6月には,本件土地への本件アスベスト大量埋設の事実及びこれによる本件土地の処分・使用の困難が明らかとなっており,さらに,同年10月には,本件アスベストの埋設量が6743立方メートルという膨大な量にのぼることが,翌11月にはその除去費用が課税標準額に匹敵する1億9470万円ないし2億3150万円にのぼることがそれぞれ明らかになっていたのであるから,平成17年 及び平成18年の各1月1日において,本件土地の宅地としての客観的な交換価値が0となっていたことは明らかである。 (イ)また,国土交通省「不動産鑑定評価基準」は,「不動産の価格を形成する要因」のうちの「個別的要因」として「土壌汚染の有無及びその状態」を掲げ,これを解説した同省の「不 いたことは明らかである。 (イ)また,国土交通省「不動産鑑定評価基準」は,「不動産の価格を形成する要因」のうちの「個別的要因」として「土壌汚染の有無及びその状態」を掲げ,これを解説した同省の「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項」において,「土壌汚染が存する場合には,汚染物質に係る除去等の費用の発生や土地利用上の制約により,価格形成に重大な影響を与える場合がある」と指摘している。国土交通省の「不動産鑑定評価基準」が不動産価格評価の根幹をなすことからすれば,本件土地評価においても当然参照されねばならない。 (ウ)それにもかかわらず,被告は,上記「特別の事情」により本件土地が交換価値を喪失している事実を見落とし,本件土地の課税標準を見直す措置を講ずることなく,平成17年度の本件土地の価格合計を3億5287万5783円とし,平成18年度のそれを2億1875万1051円として,それぞれ固定資産課税台帳に登録しており,かかる価格の決定は,いずれも違法である。 イ地目の変換について被告の平成17年8月16日実地調査により,本件土地の敷地内の建物及びその設備がすでに解体され,除去されていたこと,本件土地が更地となっており,雑草が所々繁茂していたこと,本件土地の接道部分は塀が残っている部分と縄張りがされている部分があったことが明らかになった上,埋設された本件アスベストを除去しなければ宅地としての使用も処分もできない実情も考慮すれば,被告は,賦課期日における本件土地について,「交換価値ある宅地」との評価を改めて,地目「雑種地」としての評価をすべき「特別の事情」があったといえる。 〔被告〕 ア特別の事情の意義について法349条2項但書にいう「特別の事情」とは,土地自体に内在する原因により,区画,形質に著しい変化があった場合で,数量的に比準 の事情」があったといえる。 〔被告〕 ア特別の事情の意義について法349条2項但書にいう「特別の事情」とは,土地自体に内在する原因により,区画,形質に著しい変化があった場合で,数量的に比準しやすい定型的な態様のものを予定している。 イ客観的交換価値との比較について(ア)原告が引用する平成15年の最高裁判決は,標準宅地の適正な時価として評価された価格が,標準宅地の賦課の期日における客観的な交換価値を上回っていて適正な時価とはいえない場合の,標準宅地の価格とこれに基づいて算定された宅地の価格との関係について判示したものであって,本件に適するものではない。 本件において,被告市長は市街地宅地評価法に従い,また総務省からの7割評価通達及び時点修正措置(評価基準経過措置)に則って標準宅地の価格を評定し,これに基づいて本件土地の価格を決定しているのであって,ここで定められた標準宅地の価格は適正な価格(客観的交換価値)を上回るものではなく,これに基づいて決定された本件土地の価格は適正な価格であったと推認される。 (イ)国土交通省が定める「不動産鑑定評価基準」と総務省が定める「固定資産評価基準」は,それぞれ定められた趣旨・目的を異にしているのであるから,固定資産に対する課税のための固定資産の評価について,国土交通省の定める不動産鑑定評価基準を重んじなければならないということはない。 また,本件アスベストの埋め込み廃棄は土壌汚染とは明らかに異なっており,不動産鑑定評価基準にいう「土壌汚染が存する場合」に該当しない。 さらに,本件土地は,土地自体に汚染はなく,またそこに廃棄されている本件アスベストの除去に要する費用等については,これを前所有者 に請求できる権利が付着しているのであるから,固定資産の評価に当たり,除去費用相当額を減額す に汚染はなく,またそこに廃棄されている本件アスベストの除去に要する費用等については,これを前所有者 に請求できる権利が付着しているのであるから,固定資産の評価に当たり,除去費用相当額を減額することは不合理で課税上の公平を欠くことになる。 (ウ)本件アスベストの廃棄は,前所有者により人為的にされたものであり,平成16年になってその事実が発覚したに過ぎず,これを除去することにより原状に復することができるものであって,土地自体に内在する原因により,区画,形質に著しい変化が生じたものとはいえない。 アスベストの保管・除去等を行う場合には,大気汚染防止法と廃棄物処理法に基づく行政の監視下又は監督下にあるが,原状での埋設状態の継続を行政が指示している事実はないし,原告は,法令の範囲内で,その所有する本件土地について,使用収益及び処分を自由にすることができることに変わりはない。 したがって,本件アスベストの除去に要する費用をもって平成17年度及び平成18年度の各価格を減価修正すべき理由にはならない。 ウ地目の変換について固定資産評価基準によれば,「土地の地目の認定に当たっては当該土地の現況及び利用目的に重点を置き,…認定するものとする」とされている。 本件土地の現況について検討すると,本件土地は都市計画法上の工業地域内にあること,本件土地が,昭和30年頃工場用地として造成され,平成16年6月頃までは工場用建物も所在して工場用地として現実に使用されていたもので,宅地としての熟成度も極めて高いこと,本件アスベストの廃棄が発覚したことにより,一時的に本件土地への立入等使用が制限されることになり,一部に雑草が生えたり本件アスベスト飛散防止のための覆土がなされたことが窺われるが,原告又は前所有者により,随意に,何時でも本件アスベストを除去し,従来同 土地への立入等使用が制限されることになり,一部に雑草が生えたり本件アスベスト飛散防止のための覆土がなされたことが窺われるが,原告又は前所有者により,随意に,何時でも本件アスベストを除去し,従来同様宅地として使用収益しあるいは売却処分することも可能であること等からすれば,宅地としての現況は維 持されているものと認められる。 また,利用目的の面からみても,本件土地は,有限会社イング(以下「イング」という。)に対し,宅地として利用する目的のもとに売買契約がされ,その契約はなお維持されていること,登記簿上も地目を宅地として登記されたままで地目変更の登記手続がとられていないこと等からすれば,客観的には本件土地の利用目的は宅地(工場用地)としてのものであると認められる。 したがって,被告市長が,本件土地を宅地として評価したことは正当であって,法349条3項但書を適用しないことについて違法はない。 (2)固定資産評価基準第一章第3節二(一)4所定の「所要の補正」を怠った違法〔原告〕ア固定資産評価基準に基づく価格の評価に当たっては,(ア)比準する土地の選定が適切にされること(イ)比準する土地の価額がその適正な時価を超えないこと(ウ)比準する土地と評価の対象となる土地との価額の比準が適正に行われることの3つの過程が適正に行われることが当然の前提となり,これが適正に行われれば,その評価の一般的な合理性に鑑み,これによって算定した土地の価額は,特別な事情がない限り,その適正な時価を超えるものではないと推認されるが,逆に,比準する土地と評価の対象となる土地の条件が異なるなどの特別な事情が存在するときは,適正な時価を超えるものではないとの推認は働かず,対象となる土地について,独自に評価を行うか,少なくともその条件の違いに基づく対象地評価 象となる土地の条件が異なるなどの特別な事情が存在するときは,適正な時価を超えるものではないとの推認は働かず,対象となる土地について,独自に評価を行うか,少なくともその条件の違いに基づく対象地評価の補正を行うことが必要となり,それが「所要の補正」である。 イ本件土地には,撤去に2億ないし3億円というような多額の費用を要す る膨大な量の本件アスベストが埋設されている。 その危険性・有害性からすれば,これは,本件標準宅地にはみられない特別の環境条件であるから,標準宅地との単純な比準により評価を行うことは許されず,固定資産評価基準第一章第3節二(一)4が定める「所要の補正」をすべきであった。それにもかかわらず,本件アスベストの存在を考慮せず,所要の補正を行わなかった被告の評価には,かかる「所要の補正」を怠った違法がある。 〔被告〕「所要の補正」をすべき場合とは,当該宅地を取り巻く外的要因としての環境条件が存在する場合,例えば,①騒音・振動,②いみ施設,③悪臭等が存在する場合である。 本件土地の状況は,当該宅地の前所有者が,当該土地内に,人為的・意図的に本件アスベストを埋込み廃棄した内的要因により,その撤去のための費用を要することから,そのままの状態では市場取引が困難になったもので,当該土地を取り巻く外的環境条件により当該土地の価格が低下したものではないから,「所要の補正」をすべき場合に当たらない。 なお,前記の鳥栖市長が定める鳥栖市固定資産土地評価事務取扱要領15条(画地計算による本市の所要の補正)の「路線価に反映し難い外的要因についての補正項目」のいずれにも該当しないし,土壌汚染地についての相続税法上の評価方法として,国税庁は,浄化・改善等に要する措置費用の額は,その土地の評価額から控除するものではないとしている。 (3)法408 項目」のいずれにも該当しないし,土壌汚染地についての相続税法上の評価方法として,国税庁は,浄化・改善等に要する措置費用の額は,その土地の評価額から控除するものではないとしている。 (3)法408条の実地調査を怠った違法〔原告〕法408条は,「市町村長は,固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該市町村所在の固定資産の状況を毎年少なくとも1回実地に調査させなければならない」と定めている。 しかるに,被告は,本件土地についての実地調査を平成16年中に行っておらず,この点に違法がある。 〔被告〕被告市長は,法408条の規定に従い,自動車移動等を用いた目視による土地現況の調査を固定資産評価員等に行わせていたのであって,本件土地についても,平成16年中に,このような方法による実地調査は行われている。 仮に,同条に定める適式の実地調査を欠いていたからといって,本件固定資産評価自体が違法として取り消されるべき事由があるということにはならない。 第3当裁判所の判断 認定事実前掲争いのない事実等のほか,証拠(甲1~7,8の1・2,16,17,乙3の1・2,4,5)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1)本件土地は,都市計画法上の工業地域にあり,昭和30年頃に工場用地として造成され,登記簿上も昭和30年2月10日に地目を宅地として登記され,道路,電気,水道,排水等の設備が完備し,固定資産評価上も市街地宅地評価法による大工場地区内に区分され,不動産鑑定士の鑑定評価書中の標準宅地調書においても最有効利用は工場用地が現実的かつ最適であるとされており,さらに隣地は物流倉庫用地として使用されている。 (2)原告は,本件土地及び土地上の工場施設において簡易水道用水道管の製造業をしていた前所有者であるリゾートソリューションから,平成 るとされており,さらに隣地は物流倉庫用地として使用されている。 (2)原告は,本件土地及び土地上の工場施設において簡易水道用水道管の製造業をしていた前所有者であるリゾートソリューションから,平成4年1月31日,本件土地及び工場建物等の施設を買い受け,以来,コンクリート製品の製造を行ってきた。しかし,その後,不況・公共工事削減の下でコンクリート製品の製造継続が困難となり,原告は,平成15年をもって工場の操業を中止して本件土地を売却することとし,平成16年4月21日,イングとの間で,本件土地を宅地として2億1200万円で売り渡す旨の売買契約 を締結した。そして,同年6月20日の代金決済日を前に,イングによって,本件土地上の工場建物等の施設が撤去された。 (3)その後,イングが本件土地の現況を調査したところ,その地中に,昭和60年ころまでの間にリゾートソリューションが廃棄したアスベストを含有する本件アスベストが6743立方メートル埋設されており,その除去費用が搬出先の距離により,1億9470万円~2億3150万円であることが遅くとも平成16年11月ころまでには判明した。 このため,以後,原告・イング間の上記売買契約の履行は,保留・凍結状態となっている。 (4)本件土地は,敷地内の建物及びその設備が既に解体・除去されていて更地となっているが,本件アスベストの廃棄が発覚したため,人体への健康被害発生防止のため,本件土地への立入等使用が制限され,関係者以外が立ち入れないよう縄張りがされたり,所々に雑草が繁茂したり,本件アスベスト飛散防止のための覆土がされたりしていた。 (5)アスベストは,不溶性の物質であり,土壌を汚染することはなく,そのため土壌汚染対策法の対象とはされておらず,これを除去することにより当該アスベストが埋設している土地 覆土がされたりしていた。 (5)アスベストは,不溶性の物質であり,土壌を汚染することはなく,そのため土壌汚染対策法の対象とはされておらず,これを除去することにより当該アスベストが埋設している土地を原状に復することができる。しかし,アスベストは,粉塵として飛散すれば,人の身体・健康に深刻な被害をもたらす危険性があることから,大気汚染防止法において特定粉塵として規制対象とされている。 (6)原告は,東京地方裁判所に対し,リゾートソリューションを被告として,本件アスベストの除去費用の支払を求める損害賠償請求訴訟を提起した。 同訴訟において,平成18年12月ころ,リゾートソリューションが原告に対し,約2億円を支払う旨の裁判上の和解が成立し,平成19年3月中旬ころには,本件アスベストは撤去された。 「特別の事情」を看過した違法(争点(1))について (1)特別の事情の意義について法349条2項,3項各本文は,基準年度に固定資産税を賦課した土地に対して課する翌年度(第2年度)及び翌々年度(第3年度)の課税標準を,原則として,基準年度の課税標準の基礎となった価格としている。 固定資産税は,固定資産の有する価値に着目して課税するものであるから,毎年度評価して,これを課税標準とすることが本来の姿である。それにもかかわらず,上記規定が設けられたのは,通常,固定資産の価格が短期間に大幅な変動を来すことはなく,上記規定によっても価格の正確性を一応担保できると考えられること,評価の対象となる固定資産の数がぼう大な反面,課税機関の人員が限られているなど,これを一定の基準によって毎年評価替えを行うことは技術上相当に困難であり,また,その評価替えによって年々負担が変動することにも問題があること等から,同一固定資産の経年による価格変化を正確に把握すること を一定の基準によって毎年評価替えを行うことは技術上相当に困難であり,また,その評価替えによって年々負担が変動することにも問題があること等から,同一固定資産の経年による価格変化を正確に把握することを多少犠牲にしても,課税事務の簡素合理化を実現することの方が合理的であるという政策判断がされたためと解される。 他方,前記各条項但書は,「地目の変換,家屋の改築又は損壊その他これに類する特別の事情」があるため,基準年度の価格によることが不適当であると市町村長が認める場合には,当該土地又は家屋に類似する土地又は家屋の基準年度の価格に比準する価格で固定資産課税台帳に登録されたものによって,翌年度(第2年度)及び翌々年度(第3年度)の課税標準を定めるものとしている。かかる前記各条項本文の趣旨及び同条項但書の文言に照らせば,前記各条項但書の「特別の事情」とは,土地については,基準年度以後に発生ないし顕在化した,地目の変換に比するような事情で,それによる価格変動が課税事務の簡素合理化の要請だけでは正当化できない程度に大きなものに限られると解するのが相当である。また,かかる事情がある場合でも,当該土地に対して課する翌年度(第2年度)及び翌々年度(第3年度)の課税標準を「当該土地に類似する土地の基準年度の価格に比準する価格」によ ることとされ,翌年度(第2年度)又は翌々年度(第3年度)において,基準年度と同様に固定資産の価格を正確に決定することまでは要求されておらず,なお課税事務の簡素合理化の要請が相当程度維持されていることに鑑みれば,「特別の事情」については,当該土地が類似する他の土地に比準することができるという点を考慮する必要があり,そのため,価格変動要因を数量的に比準できるような定型的な態様のものであることが予定されているものと解される。 した ,当該土地が類似する他の土地に比準することができるという点を考慮する必要があり,そのため,価格変動要因を数量的に比準できるような定型的な態様のものであることが予定されているものと解される。 したがって,土地について上記「特別の事情」があるというためには,基準年度以後に課税事務の簡素合理化の要請だけでは正当化できない程度の大きな価格変動があったこと,その変動は価格決定面で数量的に比準することができるような定型的な態様のものであること,例示としての地目の変換に比するようなものであることが必要であり,具体的には,土地の全部又は一部について,用途変更による現況地目の変換又は分筆若しくは合筆があったほか,浸水,土砂の流入,隆起,陥没,地滑り,埋没等によって当該土地の区画,形質に著しい変化があった場合等,土地自体に内在する原因により土地の価格に大幅な増減をもたらしたような事情をいうものと解すべきである。 (2)地目の変換について固定資産評価基準第1章第1節によれば,土地の評価は,土地の地目の別に,各地目別に定める評価の方法によって行うところ,この場合における土地の地目の認定に当たっては,当該土地の現況及び利用目的に重点を置き,部分的に僅少の差異の存するときであっても,土地全体としての状況を観察して認定するものとされている。そして,「宅地」とは,建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地をいうものと解され,また,現に建物が建築されていない土地であっても,土地全体としての状況,使用実態等からみて客観的に敷地の用に供されるものであることが明らかな場合には宅地と認定するのが相当である。 これを本件についてみると,前記1認定のとおり,本件土地は,昭和30年頃に工場用地として造成され,道路,電気,水道,排水等の設備が完備され,以来 らかな場合には宅地と認定するのが相当である。 これを本件についてみると,前記1認定のとおり,本件土地は,昭和30年頃に工場用地として造成され,道路,電気,水道,排水等の設備が完備され,以来,平成16年6月頃まで継続して,工場用建物が所在して工場用地として現実に使用され,同年4月には原告からイングに対して本件土地を宅地として売り渡す契約を締結していること,同年4月から6月までの間に,工場用建物等が撤去され,その後,本件アスベストの埋設が発覚したために,本件土地への立入等が制限され,一部に雑草が繁茂したり,本件アスベスト飛散防止のための覆土がなされたりしているものの,アスベストは不溶性の物質で土壌を汚染するものではないから,これを除去することが可能であり,これが除去されれば,従前同様に宅地として処分又は使用収益することが可能であること,本件土地は,都市計画法上の工業地域にあり,登記簿上も昭和30年2月10日に地目を宅地として登記されて以後,地目変更の登記手続もなされていないこと,さらに,前記1のとおり,原告は,本件土地について宅地としての利用価値を維持すべく,リゾートソリューションに対し,本件アスベストの除去費用の支払を求める損害賠償訴訟を提起したことが認められるのである。 これらの事実によれば,本件土地については,建物が撤去されてはいるものの,その現況及び利用目的のいずれにおいても,建物の敷地の用に供されるものであることが明らかであって,「宅地」と認定するのが相当である。 したがって,本件土地について宅地から雑種地への「地目の変換」があるということはできない。 (3)本件アスベストの存在について前記認定のとおり,アスベストは不溶性の物質であって,土地の構成要素である土壌を汚染するものではなく,そのため土壌汚染対策法の対象ともな ということはできない。 (3)本件アスベストの存在について前記認定のとおり,アスベストは不溶性の物質であって,土地の構成要素である土壌を汚染するものではなく,そのため土壌汚染対策法の対象ともなっていない。また,本件アスベストは,前所有者であるリゾートソリューションにより人為的に廃棄されたものであって,平成16年にその事実が発覚 したのであるが,これを除去することにより本件土地を原状に復することができるものであって,本件土地自体に内在する原因によって,本件土地の区画,形質に著しい変化があったものということはできない。また,アスベストスラッジの廃棄されている土地の事例は希有であって,類似する他の土地に比準することが容易ではなく,価格変動要因を数量的に比準できるような定型的な態様のものであるということもできない。 これらの点に鑑みれば,本件土地について,本件アスベストの存在が,「特別の事情」に当たるということはできない。 (4)まとめ以上によれば,本件土地について,被告市長が平成17年度の価格の決定に当たり,法349条2項1号・3項但書により課税標準を見直すべき「地目の変換その他特別の事情」を考慮しなかったことについて,違法はないというべきである。 なお,上記各条項但書の「地目の変換その他特別の事情」による価格の見直しは,翌年度(第2年度)及び翌々年度(第3年度)にのみ適用されるものであることは法文上明らかであるから,これを基準年度である平成18年度の価格決定にも適用すべきとする原告の主張は失当である。 (5)客観的交換価値との比較について土地に対する固定資産税は,土地の資産価値に着目し,その所有という事実に担税力を認めて課する一種の財産税であって,個々の土地の収益性の有無にかかわらず,その所有者に対して課するものであるから, いて土地に対する固定資産税は,土地の資産価値に着目し,その所有という事実に担税力を認めて課する一種の財産税であって,個々の土地の収益性の有無にかかわらず,その所有者に対して課するものであるから,法349条の土地の価格,すなわち「適正な時価」(法341条1項5号)とは,正常な条件の下において成立する取引価格,すなわち,客観的な交換価値をいうと解される。したがって,土地課税台帳等に登録された価格が賦課期日における当該土地の客観的な交換価値を上回れば,当該価格の決定は違法となる。 しかし,固定資産評価基準に従って算定された価格は,固定資産評価基準が 定める評価の方法によっては,当該固定資産の価格を適切に算定することができない特別の事情又は固定資産評価基準が定める減点補正を超える減価を要する特別の事情の存しない限り,適正な時価であると推認するのが相当である(最高裁判所平成15年6月26日第一小法廷判決・民集57巻6号723頁,最高裁判所平成15年7月18日第二小法廷判決・裁判集民事210号283頁各参照)。 そして,固定資産評価基準に定める市街地宅地評価法をみると,その評価方法は,地区の区分,状況が相当に相違する地域の区分,主要な街路の選定,標準宅地の選定,標準宅地の適正な時価の評定,主要な街路とその他の街路の各路線価の比準,所要の補正を含めた画地計算法の適用等が,いずれも適正に行われることを要請するものと解され,これらを適正に行うことなく決定された価格は,そもそも,固定資産評価基準によって決定された価格ということはできないが,他方,これらが適正に行われれば,上記評価方法が各筆の宅地の適正な時価への接近方法として一般的に合理性を有することに鑑みれば,これによって算定した宅地の価額は,特別の事情のない限り,適正な時価を超えるものではない 正に行われれば,上記評価方法が各筆の宅地の適正な時価への接近方法として一般的に合理性を有することに鑑みれば,これによって算定した宅地の価額は,特別の事情のない限り,適正な時価を超えるものではないと推認される。 本件においては,後記3のとおり,本件土地について,画地計算法の適用に際し所要の補正を行わないことに違法はなく,また,前記(2)及び(3)のとおり,法349条2項1号・3項但書の「地目の変換その他特別の事情」により課税標準を見直すべき場合にも当たらない。そのため,本件土地の価格の決定が前掲争いのない事実等記載のとおりされたことについては,固定資産評価基準に則って適正に行われたものというべきであるから,本件土地の価格は平成17年度及び平成18年度のいずれにおいても,その適正な時価を超えるものではないと推認するのが相当である。 したがって,被告市長が,平成17年度の本件土地の価格合計を3億5287万5783円とし,平成18年度のそれを2億1875万1051円と して,それぞれ固定資産課税台帳に登録した価格については,いずれも賦課期日における当該土地の客観的な交換価値を上回るものということはできないから,これを違法とする原告の主張は理由がない。 「所要の補正」を怠った違法(争点(2))について(1)「所要の補正」の意義について前記法令等の定め記載のとおり,固定資産評価基準第1章第3節二(一)4は,市街地宅地評価法による各筆の宅地の評点数の付設に関して,各筆の宅地の評点数は,路線価を基礎とし,画地計算法を適用して付設するものとするが,市町村長は,宅地の状況に応じ,必要があるときは,画地計算法の附表等について,所要の補正をして,これを適用するものとしている。これは,価格の低下等の原因が画地の個別的要因によること,またその影響が局 市町村長は,宅地の状況に応じ,必要があるときは,画地計算法の附表等について,所要の補正をして,これを適用するものとしている。これは,価格の低下等の原因が画地の個別的要因によること,またその影響が局地的であること等の理由から,その価格事情を路線価の付設によって評価に反映させることができない場合があることから,かかる場合には,その価格事情が特に著しい影響があると認められるときに限り,個々の画地ごとに特別の価格事情に見合った所要の補正を行うことができるとしたものである。 そして,上記の如き事情が宅地の価格に与える影響の程度は,各市町村における当該宅地の個別の状況によって異なり得るものである一方,評価の適正と均衡を確保しつつ,大量の固定資産を一定の期間内に評価しなければならない固定資産税における評価事務の性質上,「所要の補正」として行う宅地の減価補正についても,各市町村の個別事情に応じながらも,定型的な基準に基づいて画一的に行うことが,公平な賦課徴収のために必要である。 そのため,各市町村においては,それぞれその実情に応じた所要の補正の取扱要領等を定めているところであって,被告においても,前記法令等の定め記載のとおり,「鳥栖市固定資産土地評価事務取扱要領」(乙10)の15条(画地計算による本市の所要の補正)において,路線価に反映し難い外的要因について,所定の補正項目を定めている。 (2)本件アスベストの存在について本件においては,基準年度である平成18年度における本件土地の価格の評価及び価格の決定は,前記争いのない事実等記載のとおりであって,所要の補正に関しては,上記取扱要領15条(l)の「間口が狭小な土地に関する補正」等がされているものの,本件アスベストの埋設については,上記取扱要領15条のいずれの補正項目にも該当しないとして,所要 要の補正に関しては,上記取扱要領15条(l)の「間口が狭小な土地に関する補正」等がされているものの,本件アスベストの埋設については,上記取扱要領15条のいずれの補正項目にも該当しないとして,所要の補正がされていないことが認められる。 ところで,固定資産評価基準における所要の補正は,前記のとおり,評価に当たり,課税対象不動産の個別の状況を一定程度考慮しようとするものであるが,その究極の目的は,不動産鑑定評価基準などと異なり,固定資産税の公平な賦課徴収にあることは明らかであるから,不動産鑑定評価基準においては減価するべきものとされている場合であっても,少なくとも,不動産減価の要因が外的人為的なもので,その原因行為者の責任追及を行うことにより原状回復が論理的に可能な場合は,これを理由に「所要の補正」をしない取扱いをすることも許されるものと解するのが相当である。なぜならば,このように解しないと,例えば,ゴミや産業廃棄物等が大量に廃棄されており,その除去のために巨額の費用を要するような場合は,その土地の評価についてすべからく減価しなければならなくなるが,そのような対処が固定資産税の公平な賦課徴収の観点からみて不当であることが明らかであるからである。また,本件においても,本件アスベストの存在を理由に所要の補正をしなければならないとすると,仮に原告がリゾートソリューションからその撤去費用を回収した後にこれを撤去しない場合にも,評価上減価しなければならなくなるが,このような減価がきわめて不当であることは論を待たないし,撤去費用を現実に回収したか否かにより減価すべきか否かの区別を行うことも固定資産税の課税の観点から容れられないことは明らかである。 なお,この点,国税庁は,土壌汚染地についての相続税法上の評価方法と して,その除去等に要した費目を 減価すべきか否かの区別を行うことも固定資産税の課税の観点から容れられないことは明らかである。 なお,この点,国税庁は,土壌汚染地についての相続税法上の評価方法と して,その除去等に要した費目を汚染原因者に求償できる場合には,その土地は浄化・改善を完了した土地として評価する等とされていること(乙12)も参考になる。 前記のとおり,上記取扱要領15条所定の補正項目には,本件アスベスト埋設のような場合が規定されていないが,その趣旨は,上記と同様の考え方に基づくものと推測でき,このような補正項目の規定には合理性が存するものというべきであり,この定めが固定資産評価基準に反し,違法であるということはできない。 そして,前記のとおり,本件アスベストは人為的に廃棄されたものであり,しかもアスベストは不溶性の物質であって土地の構成要素である土壌を汚染するものではなく,そのためこれを除去することにより当該土地を原状に復することができるものであるから,本件アスベストの存在を理由に所要の補正をしない取扱いをすることも許されるものというべく,本件土地について,固定資産評価基準第一章第3節二(一)4所定の「所要の補正」を行わなかったことについて,違法があるということはできない。 実地調査を怠った違法(争点(3))について法408条は,当該年度における1月1日現在における固定資産の価格を定めるためには,その固定資産の状況を毎年少なくとも1回実地に調査するのが適当であるとの技術的見地から設けられたものであって,訓示規定と解するのが相当である。そのため,実地調査をしなかったという理由だけでは,価格の決定の効力を否定すべきではない。 そうすると,本件において,仮に被告が実地調査を怠った事実があったとしても,それだけでは本件土地の価格の決定を違法とすることはできず かったという理由だけでは,価格の決定の効力を否定すべきではない。 そうすると,本件において,仮に被告が実地調査を怠った事実があったとしても,それだけでは本件土地の価格の決定を違法とすることはできず,また,被告が実地調査を怠ったために本件土地の価格の決定が適正にされなかったとの事実も特に見当たらないから,実地調査を怠ったことを理由に本件土地の価格の決定の違法をいう原告の主張は理由がない。 結論 以上によれば,原告の甲乙両事件請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとする。 よって,主文のとおり判決する。 佐賀地方裁判所民事部裁判長裁判官神山隆一裁判官田中芳樹裁判官内山裕史 物件目録 所在佐賀県鳥栖市a町b地番c番d地目宅地地積1587.97㎡ 所在同所e地番f番g地目宅地地積90.26㎡
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