- 1 - 主文 被告人を懲役16年に処する。 未決勾留日数中190日をその刑に算入する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は、平成30年10月頃から被害者と交際し同棲を始め、被告人が東海地方の会社に入社した際には被害者を伴って同地方に転居し、令和元年12月以降は、岐阜県羽島市a町bc丁目d番地ef号室(以下「当時の被告人方居室」という。)で同棲していた。被告人は、被害者との交際を継続しながら、令和3年4月頃から職場の同僚であるAと結婚を前提に交際しており、その後も被害者との交際を完全には解消せずにいた。被告人は、Aとの交際の事実を被害者に隠していたところ、同年11月5日、AからのLINEのメッセージを被害者に見られて、Aとの交際の事実が被害者に発覚し、被害者から「そのくそ女を連れてこい。」などと言われた。 (罪となるべき事実)被告人は第1 令和3年11月5日午後1時10分頃、当時の被告人方居室において、被害者(当時49歳)がAのことを「くそ女」と侮辱したと感じて激高するなどし、被害者に対し、殺意をもって、その頸部を両手で絞め付け、よって、その頃、同所において、同人を頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害し第2 同日午後6時33分頃から同日午後6時35分頃までの間に、名古屋市g区h町i番jふ頭k号岸壁において、被害者の死体を同岸壁横の海中に投棄し、もって死体を遺棄したものである。 (法令の適用)罰条判示第1 刑法199条 - 2 - 判示第2 刑法190条刑種の選択判示第1の罪に る。 (法令の適用)罰条判示第1 刑法199条 - 2 - 判示第2 刑法190条刑種の選択判示第1の罪について有期懲役刑を選択併合罪の処理刑法45条前段、47条本文、10条(重い判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重)未決勾留日数の算入刑法21条訴訟費用の不負担刑訴法181条1項ただし書(量刑の理由) 1 殺人の動機について被告人は、殺人の動機について、被害者が被告人とAの交際を知って怒り出し、Aのことを「くそ女」と表現したことから、激高したと述べる。被告人が被害者の発言に激高したということ自体は否定できない。しかし、いくらAのことを大事に思っていたとしても、それだけで殺意を生じさせるまで激高したとは考えにくい。 被害者の怒る姿を目の当たりにしてAとの新生活が阻害されかねないと考えたためであるかもしれないし、被害者との交際関係を解消する方法が見付からないまま追い詰められたという感情が噴出したためであるかもしれないし、被害者との間で被告人が語っていないやり取りがあったためであるかもしれない。このように、何らかの事情や被告人の気持ちがあったはずであるが、それが何であるかということを確定することはできない。なお、被告人は、令和3年8月の時点で、被害者との間で完全に交際関係が解消されていたと述べるが、被害者が、同年9月22日頃、「他に女でもできたんじゃないか」などと被告人の同僚に電話していること、同年11月2日から4日に親しげに被告人に抱きつくような様子を示していること、本件犯行直前、Aと被告人が交際していることを知って怒り出していることなどからすると、本件犯行時において、被 ていること、同年11月2日から4日に親しげに被告人に抱きつくような様子を示していること、本件犯行直前、Aと被告人が交際していることを知って怒り出していることなどからすると、本件犯行時において、被害者は、被告人との交際関係を解消したと思っていなかったことが明らかであり、その様子を間近で見てい - 3 - た被告人もそのような被害者の心情を認識していたものと認められる。 したがって、殺人の動機については、被害者の発言に激高したというだけではなく、他にも何らかの事情等があるという限度で認定するしかない。 しかし、殺意を生じさせた事情等を様々考えてみても、少なくとも被告人にとって酌むことができるような事情は見付からない。被害者が激高したのも、もともとは、被害者との交際関係を完全に解消せずに二重交際を続けてきた被告人に責任があり、あまりにも自分本位の身勝手な動機で殺害に及んだものと評価すべきである。 2 犯行態様について被告人は、被害者の首を両手で絞め、途中で体勢が変わって横倒しになっても止めることなく、三、四分の間、被害者の首の力が抜けたことが分かるまで、力を込めて絞め続けている。首を絞めるという行為は、被害者を殺害するためとしか考えられない行為であり、そのような行為を被害者が確実に死亡するまで続けたのであるから、強固な殺意が存在していたことは明らかである。殺意の発生自体は突発的な事情を契機としていると考えられるが、被害者を死亡させる危険が高い悪質な犯行と評価すべきである。 3 被害者の死亡結果について被害者の死亡という結果は、取り返しのつかない重大なものであると評価すべきである。被害者の受けた肉体的苦痛及び精神的苦痛は極めて大きかったことが想像される。遺族の悲しみも大きかったことが認められる。 4 死体遺棄の動機 は、取り返しのつかない重大なものであると評価すべきである。被害者の受けた肉体的苦痛及び精神的苦痛は極めて大きかったことが想像される。遺族の悲しみも大きかったことが認められる。 4 死体遺棄の動機について被告人は、被害者を殺害した後、被害者の衣服を脱がして全裸にした上、周囲が暗くなる時間まで待って車で高速道路に乗って岸壁まで行き、到着後直ちに被害者の遺体を海に投棄して、その場を立ち去っている。湾内に遺棄したという点をみると場当たり的な面は否定できないが、これらの行動は、自らの犯行と結びつくような痕跡を全て取り除き、殺害が発覚しないようにするための - 4 - 罪証隠滅行為として行われたものと考えるのが自然である。被告人は、海が好きだった被害者が生前、海への散骨を望んでいたのを思い出し、海に還してあげようと考えたと述べるが、不合理であって信用することができない。弁護人は、被害者の殺害直後であったために被告人に合理的な判断ができなかったと主張するが、被害者を殺害してからその遺体を岸壁に投棄するまで約5時間余りが経過しており、その中で被告人は、約37分間Aと通話していたり、的確に運転操作をしながら迷いなく被害者の遺体を岸壁まで運んでいたりしており、気が動転して合理的な判断ができていなかった様子はうかがわれない。 5 被告人の本件犯行に対する受止めについて被告人の犯行後の行動をみると、被害者の遺体を海に投棄した約17分後には、Aに「楽しい第二の人生にしよう」とのメッセージを送っていること、その日の夜から翌日に掛けて、被害者と同居していた当時の被告人方居室内の荷物を片付け、引っ越し作業を済ませていること、しかも、これをAに手伝わせ、被害者の衣服等をごみとして捨てたほか、被害者のブランドバッグ等を買取店に持っていき、売却し していた当時の被告人方居室内の荷物を片付け、引っ越し作業を済ませていること、しかも、これをAに手伝わせ、被害者の衣服等をごみとして捨てたほか、被害者のブランドバッグ等を買取店に持っていき、売却していること、被害者を殺害してから数日後に、Aと一緒に、ディズニーランドのチケットを予約し、婚約指輪を買いに行って、約1週間後には、ディズニーランドでAにプロポーズをしていることなど、Aとの新生活にしか目が向かず、自分のやったことを反省するどころか気にも留めていないような行動をとっている。ここから、被害者を殺害したことへの罪悪感、被害者への弔いの気持ち、後悔の念は全く感じられない。 そして、本件犯行から現在に至るまでに、本件犯行に至らざるを得なかった自らの問題点を見つめ直し、被害者、遺族に対する謝罪の気持ちを整理する十分な時間があったはずであるのに、被告人の供述や態度をみても、防衛的で自己を正当化するようなものが多く、現在に至っても、真摯に反省しているかどうかについては、疑問を抱かざるを得ない。そうすると、犯罪事実を認めているという限度で、量刑上酌むのが相当である。 - 5 - 6 その他被告人に前科がないこと、被告人の家族が被告人を監督する意思を示していることも、量刑上考慮する必要がある。 7 量刑判断同種事案の量刑傾向(その検索条件は別紙のとおり。)を踏まえて本件の量刑を検討すると、殺人の動機があまりに自分本位で身勝手であること、本件犯行に及んだことに対する受止めが不十分であることなどからすれば、やや重い部類に属すると評価できる。そうすると、主文の刑が相当である。 (検察官山本尚子、同徳満貴秀、国選弁護人甲[主任]、同乙各出席)(検察官の求刑:懲役18年弁護人の科刑意見:懲役8年)令和4年11月2 と評価できる。そうすると、主文の刑が相当である。 (検察官山本尚子、同徳満貴秀、国選弁護人甲[主任]、同乙各出席)(検察官の求刑:懲役18年弁護人の科刑意見:懲役8年)令和4年11月28日名古屋地方裁判所刑事第6部裁判長裁判官平城文啓 裁判官伊藤昌代 裁判官藤田陽平 - 6 - (別紙) (処断罪)殺人 (共犯関係等)単独犯 (動機)男女関係(DVを除く) or その他の家族関係 (凶器等)なし (処断罪と同一又は同種の罪の件数)1件 (被告人から見た被害者の立場)配偶者(内縁を含む) or 知人・友人・勤務先関係 (累犯前科,同種前科,執行猶予中の前科,仮釈放中の前科又はその他の量刑上考慮した前科の有無)すべてなし (殺意)突発的だが強固な殺意
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