平成31(行ケ)10049 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年12月11日 知的財産高等裁判所 3部 判決 審決取消
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判決文本文36,858 文字)

令和元年12月11日判決言渡平成31年(行ケ)第10049号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和元年10月9日判決 原告 X訴訟代理人弁護士野村吉太郎 被告グーグルエルエルシー 訴訟代理人弁護士大野聖二同小林英了同木村広行同祝谷和宏 主文 1 特許庁が無効2017-800069号事件について平成31年1月17日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求主文第1項と同旨 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等⑴ 原告及びプロント・ワールドワイド・リミテッドは,平成14年5月13日(優先日平成13年5月15日,優先権主張国台湾優先日平成13年9月25日,優先権主張国米国)を国際出願日とする特許出願(特願2002-590620号)の一部を分割して,発明の名称を「実時間対話型コンテンツを無線交信ネットワーク及びインターネット上に形成及び分配する方法及び装置」とする発明について特許出願(特願2008-266432号。 以下「本件出願」という。)をし,平成24年7月6日,特許権の設定登録(特許第5033756号。請求項の数7。以下,この特許を「本件特許」という。甲3,26)を受けた。 ⑵ 被告は,平成29年5月16日,本件特許について特許無効審判を請求(無 ,特許権の設定登録(特許第5033756号。請求項の数7。以下,この特許を「本件特許」という。甲3,26)を受けた。 ⑵ 被告は,平成29年5月16日,本件特許について特許無効審判を請求(無効2017-800069号事件)した(甲4)。 特許庁は,平成31年1月17日,「特許第5033756号の請求項1-7に係る発明についての特許を無効とする。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月25日,原告に送達された。 この間に原告は,プロント・ワールドワイド・リミテッドから本件特許に係る特許権の持分の譲渡を受け,その旨の移転登録(受付日平成29年7月24日)を受けた(甲26)。 ⑶ 原告は,平成31年4月11日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし7の記載は,以下のとおりである(以下,請求項の番号に応じて,「本件発明1」などという。甲3)。 【請求項1】 ハンドヘルド装置であって,操作者へ出力を提示する可視的ラスター・ディスプレイを含む少なくとも一つの出力デバイスと,操作者から入力を受けるスイッチ配列を含む少なくとも一つの入力デバイスと,無線トランスミッタと,前記少なくとも1つの出力デバイス,前記少なくとも1つの入力デバイス及び前記無線トランスミッタの動作を制御する処理回路と,前記処理回路で実行可能なプログラムとを備え,そのプログラムは,前記ハンドヘルド装置を操作者が操作する際に,操作者を支援するように,その操作に関する情報を前記可視的ラスター・ディスプレイを通じて表示させ,前記出力デバイスを通じて操作者へ,(a)前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバー又は(b)取り外し可能な に,その操作に関する情報を前記可視的ラスター・ディスプレイを通じて表示させ,前記出力デバイスを通じて操作者へ,(a)前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバー又は(b)取り外し可能なメモリ・デバイスから与えられる第1のコンテンツの表現を提示させ,操作者により決定された関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツと,少なくとも単独の受信者の識別子とを前記入力デバイスを通じて操作者から受け取らせ,前記無線トランスミッタを通じて,前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバーに対して第2のコンテンツの表現と少なくとも単独の受信者の識別子とを送ると共に,この遠隔サーバーが,前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現を前記少なくとも単独の受信者が受信するように,前記更なる表現を送信させるように構成されているハンドヘルド装置。 【請求項2】請求項1記載のハンドヘルド装置において,第1のコンテンツが可視的コン テンツを含み,且つ第2のコンテンツがオーディオ・コンテンツを含むハンドヘルド装置。 【請求項3】請求項1記載のハンドヘルド装置において,前記ハンドヘルド装置がセルラーフォンであるハンドヘルド装置。 【請求項4】請求項2記載のハンドヘルド装置において,第2のコンテンツは前記スイッチ配列の起動に対応するハンドヘルド装置。 【請求項5】請求項4記載のハンドヘルド装置において,第2のコンテンツは前記少なくとも一つの入力デバイスは複数の操作ボタンを含むハンドヘルド装置。 【請求項6】請求項5記載のハンドヘルド装置において,前記プログラムは更に,操作者が受信者へメッセージを送信可能にさせるように構成されているハ デバイスは複数の操作ボタンを含むハンドヘルド装置。 【請求項6】請求項5記載のハンドヘルド装置において,前記プログラムは更に,操作者が受信者へメッセージを送信可能にさせるように構成されているハンドヘルド装置。 【請求項7】請求項6記載のハンドヘルド装置において,第2のコンテンツは,操作者による前記スイッチ配列の起動の表示を含むハンドヘルド装置。 3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。 その要旨は,本件発明1ないし7は,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である甲1(国際公開第00/72303号公報。2000年(平成12年)11月30日公開)に記載された発明(以下「引用発明1」という。)及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであ り,その特許は,同法123条1項2号に該当し,無効とすべきものであるため,請求人(被告)の主張する無効理由4は理由があるというものである。 (2) 本件審決が認定した引用発明1,本件発明1と引用発明1の一致点及び相違点は,以下のとおりである。 ア引用発明1「HumBandTM 楽器であって,ハムホーンのネットワーク拡張がHumBandTM であって,演奏者へ出力を提示する小型ディスプレイと,1つまたは複数のスピーカと,演奏者から入力を受ける押しボタン1b や選択スイッチ1a の指操作式制御部と,マイクロフォンと,インターネットに直接接続されるインターフェースと,SAM,MP,SGおよびボリューム制御を含む電子回路と,前記電子回路で実行可能なソフトウェアとを備え,そのソフトウェアは,ハムホーンを演奏者が操作する際に,演 接続されるインターフェースと,SAM,MP,SGおよびボリューム制御を含む電子回路と,前記電子回路で実行可能なソフトウェアとを備え,そのソフトウェアは,ハムホーンを演奏者が操作する際に,演奏者を支援するように,その操作に関する情報を小型ディスプレイを通して表示させ,前記スピーカを通じて演奏者へ,サーバから与えられる伴奏を提示させ,前記伴奏に同期する演奏者の信号を前記マイクロフォンを通じて演奏者から受け取り,前記インターフェースを通じて,前記HumBandTM楽器から前記サーバに対して前記演奏者の信号を送ると共に,このサーバが,パフォーマンスを聴衆が受信するように,前記パフォーマンスを同報通信させるように構成されているHumBandTM 楽器。」イ本件発明1と引用発明1の一致点及び相違点 (一致点)「ハンドヘルド装置であって,操作者へ出力を提示するディスプレイを含む出力デバイスと,操作者から入力を受けるスイッチ配列を含む入力デバイスと,トランスミッタと,前記出力デバイス,前記入力デバイス及び前記トランスミッタの動作を制御する処理回路と,前記処理回路で実行可能なプログラムとを備え,そのプログラムは,前記ハンドヘルド装置を操作者が操作する際に,操作者を支援するように,その操作に関する情報を前記ディスプレイを通じて表示させ,前記出力デバイスを通じて操作者は,(a)前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバーから与えられる第1のコンテンツの表現を提示させ操作者により決定された関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツを前記入力デバイスを通じて操作者から受け取らせ,前記トランスミッタを通じて,前記ハンドヘルド装置から空間的に離間 り決定された関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツを前記入力デバイスを通じて操作者から受け取らせ,前記トランスミッタを通じて,前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバーに対して第2のコンテンツの表現を送ると共に,この遠隔サーバーが,前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現を前記少なくとも単独の受信者が受信するように,前記更なる表現を送信させるように構成されているハンドヘルド装置。」である点。 (相違点1-1)一致点の「操作者へ出力を提示するディスプレイを含む出力デバイス」の「ディスプレイ」に関し,本件発明1は,「可視的ラスター・ディスプ レイ」であるのに対し,引用発明1は「小型ディスプレイ」である点。 (相違点1-2)一致点の「トランスミッタ」に関し,本件発明1は,「無線トランスミッタ」であるのに対し,引用発明1は無線である記載がない点。 (相違点1-3)一致点の「前記トランスミッタを通じて,前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバーに対して第2のコンテンツの表現を送る」に関し,本件発明1は,「第2のコンテンツの表現」に加えて「少なくとも単独の受信者の識別子」とを送るのに対し,引用発明1は,そのような特定がない点。 これに伴い,一致点の「操作者により決定された関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツを前記入力デバイスを通じて操作者から受け取らせ」に関し,本件発明1は,「第2のコンテンツ」に加えて「少なくとも単独の受信者の識別子を入力デバイスを通じて操作者から受け取らせ」るのに対し,引用発明1は,「少なくとも単独の受信者の識別子を前記入力デバイスを通じて操作者 「第2のコンテンツ」に加えて「少なくとも単独の受信者の識別子を入力デバイスを通じて操作者から受け取らせ」るのに対し,引用発明1は,「少なくとも単独の受信者の識別子を前記入力デバイスを通じて操作者から受け取らせ」ることについて,記載されていない点。 第3 当事者の主張 1 取消事由1(請求人適格の判断の誤り)について⑴ 原告の主張原告は,本件特許について,グーグル合同会社を被告として特許権侵害訴訟を提起したものであるから(東京地方裁判所平成28年(ワ)第39789号。以下「別件特許権侵害訴訟」という。),グーグル合同会社は本件審判と利害関係を有する。それに加え,本件審決は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●被告は本件審判の利害関係人に 当たる旨判断した。 しかしながら,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。また,特許法123条2項の「利害関係人」は,「特許権などの存在によって,法律上の利益や,その権利に対する法律的地位に直接の影響を受けるか,又は受ける可能性のある者」をいうところ,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●請求人適格を認める必要性,合理性はない。 当該利害関係人が請求人となればよいだけのことである。 したがって,被告は特許法123条2項の「利害関係人」ではなく,本件審判の請求人適格を有しない。 よって,被告に請求人適格を認めた本件審決の判断は誤りである。 ⑵ 被告の主張グーグル合同会社が特許法123条2項の「利害関係人」に該当することは原告も認めているところ,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ⑵ 被告の主張グーグル合同会社が特許法123条2項の「利害関係人」に該当することは原告も認めているところ,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●被告が「利害関係人」に該当することは明らかである。 また,原告は,別件特許権侵害訴訟において,被告が「ハングアウト」を共同開発したと主張し,「ハングアウト」をインストールした製品につき,「ハングアウト」の動作等に基づき本件発明の構成要件の充足を主張していた。 したがって,被告は,原告から直接上記主張を受けるおそれがあるから,本件特許の有効無効に直接の利害関係を有する者であって,上記「利害関係人」に該当する。 よって,被告に請求人適格を認めた本件審決の判断に誤りはない。 2 取消事由2-1(甲1を主引用例とする本件発明1の進歩性の判断の誤り) について⑴ 原告の主張ア引用発明1の認定の誤り(ア) 本件審決は,前記第2の3⑵アのとおり,甲1に記載された発明として,引用発明1を認定した。 しかしながら,本件審決における引用発明1の認定には,以下のような誤りがある。 a 「ハムホーンのネットワーク拡張」及び「インターフェース」本件審決は,引用発明1は「ハムホーンのネットワーク拡張がHumBand™であって」,「インターフェース」が「インターネットに直接接続される」ものである旨認定した。 しかしながら,甲1には,「このサービスを使用するために,人は,HumJam.com ウェブ・サイトに,名前とパスワードを用いてログインした後,オンライン・グループのメンバになる」及び「このような対話式演奏は,オンラインのみの妨 ービスを使用するために,人は,HumJam.com ウェブ・サイトに,名前とパスワードを用いてログインした後,オンライン・グループのメンバになる」及び「このような対話式演奏は,オンラインのみの妨げのない真の国際コミュニケーションの例の1つ」と記載されていることから(56頁,58頁),甲1のHumBand 楽器は,インターネットのHumJam.com ウェブ・サイトに接続するためのオンライン接続,すなわち有線接続するためのコンピュータを必須とするものである。 以上によれば,ハムホーンないしHumBand 楽器は,それ単独ではネットワーク(インターネット)に接続することはできず,インターネット接続用のコンピュータが必要であるから,「ハムホーンのネットワーク拡張」は「HumBand™」ではなく,「インターフェース」が「インターネットに直接接続される」ものでもない。 b 「小型ディスプレイ」 本件審決は,引用発明1は,「ハムホーンを演奏者が操作する際に,演奏者を支援するように,その操作に関する情報を小型ディスプレイを通して表示させ」るものである旨認定した。 しかしながら,甲1記載の発明において,「小型ディスプレイ」は「オプションとして」用いられるものであって(甲1(50頁)),ハムホーンを操作する時に本来なくてもよいものであるから,かかる「小型ディスプレイ」が「演奏者の操作を支援」することはあり得ない。 c 「伴奏」本件審決は,引用発明1は「伴奏」が「サーバから与えられる」ものである旨認定した。 しかしながら,甲1 記載の発明において,「伴奏の情報」は,HumBandコーデックを介して,HumJam.com ウェブサイトのデータベースから送信されるものであり,「伴奏の情報」と「演奏者の演奏情報」を組み ,甲1 記載の発明において,「伴奏の情報」は,HumBandコーデックを介して,HumJam.com ウェブサイトのデータベースから送信されるものであり,「伴奏の情報」と「演奏者の演奏情報」を組み合わせているのは,「サーバ」に結合されたMIDI シーケンサである。 したがって,「伴奏」は「サーバから与えられる」ものではない。 d 「パフォーマンス」本件審決は,甲1の「performance」を「パフォーマンス」と翻訳して引用発明1を認定し,「演奏」と「伴奏」とを合体させた「新たな表現」として意味を持たせるために,「パフォーマンス」の語を用いている。 しかしながら,「performance」は,甲1に対応する公表特許公報である甲2(特表2003-500700号公報)に記載のとおり,「演奏」と翻訳するべきである。甲1において,「performance」は,「performer」(演奏者)が奏でる「演奏」の意味で用いられており,それとは別の主体から流れてくる「accompaniment」(伴奏)との組合 せという意味では用いられていない。 (イ) 前記(ア)のとおり,本件審決における引用発明1の認定には多数の誤りがあり,引用発明1は,甲1に記載された本来の発明とは全く異なるものとなっている。甲1の記載によれば,甲1に記載された発明は,以下のとおり認定するべきである(以下「甲1発明」という。)。 「携帯式の電子音声制御楽器であり,演奏者が入力する音声ないし演奏を,演奏者からの演奏の音をHumBand コーデックというMIDI そのものまたはMIDI 類似の演奏情報信号に変換,HumBand コーデックというMIDI そのものまたはMIDI 類似の演奏情報信号に変換する装置(音声ピッチ変換モジュール)を用い うMIDI そのものまたはMIDI 類似の演奏情報信号に変換,HumBand コーデックというMIDI そのものまたはMIDI 類似の演奏情報信号に変換する装置(音声ピッチ変換モジュール)を用いて複数の楽器の音(オーディオ・コンテンツ)で再現するものであって,それをインターネット上のHumJam.com にオンライン接続して演奏する際には,インターネット接続用のコンピュータにオンラインで接続し,ひとりの演奏者がHumJam.com の伴奏データベースからHumJam.com ウェブサイトのサーバから送信された伴奏に合わせて演奏すると,当該演奏がHumBand コーデックに変換されて,HumJam.com ウェブサイトのサーバに送信され,HumJam.com ウェブサイトのサーバに付属するMIDI シーケンサにおいて伴奏情報信号と演奏情報信号が組み合わされ,当該MIDI シーケンサからサーバに送られた伴奏情報信号と演奏情報信号との組み合わせを,HumJam.com ウェブサイトのサーバがインターネット接続用のコンピュータにオンライン接続された聴衆のHumBand 楽器に送信し,当該聴衆のHumBand 楽器の中にある音声ピッチ変換モジュールがHumBand コーデックで記された伴奏情報信号と演奏情報信号の組み合わせをオーディオ・コンテンツに変換して演奏を再生し, 当該聴衆が,タレントオーディションの審査員のように,演奏者の演奏が終了した時点で,HumJam.com ウェブサイトのHumBand 楽器を通じて演奏の評価を投票したり,コメントを送付したりするもの。」イ本件発明1と引用発明1との対比の誤り本件審決は,前記第2の3⑵イのとおり,本件発明1と引用発明1とを対比し,一致点及び相違点を認 価を投票したり,コメントを送付したりするもの。」イ本件発明1と引用発明1との対比の誤り本件審決は,前記第2の3⑵イのとおり,本件発明1と引用発明1とを対比し,一致点及び相違点を認定した。 しかしながら,上記の対比には,以下のように誤りがある。前記(ア)のとおり,甲1に記載された発明は甲1発明と認定すべきであるところ,甲1発明は,本件発明1と全く異なる技術であって,両者の間に一致点はない。 (ア) 「トランスミッタ」本件審決は,引用発明1の「インターネットに直接接続されるインターフェース」は「トランスミッタ」を含むものであるから,本件発明1と引用発明1とは,「トランスミッタ」を有する点で一致する旨認定した。 しかしながら,前記ア(ア)aのとおり,HumBand 楽器は,単体ではインターネットに接続できないものであるから,「トランスミッタ」(送信機)を有するものではない。 (イ) 「遠隔サーバー」本件審決は,引用発明1の「サーバ」は本件発明1の「遠隔サーバー」に相当する旨認定した。 しかしながら,本件発明1は,いわゆるクライアント・サーバー方式によるインターネット接続の発明であるのに対し,甲1に記載された発明は,いわゆるピア・ツー・ピア方式によるインターネット接続の発明であるから,後者の発明における「サーバ」は本件発明1における「遠 隔サーバー」に相当するものではない。 (ウ) 「コンテンツ」本件審決は,引用発明1の「前記伴奏に同期する演奏者の信号を前記マイクロフォンを通じて演奏者から受け取」らせることは,本件発明1の「操作者により決定された関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテ 1の「前記伴奏に同期する演奏者の信号を前記マイクロフォンを通じて演奏者から受け取」らせることは,本件発明1の「操作者により決定された関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツ…を前記入力デバイスを通じて操作者から受け取らせ」ることに相当する旨認定した。 しかしながら,甲1に記載された発明は,伴奏がHumBand コーデックを介して送信される情報であることが前提となっており,HumBand コーデック及びMIDI は音のみを取り扱う「演奏情報」の規格ないしプログラムであって,音そのものの情報ではないのに対し,本件発明1の「コンテンツ」は,音や映像などのメッセージそのものであり,音に限られないから,両者を一致点とすることはできない。 ウ相違点の容易想到性の判断の誤り(ア) 相違点1-1本件審決は,可視的ラスター・ディスプレイとして知られるLCDディスプレイは,周知のディスプレイであるから,引用発明1の「小型ディスプレイ」として可視的ラスター・ディスプレイを用いることは,当業者が容易に想到し得ることである旨判断した。 しかしながら,本件発明1の「ディスプレイ」である可視的ラスター・ディスプレイは,動画などの映像を表示できることを前提とするものであるのに対し,引用発明1の「小型ディスプレイ」は「パラメータを選択」するためだけのものであって,動画などの映像を表示することを予定するものではない。 したがって,引用発明1の「小型ディスプレイ」を本件発明1の「可 視的ラスター・ディスプレイ」に置換することはできない。 (イ) 相違点1-2本件審決は,電子楽器とサーバを無線を用いて接続することは周知技術であるから(以下「周知技術1」という。甲25),これを引 イ」に置換することはできない。 (イ) 相違点1-2本件審決は,電子楽器とサーバを無線を用いて接続することは周知技術であるから(以下「周知技術1」という。甲25),これを引用発明1に適用して,HumBand™楽器とサーバを無線で接続することは,当業者が容易に想到し得ることであって,その場合に「トランスミッタ」として「無線トランスミッタ」を用いることは,当然の設計変更に過ぎない旨判断した。 しかしながら,甲25は,「電子楽器および移動無線端末装置」の発明であって,電子楽器に接続された「移動無線端末装置」がインターネットなどの公衆通信網に接続するものである。 そうすると,甲25から導かれる設計変更によって無線になる可能性があるのは,引用発明1のHumBand 楽器そのものではなく,HumBand 楽器に接続され,インターネットにオンライン接続するためのコンピュータである。 したがって,引用発明1に周知技術1を適用して,HumBand™楽器とサーバとを無線で接続することは,当業者が容易に想到できたものではない。 (ウ) 相違点1-3a 本件審決は,以下のように理由を挙げて,引用発明1の「演奏者の信号を送る」に当たって,HumBandTM 楽器に入力された「ランク」,すなわち「少なくとも単独の受信者の識別子」を「サーバ」に送ることは,当業者が容易に想到し得るものである旨判断した。 ① 甲1には,演奏者は,HumJam.com ウェブ・サイトに,名前とパスワードを用いて「ログインした後」に,オンライン・グループのメ ンバーになることが記載されている。 ② ここで,甲1には,「ランク1」は誰でも演奏することができ,「ランク2」の演奏者は,「ランク2」の演奏グループに に,オンライン・グループのメ ンバーになることが記載されている。 ② ここで,甲1には,「ランク1」は誰でも演奏することができ,「ランク2」の演奏者は,「ランク2」の演奏グループに参加できることが記載されているから,「ランク」は「演奏グループ」を識別する情報の要素であるといえる。 ③ そして,「ランク2」の演奏者が「ランク1」あるいは「ランク2」を選択して演奏グループに参加すること,すなわち,演奏者が「ランク2」のグループか「ランク1」のグループかを選択するためにHumBandTM 楽器に「ランク」を入力すること,すなわち「ランク」を受け取らせることは,当然である。 ④ さらに,「グループ」は「演奏者」と「視聴者」で構成されており,「サーバ」は「パフォーマンス」を「視聴者」に「同報通信」している。 ⑤ そうすると,引用発明1の「サーバ」は,「パフォーマンス」を「演奏者と視聴者で構成されるグループ」の「視聴者」に同報通信しているから,サーバが,「同報通信」している「演奏グループ」を識別する情報を認識していることは明らかである。 ⑥ 以上によれば,HumBandTM 楽器に「演奏グループ」を識別する情報の要素である「ランク」が入力され,サーバは「演奏グループ」を識別する情報を認識しているのだから,「演奏グループ」を識別する情報の要素である「ランク」をサーバに送ることは,容易に想到し得ることである。 ⑦ ここで,「同報通信」は「少なくとも単独の受信者に対する通信」に含まれるから,演奏グループを識別する情報の要素である「ランク」を「少なくとも単独の受信者の識別子」と呼ぶことは任意であ る。 b しかしながら,引用発明1において,演奏者は,自分が選択して任意のグループに参加するのではなく,あ ク」を「少なくとも単独の受信者の識別子」と呼ぶことは任意であ る。 b しかしながら,引用発明1において,演奏者は,自分が選択して任意のグループに参加するのではなく,ある「ランク」を持つ演奏者が,コンテストに参加し,コンテスト会場の聴衆から演奏についての評価,格付けないし投票を受けるのであって,演奏者が「ランク」を選ぶことはできない。演奏者は,HumJam.com ウェブサイトにログインしてグループに参加するのであるが,ログインに際して,当該演奏者のランクが既に上記ウェブサイトのサーバにより設定されているのだから ,演奏者が,自分のランクと無関係に他のランクのグループに参加することはあり得ない。 また,ランクという意味での「演奏グループ」をサーバが認識しているのは,聴衆が評価ないし投票した結果を集計したからであって,その「ランク」と,1人の演奏者と聴衆の識別子情報をサーバが把握しているということは,別次元の問題である。サーバが聴衆の識別子情報を把握した上で同報送信するということと,「ランク」とをパラレルに考えることはできない。 そもそも,本件発明1は,参加者がリアルタイムに相互にコンテンツをやりとりするために,参加者の識別子を必要とするものであり,しかもリアルタイム性が要求されるために,受信者の識別子情報をハンドヘルド装置がサーバーに送る必要がある。 これに対し,引用発明1のランクは,あくまで,演奏者の演奏が終わった後に,評価ないし格付けされるものであって,リアルタイム性を必要とするものではない。そのため,演奏者は,HumBand 楽器を用いてHumJam.com ウェブサイトにログインするときに,サーバーに対して,聴衆の識別子情報を送る必要がないのであって,演奏者が演奏し ている ,演奏者は,HumBand 楽器を用いてHumJam.com ウェブサイトにログインするときに,サーバーに対して,聴衆の識別子情報を送る必要がないのであって,演奏者が演奏し ている途中で,聴衆のHumJam.com ウェブサイトにおけるログイン状況(聴衆の数の変動)が変化することも,当然に予定されているものである。 (エ) 小括以上によれば,本件審決における相違点1-1,1-2及び1-3の容易想到性の判断は,いずれも誤りである。 ⑵ 被告の主張ア引用発明1の認定について(ア) 本件審決は,甲1の記載内容に基づき引用発明1を認定したものであり,以下のとおり,同認定に関し,原告の主張するような誤りはない。 a 「ハムホーンのネットワーク拡張」及び「インターフェース」甲1には,「HumBandTM 楽器は,インターネットにインターフェースを介して直接接続され」(57頁)と記載されているから,引用発明1の「インターフェース」は,「インターネット」に「直接接続」するものである。 b 「小型ディスプレイ」仮に,原告の主張するとおり「小型ディスプレイ」がオプションであるとしても,そのオプションによって,「演奏者の支援」をするように,「操作に関する情報」を表示することは可能である。 c 「伴奏」甲1には,「サーバは,伴奏情報をHumBand コーデックを介して演奏者に送信する。」(59頁)と記載されているから,「伴奏」は「サーバから与えられる」ものである。 d 「パフォーマンス」「performance」は「パフォーマンス」との意味を有する。また,甲 1には,サーバが同報送信するものは「演奏者情報」と「伴奏情報」 れる」ものである。 d 「パフォーマンス」「performance」は「パフォーマンス」との意味を有する。また,甲 1には,サーバが同報送信するものは「演奏者情報」と「伴奏情報」とを組み合わせた結果であることが記載されているから(59頁4行~12行),「performance」には,演奏者の奏した演奏と,伴奏が含まれていることを理解できる。 (イ) 以上のとおり,本件審決における引用発明1の認定に誤りはない。 イ本件発明1と引用発明1との対比について以下のとおり,本件審決における本件発明1と引用発明1との対比に関し,原告の主張するような誤りはない。 (ア) 「トランスミッタ」前記ア(ア)aのとおり,引用発明1の「インターフェース」は,インターネットに向けて信号等を送信するものであるから,これが「トランスミッタ」(送信機)を備えたものであることは明らかである。 (イ) 「遠隔サーバー」甲1には,「サーバ」が開示されており,当該「サーバ」は,HumBandTM楽器とインターネットを介して接続されるものであって,空間的に離間したものであるから,「遠隔サーバー」に該当することが明らかである。 (ウ) 「コンテンツ」本件発明1は,「コンテンツ」が従うべき規格やプロトコルについて限定するものではない。 したがって,ハンドヘルド装置内部において,HumBand コーデックにより符号化されたり,MIDI 規格あるいはこれに類する規格に準拠して取り扱われたりする「伴奏」も,「コンテンツ」に該当することが明らかである。 ウ相違点の容易想到性の判断について(ア) 相違点1-1 液晶ディスプレイ(LCD)は「可視的ラスター・ 伴奏」も,「コンテンツ」に該当することが明らかである。 ウ相違点の容易想到性の判断について(ア) 相違点1-1 液晶ディスプレイ(LCD)は「可視的ラスター・ディスプレイ」に含まれるところ(甲3),かかるLCDを,操作に関する情報を表示するために携帯装置に採用することは,周知技術であった(甲22~24)そして,甲1では,操作に関する情報を表示するために「小型ディスプレイ」を採用しているのだから,上記周知技術を適用して,この「小型ディスプレイ」を「可視的ラスター・ディスプレイ」にすることは容易である。 (イ) 相違点1-2本件審決は,甲25の記載から,「移動無線端末装置」の構成を引用発明1に適用する旨判断したのではない。 本件審決は,甲25の記載から,電子楽器とサーバとを無線を用いて接続することが周知技術であると認定した上,同技術を適用するに当たり,「トランスミッタ」の一種である「無線トランスミッタ」を採用することは設計変更に過ぎないことを示したものであり,かかる判断に誤りはない。 (ウ) 相違点1-3甲1には,演奏者が,ランク1の演奏グループ及び高いレベルの演奏グループのいずれにも参加可能であることが開示されている(57頁18行~26行)。 したがって,甲1には,ランクが高い演奏者が,参加する演奏グループを特定するために,どの演奏グループに参加するかの情報をHumSeverに対して送信した後に,演奏を開始することが,実質的に開示されている。 そして,かかる情報は演奏グループを特定するものであり,演奏グループには少なくとも1人の聴衆が含まれるから,同情報は本件発明1の 「少なくとも単独の受信者の識別子」に相当する。 このように,相違点1-3は, グループを特定するものであり,演奏グループには少なくとも1人の聴衆が含まれるから,同情報は本件発明1の 「少なくとも単独の受信者の識別子」に相当する。 このように,相違点1-3は,甲1に開示されているものであり,少なくとも,実質的な相違点であるとはいえない。 (エ) 小括以上によれば,本件審決における相違点1-1,1-2及び1-3の容易想到性の判断に誤りはない。 3 取消事由2-2(甲1を主引用例とする本件発明2ないし7の進歩性の判断の誤り)について⑴ 原告の主張本件審決は,本件発明1は引用発明1に基づき容易に発明をすることができたものであり,本件発明2ないし7も同様に引用発明1に基づき容易に発明をすることができたものである旨判断した。 しかしながら,前記2⑴のとおり,本件発明1は引用発明1に基づき容易に発明をすることができたものではなく,本件発明1に従属する本件発明2ないし7も,これと同様に,引用発明1に基づき容易に発明をすることができたものではない。 したがって,甲1を主引用例とする本件発明2ないし7の進歩性に関する本件審決の判断は,誤りである。 ⑵ 被告の主張原告の主張を争う。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(請求人適格の判断の誤り)について平成26年法律第36号による特許法の改正により,特許無効審判は「利害関係人」のみが請求できるものとされ(123条2項),代わりに,「何人も」申立てをすることができる(113条柱書)特許異議の申立制度が導入された ことにより,現在においては,特許無効審判を請求できるのは,特許を無効にすることについて私的な利害関係を有するもののみに限定されたものと解さざるを得ない。 しか 立制度が導入された ことにより,現在においては,特許無効審判を請求できるのは,特許を無効にすることについて私的な利害関係を有するもののみに限定されたものと解さざるを得ない。 しかしながら,特許権侵害を理由に民事責任や刑事責任を追及されるおそれのある関係にある者は,当該特許を無効にすることについて私的な利害関係を有し,特許無効審判請求を行う利益を有することは明らかである。 これを本件についてみると,前記第2の1⑴のとおり,本件特許は,平成14年5月13日を国際出願日とする特許出願の一部を分割して特許出願され,平成24年7月6日に特許権の設定登録を受け,現在も存続しているものである(甲26)。そして,被告は,インターネット上のサービスの提供を行う会社であって,原告と一定の競業関係にあるといえるから,過去又は将来の行為を理由に,本件特許権侵害に係る民事上又は刑事上の責任を追及されるおそれのある関係にある者に当たるということができる。更に言えば,被告は,原告が提起した本件特許権の侵害を理由とする不当利得返還請求訴訟(別件特許権侵害訴訟)において,グーグル合同会社と共同して被疑侵害品を開発した旨主張されている(乙1)のであるから,原告から本件特許権の侵害を問題にされるおそれがあることは明らかである。 以上によれば,本件審判の請求人(被告)は,本件特許権を無効にすることについて利害関係を有するものと認められる。 したがって,被告に本件審判の請求人適格を認めた本件審決の判断に誤りはなく,取消事由1は理由がない。 2 取消事由2-1(甲1を主引用例とする本件発明1の進歩性の判断の誤り)について⑴ 本件明細書の記載等ア本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載は,前記第2の2のと おりである。 甲1を主引用例とする本件発明1の進歩性の判断の誤り)について⑴ 本件明細書の記載等ア本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載は,前記第2の2のと おりである。 本件出願の願書に添付した明細書(以下,図面を含めて「本件明細書」という。甲3)の発明の詳細な説明には,次のような記載がある(下記記載中に引用する「図1及び3」については別紙1を参照)。 (ア) 【0001】発明の分野本発明はコンピュータ及びネットワークを用いるメッセージの形成及び分布に関し,更に詳しくは,モバイルテレホンなどの手持型装置を使用する操作者により形成された聴覚的又は視覚的コンテンツを有するメッセージを操作者が分配することを可能にする方法及びシステムに関する。 【0002】発明の背景セルラーフォン(cellulartelephone),所謂パーソナル・ディジタル・アシスタント(PDA)及びハンドヘルド・コンピュータなどのモバイル装置の使用は,ほんの数年前の最も楽観的な予想さえも大きく越える割合で拡大している。セルラーフォンは,安価であり,個人が気軽に持ち運んでも友人らや娯楽ソースに接触することができるので広く容認されている。例えば音楽または動画を再生及び記録するような他のモバイル装置も娯楽を提供し,また個人に楽しみを与えるので,広く容認されてきている。 【0004】専門的なソースにより記録又は分配される音楽及び動画はポップカルチャーの重要な部分である。しかしながら,個人が自分自身の聴覚的又は視覚的コンテンツを形成し,それを友人らと共有する趣味が広がって いる。残念ながら,音楽及び動画のような聴覚的及び視覚的コンテンツの形成及び分配には,小型でない即ちセルラーフォンのよ は視覚的コンテンツを形成し,それを友人らと共有する趣味が広がって いる。残念ながら,音楽及び動画のような聴覚的及び視覚的コンテンツの形成及び分配には,小型でない即ちセルラーフォンのようには容易に持ち運べない装置の使用が要求される。セルラーフォンのようなモバイル装置を用いて聴覚と視覚のうちの少なくとも一方又は双方を形成及び分配させる能力が要請される。 (イ) 【0005】本発明の開示本発明の目的はモバイル装置を用いる音楽又は動画のようなコンテンツの形成及び分配を与えることである。 【0006】本発明の1つの観点によれば,操作者が指示及び第1のコンテンツの表現の提示を受けるハンドヘルド装置を使用し,このハンドヘルド装置を介して少なくとも1つの受信者の識別と,操作者により制御された時間的関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツとを与え,遠隔サーバーに対して第2のコンテンツの表現と受信者の識別とを与え,遠隔サーバーに少なくとも1つの受信者へ時間的関係に従って配置された第1のコンテンツと第2のコンテンツとを表すメッセージを送らせる。 【0007】本発明の他の観点によれば,システムは,ハンドヘルド装置を含み,この装置は無線機と処理回路とを有し,その処理回路は,ハンドへルド装置に操作者へ指示を表す出力と,第1のコンテンツの表現とを与えさせ,少なくとも1つの受信者の識別を表す入力と,操作者により制御された時間的関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツとを操作者から受け取って,無線機を通じて第2のコンテ ンツの表現と少なくとも1つの受信者の識別とを送り,第2のコンテンツの表現及び少なくとも1つの受信者の識別とを受信して のコンテンツとを操作者から受け取って,無線機を通じて第2のコンテ ンツの表現と少なくとも1つの受信者の識別とを送り,第2のコンテンツの表現及び少なくとも1つの受信者の識別とを受信して保存するサーバー・サブシステムを含み,少なくとも1つの受信者へ,時間的関係に従って配置された第1のコンテンツと第2のコンテンツとを表すメッセージとを送る。 【0008】本発明の他の観点によれば,ハンドヘルド装置の操作者の制御の下に生成されたハンドへルド装置のからの少なくとも1つの信号を受信するサーバー・システムを備え,そのハンドヘルド装置は,第1のコンテンツの識別子と,操作者により制御された時間的関係に従って第1のコンテンツのハンドヘルド装置による提示に時間的に重なる第2のコンテンツと,少なくとも1つの受信者の識別とを搬送し,サーバー・システムは,時間的関係を識別する情報を得て,少なくとも1つの受信者へ第1のコンテンツと,時間的関係に従って配置された第2のコンテンツとを表すメッセージを受信する。 (ウ) 【0010】本発明の実施形態A.概観図1は,モバイル装置10の操作者がサーバー30と対話して,聴覚的コンテンツと視覚的コンテンツとの少なくとも一方又はその両方についてのオリジナルのコンテンツと予め存在するコンテンツとの組み合わせを有するメッセージを生成し,これらのメッセージの受信者42,52,62のような少なくとも1つの受信者への分配を制御できるシステムの模式図である。 【0012】 1.アプリケーション本発明の2つのアプリケーションは本明細書においてはSongMail及びMusicDIY(doityourself)と称する。SongMail及びMusicDIYは .アプリケーション本発明の2つのアプリケーションは本明細書においてはSongMail及びMusicDIY(doityourself)と称する。SongMail及びMusicDIYは,装置10の操作者に,予め存在するコンテンツ(例えばバックグラウンド・ミュージックや,操作者により与えられた付加的なコンテンツなど)を含むメッセージの形成を可能とし,次いでこのメッセージを受信者が聞くことが可能な形態で少なくとも1つの受信者へ送信することを可能とさせる。SongMailアプリケーションにおいては,操作者は音声発話などの聴覚的コンテンツを与える。 MusicDIYアプリケーションにおいては,操作者は,装置10の少なくとも1つの入力デバイスを起動することにより音楽機器を再生するのと同様な方式で聴覚的コンテンツを与える。 (エ) 【0029】B.アプリケーションSongMail及びMusicDIYアプリケーションについての実施の詳細の殆どは,装置10の特性と,装置10,サーバー30及び受信先をリンクする交信技術とに部分的に依存している。本項目における説明は各アプリケーションの概念的な全体像を与えるものであり,実際的な実施に必要であろう詳細な考察については省略してある。付加的な考察は,様々な実施技術の説明に関して以下に説明する。 【0030】1.SongMail操作者は,聴覚入力及び出力トランスデューサを有する電話機又は他の装置を用いてSongMailメッセージを形成し得る。…【0031】 a)設定SongMail処理の1つの概念的実施における各ステップを図3に示す。この処理のステップ101において,操作者は,如何なる方式にせよ特定の実施のために適宜な方式でSongMailア 設定SongMail処理の1つの概念的実施における各ステップを図3に示す。この処理のステップ101において,操作者は,如何なる方式にせよ特定の実施のために適宜な方式でSongMailアプリケーションを開始する。…【0032】b)形成ステップ114において,操作者はそのメッセージについての「バックグラウンド・ミュージック(背景音楽)」を選択する。好適な実施形態においては,操作者は,タイトル,アーティスト,音楽のタイプ,または,この音楽により搬送されるメッセージ又は雰囲気によりバックグラウンド・ミュージックを選択することができる。また,このシステムは,記憶デバイス33に記憶された操作者の嗜好に従ってフィルタリングされて配置されたコンテンツ・データベースにおける幾つかのみを操作者へ示すようにしてもよい。 【0033】用語「バックグラウンド・ミュージック」は,操作者により与えられた「操作者コンテンツ」に対してシステムにより与えられた予め存在するコンテンツを指すものとして用いる。この予め存在するコンテンツはバックグラウンド・ミュージックとする必要はないが,このような音楽は人気のある選択となるであろう。1つの実施においては,サーバー30は,予め存在するコンテンツを記憶デバイス33上のデータベースに記憶させ,操作者が選択したコンテンツを装置10へ送信する。他の実施においては,予め存在するコンテンツは,例えば取り外し式ソリッドステート・メモリ・デバイスにより装置10に記憶される。 【0034】ステップ115において,システムは,選択されたバックグラウンド・ミュージックの演奏を聴覚出力トランスデューサ23を通じて提示し,操作者から聴覚入力トランスデューサ22を通じて操作者コンテ ステップ115において,システムは,選択されたバックグラウンド・ミュージックの演奏を聴覚出力トランスデューサ23を通じて提示し,操作者から聴覚入力トランスデューサ22を通じて操作者コンテンツを受け取る。ステップ116は操作者がバックグラウンド・ミュージックを聞きながら,例えば歌うことを可能とする。これは操作者に,操作者コンテンツをバックグラウンド・ミュージックの提示に時間的に重畳させ,この重畳の時間的関係を制御させることを可能にする。 【0035】ステップ115及び116は,ステップ117が操作者コンテンツの形成が終了したことを判断するまで繰り返される。次にこの処理はステップ103へ続く。代替的に,方法は,操作者が少なくとも1つの受信者を特定して,その受信先へ,メッセージと共に,形成したばかりの操作者コンテンツを送信することを可能とするステップへ続けてもよい。 メッセージを送信し得る1つの方式を以下に示す。好ましくは,方法は,操作者がメッセージを送信することを可能にするステップへ直接に進むならば,一つのステップは,操作者がメッセージの送信を断つことを可能にするように与えられる。 【0036】好ましくはサーバー30は記憶デバイス30に,操作者コンテンツを含むが,操作者により選択されたバックグラウンド・ミュージックを含まないメッセージの表現を記憶する。サーバー30は,選択されたバックグラウンド・ミュージックの識別と,これら2つのコンテンツの間の時間的関係の指標とのみを記憶する。バックグラウンド・ミュージックそれ自身は,他の場合にはコンテンツ・データベースに記憶される。メ ッセージは受信先へ或いは操作者へ校閲するために送信され,バックグラウンド・ミュージックと操作者コンテンツとの表現は,これら操 は,他の場合にはコンテンツ・データベースに記憶される。メ ッセージは受信先へ或いは操作者へ校閲するために送信され,バックグラウンド・ミュージックと操作者コンテンツとの表現は,これら操作者コンテンツが与えられたときに操作者により観察された2つのコンテンツの間の時間的関係を実質的に保存する方式で組み合わせられる。 【0041】c)聞くステップ124において,操作者は既に形成されたメッセージを校閲のために選択する。ステップ125においては,装置10は,操作者コンテンツと,そのメッセージについて選択されたバックグラウンド・ミュージックとの表現を提示する。その提示は,操作者コンテンツが初めに与えられたときに操作者により観察された時間的関係を実質的に保存する方式で,操作者コンテンツの表現と選択されたバックグラウンド・ミュージックの表現とを重ね合わせる。この提示は,ステップ126が,提示が終了したか,或いは例えばボタンを押すことにより操作者が提示の終了を要請したかを判断するまで継続する。この処理はステップ103へ続く。 【0042】d)削除ステップ134において操作者は,既に形成されたメッセージを削除するように選択する。ステップ135において,削除を確認するように要請する。削除が確認されたなら,メッセージはステップ136で削除されて,処理はステップ103に続く。削除が確認されないならば,処理はステップ103へ続く。 【0043】e)送信 ステップ144において,操作者は既に形成されたメッセージを送信するように選択される。ステップ145において,操作者は少なくとも1つの受信者を識別する。セルラーフォンを用いる好ましい実施においては,操作者は電話機上の少なくとも1つのボタ されたメッセージを送信するように選択される。ステップ145において,操作者は少なくとも1つの受信者を識別する。セルラーフォンを用いる好ましい実施においては,操作者は電話機上の少なくとも1つのボタンを押して1つの電話番号を特定するか,操作者によって既に確立されて,サーバー30により記憶デバイス33に記憶された電話番号又はeメール・アドレスのリストから1つの受信者を選択することができる。代替的な実施においては,操作者は文字数字を特定する公知技術に従って電話機上のボタンを押すことによりeメール・アドレスを特定することが可能になる。選択的なステップ146は,メッセージに含めるべき何らかの付加的なメッセージ(例えばメッセージを受信者へ紹介するテキスト又は視覚的イメージ)を操作者に選択させることを可能とする。この処理はステップ103へ続く。 【0044】ステップ147において,サーバー30は,メッセージの表現をステップ145において指定された各受信先へ,その各受信先に適宜な送達方法により送信する。メッセージの表現は様々な方法を用いて伝達し得る。「直接」方式は,メッセージのオーラル・コンテンツを,所謂音声メール(ボイス・メール)を音声メール加入者へ伝達する方式と殆ど同様な方式で受信先へ直接に伝達する。この直接法は,聴覚出力トランスデューサを有し,処理能力が殆ど又は全く無い通常の電話機又は他のデバイスへの伝達に適している。「通知」方式は,メッセージを検索するための指示を有する通知のみを伝達する。通知方式は,通常の電話機を含む基本的に任意の形式の装置への伝達に適するが,特に適するのは,例えばSMSの方式によるセルラーフォンへの伝達,eメールの方式に よるコンピュータへの伝達である。音声通知は通常の電話機又はセルラーフ 形式の装置への伝達に適するが,特に適するのは,例えばSMSの方式によるセルラーフォンへの伝達,eメールの方式に よるコンピュータへの伝達である。音声通知は通常の電話機又はセルラーフォンへ送信することができる。受信先デバイスの操作者は,通知に含まれる指示に従うことにより実際のメッセージ・コンテンツを検索できる。以下,伝達の方式について,より詳細に説明する。 【0045】伝達方式は,ステップ145において明確に指定してもよいが,場合によっては,受信先の認証から正しい方法を推論することを可能とし得る。例えば,受信先eメール・アドレスから,又はモバイル装置の電話番号から認証方式を推論することを可能とし得る。 【0046】使用された伝達方式に拘わらず,受信先がメッセージの聴覚的コンテンツを最終的に受信するとき,メッセージ・コンテンツの提示は,操作者コンテンツが最初に与えられたときに操作者により観察された時間的関係を実質的に保持する方式で,選択されたバックグラウンド・ミュージックの表現を有する操作者コンテンツの表現を含む。 イ前記アの記載事項によれば,本件明細書には,本件発明1に関し,次のような開示があることが認められる。 個人が自分自身の聴覚的又は視覚的コンテンツを形成し,これを友人らと共有する趣味が広がっているが,従来技術では,音楽及び動画のような聴覚的及び視覚的コンテンツの形成及び分配には,容易に持ち運べない装置の使用が要求されるという課題があった(【0004】)。 「本発明」は,モバイル装置を用いた音楽又は動画等のコンテンツの形成及び分配を目的としたものであり(【0005】),上記課題を解決するために,操作者が,ハンドヘルド装置を介して,遠隔サーバーに対し,少なくとも1つの受信者の識 用いた音楽又は動画等のコンテンツの形成及び分配を目的としたものであり(【0005】),上記課題を解決するために,操作者が,ハンドヘルド装置を介して,遠隔サーバーに対し,少なくとも1つの受信者の識別と,操作者により制御された時間的関係に 従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツの表現とを与え,前記遠隔サーバーにより,前記少なくとも1つの受信者に対し,前記時間的関係に従って配置された第1のコンテンツと第2のコンテンツとを表すメッセージを送らせるという構成を採用した(【0006】)。 上記構成を採用することにより,ハンドヘルド装置の操作者において,同装置を用いて,遠隔サーバーに対し,同人により制御された時間的関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツの表現を与え,前記遠隔サーバーにより,前記時間的関係に従って配置された第1のコンテンツと第2のコンテンツとを表すメッセージを形成し,このメッセージを,前記操作者が指定した少なくとも1つの受信者に対して分配することができるという効果を奏する(【0032】~【0036】,【0041】,【0043】,【0044】)。 ⑵ 甲1の開示事項甲1(国際公開第00/72303号公報)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する「図1ないし4及び図16」については別紙2を参照。また,訳文は,甲1に対応する公表特許公報である甲2(特表2003-500700号公報)による。)ア本明細書で説明する装置は,電子的音声制御式楽器である。これは,本質的に,電子的カズーである。演奏者は,マウスピース内にハミングし,そしてこの装置は,演奏者の声に応じてそのピッチとボリュームが変化する楽器のサウンドを模倣する。 (中略)最も単純な構成の場 質的に,電子的カズーである。演奏者は,マウスピース内にハミングし,そしてこの装置は,演奏者の声に応じてそのピッチとボリュームが変化する楽器のサウンドを模倣する。 (中略)最も単純な構成の場合,楽器は,ある種のホーンと似ており,便宜上,本明細書の全体を通してこれをハムホーン(HumHorn)と呼ぶ。しかしながら,製作者は,必要に応じて,楽器の形状と外観を,任意の伝統的な楽器のサ ウンドに一致させるように作ることができるし,あるいは,その形状を,全く新規にすることも出来る。ハムホーンの物理的設計の機能要件は,以下のみである。 ・携帯型であること。 ・演奏者の声が入るマウスピースを有すること。 ・サウンドが生成される1 つまたは複数のスピーカを有すること。 ・回路とバッテリが格納されかつ指操作式制御部を配置することができる本体を有すること。 (6頁1行~7頁20行(甲2【0015】【0018】))イハムホーンは,出力が人間の声によって制御される携帯型音楽シンセサイザである。図1は,ハムホーンの機能を示す。演奏者10 は,楽器12 のマウスピース14 内に歌うかまたはハミングする。これに応じて,ハムホーンは,楽器の出力13 に,ピッチとボリュームが両方とも演奏者の声のニュアンスに厳密に従う音を生成する。演奏者は,ハムホーンがどの楽器を模倣するかを選択することができ,選択した楽器を単に歌うのみで演奏するという印象が与えられる。 (19頁5行~12行(甲2【0035】))ウハムホーン自体は,既知または新規の如何なる楽器に似ていてもよい。 図2に,1つの可能な構成を示す。このモデルでは,マウスピース5 が,マイクロフォン9 に直接つながっている。スピーカは,チャネルが中央ハウジング11 を通って,サウンドが伝播 器に似ていてもよい。 図2に,1つの可能な構成を示す。このモデルでは,マウスピース5 が,マイクロフォン9 に直接つながっている。スピーカは,チャネルが中央ハウジング11 を通って,サウンドが伝播されるベル部分7 につながるダブルコーン部分3 の中にある。したがって,このハウジングは,生成されるサウンドに音響的品質を与える。電子回路とバッテリは,中央ハウジング内に収容され,中央ハウジングは,また,たとえば押しボタン1b や選択スイッチ1a のいくつかの指操作式制御部を保持する。これらの制御部によ り,演奏者は,楽器選択,ボリューム,オクターブなどのシンセサイザのパラメータを変更することができる。 図3は,ハムホーンの論理構成を示す。マイクロフォン30 は,アナログ信号をアナログ・デジタル変換器(ADC)31 に送り,ADC31 は,一定の周波数,好ましくは22,050Hz で信号をサンプリングする。ADC は,一度に1つのサンプルを変換し,それをバンドパス・フィルタ32(これは,高すぎる周波数または低すぎる周波数を除去することによって信号を平滑化する)に送る。フィルタにかけられた各サンプルは,次に,信号解析モジュール(SAM)33に送られる,そこで,それより前のサンプルの文脈内で解析される。サンプルを解析した後,SAM は,シンセサイザ38 に,次のような情報を渡す。 ・シンセサイザが,ノートを演奏しているか否か。演奏している場合は,・現在の周波数。 ・現在のボリューム(ラウドネス)。 ・新しいノート・アタックの状態を検出したか否か。 シンセサイザは,SAM からのこの情報の他に,指操作式制御部37 から入力を受け取る。このような制御値は,次のもの(但し,これらに制限されない)を含む様々なシンセサイザ・パラメータ したか否か。 シンセサイザは,SAM からのこの情報の他に,指操作式制御部37 から入力を受け取る。このような制御値は,次のもの(但し,これらに制限されない)を含む様々なシンセサイザ・パラメータを修正することができる。 ・模倣する現在の楽器(音源)・演奏者の声からのオフセット。すなわち,合成ノートを,歌われているノートと同じピッチで演奏するか,合成ノートをそのピッチよりも上または下の指定した音程で演奏するか否か。 ・シンセサイザは,SAM(連続的ピッチ追跡)によって検出された正確な周波数を常に演奏すべきか,そうではなく,指定された音階(不連続的ピッチ追跡)でその周波数に最も近いノートを演奏すべきか。 ・不連続ピッチ追跡に使用する音階,たとえば,半音階,長調,短調,ブ ルース。 ・現在のピッチが,所与の音階における主音(第1のノート)か否か。 次に,出力サンプルは,渡されたすべての情報に従ってシンセサイザによって生成される。また,この出力サンプルは,デジタル-アナログ変換器(DAC)34 に送られる。DAC は,受け取ったデジタル出力サンプルのストリームから,アナログ出力信号を生成する。この信号は,増幅器35 に送られた後,スピーカ36 によって伝播される。 (19頁31行~21頁20行(甲2【0037】~【0040】))エ本明細書の残りの部分は,以上概説した構成要素の詳細を考察する。最初,(図3 の)ソフトウエア構成要素について説明する。次に,ハードウェア構成要素について説明する。 ソフトウエアの構成要素以下の考察では,最初に,フィルタについて説明する。次に,周波数検出モジュール(FDM),演奏およびアタック決定モジュール(PADM),およびラウドネス追跡モジュール(LTM)の3 つのサブモジュール 下の考察では,最初に,フィルタについて説明する。次に,周波数検出モジュール(FDM),演奏およびアタック決定モジュール(PADM),およびラウドネス追跡モジュール(LTM)の3 つのサブモジュールからなるコア・ソフトウエア構成要素,すなわちSAM について説明する。次に,サウンド・シンセサイザ・モジュール(SSM)について説明する。 (21頁22行~32行(甲2【0041】【0042】)オ図16 には,SSM 38 の内部構造が示されている。SSM は,メッセージ・プロセッサ(MP)160 とサウンド・ジェネレータ(SG)161 の2 つの主構成要素からなる。ピッチ変換ボックスとボリューム変換ボックスは,後に説明される相対的に重要でない機能である。MP は,SAM およびFAC によって生成された情報を取得し,そしてSG に送るメッセージを生成する。SSM の最も特徴的な部分は,メッセージ・プロセッサとサウンド・ジェネレータの間の非同期関係である。MP は,SAM から,好ましくは8,000Hz,11,025Hz ま たは22,050Hz の規則的な間隔で信号を受け取り,そしてSG は,好ましくは同じ割合で,サウンド・サンプルを規則的な間隔で生成する。しかしながら,メッセージは,MP からSG に規則的な間隔で送られない。そうではなく,メッセージは,SG からの出力を変更する必要があるときにのみ送られる。 SG は,楽器からのサウンドのノートを一度に1 つ生成する。これにより,自動的かつ他の支援なしに,要求されたノートを要求されたボリュームで演奏する要求された楽器を模倣する出力信号,すなわち一連の出力サンプル,を生成することが可能になる。ノートの演奏が開始されると,そのノートは,停止されるまで演奏を続ける。MP 求されたボリュームで演奏する要求された楽器を模倣する出力信号,すなわち一連の出力サンプル,を生成することが可能になる。ノートの演奏が開始されると,そのノートは,停止されるまで演奏を続ける。MP は,SG に,ノートを開始または終了するように伝えるメッセージを送る。ノートが演奏されている間,MPは,ノートのピッチとボリュームを変更するメッセージを送ることができる。MP は,また,模倣している楽器をSG に伝えるメッセージを送ることができる。 (42頁16行~27行(甲2【0092】【0093】))カハードウェアの構成要素ハムホーンは,それぞれ注文品または既製品の次のようなハードウェア構成要素からなる:1)以下の構成要素ならびにバッテリを全て収容するハウジング;2)マイクロフォン;3)1つまたは複数のスピーカ;4)a)ADCb)以下のものを実行するための1 つまたは複数のチップi)SAMii)MP iii)SGc)DACd)増幅器,およびe)ボリューム制御を含む電子回路;5)指操作式制御スイッチ,ボタンおよびダイヤル;そして6)オプションとして,演奏者がパラメータを選択しおよび/またはどのパラメータが設定されているかを示すことが出来る小型ディスプレイ。 (49頁11行~50頁12行(甲2【0108】))キネットワーク拡張以下の概念は,HumBandTM技術に関係し,特に,たとえばインターネット装置として,インターネットに関するHumBandTM の使用に関係する。 (56頁10行~14行(甲2【0120】))ク (ウェブ/チャット型サービスによるグループ対話式音楽演奏)このサービスを使用するために,人は,HumJam.com ウェブ・サイトに,名前とパス 56頁10行~14行(甲2【0120】))ク (ウェブ/チャット型サービスによるグループ対話式音楽演奏)このサービスを使用するために,人は,HumJam.com ウェブ・サイトに,名前とパスワードを用いてログインした後,オンライン・グループのメンバになる。グループ内のそれぞれの人は,如何なる特定の時刻において,視聴者または演奏者の何れかである。 視聴者:聴衆メンバとして,演奏中に,演奏について実時間で批評し議論することができる。特定の意味を有しかつ演奏者に送ることができる特殊な記号または聴覚アイコンを設けることも出来る。その例には,演奏者が聞く拍手喝采,ブラボーの叫び,野次,笑い,喝采および口笛がある。 さらに,各視聴者は,演奏の質に関してその視聴者の主観的意見を表現するために,一回りの投票に参加することができる。 演奏者:演奏者は,聴衆の前で生で演奏したいという演奏者固有の密か な望みのため,セッションに魅力を感じる。これは,刺激的でかつ楽しく,インターネットの匿名性ならびにHumBandTM によって提供される偽装した音声により,舞台上の演奏よりも恐怖が少ない。自分の家の隔離された快適さの中で,数十または数百(あるいは数千)の観客のために演奏する状況を想像してみる。演奏中,HumBandTM 楽器は,インターネットにインタフェースを介して直接接続され,これにより,演奏は,HumJam.com ウェブ・サイトを介して生で送信させることができる。演奏者は,視聴者から生のフィードバックを受け取り,演奏の終わりに,そのメンバによる格付けを受け取ることができる。 (投票は,以下の3つの目的に対して行われる:)・演奏グループのレベルを上げ/下げする。(投票による)ある人のランクが,十分に高いレベルまで上げられると, よる格付けを受け取ることができる。 (投票は,以下の3つの目的に対して行われる:)・演奏グループのレベルを上げ/下げする。(投票による)ある人のランクが,十分に高いレベルまで上げられると,その人は,より高い格付けレベルの演奏グループに参加することができる。その人は,そのレベルで,等しく格付けされた演奏者の聴衆に対し演奏する。たとえば,エントリ・レベルが,ランク1であるとする。ランク1では,誰でも演奏することができ,誰でも投票することができる。十分に多くの票を得た人は,ランク2に移ることができる。ランク2では,その人は,ランク2またはそれ以上のランクに達した他の人のみから評価される。 (56頁25行~57頁26行(甲2【0121】【0122】))ケ国際的な試み。音楽が,文化/言語の障壁を取り除くため,このような対話式演奏は,オンラインのみの妨げのない真の国際コミュニケーションの例の1 つになる。インターネットとHumBandTM は,これまで決して見られなかった一種の将来の国際コミュニケーションの先触れとなる可能性がある。 技術的問題 演奏者と視聴者はそれぞれ,インターネット対応のHumBandTMを介して参加することができる。演奏者はすべて,情報を自分のHumBandTMを介して送信する。視聴者はすべて,そのような演奏を,自分のHumBandsTM/PCs/PC ヘッドホン/HumBandTMヘッドホン/または他のHumBand コーデック使用可能装置を介して聴く。 演奏者は,HumJam.comHumServerTM によって提供される伴奏に沿って演奏する。サーバは,伴奏情報をHumBand コーデックを介して演奏者に送信する。伴奏は,使用可能な任意の装置で演奏される。HumBand コーデック rverTM によって提供される伴奏に沿って演奏する。サーバは,伴奏情報をHumBand コーデックを介して演奏者に送信する。伴奏は,使用可能な任意の装置で演奏される。HumBand コーデックは,MIDI ときわめて似ているが,おそらく音声制御に最適化されている。 演奏者は,この伴奏と同期して演奏し,そして彼の信号は,この同じコーデックを介してサーバに送られる。次に,サーバは,その演奏を,聴衆に同報通信するのみである。聴衆に対しては,演奏者と伴奏は,完全に同期している。待ち時間の問題はない。その理由は,サーバが,演奏者の信号を受け取り,かつサーバの得た信号が,演奏者が聞くように演奏を再生できるように,その信号を,適切に時間を合わせた伴奏に組み合わせることができるからである。したがって,わずかな遅延があるが,それでもなお,演奏は,生で同報通信され,かつ忠実度は十分である。 視聴者は,コメントと票をサーバに送り,サーバは,それを計数し,とりまとめ,分類する。 (58頁15行~59頁15行(甲2【0124】~【0128】))⑶ 引用発明1の認定についてア前記⑵の記載事項によれば,甲1には,①甲1の「HumBandTM 楽器」は「ハムホーン」をネットワーク対応に拡張したものであり,インターネットに直接接続されるインターフェースを備えること(前記⑵キ,ク),②「ハムホーン」は,「マイクロフォン」,「1つまたは複数のスピーカ」,「演 奏者へ出力を提示する小型ディスプレイ」,「演奏者から入力を受ける押しボタン1b や選択スイッチ1a の指操作式制御部」及び「SAM,MP,SGおよびボリューム制御を含む電子回路」を備えること(同ウ,カ),③ハムホーンはソフトウエアを備えており,当該ソフトウエアは,ハムホーンに備 択スイッチ1a の指操作式制御部」及び「SAM,MP,SGおよびボリューム制御を含む電子回路」を備えること(同ウ,カ),③ハムホーンはソフトウエアを備えており,当該ソフトウエアは,ハムホーンに備わる電子回路で実行されること(同ウ,エ),④演奏者による演奏の際に,サーバから伴奏が与えられ,当該伴奏はHumBand を構成するスピーカーにより演奏されること(同ケ),⑤演奏者の演奏する信号が「マイクロフォン」を通じて,HumBand に入力されること(同ア,ウ)が開示されているといえる。また,上記⑤の信号が,インターネットに接続するインターフェースを通じてサーバに送られることは,自明である。 そうすると,以上に認定した事項及び前記⑵の甲1のその他の記載事項によれば,本件審決が認定したとおり,甲1には引用発明1が開示されていると認められる。 したがって,本件審決における引用発明1の認定に誤りはない。 イこれに対し原告は,本件審決における引用発明1の認定には,①「ハムホーンのネットワーク拡張がHumBand™であって」,「インターフェース」が「インターネットに直接接続される」ものであるとし,②「ハムホーンを演奏者が操作する際に,演奏者を支援するように,その操作に関する情報を小型ディスプレイを通して表示させ」ているとし,③「伴奏」は「サーバから与えられる」ものであるとし,④「パフォーマンス」は,演奏のみを意味するのにすぎないのに,これを「演奏」と「伴奏」とを合体させたものと理解した点に誤りがあり,甲1に開示された発明は甲1発明と認定すべきである旨主張する。 まず,上記①の点について,甲1には,「インターネット装置として,インターネットに関するHumBandTM の使用に関係する。」(前記⑵キ),「演 奏中, 定すべきである旨主張する。 まず,上記①の点について,甲1には,「インターネット装置として,インターネットに関するHumBandTM の使用に関係する。」(前記⑵キ),「演 奏中,HumBandTM 楽器は,インターネットにインタフェースを介して直接接続され,これにより,演奏は,HumJam.com ウェブ・サイトを介して生で送信させることができる。」(同ク)との記載があることから,HumBandTM 楽器には,「インターネットに直接接続されるインターフェース」が備わっていることの開示があると認められる。 次に,上記②の点について,甲1には,「小型ディスプレイ」について,「演奏者がパラメータを選択しおよび/またはどのパラメータが設定されているかを示すことが出来る」との記載があり(前記⑵カ),「パラメータを選択」することは「操作」することであって,「どのパラメータが選択されているか」は「操作に関する情報」であるといえる。したがって,甲1には,「ハムホーンを演奏者が操作する際に,演奏者を支援するように,その操作に関する情報を小型ディスプレイを通して表示させ」ることの開示があると認められる。 また,上記③の点について,甲1には,「演奏者は,HumJam.comHumServerTMによって提供される伴奏に沿って演奏する。サーバは,伴奏情報をHumBandコーデックを介して演奏者に送信する。伴奏は,使用可能な任意の装置で演奏される。」との記載があることから(前記⑵ケ),演奏者による演奏の際に,サーバから伴奏が与えられることの開示があると認められる。 さらに,上記④の点について,甲1には,「演奏者は,この伴奏と同期して演奏し,そして彼の信号は,この同じコーデックを介してサーバに送られる。次に,サーバは,その演奏を,聴衆に があると認められる。 さらに,上記④の点について,甲1には,「演奏者は,この伴奏と同期して演奏し,そして彼の信号は,この同じコーデックを介してサーバに送られる。次に,サーバは,その演奏を,聴衆に同報通信するのみである。 聴衆に対しては,演奏者と伴奏は,完全に同期している。待ち時間の問題はない。その理由は,サーバが,演奏者の信号を受け取り,かつサーバの得た信号が,演奏者が聞くように演奏を再生できるように,その信号を,適切に時間を合わせた伴奏に組み合わせることができるからである。した がって,わずかな遅延があるが,それでもなお,演奏は,生で同報通信され,かつ忠実度は十分である。」との記載がある(前記⑵ケ)。かかる記載によれば,甲1には,聴衆に同報通信される「演奏」が,演奏者の演奏に伴奏が同期したものであることの開示があると認められる。 したがって,原告の上記主張はいずれも採用することができない。 なお,原告は,上記のほかにも,本件審決における引用発明1の認定に誤りがある旨るる主張するが,いずれも前記アの認定を左右するものではない。 ⑷ 本件発明1と引用発明1の対比についてア前記⑶のとおり,本件審決における引用発明1の認定に誤りはない。 そして,本件発明1と引用発明1を対比すると,本件審決が認定したとおり,一致点及び相違点を認定することができる。 したがって,本件審決における本件発明1と引用発明1の対比に誤りはない。 イこれに対し原告は,本件審決が,本件発明1の「トランスミッタ」(①),「遠隔サーバー」(②)及び「コンテンツ」(③)を引用発明1との一致点であると認定した点は誤りである旨主張する。 まず,上記①の点については,前記⑶アのとおり,甲1には,引用発明1の「インターフェース」が「インターネット び「コンテンツ」(③)を引用発明1との一致点であると認定した点は誤りである旨主張する。 まず,上記①の点については,前記⑶アのとおり,甲1には,引用発明1の「インターフェース」が「インターネットに直接接続される」ものであることが記載されている一方,当該インターフェースが,原告の主張する「MIDI インターフェース」であることを明示する,又は示唆する記載はない。そして,インターネットに接続されるインターフェースである以上,情報の送受信機能は不可欠であるから,かかる機能を果たす部分として「トランスミッタ」を備えるものと理解できる。 次に,上記②の点について,上記のとおり,甲1には,引用発明1の「イ ンターフェース」がMIDI インターフェースであることの開示はない。そして,引用発明1の「サーバ」は,HumJam.com というウェブ・サイトのサーバーであることから(前記⑵ケ),同サーバは,空間的にもHumBandTM 楽器から離間しているものであって,「遠隔サーバー」であることを理解できる。 さらに,上記③の点について,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,「第1のコンテンツ」に関し,i)「プログラム」は,「出力デバイスを通じて操作者へ,(a)前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバー又は(b)取り外し可能なメモリ・デバイスから与えられる第1のコンテンツの表現を提示させ」るものであること,ii)「プログラム」は,「入力デバイスを通じて操作者から受け取らせ」る「第2のコンテンツ」が,操作者により決定された関係に従って,当該「第1のコンテンツ」の提示に時間的に重なるものであること,iii)「遠隔サーバー」が,「前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2 り決定された関係に従って,当該「第1のコンテンツ」の提示に時間的に重なるものであること,iii)「遠隔サーバー」が,「前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現を前記少なくとも単独の受信者が受信するように,前記更なる表現を送信させる」ものであることの記載があるに過ぎず,原告の主張するように「コンテンツ」が「音や映像などのメッセージそのもの」であると解すべき根拠となる記載はない。 そして,上記特許請求の範囲の記載によれば,本件発明1は,出力デバイスを通じて操作者に対し,「第1のコンテンツの表現」を提示するものであるから,当該「第1のコンテンツ」が,音そのものではなく所定のコーデックに従う「演奏情報」を含み得ないものであるとはいえない。 したがって,本件審決が,引用発明1の「前記伴奏に同期する演奏者の信号を前記マイクロフォンを通じて演奏者から受け取」らせることは,本件発明1の「操作者により決定された関係に従って第1のコンテンツの提 示に時間的に重なる第2のコンテンツ…を前記入力デバイスを通じて操作者から受け取らせ」ることに相当する旨認定した点に誤りはない。 以上のとおり,原告の上記主張はいずれも採用することができない。 なお,原告は,上記のほかにも,本件審決における本件発明1と引用発明1との対比に誤りがある旨るる主張するが,いずれも前記アの認定を左右するものではない。 ⑸ 相違点の容易想到性の判断事案に鑑み,相違点1-3の容易想到性の有無から判断する。 ア 「少なくとも単独の受信者の識別子」の意義(ア) 本件特許の特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,本件発明1の「少なくとも単独の受信者の識別子」とは,「ハンドヘルド装置」 ア 「少なくとも単独の受信者の識別子」の意義(ア) 本件特許の特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,本件発明1の「少なくとも単独の受信者の識別子」とは,「ハンドヘルド装置」が,同装置に備わる「入力デバイス」を通じて,「操作者により決定された関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツ」と共に,「操作者から受け取」るものであり,同装置に備わる「無線トランスミッタを通じて,」同装置「から空間的に離間した遠隔サーバー」に送られ,「この遠隔サーバーが」,「操作者により決定された関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現」を,当該「少なくとも単独の受信者」「が受信するように」「送信」するものであることを理解できる。 (イ) 次に,前記⑴イのとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,「本発明」は,モバイル装置を用いる音楽又は動画のようなコンテンツの形成及び分配を目的とするものであり,本件発明1の構成を採用することにより,ハンドヘルド装置の操作者において,同装置を用いて,遠隔サーバーに対し,同人により制御された時間的関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツの表現を与え,前記遠隔 サーバーにより,前記時間的関係に従って配置された第1のコンテンツと第2のコンテンツとを表すメッセージを形成し,このメッセージを,前記操作者が指定した少なくとも1つの受信者に対して分配することができるという効果を奏するものである旨が記載されており,この点に本件発明1の技術的意義があると認められる。 (ウ) 以上の本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書の記載に鑑みると,本件発明1の「少なくとも単独の受信者の識別子」とは,「遠隔サーバー」 1の技術的意義があると認められる。 (ウ) 以上の本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書の記載に鑑みると,本件発明1の「少なくとも単独の受信者の識別子」とは,「遠隔サーバー」が送信する「操作者により決定された…更なる表現」を受信する者を識別するための情報であり,ハンドヘルド装置の操作者が,同装置に前記識別子を入力することで,当該識別子により識別される特定の者を,前記更なる表現を受信する者として指定できる機能を有するものであり,これにより,受信者は,特段の操作を要することなく,上記表現を受信することができるものと解される。 また,本件明細書の「本発明の実施形態」には,操作者が少なくとも1つの受信者を識別する方法として,「1つの電話番号を特定する」方法,「遠隔サーバーに記憶された電話番号又はeメール・アドレスのリストから1つの受信者を選択する」方法があり,当該遠隔サーバーにおいて,上記方法によって指定された受信先に対し,適宜な送達方法により上記更なる表現を送信することが記載されており(【0043】,【0044】),このことも,上記解釈を裏付けるものといえる。 イ甲1の開示事項前記⑵ケのとおり,甲1には,演奏者と視聴者(聴衆)はそれぞれ,インターネット対応のHumBandTMを介して,演奏グループに参加することができ,演奏者はすべて,情報を自分のHumBandTMを介して送信し,視聴者はすべて,そのような演奏を,自分のHumBandsTM を介して聴くことが記載され ている。 そして,前記⑵クのとおり,甲1には,「このサービス(ウェブ/チャット型サービスによるグループ対話式音楽演奏)を使用するために,人は,HumJam.com ウェブ・サイトに,名前とパスワードを用いてログインした後,オン り,甲1には,「このサービス(ウェブ/チャット型サービスによるグループ対話式音楽演奏)を使用するために,人は,HumJam.com ウェブ・サイトに,名前とパスワードを用いてログインした後,オンライン・グループのメンバになる。」と記載されていることから,引用発明1のHumBandTM 楽器において,「パフォーマンス」の「聴衆」となるには,HumJam.com ウェブ・サイトに,名前とパスワードを用いてログインし,所定のランクのオンライン・グループのメンバになる必要があることを理解できる。一方,甲1には,かかる方法のほかに,HumBandTM 楽器において,「パフォーマンス」の「聴衆」となる方法は記載されておらず,その示唆もない。 そうすると,仮に,被告の主張するとおり,甲1において,「演奏者」が「演奏グループ」(オンライン・グループ)の「ランク」を「HumBandTM楽器」に入力して,自己の参加する「ランク」を選択できることが開示されているとしても,甲1の記載からは,かかる選択によって,当該「ランク」に格付けされた者が当然に「パフォーマンス」の「聴衆」と指定されるものではなく,「聴衆」となるには,上記のような方法で所定のランクのオンライン・グループのメンバになる必要があることを理解できる。 ウ相違点の容易想到性前記アのとおり,本件発明1の「少なくとも単独の受信者の識別子」とは,「遠隔サーバー」が送信する「操作者により決定された…更なる表現」を受信する者を識別するための情報であり,ハンドヘルド装置の操作者が,同装置に前記識別子を入力することで,当該識別子により識別される特定の者を,前記更なる表現を受信する者として指定できる機能を有するものと解される。 一方,前記イのとおり,甲1に記載された「ランク」は,本件発 ることで,当該識別子により識別される特定の者を,前記更なる表現を受信する者として指定できる機能を有するものと解される。 一方,前記イのとおり,甲1に記載された「ランク」は,本件発明1の「少なくとも単独の受信者の識別子」により実現している機能を果たすものではないから,これに相当するものとはいえない。 そうすると,本件審決が,「ランク」を「少なくとも単独の受信者の識別子」と呼ぶことは任意であるとして,両者が実質的に同一であることを前提に,当業者が相違点1-3に係る本件発明1の構成を容易に想到し得ると判断したことは,その前提を誤るものといえる。 そして,演奏者から受け取った信号と伴奏とを組み合わせたパフォーマンスを,サーバにアクセスしている聴衆に同報通信する構成により,「ウェブ/チャット型サービスによるグループ対話式音楽演奏」を実現した引用発明1において,「少なくとも単独の受信者の識別子」を,演奏者に入力させる構成を採用する動機付けとなる記載は,甲1には見当たらず,また,かかる構成を採用することが,「ウェブ/チャット型サービスによるグループ対話式音楽演奏」における周知技術であるとも認められない。 したがって,相違点1-3に係る本件発明1の構成は,当業者が容易に想到できたものであるとは認められない。 エこれに対し被告は,甲1には,ランクが高い演奏者が,参加する演奏グループを特定するために,どの演奏グループに参加するかの情報をHumSever に対して送信した後に演奏を開始することが,実質的に開示されており,かかる情報は演奏グループを特定するものであって,演奏グループには少なくとも1人の聴衆が含まれるから,同情報は本件発明1の「少なくとも単独の受信者の識別子」に相当するものであり,相違点1-3は甲1に開示されている, ループを特定するものであって,演奏グループには少なくとも1人の聴衆が含まれるから,同情報は本件発明1の「少なくとも単独の受信者の識別子」に相当するものであり,相違点1-3は甲1に開示されている,あるいは,少なくとも実質的な相違点ではない旨主張する。 しかしながら,前記ウのとおり,甲1に記載された「ランク」は,本件 発明1の「少なくとも単独の受信者の識別子」により実現している機能を果たすものではなく,これに相当するものとはいえない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 オ小括以上によれば,相違点1-1及び1-2の容易想到性について検討するまでもなく,本件発明1は,引用発明1及び周知技術1に基づき容易に発明をすることができたものであるとはいえず,これに反する本件審決の判断は誤りである。 3 取消事由2-2(甲1を主引用例とする本件発明2ないし7の進歩性の判断の誤り)について本件審決は,本件発明2ないし7と引用発明1は,いずれも相違点1-1ないし1-3で相違するところ,かかる相違点は容易想到であって,その他の相違点も容易想到であるから,本件発明2ないし7は,引用発明1及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである旨判断した。 しかしながら,前記2⑸のとおり,本件審決のした本件発明1の容易想到性の判断に誤りがあるから,本件発明2ないし7の容易想到性を認めた本件審決の上記判断は,その前提を欠くものであって,誤りである。 したがって,原告主張の取消事由2-2は理由がある。 4 結論以上によれば,原告主張の取消事由2-1及び2-2は理由があるから,本件審決は取り消されるべきものである。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 結論 以上によれば、原告主張の取消事由2-1及び2-2は理由があるから、本件審決は取り消されるべきものである。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 鶴岡稔彦 裁判官 上田卓哉 裁判官 山門優 (別紙1)【図1】 【図3】 (別紙2)【図1】及び【図2】 【図3】 【図4】 【図16】

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