平成22(行コ)5 法人税更正処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成20年(行ウ)第704号)

裁判年月日・裁判所
平成22年11月17日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文5,846 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実 及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 川崎南税務署長が被承継人株式会社Aに対して平成20年6月24日付けでした,同社の平成17年4月1日から平成18年3月31日までの連結事業年度の法人税の更正処分のうち連結所得の金額28億0479万4013円及び納付すべき税額6億4881万2100円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,株式会社A(以下「旧A」という。)が,平成17年4月1日から平成18年3月31日までの連結事業年度(以下「本件連結事業年度」という。)の法人税について連結確定申告をするに当たり,平成17年4月1日を合併期日として吸収合併をしたB株式会社(以下「B」という。)の本件連結事業年度開始の日前7年以内に開始した各事業年度において生じた欠損金額を法人税法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)81条の9第2項に規定する連結欠損金額とみなされる金額として連結所得の金額の計算において損金の額に算入したのに対し,川崎南税務署長がその算入を否認して更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をしたことから,旧Aが同各処分の取消しを求めた事案である。 控訴人は,原審係属中,旧Aを吸収合併し,その訴訟上の地位を承継した。 原審は,川崎南税務署長の上記各処分はいずれも適法であるとして,控訴人の請求をいずれも棄却したので,控訴人が控訴した。 2 本件に関係する主な法令の定め,争いのない事実等及び上記各処分の根拠等 は,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1項から3項までに 求をいずれも棄却したので,控訴人が控訴した。 2 本件に関係する主な法令の定め,争いのない事実等及び上記各処分の根拠等 は,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1項から3項までに記載されたとおり(ただし,原判決10頁1行目の「本件各更正処分」を「本件更正処分等」に改める。)であるから,これを引用する。 3 本件の争点及び争点に関する当事者の主張は,控訴人の当審における新たな主張が後記第3の3項(1)記載のとおりであるほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の4項に記載されたとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決17頁25行目及び18頁14行目の各「第2号」をいずれも「第2項2号」に改める。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の本件請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は,当審における控訴人の主張に対する判断を次項以下に付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 争点についての判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決20頁11行目の「簡明であること,」の次に「税収減を防止することのほか,」を加える。 2 争点1,2についての控訴人の主張に対する補足説明(1) 争点1(本件青色欠損金額は,法人税法81条の9第2項1号の規定により旧Aのみなし連結欠損金額に当たるといえるか否か)についてア控訴人は,法人税法81条の9第2項1号は,同号の欠損金額について,同法57条2項により欠損金額とみなされたものを含むと規定しており,最初連結親法人事業年度開始の日に子会社が適格合併により合併されたときも,同条項により親会社の欠損金額とみなされると主張する。 しかしながら,法人税法81条の9第2項1号において連結欠損金額とみなされる「第57条第1項…に規定 会社が適格合併により合併されたときも,同条項により親会社の欠損金額とみなされると主張する。 しかしながら,法人税法81条の9第2項1号において連結欠損金額とみなされる「第57条第1項…に規定する欠損金額」が,「最初連結親法人事業年度…開始の日前7年以内に開始した当該連結親法人の各事業年度において生じた」ものに限られ,最初連結親法人事業年度開始の日前において既に存する欠損金額に限定されていることからすると,これに含まれ ることとなる,同法57条2項の規定により「欠損金額とみなされたもの」は,最初連結親法人事業年度開始の日前の時点において,既に同法57条2項の適用により当該連結親法人の欠損金額とみなされたものに限られると解するのが自然であり,最初連結親法人事業年度開始の日以後において当該連結親法人を合併法人等とする適格合併等が行われた場合はこれに含まれないものと解される。このことは,同法81条の9第2項3号において,連結親法人が完全支配関係を有しない法人との間で当該連結親法人を合併法人等とする適格合併等を行った場合に,被合併法人等の未処理欠損金額を連結欠損金額とみなす旨の規定を特に設けていることにも示されており,同様に,同項2号に規定する連結子法人を被合併法人等とする適格合併等が行われた場合についても同法施行令155条の19第3項,4項の規定が特に設けられている。 したがって,控訴人の上記主張は理由がない。 なお,控訴人は,最初連結親法人事業年度開始の日に合併が行われた場合は,被合併法人は合併の日の前日をもって消滅し,合併により移転する権利義務から生ずる所得の帰属は合併の日の零時をもって変更し,被合併法人の欠損金額は合併法人に承継され,他方,連結納税の承認の効力発生の日に合併により解散消滅する連結子法人となるべき法人 り移転する権利義務から生ずる所得の帰属は合併の日の零時をもって変更し,被合併法人の欠損金額は合併法人に承継され,他方,連結納税の承認の効力発生の日に合併により解散消滅する連結子法人となるべき法人は,その日に連結納税の承認が取り消されたものとみなされ,連結納税の効果は生じなかったこととなると主張する。しかし,同法57条9項2号は,文理上,最初連結親法人事業年度開始の日に合併が行われた場合も被合併法人が「連結子法人」であることを前提としているから,この場合も被合併法人が連結子法人であるものとして関係法令が適用されるというべきであるし,最初連結親法人事業年度開始の日に適格合併が行われた場合に,被合併法人の未処理欠損金額が同法81条の9第2項1号の規定により連結欠損金額とみなされるものでないことは上記のとおりである。 イ控訴人は,同法57条9項2号イは,最初連結親法人事業年度開始の日に合併が行われた場合は,被合併法人である子会社の欠損金額について,ないものとされる欠損金額から除外しているから,欠損金額は存続し,子会社が適格合併により合併されたときは,同条2項により親会社の欠損金額とみなされると主張する。 しかしながら,同法57条9項2号イにおいて「最初連結親法人事業年度開始の日に行う合併」が規定されたのは,この場合の「当該合併の日の前日の属する事業年度」は最初連結親法人事業年度ではなく,当該内国法人の単体納税下の事業年度であるから,これを含めて同項2号において欠損金額を「ないもの」とするのは相当でないことから,同号イの規定を設けて除外したものにすぎず,この結果,「当該事業年度前の各事業年度において生じた欠損金額」が「ないもの」とはされないからといって,これが同条2項により合併法人である連結親法人の欠損金額とみなされるのでな 外したものにすぎず,この結果,「当該事業年度前の各事業年度において生じた欠損金額」が「ないもの」とはされないからといって,これが同条2項により合併法人である連結親法人の欠損金額とみなされるのでないことは上記アのとおりである。 ウ控訴人は,同法57条7項及び81条の9第2項3号は,連結法人に関連した適格合併の場合,被合併法人の欠損金額の控除を広く認める規定であり,これとの整合性を確保するためにも最初連結親法人事業年度開始の日に行う適格合併について未処理欠損金額の控除を認めるべきであると主張する。 しかしながら,同法57条7項は,連結法人を被合併法人とする適格合併を行った場合に,被合併法人の所定の連結事業年度において生じた連結欠損金個別帰属額の限度で欠損金額とみなすものであって,単体納税下の事業年度において生じた欠損金を引き継ぐものではないし,同法81条の9第2項3号は,連結親法人が完全支配関係を有しない法人を被合併法人とする適格合併を行った場合の規定であり,これらとは事情が異なる最初連結親法人事業年度開始の日に行う適格合併の場合に,被合併法人の単体 納税下の事業年度において生じた欠損金額を合併法人が引き継がないと解しても,制度において整合性を欠くとはいえない。 エ控訴人は,単体納税の下での適格合併では,被合併法人の未処理欠損金額は合併法人に承継されて繰越控除の対象とされるが,これと実質的に同一の実態にある最初連結親法人事業年度開始の日に行われた本件合併について,被合併法人の未処理欠損金額について欠損金控除を認めないのは,その差異に適正かつ合理的な理由がなく,わずか1日の違いにより未処理欠損金額の控除が否定されることの不合理,不平等は明白であり,租税法律の内容の適正さを要請する租税法律主義に違背すると主張する。 し 異に適正かつ合理的な理由がなく,わずか1日の違いにより未処理欠損金額の控除が否定されることの不合理,不平等は明白であり,租税法律の内容の適正さを要請する租税法律主義に違背すると主張する。 しかしながら,本件合併が最初連結親法人事業年度開始の日の翌日以降に行われた場合には,被合併法人であるBの未処理欠損金額は連結欠損金額に算入されないところ,最初連結親法人事業年度開始の日を含むそれ以後の日に行われる適格合併と単体納税の下で行われる適格合併とで被合併法人の未処理欠損金額の取扱いを同じくするかどうか,また,最初連結親法人事業年度開始の日のみを後者と同じ取扱いとするかどうかは,立法政策にゆだねられるところであり,原判決説示のとおりの立法理由に照らせば,最初連結親法人事業年度開始の日に行われたときを含め,最初連結親法人事業年度において適格合併が行われた場合に,被合併法人の単体納税下の事業年度で生じた未処理欠損金額を連結欠損金額とみなすものとしないことが不合理又は不平等であるとはいえず,この点についての法人税法の規定が租税法律主義に反するとの上記主張は理由がない。 (2) 争点2(法人税法施行令155条の19第5項が法人税法81条の9第2項2号の委任の範囲を逸脱したものか否か)について控訴人は,法人税法81条の9第2項2号が政令に定める法人を除くとした趣旨は,共同株式移転を用いた制限規定の潜脱や不整合の防止を図る点にあり,この目的を達成するのに必要な範囲でのみ除外すべき連結法人を定め ることを政令に委任したものであるところ,同法施行令155条の19第5項の規定は,外国法人をも適用対象とする点で委任の範囲を超え,違法,無効であり,租税法律主義にも違反すると主張する。 しかしながら,委任命令の内容が委任の範囲を超えるかどうかは, 5条の19第5項の規定は,外国法人をも適用対象とする点で委任の範囲を超え,違法,無効であり,租税法律主義にも違反すると主張する。 しかしながら,委任命令の内容が委任の範囲を超えるかどうかは,委任の趣旨に従って解釈すべきところ,同法81条の9第2項2号は,政令に委任するについて特に限定する規定を設けておらず,その委任の趣旨において控訴人の上記主張の制限があると解すべき理由はなく,同法施行令155条の19第5項において,連結子法人を定めるについて,連結法人となることができない外国法人を除外しなかったからといって,委任の範囲を超えるものでないことは原判決説示のとおりである。 3 控訴人の当審における主張について(1) 控訴人は,仮に,本件更正処分が適法であるとしても,①毎年4月1日から翌年3月31日までを事業年度とする事業会社が被合併法人として適格合併をする場合には,4月1日に合併をすることが実務上最も合理的で簡便であり,②最初連結親法人事業年度開始の日に合併を行う場合の欠損金の取扱いを直接定める規定はなかったところ,課税庁は,この場合の取扱いについて内部資料を作成していたにもかかわらず,これを周知させる措置を講ずることはなかったから,旧Aが控訴人主張の法令解釈により本件連結確定申告書を提出したとしても無理からぬところがあるとして,国税通則法65条4項の「正当な理由」があり,本件賦課決定処分は違法であると主張する。 (2) しかしながら,上記①の事由は,Bを被合併法人とする本件合併において合併の日を平成17年の4月1日とした理由,事情をいうものにすぎず,本件青色欠損金額を連結欠損金額とみなして税額を計算したことについて国税通則法65条4項所定の「正当な理由」があるということはできない。 また,上記②については,証拠(甲2 をいうものにすぎず,本件青色欠損金額を連結欠損金額とみなして税額を計算したことについて国税通則法65条4項所定の「正当な理由」があるということはできない。 また,上記②については,証拠(甲26,27)によれば,国税庁調査課が,最初連結親法人事業年度開始の日に連結子法人を被合併法人とする合併 を行った場合に,被合併法人の欠損金額は連結欠損金額とみなされないとする内部資料を作成したこと(その作成と本件連結確定申告書の提出の先後は不明である。)が認められるにとどまり,税務当局が,上記とは反対に当該連結子法人の欠損金を連結欠損金とみなすべきであるとの見解を公表し,又はそのような取扱いをしていたなどの事情を認めるに足りる証拠はないから,国税通則法65条4項所定の「正当な理由」があるとはいうことはできない。 したがって,控訴人の上記主張は理由がない。 第4 結論以上によれば,原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第23民事部 裁判長裁判官鈴木健太 裁判官高野伸 裁判官中山幾次郎

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