昭和60(オ)728 退職金支払、民訴一九八条二項に基づく損害賠償申立

裁判年月日・裁判所
平成元年9月7日 最高裁判所第一小法廷 判決 その他 大阪高等裁判所 昭和58(ネ)639
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【DRY-RUN】主    文      原判決中上告人・附帯被上告人の敗訴部分を破棄する。      右部分につき、被上告人・附帯上告人の控訴を棄却する。      本件附帯上告を棄却する。      原審及び当審の

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主    文      原判決中上告人・附帯被上告人の敗訴部分を破棄する。      右部分につき、被上告人・附帯上告人の控訴を棄却する。      本件附帯上告を棄却する。      原審及び当審の訴訟費用は被上告人・附帯上告人の負担とする。          理    由  上告代理人西岡芳樹の上告理由一について  一 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。  1 被上告人・附帯上告人(以下「被上告人」という。)は、香港に本店を置く いわゆる在日外国銀行であり、東京、大阪等に営業所(支店)を有している。上告 人・附帯被上告人(以下「上告人」という。)は、昭和五二年六月一六日から訴外 D株式会社の従業員として被上告人Eに出向し、メッセンジャーとして勤務してい たが、昭和五三年一二月七日被上告人との間に臨時従業員雇用契約を締結して被上 告人の従業員となり、その際、勤続年数としては、右昭和五二年六月一六日から被 上告人に勤務していたものとしての取扱いを受けるものとされた。  2 上告人は、昭和五三年、被上告人の従業員を主な構成員とする外国銀行外国 商社労働組合大阪支部第二分会(以下「外銀労」という。)に加入し、その組合員 となった。被上告人の日本国内の支店には外銀労のほかにF銀行国内支店従業員組 合(以下「従業員組合」という。)が存する。  3 前記臨時従業員雇用契約においては、上告人の労働条件について、(1) 上 告人は、被上告人の就業規則のうち疾病に関する項目を除く部分の準用を受けると ともに、賃金等については、被上告人と外銀労との間で締結されその支給時におい て効力を有する諸協定の準用を受ける、(2) 上告人の雇用期間は昭和五四年六月 三〇日までとし、昭和五八年六月三〇日までの間は一年ごとに雇用契約を更新する - 1 - ことができる、(3) 退職金は、昭和 効力を有する諸協定の準用を受ける、(2) 上告人の雇用期間は昭和五四年六月 三〇日までとし、昭和五八年六月三〇日までの間は一年ごとに雇用契約を更新する - 1 - ことができる、(3) 退職金は、昭和五五年六月三〇日に退職(事務行員の場合の 停年退職に相当)したものとみなして同日支払う、との約定がされていた。上告人 は、昭和五四年七月一日以降も一年ごとの契約更新により昭和五八年六月三〇日ま で勤務した。  4 被上告人の就業規則には、退職金に関し、「支給時の退職金協定による。」 と規定されている。そして、被上告人と従業員組合との間で昭和五〇年六月二六日 に退職一時金及び退職年金の支給に関する退職金協定が締結されたが、それによれ ば、(1) 退職者には勤続年数に応じて、退職時における弁済額を除く基本給月額 に一定の乗率を乗じた金額の退職一時金を支給する、(2) 二九歳以後に入行した 者が停年で退職する場合には、退職時の基本給月額の二倍の額に勤務年数の三〇に 対する割合を乗じた金額の退職年金を一〇年間支給する、(3) 退職年金受給資格 者が退職時に年金総額を一時金として受領することを希望する場合には、一定の乗 率で換算した額の退職年金一時払金を支給する、旨が定められており、また、協定 の有効期間については、昭和五〇年一二月三一日まで有効とし、期間満了の六か月 以前にいずれか一方の当事者から改定の要求がなければ、その後一年間自動的に更 新されると定められていた。その後、被上告人と外銀労との間で昭和五〇年七月二 九日に右と同一内容の退職金協定(以下「本件退職金協定」という。)が締結され、 被上告人は、昭和五〇年一〇月九日付で、従業員組合との間で締結された右退職金 協定に係る協定書の写しを添付した就業規則変更届を大阪中央労働基準監督署長に 届け出た。  5 被上告人Eにおいては、被上 、 被上告人は、昭和五〇年一〇月九日付で、従業員組合との間で締結された右退職金 協定に係る協定書の写しを添付した就業規則変更届を大阪中央労働基準監督署長に 届け出た。  5 被上告人Eにおいては、被上告人と各労働組合との間でほとんど毎年のよう に全従業員につき画一的・統一的に賃金を改定し、退職金協定についても一年の有 効期間を定めてこれを更新し又は改定するのを例としていた。被上告人は、昭和五 二年中外銀労及び従業員組合に対し、退職金協定について、今後各年の定期昇給分 - 2 - は全額退職金額に反映させるが、ベースアップ分については、その一部だけが退職 金額に反映するように内容を改めたい旨の提案を行い、一年ごとに更新されてきた 本件退職金協定及び従業員組合との間の前記退職金協定は昭和五三年一二月三一日 限り失効した。  6 被上告人は従業員組合との間で、昭和五五年一〇月一六日、賃金協定による 基本給月額の代わりに、それより低額の別に定められた第二基本給月額を退職金計 算の基礎とすることとして、昭和五四年度退職金協定を締結し、また、昭和五九年 七月二五日、同じく第二基本給月額を退職金計算の基礎とすることとして、昭和五 五年度及び同五六年度の各退職金協定を締結した。被上告人は、昭和五九年八月二 一日、右昭和五五年度及び同五六年度の各退職金協定に係る協定書の写しを添付し た各就業規則変更届を大阪中央労働基準監督署長に届け出た。被上告人と外銀労と の間では、昭和五四年度ないし同五六年度の各退職金協定は締結されていない。  7 被上告人Eにおいては、古くから非組合員に対しても従業員組合との間で締 結された賃金協定、退職金協定が適用されてきたので、前記昭和五五年六月三〇日 及び同五九年七月二五日のいずれの時点においても、非組合員も含めて従業員組合 との間の退職金協定の適用を受ける常時使 の間で締 結された賃金協定、退職金協定が適用されてきたので、前記昭和五五年六月三〇日 及び同五九年七月二五日のいずれの時点においても、非組合員も含めて従業員組合 との間の退職金協定の適用を受ける常時使用される同種労働者数は、同支店の一般 従業員総数の四分の三に達していた。  8 第一審判決は、本件退職金協定に定められた支給基準により計算される退職 金額七六万四三〇〇円の支払を求める上告人の請求の全部を認容し、上告人は、昭 和五八年四月一二日、第一審判決の仮執行宣言に基づく強制執行により遅延損害金 一〇万六三七三円を含む合計八七万〇六七三円の支払を受けた。  二 以上の事実関係のもとに、原審は、(1) 昭和五五年六月三〇日付退職者で ある上告人には、昭和五三年一二月三一日失効した本件退職金協定の適用はない、 (2) 当該事業場の一般従業員の四分の一に満たない労働者が別に労働組合を結成 - 3 - している場合であっても、右少数組合が締結した労働協約が失効し新たな協約を締 結するに至っていないときには、労働組合法一七条による労働協約の一般的拘束力 は右少数組合に所属する労働者にも及ぶものと解するのが相当であるところ、被上 告人Eにおいては、上告人の退職日である昭和五五年六月三〇日及び従業員組合と の間で昭和五五年度退職金協定が締結された同五九年七月二五日のいずれの時点に おいても、従業員組合との間の退職金協定の適用を受ける常時使用される同種労働 者数は一般従業員総数の四分の三に達していたから、労働組合法一七条により、外 銀労の組合員である上告人に対しても、従業員組合との間で締結された昭和五五年 度退職金協定が遡及適用されるものと解するのが相当である、(3) 従業員組合と の間の右昭和五五年度退職金協定に基づき上告人の退職一時金及び退職年金一時払 金を計算すると、その合計額は七三 た昭和五五年 度退職金協定が遡及適用されるものと解するのが相当である、(3) 従業員組合と の間の右昭和五五年度退職金協定に基づき上告人の退職一時金及び退職年金一時払 金を計算すると、その合計額は七三万九五〇〇円となる、として、上告人の本件退 職金請求のうち同金額及びこれに対する遅延損害金の請求部分のみを認容し、その 余の請求を棄却すべきものとし、また、上告人が強制執行により支払を受けた金額 から右認容額を控除した差額二万八二五一円は過剰給付として被上告人に返還すべ きであるとして、被上告人の民訴法一九八条二項に基づく申立てのうち、同金額及 びこれに対する遅延損害金の支払を求める部分を認容した。  三 しかし、原審の右判断は、是認することができない。その理由は以下のとお りである。  上告人と被上告人との間の労働契約においては、被上告人は上告人に対しその退 職日とされる昭和五五年六月三〇日に退職金を支払うとの約定がされ、一方、被上 告人の就業規則には、退職金は「支給時の退職金協定による。」と定められている ところ、右上告人の退職日の時点では、上告人の属する外銀労と被上告人との間で 締結された本件退職金協定はすでに失効しており、これに代わる退職金協定は締結 されていないので、上告人の退職金額の決定についてよるべき退職金協定は存在し - 4 - ないこととなる。しかしながら、右労働契約上は、退職時に退職金の額が確定する ことが予定されているものというべきであり、右就業規則の規定も、被上告人が従 業員に対し退職金の支払義務を負うことを前提として、もっぱらその額の算定を退 職金協定に基づいて行おうとする趣旨のものであると解されるから、外銀労との間 で新たな退職金協定が締結されていないからといって、上告人について退職時にそ の退職金額が確定せず、したがって具体的な退職金請求権も発生し づいて行おうとする趣旨のものであると解されるから、外銀労との間 で新たな退職金協定が締結されていないからといって、上告人について退職時にそ の退職金額が確定せず、したがって具体的な退職金請求権も発生しないと解するの は相当でなく、労働契約、就業規則等の合理的な解釈により退職時においてその額 が確定されるべきものといわなければならない。  ところで、被上告人は、昭和五〇年一〇月九日付で、労働基準法(昭和六二年法 律第九九号による改正前のもの)八九条一項に基づき、従業員組合との間で昭和五 〇年六月二六日締結した前記退職金協定に係る協定書の写しを添付した就業規則変 更届を所轄労働基準監督署長に届け出ており、したがって、右退職金協定に定めら れた退職金の支給基準は、就業規則に取り入れられて就業規則の一部となったもの というべきである。そして、就業規則は、労働条件を統一的・画一的に定めるもの として、本来有効期間の定めのないものであり、労働協約が失効して空白となる労 働契約の内容を補充する機能も有すべきものであることを考慮すれば、就業規則に 取り入れられこれと一体となっている右退職金協定の支給基準は、右退職金協定が 有効期間の満了により失効しても、当然には効力を失わず、退職金額の決定につい てよるべき退職金協定のない労働者については、右の支給基準により退職金額が決 定されるべきものと解するのが相当である。そうすると、従業員組合との間の右退 職金協定は昭和五三年一二月三一日に失効したが、それに伴い就業規則が変更され た事実は認められないから、上告人については、右就業規則所定の退職金の支給基 準(本件退職金協定に定められた退職金の支給基準と同一である。)の適用がある というべきである。 - 5 -  被上告人は、原審において、労働組合法一七条により、昭和五九年七月二五日従 業員組合との間 準(本件退職金協定に定められた退職金の支給基準と同一である。)の適用がある というべきである。 - 5 -  被上告人は、原審において、労働組合法一七条により、昭和五九年七月二五日従 業員組合との間で締結された昭和五五年度退職金協定が外銀労の組合員たる上告人 にも遡及的に拡張適用されるべきであると主張しているが、既に発生した具体的権 利としての退職金請求権を事後に締結された労働協約の遡及適用により処分、変更 することは許されないというべきであるから、右拡張適用の有無について判断する までもなく、右主張は理由がないといわなければならない。なお、被上告人は、従 業員組合との間で締結した前記昭和五五年度及び同五六年度の各退職金協定に基づ き就業規則の変更を行い、昭和五九年八月二一日各協定書の写しを添付した各就業 規則変更届を所轄労働基準監督署長に届け出ているが、右就業規則の変更について も、同様の理由により遡及効を認めることはできない。  四 そうすると、原審が、上告人について、昭和五〇年一〇月九日付で届け出ら れた前記就業規則所定の退職金の支給基準を適用せず、従業員組合との間で締結さ れた昭和五五年度退職金協定が遡及的に拡張適用されるとし、同退職金協定に基づ き退職金額を確定すべきものとしたのは、労働契約及び就業規則の解釈、適用を誤 った違法があるものといわなければならず、右違法は原判決の結論に影響を及ぼす ことが明らかであるから、この点をいう論旨は理由があり、原判決中上告人敗訴部 分は破棄を免れない。そして、原審の確定した事実関係のもとにおいては、上告人 の本件退職金請求はすべて理由があるから、これを認容した第一審判決は結論にお いて正当であり、右判決に対する被上告人の控訴は理由がないので棄却すべきであ る。なお、原審における被上告人の民訴法一九八条二項に基づく申立ては、本 て理由があるから、これを認容した第一審判決は結論にお いて正当であり、右判決に対する被上告人の控訴は理由がないので棄却すべきであ る。なお、原審における被上告人の民訴法一九八条二項に基づく申立ては、本案判 決の変更されないことを解除条件とするものというべきであるから、右控訴を棄却 する以上判断を必要としないものである(最高裁昭和五一年(オ)第一九号、第二 〇号同年一一月二五日第一小法廷判決・民集三〇巻一〇号九九九頁参照)。  附帯上告代理人岡本秀夫の上告理由について - 6 -  被上告人が上告人に提示したと主張する金額は、上告人に支払われるべき前記退 職金額に満たないから、被上告人が右主張金額の提供をしたとしても債務の本旨に 従った弁済の提供ということはできず、上告人に受領遅滞の責任があるとする被上 告人の主張は理由がない。この点に関する原審の判断は、結論において正当であり、 原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。  よって、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、八九条に従い、裁判官 全員一致の意見で、主文のとおり判決する。      最高裁判所第一小法廷          裁判長裁判官    佐   藤   哲   郎             裁判官    角   田   禮 次 郎             裁判官    大   内   恒   夫             裁判官    四 ツ 谷       巖             裁判官    大   堀   誠   一 - 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