主文 1 原判決を次のとおり変更する。 2 控訴人らは,被控訴人に対し,連帯して,37万8739円及びこれに対する平成12年8月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,第1,2審を通じ,これを4分し,その3を被控訴人の,その余を控訴人らの,各負担とする。 5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴の趣旨(1) 原判決中,控訴人ら敗訴部分を取り消す。 (2) 被控訴人の請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,第2審とも被控訴人の負担とする。 2 控訴の趣旨に対する答弁(1) 本件控訴を棄却する。 (2) 控訴費用は控訴人らの負担とする。 第2 事案の概要 1 次項に当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決「第2 事案の概要」欄に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決4頁2行目「ことはなかった。」を「ことはなく,治療費を支払うこともなかった。また,控訴人Aは,控訴人Bの使用者として賠償責任がある。」と改める。 2 当事者の主張(1) 控訴人らア説明義務違反について控訴人Bは,被控訴人に対し,乙4の写真みならず,何回もレーザー照射をすることにより徐々に入れ墨が消失している事例の写真(乙3)をも示し,何回も照射をしなければならないことを説明している。乙4は一例にすぎず,乙4自体も,入れ墨が消失しているわけではなく,控訴人Bは,1回の照射ではそのように残ることを説明している。乙4を示したことをもって過失があるということはできない。 また,控訴人Bは,被控訴人に 体も,入れ墨が消失しているわけではなく,控訴人Bは,1回の照射ではそのように残ることを説明している。乙4を示したことをもって過失があるということはできない。 また,控訴人Bは,被控訴人に対し,レーザー治療に関するパンフレット(乙6)を渡しており,これには,レーザー治療には根気がいること,3,4回と治療を重ねていくうちに効果が現れてくることなどが記載されており,控訴人Bがそのような説明をしたことは明らかである。 控訴人Bは,入れ墨消去の方法としてレーザー照射と剥皮手術とがあること及びそれぞれの方法の長所と短所について説明しており,このことは説明に約30分をかけていることからも明らかである。 控訴人Bは,被控訴人に対してレーザー照射した日の翌日に,紹介者であるC医師に礼状(乙8)を出しており,そこでは,照射は数ヵ月毎に数回繰り返す必要がある旨記載しており,控訴人Bが被控訴人に対して同趣旨の説明をしていたことは明らかである。 控訴人Bは,被控訴人に対し,試験照射の必要性及びその費用について,その記載があるパンフレット(乙7)を利用して説明し,半分ほど治療をした際にも,治療を中断して,費用について大丈夫かを確認している。 イ過失相殺について仮に控訴人Bになんらかの説明義務違反があるとしても,上記の事情からすれば,被控訴人には過失があり,賠償額につき斟酌されるべきである。 (2) 被控訴人ア説明義務違反についてレーザー照射による治療費の総額は,何回の照射を必要とするのか及び1回の照射に何ショットを要するかが分からなければ算定できないものであり,これらを推計するために試験照射がされるものであるのに,控訴人Bは,1ショット900円という説明をしたのみで,試験照射を勧めた事 回の照射に何ショットを要するかが分からなければ算定できないものであり,これらを推計するために試験照射がされるものであるのに,控訴人Bは,1ショット900円という説明をしたのみで,試験照射を勧めた事実はなく,試験照射という言葉自体も使用していない。治療途中で費用負担につき確認されたことはない。そのような段階で確認したところで治療費の算定に意味はなく,体力的に全部照射に耐えられるかを確認されたものにすぎない。 イ過失相殺について控訴人Bと被控訴人とは医師と患者の関係にあり,対等の立場にはない。医師の説明がない状態で患者側から医師に説明を求めることは事実上困難であり,被控訴人に過失はない。 第3 当裁判所の判断 1 治療法等についてまず,入れ墨消去のための治療法等についてみるに,証拠(乙1ないし5,6の1・2,乙7,原審控訴人B本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の点が認められる。 (1) 入れ墨消去のための治療法は,剥皮手術とレーザー照射治療がある。 (2) 剥皮手術は,入れ墨のある皮膚を剥皮して,入れ墨を消去する方法であり,早期に消去できる点や治療費が比較的安価な点(約30万円)は優れているが,ケロイド状の手術痕が残るのが難点である。 (3) レーザー照射による治療は,青アザ用レーザー(宝石のアレキサンドライトから発振されるレーザー)によるもので,特殊の場合(例えば,入れ墨が金属系色素による場合,金属が高温となり,深いヤケドを起こす危険がある。)を除いて,皮膚に傷やその他の後遺症を残す心配はない点で優れている。しかし,治療費は,照射個数1個(スポット直径3ミリメートル)につき900円であり,比較的広い範囲にわたって彫られ密度も高い入れ墨の治療費は,1回分のものでさえかなりの高額となる上,墨の量や体質によ かし,治療費は,照射個数1個(スポット直径3ミリメートル)につき900円であり,比較的広い範囲にわたって彫られ密度も高い入れ墨の治療費は,1回分のものでさえかなりの高額となる上,墨の量や体質によって治療の効果も異なり,6,7回にわたってレーザー照射をしないと入れ墨消去という治療効果がみられない場合もある。 通常は,試験照射をして,当該入れ墨についての照射回数及びこれに応じた治療費を推計する。 2 被控訴人の治療経過等についてまた,被控訴人の診察と治療の経過について,証拠(甲1ないし8,乙1ないし5,原審証人D,原審被控訴人本人,原審控訴人ら各本人)及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。 (1) 被控訴人は,17,18歳ころの平成10年ころ,その左背面上部の肩胛骨を覆うほどの広さに,機械彫りの方法により入れ墨をしたが,間もなくこれを後悔し,被控訴人の父Dの知人であるC医師の紹介により,E形成外科で入れ墨を消去する治療を受けることとした。 (2) 被控訴人は,平成11年9月28日,Dとともに,F市内にあるE形成外科を訪れ,控訴人Bの診察を受けた。 (3) 控訴人Bは,被控訴人及びDに対し,レーザー照射の方法による場合と剥皮手術の方法による場合とについて,それぞれの治療経過を示す写真の画像をコンピュータディスプレイに表示して説明した(乙3はその全てを,乙4,5はその一部を,それぞれプリントアウトしたものである。)。 レーザー照射による場合の1例として示した画像(乙3)は,照射前,照射直後,1回照射後,2回照射後,4回照射後,7回照射後のもの(全部で6葉)である。このうち,2回照射後のものは,入れ墨の一部が相当に薄くなっているものの,殆ど照射前に近い部分が残っている。4回照射後のものは,線状の入れ墨部 射後,4回照射後,7回照射後のもの(全部で6葉)である。このうち,2回照射後のものは,入れ墨の一部が相当に薄くなっているものの,殆ど照射前に近い部分が残っている。4回照射後のものは,線状の入れ墨部分は殆ど消去されているが,帯状の太い入れ墨部分は,薄くはなっているものの色素はなお残存している状態である。7回照射後のものは,帯状の部分を含め,殆ど消去された状態になっている。 もう1つの例として示した画像(乙4)は,上腕部にされた,いわゆる線彫りの図柄の入れ墨の写真(2葉)であり,うち1枚は,図柄の下半分について,線状の入れ墨部分の殆どが褪色ないし変色して薄茶色になっている。 (4) 被控訴人及びDは,上記の画像を見た上,剥皮手術による場合には施術後にケロイド状の傷痕が残っていたため,レーザー照射による消去の方法を選択希望した。 (5) 控訴人Bは,被控訴人らが遠方から来院していて何度も足を運ぶことを嫌がり,早期に治療をすることを希望していたため,試験照射をすることなく,同日中に本格照射をし,約半年後に2回目の治療をすることとした。 (6) 原告の入れ墨は,機械彫りによるもので,線ではなく面状に墨が入れられて密度が高く,かつ,深いものであるため墨の量が多く,同日,控訴人Bは,被控訴人の入れ墨全体に対し,合計約1500個のレーザー照射を行なった。その費用は,E形成外科の基準によれば135万円であったが,控訴人Bの裁量で,レーザー使用料を90万円とし,これに診察料3240円,衛生材料184円及びこれらに対する消費税を加えた合計94万8600円を請求し,Dは,端数の4万8600円を同日直ちに支払い,残金90万円は翌日に振り込みの手続をして支払った。 (7) Dは,上記の施術後半年以上を経過した平成12年5月ころになっても,予想 00円を請求し,Dは,端数の4万8600円を同日直ちに支払い,残金90万円は翌日に振り込みの手続をして支払った。 (7) Dは,上記の施術後半年以上を経過した平成12年5月ころになっても,予想したほどに入れ墨が消えていなかったためE形成外科に電話をし,更に様子をみるように言われたが,その後もさほどの変化がみられなかったため,平成12年7月ころに,再度電話をして控訴人Bらと話をした。 Dは,その際,見せられた治療例ほどには入れ墨が消失していないとして不服を述べ,これに対して控訴人Bは,1回でその程度になることを示すために見せたものではない旨,効きの悪い人もおり,回数は個人差がある旨,レーザー照射を続ければ消失する旨,何回も繰り返すことを告げたはずである旨反論した。Dは,控訴人Bが言うとおりであれば,何回も照射を繰り返し,その都度100万円を払うことになるのかと確認したところ,控訴人Bがこれを肯定した。その後,控訴人Aが電話を替わり,結局,診察をしてみないとわからないとして,診察をすることでその場は納まった。 (8) これを受けて,被控訴人とDは,平成12年8月5日にE形成外科で診察を受けたが,入れ墨が消えた程度について,効果が出ているとする控訴人Bと,消えていないとするDらとの間で押し問答となり,控訴人Aも加わり,最後には連絡を受けた警察官が臨場する事態となった。 なお,同日,被控訴人らは,上記の診察料として1650円(消費税込み)を支払った。 3 説明義務違反の存否について(1) 前記1,2に認定のとおり,レーザー照射の方法により入れ墨を消去する施術は,一方で,1回の治療において照射を要する個数が,入れ墨の範囲や密度等によって左右され,その効果も,患者の体質や墨の量などに応じて一様ではなく,相当の期間を挟ん 射の方法により入れ墨を消去する施術は,一方で,1回の治療において照射を要する個数が,入れ墨の範囲や密度等によって左右され,その効果も,患者の体質や墨の量などに応じて一様ではなく,相当の期間を挟んで数回にわたる照射をする必要がある場合もある。他方,照射の費用は,保険対象外であり,かつ,E形成外科においては,照射個数1個(スポット直径3㎜)につき900円とされており,1回の治療分の費用だけでも相当多額にのぼり(現に,被控訴人に対する治療においては,計算上135万円程度になっている。),これが多数回に及ぶ場合には,計算上は優に数百万円の規模になるものである。 以上のような照射個数や,照射回数ないし治療効果,ひいては治療に要する費用の総額を予測することは,素人には困難であって,医師においても実際に照射をしなければ具体的な予想をすることは困難であり,それ故に試験照射をすることが通例とされていることにかんがみれば,レーザー照射により入れ墨を消去する施術をするに当たっては,医師は,患者に対し,試験照射をした上で治療見込みについての具体的な予測を示すか,何らかのやむを得ない事情で試験照射をしないまま治療のための本格的照射を実施する場合には,1回あたりの治療に要する照射個数の概数は勿論,照射回数ないし治療効果,ひいては治療に要すると見込まれる費用の総額の大まかな規模について,患者がこれを予測ないし覚悟し得る程度に明確にその内容を説明すべき義務があるというべきである。 本件の場合,前記1及び2に認定の事実からすれば,控訴人Bは,被控訴人に対する治療を開始するにあたっては試験照射をしておらず,したがって,個別の症例に対する実証的で具体的な治療予測をたてることは困難であったはずのものであるから,1回当たりの施術に必要となる可能性のある費用額( 療を開始するにあたっては試験照射をしておらず,したがって,個別の症例に対する実証的で具体的な治療予測をたてることは困難であったはずのものであるから,1回当たりの施術に必要となる可能性のある費用額(照射個数の概数)のほか,上記のような一般的治療例を踏まえて,被控訴人の治療も,現段階ではどの程度の回数の照射を要するかを具体的に予測することは困難である旨,少なくとも一般的な治療例の回数を要する可能性があることを告げるだけではなく,被控訴人の場合は機械彫りの入れ墨治療であって,いわゆる線彫りでなく密度が高いことからすれば,乙3の如く7回程度の照射を要する可能性が十分にあること,費用的には,1回あたりでも100万円規模となり,治療費用の総額としては数百万円の規模になる可能性がある旨を,明確に説明すべきであったといわなければならない。 (2) この点につき,控訴人Bが施術をするに先立ち,被控訴人及びDに対し,レーザー照射による場合として2つの治療例の画像を示して説明し,そのうちには,7回の照射によりようやく入れ墨の全部が消失しているものが含まれていたことは前記認定のとおりであるほか,控訴人Bは,原審において,全体の照射個数は実際に照射してみないとわからない旨を照射前に説明し,上記の画像を示して何回も照射する必要があることや7回程度の照射が必要である旨を説明したほか,半分ほど照射した際にも,治療費の見込み額を伝えて大丈夫かどうか尋ねたとの供述をしている。 アしかし,控訴人Bが,一方で7回程度の照射を要した事例の画像(乙3)を見せていたとはいえ,他方で,1回目の照射後1,2年を経過した例であるとして乙4の画像をも見せており,同画像は,入れ墨の図柄の下半分について,線状の入れ墨部分の殆どが褪色ないし変色して薄茶色になっていて,1回の照射で同 他方で,1回目の照射後1,2年を経過した例であるとして乙4の画像をも見せており,同画像は,入れ墨の図柄の下半分について,線状の入れ墨部分の殆どが褪色ないし変色して薄茶色になっていて,1回の照射で同画像のような状態になるとすれば2回目の照射をすることによりほぼ消失することを期待させるようなものであり,これらの画像のみからすれば,上記の画像(乙3)もあくまで個別の治療例を示したにすぎないものというほかなく,被控訴人の入れ墨の消去にどの程度を要するかとの具体的見通しについて,乙4のようにはいかず,乙3のような治療を要する旨の説明をしたことを直ちに推認させるものではない。 この点,控訴人Bは,乙4の画像を見せた理由について,一方で,「1回ではこのように残る,1回で消えるわけではないことを示すためである」旨供述(原審)する。 しかし,その供述する説明の内容は,むしろ2回程度で消えることを予測させるものではあっても,更にそれ以上の回数の治療を要することを示すものとはいえないし,その供述のような目的で説明をするのであれば,乙4ではなく,乙3の事例でも十分であるはずである。控訴人B自身,他方では,1回照射でこれぐらいの状態になることもあるということで示したとも供述しているのであり,結局,控訴人Bが乙4の写真を示して説明した内容は,2回程度で消失するとの期待を強めるものにすぎず,その際に,そのような事例にもかかわらず,被控訴人の場合には乙3のような治療ないし数回程度の照射を覚悟する必要があることを説明したかのような上記控訴人Bの供述は直ちに採用できない。 イもっとも,証拠(乙6の1・2,7,原審被控訴人本人,同控訴人B本人)によれば,控訴人Bは,剥皮手術及びレーザー照射の方法についての説明をした際,パンフレット(乙6の1・2 採用できない。 イもっとも,証拠(乙6の1・2,7,原審被控訴人本人,同控訴人B本人)によれば,控訴人Bは,剥皮手術及びレーザー照射の方法についての説明をした際,パンフレット(乙6の1・2,乙7)を示しながら行ったこと,乙6の1には,「レーザー治療は根気がいります。中には1回の治療で,治療が終わることもありますが,3回,4回と治療を重ねて行ううちに治療効果が現れてきます。1年2年とかかることもありますので,根気よく治療をしてください。」との記載が,また,乙7には,「青アザ用レーザー」(控訴人Bは,被控訴人にこれを使用する旨は告げていた。)の項に,「茶アザ用レーザーのように1度の照射で効果を確認することはまれですが,2~3か月間隔で3~4回後にはほとんどの人で薄くなります。その後は照射する度に確実に薄くなっていきます。」との記載,及び,「試験照射保険適応(ただし,入れ墨・色素性母斑・黒子は保険適応されていません。料金¥55,000) 本格照射 ¥900×照射個数(スポット直径3㎜)」との記載があったことが認められる。 しかし,控訴人Bが説明に際して利用したパンフレットは,治療を受けようとする患者が,こうした書面を持ち帰るなどしてこれを読むなどの余裕がある場合であれば格別,少なくとも,医師の口頭説明に際して示された程度である場合には,医師の口頭説明の趣旨が重視され,必ずしも書面の内容を十分に理解するとは限らないのであるから,このような書面を示したからといって,書面を示す態様やこれに付随してされた口頭説明の内容その他説明の全体を離れて,その書面の内容通りの説明がされたもの,特に,個別の症例に対する治療見通しに関する医師の判断としてその書面の内容通りの説明がされたということもできない。 この点,控訴人B本人も,乙6 れて,その書面の内容通りの説明がされたもの,特に,個別の症例に対する治療見通しに関する医師の判断としてその書面の内容通りの説明がされたということもできない。 この点,控訴人B本人も,乙6について,「患者に対し,E形成外科で使用している機種の名前を正確に伝えるために渡している,全部を読むわけではなく,丸印をつけたりして渡している。」旨,また,乙7について,「治療費を説明するためのものであり,入れ墨については保険の適用がなく自費治療となる旨,治療費は,試験照射の費用は5万5000円であり,その後の治療は1スポット900円である旨の説明をした。」旨供述するに止まっている。その説明の内容は,治療機械や治療単価に関するものにすぎず,控訴人Bがこれらのパンフレットを示した際に,被控訴人の入れ墨の治療にどの程度の個数及び回数の照射を要するかについて言及したことを窺わせるものではない。 ウまた,照射途中で治療費について説明したとの控訴人Bの原審供述は,説明したとする金額自体が曖昧である上,その際の被控訴人の父Dとの具体的やりとりは,控訴人Bの原審供述によっても,「全部打ったら体に悪いんか。」と聞かれ,「治療の範囲として,別に体に影響を及ぼす範囲ではありません。」と答えると,「それなら全部やってくれ。」という返事であったというものであって,費用を念頭においたやりとりであったとはみられないこと,被控訴人本人も,「控訴人Bから,一度に入れ墨の全部分にレーザーを照射するか,半分ずつ照射するのかを聞かれ,何度も通院するのが嫌だったので一度に全部分に照射することを希望した。」旨の供述(原審)をしており,治療費が問題にされた形跡は窺われないことをも考慮すると,費用自体を説明したとの控訴人Bの上記供述は直ちには採用できない。 エ更に,乙8に することを希望した。」旨の供述(原審)をしており,治療費が問題にされた形跡は窺われないことをも考慮すると,費用自体を説明したとの控訴人Bの上記供述は直ちには採用できない。 エ更に,乙8には,レーザー照射は数ヵ月毎に数回繰り返す必要がある旨の記載があり,控訴人Bは,これをC医師に送付した旨供述(原審)するが,これがC医師に送付されていたとしても,控訴人Bがその記載内容のような理解・認識をしていたという事実以上に,その内容を被控訴人やDに対して,明確に説明していたことまでを直接推認させるものでもない。 (3) 以上のとおり,控訴人Bが上記の乙3の画像やパンフレットを示していたとしても,これによって,被控訴人の入れ墨の治療にどの程度の回数の照射を要するか,ひいては治療費用の総額がどのような規模のものになるかの見通しについて,これを明確に説明したとまでは認めることはできない。 他方,被控訴人は,控訴人Bから,「2回レーザー治療を受ければ入れ墨が消える。」旨はっきり言われたとの供述(原審)をしているほか,被控訴人の父Dと控訴人らとの間で紛争を生じたのが,1回目の治療を終えDが治療費を支払ってから半年以上を経過した時点であり,その発端は,Dが,被控訴人の入れ墨の状態について,少なくとも2回程度の照射では到底入れ墨が消失するとは思われない状態であったことを問題とし,これを控訴人Bに伝えたところ,同人が,何回も照射する必要があり,その都度100万円程度を支払う必要がある旨言及したことにあることを考慮すると,控訴人Bが,被控訴人の治療を開始する際に,被控訴人の入れ墨を消去するには少なくとも数回程度の照射を要する可能性があることを明確に説明していたとは認められず,これに反する控訴人Bの上記供述は採用できない。 結局,控訴人Bは る際に,被控訴人の入れ墨を消去するには少なくとも数回程度の照射を要する可能性があることを明確に説明していたとは認められず,これに反する控訴人Bの上記供述は採用できない。 結局,控訴人Bは,1照射の単価を説明したことまでは認められるものの,それ以上に,1回の施術に必要と見込まれる費用額のみならず,そのような治療をどの程度の回数実施することが見込まれるかについての明確な説明をせず,かえって,被控訴人やDの誤解を招くような言動をしていたものというべきであり,これらの点で説明義務違反があり,控訴人Aは,その使用者として,これに基づく損害について連帯して賠償すべき責任があるというべきである。 (4) そして,証拠(甲8,原審証人D)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人ないしDは,控訴人Bから上記のような説明を明確にされていれば,レーザー照射による方法を選択しなかったであろうと認められるところ,E形成外科では,レーザー使用料を90万円とし,これに診察料3240円,衛生材料184円及びこれらに対する消費税を加えた合計94万8600円を請求し,Dがこれを支払ったこと,Dは,その後の診察料として更に消費税を含めて1650円(合計95万0250円)を支払ったことは前記認定のとおりである。このうち初回の診察料及びこれに対する消費税の合計3402円を除く94万6848円は,控訴人Bの説明に不十分な点があったために被控訴人らがレーザー照射による方法を選択したことに基づく支出であり,被控訴人は同額の損害を被ったものと認められる。 なお,被控訴人の入れ墨は,治療前は,べっとりと面状に青黒い墨が入れられたものであった(乙1)が,1回の照射により,全体に墨が薄くなり,まだらになった(甲1,6)と認められ,それなりの効果を挙げたと認められるが,今後も同 ,治療前は,べっとりと面状に青黒い墨が入れられたものであった(乙1)が,1回の照射により,全体に墨が薄くなり,まだらになった(甲1,6)と認められ,それなりの効果を挙げたと認められるが,今後も同様の治療を継続しなければ,被控訴人にとって意味のある消去にまでは至らないことは明らかであるから,現段階においてはこの効果は被控訴人にとって価値のあるものとはいえず,これをもって損益相殺することはできない。 4 過失相殺について被控訴人及びDが,被控訴人の入れ墨の治療が2回程度で完了すると誤信したことが控訴人Bの説明内容に直接の原因があったとしても,被控訴人やDは,控訴人Bから,7回程度の照射を要した治療例の画像をも示されていたこと,説明に使用されたパンフレットには通常でも3ないし4回程度の照射を要することが記載されており,これらを読めば被控訴人の入れ墨の場合もそのような回数を要する可能性があることは理解できたはずであること,被控訴人やDは,緊急を要する施術ではないにもかかわらず,度々の訪院を嫌い,早期の治療開始を望むあまり,治療に要する費用の総額について把握できない状態であるのに,これらについて確認することがないまま同日中の治療を希望したこと,控訴人Bが試験照射をせずに直ちに本格照射をしたのも,そうした被控訴人らの要望を汲んだためであることなど前記認定の事実からすれば,被控訴人やDにおいて,入れ墨の治療が2回程度で完了すると考えるに至ったについては同人及びその父であるDの側にも少なからぬ落ち度があり,被控訴人の過失として,賠償すべき損害額の算定に当たり斟酌されるべきであるところ,その程度は,上記の事情にかんがみると6割とみるのが相当である。 したがって,控訴人らは,37万8739円(円未満切り捨て)を賠償すべきである。 5 な に当たり斟酌されるべきであるところ,その程度は,上記の事情にかんがみると6割とみるのが相当である。 したがって,控訴人らは,37万8739円(円未満切り捨て)を賠償すべきである。 5 なお,控訴人Aが警察に通報し誣告したことを理由とする損害賠償請求については,原審がこれを棄却したのに対して,被控訴人からは不服申立はないから,当審の判断の限りではない。 6 よって,上記認定と一部異なる原判決を変更することとし,訴訟費用の負担につき民訴法67条2項,64条,65条を,仮執行の宣言につき同法310条を適用して,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第3部裁判長裁判官下司正明裁判官檜皮高弘裁判官齋藤憲次
▼ クリックして全文を表示