令和3(ワ)52 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年1月28日 岡山地方裁判所
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判決文本文21,577 文字)

主文 1 被告は、原告に対し、218万3180円及びこれに対する令和2年5月1日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、これを10分し、その9を原告の負担とし、その余を 被告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求被告は、原告に対し、2958万9560円及びこれに対する令和2 年5月1日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の要旨被告は、原告の運営するホテルを新型コロナウイルス感染症の軽症者などの受入施設として借り上げるため、原告と賃貸借契約締結に向 けて交渉したが、最終的に賃貸借契約を締結しなかった。 本件は、原告が、被告には原告にホテルの賃貸借契約の締結が確実であると誤信させた契約締結上の過失がある旨を主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として損害金2958万9560円(ただし、最終的に主張する損害金は合計2828万1004円)及 びこれに対する不法行為日である令和2年5月1日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(証拠を掲記したもの以外は当事者間に争いがない。)(1) 原告は、旅館、ホテル、ビジネスホテルの経営等を目的とする株 式会社である。原告は、ビジネスホテルであるAホテル(本館(旧 館)60室、新館18室)を経営している(以下「原告ホテル」という。)。原告の代表取締役はBである(以下「原告代表者」という。)。 被告は、地方公共団体である。Cは、原告とのやり取りを被告側で行った担当者である(以下 を経営している(以下「原告ホテル」という。)。原告の代表取締役はBである(以下「原告代表者」という。)。 被告は、地方公共団体である。Cは、原告とのやり取りを被告側で行った担当者である(以下「C」という。)。 (2) 被告は、令和2年4月(以下、令和2年の出来事については年の 表記を省略する。)、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に備え、岡山県旅館ホテル生活衛生同業組合を通じて、新型コロナウイルス感染症患者のうち無症状病原体保有者や軽症者(以下、これらをまとめて「新型コロナ軽症者等」という。)の受入に関する調査の実施を開始した。 (3) 原告は、4月22日ころ、被告に対し、新型コロナ軽症者等の受入施設として原告ホテルを提供する旨申し出た(甲5)。 (4) 被告は、4月28日、原告に対し、賃貸借契約書(案)を送付した。同案は、5月1日から7月31日までの期間、賃料2160万円(消費税額及び地方消費税額を含む。)として、原告ホテルの本館 を原告が賃貸し、被告が賃借する旨の内容であった(以下「本件賃貸借契約書案」といい、この内容の契約を「本件賃貸借契約」という。)。(甲6)(5) 被告は、5月1日、原告に対し、本件賃貸借契約を締結しないことを伝えた。 3 争点及び当事者の主張(1) 被告に契約締結上の過失があるか(争点1)(原告の主張)原告は、4月15日及び4月17日、被告から、新型コロナ軽症者等の受入れについて申入れを受けた。原告は受入れ可能との回答 をした。4月27日及び4月28日、被告担当者であるC及びD病 院などの医療関係者が原告ホテルを訪問して現地確認をした。原告は、4月27日、Cに対して、5月1日から3か月間の宿泊客の予約をキャンセルしてよいかと 28日、被告担当者であるC及びD病 院などの医療関係者が原告ホテルを訪問して現地確認をした。原告は、4月27日、Cに対して、5月1日から3か月間の宿泊客の予約をキャンセルしてよいかと聞き、Cからキャンセルしてくださいとの回答を得たうえで、キャンセルをした。原告は、4月28日、被告から本件賃貸借契約書案の提示を受けた。原告は、Cから、借 入期間を含め今後の予想が難しいので、遡り契約としてもらいたいとの申し出を受けた。原告は、再度正式な契約を望んだところ、Cから、遡り契約は契約年月日を事後に確定して記入するし、契約内容は間違いないと確約を受けた。原告は、被告の要請に従い、設備を導入した。ところが、原告は、5月1日、Cから、突然、口頭で、 契約しない旨を告げられた。 原告は、契約内容は間違いないとCから確約を受け、Cの意向により、本件賃貸借契約成立を前提にして、新型コロナ軽症者等受入れのため、人員や設備の体制を整えた。被告は、原告に本件賃貸借契約の成立が確実である旨の誤信をさせた契約締結上の過失があ る。 (被告の主張)本件賃貸借契約は、新型コロナ軽症者等の宿泊療養のための宿泊施設確保・運営を目的とした前例のないものであり、賃料も3か月で2000万円を超えており、非常に重要性を有するものであった。 そこで、被告は、賃借するかどうかを決定する前に、金銭条件だけでなく、厚生労働省が作成したマニュアルを参考にして、感染予防対策、室内設備等の整備状況、宿泊施設の従業員に協力を得られる業務内容、経費や支払のルール等多岐にわたる内容について確定もしくはほぼ全体について合意される必要性があり、一定の交渉期間 が必要であった。被告が原告と施設の借り上げを目的として原告ホ テル従 や支払のルール等多岐にわたる内容について確定もしくはほぼ全体について合意される必要性があり、一定の交渉期間 が必要であった。被告が原告と施設の借り上げを目的として原告ホ テル従業員が従事する業務内容や施設内部の確認など契約準備に向けた交渉を開始したのは4月27日で、4日後の5月1日には契約締結を見送る旨を伝えており、被告においてことさらに交渉期間を長引かせたことはない。なお、被告は、4月28日、原告に本件賃貸借契約書案を送付しているが、これは4月27日に原告から案 でいいので、契約書を早く送ってほしいとの要望を受けたからである。本件賃貸借契約書案はあくまでもたたき台としての案であり、当事者間で契約締結に向けた具体的な協議を開始するために交付されたものにすぎず、詳細は今後詰める必要があった。その送信票においても、庁内未調整のものであり、確定したものではないと断 っており、原告に対して本件賃貸借契約書案の内容が未確定であることを明示した。さらに、被告担当者であるCは、借入期間を含め今後の予想が難しいと明言している。岡山県内で初めて新型コロナウイルス感染症患者の発生が確認されたのは3月22日で、月別感染者数は、3月4人、4月18人、5月2人、6月1人であった。 被告としては感染拡大に備える必要性はあったが、候補の施設の設備等を詰めずにとりあえず療養施設を確保しておくといったことはありえなかった。岡山県知事も、4月24日の記者会見で、手を挙げた施設と必ず契約をするわけではなく、条件の合った施設から契約を進めている旨の発言をしている。 以上のような状況であったから、5月1日の段階で、原告が本件賃貸借契約締結について高度の期待が生じるような段階まで達していたとはいえない。原告は一般消費者ではな いる旨の発言をしている。 以上のような状況であったから、5月1日の段階で、原告が本件賃貸借契約締結について高度の期待が生じるような段階まで達していたとはいえない。原告は一般消費者ではなく商人であるから、5月1日の段階では借入期間を含めて契約内容がまとまっておらず、本件賃貸借契約が締結されないこともあり得ることは認識でき たはずであり、被告が信義則上の義務に反して原告の契約締結に対 する期待を侵害したことにはならない。被告には、契約締結に向けた交渉過程において本件賃貸借契約の成立が確実であると原告を誤信させた過失はない。 (2) 原告の損害(争点2)(原告の主張) ア逸失利益 2160万円(予備的に1572万2240円)(ア) 被告の原告ホテルの借上期間は5月1日から7月31日までであった。また、原告は新型コロナ軽症者等受け入れのため、3か月間の全ての顧客の予約をキャンセルし、6月に営業再開したが客足は戻らず、3か月間はほとんど開店休業状態であっ た。原告ホテルの過去4年の同時期の売上の平均値は4467万1667円であった。したがって、5月分から7月分までの逸失利益が2160万円(本件賃貸借契約の賃料相当額)を下回ることはない。 (イ) 仮に上記金額が認定されないとしても、原告は原告ホテル 本館を5月の1か月休業した。この1か月全室稼働した場合の売上は、次のとおり合計1965万2800円であるところ、ゴールデンウィークを含む5月については少なくとも80%の稼働が見込まれたから、原告には1572万2240円の損害が生じた。 なお、原告ホテルの稼働率は、令和元年5月は82.3%であった(本来は93.8%であったが、システムの一 の稼働が見込まれたから、原告には1572万2240円の損害が生じた。 なお、原告ホテルの稼働率は、令和元年5月は82.3%であった(本来は93.8%であったが、システムの一時ダウンにより集計困難となった。)。同年6月は92.8%、同年7月は95.1%であり、いずれも80%を超えていた。原告ホテルの客は、E大学やF等再開発事業の建設に伴う工事関係者が 多く、新型コロナウイルス感染症の拡大等による行動自粛の影 響は限定的であった。 a 原告ホテル本館の1日の通常利用料 56万8000円シングル4,000 円×16 室+セミダブル6,000 円×31 室+ダブル8,000 円×5 室+スタンダードダブル9,000 円×4 室+スタンダードツイン9,000 円×3 室+エグゼクティブ 15,000 円×1 室+会議室100,000 円×1 室+CAFE 貸切100,000 円×1 室=568,000 円b ゴールデンウィーク料金(30%アップ・10日間) 738万4000円568,000 円×1.3×10 日間=7,384,000 円 c 週末料金(10%アップ・6日間) 374万8800円568,000 円×1.1×6 日間=3,748,800 円d 平日料金(15日間) 852万円568,000 円×15 日間=8,520,000 円e 小計 1965万2800円 イ各種設備工事代金 668万1004円原告は、原告ホテルを新型コロナ軽症者等の受入施設として賃貸するために、被告の要請を受けて、次のとおり、設備等を導入するための費用を要した。 (ア) 電話内線工事 60万3900円 原告 新型コロナ軽症者等の受入施設として賃貸するために、被告の要請を受けて、次のとおり、設備等を導入するための費用を要した。 (ア) 電話内線工事 60万3900円 原告ホテルの危機管理上、迅速確実な連絡を取ることが従業員の新型コロナウイルス感染予防のために必要不可欠である。 留守番電話も、確実にメッセージを受け取りするために必要であるなど、新型コロナ軽症者等受入のために必要な工事である。 (イ) インターホン設備工事費用 7万0950円 2階換気用窓改造費用 11万円 1階通用口入口鍵交換工事費用 2万6730円これらについては、被告担当者であるCから、5月1日から賃貸借を開始させ、しかも遡り契約で行うと明言を受けており、もともと時間に余裕のなかった原告側が施工を急がせるのは当然であり、過失相殺は行われるべきではない。 (ウ) 館内放送設備費用及び電動シャッター整備費用 10万8064円休業看板デザイン 27万9400円原告ホテルに館内放送設備はあったが、客のために静粛性が強く要求されていて、その能力は十分なものではなかった。原 告は、本件賃貸借契約のために、既存設備よりも強化した内容の設備が必要であり、そのための工事を行った。 電動シャッターや看板(臨時休業を知らせる内容のもの)は、新型コロナ軽症者等の受入や保守を考えれば当然必要な設備であり、直接要請しなかったというのは責任逃れである。 (エ) リネン類 538万9560円原告ホテルで使用していたリネン類(ベッドカバー、掛け布団及び敷布団。以下、これらを「リネン類」という。)はホテル仕様の高価なものであった。原 (エ) リネン類 538万9560円原告ホテルで使用していたリネン類(ベッドカバー、掛け布団及び敷布団。以下、これらを「リネン類」という。)はホテル仕様の高価なものであった。原告は、これらの在庫は使用せず、使い捨て用のリネン類を別途購入する必要があった。原告は、 規格にあうリネン類を用意できる業者を探したが、どの業者も用意してくれず、特定非営利活動法人G(以下「G」という。)が急遽リネン類を調達してくれたのでこれを購入した。新型コロナウイルス感染者の発生数は予測困難であるため、原告は、ある程度余裕をもった数量を準備していた。原告は、5月1日 には既にリネン類を購入して引き取り済みであり、キャンセル などできなかった。これらのリネン類は、通常の客室に出す品質ではなかったため、再利用できず、令和2年10月ころ、Gに依頼して廃棄した。 (オ) フロント引越し 9万2400円原告ホテル本館において5月1日に新型コロナ軽症者等の 受入れを開始させるに当たり、原告従業員と新型コロナ軽症者等との物理的な距離を確保するために、別館にフロントを移転させることが必要であった。 ウ合計 2828万1004円(被告の主張) ア逸失利益について仮に、被告に本件賃貸借契約締結交渉段階における信義則違反が認められるとしても、その場合の損害は、本件賃貸借契約が締結されると信頼して原告が現に支弁した費用等の実損害、いわゆる信頼利益に限られ、履行利益はその損害に含まれない。契約開 始予定日以降の宿泊料相当の逸失利益は履行利益にあたるから損害の範囲に含まれない。 原告が原告ホテル本館を営業していた場合の営業利益相当額をもって損害と 損害に含まれない。契約開 始予定日以降の宿泊料相当の逸失利益は履行利益にあたるから損害の範囲に含まれない。 原告が原告ホテル本館を営業していた場合の営業利益相当額をもって損害ということができるとしても、原告の主張する逸失利益は過大である。原告は、6月に本館の営業を再開しているか ら、6月以降は原告に損害が生じていない。また、原告は5月中休業しているが、宿泊施設にキャンセルは不可避であり、キャンセルにより空きが出ても再び予約を受け付けて他に賃貸することが可能であるから、1か月も休業して他に賃貸する機会を喪失することはない。被告が賃借する予定の施設は原告ホテル本館 (60室)のみであり、原告は、5月以降も原告ホテル別館(1 8室)を稼働させ、利用客・予約客の振替を行うことになっていた(そのために本館にあったフロントを別館に移転している。)。 原告は4月30日に全予約をキャンセルしたと主張するが、予約件数によっては別館で対応できるのであり、全キャンセルをする必要はなかった。 なお、岡山県内のビジネスホテルの5月の客室稼働率は28. 1%(前年である令和元年5月は84.3%)、全国でも20.3%(令和元年5月は75.8%)と落ち込んでいた。予約客のキャンセルは新型コロナウイルス感染症の拡大等による行動自粛の影響と推察されるし、原告が主張する8割の稼働率は過大である。 原告に限って岡山県平均や全国平均を大きく上回っていたとの証明はされておらず(原告が主張する令和元年の原告ホテルの稼働率は同時期のビジネスホテルの稼働率と近似している。)、40%を超える稼働率であったとは考えられない。 イ各種設備工事代金について 被告は、新型コロナ軽症者等受入の施設を 率は同時期のビジネスホテルの稼働率と近似している。)、40%を超える稼働率であったとは考えられない。 イ各種設備工事代金について 被告は、新型コロナ軽症者等受入の施設を借り上げるに当たっては、借上期間が短く、契約終了後に原状回復して返還することに鑑み、当該施設を現状のまま借り上げて、改装工事は原則としてしないこととしていた。 (ア) 電話内線工事について 被告は、4月27日に原告ホテルを視察した際に、2階フロアに外線ともつながる内線電話を2台設置するように要望した。原告は、増設用本体側ボードを2台増設しているが、1台で複数の回線を接続できることから過剰の工事をしている。また、被告が原告に留守番電話設定を要望したことはない。被告 は別途携帯電話を用意してそれを活用することとしていた。し たがって、少なくとも、増設用本体側ボード1台及び留守番電話の設定工事費用は、相当因果関係のある損害ではない。 また、原告は交渉開始直後で本件賃貸借契約がまとまらないリスクが存在していたにもかかわらず、具体的な工事内容や実施時期について被告の明確な指示を待たずに、工事等を先行さ せたものである。原告には相当の落ち度があるから、大幅な過失相殺がなされるべきである。 (イ) インターホン設備工事費用、2階換気用窓改造費用及び1階通用口入口鍵交換工事費用について被告は、4月27日に原告ホテルを視察した際に、これらの 工事等を行うことを原告に要望した。 ただし、原告は交渉開始直後で本件賃貸借契約がまとまらないリスクが存在していたにもかかわらず、具体的な工事内容や実施時期について被告の明確な指示を待たずに、工事等を先行させ 望した。 ただし、原告は交渉開始直後で本件賃貸借契約がまとまらないリスクが存在していたにもかかわらず、具体的な工事内容や実施時期について被告の明確な指示を待たずに、工事等を先行させたものである。原告には相当の落ち度があるから、大幅な 過失相殺がなされるべきである。 (ウ) 館内放送設備費用、電動シャッター整備費用及び休業看板デザイン費用について被告は、館内放送設備については、原告から設備があり、一斉放送も可能との回答を受け、既にある設備を使わせて欲しい と要望した。新たに費用を支出してまで設備の整備を依頼したことはない。 また、被告は、原告に対し、1階フロント電動シャッターの整備及び休業看板の製作等を要望したことはない。 したがって、これらは相当因果関係のある損害ではない。 (エ) リネン類について 被告は、原告ホテルの視察の際に、原告に対し、新型コロナ軽症者等が実際に使用したリネン類を事後に買い取る旨の説明をした。宿泊療養の実施において、新型コロナ軽症者等が使用したリネン類につき、クリーニング事業者を見つけることができず、廃棄せざるを得ない例が見られたからである。 にもかかわらず、原告は、被告に事前に相談なく、4月27日に500万円超という高額なリネン類を発注した上、5月1日にキャンセルすることができなかった理由も示さないまま、そのリネン類全部を未使用のまま廃棄したとして購入費用全額を被告に請求している。なお、原告にリネン類を売却し、さ らにその廃棄をしたというGは、平成29年4月以降事業活動をしておらず、リネン類を取り扱っている業者ではないし、廃棄物処理業者でもない。原告の主張す ている。なお、原告にリネン類を売却し、さ らにその廃棄をしたというGは、平成29年4月以降事業活動をしておらず、リネン類を取り扱っている業者ではないし、廃棄物処理業者でもない。原告の主張するリネン類の取引があったかは不明である。 したがって、これらは相当因果関係のある損害ではない。な お、原告は購入したリネン類を既に使用しているものと考えられ、損害はてん補されている。 (オ) フロント引越し費用について前記のとおり、被告が賃借する予定の施設は原告ホテル本館のみであり、原告は、5月以降も原告ホテル別館を稼働させる ため、本館にあったフロントを別館に移転している(その後、フロントを本館に戻したようである。)。 原告は交渉開始直後で本件賃貸借契約がまとまらないリスクが存在していたにもかかわらず、具体的な工事内容や実施時期について被告の明確な指示を待たずに、工事等を先行させた ものである。原告には相当の落ち度があるから、大幅な過失相 殺がなされるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(被告に契約締結上の過失があるか)について(1) 認定事実前記前提事実のほか、証拠(各認定事実の後に掲記する。)及び弁 論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア 4月7日、新型コロナウイルス感染症の感染拡大等に伴い東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に緊急事態宣言が発出された。被告は、4月10日、岡山県旅館ホテル生活衛生同業組合を通じて、新型コロナ軽症者等受入に関する調査を開 始した。(乙15、証人C)イ原告は、4月14日、原告ホテルを新型コロナ軽症者等の受入施設として提供する旨申し出た。このとき、原告 を通じて、新型コロナ軽症者等受入に関する調査を開 始した。(乙15、証人C)イ原告は、4月14日、原告ホテルを新型コロナ軽症者等の受入施設として提供する旨申し出た。このとき、原告代表者は、被告担当者であるCに、閉館を考えていたところに、県が新型コロナ軽症者等の受入施設を募集しているとの情報を得たため、閉める 前に役に立ちたいと思い、原告ホテルを提供すると述べた。(乙8、14、15、証人C)ウ被告は、4月15日、原告に対し、原告ホテルの平面図を送付し、令和元年度の平均客室稼働率を教示するよう求める書面をFAXで送信した。また、被告は、同日、受入要請があってから受 入まで最低どれくらいの日数が必要か、原告ホテルの現地確認をさせてもらえるかについて原告に確認する書面をFAXで送信した。原告は、被告に原告ホテルの平面図を送るなどして対応した。(甲1ないし3、乙15、証人C)エ Cは、4月16日、医師及び保健師とともに原告ホテルを訪れ て現地確認を行い、原告ホテルの部屋の様子などを確認した。原 告代表者は支配人とともに対応した。(乙15、証人C)オ被告は、4月17日、原告に対し、新型コロナウイルス感染症に係る軽症者等の受入についてと題する書面、申出書、申出書の記載例をFAXで送信した。新型コロナウイルス感染症に係る軽症者等の受入についてと題する書面には、新型コロナ軽症者等が 療養する施設の借上げに協力を申し出た施設の中から受入施設を選定するために、4月23日までに申出書に必要事項を記入して提出するようお願いする旨、受入施設の選定については、当該申出書に記載された事項を総合的に勘案した上で決定することとしている旨が記載されていた。原告代表者は、4月21日ころ、 申出 記入して提出するようお願いする旨、受入施設の選定については、当該申出書に記載された事項を総合的に勘案した上で決定することとしている旨が記載されていた。原告代表者は、4月21日ころ、 申出書を被告に提出した。原告代表者は、その後、Cに対し、選定状況はどうか等の電話を数回したが、Cはその都度検討中である旨回答した。(甲4、5、乙15、証人C)カなお、被告は、4月20日時点で、合計21施設(1864部屋)から新型コロナ軽症者等の受入施設としての協力の申出を受 けていた。被告は、申出のあった業者に対し、借上が可能な時期のほか、施設の設備や備品の設置状況、借上時の運営方法について確認を行い、今後必要に応じて現地確認を行うとともに、宿泊療養を円滑に行うことができる受入施設を確保する方針としていた。また、被告は、4月21日、新型コロナウイルスの感染拡 大を受けて、新型コロナ軽症者等を受け入れる宿泊施設について、200室を当面の目標として確保する方針を明らかにした。(甲12、乙4、15、証人C)キ Cは、4月27日午前中、他の被告職員とともに計4名で原告ホテルに赴き、原告代表者、H(原告代表者から原告の危機管理 等について相談を受けていた人物。以下「H」という。)及び経理 担当者他1名の計4名と打合せをし、借上開始が可能な時期(5月1日希望)や条件(月720万円で3か月間1棟の借上等)、運営方法(従業員が防護服を着用するか、食事の提供及びゴミ袋の回収を従業員に依頼するか、従業員には感染者と相対しない作業のみを依頼するか等)について確認した。Cは、原告に対し、原 告ホテルを宿泊施設として運用することをお願いしたいなどと述べた。Cほかの被告職員は、同日午後、看護協会の理事らやIの医師等医療関係 のみを依頼するか等)について確認した。Cは、原告に対し、原 告ホテルを宿泊施設として運用することをお願いしたいなどと述べた。Cほかの被告職員は、同日午後、看護協会の理事らやIの医師等医療関係者、原告代表者らとともに原告ホテル内をグループに分かれて回り、ゾーニングの検討や、館内の構造及び設備の確認等を行った。原告は、感染対策としてのフロアの使い方、 担当従業員への教育、廃棄ゴミの処理手順等の具体的な指示を受けた。(甲73、乙2、15、証人C、証人H)ク Cらは、4月27日、原告ホテル内を確認した際に、原告代表者らに対し、本件賃貸借契約に当たり、契約終了後原状回復をして返す予定であるから、工事はなるべくしない方針であることを 伝えた。もっとも、Cらは、原告代表者らに対し、必要最低限の工事として、県の詰所とする原告ホテル2階ロビーに外線とも繋がる内線電話を2台設置すること、宿泊客が勝手に出入りしないように鍵を新たに設けること、インターホンを設けること、原告ホテル2階ロビーの開閉できない窓について換気のため開閉で きるようにすること、フロントのある原告ホテル本館1階部分を宿泊療養者受入れのために使用することを要望した。また、Cは、原告に対し、リネン類について、使用済みのリネン類は被告が引き取って処分をする、買替になるので新しく購入する分については被告が費用を支払う旨を伝えた。(乙2、15、証人C) ケ原告は、4月27日、株式会社Jに原告ホテル2階ロビー仮設 電話機増設工事等を発注して施工し、有限会社Kにインターホン設備工事を発注して施工し、Lに鍵交換工事を発注して施工した。 (甲35の1、36の1、38の1)。 コ他方、原告は、Cに対し、案でよいので契約書を早く送って欲しいと要望した 会社Kにインターホン設備工事を発注して施工し、Lに鍵交換工事を発注して施工した。 (甲35の1、36の1、38の1)。 コ他方、原告は、Cに対し、案でよいので契約書を早く送って欲しいと要望した。Cは、4月28日、原告に対し、FAX送信票 において、庁内未調整のものであり確定したものではない旨を断った上で、本件賃貸借契約書案を送付した。本件賃貸借契約書案は、賃借物件を原告ホテル本館、賃貸借期間を5月1日から7月31日まで(3条1項)、同期間の賃料を2160万円(消費税額及び地方消費税額を含む。)(5条1項)とするものであったが、 契約締結日は未記入であり、原告が提供する諸サービスの内容について具体的な記載がなく、被告と原告の押印もされていなかった。(甲6、乙15、証人C。なお、原告は、このころ、Cから本件賃貸借契約を遡り契約とすることとして、原告との本件賃貸借契約について確約をした旨を主張し、原告代表者及び証人Hは同 旨の供述をするところ、Cは遡り契約という話題が出たこと自体は否定するものではないものの、あくまで5月1日の契約締結を目指していた旨供述し、他にCが本件賃貸借契約を遡り契約として契約締結を確約したことを示す的確な証拠はない。そうすると、この点の原告の主張等を採用することはできない。) サ Cは、4月30日、原告ホテルに赴き、今後の日程や契約条件についての確認をした。原告代表者、支配人及び経理担当者の3名が対応した。Cは、本件賃貸借契約の締結が確定的となれば、5月2日にマスコミの内覧会を実施する方向で庁内で調整している旨原告に伝え、当日のマスコミ対応についての問い合わせを した。(甲73、乙15、証人C、証人H) シ被告は、5月1日午前、原告ホテルの部屋が狭小であり、 庁内で調整している旨原告に伝え、当日のマスコミ対応についての問い合わせを した。(甲73、乙15、証人C、証人H) シ被告は、5月1日午前、原告ホテルの部屋が狭小であり、たばこ臭があることを理由に、原告と本件賃貸借契約を締結することを見送る方針とした。Cは、かかる方針を受けて、同日、原告ホテルに赴き、原告代表者に対し、本件賃貸借契約を締結しないこととなった旨を伝えた。(甲73、乙15、証人C、証人H) ス被告は、5月7日、大型連休中に岡山市の施設と契約し公表する予定であったが、部屋のタバコの臭いが強いなどの理由で断念した旨公表した。また、岡山県知事は、同日、記者会見において、「外出できない患者の精神的な負担にならないよう、部屋が広めの別の施設を探している。場所も岡山市に限らない。」と話した。 (甲13)(2) 被告は、4月14日、原告から、原告ホテルを新型コロナ軽症者等の受入施設として提供する旨の申し出を受け(前記(1)イ)、4月27日には担当者であるCほかが原告ホテルに赴いて本件賃貸借契約締結に向けての具体的な交渉を行い、4日後の5月1日に借上 開始を希望する旨を原告代表者ほかに伝えている(前記(1)キ)。原告は、4月27日に被告から原告ホテル2階ロビーに内線電話を2台設置することなどの要望を受けたことから(前記(1)ク)、これを受けて、同日のうちに業者に原告ホテル2階ロビー仮設電話機増設工事等を発注して施工している(前記(1)ケ)。原告は、4月28日 には、原告の要望を受けてのものではあるが、被告から本件賃貸借契約書案の送付を受けており(前記(1)コ)、その後、5月1日に被告から原告に本件賃貸借契約を締結しないこととなった旨が伝えられるまで、本件賃貸借契約書案にお てのものではあるが、被告から本件賃貸借契約書案の送付を受けており(前記(1)コ)、その後、5月1日に被告から原告に本件賃貸借契約を締結しないこととなった旨が伝えられるまで、本件賃貸借契約書案において示された賃貸期間や賃料額についてこれらを変更する方向での協議がなされたことはうか がわれない。さらに、4月30日には、本件賃貸借契約の締結が確 定的となった場合の内覧会の実施やマスコミ対応についても話し合われている(前記(1)サ)。 これらの事情等によれば、原告と被告との間の本件賃貸借契約締結に向けての交渉は相当に成熟していたものであり、被告の庁内での了解を得れば、おおむね本件賃貸借契約書案のとおりの内容で本 件賃貸借契約の締結に至る段階にあったということができ、原告においては、本件賃貸借契約が締結されることは確実であると合理的な期待を抱いていたものと認められる。また、前記のとおり、原告は、被告の依頼を受けて、契約締結前ではあったが契約締結後に必要となる工事等を先行して発注したものであり、被告は、原告の信 頼を惹起させる対応を行ったものといわなければならない。 そうすると、被告は、正当な理由のない限り、本件賃貸借契約締結に向けての原告の合理的な期待に反した行動をしてはならないとの信義則上の義務を負っていたものと認めるのが相当である。 しかるに、被告は、5月1日、突如、原告と本件賃貸借契約を締 結することを見送る方針とし、その旨を原告に伝えたものである(前記(1)シ)。被告によれば、原告ホテルの部屋が狭小であり、たばこ臭があることが本件賃貸借契約締結を見送った理由とされるが(前記(1)シ、ス)、これらの事情等は遅くとも4月27日に原告ホテル内を確認した際までには判明していたものと考 ルの部屋が狭小であり、たばこ臭があることが本件賃貸借契約締結を見送った理由とされるが(前記(1)シ、ス)、これらの事情等は遅くとも4月27日に原告ホテル内を確認した際までには判明していたものと考えられるの であり、これらをもって正当な理由があるということもできない。 そうすると、被告が本件賃貸借契約を締結することを見送る方針としてこれを原告に伝えたことは、本件賃貸借契約締結に向けての原告の合理的な期待に反した行動をしてはならないとの信義則上の義務に違反するものといわなければならない。 (3) これに対し、被告は、原告に対して、事前に原告の他にも借上の 候補があり、その候補の中から基準に従って選定することは伝えていたし、原告は一般消費者ではなく商人であるから、5月1日の段階では、借入期間を含めて契約内容がまとまっておらず、本件賃貸借契約が締結されないこともあり得ることは認識できたはずである旨を主張する。 しかし、被告(Cら)は、4月27日に原告ホテル内の確認をした際に、原告(原告代表者ら)に対し、必要最低限の工事として、原告ホテル2階ロビーに外線とも繋がる内線電話を2台設置することなど、複数の具体的な要望を伝えている(前記(1)ク)。これに先立ち、被告は、希望する借上開始時期が4日後の5月1日である 旨も原告に伝えていること(前記(1)キ)などを踏まえると、原告が4月27日のうちに業者に工事を発注して施工したこと(前記(1)ケ)は合理的な対応であったということができるし、原告においては、かかる具体的な状況の下、本件賃貸借契約が締結されることは確実であるとの期待を抱いたものと認められるし、かかる期待は合 理的なものであったと評価することができる。 この点の被告の主 、かかる具体的な状況の下、本件賃貸借契約が締結されることは確実であるとの期待を抱いたものと認められるし、かかる期待は合 理的なものであったと評価することができる。 この点の被告の主張は採用することができない。 (4) 以上によれば、被告は、本件賃貸借契約締結に向けての原告の合理的な期待に反した行動をしてはならないとの信義則上の義務に違反したものであり、契約締結上の過失があると認められる。 2 争点2(原告の損害)について(1) 逸失利益 175万円ア原告は、本件賃貸借契約で予定されていた賃貸借期間は5月1日から7月31日までの3か月であったこと、原告は新型コロナ軽症者等受入のため、3か月間の全ての顧客の予約をキャンセル したこと、原告ホテル本館は6月に営業再開したが客足は戻らず、 3か月間はほとんど開店休業状態であったこと、原告ホテルの過去4年の同時期の売上の平均値は4467万1667円であったことなどを挙げて、5月から7月までの3か月分の逸失利益は本件賃貸借契約の賃料相当額である2160万円を下らない旨を主張する(逸失利益に関する主位的主張)。 しかし、原告ホテル本館は、5月の1か月は休業したが、6月には営業再開したものと認められ、少なくとも営業再開後の6月及び7月についても原告が本来得られるべき利益を得られなかったと当然に認められるものではない。 また、原告の法人事業概況説明書によれば、原告の売上は、次 のとおりであったものと認められる(甲65、66)。 令和元年令和2年5月 12,705,000 円 2,681,000 円6月 10,792,000 円 3,817,00 る(甲65、66)。 令和元年令和2年5月 12,705,000 円 2,681,000 円6月 10,792,000 円 3,817,000 円7月 10,926,000 円 5,838,000 円 他方で、観光庁の行った宿泊旅行統計調査によると、岡山県及び全国のビジネスホテルの客室稼働率は、次のとおりであったものと認められる(乙3の1・2・3・6・9、11)。 岡山県(全国)令和元年令和2年 5月 84.3%(75.8%) 28.1%(20.3%)6月 84.2%(74.3%) 45.5%(32.0%)7月 82.2%(76.1%)これらによれば、原告の5月の売上のみならず、6月及び7月の各売上についても、前年である令和元年5月ないし7月のそれ らに比して大幅に減っているということはできるが、これは岡山 県ないしは全国のビジネスホテルの客室稼働率の減少傾向と軌を一にしており、新型コロナウイルス感染症等の影響とも考えられるところである。 以上によれば、原告の逸失利益に関する主位的主張(5月から7月までの3か月分の逸失利益として本件賃貸借契約の賃料相 当額である2160万円の損害が生じた旨の主張)を採用することはできない。 イ(ア) 一方で、原告は、原告ホテル本館を5月の1か月休業したところ、この1か月分の逸失利益として、全室稼働した場合の売上のうち稼働が見込まれた80%分に相当する1572万2 240円の損害が生じた旨を主張する(逸失利益に関する予備的主張)。 (イ) 確かに、原告は、5月 して、全室稼働した場合の売上のうち稼働が見込まれた80%分に相当する1572万2 240円の損害が生じた旨を主張する(逸失利益に関する予備的主張)。 (イ) 確かに、原告は、5月1日に被告から本件賃貸借契約を締結しないと伝えられたものの、原告ホテル本館を新型コロナ軽症者等の受入施設とするために準備を進めていたこともあって、 6月に営業を再開するまで、1か月間にわたり、原告ホテル本館を休業したものと認められる。そうすると、原告において、5月に原告ホテル本館を営業したならば得られたはずの利益については、被告の契約締結上の過失と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 (ウ) そこで検討すると、原告が提出する調査報告書等(甲62の1・2)によれば、原告ホテル本館については、いつの時点でのものかは必ずしも判然としないものの、5月につき、1860室(60室×31日)中、1189室の予約(うち直接予約が563室、残りはインターネット予約)がなされていたこと がうかがわれる。このうちインターネット予約については新型 コロナウイルス感染症等の影響により取り消され、あるいは取り消される可能性が相当程度あったと考えられるが、直接予約については、長期連泊予約や団体予約などがされており、その多くが宿泊予約者の業務上の必要性に基づく宿泊予約であると解されるから、新型コロナウイルス感染症等の影響を踏まえ ても、なお予約が維持され宿泊に至った蓋然性があるということができる。かかる直接予約563室は原告ホテル本館の客室稼働率でいうと約30%に相当するところ、5月における岡山県内のビジネスホテルの平均稼働率28.1%に近似する割合となっている。 さらに見ると、調査報告 は原告ホテル本館の客室稼働率でいうと約30%に相当するところ、5月における岡山県内のビジネスホテルの平均稼働率28.1%に近似する割合となっている。 さらに見ると、調査報告書等(甲62の1・2)によれば、これらの直接予約563室の内訳は、シングル(4000円)416室、セミダブル(6000円)55室、ダブル(8000円)31室、スタンダードダブル又はスタンダードツイン(9000円)35室、エグゼクティブ(1万5000円)26室 であり、その室料合計は294万7000円となる(各室料につき甲20。なお、甲20によればシングルは4100円とあるが、原告が4000円と主張していることにかんがみ、4000円を採用する。)。 この点、原告は、ゴールデンウィーク料金は30%アップで あり、週末料金は10%アップである旨を主張するところ、宿泊料金のご案内(甲20〔3枚目〕)に休日前、年末年始、ゴールデンウィークは料金が変動する旨の記載があることは認められるが、具体的な割増率についてはこれを認めるに足りる的確な証拠はない。また、前年である令和元年5月の売上入金表 (甲21)を見ると、ADR(客室平均単価)が最低料金であ るはずのシングルの室料4000円を下回る日が複数見受けられ(システム障害があったという同月5日から12日を除いても、同月19日(日)が2833円、同月20日(月)が3690円、同月26日(日)が2817円、同月27日(月)が3815円及び同月31日(金)が3578円となってい る。)、室料については相応の割引などもなされていたことがうかがわれる。そうすると、5月を通じて定価室料以上の売上を得られた蓋然性があるとは認められない。原告は、会議室料金やCA となってい る。)、室料については相応の割引などもなされていたことがうかがわれる。そうすると、5月を通じて定価室料以上の売上を得られた蓋然性があるとは認められない。原告は、会議室料金やCAFE貸切料金も計上するが、会議室の使用やCAFEの貸切が発生した蓋然性があるとは認められない。 なお、原告においては、5月においても原告ホテル別館(18室)を通常営業するなどし、268万1000円の売上を上げたものであるところ(甲66)、前記の原告ホテル本館の予約分の一部を原告ホテル別館において受け入れるとの対応をした可能性も考えられる。 これらの事情等を総合考慮すると、原告においては、被告の契約締結上の過失がなければ、原告ホテル本館を営業して、原告ホテル別館による売上268万1000円とは別に、おおよそ250万円の売上を上げることができたものと認めるのが相当である。 (エ) 他方で、原告は、原告ホテル本館を営業できなかったことにより、原告ホテル本館を営業していれば支出していた費用、いわゆる変動費を免れているものと解されるから、当該変動費については、損害から控除されるべきである。 原告の第13期(平成30年11月1日から令和元年10月 31日)の損益計算書(甲68の2〔10枚目〕)によると、売 上高9883万9162円に対し、変動費と捉える余地のあるものは4558万3810円であり(消耗品費62万5460円、旅費交通費3万5146円、外注費2706万3140円及び衛生費1786万0064円の合計。その他、水道光熱費のうち基本料金を除く部分は変動費と捉える余地があるが、基 本料金とそれ以外の内訳が不明であるため、ここでは計上しない。)、売上高 0円及び衛生費1786万0064円の合計。その他、水道光熱費のうち基本料金を除く部分は変動費と捉える余地があるが、基 本料金とそれ以外の内訳が不明であるため、ここでは計上しない。)、売上高に占める割合はおおよそ46%と試算される。これらの中に必ずしも変動費とは捉えられないものが含まれている可能性があることを考慮すると、原告の売上の約30%が変動費と見るのが相当である。 (オ) 以上を踏まえると、原告の逸失利益として、次のとおり、175万円を被告の契約締結上の過失と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 2,500,000 円×(1-0.3)=1,750,000 円ウ以上のとおり、原告の逸失利益として175万円が認められる。 (2) 各種設備工事代金ア電話内線工事 13万3100円被告は、4月27日、原告ホテルの視察の際、原告ホテル2階のフロアに外線とつながる内線電話を2台設置することを要望した。原告は、これを受けて、同日、株式会社Jに対し、2階ロ ビー仮設電話機増設工事(増設用本体側ボード2台、内線専用電話機2台)を発注し、株式会社Jは、同日、同工事を施工した。 また、原告は、株式会社Jに対し、留守番機能増設工事も発注し、株式会社Jは、4月28日、同工事を行った。株式会社Jは、5月10日付けで原告に対し、合計60万3900円を請求し、原 告は、6月10日、株式会社Jに対し、同額を支払った。(甲35 の1・2)前記のとおり、原告は、被告から内線電話を2台設置してほしい旨の要望があったことを受けて、2階ロビー仮設電話機増設工事を発注・施工したものである。ただし、被告が、増設用本体側ボードの増設は2台ではな 記のとおり、原告は、被告から内線電話を2台設置してほしい旨の要望があったことを受けて、2階ロビー仮設電話機増設工事を発注・施工したものである。ただし、被告が、増設用本体側ボードの増設は2台ではなく1台で足りる旨を主張して争うの に対し、原告は的確な反論・立証を行わない。そうすると、2階ロビー仮設電話機増設工事の費用23万3200円(消費税込み)のうち、増設用本体側ボード1台分の増設費用10万0100円(消費税込み)を除いた13万3100円につき、被告の契約締結上の過失と相当因果関係のある損害と認められる。 また、原告は、留守番機能増設工事も発注・施工しているが、同工事については、被告が要望したことを裏付ける的確な証拠はないし、本件賃貸借契約を締結して新型コロナ軽症者等を受け入れるために必要な工事であったとは認められない。したがって、同工事費用は、被告の契約締結上の過失と相当因果関係のある損 害とは認められない。 イインターホン設備工事費用、2階換気用窓改造費用及び1階通用口入口鍵交換工事費用 20万7680円被告が、4月27日に原告ホテルを視察した際に、これらの工事等を行うことを原告に要望したことは当事者間に争いがなく、 原告は、これらの工事の費用として合計20万7680円(インターホン設備工事費用7万0950円、2階換気用窓改造費用11万円、1階通用口入口鍵交換工事費用2万6730円)を支払ったものと認められる(甲36の1・2、37の1・2、38の1・2、63)。 そうすると、20万7680円全額を被告の契約締結上の過失 と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 ウ館内放送設備費用、電動シャッター整備費用及び休業看板デザ そうすると、20万7680円全額を被告の契約締結上の過失 と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 ウ館内放送設備費用、電動シャッター整備費用及び休業看板デザイン費用 0円原告は、館内放送設備費用及び電動シャッター整備費用として要した10万8064円、休業看板デザイン費用として要した2 7万9400円が損害に当たる旨を主張する。 しかし、原告ホテルには、従前から館内放送設備が存在し、全館への館内放送が可能であったことが認められ(甲5)、被告が原告に新たに館内放送設備の設置を求めたとは認められない。また、前記のとおり全館への館内放送が可能であったことに照らすと、 新たに館内放送設備を設置することが本件賃貸借契約を締結して新型コロナ軽症者等を受け入れるために必要であったとも認められない。 また、被告が原告に対し、電動シャッターの整備や休業看板の製作等を要望したことを裏付ける的確な証拠はないし、これらが 本件賃貸借契約を締結して新型コロナ軽症者等を受け入れるために必要なものであったとも認められない。 したがって、これらの費用は、被告の契約締結上の過失と相当因果関係のある損害とは認められない。 エリネン類 0円 原告は、新型コロナ軽症者等受入のため、使い捨てのリネン類を、急遽、Gから538万9560円で購入したが、本件賃貸借契約が締結できず、通常の客室に出す品質ではなかったため、10月ころ、Gに依頼して廃棄したとして、リネン類購入費用538万9560円が損害である旨を主張し、その証拠であるとして、 Gの5月20日付け請求書(甲8の1〔9頁〕、16)、M銀行の 10月5日付け振込金受取書(甲 リネン類購入費用538万9560円が損害である旨を主張し、その証拠であるとして、 Gの5月20日付け請求書(甲8の1〔9頁〕、16)、M銀行の 10月5日付け振込金受取書(甲17)、M銀行の同月6日付け振込金受取書(甲18)、G理事N作成の書面(甲26)、G理事長Oの陳述書(甲43)などを提出する。 しかし、被告の担当者であるCは、原告に対し、使用済みのリネン類は被告が引き取って処分をする、買替になるので新しく購 入する分については被告が費用を支払う旨を伝えていたものであるところ(証人C)、そうであれば、原告においてリネン類を新たに購入する必要性はなかったといわなければならない。 そして、Gは公園遊具等の点検などの事業を行う特定非営利活動法人であり、リネン類の販売や廃棄物の処分などの事業を行う ものではない(乙5、6)。また、Gは、事業報告書によれば、4月1日から令和3年3月31日まで、事業活動を行っておらず、支出も収入もなかったものとされており(乙7)、10月に原告から538万9560円の支払を受けたかは疑問である。原告が、Gにリネン類購入費用の振込支払をしたのも、請求を受けてから 4か月余り後である10月になってからというのも唐突で不自然である。 原告は、4月27日の原告ホテルの視察の際に、被告から新たなリネン類を保管する棚を用意するよう言われ、実際に用意したとも主張するが、そのような発言があったことを裏付ける的確な 証拠はない。 以上によれば、原告がGからリネン類を購入したとは認められない。 オフロント引越し費用 9万2400円被告は、4月27日、原告ホテルの視察の際、原告に対し、フ ロントのある原告ホテル 原告がGからリネン類を購入したとは認められない。 オフロント引越し費用 9万2400円被告は、4月27日、原告ホテルの視察の際、原告に対し、フ ロントのある原告ホテル本館1階部分を宿泊療養者受入れのた めに使用することを依頼した。原告は、これを受けて、有限会社Pに対し、フロントの引越し作業等を依頼し、有限会社Pは、フロントを本館から別館へ引越しする作業を行い、その後、フロントを別館から本館に戻す作業を行った。有限会社Pは、5月26日、原告に対し、前記引越費用として9万2400円を請求し、 原告は、6月2日、有限会社Pに対し、同額を支払った。(甲42の1・2、乙2)そうすると、9万2400円全額を被告の契約締結上の過失と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 カ過失相殺について 被告は、原告は交渉開始直後で本件賃貸借契約がまとまらないリスクが存在していたにもかかわらず、具体的な工事内容や実施時期について被告の明確な指示を待たずに、工事等を先行させたものであり、相当の落ち度があるから、大幅な過失相殺がなされるべきである旨を主張する。 しかし、被告は、新型コロナ軽症者等の受入施設の確保のために、原告と本件賃貸借契約を締結しようと交渉していたものであり、被告のみならず原告においても、5月1日に迫った本件賃貸借契約の締結日に向けて、迅速な対応が求められていたものと認められる。このような状況等においては、原告において、本件賃 貸借契約の締結に先立って工事の発注等を行ったこともやむを得ない対応であったというべきである。原告に特段の落ち度があったとはいえず、損害の衡平な分担の見地からしても、原告の損害につき過失相殺を適用すべきとはい 結に先立って工事の発注等を行ったこともやむを得ない対応であったというべきである。原告に特段の落ち度があったとはいえず、損害の衡平な分担の見地からしても、原告の損害につき過失相殺を適用すべきとはいえない。 キ各種設備工事代金の合計 43万3180円 (3) 合計 218万3180円 3 結論以上によれば、原告の請求は、民法709条に基づく損害賠償として損害金218万3180円及びこれに対する不法行為日である令和2年5月1日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由 がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 岡山地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官大嶺崇 裁判官小山裕子 裁判官工藤光大

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