令和7(ネ)10046 特許侵害差止等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和7年11月27日 知的財産高等裁判所 4部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 令和5(ワ)70563
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令和7年11月27日判決言渡令和7年(ネ)第10046号特許侵害差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和5年(ワ)第70563号)口頭弁論終結日令和7年10月7日判決 控訴人株式会社キーソフト(以下「控訴人会社」という。) 控訴人 X(以下「控訴人X 」という。)上記両名訴訟代理人弁護士河部康弘藤沼光太上記両名補佐人弁理士塩野谷英城 被控訴人株式会社サンカクキカク 同訴訟代理人弁護士中村亮介 田中規平木上貴裕同補佐人弁理士宇野智也主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 (略語は、本判決で別途定めるもののほか、原判決の例による。)第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、控訴人会社に対し、1100万円及びこれに対する令和5年 10月13日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 3 被控訴人は、控訴人X に対し、550万円及びこれに対する令和5年10月13日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 4 被控訴人は、原判決別紙被告システム目録記載のシステムを使用してはならない。 第2 事案の 0万円及びこれに対する令和5年10月13日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 4 被控訴人は、原判決別紙被告システム目録記載のシステムを使用してはならない。 第2 事案の要旨 1 本件は、発明の名称を「取引管理システムおよび取引管理プログラム」とする本件特許(特許第6675598号)に係る本件特許権の特許権者である控訴人らが、被控訴人に対し、被告システムが本件特許に係る本件発明(請求項1記載の発明)の技術的範囲に属し、被控訴人による被告システム の使用が本件発明の実施に該当すると主張して、特許法100条1項に基づき、被告システムの使用の差止めを求めるとともに、民法709条に基づき、控訴人会社に対しては損害金1100万円(特許法102条2項により算定される損害金1000万円及び弁護士費用100万円)、控訴人X に対しては損害金550万円(同条3項により算定される損害額500万円及び弁 護士費用50万円)及びこれらに対する令和5年10月13日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 原審は控訴人らの請求を全部棄却する判決をしたところ、これを不服とする控訴人らが控訴を提起した。 第3 前提事実 1 前提事実は、原判決「事実及び理由」第2の2(2頁~)に記載するとおりであるから、これを引用する。同前提事実のうち、本件発明の構成要件の分説を後記2に再掲する。 2 本件発明の構成要件の分説A 下流取引者からの発注を受け、前記下流取引者を特定するための情報と、 前記発注された商品を特定するための情報とに基づき、前記下流取引者から中間取引者へ宛てた第1の発注情報を作成する手段と、B 前記中間取引者から上流取引者へ 下流取引者を特定するための情報と、 前記発注された商品を特定するための情報とに基づき、前記下流取引者から中間取引者へ宛てた第1の発注情報を作成する手段と、B 前記中間取引者から上流取引者へ宛てた第2の発注情報を、前記第1の発注情報に基づき前記第1の発注情報の作成と連動して自動的に作成する手段とを含む、 C 前記下流取引者のコンピュータ、前記中間取引者のコンピュータ、複数の前記上流取引者のコンピュータのそれぞれに、ネットワークを介して接続される取引管理システム。 第4 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件の争点及びこれに関する当事者双方の主張は、当審における当事者双 方の追加的及び補充的主張を後記2のとおり加えるほか、原判決「事実及び理由」第2の3及び第3(4頁~)に記載のとおりであるから、これを引用する。 2 当審における当事者双方の追加的及び補充的主張(1) 争点1-1(被告システムは「中間取引者」に相当する構成を備えてい るか(構成要件AないしC))について(控訴人らの主張)ア本件発明における「中間取引者」とは、有償無償を問わず「下流取引者」から直接又は間接に商品の発注を受け、商品の受発注の流れにおいて「下流取引者」と「上流取引者」との間に介在する者をいう。 被告システムにおいて、寄附者は、地方団体及び返礼品を選択した上 で寄附者情報を入力して寄附の申込みをすることによって、地方団体に対し、返礼品の発注行為を行っている。したがって、ふるさと納税を前提とする被告システムにおける地方団体は、寄附者から返礼品の発注を受け、商品に相当する返礼品の受発注の流れにおいて、「下流取引者」に相当する寄附者と、「上流取引者」に相当する事業者との間に介在する者 に当たる。 における地方団体は、寄附者から返礼品の発注を受け、商品に相当する返礼品の受発注の流れにおいて、「下流取引者」に相当する寄附者と、「上流取引者」に相当する事業者との間に介在する者 に当たる。 イ原判決は、「中間取引者」が「下流取引者」と「上流取引者」の中間に存在し、段階的な売買契約を行う者であると限定しているが、請求項1には、「発注」や「取引」が売買契約その他の有償契約に限られる旨の記載はない。本件明細書【0003】【0141】にはエスクロー(取引保 全)や仲介のような、「下流取引者」と「中間取引者」との間において売買契約を締結することを前提としない場合の説明が記載されているから、原審の解釈は特許請求の範囲に記載されていない限定を加えるものである。本件発明は取引管理システムに関する発明であり、その解決すべき課題は、複数の取引者間での商品取引における課題であり、売買取引に おける課題に限られない。 仮に有償契約に限定されるとしても、寄附者は、どの返礼品を受け取るかを前提に寄付金額を決定しているのであるから、ふるさと納税の寄附と返礼品の間には、実質的に対価関係が認められ、有償契約に当たる。 ウまた、原判決は、被告システムにおいては、地方団体が当該発注情報 を受領した上で事業者に対して通知等を行うことは予定されていないから、「上流取引者」に対する発注行為が存在しないと判断する。しかし、被告システムにおいて、寄附者は地方団体に対して返礼品の発注を行い、当該発注情報に基づき、自動的に事業者に対してメールが送信されるのであるから、被告システムは地方団体の事業者への発注行為を代替して いるとみるべきである。 (被控訴人の主張)本件発明は、本件明細書【0008】【0009】記載の構成により、 であるから、被告システムは地方団体の事業者への発注行為を代替して いるとみるべきである。 (被控訴人の主張)本件発明は、本件明細書【0008】【0009】記載の構成により、【0006】【0007】記載の課題を解決しているため、「中間取引者」が行う各取引が売買取引に限定されることは明らかである。 本件明細書【0141】に、「中間取引者」が行う各取引が売買取引に限 定されない実施例が記載されているとしても、かかる実施例には「第1の発注情報」の内容及び「第2の発注情報」の内容に関する記載が一切ない以上、本件発明の技術的範囲に属していると認めることはできない。 さらに、返礼品のないふるさと納税に係る寄附も存在するから、寄附と返礼品との間には対価関係は存在しない。 第5 当裁判所の判断 1 当裁判所も、控訴人らの請求は、理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は、以下のとおりである。 2 本件明細書の記載事項等本件明細書の記載は、原判決「事実及び理由」第4の1(1)(10頁~)に 記載のとおりである。これによれば、本件発明につき、次のような点が開示されているものと認められる。 (1) 商品の流通には、商品の生産者から末端消費者までの間に、卸業者や小売業者等が介在し、複数の取引者が段階的に関与することが多いところ、従来の販売仲介者用システムでは、顧客からの注文内容及び発送先のデータを仲 介しているだけであり、販売仲介者と商品提供者との商品の取引に関する処理が自動的に行われる構成とはなっておらず、注文処理は行うことができても、実際の取引の伝票管理は別途行う必要があり、依然として管理に手間がかかるという問題があった(【0002】、【0006】)。 (2) 本件発明は、段階 とはなっておらず、注文処理は行うことができても、実際の取引の伝票管理は別途行う必要があり、依然として管理に手間がかかるという問題があった(【0002】、【0006】)。 (2) 本件発明は、段階的な複数の取引者間での商品の取引の伝票管理を簡易に することができる取引管理システムを提供するために、取引者であるユーザ から商品の発注指示を受けると、その発注指示に基づく発注処理を管理することになり、下流取引者が入力する発注情報を受け付けると、当該下流取引者を特定するための情報、発注された商品を特定するための情報等を受け付け、発注数量や販売価格等を包含する発注情報を作成する等といった手段を用いることで、下流取引者から中間取引者へ宛てた第1の発注情報を作成し、 また、当該第1の発注情報に基づくことで、その作成と連動させて自動的に中間取引者から上流取引者へ宛てた第2の発注情報を作成するものであり、これらをネットワークを介して行うことができるようにしたものということができる(【0007】、【0008】、【0044】、【0045】)。 (3) このようなシステムによって、下流取引者から発注があった場合に、下流 取引者から中間取引者への発注伝票を発行するだけでなく、中間取引者から上流取引者への発注伝票も自動的に発行することができ、段階的な複数の取引者間での発注管理等、商品の取引の伝票管理を簡易にすることができる(【0009】、【0016】、【0020】)。 3 争点1(被告システムが本件発明の技術的範囲に属するか)について (1) 争点1-1(被告システムは「中間取引者」に相当する構成を備えているか(構成要件AないしC)当裁判所も、本件発明における「中間取引者」とは、商品受取者である「下流取引者」及び商品発送 (1) 争点1-1(被告システムは「中間取引者」に相当する構成を備えているか(構成要件AないしC)当裁判所も、本件発明における「中間取引者」とは、商品受取者である「下流取引者」及び商品発送者である「上流取引者」という各末端取引者の中間に介在し、「下流取引者」から対象商品の売買について発注を受け、そ れを踏まえて「上流取引者」に当該商品の売買について発注を行う者を意味するところ、被告システムにおいて、地方団体は、寄附者から特定の商品の売買について発注を受ける者に当たらず、また、これを踏まえて事業者に対して商品の売買についての発注を行う者にも当たらないと判断する。 その理由については、後記アのとおり補正し、後記イのとおり当審におけ る控訴人らの追加的及び補充的主張に対する判断を付加するほか、原判決 「事実及び理由」第4の2(1)ア及びイ(15~18頁)に記載のとおりであるから、これを引用する。 ア原判決の補正原判決16頁3行目から17頁5行目までを次のとおり改める。 「 また、中間者として行う商品取引の性質という観点からみると、本件 明細書における上記記載に加え、「商品IDおよび上流取引者IDに対応づけて上流取引者IDで特定される上流取引者による商品の販売価格である第1の販売価格を記憶するとともに、商品IDおよび中間取引者IDに対応づけて当該中間取引者による商品の販売価格である第2の販売価格を記憶する価格記憶部と、…発注管理部が受け付けた発注数量およ び第2の販売価格に基づき、下流取引者から中間取引者への発注伝票を発行する」(【0008】)、「商品IDで特定されるある商品について、ある中間取引者がその商品を購入する先の上流取引者およびその上流取引者が当該商品を販売する第1の販売価格を 間取引者への発注伝票を発行する」(【0008】)、「商品IDで特定されるある商品について、ある中間取引者がその商品を購入する先の上流取引者およびその上流取引者が当該商品を販売する第1の販売価格を取引設定情報記憶部および価格記憶部に登録しておくことにより、取引管理システムは、下流取引者 から発注があった場合に、中間取引者と上流取引者との間の商品の販売価格も把握することができる。そのため、下流取引者から中間取引者への発注伝票を発行するだけでなく、中間取引者から上流取引者への発注伝票も自動的に発行することができる。」(【0009】)、「発注管理部118は、下流取引者の下流取引者IDおよび商品IDをキーとして、取 引設定情報記憶部144および価格記憶部146から、その商品を当該下流取引者に販売する発注先の中間取引者の中間取引者IDおよび販売価格も発注情報として取得する。」(【0045】)等の記載を併せ考慮すれば、本件発明における商品取引においては、商品の対価として金銭のやり取りがされることが予定されており、売買契約(ないし少なくとも その他の有償取引)が想定されていると解するのが相当である。 したがって、これらの各記載からすれば、本件発明において「中間取引者」とは、商品受取者である「下流取引者」及び商品発送者である「上流取引者」という各末端取引者の中間に介在して、特定の商品について、下流取引者から対象商品の売買について発注を受け、それを踏まえて上流取引者に当該商品の売買について発注を行う者のことを意味す るということができる。」イ当審における控訴人らの追加的及び補充的主張に対する判断(ア) これに対し、控訴人らは、本件発明における「中間取引者」とは、有償無償を問わず「下流取引者」から商品の発注 いうことができる。」イ当審における控訴人らの追加的及び補充的主張に対する判断(ア) これに対し、控訴人らは、本件発明における「中間取引者」とは、有償無償を問わず「下流取引者」から商品の発注を受ける者をいうとし、この発注行為には、売買契約の申込みの意思表示のみならず、贈 与や寄附といった無償行為に係る申込みの意思表示も含まれる旨主張する。 しかしながら、本判決で補正の上引用する原判決「事実及び理由」第4の2(1)アのとおり、本件明細書【0008】【0009】【0045】には、「下流取引者」への販売につき、販売価格が設定されること などが記載されており、他に、贈与や寄附といった無償行為を対象とすると読める記載は存在しない。加えて、本件発明が解決しようとする課題は、前記2(2)で述べたとおり、段階的な複数の取引者間での伝票管理を容易にすることにあるから、本件発明は、商品の対価として金銭のやり取りを伴う取引を対象としていると考えるのが自然である。 したがって、控訴人らの上記主張は採用できない。 (イ) また、控訴人らは、仮に「中間取引者」が「下流取引者」から受ける発注が、売買契約(ないし少なくとも他の有償取引)に係る申込みの意思表示に限られるとしても、ふるさと納税の寄附と返礼品の間には、実質的な対価関係が認められるから有償契約に当たると主張し、 ふるさと納税一般において御礼(返礼)の内容が寄附金額に応じて一 律に定められていること(甲19)、総務省が地方団体に対し返礼品の返礼割合を3割以下とするように求めていること(甲16)等の事実を挙げる。 しかしながら、ふるさと納税制度において、地方団体による寄附者に対する物品の提供は、寄附者に対するいわば御礼(返礼)として行 われるもの ように求めていること(甲16)等の事実を挙げる。 しかしながら、ふるさと納税制度において、地方団体による寄附者に対する物品の提供は、寄附者に対するいわば御礼(返礼)として行 われるものであり、その性質が寄附金と対価関係を有しない無償行為にとどまることは、本判決で補正の上引用する原判決「事実及び理由」第4の2(1)イのとおりである。加えて、ふるさと納税制度を利用して寄附をする者は、地方団体に供与する経済的利益の全額を寄附金控除の対象となる寄附金と認識しているのであり、その全部又は一部を返 礼品の対価として支払っていると認識しているとは認められないから(乙1)、控訴人らの主張する事実によって、無償行為である寄附行為としての法的性質が変容するとは評価できない。 したがって、控訴人らの上記主張には理由がない。 (ウ) さらに、控訴人らは、被告システムにおいて、寄附者は地方団体に 対して返礼品の発注を行い、当該発注情報に基づき、自動的に事業者に対してメールが送信されるのであるから、被告システムは地方団体の事業者への発注行為を代替しているとみるべきであり、「上流取引者」に当該商品の売買について発注を行う者に該当する旨主張する。 しかしながら、本判決で補正の上引用する原判決「事実及び理由」 第4の2(1)イのとおり、被告システムにおいては、地方団体が、寄附者からの発注情報を受領した上で、これを踏まえて事業者に対して通知を行う過程は存在しないのであるから、地方団体は、「下流取引者」からの発注を踏まえて「上流取引者」に当該品の売買について発注を行う者には当たらない。 したがって、控訴人らの上記主張には理由がない。 (エ) 控訴人らのその余の主張も、いずれも前記の判断を左右するに足りる 当該品の売買について発注を行う者には当たらない。 したがって、控訴人らの上記主張には理由がない。 (エ) 控訴人らのその余の主張も、いずれも前記の判断を左右するに足りるものとは認められない。 よって、控訴人らの請求は、その余の点について検討するまでもなく、理由がない。 第6 結論 以上によれば、控訴人らの請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判官 岩井直幸 裁判官 安岡美香子 裁判長裁判官増田稔は、差し支えにつき署名押印することができない。 裁判官 岩井直幸

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