主文 被告人を死刑に処する。 理由 【被告人の身上,経歴】被告人は,徳島県三好郡a村で,Aを父,Bを母として出生し,地元の小中学校を卒業後,親元を離れて下宿しながら同県内の高校に通学した。高校卒業後,被告人は,音楽の勉強を志して上京し,別荘地販売の営業,広告代理店などの仕事を転々としたが,知人から会社の手伝いを依頼されて山梨県に移住し,その後,土木作業員などの仕事を経て,平成6年ころまでに,「C企画」の名称で,東京都内や大阪府内などから集めた浮浪者を寮に住まわせた上,山梨県内の工事現場等に人夫として派遣することを内容とする人材派遣業を始めた。平成9年11月ころ,被告人は,C企画を法人として「有限会社C企画」を設立し,平成11年7月には「有限会社D建設」に名称を変えた。 なお,被告人は,2度の婚姻歴があり,最初の妻との間に2人,2人目の妻との間に4人の子供をもうけているが,2人目の妻とは本件発覚後に離婚している。 【犯罪事実第1の犯行に至る経緯】被告人は,前記のとおり,平成9年3月当時,山梨県都留市bに事務所を置いて「C企画」の名称で人夫の派遣業を営んでいたところ,ある朝,当時人夫として雇っていた氏名不詳の男性(犯罪事実第1の犯行の被害者。以下「被害男性」という。)が,その前夜人夫寮でナイフを持って暴れるなどの騒ぎを起こしたとの話を聞きつけた。騒ぎが大きくなれば警察沙汰になって仕事ができなくなってしまうなどと考えた被告人は,被害男性に対して説教を始めたが,被害男性が被告人に対して反抗的な態度をとったことから,被告人は,被害男性に対して制裁を加えようと考え,木刀を手に取り,被害男性に対して暴行を加えることとした。 【犯罪事実第1】被告人は,平成9年3月ころ,山梨県都留市bc番地C企画事務所において,被害 男性(平成15年10月6 を加えようと考え,木刀を手に取り,被害男性に対して暴行を加えることとした。 【犯罪事実第1】被告人は,平成9年3月ころ,山梨県都留市bc番地C企画事務所において,被害 男性(平成15年10月6日,同市de番地の土中から発掘されたプラスチック製収納箱に収納され,青色ビニールシートなどで梱包された死体の者。)に対し,所携の木刀でその背部等を多数回にわたり殴打する暴行を加え,よって,同人に肺挫滅による気管支肺炎の傷害を負わせ,そのころ,C企画事務所において,同人を前記傷害により死亡するに至らせた。 【犯罪事実第2の犯行に至る経緯】平成12年5月14日,当時D建設の人夫であったE,F及びGは,D建設が管理する山梨県都留市bc番地所在のHキャンプ場において飲酒するなどした後,車で山梨県都留市fg番地所在のD建設の人夫寮へと向かったが,その途中に酒店に立ち寄った際,店の前に停まっていた酒店の車に自車を衝突させる物損事故を惹起した。 Eら3名はそのまま現場を立ち去ったが,その後,酒店の経営者がD建設の事務所に苦情の電話をかけてきたことから,この当て逃げ事故は被告人の知るところとなった。 事故の報告を聞いた被告人は,当時D建設において人夫を管理する立場にあったI,J及びKらとともに,Eら3名に制裁を加えることとし,既に人夫寮に戻っていたEら3名をD建設の事務所に呼び出し,「酒を飲んで当て逃げして,会社をつぶす気か。」などと怒鳴りながら,Eら3名に対して殴ったり蹴飛ばしたりするなどの暴行を加えた。 これに対し,Eは,ひたすら謝る対応をしたが,F及びGは,悪態をつくなどして反抗的な態度をとり続け,さらに,Fにおいては,事務所を飛び出して人夫寮に戻り,追いかけてきたIの腹部付近をナイフで刺すなどの行動をとった。 そこで,被告人は,反抗的な態度をとるF及びG つくなどして反抗的な態度をとり続け,さらに,Fにおいては,事務所を飛び出して人夫寮に戻り,追いかけてきたIの腹部付近をナイフで刺すなどの行動をとった。 そこで,被告人は,反抗的な態度をとるF及びGについては,さらに制裁を加えるべくHキャンプ場へ連れて行くこととした。 【犯罪事実第2】被告人は,I,J,K及びLと共謀の上,F(当時51歳)及びG(当時50歳)に制裁を加えるため,F及びGを監禁しようと企て,平成12年5月14日午 後5時ころ,前記D建設の事務所及び人夫寮において,標識ロープでFの両手首及び両足首を緊縛し,ナイロン製紐でGの両手首を緊縛し,同日午後6時過ぎころ,F及びGを普通乗用自動車に押し込み,同所から約17キロメートル離れた前記Hキャンプ場に至るまで同車を疾走させ,さらに同キャンプ場事務所において,Fの両手首及び両足首に布製粘着テープを巻き付け,Gの両手首に布製粘着テープを巻き付けるなどした上,再度F及びGを同キャンプ場に駐車中の前記普通乗用自動車に押し込み,よって,同日午後7時ころまでの間,F及びGがその場から脱出することを不能ならしめ,もってF及びGを不法に逮捕監禁した。 【犯罪事実第3の犯行に至る経緯】被告人は,犯罪事実第2のとおり同日午後6時過ぎころにF及びGを乗せた前記普通乗用自動車がD建設事務所からHキャンプ場に向けて出発した後,自らもHキャンプ場へと向かったが,遅くともそのころまでには,反抗的な態度をとるなどしたF及びGをHキャンプ場で殺害しようなどと考え,死体を埋めるための重機の手配を依頼した上,Hキャンプ場に到着後,F及びGを殺害することについてI及びJと順次共謀を遂げた。 【犯罪事実第3】被告人は,I及びJと共謀の上,同日午後7時過ぎころ,前記Hキャンプ場駐車場に駐車中の前記普通乗用自動車内におい 到着後,F及びGを殺害することについてI及びJと順次共謀を遂げた。 【犯罪事実第3】被告人は,I及びJと共謀の上,同日午後7時過ぎころ,前記Hキャンプ場駐車場に駐車中の前記普通乗用自動車内において,殺意をもって, 被告人がFの頸部に前記標識ロープを巻いて強く締め付け,よって,そのころ,同所において,Fを窒息死させて殺害し, 被告人がGの頸部を両手で強く締め付け,よって,そのころ,同所において,Gを窒息死させて殺害した。 【犯罪事実第4の犯行に至る経緯】被告人は,犯罪事実第2の犯行に至る経緯に記載したとおり,F及びGとともに当て逃げ事故を起こしたものの,ひたすら謝る対応をしたEについては,D建設の事務所内に監禁して制裁を加えることとした。 【犯罪事実第4】被告人は,M,J及びNと共謀の上,E(当時41歳)に制裁を加えるため,Eを監禁しようと企て, 同日午後6時ころ,前記D建設事務所において,Jが標識ロープでEの両手首を後ろ手に緊縛し,M,N及びJが交代でEを監視するなどし,そのころから翌15日午後2時ころまでの間,Eがその場から脱出することを不能ならしめ, Eが隙を窺い同所から脱出した後の同日午後5時過ぎころ,山梨県都留市hi番地付近路上において,通行中のEを発見するや,被告人が甘言を用いてEを被告人運転の普通乗用自動車に乗車させて疾走し,Eを前記D建設事務所まで連行し,同所において,被告人,M,J,Nの4名がEを監視した上,被告人がEに対し,模造刀を示しながら,「今度逃げたらこれで頭をかち割ったろか。」などと怒号して脅迫し,Jが標識ロープでEの両手首,両足首を緊縛するなどし,そのころから同日午後11時ころまでの間,Eがその場から脱出することを不能ならしめ,もってEを不法に逮捕監禁した。 【犯罪事実第5の犯行に至る経緯 Jが標識ロープでEの両手首,両足首を緊縛するなどし,そのころから同日午後11時ころまでの間,Eがその場から脱出することを不能ならしめ,もってEを不法に逮捕監禁した。 【犯罪事実第5の犯行に至る経緯】D建設は,平成14年ころには運転資金が枯渇し,暴力団関係者や従業員などから借金をするなどしてやり繰りをしていたところ,平成14年10月1日,当時D建設の人夫であったOを乗せた普通乗用自動車が単独交通事故を起こし,Oがけがを負い,保険会社からOに対して損害賠償金が支払われることになったことから,被告人は,借金返済のために,保険会社からOに対して支払われる損害賠償金を着服しようと考えた。 【犯罪事実第5】被告人は,Mと共謀の上,Oにかかる前記交通事故について,平成15年6月26日,山梨県都留市jk丁目l番m号株式会社P銀行Q支店O名義の普通預金口座に,株式会社RからOに対する損害賠償金として振り込まれた2411万9387円を含む2412万387円をOのため預かり保管中,これを自己等の用途に費消する ため,同日,前記普通預金口座から,前記P銀行Q支店において299万円,同市no丁目p番q号P銀行Q支店R店出張所において1100万円をそれぞれ払い戻して着服し,同月27日,前記普通預金口座から,前記P銀行Q支店において100万円を,前記P銀行Q支店R店出張所において900万円をそれぞれ払い戻して着服し,さらに,同年7月1日,前記普通預金口座から,前記P銀行Q支店において13万円を払い戻して着服し,もって横領した。 【証拠】(略)【事実認定の補足説明】第1氏名不詳者に対する傷害致死事件(犯罪事実第1)について 争点 被告人及び弁護人は,主として被告人の被害男性に対する暴行と被害男性の死亡結果との間の因果関係を争っている。以下,まず被告人の被 第1氏名不詳者に対する傷害致死事件(犯罪事実第1)について 争点 被告人及び弁護人は,主として被告人の被害男性に対する暴行と被害男性の死亡結果との間の因果関係を争っている。以下,まず被告人の被害男性に対する暴行態様を認定した後,被害男性の死因及び被告人の暴行と被害男性の死亡結果との間の因果関係について検討する。 被告人の被害男性に対する暴行態様について(1)被告人が被害男性に対し木刀で暴行を振るったこと自体については公判廷で被告人自身も認めているところであるが,その程度については争いがある。 検察官は,被告人の捜査段階供述などに基づき,被告人が木刀で被害男性の背部,脇腹等を多数回にわたって殴打したものであると主張するのに対し,被告人は,公判段階(第17回公判被告人質問)では,左足膝の外側を1回,腰と尻を約2回,背中を約2回くらい殴打したのみであって,被害男性の前面や脇腹,顔面に対する暴行は加えていない旨供述している。 (2)そこで,まず,被害男性の前面や脇腹に対する暴行があったかどうかについて検討すると,被告人による暴行の直後に被害男性の介抱に当たったD建設の従業員であるSは,その際の被害男性の状態に関し,「寝かせるために敷 いた布団まで連れていき,上半身を裸にさせたところ,棒状のようなもので殴ったみみず腫れのような青い傷が,体の前面に8本くらい,背中のほうには5本くらいあった。」などと被告人の暴行が被害男性の体の前面にも及んでいたことをうかがわせる事実について証言している。S証言は,相当古い記憶を喚起したものであるとはいえ,その内容は具体的であって特段不自然な内容は含まれていないし,Sが被告人による暴行の直後から被害男性の治療や世話に当たっていたD建設の従業員であって,あえて被告人に不利益な証言をする理由も見当たらない 内容は具体的であって特段不自然な内容は含まれていないし,Sが被告人による暴行の直後から被害男性の治療や世話に当たっていたD建設の従業員であって,あえて被告人に不利益な証言をする理由も見当たらないことからすれば,S証言の信用性は高いと評価できる。 また,被害男性の死体の解剖結果によると,死体の左第5肋骨と右第7肋骨が骨折していることが認められるところ,解剖を行ったT証人は,肋骨骨折が左右1本ずつしか認められないということは,局所的な圧力が加わったものと考えられる旨の所見を示している(第2回公判)。この骨折状況自体から暴行行為の態様が断定できるものではないが,T証言を踏まえると,この骨折状況は被告人の木刀による暴行が被害男性の脇腹に対しても行われた可能性を相当程度示すものである。 これらの点に加え,被告人自身が,捜査段階において,被害男性の背中や脇腹を含む体中を夢中で木刀で殴り続けた旨繰り返し供述していること(証拠略)などを踏まえると,被告人が被害男性の脇腹や前面に対しても木刀で殴打する暴行を加えたと認めるのが相当である。 (3)一方,被害男性の顔面に対する暴行の有無についてみても,この点は被告人自身が捜査段階から一貫して否定しているとはいえ,Sは,被害男性の手当をした際,血がシャツに飛び散っていたことや,被害男性の顔面が黒ずみ,鼻や口から血を流していたような感じを受けとった旨,顔面に対する相当苛烈な暴行があったことをうかがわせる証言をしているし,程度が若干ずれるとはいえ,被害男性の顔面に傷があったこと自体については,暴行を受けた後の被害男性を目にしたというUも明確に証言している(第7回,第24回公判)。 両名の証言内容を疑わせる事情は特段見受けられないことからすると,顔面に対する殴打行為もあったものと認めるのが相当である。 (4) 目にしたというUも明確に証言している(第7回,第24回公判)。 両名の証言内容を疑わせる事情は特段見受けられないことからすると,顔面に対する殴打行為もあったものと認めるのが相当である。 (4)この点,被告人は,前記のとおり暴行の程度は数回殴打した程度であって,被害男性の前面や脇腹,顔面を殴打したことはないなどと公判廷で供述しているが,被告人自身,現在の記憶と異なる内容の供述調書が捜査段階において重ねて作成されていた理由について納得のいく説明はできておらず,SやUの証言との対比からしても到底信用しがたい。 弁護人は,被告人が捜査段階においては自らの暴行に先行してUらによる被害男性に対する暴行があったことを知らされておらず,被害男性に対する暴行を振るったのは自分しかいないと考えていたから,敢えて記憶に反する供述をしてしまったものであると主張している。しかし,被告人の捜査段階における供述調書には,致命傷を避けるために絶対に頭や顔は殴っていないなどと自らの言い分が明確に録取されている部分もあるのであって,Uらによる行為を知らされていなかったにせよ,殴打行為の程度といった自らの罪責の程度に関わる重要部分につき被告人が記憶とは異なり,かつ,自らに不利になるような供述を敢えてしていたとはおよそ考えがたく,この点の弁護人の主張は採用できない。 また,弁護人は,暴行態様については公判廷における被告人供述こそが正しいことの根拠として,捜査段階における被告人の立会いによる犯行再現の検証結果(証拠略)を挙げてはいるが,被告人は,この犯行再現の中でも脇腹を殴った旨の説明をしている上,殴った回数についても覚えていない旨説明しているのであるから,この検証結果も公判供述を特段補強するものではなく,その他被告人の暴行態様に関して弁護人が縷々主張するところは,いずれ の説明をしている上,殴った回数についても覚えていない旨説明しているのであるから,この検証結果も公判供述を特段補強するものではなく,その他被告人の暴行態様に関して弁護人が縷々主張するところは,いずれも採用できない。 (5)以上によれば,被告人は,被害男性に対し,木刀で,その背部や前面,脇腹,顔面などを繰り返し殴打する暴行を加えたものと認められる。 被告人の暴行後,被害男性が死亡するに至るまでの経過についてS証言及びU証言や被告人の供述等によれば,被告人の暴行後,被害男性が死亡するに至るまでの経過として,被害男性が被告人による暴行を受けた直後に倒れ伏していたことや,そのために被告人がSに対して被害男性の手当てを命じ,Sが布団を敷いて被害男性を寝かせた上,その看病を続けたこと,その後,被害男性は,重湯を食べたり,自力でトイレに行ったりするなどした時期はあったものの,暴行を受けて数日くらい経過した後に突如死亡したことなどの事実が認められる。 なお,被害男性の容態に関し,被告人は,被害男性が被告人の暴行を受けた後も1週間程度は生存しており,1人で片道600メートルも離れたコンビニエンスストアにも行ける程度にまで回復していたなどと供述している(証拠略)が,その内容自体,被害男性が突如死亡したという被告人も自認するその後の経過との対比からして違和感を感じざるを得ないものであって,この点に関しては,被告人による暴行の後,被害男性と最も身近に接していた人物であるSが,「被害男性が死亡したのは暴行後4,5日くらいであり,その間,被害男性が1人でトイレには行けたものの,1人で自由に歩き回れる程度には回復していなかった。」旨の証言をしていることや,Uも,暴行後2,3日くらい経った後の被害男性の状況としてS証言に沿う証言をしていることからして,Sらの は行けたものの,1人で自由に歩き回れる程度には回復していなかった。」旨の証言をしていることや,Uも,暴行後2,3日くらい経った後の被害男性の状況としてS証言に沿う証言をしていることからして,Sらの証言に基づいて認定するのが相当である。 被害男性の死因及び被告人の暴行と死亡結果との間の因果関係について(1)被害男性の死因について,被害男性の死体の解剖医であるT証人(第2回公判)は,死体の解剖所見自体からは死因を断定することはできない旨述べつつも,被害男性の死体に肋骨骨折や血色素浸潤が認められたことなどからすると経験的に肺挫滅が生じていた確率は非常に高いとし,さらに,死体の解剖所見や,被害男性が被告人の暴行を受けた後に何日かは生存していたという事実を前提として消去法で被害男性の死因を考えていった場合には,被害男性が 肺挫滅により気管支肺炎になって死亡したという機序しか残らず,被害男性がそのような経過をたどって死亡した可能性は非常に高いと証言している。 T証人は,解剖結果や自身の専門的知識,経験を基に,死体所見から責任をもって証言できる部分と仮定の事実を前提に答えざるを得ない部分とを明確に区別しながら証言しており,その証言内容に不合理な部分や疑問を抱かせる部分は特段見当たらない上,証言の前提としている事実関係も,証拠上認められる事実のみを前提としていて特に問題は見受けられない。 他方,本件証拠上,T証人が提示する経過以外には被害男性が死亡するに至った経過として具体的かつ説得的に提示されているものは何もないし,T証人が提示する経過とは別の経過によって被害男性が死亡したのではないかと疑わせるような特段の事情も見当たらない。 そうすると,被害男性は,T証人が可能性が非常に高いと述べている経過,すなわち,骨折や血色素浸潤を生じさせる程度の打撃 よって被害男性が死亡したのではないかと疑わせるような特段の事情も見当たらない。 そうすると,被害男性は,T証人が可能性が非常に高いと述べている経過,すなわち,骨折や血色素浸潤を生じさせる程度の打撃が加えられたことによって表在性の肺挫滅が生じ,さらに肺胞が破けて最終的に気管支肺炎を起こした結果,死亡したと認めるのが相当である。 (2)以上の死因に,被告人の被害男性に対する暴行が前記認定のとおり木刀を用いた相当執拗なものであったと認められることや,被告人による暴行から被害男性の死亡に至るまでの経過を併せみれば,被告人の暴行と被害男性の死亡結果との間に因果関係が認められることは明らかである。 (3)これに対し,弁護人は,前記のとおり被害男性が自力でトイレに行けるようになるなどしたことをとらえて,被害男性の症状は気管支肺炎に罹患した者の症状とは明らかに矛盾しており,被告人の暴行と被害男性の死亡との間に因果関係は認められない旨主張している。 しかし,被害男性が自分でトイレに行ったというのも,寝ていた部屋からすぐ近くのトイレ(証拠略)に「這いずって行った。」,「伝い歩きもしていた。」(S証言),「しっかりはしていなかった。」,「膝を曲げてるような 感じの歩き方だった。」(第7回公判U証言)といったものに過ぎないものであることを踏まえれば,これらが気管支肺炎を発症した,又は,発症する直前の者の行動としてみて考えられないものではない。 一方で,関係者の証言を子細に見ても,後述するUらの前日の行為を含めて,被害男性が被告人の暴行とは独立した別個の原因によって死亡したのではないかと積極的にうかがわせるような具体的事情は何ら見当たらない。むしろ,被告人の暴行直後から被害男性を看ていたSが,被害男性が死亡したのを見て,被告人の暴力が原因だと考えた旨証言 て死亡したのではないかと積極的にうかがわせるような具体的事情は何ら見当たらない。むしろ,被告人の暴行直後から被害男性を看ていたSが,被害男性が死亡したのを見て,被告人の暴力が原因だと考えた旨証言していることや,Sらの証言によれば,被告人も,被害男性が死亡した後も警察等に届け出ることはせず,自ら被害男性の死体をブルーシートに密閉するなどして長期間隠匿したほか,Sとの間で他の人夫に対しては被害男性が死亡したことを隠しておくよう口裏合わせをするなど,自らの暴行に起因して被害男性が死亡したと考えていたかのような行動をとっていたこと,被告人自身,捜査段階においては,被害男性が死亡した原因は,自分が木刀で何度も殴ったことしか考えられない旨供述していたこと(証拠略)などを踏まえると,被害男性が被告人の暴行に起因する気管支肺炎の傷害によって死亡したことにつき合理的な疑いが生じるものではない。 (4)弁護人は,被害男性の肋骨骨折は,被告人の暴行によるものではなく,被告人による暴行の前日に被害男性に対して加えられたUらの暴行によって生じたことが明らかであるとして,被害男性の死亡がUらの暴行に起因する疑いがあるとも主張している。 確かに,被告人による暴行の前夜,Uが中心となって,人夫寮でナイフを持って暴れるなどした被害男性を取り押さえるなどしたという事実はあったと認められる。 しかし,Uの証言(第7回,第24回公判)によれば,その際は,他の人夫が立っている被害男性の手足等を押さえて動けないようにしたほか,Uにおいて,濡れタオルを被害男性の手に巻き付けてナイフを取り上げたり,はさみを 取り上げるべく被害男性の腕を取ってねじ伏せたり,その際に顔か頭を2,3回たたいたり,押さえつけるために被害男性の上に上半身を乗せた可能性があるという程度の行為をしたに留 り上げたり,はさみを 取り上げるべく被害男性の腕を取ってねじ伏せたり,その際に顔か頭を2,3回たたいたり,押さえつけるために被害男性の上に上半身を乗せた可能性があるという程度の行為をしたに留まっているのであって,それ以上に強度な暴行をUや他の人夫において加えた事実は,関係証拠からはうかがえない。 この点,弁護人は,Uが自己防衛心から控えめに証言しているとも主張しているが,Uは,弁護側証人として二度目の証言にも応じ,その際は,被害男性の顔面の傷の程度など,前回の証言の際に控えめに証言をしていた部分については自ら積極的に明らかにしているのであって,それとの対比からしても,取り押さえる際の行動の部分についてのみ未だ控えめな証言を続けるとは考えがたいし,それを疑わせる事情もない。 肋骨骨折の発生は受傷者側の要件や加害者・外力作用側の要件などが複合的に関与して定まるものであるとするV作成の意見書(証拠略)も提出されているが,T証人(第15回公判)や,当のV証人が,仮にUが被害男性を取り押さえる際,被害男性の胸の上にのしかかったり,Uのひじが被害男性の脇腹に入ったとしても,1度の衝撃で左右の肋骨が1本ずつのみ骨折していることを説明するのは難しいという趣旨の証言もしていることからすれば,前記した程度のUらの行為によって被害男性に肋骨骨折が生じた可能性は非常に低いと考えられる。 一方,Uらが被害男性を取り押さえた後の被害男性の行動等をみてみると,被告人やU,Sの供述等によれば,Uらに取り押さえられた直後に被害男性の顔にあざ等は見られなかったし,その翌朝も,被害男性は通常どおりC企画の事務所に出勤するなどしていたばかりか,被告人が前日の行為について説教をした際にも,これに反抗的な態度を示し,被告人の暴行を招いたものと認められる。このような被害男性 ,被害男性は通常どおりC企画の事務所に出勤するなどしていたばかりか,被告人が前日の行為について説教をした際にも,これに反抗的な態度を示し,被告人の暴行を招いたものと認められる。このような被害男性の行動等は,既に肺挫滅や肋骨骨折といった重傷を負っていた者のものとは考えがたいし,他に被害男性が被告人による暴行以前の段階で肋骨骨折等の重傷を負っていたことをうかがわせる事情は見当たらな い。 そうすると,被害男性の死亡結果が前日のUらによる暴行に起因する疑いが残るとする弁護人の主張も採用できない。 以上のとおり,被告人が木刀で被害男性の背部や前面,脇腹等を繰り返し殴打する暴行を加えた事実が認められるとともに,被害男性は,その暴行に起因した気管支肺炎に罹患して死亡したものと認められるから,犯罪事実第1のとおり,被告人には傷害致死罪が成立する。 第2F及びGに対する殺人事件(犯罪事実第3)について 争点 検察官は,被告人が,平成12年5月14日,犯行現場であるHキャンプ場(以下「キャンプ場」という。)に赴き,I及びJとの間でF及びG(以下,両名を「Fら」ということがある。)の殺害を共謀した上,自らもその殺害を実行したものであると主張している。これに対し,被告人及び弁護人は,被告人は犯行時にキャンプ場へは行っていないし,殺害の共謀もしていないと主張し,弁護人は,被告人にはアリバイが成立するとも主張している。 以下,まずは被告人による殺害の実行行為やそれに先立つ共謀状況などを目撃したとするK,J及びLらの証言の信用性を検討した上,それとの対比において,弁護人の主張するアリバイが成立するかどうかを検討するものとする。 Jの公判証言の信用性(1)Jの証言要旨(以下「J証言」という。)は,以下のとおりである。 被告人及びIにFらをキャンプ場 て,弁護人の主張するアリバイが成立するかどうかを検討するものとする。 Jの公判証言の信用性(1)Jの証言要旨(以下「J証言」という。)は,以下のとおりである。 被告人及びIにFらをキャンプ場に連れて行くよう指示され,キャンプ場で待っていると,Iに続いて被告人が黒か紺の乗用車を運転してきた。被告人は,車から降りるとIのクラウンの方へ歩いていき,I及びKと5,6分話していた。3人の話が終わった後,Iの方へ歩いていくと,「J,今からやるからな。」などと言われた。IがFからナイフで刺されたこともあって,殺すという意味かと思い,「はい。」と返事をした。気が付くと,被告人は,Fらが乗 せられていたデリカの車内の3列目の座席でかがんでいた。車内の様子は,スモークフィルムを貼っていない隙間や貼ったガラス越しに見えた。被告人がかがんでいたのは5,6分であり,その間,後ろのタイヤが上下したことから,首を締めているのかと思った。その後,Iから,「J手伝え。」などと言われたので,デリカの車内に入り,2列目の座席でGの胸と太ももあたりを押さえた。被告人は,Gの腰のあたりにまたがり,両手で首を締め,5,6分してGは動かなくなった。死亡したFらの顔にガムテープを巻くなどしていたところ,いつの間にか被告人はいなくなっていた。 (2)J証言は,殺害を持ちかけられた際の状況や殺害状況を含め,その内容が非常に具体的であって,迫真性に富んでいるし,内容的にも特段不自然な点は見当たらない。 また,被告人らがキャンプ場にやってきた順序や,被告人運転車両の車種,最初に被告人とI,Kの3人で話し合いが行われたこと,その後Kに替わってJが殺害を持ちかけられたこと,ワゴン車内で被告人によって殺害が行われたことなどといったFらの殺害が実行されるまでの主要な流れについては,後述 I,Kの3人で話し合いが行われたこと,その後Kに替わってJが殺害を持ちかけられたこと,ワゴン車内で被告人によって殺害が行われたことなどといったFらの殺害が実行されるまでの主要な流れについては,後述するとおりKやLもJ証言と概ね一致する証言をしているし,被告人がそのころにキャンプ場に来たことについては,キャンプ場の管理人であるWもそのとおり証言している。これら事件関係者が逮捕前に被告人を陥れるべく通謀したような事情もうかがえない。 さらに,Jは,自身もF及びGに対する殺人等の罪により有罪判決を受けており,この判決はJが2度にわたり証言をした段階では既に確定していたものであって,自己保身のために殊更虚偽の証言をしなければならないような状況にはなかったものであるし,公訴事実を真っ向から否認している被告人の面前でも何ら臆することなく2度に渡って証言をし,反対尋問にも大きく崩れることはないのであって,他にJが被告人を陥れるべく殊更虚偽の証言をしているようにうかがわせる事情も全く見当たらない。 以上によれば,J証言の信用性は,十分に肯定することができる。 (3)この点,弁護人は,X作成の回答書(証拠略)を根拠に,Jが述べているような車の窓に周辺に隙間を空けてカーフィルムを貼付するようなやり方は考えられないし,仮に隙間があったとしてもJが説明する立ち位置からは車両内部の様子が見えることはあり得ないなどと主張し,J証言に疑問を呈している。 しかし,隙間が空いてカーフィルムが貼り付けられていたということ自体があり得ない話とまでは言い難いし,Jは,車内にはルームランプが点いており,カーフィルム越しにも被告人の姿が見えたというのであるから,それにもかかわらず,あえてカーフィルムの貼り方というような細かな点についてまで言及していることを踏まえると,こ ルームランプが点いており,カーフィルム越しにも被告人の姿が見えたというのであるから,それにもかかわらず,あえてカーフィルムの貼り方というような細かな点についてまで言及していることを踏まえると,この点はJ証言の信用性を特段損なうものではない。 また,弁護人は,J証言の内容に不自然,不合理な点や変遷等が多くあるなどと縷々主張してはいるが,いずれもJ証言の信用性の評価に当たって大きく影響するような問題ではない。 弁護人は,Jが実際には自身が供述している以上に殺害行為に関与しており,自己の刑事責任を軽減すべく被告人に罪をなすりつけているとの見方も示しているが,前記したとおりJ自身の判決が証言時には既に確定していたことや,共犯者であるIが既に死亡している状況において殊更被告人に罪をなすりつける必要性が乏しいことなどを踏まえれば,そのような見方が適切でないことは明らかである。 Kの公判証言の信用性(1)Kの証言要旨(以下「K証言」という。)は,以下のとおりである。 被告人とIから,Fらをキャンプ場へ連れて行き,自分たちが到着するまでFらを見張っているように指示された。その後キャンプ場にIが来たことから,これからどうなるのか気になったので聞いたところ,「社長(被告人)が来な きゃ分からないけど,今から来るから,もうちょっと待ってろ。」などと言われた。Iがデリカを駐車場へ移動したころ,下から車が上がってくる音が聞こえ,紺色のクラウンに乗った被告人が来た。被告人が車から降りるとすぐにIが駆けより,2人で話をしながらFらを乗せたデリカに向かって歩いていった。 その後,被告人とIから呼ばれ,被告人が,「実はK君。」と話し出したところにIが割って入り,「社長(被告人)とちょっと話をしたんだけど,この2人(F及びG)をこのまま帰すと会社に対しても社長 った。 その後,被告人とIから呼ばれ,被告人が,「実はK君。」と話し出したところにIが割って入り,「社長(被告人)とちょっと話をしたんだけど,この2人(F及びG)をこのまま帰すと会社に対しても社長に対しても何をしてくるか分からないし,何をされるか分からないので,このまま2人を帰すわけにはいかないから,この2人をちょっと今から殺すから,ちょっと手伝え。」などと言われ,被告人からも,「そういうことだから,頼むよ。」などと言われた。 しかし,とてもではないがそこまで手伝えないと思い,「できません。」と断った。すると,入れ違いにJが呼ばれ,今から殺すから手伝えなどと言われていた。Jは,「はい。」と言って頷いていた。その後,被告人がスライドドアからデリカの車内に入り,Fのいる一番後ろの座席の方へ行ったのが分かった。 被告人らしき人物の影が動いたりかがんだりし,4,5分くらい車体が揺れていた。その間,Iは,スライドドアから中の様子を見ていた。Gらしき声で,「助けてくれ。」とか「許してください。」などと叫び声が聞こえた後,被告人の怒鳴り声が聞こえた。すると,Iが,「おい,J,来い。」とJを呼び,Jはスライドドアから車内に入っていった。中の様子が気になったので,移動してスライドドア側から中を見た。すると,Gが寝かされており,Iがドアの入口でGの足下の辺りを押さえ,Jがその奥でGの腰から胸の辺りにかけて被さるようにしており,さらに被告人がその奥に同じくGに被さってまたがるようにしていた。その様子を見て,被告人がGの首を締めて殺しているのではないかと思った。その間,時間にして5分から10分程度だった。その後,Iから指示されてガムテープを買いに行ったが,キャンプ場へ戻る途中で被告人の運転する車とすれ違い,車のクラクションを鳴らすと被告人も気付いて手を挙 ,時間にして5分から10分程度だった。その後,Iから指示されてガムテープを買いに行ったが,キャンプ場へ戻る途中で被告人の運転する車とすれ違い,車のクラクションを鳴らすと被告人も気付いて手を挙 げた。 (2)Kの証言も具体的なものであって,特にキャンプ場に着いてからの関係者の言動については詳細な供述がされているし,全体的に見て不自然,不合理な点は見当たらない。 また,被告人らがキャンプ場にやってきてから,F及びGがワゴン車内で殺害されるまでの一連の経過については,前述したJ証言や後述するL証言と大筋で一致しており,相互に補強し合って互いにその信用性を高めているということができる。 さらに,Kも,弁護人の反対尋問にも大きく崩れることはないし,Jと同様,証言時までにF及びGに対する逮捕監禁罪により既に有罪判決を言い渡されているのであって,証言時に自己保身を図らなければならない状況であったとはうかがえず,他にKに関し殊更被告人を陥れなければならない動機や事情は本件証拠上見当たらない。 (3)この点,弁護人は,Kの証言は捜査段階から公判段階に至るまで著しい変遷を生じており,信用に足りるものではないと主張している。 確かに,弁護人が指摘するとおり,Kは,取調べを受けた当初,死体を埋める際に死体であることは知らされていなかったといった供述(証拠略)をしていたのが,「死体と知りつつ埋めた。」(証拠略)という供述に変わり,その後は「被告人の命令でIとJが手をかけて(Fらを)殺した。」などと被告人がキャンプ場には来ていなかった旨の供述をしていた(証拠略)ところ,「被告人がキャンプ場に来て,直接Fらの殺害を命じてきた。」(証拠略)などとさらに供述内容を変遷させ,最終的に被告人も実行犯として殺害に関与した旨の供述をするようになったという供述経過が認め ころ,「被告人がキャンプ場に来て,直接Fらの殺害を命じてきた。」(証拠略)などとさらに供述内容を変遷させ,最終的に被告人も実行犯として殺害に関与した旨の供述をするようになったという供述経過が認められるのであって,その捜査段階における供述内容には大きな変遷があると言わざるを得ない。 しかし,Kは,供述を変遷させてきた理由については,「警察の取調べを受ける前日,被告人と会い,Iがやったことにするように頼まれた。本当のこと を言うと被告人に殺されるかもしれないと思った。」,「自分とJが逮捕されてからは,被告人から何かされるおそれもなく,Jも本当のことを供述してくれると思ったので,本当のことを供述することにした。」などと具体的に説明しているところ,これらの説明は供述経過とも矛盾しないし,その内容もあながち不合理なものではない。Sも,別の機会ではあるものの,被告人から「2人の人夫をとにかく帰したことにしてくれ。」,「Iに全部かぶせよう。」などとKが述べるのと同様の口裏合わせを求められた旨証言していることや,関係者の証言等からうかがえる被告人の会社における社長としての振る舞い,普段は穏和だが怒らせると怖いといった被告人の性格評などを併せみれば,以上のような変遷に関するKの説明は概ね信用できるものであって,変遷を辿っている事実がK証言の信用性を決定的に損うものではない。 弁護人は,KがD建設を一度退社したにもかかわらず後に復帰していることや,被告人から金銭を融通してもらっていたことなどを挙げて,Kが被告人を怖がっていたというのは到底考えられないとも主張している。 しかし,捜査段階当時において,Kが被告人に対して恐怖心を有していたかを考えてみれば,制裁として暴力を振るった上,自分の目の前でFらを殺害し,その死体を自分たちに埋めさせ,さらにもう一体 している。 しかし,捜査段階当時において,Kが被告人に対して恐怖心を有していたかを考えてみれば,制裁として暴力を振るった上,自分の目の前でFらを殺害し,その死体を自分たちに埋めさせ,さらにもう一体の死体までも埋めさせた挙げ句,「Iがやった話で頼む。」などと口裏合わせまで求めてきたなどというKの述べる被告人の行動等が前提であれば,本件についての捜査が始まったことを知ったKが被告人に対して相当強い恐怖心を抱いたとしても決しておかしなことではなく,被告人とKとの間に本件以前や本件の後に弁護人が指摘しているような事実があるにしても,そのこと自体が供述の変遷に関するKの説明の信用性を疑わせるものではない。 (4)また,弁護人は,弁護人自身による視認実験結果などをもとに,犯行後に被告人の運転する車とすれ違った際,被告人も気付いて手を挙げたとする部分のK証言は虚偽であると主張したり,L証言やJ証言,W証言などとの間の 細かな矛盾点や,Kが述べる口裏合わせの時期に関する他の証拠との矛盾点などを摘示して,K証言の信用性に疑問を呈している。 しかし,視認実験については,場所,明るさ,視認者などといった点において完全に条件を一致させて実験がされたわけではなく,その信用性については限定的に解さざるを得ないし,他の証言等との食い違いの点にしてみても,本件捜査が事件から3年以上も経過した時点から開始され,関係者の供述もその段階になって初めて録取されたものであることや,前記のとおり被告人がキャンプ場に来たことはもとより,その後被告人らがワゴン車内に乗り込むまでの一連の経過については,K,J,Lの三者において概ね一致した証言をしていることなどに照らせば,弁護人が指摘するような細部の事実についての他の証拠との矛盾や,他者の証言との部分的な食い違いなどがあるからと の経過については,K,J,Lの三者において概ね一致した証言をしていることなどに照らせば,弁護人が指摘するような細部の事実についての他の証拠との矛盾や,他者の証言との部分的な食い違いなどがあるからといって,K証言全体の信用性を大きく損なうものではない。 弁護人は,Kが,自身が殺人罪に問われたくないがために検察官に迎合して被告人に罪をかぶせている疑いがあるとも主張しているが,この点も想像の域を出ない主張であって,採用できない。 L,W証言の信用性以上に加え,前記したとおり,Fらを乗せた自動車をキャンプ場まで運転したLも,被告人がキャンプ場に来た後,最初に被告人とI,Kの3人で話し合いがあり,その後,Jが呼ばれ,被告人が「これからやるぞ。」といったようなことを言ってワゴン車に乗り込んだなどと,細部はともかく全体の流れとしてはJ及びK証言に概ね沿う証言をしているし,キャンプ場の管理人を務めていたWも,被告人が当日キャンプ場を訪れたことを認める証言をしている。 弁護人は,Lが捜査段階当初は被告人がキャンプ場に来たとは供述していなかったこと(証拠略)や,その後にこの点に関する供述を変更した理由につきLが「日々の仕事で頭が一杯で思い出せなかった。」などと説明していること,被告人が到着する前の行動につきJ証言との間に矛盾があることなどを理由として, L証言は到底信用できないものであると主張している。 確かにLの供述の変遷理由については腑に落ちない部分もありはするものの,事件発生から取調べまでの間に相当時間が経過していることや,LがF及びGに対する逮捕監禁罪により有罪判決を受けた後に証人として出廷し,2度にわたって被告人がキャンプ場に来たことを明確に証言していること,LはFらが殺害される直前にワゴン車を離れており,その後も殺害が行われたことを知ら 禁罪により有罪判決を受けた後に証人として出廷し,2度にわたって被告人がキャンプ場に来たことを明確に証言していること,LはFらが殺害される直前にワゴン車を離れており,その後も殺害が行われたことを知らされておらず,本件に対する関心が他の共犯者に比して高くなかったように見受けられることなどからすると,弁護人が指摘する変遷等の点を踏まえても,その信用性につき決定的な問題があるとまでは言い難く,K及びJの証言を支える程度の証拠価値を見出すことはできる。 また,弁護人は,Wに関しても,出面帳(証拠略)には当日キャンプ場にWが勤務した記載がなく,関係者の中でも当日キャンプ場にWがいたことはKしか言及していないことなどを理由として,Wの証言内容は全く信用できないものであると主張している。 しかし,KのほかにもE(証拠略)やS(証拠略)が当日キャンプ場でWに会った旨の供述をしていることや,WはFらに対する監禁や殺人の実行行為には関与していないため,他の関係者の記憶に残らなかった可能性も十分考えられることなどからすると,出面帳の記載がないからといってW証言の信用性を否定的に解すべきではなく,むしろ,当日の出来事に関するW自身の供述は相当具体的であって創作した内容とは考えがたい上,W自身が殊更事実関係について虚偽の証言をする理由が全くうかがえないことからすると,W証言の信用性は相当高いと考えられる。 以上のとおり信用性を肯定できるJ,K,L,Wの証言のほか,前記のとおり被告人が後日K及びSに対してIに全部責任を負わせる旨の口裏合わせを求めていたと認められることなどをも併せみれば,被告人がキャンプ場に到着した後,まずIとの間でFらを殺害することについて合意した上,Jにも殺害を手伝うよ うに指示して3名の間で殺害の共謀を遂げたことや,その後,デリカの車 などをも併せみれば,被告人がキャンプ場に到着した後,まずIとの間でFらを殺害することについて合意した上,Jにも殺害を手伝うよ うに指示して3名の間で殺害の共謀を遂げたことや,その後,デリカの車内に入り,まず被告人が単独でFを殺害し,さらに,Jを呼び入れて胸等を押さえつけさせるなどしながら,被告人が両手でGの首を締めて殺害した事実を認めることができる。 なお,弁護人は,本件証拠上,Fらの死因について特定できない旨主張しているが,Fについては,その死因等についての鑑定書(証拠略)や鑑定医であるT証人の所見(第15回公判)及び死体発見時に標識ロープが死体の頸部を締めるように巻かれていた事実などを総合すれば,被告人に標識ロープで首を締められた結果窒息死したものと認めるのが相当であるし,Gについては,同じく鑑定書(証拠略)等や殺害の実行行為を分担したJの証言などによれば,被告人に両手で首を締められた結果,窒息死したものと認めることができる。 被告人のアリバイの成否について(1)弁護人は,被告人の娘であるY及びその友人であるZの証言などを根拠として,犯行日とされる平成12年5月14日には被告人はYらと行動をともにしていたのであって,被告人にはアリバイが成立すると主張している。 (2)そこでまず,Z及びYの証言をみると,両名の証言要旨は以下のとおりである。 アZの証言要旨平成12年5月13日にY宅へ泊まりに行き,翌14日は昼過ぎに起きた。 食事をとった後,午後2時か3時くらいに被告人から出かけようと声をかけられ,午後4時前後ころに被告人やYらとともにA1や花屋へ買い物に行った。買い物を終えてY宅に戻った後,被告人と一緒に食事をしたかどうかは分からないが,被告人もその間は一緒に家におり,午後9時か9時半くらいに被告人に車で送ってもらって ともにA1や花屋へ買い物に行った。買い物を終えてY宅に戻った後,被告人と一緒に食事をしたかどうかは分からないが,被告人もその間は一緒に家におり,午後9時か9時半くらいに被告人に車で送ってもらって自宅に帰った。 イYの証言要旨平成12年5月14日は昼過ぎに起きて,午後3時か4時くらいに被告人, ZらとともにA1等に買い物に行った。帰宅した際,午後6時は過ぎていた。 その後,夕食を被告人と一緒にとった。被告人は,午後8時からはテレビで大河ドラマを見ていた。この日は買い物に出かけたときから夜まで被告人と一緒にいたのであって,被告人が出かけていったことはない。被告人が夜にZを車で家まで送っていったかは覚えていない。 (3)Z及びY証言の信用性についてZ及びYの証言は,いずれもその内容に具体性が備わっている上,内容的にほぼ一致しているし,殺人事件の犯行日とされる平成12年5月14日の出来事であって別の年との混同はあり得ないことや,記憶を喚起して証言するに至るまでに時間を要した理由などについてもきちんと説明できている。また,反対尋問にも崩れておらず,その証言態度にも不審な点はうかがえないし,YはともかくZについては被告人のために記憶に反することまで証言するような立場にあるとは考えがたい。さらに,両名の証言は,前日からY宅に泊まりに行ったことを記したZの手帳の記載や,当日,Zから花を贈られ,その夜,被告人がZを車で送り届けてきた記憶があるとするZの母親の証言によっても裏付けられているのであって,両名の証言は,一見するとその証言内容全体につき信用できるようにも思われる。 しかし,他の関係者の供述との対比という観点から両名の証言の信用性についてみると,Fらがキャンプ場で殺害された日が平成12年5月14日であることは,関係者の供述やそれを裏付け きるようにも思われる。 しかし,他の関係者の供述との対比という観点から両名の証言の信用性についてみると,Fらがキャンプ場で殺害された日が平成12年5月14日であることは,関係者の供述やそれを裏付ける客観的証拠(証拠略)から明らかであるとともに,その日の午後から夕方にかけて,被告人がD建設の事務所内で他の共犯者とともにE,F及びGの3名に対して暴行を加えるなどしたことや,その後KらがF及びGを普通乗用自動車に乗せてキャンプ場に向けて連れ出したこと,その後も被告人がしばらくの間はD建設の事務所内に留まっていたことは,被告人自身を含む多くの関係者が一致して供述しているところであって,これらの点は動かし難い事実と認められる(なお,D建設事務所においてFら に対する暴行や逮捕監禁が行われた時間帯については,関係者の供述にばらつきはあるものの,多くの者が午後3時ころ以降,午後6時ころまでの間の出来事であった旨供述している上,被告人自身も,公判廷で,根拠のない感覚的なものであるとしながらも,当日,D建設事務所には午後1時か2時前後に赴き,午後4時前後ころにデリカが出発したのを見て,その後もしばらくは事務所にいた記憶がある旨供述している。)ところ,Z及びYは,その日の午後から夕方の時間帯にかけ,被告人が家におり,あるいは,一緒に買い物に行った旨証言しているのである。そうすると,Z及びYの証言は少なくとも時間的な面についての正確性という意味で,その信用性に大きな疑問を抱かざるを得ない。 また,被告人のアリバイの成否との関係で肝心な当日夕方以降の被告人の行動に関するZらの証言内容自体も,「被告人もずっと家にいた。」(Z),「1人で出かけていったことはない。」(Y)などと被告人が家にいたことを断言こそするものの,その根拠としては,「一緒に夕食を食べたよ に関するZらの証言内容自体も,「被告人もずっと家にいた。」(Z),「1人で出かけていったことはない。」(Y)などと被告人が家にいたことを断言こそするものの,その根拠としては,「一緒に夕食を食べたような気はするが,はっきり覚えていない。」(Z)とか,「大河ドラマを見ていたが,その後は覚えていない。」(Y)などといった曖昧なものに留まっているし,その日の夜に被告人がZをZ宅に送り届けたという点を除けば,客観的な裏付けや両名以外の第三者による裏付けはない。Zらの証言によれば,Zらの記憶は早期の段階で喚起されたものではなく,Zの手帳の記載と断片的な記憶に基づいて5年も前の日の出来事を回想して思い出したというものであるから,両者の証言が最終的に一致しているとはいえ,とりわけ曖昧で具体性を欠く部分についての信用性は低いと評価せざるを得ない。 そうすると,Zが5月13日から被告人方に泊まりにやってきたことや,翌14日の夜に被告人がZをZ宅まで車で送り返したことなどといった客観的な記録やZの母親の証言などによって裏付けられている部分についてはともかくとして,殺人事件当日(14日)の午後以降の被告人の行動,とりわけキャンプ場において殺害行為が行われたとされる午後7時ころの時間帯における被告 人の行動に関するZらの証言については,前記のとおり被告人がキャンプ場に来たことなどを一致して証言し,Zらのアリバイ証言の内容を聞かされた上でも従前の証言内容を維持したJ,K,Lの3人の証言等との対比からして信用することはできないと言うべきである。 弁護人は,Zらの証言内容に多少の時間のずれがあり得るとしても,Zらの証言によれば,被告人が,D建設事務所におけるFらに対する暴行の後,買い物に行き,その後はずっと家にいた可能性がある旨主張している。 しかし,弁護人の述 容に多少の時間のずれがあり得るとしても,Zらの証言によれば,被告人が,D建設事務所におけるFらに対する暴行の後,買い物に行き,その後はずっと家にいた可能性がある旨主張している。 しかし,弁護人の述べるとおりの事実経過であったとすれば,被告人は,Fらに制裁を加えた後,自宅に戻って,ほどなくして娘やその友人と買い物をするなどしていたということになるが,そのような対応は,自らに反抗的な態度をとった人夫に対して制裁を加えたという状況の中では,かなり不自然なように思われるばかりか,被告人においても,この点について当日の行動として思い出せてしかるべきであるにもかかわらず,被告人自身,捜査段階のみならず,Zらの証言を聞いた後も,未だ当日の自己の行動としてZらの証言を前提にした供述はしていない。このことからも,当日の夕方の被告人の行動に関するZらの証言には信用性を認めることはできない。 (4)以上によると,Zらの証言等によっても,被告人に当日のアリバイが成立するとの疑いを合理的に差し挟むものではない。 殺害動機について(1)弁護人は,被告人にはFらに殺意を抱く事情はどこにも見出せないとも主張している。 (2)しかし,関係者の供述からすれば,被告人は,Fらが飲酒をした上で当て逃げ事故を起こし,しかも相手の酒店の経営者から「警察に言う。」などと苦情が寄せられたことにより,Fらに対して相当な怒りを抱いていたことが認められ,この点は被告人自身も否定はしていないところである。 そして,関係者の供述によれば,その後,被告人は,D建設事務所において, Fらに対して説教をするとともに,制裁として暴行を加えたところ,F及びGは,被告人に対して反抗的な態度を取り,特にFは,被告人らに向かって「こんなことしやがって覚えていろ。」,「仲間を連れて仕返しに来る。」 して説教をするとともに,制裁として暴行を加えたところ,F及びGは,被告人に対して反抗的な態度を取り,特にFは,被告人らに向かって「こんなことしやがって覚えていろ。」,「仲間を連れて仕返しに来る。」などと悪態をつき続け,更にはI及びJに対してナイフでけがまで負わせたという経過が証拠上認められるのであって,このような経過や,関係者の供述等からもうかがわれる被告人の短絡的な性格などに照らすと,被告人が,そのような反抗的な態度をとり続けたFらに対してより一層怒りを強め,そのような怒りが高じて殺意に転化したとみることも,あながち不自然なものではなく,被告人の殺害動機を推認するについて格別の支障はない。 なお,検察官は,①被告人がFらによる報復を恐れて自己保身のために殺害したとか,②Fらが労働者支援団体に訴え出た場合にはD建設の経営に支障を来すおそれがあるので口封じのために殺害したなどと主張しているが,弁護人も指摘するとおり,Fらによる報復のおそれが実際にどの程度あったかは疑問である上,Fらが労働者支援団体に訴え出るような状況や,被告人がこのことを恐れていたことをうかがわせる適切な証拠もないことからすれば,殺害動機としては前記した程度のものと解するのが相当である。 被告人の公判供述の信用性について被告人は,犯行当日の行動については,捜査段階から一貫して,キャンプ場には行っていないし,殺害行為はおろかその共謀もしていないなどと供述し,殺害時刻とされている時間帯は自宅にいたと思うなどと供述している。 しかし,被告人の供述は,前記信用できるJ,K,Lらの証言と明らかに矛盾するものであるばかりか,被告人は,当日の夜,Iから「社長,めんどうくせえからやっちまったよ。」などと連絡を受けたものの,その真意を測りかねて特に対応はせず,翌朝,Iから同じような連 と明らかに矛盾するものであるばかりか,被告人は,当日の夜,Iから「社長,めんどうくせえからやっちまったよ。」などと連絡を受けたものの,その真意を測りかねて特に対応はせず,翌朝,Iから同じような連絡が何回かあったことから,Iが本当にFらを殺してしまったのかと考えるようになり,重機の手配をさせるとともに,自らも傷害致死事件の被害男性の遺体の投棄をIに依頼したなどとも供述してい るところ,自社の人夫が死亡したという事態が生じたと考えたにもかかわらず,その経過等を確認しないまま死体を埋めるための重機の手配をしてやったなどというのは非常に不自然な話であるし,自身もそのついでと考え,それまで隠しておいた被害男性の死体を,その埋める場所も聞かずにIに頼んで処理してもらったなどという話に至っては,およそ理解できない話であって,信用できるものではない。 以上のとおり,被告人には犯行当日のアリバイは成立せず,J,K,Lらの証言等に基づき,犯罪事実第3のとおり,被告人が,I及びJと共謀の上,被告人自身が実行役となってF及びG両名を殺害した事実を認めることができる。 【法令の適用】被告人の犯罪事実第1記載の所為は平成16年法律第156号による改正前の刑法205条に,犯罪事実第2記載の所為は被害者ごとに包括して刑法60条,平成17年法律第66号による改正前の刑法220条に,犯罪事実第3の1及び同2記載の各所為はいずれも刑法60条,平成16年法律第156号による改正前の刑法199条に,犯罪事実第4の1及び同2記載の各所為はいずれも包括して刑法60条,平成17年法律第66号による改正前の刑法220条に,犯罪事実第5記載の所為は刑法60条,252条1項にそれぞれ該当するところ,犯罪事実第2は1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,同法54条1項前段, 法律第66号による改正前の刑法220条に,犯罪事実第5記載の所為は刑法60条,252条1項にそれぞれ該当するところ,犯罪事実第2は1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,同法54条1項前段,10条により1罪として犯情の重いFに対する逮捕監禁罪の刑で処断することとし,各所定刑中犯罪事実第3の1及び同2の各罪についていずれも死刑をそれぞれ選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法46条1項本文,10条により刑及び犯情の最も重い犯罪事実第3の2の罪の刑で処断して他の刑を科さないこととして被告人を死刑に処し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 【量刑の理由】 事案の概要 本件は,人夫を工事現場等に派遣する人材派遣業をしていた被告人が,人夫1名の反抗的な態度に激昂し,木刀で暴行を加えて死亡させたという傷害致死事件(犯罪事実第1),飲酒した上で当て逃げ事故を起こし,その後も反抗的な態度を示し続けた人夫2名について,人夫の管理職的立場にある共犯者と共謀の上,ロープ等で拘束するなどしてキャンプ場まで連行し,最終的に殺害したという逮捕監禁及び殺人事件(犯罪事実第2,第3),殺害された2名の人夫とともに当て逃げ事故を起こしていた人夫1名について,共犯者と共謀の上,ロープで拘束するなどして事務所内に監禁するなどしたという逮捕監禁事件(犯罪事実第4),会社の運営のために多額の借金を抱え,その返済等に窮したことから,共犯者と共謀の上,交通事故に遭った人夫に支払われた損害賠償金を着服したという横領事件(犯罪事実第5)からなる事案である。 F及びGに対する逮捕監禁及び殺人事件について(犯罪事実第2及び犯罪事実第3)まず,本件各犯行のうち最も犯情の重いF及びGに対する殺人等の事件につい 事件(犯罪事実第5)からなる事案である。 F及びGに対する逮捕監禁及び殺人事件について(犯罪事実第2及び犯罪事実第3)まず,本件各犯行のうち最も犯情の重いF及びGに対する殺人等の事件についてみると,被告人がFらを殺害するにまで至った動機は,前記のとおりFらが当て逃げ事件を起こしたばかりか,説教をするなどした被告人に対して反抗的な態度をとり続けるなどしたことから,Fらに対する怒りを強め,殺害にまで及んだものと認められる。Fらの問題行為をきっかけとした犯行という面はあるものの,Fらの側には,殺害はもちろん,逮捕監禁されなければならないような落ち度があった事案ではない。自らの怒りに任せ,人命を奪うことを意に介さない身勝手極まりない犯行であり,動機に酌量の余地はない。しかも,被告人は,このFらに対する殺人事件の当時は,その約3年前に自らの暴行に起因して人夫を死亡させた傷害致死事件を起こしていたのであって,それにもかかわらず再び自らの怒りに任せて2名の命を奪った被告人には,傷害致死事件に対する自責の念は全く見受けられず,かえって,自らの意に沿わない者に対してはその命を奪うことさえ厭わない人命軽視の態度を強く見て取ることができる。 犯行態様をみると,まず,逮捕監禁については,丈夫な標識ロープやナイロン製紐でFらを緊縛した上,自動車に押し込み,一層苛烈な制裁を加えることを予定して人気のない山中のキャンプ場まで連行するなどしたというものであって,組織的犯行である上,それ自体,相当な肉体的精神的苦痛を与える悪質な犯行である。また,殺人も,被告人とIのほか,Jをも巻き込んで行った集団による犯行である上,被告人らは,人気のないキャンプ場の駐車場に停めた自動車内において,標識ロープ等で緊縛されるなどして全く抵抗もできず,目と口をガムテープで塞が のほか,Jをも巻き込んで行った集団による犯行である上,被告人らは,人気のないキャンプ場の駐車場に停めた自動車内において,標識ロープ等で緊縛されるなどして全く抵抗もできず,目と口をガムテープで塞がれて視界をも奪われ,満足に声も出せない状態であったFらに対し,まず,Fについて,標識ロープで絞首する方法で絶命させ,さらにGについては,Fの殺害を察知したGが必死に命乞いをしていたにもかかわらず,それを全く聞き入れることなく両手で首を締めて絶命させたものである。そこには憐憫の情のかけらも見られず,残忍で冷酷,非道な犯行である。前述のとおり被告人はFらの反抗的な態度に対して怒りを強めてその殺害を決意したものであって,従前から周到に殺害を計画していたような事案ではないものの,被告人は,Fらを殺害しようなどと考えた後,あらかじめ死体を埋めるための重機の手配を依頼しているほか,IらとFらを殺害することを確認しあった上で,F及びGを続けざまに,かつ,絞殺という確実な方法で殺害したものであって,激昂のあまりとっさにその場で殺害してしまったなどといった事案ではない。 Fら2人を逮捕監禁した挙げ句,その尊い命を奪ったという犯行結果が誠に重大であることはいうまでもない。Fらは,いずれも手足等を緊縛されるなどした上,ガムテープにより目を塞がれて視界を奪われるとともに,口も塞がれて満足に叫ぶこともできない中,首を締められ,激しい苦悶の中で息絶えたものであって,遠のいていく意識の中,Fらが感じたであろう苦痛や恐怖感,悔しさや無念さなどは察するに余りある。 Fの元妻は,捜査機関に対し,離婚した後もFが娘とは連絡を取っていた事実などを指摘しながら,「実の父親が無惨な死に方をしたことで,将来娘がどのよ うにこのことを受け止めていくか,そう考えると,娘が不憫でなりません。 に対し,離婚した後もFが娘とは連絡を取っていた事実などを指摘しながら,「実の父親が無惨な死に方をしたことで,将来娘がどのよ うにこのことを受け止めていくか,そう考えると,娘が不憫でなりません。」,「人の命を奪うなどという行為は許せません。Fを殺めた人にはその命で償ってほしいと考えています。」などと供述した上,犯人に対しては死刑の適用を望むし,娘も同様の意見である旨述べている。また,Gの元妻も,Gと離婚した後相当期間が経過していたとはいえ,2人の間の子供も成人し,そろそろ父親であるGに会わせても良いかと思っていた矢先に,突如,Gが殺されるなどしたことを知らされたというのであって,捜査機関に対し,「父親が殺されたことを知った子供たちのショックを考えると,母親の私もやりきれない気持ちです。G(G)を殺した上,冷たい土の中に埋めて何年もそのままにしていた犯人達を絶対に許せません。」などと述べ,犯人に対する死刑の適用を求めている。このように遺族らの被告人に対する処罰感情は峻烈である。それにもかかわらず,被告人からは何らの慰謝の措置も取られていないし,今後も取られる見込みは薄い。 被告人らは,Fらを殺害した後,犯行の発覚を防ぐべく,息絶えたFらの死体を緊縛された状態のまま重機を使ってキャンプ場の土中に埋め,その後,長期間にわたって放置したものであって,犯行後の情状も悪い。両名の死体は,死後3年以上経ってようやく発見されるに至ったが,いずれも屍ろう化した状態で発見されたものであって,まことに哀れというほかない。 また,犯罪事実第1の傷害致死の被害男性の死体と併せ,キャンプ場から3体もの死体が発見されたということで事件が大きく報道され,近隣住民や地域社会にも大きな衝撃を与えたものであり,その社会的影響も大きい。 被告人は,会社社長として共犯者及びF 体と併せ,キャンプ場から3体もの死体が発見されたということで事件が大きく報道され,近隣住民や地域社会にも大きな衝撃を与えたものであり,その社会的影響も大きい。 被告人は,会社社長として共犯者及びFら人夫に対して絶対的な地位にあったと認められるが,Fらに制裁を加えることを発意し,共犯者らに指示してFらを逮捕監禁させたほか,その後もFらの反抗的態度に怒りを高じさせ,Fらを殺害することとし,自らの手でFらの殺害を行ったものである。Fらの殺害を最初に言い出したのが,被告人であったのか,Fから直前にナイフで刺されていたIであったのかまでは不明であるものの,殺害の実行を最終的に決定し,かつ,実行 したのは被告人であって,被告人が殺人事件についても中心的立場にあり,最も重大な責任を負うべきことは明らかである。 それにもかかわらず,被告人は,事件の捜査が始まると,既に死亡していたIに全ての責任を転嫁しようとして,関係者に対して口裏合わせをしようとしたほか,審理の終結に至るまで責任逃れのための不合理な弁解に終始しているのであって,反省の態度は全く見られない。 氏名不詳者に対する傷害致死事件について(犯罪事実第1)Fらに対する殺人事件の約3年前に敢行した氏名不詳の被害男性に対する傷害致死事件は,被告人が,犯行前日における被害男性の行動や被告人に対する反抗的な態度に対する制裁として敢行したものである。社長としての絶対的な立場を確立すべく,逆らう者に対しては制裁を加えてでも分からせてやろうという被告人の考え方がうかがえるところであり,Fらに対する殺人事件と同様,あまりに独善的な動機に基づく犯行である。 犯行態様についてみても,被告人は,被害男性が完全に抵抗できなくなるまで,激情に任せて木刀で全身を繰り返し殴打したものであって,執拗で危険な犯行である。 ,あまりに独善的な動機に基づく犯行である。 犯行態様についてみても,被告人は,被害男性が完全に抵抗できなくなるまで,激情に任せて木刀で全身を繰り返し殴打したものであって,執拗で危険な犯行である。 この犯行により貴重な生命が奪われるに至ったという結果は重大である。被害男性は,被告人に執拗に殴打された上,満足に動くこともできないまま死んでいったものであって,その悔しさや無念さなどはFらと同様察するに余りある。しかも,現在に至ってもなお身元は不明のままであり,被害男性自身にとっても,遺族にとっても,まことに不憫というほかない。 被告人は,倒れ伏した被害男性を見たSから医者に診せることを勧められたにもかかわらず,自己の暴行の発覚を恐れてこれに従わず,看病をSに任せたまま放置して結果的に被害男性を死亡させたほか,被害男性が死亡した際も,警察に届けることを勧められたにもかかわらず,再び自己保身の目的からこれに従わず,かえって関係者に死体の処理の手伝いと口裏合わせを頼み,凶器の木刀や被害男 性を寝かせていた布団を焼却するなどの罪証隠滅行為まで行っているのである。 その結果,被害男性は,以後約6年半という長い間,プラスチック製収納箱に梱包され,押入れの中や車の中,挙げ句の果てにはFらの死体ともども重機で土中に埋没させられ,屍ろう化して朽ち果てていったものであって,死亡後の扱いも無惨と言うほかなく,死者に対する畏敬の念は全く感じられない。 加えて,被告人は,捜査段階では自己の刑責を認める供述をするなど反省の言葉を述べていたものの,公判段階においては,第三者に責任を転嫁するかのような供述を始めたものであって,真摯な反省の情は見られない。 Eに対する逮捕監禁事件について(犯罪事実第4)Eに対する逮捕監禁事件も,Fらに対する逮捕監禁事件と同様,当て逃げ事 任を転嫁するかのような供述を始めたものであって,真摯な反省の情は見られない。 Eに対する逮捕監禁事件について(犯罪事実第4)Eに対する逮捕監禁事件も,Fらに対する逮捕監禁事件と同様,当て逃げ事件を起こしたEに対する怒りに基づき敢行された犯行である。自己中心的で身勝手な犯行動機に酌量の余地はないし,被告人は,Eがひたすら謝罪したにもかかわらず,暴行を加え,共犯者に命じてロープで拘束するなどした上,昼夜続けて複数人で監視させ,約20時間もの長時間監禁し,いったんは逃げ出されたものの,その後偶然発見すると,未払給料を支払ってやるなどと甘言を用いて事務所に連れ戻した上,態度を翻して悪辣な言葉で脅したり,再び共犯者にロープで緊縛させるなどしてEが再び逃げ出すまで約6時間監禁したというのであって,組織的,かつ,執拗で悪質な犯行である。 Eは,2回目の監禁において,このままでは殺されるかもしれないという恐怖を感じて,縛られているロープをライターの火であぶってほどいて事務所から自力で脱出し,その後も追っ手の追跡から逃れつつ,2日間も山中をさまよった末に警察に保護されたものであって,その間の肉体的精神的苦痛は甚大であったと推察される。にもかかわらず,何らの慰謝の措置も講じられておらず,当然のことながらEの処罰感情には厳しいものがある。 被告人は,共犯者に見張り等の指示を出すほか,自らもEに対して暴行や脅迫を行ったり,逃げたEを連れ戻したりするなど,中心的な役割を果たしている。 横領事件について(犯罪事実第5)横領の動機は,着服した損害賠償金を会社の借金返済等に充てるためであって,会社経営のためには手段を選ばない利欲的な動機に酌量の余地はない。 その態様も,被告人は,当初から損害賠償金を着服するつもりでいながら,一生面倒を見るかのように装って 借金返済等に充てるためであって,会社経営のためには手段を選ばない利欲的な動機に酌量の余地はない。 その態様も,被告人は,当初から損害賠償金を着服するつもりでいながら,一生面倒を見るかのように装って言葉巧みに被害者であるOを信じ込ませ,これに代わって損害賠償金を預かり,着服したというものであって,狡猾で計画的な犯行である。 着服した金額も,2400万円余りと多額であるところ,被害回復の見込みは全くないのであって,今後の人生を障害を負ったまま送らなければならないOの損害は計り知れず,その精神的苦痛も大きいものがある。 この犯行も,被告人が首謀かつ主導したものであり,横領金額も被告人が会社資金に流用している。 被告人にとって酌むべき事情他方,前述したように,逮捕監禁事件や殺人事件はF及びGらの行動に端を発したものであって,当初から計画されていた犯行ではないことや,氏名不詳者に対する傷害致死事件も被害男性の反抗的な態度に起因して敢行された事案であること,横領事件に関して被害者であるOから被告人を宥恕する旨の陳述書(証拠略)が提出されていること,被告人のことを案ずる老齢の母親が情状証人として出廷して被告人のために証言してくれたこと,罰金前科1犯のほかに前科はないこと,一部の犯罪については反省の情を示していることなどといった被告人に有利に斟酌し得る事情も認められる。 そこで,以上の諸般の事情を総合考慮すると,被告人の犯行が多岐にわたり,その刑事責任が非常に重いことは言うまでもないが,とりわけ3名の尊い命を前記のとおりの身勝手な動機から奪った被告人の刑事責任は極めて重大である。しかも,既に述べたとおり,被告人は,自らの暴行に起因して1名の命を奪った経緯がありながら,その約3年後に,今度は確実に殺すつもりで,2名の人命を続 けざまに奪った 刑事責任は極めて重大である。しかも,既に述べたとおり,被告人は,自らの暴行に起因して1名の命を奪った経緯がありながら,その約3年後に,今度は確実に殺すつもりで,2名の人命を続 けざまに奪ったのであって,人命軽視の態度は甚だしいし,F及びGに対する殺人事件については捜査段階から不合理な弁解を貫き,罪責を免れることに汲々としていることなどをも併せみれば,改善可能性は乏しいと言わざるを得ない。 そうすると,既に指摘したとおりの被告人に有利に斟酌しうる事情を最大限考慮し,かつ,死刑が真にやむを得ない場合にのみ科しうる究極の刑罰であって,その適用が慎重に行われなければならないことを踏まえても,罪刑の均衡及び一般予防の双方の見地に照らし,被告人に対しては,死刑をもって臨むことはやむを得ない。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑死刑)平成18年10月20日甲府地方裁判所刑事部裁判長裁判官川島利夫裁判官矢野直邦裁判官福嶋一訓
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